説明

バスバー、このバスバーが搭載されるプリント基板及びこのプリント基板を備える自動車用電装部品

【課題】ハンダ付けを良好に行うことができ、電気的接続の信頼性を向上させるとともに、低コストで製造できるバスバーを提供する。
【解決手段】ジャンパーバスバー10は、導電体11と、導電体11の両端に配置され、それぞれがプリント基板のスルーホールとハンダによって電気的に接続される2つの接続端子12と、を備える。また、ジャンパーバスバー10は、2つの接続端子12の間に配置され、接続端子12の位置を固定するためにプリント基板に圧入される保持端子13を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板に搭載されるバスバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車において、ランプの点灯や、モータやソレノイド等のアクチュエータと呼ばれる駆動部品等の動作を制御するためには、数A以上の電流を取り扱う必要がある。近年、自動車への電装部品の搭載点数は増加傾向にあり、このような大電流を扱って電気的負荷を様々な条件に合わせて制御する制御ユニットにおいて、負荷の数の増大と同時に、小型化、発熱密度の増加及び回路密度の増加等が求められていた。
【0003】
電装部品の増加に応じて回路数を増やす方法として、高性能な基板(金属板等をプリント基板に挟み込んで大電流を扱えるようにしたメタルコア基板等)を用いる方法が考えられる。しかし、このような高性能な基板は、コスト高の原因となってしまう。そこで、大電流を扱える回路数を低コストで増加させる手段として、ジャンパーと呼ばれる補助回路によって回路数を増加させる方法がある。ジャンパーとしては、ワイヤを使う構成のものや、バスバーと呼ばれる金属板をプレス加工して形成された導電体によって回路を構成するもの等が知られている。特許文献1では、バスバーによってプリント基板の2点間を電気的に接続する構成が開示されている。
【特許文献1】特開2001−168487号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
大電流回路のジャンパーとしてワイヤを用いた場合、発熱の問題を引き起こし、ショート時に回路が損傷し機能不全に陥るおそれがある。そのため、特許文献1に示すような比較的容易に回路断面を増加させることのできるバスバーを補助回路として用いることが多い。しかし、特許文献1のような構成のバスバーは、バスバーを折り曲げる等して応力緩衝部を設けなければ、金属板で構成されるバスバーが寒暖の差によって伸縮し、金属板を固定しているハンダに繰返し応力が掛かり、ハンダにクラックが発生し易く、このクラックによって機能不全に陥るおそれがあった。
【0005】
また、ジャンパーのような補助回路は、接続端子をクリンチして(曲げて)基板に固定させる方法が一般的であるが、ジャンパーを自立させる取付作業中にスルーホールのメッキを傷つけるおそれもあった。また、スルーホールに対して接続端子の位置が偏った状態でハンダが充填された場合、接続端子の偏りがボイドの発生やハンダ上がりの不良の原因となってしまう。
【0006】
また、昨今の環境負荷物質規制のトレンドとして、鉛フリーハンダを用いてハンダ付けを行うことが求められている。しかし、すず鉛共晶ハンダに比べて鉛フリーハンダは、ハンダの濡れ性が悪いものが多く、粘度も高いため、スルーホールにハンダを良好に充填させることが難しかった。また、従来のハンダに比べて鉛フリーハンダは融点が高いため、他の部材への熱による負荷も大きかった。従って、スルーホールに充填されるハンダ部分の加熱をできるだけ効率的に行う必要があった。更に、鉛フリーハンダは従来のすず鉛共晶ハンダに比べてヤング率が高く、寒暖の差によってハンダ部分に掛かる応力が高くなり、クラックが発生し易かった。
【0007】
本発明は以上の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ハンダ付けを良好に行って電気的接続の信頼性を向上させるとともに、低コストで製造できるバスバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0009】
