説明

ドラムブレーキ

【課題】ブレーキシュー及びブレーキレバーがドラムブレーキに取り付けられた状態において、そのブレーキレバーのフック部にブレーキケーブルの係止部を掛け止める作業性を向上させるドラムブレーキを提供する。
【解決手段】作業者は、ブレーキシュー18,20、ブレーキレバー48およびシューホールドダウン装置44,46がドラムブレーキ10に取り付けられた状態において案内部48hの案内面48iを目視してブレーキケーブル50の係止部52をその案内面48iに引っかけて案内部48hによってその係止部54をフック部48dに案内させることによりブレーキケーブル50の係止部54をブレーキレバー48のフック部48dに掛け止めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラムブレーキに関し、特にそのドラムブレーキのブレーキレバーにブレーキケーブルを取り付ける作業の作業性を向上させる技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば、特許文献1、2に示すようなドラムブレーキが知られている。このようなドラムブレーキは、(a) バッキングプレートに拡開可能に配設された一対のブレーキシューと、(b) その一対のブレーキシューの一方のブレーキシューのシューウェブのそのバッキングプレート側に回動可能に配設された板状のブレーキレバーと、(c) そのブレーキレバーの先端部に設けられ、厚み方向において所定の間隔を隔てて重なるように前記バッキングプレート側に折り曲げられたフック部と、(d) ケーブル本体とそのケーブル本体の先端部に固定されたそのケーブル本体よりも大きい断面を有する係止部とを有し、その係止部が前記フック部に掛け止められるブレーキケーブルとを備え、(f) そのブレーキケーブルを介して前記ブレーキレバーのフック部が前記バッキングプレートの内周側へ引かれることで前記一対のブレーキシューが拡開されるものである。また、上記のようなドラムブレーキにおいて、そのドラムブレーキに上記ブレーキケーブルを組み付ける場合、作業者は例えば特許文献1の図4に示すようにそのブレーキケーブルの係止部を上記ドラムブレーキに組み付けられた上記ブレーキレバーのフック部に掛け止めることによりそのブレーキケーブルがそのドラムブレーキに組み付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−245288号公報
【特許文献2】特開2001−271855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のようなドラムブレーキにおいて、そのドラムブレーキの構成部品例えばブレーキシュー、ブレーキレバー等がドラムブレーキに組み付けられた後に上記ブレーキケーブルの係止部を上記ブレーキレバーのフック部に掛け止めようとすると、ドラムブレーキに組み付けられた上記ブレーキシュー及びブレーキレバー等によってそのブレーキレバーのフック部が作業者から隠れてしまい作業者から見えないので、作業者は例えば上記ブレーキレバーと上記バッキングプレートとの間に手を入れて手探りで上記フック部を探しそのフック部に上記ブレーキケーブルの係止部を掛け止めていた。そのため、上記ブレーキレバーのフック部に上記ブレーキケーブルの係止部を掛け止める作業性が悪くなるという問題があった。
【0005】
これに対して、上記ブレーキレバーにバッキングプレートを貫通させたブレーキケーブルを予め取り付けてからドラムブレーキの構成部品をドラムブレーキに組み付けることが考えられるが、上記ブレーキレバーに上記ブレーキケーブルが取り付けられた状態でドラムブレーキの組み立てを行おうとするとそのブレーキケーブルによってドラムブレーキの組付作業性が悪くなる。
