説明

バッテリスタックの固定構造

【課題】簡易な構成で、バッテリスタックの振動を効果的に抑制するバッテリスタックの固定構造、を提供する。
【解決手段】バッテリスタックの固定構造は、バッテリスタック21と、バッテリスタック21の周囲を取り囲むように設けられるケースフレーム31とを備える。ケースフレーム31は、互いに一体に連結される上フレーム32および下フレーム33を有する。ケースフレーム31は、上フレーム32とバッテリスタック21との間に設けられ、バッテリスタック21の頂部を下フレーム33に向けて押し付ける固定用フレーム41をさらに有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般的には、バッテリスタックの固定構造に関し、より特定的には、走行用の電源として車両に搭載されるバッテリスタックの固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のバッテリスタックの固定構造に関して、たとえば、特開平5−82157号公報には、車両の発進、停止、走行に伴う揺れ、振動の影響を緩和して、十分な耐振効果を得ることを目的とした車両搭載型の燃料電池の支持構造が開示されている(特許文献1)。特許文献1に開示された燃料電池の支持構造においては、セルスタック、上下締め付け板、マニホールドの組み立て体からなる燃料電池に対して、その周域に補強枠が構築されている。燃料電池の上締め付け板は、補強枠によって拘束支持されている。
【0003】
また、特開2006−236826号公報には、ボルト等による組み付け工程を少なくすることにより、締結作業効率を向上させることを目的とした電池パックが開示されている(特許文献2)。特許文献2に開示された電池パックにおいては、電池集合体の両側に、側方に向けて張り出す電池モジュールフランジ部が設けられている。この電池モジュールフランジ部は、アッパケースフランジ部とロアケースフランジ部との間に挟み込まれ、ボルトにより同時締結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−82157号公報
【特許文献2】特開2006−236826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の特許文献に開示されるように、走行用の電源として、車両にバッテリスタックが搭載される構造が知られている。しかしながら、車両本体に対するバッテリスタックの固定の強度が十分でない場合、車両の走行に伴ってバッテリスタックが大きく振動するおそれが生じる。このバッテリスタックの振動を抑えるために強固な支持ブラケットを使用する方法も考えられるが、固定ブラケットが大型、大重量となり、車両への搭載上、好ましくない。
【0006】
そこでこの発明の目的は、上記の課題を解決することであり、簡易な構成で、バッテリスタックの振動を効果的に抑制するバッテリスタックの固定構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の1つの局面に従ったバッテリスタックの固定構造は、車両に搭載されるバッテリスタックの固定構造である。バッテリスタックの固定構造は、頂部を有するバッテリスタックと、バッテリスタックの周囲を取り囲むように設けられるケースフレームとを備える。ケースフレームは、互いに一体に連結される上枠体および下枠体を有する。ケースフレームは、上枠体とバッテリスタックとの間に設けられ、頂部を下枠体に向けて押し付ける固定用枠体をさらに有する。
【0008】
このように構成されたバッテリスタックの固定構造によれば、ケースフレームに上枠体とバッテリスタックとの間に配置される固定用枠体を設けることにより、バッテリスタックを固定用枠体と下枠体との間で強固に支持する。これにより、簡易な構成で、バッテリスタックの振動を効果的に抑制することができる。
【0009】
この発明の別の局面に従ったバッテリスタックの固定構造は、車両に搭載されるバッテリスタックの固定構造である。バッテリスタックの固定構造は、側部を有するバッテリスタックと、バッテリスタックを収容するバッテリケースと、締結部材とを備える。バッテリケースは、互いに組み合わされるアッパケースおよびロアケースを有する。締結部材は、側部に対向する位置に設けられ、アッパケースとロアケースとを互いに締結する。バッテリスタックは、締結部材による締結力により、アッパケースとロアケースとの間に挟持された状態で固定される。
【0010】
このように構成されたバッテリスタックの固定構造によれば、アッパケースおよびロアケースを互いに締結する締結部材の締結力を利用して、バッテリスタックをアッパケースとロアケースとの間で強固に支持する。これにより、簡易な構成で、バッテリスタックの振動を効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上に説明したように、この発明に従えば、簡易な構成で、バッテリスタックの振動を効果的に抑制するバッテリスタックの固定構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施の形態1におけるバッテリスタックの固定構造が適用されるバッテリパックを模式的に表わす斜視図である。