本発明の第1の観点によれば、プリント基板に搭載されるバスバーにおいて、以下の構成が提供される。即ち、バスバーは、導電体と、前記導電体の両端に配置され、それぞれが前記プリント基板のスルーホールとハンダによって電気的に接続される2つの接続端子と、を備える。また、バスバーは、2つの前記接続端子の間に少なくとも1つ配置され、前記接続端子の位置を固定するために前記プリント基板に圧入される保持端子を備える。
【0010】
これにより、保持端子によってスルーホールに対する接続端子の位置を容易に固定することができる。従って、プリント基板にバスバーを取り付ける際の取付作業を効率的に行うことができるとともに、接続端子の位置が安定するのでスルーホールへのハンダの充填を良好に行うことができる。また、ハンダ付けの際に保持端子からの熱がバスバーに伝導するので、バスバーの温度を効果的に上昇させることができ、接続端子とスルーホールを接続するハンダ付け部分のボイドを防止するとともに、ハンダ上がりが良好になる。以上に示すようにハンダ付けを良好に行うことができるので、接続端子とプリント基板との電気的接続の信頼性が高いバスバーを提供することができる。
【0011】
前記のバスバーにおいては、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記保持端子は、前記導電体からの突出方向に対して垂直な面で切断したときの断面形状が多角形となるように形成されている。前記プリント基板には、前記保持端子を差し込むための保持孔が形成されている。前記保持端子を前記保持孔に差し込んだ状態では、前記多角形の頂点部分が前記保持孔に対して内接する又は食い込む。
【0012】
これにより、保持端子の頂点部分が保持孔に内接する又は食い込むことによって、保持端子の頂点部分に強い摩擦力が生じる。これによって、保持端子の位置が保持孔に対してズレたり、保持孔から保持端子が抜けたりすることを防止できる。従って、接続端子の位置を確実に固定する機構を簡易に実現できる。
【0013】
前記のバスバーにおいては、以下のように構成されることが好ましい。即ち、バスバーは、前記導電体から前記プリント基板に近づく向きに突出するスペーサ部を備える。前記スペーサ部の一端は、前記接続端子を固定する固定状態では、前記プリント基板に接触する。
【0014】
これにより、バスバーをプリント基板に固定した状態では、導電体から突出するスペーサ部がプリント基板に接触するので、導電体とプリント基板との間に隙間が形成される。従って、バスバーとプリント基板上の回路配線との絶縁状態を確保する機構を簡易に実現できる。なお、このスペーサ部は、導電体と保持端子との間や、導電体と接続端子との間に少なくとも1つ以上配置される構成等が考えられる。
【0015】
前記のバスバーにおいては、銅を主成分とする0.3mm以上の厚さの板状部材から、前記導電体、前記接続端子及び前記保持端子が一体的に形成されることが好ましい。
【0016】
これにより、銅を主成分とする導電体を板状に形成できるので、放熱性を向上させることができるとともに、断面積を大きくとることができ、大電流回路を構成することができる。また、導電体が板状であっても、保持端子が圧入されることによってバスバーを固定する構成なので、プリント基板にバスバーを容易に自立させることができる。更に、折曲げ加工等の工程を経ることなくバスバーの製造を簡易に行うことができるので、生産性を効果的に向上させることができる。
【0017】
本発明の第2の観点によれば、前記バスバーが搭載され、当該バスバーの前記接続端子がハンダによって電気的に接続されたプリント基板が提供される。
【0018】
これにより、低コストで回路数を増加させることができ、大電流回路を製造する場合でも、コストを抑制することができる。また、電気的接続の信頼性が高いバスバーを用いるので、故障の発生を抑制できる。
【0019】
本発明の第3の観点によれば、前記プリント基板を備える自動車用電装部品が提供される。
【0020】