【0006】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的とするところは、ブレーキシュー及びブレーキレバーがドラムブレーキに取り付けられた状態において、そのブレーキレバーのフック部にブレーキケーブルの係止部を掛け止める作業性を向上させるドラムブレーキを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するための請求項1に係る発明の要旨とするところは、(a) バッキングプレートに拡開可能に配設された一対のブレーキシューと、(b) その一対のブレーキシューの一方のブレーキシューのシューウェブのそのバッキングプレート側に回動可能に配設された板状のブレーキレバーと、(c) そのブレーキレバーの先端部に設けられ、厚み方向において所定の間隔を隔てて重なるように前記バッキングプレート側に折り曲げられたフック部と、(d) ケーブル本体とそのケーブル本体の先端部に固定されたそのケーブル本体よりも大きい断面を有する係止部とを有し、その係止部が前記フック部に掛け止められるブレーキケーブルとを備え、(e) そのブレーキケーブルを介して前記ブレーキレバーのフック部が前記バッキングプレートの内周側へ引かれることで前記一対のブレーキシューが拡開される形式のドラムブレーキであって、(f) 前記ブレーキレバーが非作動位置にあるとき少なくとも先端部が前記一方のブレーキシューのシューウェブと重ならず、且つそのブレーキレバーとも重ならないように前記フック部から前記バッキングプレートの内周側へ延伸され、前記フック部に向かうほど前記バッキングプレートの外周側に向かうように傾斜してそのブレーキシュー側端縁に位置する案内面を有し、その案内面に引っかけられた前記ブレーキケーブルの係止部をそのフック部に向かって案内する案内部を、含むことにある。
【0008】
また、請求項2に係る発明の要旨とするところは、請求項1に係る発明において、(a) 前記ブレーキレバーから外周側に設けられ、前記一方のブレーキシューのシューリムに当接してそのブレーキレバーの前記非作動位置を位置決めするストッパを、含み、(b) そのストッパが前記一方のブレーキシューのシューリムに当接した前記ブレーキレバーの非作動位置において、前記案内部の少なくとも先端部がその一方のブレーキシューのシューウェブおよび前記ブレーキレバーの内周側に露出していることにある。
【0009】
また、請求項3に係る発明の要旨とするところは、請求項1または2に係る発明において、前記フック部において前記係止部が当接させられる着座面は、前記案内面の先端から前記ブレーキケーブル側に所定値だけずれた位置に段付状に形成されていることにある。
【0010】
また、請求項4に係る発明の要旨とするところは、請求項1乃至3のいずれか1に係る発明において、(a) 前記ブレーキレバーを前記非作動位置に付勢するために前記ブレーキケーブルに沿ってその外周に装着されたコイルスプリングを含み、(b) 前記フック部のそのコイルスプリングが当接させられるばね受面は、その案内部の前記案内面と反対側の側縁に位置する面から前記係止部側に所定値だけずれた位置に段付状に形成されていることにある。
【0011】
また、請求項5に係る発明の要旨とするところは、請求項3に係る発明において、前記ブレーキレバーのフック部に前記ブレーキケーブルの先端部に固定された係止部が掛け止められたことを目視可能となるように、前記一方のブレーキシューのシューウェブの非作動位置にあるそのブレーキレバーのフック部の着座面又はその着座面に着座している前記係止部に対応する位置に貫通して形成された確認穴を、含むことにある。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明のドラムブレーキによれば、(f) 前記ブレーキレバーが非作動位置にあるとき少なくとも先端部が前記一方のブレーキシューのシューウェブと重ならず、且つそのブレーキレバーとも重ならないように前記フック部から前記バッキングプレートの内周側へ延伸され、前記フック部に向かうほど前記バッキングプレートの外周側に向かうように傾斜してそのブレーキシュー側端縁に位置する案内面を有し、その案内面に引っかけられた前記ブレーキケーブルの係止部をそのフック部に向かって案内する案内部が、含まれている。そのため、作業者は、前記ブレーキシュー及び前記ブレーキレバーが前記ドラムブレーキに取り付けられた状態において前記案内部の案内面を目視して前記ブレーキケーブルの係止部を該案内面に引っかけて前記案内部によってその係止部を前記フック部に案内させることにより前記ブレーキケーブルの係止部を前記ブレーキレバーのフック部に掛け止めることができる。これにより、作業者が手探りでブレーキレバーのフック部を探してブレーキケーブルの係止部を掛け止める従来のドラムブレーキに比較して、本発明のドラムブレーキはブレーキレバーのフック部にブレーキケーブルの係止部を掛け止める作業性が向上させられるとともに、ドラムブレーキの組付性が向上させられる。
