ノズル及びその製造方法
【課題】短時間で製造可能なノズル及びその製造方法を提供することである。
【解決手段】ノズル10は、チップ部品20を吸着するための吸着面Sであって、凹曲面をなしている吸着面Sを有する。吸着面Sには、吸引孔Hが設けられている。吸着面Sを平面視したときに、吸着面Sの底部を中心とする円Bと底部を通過する2本の直線L1,L2とが交差する交差部A1〜A4が、円B上の交差部A1〜A4以外の部分に対して窪んでいる。
【解決手段】ノズル10は、チップ部品20を吸着するための吸着面Sであって、凹曲面をなしている吸着面Sを有する。吸着面Sには、吸引孔Hが設けられている。吸着面Sを平面視したときに、吸着面Sの底部を中心とする円Bと底部を通過する2本の直線L1,L2とが交差する交差部A1〜A4が、円B上の交差部A1〜A4以外の部分に対して窪んでいる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル及びその製造方法に関し、より特定的には、電子部品を吸着するノズル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のノズルとしては、例えば、特許文献1に記載のダイコレットが知られている。図11は、特許文献1に記載のダイコレット500の外観斜視図である。
【0003】
図11のダイコレット500は、略円錐状の凹部を形成する曲面502を備えている。また、曲面502の内側には、真空吸引孔504が設けられている。更に、ダイコレット500は、曲面502を平面視したときに、円の4箇所が円弧状に窪むように削り取られた形状をなしている。以上のような構造を有するダイコレット500では、円の4箇所が円弧状に窪むように削り取られているので、チップの角が曲面502に接触することが防止される。その結果、チップの吸着時に、チップの角が破損することが防止される。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のダイコレット500は、加工時間が長くなるという問題を有している。より詳細には、図11に示すような形状を有するダイコレット500を作製するためには、円柱状の部材を準備し、円柱状の部材の側面の4箇所を削り取る。そのため、ダイコレット500の加工では、円柱状の部材を大きく削り取る必要がある。その結果、ダイコレット500では、加工時間が長くなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−77436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、短時間で製造可能なノズル及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態に係るノズルは、チップ部品を吸着するための吸着面であって、凹曲面をなしている吸着面を有するノズルであって、前記吸着面には、吸引孔が設けられており、前記吸着面を平面視したときに、該吸着面の底部を中心とする所定の円と該底部を通過する2本の直線とが交差する交差部が、該所定の円上の該交差部以外の部分に対して窪んでいること、を特徴とする。
【0008】
前記ノズルの製造方法は、凹曲面をなしている前記吸着面を形成する第1の工程と、前記吸着面を平面視したときに、該吸着面の底部を中心とする所定の円と該底部を通過する2本の直線とが交差する交差部が、該所定の円上の該交差部以外の部分に対して窪むように、該交差部を加工する第2の工程と、を備えていること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ノズルを短時間で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】一実施形態に係るノズルの外観斜視図である。
【図2】図1のノズルがチップ部品を吸着している様子を示した図である。
【図3】図3(a)は、図1のノズルを平面視した図である。図3(b)は、図2のX−Xにおける断面構造図である。
【図4】ノズルの製造工程を示した図である。
【図5】ノズルの製造工程を示した図である。
【図6】第1の変形例に係るノズルの製造工程を示した図である。
【図7】第2の変形例に係るノズルの製造工程を示した図である。
【図8】第3の変形例に係るノズルの外観斜視図である。
【図9】図8のノズルを平面視した図である。
【図10】ノズルを平面視した図である。
【図11】特許文献1に記載のダイコレットの外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の一実施形態に係るノズル及びその製造方法について説明する。
【0012】
(ノズルの構成)