これにより、低コストで電気的接続の信頼性を向上させることができる自動車用電装部品を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。図6は、本発明のジャンパーバスバーを搭載した自動車用電装部品用のプリント基板90の様子を示した斜視図である。図6に示すように、本実施形態のプリント基板90には、複数のジャンパーバスバー10が搭載されている。このプリント基板90は、自動車用電装部品に用いられるものであり、数A以上の電流を流すことが可能に構成されている。このジャンパーバスバー10は、プリント基板90の2点間を接続する補助回路として、プリント基板90の適宜の場所に配置されている。
【0022】
次に、図1及び図2を参照してジャンパーバスバー10の第1実施形態について説明する。図1(a)は、第1実施形態のジャンパーバスバー10の正面図であり、図1(b)は、ジャンパーバスバー10の側面図である。図2(a)は、プリント基板90に取り付けられた状態のジャンパーバスバー10と、プリント基板90の断面の様子と、を示した正面図である。図2(b)は、図2(a)のA−A線で切断したときのジャンパーバスバー10の断面矢視図である。図2(c)は、図2(b)の保持端子13と保持孔15との様子を示す拡大断面図である。
【0023】
図1に示すように、第1実施形態のジャンパーバスバー10は、導電体11と、2本の接続端子12と、保持端子13と、を備え、これらの導電体11、接続端子12及び保持端子13は一体的に形成されている。導電体11は矩形の平板状に形成されており、この導電体11の下側端部の両側から接続端子12が下方向に細長く延びている。保持端子13は、この2本の接続端子12の間であって、導電体11の下側端部の中央から下方向に細長く延びている。接続端子12及び保持端子13は平行な向きに配置されるとともに、保持端子13は接続端子12よりも若干短い長さに形成される。
【0024】
接続端子12は、プリント基板90に形成されるスルーホール14に差し込まれた状態でハンダ付けされることによって、ジャンパーバスバー10とプリント基板90との電気的接続を担うものである。また、接続端子12は、断面形状が四角形となるように角柱状に形成されており、その先端部分は先細状となっている。一方、接続端子12が差し込まれるプリント基板90のスルーホール14は、図2(b)に示すように、接続端子12を挿入した状態では、接続端子12とスルーホール14が接触しないように、接続端子12に対して大き目に形成されている。また、接続端子12と導電体11との接続部分近傍には、正面視において、接続端子12側から導電体11に近づくに従って接続端子12の内側方向に広がっていくテーパ部16が形成されている。
【0025】
保持端子13は、プリント基板90に形成される保持孔15に圧入されることによって、ジャンパーバスバー10を機械的に保持するためのものであり、プリント基板90に対してジャンパーバスバー10を自立させることが可能に構成されている。この保持端子13は、断面形状が長方形となる角柱状に形成されており、その先端部分は先細状となっている。一方、保持端子13が圧入される保持孔15は貫通状の孔であり、その輪郭が、保持端子13の断面形状である前記長方形の対角線の長さより若干小さい直径の円で形成されている。
【0026】
また、導電体11と保持端子13との接続部分近傍には、正面視において、導電体11から保持端子13の先端に近づく向き(プリント基板90に近づく向き)に突出するテーパ部(スペーサ部)17が形成されている。このテーパ部17は、保持端子13に近づくに従って狭まるテーパ状に形成されている。このテーパ部17がスペーサの役割を果たし、プリント基板90上面に対面する導電体11の下面と当該プリント基板90上面との間に隙間が形成される。
【0027】
この構成で、ジャンパーバスバー10をプリント基板90に自立させる。具体的には、図2(b)に示すように、接続端子12をスルーホール14に挿入し、保持端子13を保持孔15に圧入する。前述したように、接続端子12及び保持端子13の先端部は先細状に形成されているので、スルーホール14及び保持孔15への挿入及び圧入をスムーズに行うことができる。図2(c)に示すように、保持端子13が保持孔15に圧入されている状態では、保持孔15の縁部分に対して保持端子13の角部分が食い込む形となる。そして、プリント基板90の上面側又は保持孔15の縁部分がテーパ部17に接触するまで、保持端子13を保持孔15に更に差し込む。テーパ部17の端部がプリント基板90又は保持孔15の縁部分に接触したところで、保持端子13は挿入方向にそれ以上進まなくなり、プリント基板90に対して導電体11が適切な位置で位置決めされる。このとき、接続端子12及び保持端子13はスルーホール14及び保持孔15をそれぞれ貫通し、その先端はプリント基板90の反対側の面(後述のハンダフロー工程におけるハンダ面)に突出している。