【0013】
請求項2に係る発明のドラムブレーキによれば、(a) 前記ブレーキレバーから外周側に設けられ、前記一方のブレーキシューのシューリムに当接してそのブレーキレバーの前記非作動位置を位置決めするストッパを、含み、(b) そのストッパが前記一方のブレーキシューのシューリムに当接した前記ブレーキレバーの非作動位置において、前記案内部の少なくとも先端部がその一方のブレーキシューのシューウェブおよび前記ブレーキレバーの内周側に露出しているため、前記ブレーキレバーのフック部は前記非作動位置からの前記バッキングプレートの外周側の回動が前記ストッパにより拘束され、前記案内部の先端部が前記一方のブレーキシューのシューウェブによって作業者から隠れず作業者がその案内部の先端部を好適に目視できる。
【0014】
請求項3に係る発明のドラムブレーキによれば、前記フック部において前記係止部が当接させられる着座面は、前記案内面の先端から前記ブレーキケーブル側に所定値だけずれた位置に段付状に形成されているため、前記ブレーキケーブルの係止部が前記ブレーキレバーのフック部に掛け止められてその係止部が前記着座面に当接されるとその係止部が前記着座面と前記案内面との段差により前記係止部の前記フック部からの外れが好適に防止される。
【0015】
請求項4に係る発明のドラムブレーキによれば、(a) 前記ブレーキレバーを前記非作動位置に付勢するために前記ブレーキケーブルに沿ってその外周に装着されたコイルスプリングを含み、(b) 前記フック部のそのコイルスプリングが当接させられるばね受面は、その案内部の前記案内面と反対側の側縁に位置する面から前記係止部側に所定値だけずれた位置に段付状に形成されている。そのため、前記ブレーキケーブルのコイルスプリングが前記フック部のばね受面に当接されるとそのコイルスプリングがそのばね受面と前記案内部の前記案内面と反対側の側縁に位置する面との段差によりそのばね受面から外れることが好適に防止される。また、前記コイルスプリングが前記ばね受面に当接されると例えば前記ブレーキケーブルの係止部が前記フック部の着座面から外れても前記ブレーキレバーのフック部から前記ブレーキケーブルの係止部が脱落することが防止される。
【0016】
請求項5に係る発明のドラムブレーキによれば、前記ブレーキレバーのフック部に前記ブレーキケーブルの先端部に固定された係止部が掛け止められたことを目視可能となるように、前記一方のブレーキシューのシューウェブの非作動位置にあるそのブレーキレバーのフック部の着座面又はその着座面に着座している前記係止部に対応する位置に貫通して形成された確認穴を含むため、作業者は前記ブレーキケーブルの係止部を前記案内部によって確実にその係止部を前記フック部の着座面に案内させて前記ブレーキケーブルの係止部を前記ブレーキレバーのフック部に掛け止めたかどうかを前記確認穴を通して確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明が適用されたリーディング・トレーリング型ドラムブレーキを示す正面図である。
【図2】図1のドラムブレーキの一部を拡大する拡大図である。
【図3】図2のブレーキレバーを説明する図である。
【図4】図3のIV-IV視断面図である。
【図5】図3のブレーキレバーの案内部を説明する図である。
【図6】ブレーキレバーの係止部にブレーキケーブルを組み付ける組付作業を説明する図である。
【図7】ブレーキレバーの係止部にブレーキケーブルを組み付ける組付作業を説明する図である。
【図8】図7のVIII-VIII視断面図である。
【図9】ブレーキレバーの係止部にブレーキケーブルを組み付ける組付作業を説明する図である。
【図10】図9のX-X視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例】
【0019】
図1は、本発明の一実施例のパーキングロック機能を備えたシュー間隙自動調節装置付ドラムブレーキであるリーディング・トレーリング型の車両用ドラムブレーキ(以下、ドラムブレーキという)10であって、ブレーキドラム12を取り外して示す正面図である。また、ブレーキドラム12は、図1の1点鎖線で示す2つの同心円で表されており、その2つの円のうちの中心側の円はブレーキドラム12の内周面14を示している。
【0020】