以下に、本発明の一実施形態に係るノズルの構成について図面を参照しながら説明する。図1は、一実施形態に係るノズル10の外観斜視図である。図2は、図1のノズル10がチップ部品20を吸着している様子を示した図である。図3(a)は、図1のノズル10を平面視した図である。図3(b)は、図2のX−Xにおける断面構造図である。以下、ノズル10の上下方向をz軸方向と定義する。また、z軸方向から平面視したときに、ノズル10の2辺に沿った方向をそれぞれx軸方向及びy軸方向と定義する。x軸方向、y軸方向及びz軸方向は互いに直交している。
【0013】
ノズル10は、図2に示すように、直方体状のチップ部品20を真空吸着する際に用いられ、図1に示すように、本体12により構成されている。本体12は、図1に示すように、z軸方向の両端に位置する面が正方形をなしている角柱状をなしており、金属(例えば、超硬)、樹脂又はセラミックにより作製されている。以下では、本体12のz軸方向の正方向側の面を吸着面Sと呼ぶ。吸着面Sには、図1に示すように、吸引孔Hが設けられている。吸引孔Hは、吸着面Sの対角線の交点に設けられており、本体12をz軸方向に貫通している。吸引孔H内は、チップ部品20の吸着の際に、ポンプなどにより負圧に保たれる。これにより、チップ部品20は、吸着面Sに吸着される。
【0014】
以下に、吸着面Sの構造についてより詳細に説明する。吸着面Sは、図1に示すように、z軸方向の負方向側に窪んだ凹曲面をなしている。より詳細には、吸着面Sの対角線の交点がz軸方向の負方向側に最も窪んだ底部を構成している。吸引孔Hは、吸着面Sの底部に設けられている。吸着面Sは、孔Hを通過するz軸に平行な軸に関して回転対称な形状をなしており、具体的には、球面の一部をなしている。
【0015】
また、z軸方向から吸着面Sを平面視したときに、円B(図3(a)参照)と底部(吸引孔H)を通過する2本の直線L1,L2(図3(a)参照)とが交差する交差部A1〜A4が、円B上の交差部A1〜A4以外の部分に対して窪んでいる。円Bは、z軸方向の正方向側から吸着面Sを平面視したときに、吸着面Sの底部を中心とする円であり、チップ部品20のz軸方向の負方向側の面の対角線と略等しい長さの直径を有している。また、本実施形態に係るノズル10では、直線L1,L2は、互いに直交しており、吸着面Sの対角線を構成している。これにより、交差部A1〜A4は、チップ部品20のz軸方向の負方向側の面と一致する正方形を形成している。
【0016】
交差部A1〜A4及びその周囲は、吸着面Sにおいて直線L1,L2を中心軸とする2本の円柱と重なる部分が除去されることによって窪んでいる。以下では、吸着面Sにおける窪みを窪みC1〜C4と称す。窪みC1は、x軸方向の負方向側であって、y軸方向の負方向側の角に位置している。窪みC2は、x軸方向の負方向側であって、y軸方向の正方向側の角に位置している。窪みC3は、x軸方向の正方向側であって、y軸方向の正方向側の角に位置している。窪みC4は、x軸方向の正方向側であって、y軸方向の負方向側の角に位置している。窪みC1〜C4は、円柱の側面の一部をなしている。
【0017】
次に、チップ部品20の吸着について説明する。チップ部品20の吸着の際には、図2に示すように、ノズル10のz軸方向の正方向側の吸着面Sを下方向に向ける。そして、吸引孔H内をポンプにより吸引することによって、チップ部品20を吸着面Sに吸着させる。この際、図2及び図3(a)に示すように、z軸方向の正方向側から平面視したときに、チップ部品20のz軸方向の負方向側の面の4つの角はそれぞれ、窪みC1〜C4と重なっている。より詳細には、チップ部品20のz軸方向の負方向側の面の4つの角は、z軸方向の正方向側から平面視したときに、交差部A1〜A4と重なっている。交差部A1〜A4は、円Bの交差部A1〜A4以外の部分よりも窪んでいる。そのため、チップ部品20の4つの角は、吸着面Sに接触しない。その代わり、z軸方向の負方向側の面を構成する4本の稜線が吸着面Sと接触している。
【0018】
(ノズル10の製造方法)
次に、ノズル10の製造方法について図面を参照しながら説明する。図4及び図5は、ノズル10の製造工程を示した図である。
【0019】
まず、図4(a)に示すように、吸着孔Hが設けられた角柱状の本体12を準備する。そして、球状のダイヤモンド砥石T1を用いて、凹曲面をなす吸着面Sを形成する。より詳細には、球状のダイヤモンド砥石T1は、吸着面Sの底面となる部分の法線(すなわち、吸引孔Hを通過するz軸に平行な直線)を中心軸とする回転体である。該ダイヤモンド砥石T1を吸着面Sに接触させることにより、吸着面Sが、研削加工されて球面の一部をなす面が形成される(図4(b)参照)。
【0020】