【0028】
また、前述したように、導電体11と接続端子12との両側それぞれの接続部分近傍にもテーパ部16が形成されている。このテーパ部16がプリント基板90又はスルーホール14の縁部分に接触することで、ジャンパーバスバー10の姿勢を傾けることなくプリント基板90に対して自立させることができる。この自立状態では、矩形の導電体11下面とプリント基板90上面との間に図2(a)に示すように隙間が形成され、プリント基板90上の回路配線との接触を防止できる。
【0029】
保持端子13を保持孔15に圧入した後は、接続端子12の位置の微調整を行う。図2(b)に示すように、接続端子12がスルーホール14内の中央部分に位置するように微調整し、スルーホール14と接続端子12との間のギャップを適切なものとする。
【0030】
このように、本発明のジャンパーバスバー10は、特別な部材を追加することなく、スルーホール14に対する接続端子12の位置を適切に固定した状態で、プリント基板90に対してジャンパーバスバー10を自立させることができる。
【0031】
次に、プリント基板90下方からフローハンダ実装を行う。なお、第1実施形態では、接続端子12とスルーホール14を接続するのに用いるハンダとして、鉛フリーハンダを使用する。前述したように、接続端子12がスルーホール14の中央部分に適切なギャップで保持されているので、ハンダの表面張力によるギャップ間への浸透が十分に行われる。なお、保持端子13を挿入する保持孔15にはメッキがされており、このメッキ部分にハンダが付着する(一方、仮に保持孔15にメッキがなされていない場合、ハンダは付かない)。保持孔15に対してメッキを行うか否かは、事情に応じて適宜選択することができる。
【0032】
フローハンダ実装時において、プリント基板90の下面から突出している接続端子12及び保持端子13がハンダ槽に接触することにより、導電体11に熱が伝導される。本実施形態では、接続端子12だけではなく保持端子13からも導電体11に熱が伝導するので、ジャンパーバスバー10の温度を効果的に高くすることができる。ジャンパーバスバー10が十分に予熱されることによって接続端子12の温度も上昇し易くなり、接続端子12とスルーホール14付近のハンダの温度も十分に上昇させることができる。従って、接続端子12とスルーホール14とを接続するハンダの内部にボイドが発生するのを防止するとともに、プリント基板90上面までハンダを吸い上げることができる。これによって、接続端子12とプリント基板90のランド部、スルーホール14とのハンダを介した均一で欠陥のない接続が可能となり、電気的接続の信頼性が向上する。
【0033】
ここで、ジャンパーバスバーにおいては一般に、寒暖の差等によるバスバー部の伸縮によるハンダ付け部への繰返し応力や、振動によって発生する繰返し応力によって、ハンダ部分のクラックが生じ易い。この点、本実施形態では接続端子12とスルーホール14を接続するハンダ付け部分が確実に接続され、ハンダ部分のクラックが生じることを抑制できるので、電気的接続の不良の発生を防止できる。
【0034】
なお、鉛フリーハンダの融点は約230℃から240℃の範囲に存在し、従来のすず鉛共晶ハンダの融点である約180℃よりも高くなっている。従来の構成では、融点の高いハンダを使用する場合、接続端子とスルーホールとの接続部分のハンダの温度が十分に上昇しないことがあり、ボイドが発生するおそれがあった。一方で、ボイドの発生を避けるために加熱温度を上げた場合、他の部品への熱による負荷が大きくなってしまう。しかしながら、本発明のジャンパーバスバー10は、鉛フリーハンダを使用した場合でも保持端子13からジャンパーバスバー10に熱が伝導するので、ジャンパーバスバー10の温度を効率的に上げることができる。従って、鉛フリーハンダのような融点の高いハンダであってもスルーホール14に良好にハンダを充填させることができるとともに、他の部品へのダメージの影響を抑制できる。
【0035】