ドラムブレーキ10には、略円板形状を成し、たとえば図示しない車軸管、アクスルハウジング、サスペンション装置などの車体側部材すなわち非回転部材に一体的に固設されたバッキングプレート16が備えられている。
【0021】
また、ドラムブレーキ10には、バッキングプレート16の外周部に凸側が外側になる姿勢で互いに接近離間可能に略対称的に配設された円弧形状の一対のブレーキシュー18,20と、その一対のブレーキシュー18,20の一端部すなわち図1の上端部の間においてバッキングプレート16に位置固定に設けられたホイールシリンダ22と、一対のブレーキシュー18,20の一端部を互いに接近する方向に常時付勢してホイールシリンダ22に当接させるために、その一端部間に張設されたコイル状のリターンスプリング24と、そのコイル状のリターンスプリング24の内部を挿通するように一対のブレーキシュー18,20の一端部間に架け渡された非制動時における一対のブレーキシュー18,20とブレーキドラム12の内周面14との間すなわちシュー間隙を自動的に調節するシュー間隙自動調節装置26と、一対のブレーキシュー18,20の他端部すなわち図1の下端部の間に位置固定に設けられたアンカ28と、一対のブレーキシュー18,20の下端部間に張設されてそれら下端部をアンカ28に常時当接させるスプリング30とが備えられている。
【0022】
一対のブレーキシュー18,20は、何れも、バッキングプレート16の板面と略平行な平板状を成し且つ図1に示す正面図において全体が円弧形状に湾曲したシューウェブ32,34と、それらの円弧形状を成す外周側端縁に沿って断面が略T字状を成すように一体的に固設された帯板状のシューリム36,38と、それらシューリム36,38の外周面に接着剤などで一体的に固着された摩擦材から成るライニング40,42とによってそれぞれ構成されている。また、一対のブレーキシュー18,20は、シューウェブ32およびシューウェブ34にそれぞれ配設されたシューホールドダウン装置44,46によってバッキングプレート16側へ押圧されることによりそのバッキングプレート16に対して面方向の相対移動可能に保持されている。また、ブレーキシュー18のシューウェブ32のバッキングプレート16側の平板面には、平板状のブレーキレバー48の基端部48aがピン50によってブレーキシュー18の一端部に相対回動可能に連結されている。
【0023】
図2、図3に示すように、ブレーキレバー48の先端部48bには、図示されていないパーキングブレーキ操作装置が操作されることによってそのブレーキレバー48の先端部48bが図1に示す矢印F方向に回動するように引っ張られるブレーキケーブル50が備えられている。
【0024】
また、図2、図3に示すように、ブレーキケーブル50は、線材の先端部がバッキングプレート16の裏面からそのバッキングプレート16に貫通された図示されていない貫通穴を挿通しブレーキレバー48の先端部48b側に配設された断面が円形状のケーブル本体52と、そのケーブル本体52の先端部に固設された断面が円形状の係止部54と、ケーブル本体52に沿ってそのケーブル本体52の外周にばね材から成る線材がコイル状に複数回巻回され且つそのコイル状の線材が圧縮された状態で装着されたコイルスプリング56とによって構成され、その圧縮されたコイルスプリング56の弾性復帰力によってブレーキレバー48の先端部48bは図1の矢印F方向と逆方向へ戻るように常時付勢されている。
【0025】
図2乃至図4に示すように、ブレーキレバー48の先端部48bには、その先端部48bにおけるシューリム36側の側縁の一部からそのシューリム36側に伸長されたストッパ48cと、そのブレーキレバー48の先端がそのブレーキレバー48の厚み方向において所定の間隔hを隔てて重なるようにバッキングプレート16側に略U字状に折り曲げられたフック部48dとが一体に備えられている。このため、図2に示すドラムブレーキ10の非作動時において、ブレーキレバー46の先端部46bがコイルスプリング56の弾性復帰力によって図1の矢印F方向と逆方向へ戻るように常時付勢されると、ブレーキレバー48の先端部48bがシューリム36側に回動しストッパ48cがシューリム36に当接されることによってその回動が止まる。つまり、ブレーキレバー48のストッパ48cは、ドラムブレーキ10の非作動時にそのブレーキレバー48の位置を位置決めする機能を有するものであり、図2に示すドラムブレーキ10が非作動時におけるブレーキレバー48の位置を以下、ブレーキレバー48の非作動位置という。