次に、図5(a)に示すように、ワイヤ状のダイヤモンド砥石T2を用いて、交差部A1,A3及びその周囲を研削加工により削って、窪みC1,C3を形成する。より詳細には、ダイヤモンド砥石T2は、z軸方向の正方向側から平面視したときに、直線L2を中心軸とする円柱状の工具である。よって、ダイヤモンド砥石T2は、xy平面内において、x軸と45度をなす方向Dに延在している。そして、ダイヤモンド砥石T2を方向Dにおいて往復運動させる。これにより、吸着面Sの2つの角が削られて、ダイヤモンド砥石T2の側面に沿った円柱形状を有する窪みC1,C3が形成される。
【0021】
次に、図5(b)に示すように、ワイヤ状のダイヤモンド砥石T3を用いて、交差部A2,A4及びその周囲を研削加工により削って、窪みC2,C4を形成する。より詳細には、ダイヤモンド砥石T3は、z軸方向の正方向側から平面視したときに、直線L1を中心軸とする円柱状の工具である。よって、ダイヤモンド砥石T3は、xy平面内において、ダイヤモンド砥石T2と直交している。そして、ダイヤモンド砥石T3をxy平面内において方向Dに直交する方向Eにおいて往復運動させる。これにより、吸着面Sの2つの角が削られて、窪みC2,C4が形成される。以上の工程を経て、図5(c)に示すノズル10が完成する。
【0022】
(効果)
本実施形態に係るノズル10及びその製造方法によれば、チップ部品20の吸着時に、チップ部品20の角が破損することが防止される。より詳細には、図2及び図3(a)に示すように、z軸方向の正方向側から平面視したときに、チップ部品20のz軸方向の負方向側の面の4つの角はそれぞれ、交差部A1〜A4と重なっている。交差部A1〜A4は、円Bの交差部A1〜A4以外の部分よりも窪んでいる。そのため、チップ部品20の4つの角は、吸着面Sに接触しない。その結果、チップ部品20の4つの角が破損することが防止される。
【0023】
また、ノズル10及びその製造方法によれば、短時間で製造可能なノズル10を得ることができる。より詳細には、図11に示す特許文献1に記載のダイコレット500を形成するためには、円柱状の部材を準備し、円柱状の部材の側面の4箇所を削り取る。そのため、ダイコレット500の加工では、円柱状の部材を大きく削り取る必要がある。その結果、ダイコレット500では、加工時間が長くなってしまう。
【0024】
これに対して、ノズル10では、交差部A1〜A4が円B上の交差部A1〜A4以外の部分に対して窪んでいる。すなわち、球面の一部をなす吸着面Sの一部が削り取られることによって、交差部A1〜A4を含む窪みC1〜C4が形成されている。窪みC1〜C4の形成において本体12が削り取られる量は、ダイコレット500において円柱状の部材の側面の4箇所が削り取られる量よりも少ない。そのため、ノズル10の加工時間は、ダイコレット500の加工時間よりも短くなる。
【0025】
また、ノズル10及びその製造方法によれば、研削加工により、吸着面Sが形成されている。そのため、吸着面Sの形成において放電加工が不要である。その結果、ノズル10の本体12の材料に金属以外の材料(例えば、セラミックや樹脂等)を用いることが可能となる。
【0026】
(第1の変形例)
以下に、第1の変形例に係るノズル10の製造方法について図面を参照しながら説明する。図6は、第1の変形例に係るノズル10の製造工程を示した図である。
【0027】
第1の変形例に係るノズル10の製造方法では、図6(a)に示すように、円錐状のダイヤモンド砥石T4を用いて、凹曲面をなす吸着面Sを形成する。より詳細には、円錐状のダイヤモンド砥石T4は、吸着面Sの底面となる部分の法線(すなわち、吸引孔Hを通過するz軸に平行な直線)を中心軸とする回転体である。該ダイヤモンド砥石T4を吸着面Sに接触させることにより、吸着面Sが研削加工されて円錐状の曲面が形成される(図6(b)参照)。
【0028】
(第2の変形例)
次に、第2の変形例に係るノズル10の製造方法について図面を参照しながら説明する。図7は、第2の変形例に係るノズル10の製造工程を示した図である。
【0029】
第2の変形例に係るノズル10の製造方法では、図7(a)に示すように、円盤状のダイヤモンド砥石T5を用いて、交差部A1,A3及びその周囲を研削加工により削って、窪みC1,C3を形成する。より詳細には、ダイヤモンド砥石T5は、直線L2に平行な回転軸を有する円盤状の工具である。そして、ダイヤモンド砥石T5を直線L2(図3参照)に沿って移動させる。ただし、ダイヤモンド砥石T5には面取りが施されている。これにより、吸着面Sの2つの角が削られて、ダイヤモンド砥石T5の側面に沿った円柱形状を有する窪みC1,C3が形成される。
【0030】