以上に示した本発明のジャンパーバスバーは、以下の方法によって製造される。即ち、銅を主成分とし、厚さが0.3mm以上である金属板を用意する。そして、プレス金型によって前記金属板を上記実施形態のジャンパーバスバーの形に打ち抜く。これによって、容易かつ低コストで板状の導電体、接続端子、保持端子、テーパ部を一体的に形成することができる。また、1つの大きな金属板から複数のジャンバーバスバーを一括して打ち抜いたり、打抜きを高速で行ったりすることもできるので、ジャンパーバスバーの生産を効率良く行うことができる。
【0036】
以上に示したように、第1実施形態のジャンパーバスバー10は、以下のように構成される。即ち、ジャンパーバスバー10は、導電体11と、導電体11の両端に配置され、それぞれがプリント基板90のスルーホール14とハンダによって電気的に接続される2つの接続端子12と、を備える。また、ジャンパーバスバー10は、2つの接続端子12の間に配置され、接続端子12の位置を固定するためにプリント基板90に圧入される保持端子13を備える。
【0037】
これにより、保持端子13によってスルーホール14に対する接続端子12の位置を容易に固定することができる。従って、プリント基板90にジャンパーバスバー10を取り付ける際の取付作業を効率的に行うことができるとともに、接続端子12の位置が安定するのでスルーホール14へのハンダの充填を良好に行うことができる。また、ハンダ付けの際に保持端子13からの熱がジャンパーバスバー10に伝導するので、ジャンパーバスバー10の温度を効果的に上昇させることができる。従って、接続端子12とスルーホール14を接続するハンダ付け部分のボイドを防止するとともに、ハンダ上がりが良好になる。以上に示すように、ハンダ付けを良好に行うことができるので、接続端子12とプリント基板90との電気的接続の信頼性が高いジャンパーバスバー10を提供することができる。
【0038】
また、第1実施形態のジャンパーバスバー10においては、以下のように構成される。保持端子13は、導電体11からの突出方向に対して垂直な面で切断したときの断面形状が長方形(多角形)となるように形成されている。プリント基板90には、保持端子13を差し込むための保持孔15が形成されている。図2(c)に示すように、保持端子13を保持孔15に差し込んだ状態では、多角形の頂点部分が保持孔15に対して食い込む。
【0039】
これにより、保持端子13の頂点部分が保持孔15に食い込むことによって、保持端子13の頂点部分に強い摩擦力が生じる。これによって、保持端子13の位置が保持孔15に対してズレたり、保持孔15から保持端子13が抜けたりすることを防止できる。従って、接続端子12の位置を確実に固定する機構を簡易に実現できる。
【0040】
また、第1実施形態のジャンパーバスバー10は、導電体11から前記プリント基板に近づく向きに突出するテーパ部17(スペーサ部)を備える。テーパ部17の一端は、接続端子12を固定する固定状態では、プリント基板90に接触する。
【0041】
これにより、ジャンパーバスバー10をプリント基板90に固定した状態では、導電体11から突出するテーパ部17がプリント基板90に接触するので、導電体11とプリント基板90との間に隙間が形成される。従って、ジャンパーバスバー10とプリント基板90上の回路配線との絶縁状態を確保する機構を簡易に実現できる。
【0042】
また、第1実施形態のジャンパーバスバー10においては、銅を主成分とする0.3mm以上の厚さを有する板状部材をプレス金型で打ち抜くことによって、導電体11、接続端子12及び保持端子13が一体的に形成される。
【0043】
これにより、銅を主成分とする導電体11を板状に形成できるので、放熱性を向上させることができるとともに、断面積を大きくとることができ、大電流回路を構成することができる。また、導電体11が板状であっても、保持端子13が圧入されることによってジャンパーバスバー10を固定する構成なので、プリント基板90にジャンパーバスバー10を容易に自立させることができる。更に、折曲げ加工等の工程を経ることなくジャンパーバスバー10の製造を簡易に行うことができるので、生産性を効果的に向上させることができる。
【0044】