【0026】
図4に示すように、ブレーキレバー48のフック部48dの内周面には、互いに向き合う一対の第1側面48eと、それら一対の第1側面48eとを連結する第1連結面48fとが一体に備えられており、その一対の第1側面48eとの間の距離hがブレーキケーブル48の係止部54の円形断面の径寸法dより短くケーブル本体52の円形断面の径寸法dより長い長さに設定されている。そのため、図4に示すように、ケーブル本体52がフック部48dの一対の第1側面48eとの間に配設されてコイルスプリング56の弾性復帰力によりブレーキケーブル48の係止部54がブレーキレバー48のフック部48dに当接させられると、ブレーキケーブル48の係止部54がブレーキレバー46のフック部46dに掛け止められる。
【0027】
図2乃至5に示すように、ブレーキレバー48のフック部48dには、そのブレーキレバー48の厚み方向においてブレーキレバー48が非作動位置にある時にブレーキシュー18のシューウェブ32と重ならず、且つブレーキレバー48とも重ならないようにそのフック部48dからバッキングプレート16の内周側へ延伸される先端部48gを有する案内部48hと、その案内部48hのブレーキシュー18側端縁においてその先端部48gからフック部48dに向かうほどバッキングプレート16の外周側へ向かうように傾斜する案内面48iとが一体に備えられている。また、図1、図2に示すブレーキレバー48が非作動位置に配置されている時において、ブレーキレバー48の案内部48hの先端部48gは、ブレーキシュー18のシューウェブ32およびブレーキレバー48から露出している。
【0028】
図4に示すように、ブレーキレバー48の案内部48hには、ブレーキレバー48の平板面48jと向き合う第2側面48kと、その第2側面48kとフック部48dの第1側面48eとを連結する第2連結面48lとが一体に備えられており、その案内部48hの第2側面48kとブレーキレバー48の平板面48jとの間の距離hが、ブレーキケーブル48の係止部54の円形断面の半径寸法d/2とケーブル本体52の円形断面の半径寸法d/2とを合わせた距離hより長くブレーキケーブル48の係止部54の円形断面の径寸法dより短い長さに設定されている。
【0029】
そのため、図4の一点鎖線に示すように、ケーブル本体52がブレーキレバー48の平板面48jと案内部48hの第2側面48kとの間に配設された状態でブレーキケーブル48の係止部54がバッキングプレート16の内周側に引っ張られると、ブレーキケーブル48の係止部54がブレーキレバー48の案内部48hの案内面48iに当接させられその係止部54が案内部48hに引っ掛けられる。そして、案内部48hの案内面48iに引っ掛けられたブレーキレバー48の係止部54をその案内面48iに沿ってフック部48d側に向かって案内すると係止部54がフック部48dに掛け止められる。また、図4に示す一点鎖線のケーブル本体52および係止部54は、ブレーキケーブル48のケーブル本体52がブレーキレバー48の平板面48jと案内部48hの第2側面48kとの間に仮想的に配設された状態を示すものである。
【0030】
コイルスプリング56は、図8に示すように、その内径寸法d1がケーブル本体52の円形断面の径寸法dより長くその外径寸法d2がブレーキケーブル48の係止部54の円形断面の径寸法dより短い長さに設定されているため、そのコイルスプリングを図8に示すように矢印方向に押し付けてブレーキケーブル50がバッキングプレート16の内周側に引っ張られるとそのブレーキケーブル50の係止部54の一部がブレーキレバー48の案内部48hの案内面48iに当接されてその係止部54が案内部48hの案内面48iに引っ掛けられる。
【0031】
図3、図5に示すように、ブレーキレバー48のフック部48dには、ブレーキケーブル50の係止部54がコイルスプリング56の弾性復帰力により当接される着座面48mが備えられており、その着座面48mは案内面48iの先端からコイルスプリング56側に所定値Aだけずれた位置に段付状に形成されている。
【0032】
また、図3、図5に示すように、ブレーキレバー48のフック部48dには、コイルスプリング56のブレーキシュー18側の端部によって当接されるばね受面48nが備えられており、そのばね受面48nは案内部48hの案内面48iと反対側の側縁に位置する面48oから係止部54側に所定値Bだけずれた位置に段差状に形成されている。