次に、図7(b)に示すように、円盤状のダイヤモンド砥石T6を用いて、交差部A2,A4及びその周囲を研削加工により削って、窪みC2,C4を形成する。より詳細には、ダイヤモンド砥石T6は、直線L1に平行な回転軸を有する円盤状の工具である。そして、ダイヤモンド砥石T6を直線L1(図3参照)に沿って移動させる。ただし、ダイヤモンド砥石T5には面取りが施されている。これにより、吸着面Sの2つの角が削られて、ダイヤモンド砥石T6の側面に沿った円柱形状を有する窪みC2,C4が形成される。
【0031】
(第3の変形例)
以下に、第3の変形例に係るノズル10aについて図面を参照しながら説明する。図8は、第3の変形例に係るノズル10aの外観斜視図である。図9は、図8のノズル10aを平面視した図である。
【0032】
図8及び図9に示すように、本体12は、角柱ではなく円柱であってもよい。また、本体12の形状は角柱及び円柱に限らず、角錐や円錐等であってもよい。ただし、ノズル10,10aの小型化を図るためには、本体12は、角柱であることが望ましい。本体12が円柱である場合には、本体12が角柱である場合に比べて、図9に示すように、チップ部品20から吸着面Sがはみ出す領域が大きくなるからである。
【0033】
(第4の変形例)
以下に、第4の変形例に係るノズル10bについて図面を参照しながら説明する。図10は、ノズル10bを平面視した図である。
【0034】
図8及び図9に示すノズル10aでは、直線L1,L2は直交している。これは、チップ部品20がz軸方向から平面視したときに正方形をなしているためである。
【0035】
一方、ノズル10bでは、直線L1,L2は直交していない。これにより、ノズル10bは、z軸方向から平面視したときに、長方形状をなしているチップ部品20を吸着することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
以上のように、本発明は、ノズル及びその製造方法に有用であり、特に、短時間で製造できる点において優れている。
【符号の説明】
【0037】
A1〜A4 交差部
B 円
C1〜C4 窪み
H 吸引孔
S 吸着面
L1,L2 直線
T1〜T6 ダイヤモンド砥石
10,10a,10b ノズル
12 本体
20 チップ部品
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル及びその製造方法に関し、より特定的には、電子部品を吸着するノズル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のノズルとしては、例えば、特許文献1に記載のダイコレットが知られている。図11は、特許文献1に記載のダイコレット500の外観斜視図である。
【0003】
図11のダイコレット500は、略円錐状の凹部を形成する曲面502を備えている。また、曲面502の内側には、真空吸引孔504が設けられている。更に、ダイコレット500は、曲面502を平面視したときに、円の4箇所が円弧状に窪むように削り取られた形状をなしている。以上のような構造を有するダイコレット500では、円の4箇所が円弧状に窪むように削り取られているので、チップの角が曲面502に接触することが防止される。その結果、チップの吸着時に、チップの角が破損することが防止される。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のダイコレット500は、加工時間が長くなるという問題を有している。より詳細には、図11に示すような形状を有するダイコレット500を作製するためには、円柱状の部材を準備し、円柱状の部材の側面の4箇所を削り取る。そのため、ダイコレット500の加工では、円柱状の部材を大きく削り取る必要がある。その結果、ダイコレット500では、加工時間が長くなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−77436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、短時間で製造可能なノズル及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態に係るノズルは、チップ部品を吸着するための吸着面であって、凹曲面をなしている吸着面を有するノズルであって、前記吸着面には、吸引孔が設けられており、前記吸着面を平面視したときに、該吸着面の底部を中心とする所定の円と該底部を通過する2本の直線とが交差する交差部が、該所定の円上の該交差部以外の部分に対して窪んでいること、を特徴とする。
【0008】