また、第1実施形態のプリント基板90には、前記ジャンパーバスバー10が搭載され、当該ジャンパーバスバー10の接続端子12がハンダによって電気的に当該プリント基板90に接続されている。
【0045】
これにより、低コストで回路数を増加させることができ、大電流回路を製造する場合でもコストを抑制することができる。また、電気的接続の信頼性が高いジャンパーバスバー10を用いるので、故障の発生を抑制できる。
【0046】
また、前記プリント基板90は、自動車用電装部品用のものとして構成されている。
【0047】
このプリント基板90を備えた自動車用電装部品は、低コストで電気的接続の信頼性を向上させることができ、振動や温度環境の変化が激しい環境で使用するのに好適である。特に、自動車用電装部品では大電流回路を形成できる補助回路を限られたスペースに構成しなければならないので、本発明のジャンパーバスバー10を適用することで大きな効果を得ることができる。
【0048】
なお、ジャンパーバスバーの長さは、回路基板上の回路構成により決定される。ハンダやプリント基板90の物性値によって、ジャンパーバスバーの幅、厚さ、長さ等を最適化することが望ましい。例えば、ジャンパーバスバーの長さを変更する場合等は、線膨張係数を他の部品との関係で考慮して長さを決定する。回路基板上の回路構成等の事情により比較的長い距離を通電させなければならない場合、導電体11の長さをその距離に応じて長く構成することがある。以下にこの場合のジャンパーバスバー20の一例を示した第2実施形態について説明する。
【0049】
図3を参照して第2実施形態のジャンパーバスバー20について説明する。図3は、第2実施形態のジャンパーバスバー20の様子を示した正面図である。なお、以下の実施形態において、前記第1実施形態と同一及び類似する構成には、図面に同一の符号を付して説明を省略する場合がある。
【0050】
図3に示すように、第2実施形態のジャンパーバスバー20は、導電体21と、両側に配置される2本の接続端子22と、2本の保持端子23と、を備える。そして、これらの導電体21、接続端子22及び保持端子23は一体的に形成されている。
【0051】
導電体21は、正面視において細長の長方形状に形成されており、この導電体21の下部両側から接続端子22が細長く延びている。保持端子23は、この2本の接続端子22の間に2本配置されている。また、第1実施形態と同様に、接続端子22と導電体21の接続部分にはテーパ部16が形成されており、保持端子23と導電体21の接続部分にはテーパ部17が形成されている。プリント基板90のジャンパーバスバー20を搭載する場所には、両側の接続端子22に対応する2つのスルーホール14と、保持端子23に対応する2つの保持孔15が形成されている。
【0052】
この構成で、2本の保持端子23を、プリント基板90に形成される2つの保持孔15に圧入することによって、接続端子22の位置を固定しつつ、ジャンパーバスバー20をプリント基板90に対して自立させることができる。2本の保持端子23によってジャンパーバスバー20の位置が決められるので、保持端子23を保持孔15に差し込んだ後に、接続端子22をスルーホール14の中央に位置するようにギャップ間の微調整を行う作業を省略することができる。
【0053】
ジャンパーバスバー20をプリント基板90に対して自立させた後、フローハンダ実装を行う。第2実施形態のジャンパーバスバー20は、2本の保持端子23から熱が伝導されるので、ジャンパーバスバー20に伝導する熱量が増える。従って、ハンダ実装時のジャンパーバスバー20の温度を効果的に高くすることができるので、第2実施形態のようにジャンパーバスバー20が細長く(導電体21の体積が大きく)形成されているような場合であっても、接続端子22が差し込まれるスルーホール14に充填されるハンダのボイドを防止しつつ、ハンダ上がりを良好にすることができる。
【0054】
また、回路の構成上、ジャンパーバスバーを通過させる電流の容量に応じて、導電体を大きく構成しなければならない場合がある。以下にこの場合のジャンパーバスバー30の一例を示す第3実施形態について説明する。
【0055】
図4を参照して第3実施形態について説明する。図4は、第3実施形態のジャンパーバスバー30の様子を示した正面図である。図4に示すように、第3実施形態のジャンパーバスバー30は、導電体31と、2本の接続端子32と、接続端子32の間に配置される保持端子33と、を備え、これらの導電体31、接続端子32及び保持端子33は一体的に形成されている。