【0033】
図1、図2に示すように、ブレーキシュー18のシューウェブ32には、ブレーキレバー48の非作動位置においてそのフック部48dの着座面48m又はその着座面48mに着座しているブレーキケーブル50の係止部54を目視可能な位置に円状に貫通して形成された確認穴32aが備えられている。
【0034】
ここで、ドラムブレーキ10の構成部品例えばブレーキシュー18,20、ブレーキレバー48、シューホールドダウン装置44,46等が組み付けられたドラムブレーキ10において、上記案内部48hを有するブレーキレバー48のフック部48dにブレーキケーブル50を組み付ける組付作業を図6乃至図10を用いて説明する。
【0035】
先ず作業者は、図6に示すようにブレーキケーブル50の掛止部54をブレーキレバー48のバッキングプレート16の内周側端縁から露出している案内部48hの先端部48gを目印にその案内部48hの案内面48i側に移動させると共に、図7、図8に示すようにブレーキケーブル50の係止部54の一部をブレーキレバー48の案内部48hの先端部48gにおける案内面48iに引っ掛ける。
【0036】
次に作業者は、図7に示すようにブレーキケーブル50の係止部54を案内部48hの案内面48iに引っ掛けた状態からコイルスプリング56を圧縮する方向すなわち矢印F1方向に引っ張りながらその係止部54をその案内面48iに沿ってフック部48d側に移動させる。これによって、図9、図10に示すように、ブレーキケーブル50の係止部54は、案内部48hの案内面48iに摺動されながらケーブル本体52が案内部48hの第2側面48kおよび案内部48hの第2連結面48lを通りフック部48dの一対の第1側面48eとの間に配置される。また、ブレーキケーブル50の係止部54が案内部48hの案内面48iの先端からフック部48dの着座面48mに移り変わる時ブレーキレバー48の案内面48iと着座面48mとの間の段差によってその係止部54がフック部48dの着座面48mに当接して音が生じる。
【0037】
最後に作業者は、シューウェブ32の確認穴32aからブレーキケーブル50の係止部54がブレーキレバー48のフック部48dに掛け止められたかどうか確認して、係止部54がフック部48dに掛け止められたと確認したらコイルスプリング56をばね受面48nに当接させて、ブレーキケーブル50の係止部54をブレーキレバー48のフック部48dに組み付ける組付作業が完了する。
【0038】
以上のように構成されたドラムブレーキ10は、図示されていないパーキングブレーキ操作装置が操作されることによりブレーキケーブル50を介してブレーキレバー48の先端部48bがバッキングプレート16の中心側へ回動させられると、ブレーキシュー20がシュー間隙自動調節装置26に押されて外周側へ移動させられるとともにブレーキシュー18がピン50に押されて外周側へ移動させられて、一対のブレーキシュー18,20が拡開され制動力が発生させられる。
【0039】
本実施例のドラムブレーキ10によれば、ブレーキレバー48が非作動位置にあるとき先端部48gがブレーキシュー18のシューウェブ32と重ならず、且つそのブレーキレバー48とも重ならないようにフック部48dからバッキングプレート16の内周側へ延伸され、フック部48dに向かうほどバッキングプレート16の外周側に向かうように傾斜してそのブレーキシュー18側端縁に位置する案内面48iを有し、その案内面48iに引っかけられたブレーキケーブル50の係止部54をそのフック部48dに向かって案内する案内部48hが、含まれている。そのため、作業者は、ブレーキシュー18,20、ブレーキレバー48およびシューホールドダウン装置44,46がドラムブレーキ10に取り付けられた状態において案内部48hの案内面48iを目視してブレーキケーブル50の係止部52をその案内面48iに引っかけて案内部48hの案内面48iによってその係止部54をフック部48dに案内させることによりブレーキケーブル50の係止部54をブレーキレバー48のフック部48dに掛け止めることができる。これにより、作業者が手探りでブレーキレバーのフック部を探してブレーキケーブルの係止部を掛け止める従来のドラムブレーキに比較して、本実施例のドラムブレーキ10はブレーキレバー48のフック部48dにブレーキケーブル50の係止部54を掛け止める作業性が向上させられるとともに、ドラムブレーキ10の組付性が向上させられる。