【図2】図1中の矢印IIに示す方向から見たバッテリパックを示す側面図である。
【図3】図1中のIII−III線上に沿ったバッテリパックを示す断面図である。
【図4】図2中のバッテリスタックに作用する力を模式的に表わした断面図である。
【図5】この発明の実施の形態2におけるバッテリスタックの固定構造を示す斜視図である。
【図6】図5中のVI−VI線上に沿ったバッテリスタックを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0014】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1におけるバッテリスタックの固定構造が適用されるバッテリパックを模式的に表わす斜視図である。図2は、図1中の矢印IIに示す方向から見たバッテリパックを示す側面図である。
【0015】
図1および図2を参照して、バッテリパック10は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関と、充放電可能なバッテリ(2次電池)から電力供給されるモータとを動力源とするハイブリッド自動車に搭載されている。
【0016】
まず、バッテリパック10の全体構成について説明すると、バッテリパック10は、複数のバッテリスタック21A,21B,21C(以下、特に区別しない場合は、バッテリスタック21という)を有する。各バッテリスタック21は、矢印101に示す一方向(以下、バッテリセル22の積層方向という)に積層された複数のバッテリセル22から構成されている。
【0017】
バッテリセル22は、略直方体形状の薄板形状を有する。複数のバッテリセル22は、その外観をなす側面のうちで最も大きい面積を有する側面が隣り合うバッテリセル22間で互いに向かい合わせとなるように、積層されている。複数のバッテリセル22は、その積層方向に延び、両端で固定支持された拘束部材(金属製のベルトやバーなど)により、一体に拘束されている。複数のバッテリセル22は、互いに電気的に直列に接続されている。
【0018】
なお、バッテリセル22は、充放電可能な2次電池であれば特に限定されず、たとえば、ニッケル水素電池であってもよいし、リチウムイオン電池であってもよい。
【0019】
バッテリスタック21A、バッテリスタック21Bおよびバッテリスタック21Cは、バッテリセル22の積層方向に直交する方向に、挙げた順に並ぶように配置されている。バッテリスタック21は、略直方体の外観を有する。
【0020】
図3は、図1中のIII−III線上に沿ったバッテリパックを示す断面図である。
図1から図3を参照して、バッテリセル22は、樹脂製のバッテリホルダ23によって覆われている。
【0021】
バッテリパック10は、ケースフレーム31をさらに有する。ケースフレーム31は、バッテリスタック21の周囲を取り囲む枠体(フレーム)構造を有する。その枠体構造は、略直方体の外形を有するように形成されている。
【0022】
ケースフレーム31の形状についてより具体的に説明すると、ケースフレーム31は、互いに組み合わされることによって枠体を構成する上フレーム32、下フレーム33および側方フレーム34を有する。上フレーム32は、バッテリスタック21の上方に配置され、下フレーム33は、バッテリスタック21の下方に配置されている。上フレーム32と下フレーム33とは、バッテリスタック21を挟んで互いに上下方向に対向するように配置されている。側方フレーム34は、上フレーム32と下フレーム33との間で、バッテリスタック21の側面に沿って延びるように形成されている。上フレーム32と下フレーム33とは、側方フレーム34によって互いに一体に連結されている。
【0023】
続いて、バッテリスタック21の固定構造について説明する。
図2を参照して、バッテリパック10は、支持ブラケット56をさらに有する。支持ブラケット56は、バッテリセル22の積層方向におけるバッテリスタック21の両端にそれぞれ設けられている。バッテリスタック21は、支持ブラケット56によってケースフレーム31に対して固定されている。
【0024】
図3を参照して、下フレーム33は、その構成部位として、梁部36を有する。梁部36は、隣接するバッテリスタック21間(すなわち、バッテリスタック21Aとバッテリスタック21Bとの間、およびバッテリスタック21Bとバッテリスタック21Cとの間)の直下に配置されている。梁部36は、バッテリセル22の積層方向に延びている。バッテリスタック21は、梁部36上に載置されている。
【0025】
ケースフレーム31は、ヒレ状部37およびフランジ部38をさらに有する。本実施の形態では、ヒレ状部37およびフランジ部38は、梁部36と一体に形成されている。
【0026】