前記ノズルの製造方法は、凹曲面をなしている前記吸着面を形成する第1の工程と、前記吸着面を平面視したときに、該吸着面の底部を中心とする所定の円と該底部を通過する2本の直線とが交差する交差部が、該所定の円上の該交差部以外の部分に対して窪むように、該交差部を加工する第2の工程と、を備えていること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ノズルを短時間で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】一実施形態に係るノズルの外観斜視図である。
【図2】図1のノズルがチップ部品を吸着している様子を示した図である。
【図3】図3(a)は、図1のノズルを平面視した図である。図3(b)は、図2のX−Xにおける断面構造図である。
【図4】ノズルの製造工程を示した図である。
【図5】ノズルの製造工程を示した図である。
【図6】第1の変形例に係るノズルの製造工程を示した図である。
【図7】第2の変形例に係るノズルの製造工程を示した図である。
【図8】第3の変形例に係るノズルの外観斜視図である。
【図9】図8のノズルを平面視した図である。
【図10】ノズルを平面視した図である。
【図11】特許文献1に記載のダイコレットの外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の一実施形態に係るノズル及びその製造方法について説明する。
【0012】
(ノズルの構成)
以下に、本発明の一実施形態に係るノズルの構成について図面を参照しながら説明する。図1は、一実施形態に係るノズル10の外観斜視図である。図2は、図1のノズル10がチップ部品20を吸着している様子を示した図である。図3(a)は、図1のノズル10を平面視した図である。図3(b)は、図2のX−Xにおける断面構造図である。以下、ノズル10の上下方向をz軸方向と定義する。また、z軸方向から平面視したときに、ノズル10の2辺に沿った方向をそれぞれx軸方向及びy軸方向と定義する。x軸方向、y軸方向及びz軸方向は互いに直交している。
【0013】
ノズル10は、図2に示すように、直方体状のチップ部品20を真空吸着する際に用いられ、図1に示すように、本体12により構成されている。本体12は、図1に示すように、z軸方向の両端に位置する面が正方形をなしている角柱状をなしており、金属(例えば、超硬)、樹脂又はセラミックにより作製されている。以下では、本体12のz軸方向の正方向側の面を吸着面Sと呼ぶ。吸着面Sには、図1に示すように、吸引孔Hが設けられている。吸引孔Hは、吸着面Sの対角線の交点に設けられており、本体12をz軸方向に貫通している。吸引孔H内は、チップ部品20の吸着の際に、ポンプなどにより負圧に保たれる。これにより、チップ部品20は、吸着面Sに吸着される。
【0014】
以下に、吸着面Sの構造についてより詳細に説明する。吸着面Sは、図1に示すように、z軸方向の負方向側に窪んだ凹曲面をなしている。より詳細には、吸着面Sの対角線の交点がz軸方向の負方向側に最も窪んだ底部を構成している。吸引孔Hは、吸着面Sの底部に設けられている。吸着面Sは、孔Hを通過するz軸に平行な軸に関して回転対称な形状をなしており、具体的には、球面の一部をなしている。
【0015】
また、z軸方向から吸着面Sを平面視したときに、円B(図3(a)参照)と底部(吸引孔H)を通過する2本の直線L1,L2(図3(a)参照)とが交差する交差部A1〜A4が、円B上の交差部A1〜A4以外の部分に対して窪んでいる。円Bは、z軸方向の正方向側から吸着面Sを平面視したときに、吸着面Sの底部を中心とする円であり、チップ部品20のz軸方向の負方向側の面の対角線と略等しい長さの直径を有している。また、本実施形態に係るノズル10では、直線L1,L2は、互いに直交しており、吸着面Sの対角線を構成している。これにより、交差部A1〜A4は、チップ部品20のz軸方向の負方向側の面と一致する正方形を形成している。
【0016】
交差部A1〜A4及びその周囲は、吸着面Sにおいて直線L1,L2を中心軸とする2本の円柱と重なる部分が除去されることによって窪んでいる。以下では、吸着面Sにおける窪みを窪みC1〜C4と称す。窪みC1は、x軸方向の負方向側であって、y軸方向の負方向側の角に位置している。窪みC2は、x軸方向の負方向側であって、y軸方向の正方向側の角に位置している。窪みC3は、x軸方向の正方向側であって、y軸方向の正方向側の角に位置している。窪みC4は、x軸方向の正方向側であって、y軸方向の負方向側の角に位置している。窪みC1〜C4は、円柱の側面の一部をなしている。
【0017】