【0040】
また、本実施例のドラムブレーキ10によれば、ブレーキレバー48から外周側に設けられ、ブレーキシュー18のシューリム36に当接してそのブレーキレバー48の非作動位置を位置決めするストッパ48cを、含み、そのストッパ48cがブレーキシュー18のシューリム36に当接したブレーキレバー48の非作動位置において、案内部48hの先端部48gがブレーキシュー18のシューウェブ32およびブレーキレバー48の内周側に露出しているため、ブレーキレバー48のフック部48dは非作動位置からのバッキングプレート16の外周側の回動がストッパ48cにより拘束され、案内部48hの先端部48gがブレーキシュー18のシューウェブ32によって作業者から隠れず作業者がその案内部48hの先端部48gを好適に目視できる。
【0041】
また、本実施例のドラムブレーキ10によれば、フック部48dにおいて係止部54が当接させられる着座面48mは、案内面48iの先端からブレーキケーブル50のコイルスプリング56側に所定値Aだけずれた位置に段付状に形成されているため、ブレーキケーブル50の係止部54がブレーキレバー48のフック部48dに掛け止められてその係止部54が着座面48mに当接されるとその係止部54が着座面48mと案内面48iとの段差により係止部54のフック部48dからの外れが好適に防止される。
【0042】
また、本実施例のドラムブレーキ10によれば、ブレーキレバー48を非作動位置に付勢するためにブレーキケーブル50のケーブル本体52に沿ってその外周に装着されたコイルスプリング56を含み、フック部48dのそのコイルスプリング56が当接させられるばね受面48nは、案内部48hの案内面48iと反対側の側縁に位置する面48oから係止部54側に所定値Bだけずれた位置に段付状に形成されている。そのため、ブレーキケーブル50のコイルスプリング56がフック部48dのばね受面48nに当接されるとそのコイルスプリング56がそのばね受面48nと案内部48hの案内面48iと反対側の側縁に位置する面48oとの段差によりそのばね受面48nから外れることが好適に防止される。また、コイルスプリング56がばね受面48nに当接されると例えばブレーキケーブル50の係止部54がフック部48dの着座面48nから外れてもブレーキレバー48のフック部48dからブレーキケーブル50の係止部54が脱落することが防止される。
【0043】
また、本実施例のドラムブレーキ10によれば、ブレーキレバー48のフック部48dにブレーキケーブル50のケーブル本体52の先端部に固定された係止部54が掛け止められたことを目視可能となるように、ブレーキシュー18のシューウェブ32の非作動位置にあるそのブレーキレバー48のフック部48dの着座面48m又はその着座面48mに着座しているブレーキケーブル50の係止部54に対応する位置に貫通して形成された確認穴32aを含むため、作業者はブレーキケーブル50の係止部54を案内部48hによって確実にその係止部54をフック部48dの着座面48mに案内させてブレーキケーブル48の係止部54をブレーキレバー48のフック部48dに掛け止めたかどうかをシューウェブ32の確認穴32aを通して確認することができる。
【0044】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて説明したが、本発明はその他の態様においても適応される。
【0045】
例えば、本実施例のドラムブレーキ10において、ブレーキレバー48の案内部48hは、ブレーキレバー48のフック部48dに一体に成形されたものであるが、必ずしも案内部48hがフック部48dに一体に成形される必要はなく、例えば案内部48hを単体の部品で成形してその単体の部品である案内部48hをフック部48dに固定させても良い。
【0046】
また、本実施例のドラムブレーキ10おいて、コイルスプリング56のを外周に配設させたケーブル本体52は、図8に示すようにブレーキレバー48の平板面48jと案内部48hの第2側面48kとの間に嵌め入れることができないようにそのコイルスプリング56の内径寸法d1および外径寸法d2が設定されていたが、ブレーキレバー48の平板面48jと案内部48hの第2側面48kとの間に嵌め入れることができるようにそのコイルスプリング56の内径寸法d1および外径寸法d2が設定されても良い。これによって、ブレーキレバー48のフック部48dにブレーキケーブル50の係止部54を取り付ける取付工程が更に容易になる。