ヒレ状部37は、梁部36から、隣接するバッテリスタック21間を通り、直線状に延伸する断面形状を有する。フランジ部38は、その直線状に延伸するヒレ状部37の先端に形成されている。ヒレ状部37およびフランジ部38は、一体となって、略T字状の断面形状を有し、バッテリセル22の積層方向に連続して延びている。
【0027】
ケースフレーム31は、固定用フレーム41をさらに有する。固定用フレーム41は、バッテリスタック21と上フレーム32との間に配置されている。固定用フレーム41は、隣接するバッテリスタック21間(すなわち、バッテリスタック21Aとバッテリスタック21Bとの間、およびバッテリスタック21Bとバッテリスタック21Cとの間)の直上に配置されている。固定用フレーム41と梁部36とは、互いに対向し、平行に延びている。固定用フレーム41は、バッテリセル22の積層方向における上フレーム32および下フレーム33と同程度の長さを有する棒状部材である。
【0028】
バッテリスタック21は、頂部26を有する。頂部26は、ケースフレーム31の内側で、上フレーム32に対向する位置に配置されている。
【0029】
本実施の形態では、支持ブラケット56による固定に加えて、固定用フレーム41がバッテリスタック21の頂部26を下フレーム33に向けて押し付ける力を利用することにより、バッテリスタック21がケースフレーム31に対して固定されている。
【0030】
より具体的に説明すると、固定用フレーム41は、バッテリスタック21の頂部26上に設けられている。フランジ部38には、固定用フレーム41に向けて延びるスタッドボルト51が溶接固定されている。固定用フレーム41は、スタッドボルト51と、スタッドボルト51に螺合されるナット52とを用いて、下フレーム33に対して締結されている。この際、固定用フレーム41を梁部36に向けて引っ張る力が生じ、このスタッドボルト51およびナット52による締結力によって、固定用フレーム41は、バッテリスタック21の頂部26を梁部36に向けて押し付けている。
【0031】
図4は、図2中のバッテリスタックに作用する力を模式的に表わした断面図である。図4を参照して、本実施の形態におけるバッテリスタック21の固定構造においては、固定用フレーム41をバッテリスタック21の頂部26に当接する位置に配置し、その固定用フレーム41にスタッドボルト51による締結力を作用させる。これにより、バッテリスタック21は、固定用フレーム41と梁部36との間に支持されることとなる。結果、支持ブラケット56による固定と相まって、バッテリスタック21をケースフレーム31に対して強固に固定することができる。
【0032】
以上に説明した、この発明の実施の形態1におけるバッテリスタックの固定構造の構成についてまとめて説明すると、バッテリスタックの固定構造は、頂部26を有するバッテリスタック21と、バッテリスタック21の周囲を取り囲むように設けられるケースフレーム31とを備える。ケースフレーム31は、互いに一体に連結される上枠体としての上フレーム32および下枠体としての下フレーム33を有する。ケースフレーム31は、上フレーム32とバッテリスタック21との間に設けられ、頂部26を下フレーム33に向けて押し付ける固定用枠体としての固定用フレーム41をさらに有する。
【0033】
このように構成された、この発明の実施の形態1におけるバッテリスタックの固定構造によれば、ケースフレーム31の固定用フレーム41にバッテリスタック21を固定する機能を持たせることによって、ハイブリッド自動車の振動や衝撃がバッテリパック10に入力される場合であっても、バッテリスタック21が上下に振動することを効果的に抑制できる。また、固定用フレーム41によるバッテリスタック21の固定によって、支持ブラケット56に対する負荷が減るため、支持ブラケット56が大型、大重量となることを防止できる。
【0034】
(実施の形態2)
図5は、この発明の実施の形態2におけるバッテリスタックの固定構造を示す斜視図である。図6は、図5中のVI−VI線上に沿ったバッテリスタックを示す断面図である。本実施の形態におけるバッテリスタックの固定構造は、実施の形態1におけるバッテリスタックの固定構造と比較して、基本的には同様の構造を備える。以下、重複する構造についてはその説明を繰り返さない。
【0035】
図5および図6を参照して、本実施の形態におけるバッテリパック60は、実施の形態1におけるケースフレーム31に替えて、バッテリケース61を有する。バッテリケース61は、複数のバッテリスタック21(バッテリスタック21A,バッテリスタック21B,バッテリスタック21C)を収容する筐体形状を有する。
【0036】
バッテリケース61は、アッパケース62およびロアケース63が組み合わさって構成されている。アッパケース62は、バッテリスタック21の上方に配置され、ロアケース63は、バッテリスタック21の下方に配置されている。
【0037】
アッパケース62は、その構成部位として、頂部66および凹部67を有する。ロアケース63は、その構成部位として、底部68および凹部69を有する。