次に、チップ部品20の吸着について説明する。チップ部品20の吸着の際には、図2に示すように、ノズル10のz軸方向の正方向側の吸着面Sを下方向に向ける。そして、吸引孔H内をポンプにより吸引することによって、チップ部品20を吸着面Sに吸着させる。この際、図2及び図3(a)に示すように、z軸方向の正方向側から平面視したときに、チップ部品20のz軸方向の負方向側の面の4つの角はそれぞれ、窪みC1〜C4と重なっている。より詳細には、チップ部品20のz軸方向の負方向側の面の4つの角は、z軸方向の正方向側から平面視したときに、交差部A1〜A4と重なっている。交差部A1〜A4は、円Bの交差部A1〜A4以外の部分よりも窪んでいる。そのため、チップ部品20の4つの角は、吸着面Sに接触しない。その代わり、z軸方向の負方向側の面を構成する4本の稜線が吸着面Sと接触している。
【0018】
(ノズル10の製造方法)
次に、ノズル10の製造方法について図面を参照しながら説明する。図4及び図5は、ノズル10の製造工程を示した図である。
【0019】
まず、図4(a)に示すように、吸着孔Hが設けられた角柱状の本体12を準備する。そして、球状のダイヤモンド砥石T1を用いて、凹曲面をなす吸着面Sを形成する。より詳細には、球状のダイヤモンド砥石T1は、吸着面Sの底面となる部分の法線(すなわち、吸引孔Hを通過するz軸に平行な直線)を中心軸とする回転体である。該ダイヤモンド砥石T1を吸着面Sに接触させることにより、吸着面Sが、研削加工されて球面の一部をなす面が形成される(図4(b)参照)。
【0020】
次に、図5(a)に示すように、ワイヤ状のダイヤモンド砥石T2を用いて、交差部A1,A3及びその周囲を研削加工により削って、窪みC1,C3を形成する。より詳細には、ダイヤモンド砥石T2は、z軸方向の正方向側から平面視したときに、直線L2を中心軸とする円柱状の工具である。よって、ダイヤモンド砥石T2は、xy平面内において、x軸と45度をなす方向Dに延在している。そして、ダイヤモンド砥石T2を方向Dにおいて往復運動させる。これにより、吸着面Sの2つの角が削られて、ダイヤモンド砥石T2の側面に沿った円柱形状を有する窪みC1,C3が形成される。
【0021】
次に、図5(b)に示すように、ワイヤ状のダイヤモンド砥石T3を用いて、交差部A2,A4及びその周囲を研削加工により削って、窪みC2,C4を形成する。より詳細には、ダイヤモンド砥石T3は、z軸方向の正方向側から平面視したときに、直線L1を中心軸とする円柱状の工具である。よって、ダイヤモンド砥石T3は、xy平面内において、ダイヤモンド砥石T2と直交している。そして、ダイヤモンド砥石T3をxy平面内において方向Dに直交する方向Eにおいて往復運動させる。これにより、吸着面Sの2つの角が削られて、窪みC2,C4が形成される。以上の工程を経て、図5(c)に示すノズル10が完成する。
【0022】
(効果)
本実施形態に係るノズル10及びその製造方法によれば、チップ部品20の吸着時に、チップ部品20の角が破損することが防止される。より詳細には、図2及び図3(a)に示すように、z軸方向の正方向側から平面視したときに、チップ部品20のz軸方向の負方向側の面の4つの角はそれぞれ、交差部A1〜A4と重なっている。交差部A1〜A4は、円Bの交差部A1〜A4以外の部分よりも窪んでいる。そのため、チップ部品20の4つの角は、吸着面Sに接触しない。その結果、チップ部品20の4つの角が破損することが防止される。
【0023】
また、ノズル10及びその製造方法によれば、短時間で製造可能なノズル10を得ることができる。より詳細には、図11に示す特許文献1に記載のダイコレット500を形成するためには、円柱状の部材を準備し、円柱状の部材の側面の4箇所を削り取る。そのため、ダイコレット500の加工では、円柱状の部材を大きく削り取る必要がある。その結果、ダイコレット500では、加工時間が長くなってしまう。
【0024】
これに対して、ノズル10では、交差部A1〜A4が円B上の交差部A1〜A4以外の部分に対して窪んでいる。すなわち、球面の一部をなす吸着面Sの一部が削り取られることによって、交差部A1〜A4を含む窪みC1〜C4が形成されている。窪みC1〜C4の形成において本体12が削り取られる量は、ダイコレット500において円柱状の部材の側面の4箇所が削り取られる量よりも少ない。そのため、ノズル10の加工時間は、ダイコレット500の加工時間よりも短くなる。
【0025】
また、ノズル10及びその製造方法によれば、研削加工により、吸着面Sが形成されている。そのため、吸着面Sの形成において放電加工が不要である。その結果、ノズル10の本体12の材料に金属以外の材料(例えば、セラミックや樹脂等)を用いることが可能となる。
【0026】
(第1の変形例)
以下に、第1の変形例に係るノズル10の製造方法について図面を参照しながら説明する。図6は、第1の変形例に係るノズル10の製造工程を示した図である。
【0027】