【0056】
第3実施形態の導電体31は、第1実施形態の導電体11に比べて背丈が大きくなっており、このために体積が大きくなるように構成されている。また、保持端子33と導電体31との接続部分にはテーパ部17が形成されている。一方、接続端子32と導電体31は直接接続されており、第1実施形態及び第2実施形態の構成と異なりテーパ部は省略されている。
【0057】
第3実施形態のジャンパーバスバー30のように導電体31の体積が大きい構成の場合、従来のジャンパーバスバーの構成では、ジャンパーバスバーの温度を十分に上昇させることができない場合があった。しかし、本発明のジャンパーバスバーは、前述したように、保持端子33からも導電体31に熱が伝導するので、スルーホールに充填されるハンダ部分の加熱を十分に行うことができる。特に、鉛フリーハンダのような融点が高いハンダを用いて、体積の大きいジャンパーバスバーにハンダ付けを行う場合、本発明のジャンパーバスバーは効果的に温度を向上させることができ、好適である。このように、通過する電流の容量の関係で導電体の構成を大きくしなければならない場合でも、本発明のジャンパーバスバーを用いることによって、フローハンダ設備の能力に依存しなくても、スルーホールに充填するハンダをプリント基板の上面まで上がるようにすることができる。
【0058】
また、以上に説明した第1実施形態、第2実施形態では、導電体と接続端子の接続部分及び導電体と保持端子の接続部分の何れもがテーパ部を有するように構成されているが、第3実施形態では、導電体と保持端子の接続部分のみがテーパ部17を有する構成である。この構成によっても、テーパ部17によって、導電体31とプリント基板90との間に隙間を形成することができる。このようにテーパ部の構成は事情に応じて省略することも可能である。
【0059】
更に、端子と導電体の接続部分に形成されるスペーサ部の構成は、テーパ状に限定されるわけではない。次に図5を参照して、端子と導電体の接続部分を段差状に構成した第4実施形態について説明する。図5は、第4実施形態のジャンパーバスバーの様子を示した正面図である。なお、ジャンパーバスバー40が備える導電体41、接続端子42及び保持端子43の構成は第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0060】
図5に示すように、第4実施形態のジャンパーバスバー40には、導電体41と保持端子43の接続部分近傍に矩形状の段差部(スペーサ部)47が設けられている。第4実施形態のジャンパーバスバー40をプリント基板90に対して自立させる場合は、段差部47の一端がプリント基板90に接触するまで、保持端子43を保持孔15に挿入する。段差部47がプリント基板90の上面に接触することによって、保持端子43がそれ以上挿入方向に進まなくなり、ジャンパーバスバー40の位置が決まる。このように段差部47がスペーサとして機能するので、導電体41とプリント基板90との間に隙間が形成され、プリント基板90上の回路配線と導電体41との間を非接触とすることができる。また、第4実施形態では、導電体41と接続端子42の接続部分近傍にも同様の段差部(スペーサ部)46が設けられており、この段差部46によって、プリント基板90に対してジャンパーバスバー40の姿勢が傾くことを防止できる。
【0061】
以上に本発明の好適な実施形態を説明したが、上記の構成は更に以下のように変更することができる。
【0062】
保持端子の数は上記実施形態の構成に限定されるわけではなく、事情に応じて適宜追加することができる。保持端子の数を増加させることによって、保持端子から導電体に導入される熱量が増えるので、ジャンパーバスバーの加熱をより効果的に行うことができる。
【0063】
また、上記実施形態では、保持端子の断面形状が長方形で形成され、スルーホールの輪郭は円状に形成されているが、保持端子及びスルーホールの構成は適宜変更することができる。例えば、保持孔の形状を楕円形状とし、そこに保持端子を圧入することにより、ジャンパーバスバーをプリント基板90に対して自立させる構成に変更することができる。また、保持端子の断面形状を長方形以外の三角形や五角形等の多角形に変更することができる。この場合、多角形の頂点部分がプリント基板の保持孔に内接又は、保持孔の縁部分に食い込むように、保持端子の大きさ及び保持孔の径等を適宜設定しておく。