【0038】
頂部66は、バッテリスタック21の直上に配置されている。凹部67は、頂部66から、隣接するバッテリスタック21間の空間に凹むように形成されている。凹部67は、同一断面形状を有しながら、バッテリセル22の積層方向(図5中の矢印101に示す方向)に延びている。底部68は、バッテリスタック21の直下に配置されている。言い換えれば、バッテリスタック21は、底部68に載置されている。凹部69は、底部68から、隣接するバッテリスタック21間の空間に凹むように形成されている。凹部69は、同一断面形状を有しながら、バッテリセル22の積層方向(図5中の矢印101に示す方向)に延びている。
【0039】
バッテリスタック21は、側部27を有する。側部27は、隣り合うバッテリスタック21間で側部27同士が向い合って配置されるように設けられている。
【0040】
凹部67と凹部69とは、隣接するバッテリスタック21間の空間で互いに突き合されている。バッテリパック60は、ウェルドボルト71およびナット72をさらに有する。本実施の形態では、ウェルドボルト71が、凹部69に溶接固定されている。凹部67と凹部69とは、隣接するバッテリスタック21間の空間、すなわちバッテリスタック21の側部27に対向する位置において、ウェルドボルト71と、ウェルドボルト71に螺合されるナット72とによって互いに締結されている。
【0041】
この際、ウェルドボルト71およびナット72による締結力がバッテリスタック21に作用することによって、バッテリスタック21は、アッパケース62およびロアケース63によって挟持された状態で支持されている。
【0042】
以上に説明した、この発明の実施の形態2におけるバッテリスタックの固定構造の構成についてまとめて説明すると、バッテリスタックの固定構造は、側部27を有するバッテリスタック21と、バッテリスタック21を収容するバッテリケース61と、締結部材としてのウェルドボルト71およびナット72とを備える。バッテリケース61は、互いに組み合わされるアッパケース62およびロアケース63を有する。ウェルドボルト71およびナット72は、側部27に対向する位置に設けられ、アッパケース62とロアケース63とを互いに締結する。バッテリスタック21は、ウェルドボルト71およびナット72による締結力により、アッパケース62とロアケース63との間に挟持された状態で固定される。
【0043】
このように構成された、この発明の実施の形態2におけるバッテリスタックの固定構造によれば、実施の形態1に記載の効果を同様に得ることができる。
【0044】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0045】
この発明は、主に、バッテリから電力供給されるモータを動力源として備える車両に利用される。
【符号の説明】
【0046】
10,60 バッテリパック、21,21A,21B,21C バッテリスタック、22 バッテリセル、23 バッテリホルダ、24 隙間、26 頂部、27 側部、31 ケースフレーム、32 上フレーム、33 下フレーム、34 側方フレーム、36 梁部、37 ヒレ状部、38 フランジ部、41 固定用フレーム、51 スタッドボルト、52 ナット、56 支持ブラケット、61 バッテリケース、62 アッパケース、63 ロアケース、66 頂部、67,69 凹部、68 底部、71 ウェルドボルト、72 ナット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるバッテリスタックの固定構造であって、
頂部を有するバッテリスタックと、
互いに一体に連結される上枠体および下枠体を有し、前記バッテリスタックの周囲を取り囲むように設けられるケースフレームとを備え、
前記ケースフレームは、前記上枠体と前記バッテリスタックとの間に設けられ、前記頂部を前記下枠体に向けて押し付ける固定用枠体をさらに有する、バッテリスタックの固定構造。
【請求項2】
車両に搭載されるバッテリスタックの固定構造であって、
側部を有するバッテリスタックと、
互いに組み合わされるアッパケースおよびロアケースを有し、前記バッテリスタックを収容するバッテリケースと、
前記側部に対向する位置に設けられ、前記アッパケースと前記ロアケースとを互いに締結する締結部材とを備え、
前記バッテリスタックは、前記締結部材による締結力により、前記アッパケースと前記ロアケースとの間に挟持された状態で固定される、バッテリスタックの固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−244876(P2010−244876A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−93045(P2009−93045)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000100791)アイシン軽金属株式会社 (137)
【Fターム(参考)】