第1の変形例に係るノズル10の製造方法では、図6(a)に示すように、円錐状のダイヤモンド砥石T4を用いて、凹曲面をなす吸着面Sを形成する。より詳細には、円錐状のダイヤモンド砥石T4は、吸着面Sの底面となる部分の法線(すなわち、吸引孔Hを通過するz軸に平行な直線)を中心軸とする回転体である。該ダイヤモンド砥石T4を吸着面Sに接触させることにより、吸着面Sが研削加工されて円錐状の曲面が形成される(図6(b)参照)。
【0028】
(第2の変形例)
次に、第2の変形例に係るノズル10の製造方法について図面を参照しながら説明する。図7は、第2の変形例に係るノズル10の製造工程を示した図である。
【0029】
第2の変形例に係るノズル10の製造方法では、図7(a)に示すように、円盤状のダイヤモンド砥石T5を用いて、交差部A1,A3及びその周囲を研削加工により削って、窪みC1,C3を形成する。より詳細には、ダイヤモンド砥石T5は、直線L2に平行な回転軸を有する円盤状の工具である。そして、ダイヤモンド砥石T5を直線L2(図3参照)に沿って移動させる。ただし、ダイヤモンド砥石T5には面取りが施されている。これにより、吸着面Sの2つの角が削られて、ダイヤモンド砥石T5の側面に沿った円柱形状を有する窪みC1,C3が形成される。
【0030】
次に、図7(b)に示すように、円盤状のダイヤモンド砥石T6を用いて、交差部A2,A4及びその周囲を研削加工により削って、窪みC2,C4を形成する。より詳細には、ダイヤモンド砥石T6は、直線L1に平行な回転軸を有する円盤状の工具である。そして、ダイヤモンド砥石T6を直線L1(図3参照)に沿って移動させる。ただし、ダイヤモンド砥石T5には面取りが施されている。これにより、吸着面Sの2つの角が削られて、ダイヤモンド砥石T6の側面に沿った円柱形状を有する窪みC2,C4が形成される。
【0031】
(第3の変形例)
以下に、第3の変形例に係るノズル10aについて図面を参照しながら説明する。図8は、第3の変形例に係るノズル10aの外観斜視図である。図9は、図8のノズル10aを平面視した図である。
【0032】
図8及び図9に示すように、本体12は、角柱ではなく円柱であってもよい。また、本体12の形状は角柱及び円柱に限らず、角錐や円錐等であってもよい。ただし、ノズル10,10aの小型化を図るためには、本体12は、角柱であることが望ましい。本体12が円柱である場合には、本体12が角柱である場合に比べて、図9に示すように、チップ部品20から吸着面Sがはみ出す領域が大きくなるからである。
【0033】
(第4の変形例)
以下に、第4の変形例に係るノズル10bについて図面を参照しながら説明する。図10は、ノズル10bを平面視した図である。
【0034】
図8及び図9に示すノズル10aでは、直線L1,L2は直交している。これは、チップ部品20がz軸方向から平面視したときに正方形をなしているためである。
【0035】
一方、ノズル10bでは、直線L1,L2は直交していない。これにより、ノズル10bは、z軸方向から平面視したときに、長方形状をなしているチップ部品20を吸着することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
以上のように、本発明は、ノズル及びその製造方法に有用であり、特に、短時間で製造できる点において優れている。
【符号の説明】
【0037】
A1〜A4 交差部
B 円
C1〜C4 窪み
H 吸引孔
S 吸着面
L1,L2 直線
T1〜T6 ダイヤモンド砥石
10,10a,10b ノズル
12 本体
20 チップ部品
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップ部品を吸着するための吸着面であって、凹曲面をなしている吸着面を有するノズルであって、
前記吸着面には、吸引孔が設けられており、
前記吸着面を平面視したときに、該吸着面の底部を中心とする所定の円と該底部を通過する2本の直線とが交差する交差部が、該所定の円上の該交差部以外の部分に対して窪んでいること、
を特徴とするノズル。
【請求項2】
前記吸引孔は、前記底部に設けられていること、
を特徴とする請求項1に記載のノズル。
【請求項3】
前記吸着面は、球面の一部であること、
を特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載のノズル。
【請求項4】
前記吸着面は、円錐状をなしていること、
を特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載のノズル。
【請求項5】
前記吸着面は、前記底部の法線を中心とする軸に関して回転対称な形状を成していること、
を特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載のノズル。
【請求項6】