【0064】
また、ジャンパーバスバーの導電体下部に絶縁体を覆い被せる構成とすることもできる。これによって、ジャンパーバスバーとプリント基板上の回路配線との絶縁状態を一層確実に保つことができる。これにより、必要に応じてスペーサ部或いは段差部を省略することもできる。
【0065】
また、上記実施形態のジャンパーバスバーが放熱用のフィンを備える構成とすることもできる。これによって、ジャンパーバスバーの放熱性を更に向上させることができる。
【0066】
また、上記実施形態の接続端子及び保持端子の先端部は先細状に形成されているが、この構成に限定されない。スルーホール及び保持孔に差込可能な形状である限り、先端部の構成は事情に応じて適宜変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】第1実施形態のジャンパーバスバーの正面図及び側面図。
【図2】プリント基板に取り付けられた状態の第1実施形態のジャンパーバスバーを示した正面図、断面矢視図及び拡大断面図。
【図3】第2実施形態のジャンパーバスバーの様子を示した正面図。
【図4】第3実施形態のジャンパーバスバーの様子を示した正面図。
【図5】第4実施形態のジャンパーバスバーの様子を示した正面図。
【図6】本発明のジャンパーバスバーを搭載した自動車用電装部品用のプリント基板の様子を示した斜視図。
【符号の説明】
【0068】
10 ジャンパーバスバー
11 導電体
12 接続端子
13 保持端子
14 スルーホール
15 保持孔
17 テーパ部(スペーサ部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント基板に搭載されるバスバーにおいて、
導電体と、
前記導電体の両端に配置され、それぞれが前記プリント基板のスルーホールとハンダによって電気的に接続される2つの接続端子と、
2つの前記接続端子の間に少なくとも1つ配置され、前記接続端子の位置を固定するために前記プリント基板に圧入される保持端子と、
を備えることを特徴とするバスバー。
【請求項2】
請求項1に記載のバスバーであって、
前記保持端子は、前記導電体からの突出方向に対して垂直な面で切断したときの断面形状が多角形となるように形成されており、
前記プリント基板には、前記保持端子を差し込むための保持孔が形成されており、
前記保持端子を前記保持孔に差し込んだ状態では、前記多角形の頂点部分が前記保持孔に対して内接する又は食い込むことを特徴とするバスバー。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のバスバーであって、
前記導電体から前記プリント基板に近づく向きに突出するスペーサ部を備え、
前記スペーサ部の一端は、前記接続端子を固定する固定状態では、前記プリント基板に接触することを特徴とするバスバー。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載のバスバーであって、
銅を主成分とする0.3mm以上の厚さの板状部材から、前記導電体、前記接続端子及び前記保持端子が一体的に形成されることを特徴とするバスバー。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載のバスバーが搭載されるプリント基板であって、当該バスバーの前記接続端子がハンダによって電気的に接続されたことを特徴とするプリント基板。
【請求項6】
請求項5に記載のプリント基板を備えることを特徴とする自動車用電装部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−62249(P2010−62249A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−224748(P2008−224748)
【出願日】平成20年9月2日(2008.9.2)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
【Fターム(参考)】