【0047】
その他一々例示はしないが、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0048】
10:ドラムブレーキ
16:バッキングプレート
18,20:一対のブレーキシュー
32,34:シューウェブ
32a:確認穴
36,38:シューリム
48:ブレーキレバー
48c:ストッパ
48d:フック部
48g:先端部
48h:案内部
48i:案内面
48m:着座面
48n:ばね受面
50:ブレーキケーブル
52:ケーブル本体
54:コイルスプリング
56:係止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッキングプレートに拡開可能に配設された一対のブレーキシューと、該一対のブレーキシューの一方のブレーキシューのシューウェブの該バッキングプレート側に回動可能に配設された板状のブレーキレバーと、該ブレーキレバーの先端部に設けられ、厚み方向において所定の間隔を隔てて重なるように前記バッキングプレート側に折り曲げられたフック部と、ケーブル本体と該ケーブル本体の先端部に固定された該ケーブル本体よりも大きい断面を有する係止部とを有し、該係止部が前記フック部に掛け止められるブレーキケーブルとを備え、該ブレーキケーブルを介して前記ブレーキレバーのフック部が前記バッキングプレートの内周側へ引かれることで前記一対のブレーキシューが拡開される形式のドラムブレーキであって、
前記ブレーキレバーが非作動位置にあるとき少なくとも先端部が前記一方のブレーキシューのシューウェブと重ならず、且つ該ブレーキレバーとも重ならないように前記フック部から前記バッキングプレートの内周側へ延伸され、前記フック部に向かうほど前記バッキングプレートの外周側に向かうように傾斜して該ブレーキシュー側端縁に位置する案内面を有し、該案内面に引っかけられた前記ブレーキケーブルの係止部を該フック部に向かって案内する案内部を、含むことを特徴とするドラムブレーキ。
【請求項2】
前記ブレーキレバーから外周側に設けられ、前記一方のブレーキシューのシューリムに当接して該ブレーキレバーの前記非作動位置を位置決めするストッパを、含み、
該ストッパが前記一方のブレーキシューのシューリムに当接した前記ブレーキレバーの非作動位置において、前記案内部の少なくとも先端部が該一方のブレーキシューのシューウェブおよび前記ブレーキレバーの内周側に露出していることを特徴とする請求項1のドラムブレーキ。
【請求項3】
前記フック部において前記係止部が当接させられる着座面は、前記案内面の先端から前記ブレーキケーブル側に所定値だけずれた位置に段付状に形成されていることを特徴とする請求項1または2のドラムブレーキ。
【請求項4】
前記ブレーキレバーを前記非作動位置に付勢するために前記ブレーキケーブルに沿ってその外周に装着されたコイルスプリングを含み、
前記フック部の該コイルスプリングが当接させられるばね受面は、該案内部の前記案内面と反対側の側縁に位置する面から前記係止部側に所定値だけずれた位置に段付状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1のドラムブレーキ。
【請求項5】
前記ブレーキレバーのフック部に前記ブレーキケーブルの先端部に固定された係止部が掛け止められたことを目視可能となるように、前記一方のブレーキシューのシューウェブの非作動位置にある該ブレーキレバーのフック部の着座面又は該着座面に着座している前記係止部に対応する位置に貫通して形成された確認穴を、含むことを特徴とする請求項3のドラムブレーキ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−231898(P2011−231898A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−104535(P2010−104535)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(390005670)豊生ブレーキ工業株式会社 (104)
【Fターム(参考)】