前記所定の円の直径は、前記チップ部品の対角線の長さと略等しいこと、
を特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のノズル。
【請求項7】
前記交差部は、前記吸着面において前記2本の直線を中心軸とする2本の円柱と重なる部分が除去されることによって、窪んでいること、
を特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のノズル。
【請求項8】
チップ部品を吸着するための吸着面を有するノズルの製造方法であって、
凹曲面をなしている前記吸着面を形成する第1の工程と、
前記吸着面を平面視したときに、該吸着面の底部を中心とする所定の円と該底部を通過する2本の直線とが交差する交差部が、該所定の円上の該交差部以外の部分に対して窪むように、該交差部を加工する第2の工程と、
を備えていること、
を特徴とするノズルの製造方法。
【請求項9】
前記第2の工程では、前記2本の直線を中心軸とする円柱状の工具により、前記交差部を削ること、
を特徴とする請求項8に記載のノズルの製造方法。
【請求項10】
前記第2の工程では、前記2本の直線に沿って移動する円盤状の工具により、前記交差部を削ること、
を特徴とする請求項8に記載のノズルの製造方法。
【請求項11】
前記第1の工程では、前記底面の法線を中心軸とする回転体により、研削加工を行うこと、
を特徴とする請求項8ないし請求項10のいずれかに記載のノズルの製造方法。
【請求項1】
チップ部品を吸着するための吸着面であって、凹曲面をなしている吸着面を有するノズルであって、
前記吸着面には、吸引孔が設けられており、
前記吸着面を平面視したときに、該吸着面の底部を中心とする所定の円と該底部を通過する2本の直線とが交差する交差部が、該所定の円上の該交差部以外の部分に対して窪んでいること、
を特徴とするノズル。
【請求項2】
前記吸引孔は、前記底部に設けられていること、
を特徴とする請求項1に記載のノズル。
【請求項3】
前記吸着面は、球面の一部であること、
を特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載のノズル。
【請求項4】
前記吸着面は、円錐状をなしていること、
を特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載のノズル。
【請求項5】
前記吸着面は、前記底部の法線を中心とする軸に関して回転対称な形状を成していること、
を特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載のノズル。
【請求項6】
前記所定の円の直径は、前記チップ部品の対角線の長さと略等しいこと、
を特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のノズル。
【請求項7】
前記交差部は、前記吸着面において前記2本の直線を中心軸とする2本の円柱と重なる部分が除去されることによって、窪んでいること、
を特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のノズル。
【請求項8】
チップ部品を吸着するための吸着面を有するノズルの製造方法であって、
凹曲面をなしている前記吸着面を形成する第1の工程と、
前記吸着面を平面視したときに、該吸着面の底部を中心とする所定の円と該底部を通過する2本の直線とが交差する交差部が、該所定の円上の該交差部以外の部分に対して窪むように、該交差部を加工する第2の工程と、
を備えていること、
を特徴とするノズルの製造方法。
【請求項9】
前記第2の工程では、前記2本の直線を中心軸とする円柱状の工具により、前記交差部を削ること、
を特徴とする請求項8に記載のノズルの製造方法。
【請求項10】
前記第2の工程では、前記2本の直線に沿って移動する円盤状の工具により、前記交差部を削ること、
を特徴とする請求項8に記載のノズルの製造方法。
【請求項11】
前記第1の工程では、前記底面の法線を中心軸とする回転体により、研削加工を行うこと、
を特徴とする請求項8ないし請求項10のいずれかに記載のノズルの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−169324(P2012−169324A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26835(P2011−26835)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】
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