説明

ヒンジ機構

【課題】別途係止機構を用いることなく、より強い力で回動途中の任意の位置で回動部材を位置決めすることが可能なヒンジ機構を提供する。
【解決手段】軸部材20の外周円周方向に第1の磁極(N極)、第2の磁極(S極)、第1の磁極(N極)の順に磁極を構成し、回動部材40の内周円周方向に第2の磁極(S極)、第1の磁極(N極)、第2の磁極(S極)の順に磁極を構成し、回動部材40を所定の位置に位置決めする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折り畳み式携帯電話器や携帯型のパソコンなどに用いられる第1筐体と第2筐体との開閉機構又は回動機構等のヒンジ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のヒンジ構造として、軸部材の軸の放射方向に向かう吸引力あるいは反発力をその前記軸部材と回動部材との間にもたらす磁力線を発生させる磁力線発生手段を備え、前記磁力線発生手段に基づく前記吸引力あるいは反発力が、前記軸部材の軸周りにおける前記軸部材および前記回動部材の相対角度に対して勾配を有し、この勾配によって前記軸部材および前記回動部材の間に相対的な回転力を生じさせるようにしたヒンジ構造が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このヒンジ構造では、回転力を磁力から得るために劣化が生じないこと、単純な構造で小型化しやすいこと、回転力制御を着磁パタ−ンにより任意に設定できること、予め設定した位置で係止させることができること、などの利点があるとされている。
【0004】
また従来の携帯機器用の蝶番として、回転運動する板状部材に側面が傾斜した凸部を備え、相対した固定された板状部材に同じく側面が傾斜した凹部を備え、これら2部材の相対的な動きによりクリック機構と摩擦機能を有する蝶番に於いて、摩擦のための押圧を与えるばねとして、撓みの大きいばねと、荷重の大きいばねを、直列に配置した蝶番が知られている(例えば特許文献2参照)。
【0005】
この蝶番を用いることによって、蝶番のためのスペ−スが少なくて済み、閉じ位置で隙間が空くことがなく、別途の閉じ機構を必要としない利点が有る旨の記載がなされている。
【0006】
また従来の扉装置として、家具本体に蝶番又はピン等の枢着部材を介して扉を回動自在に取付けて成る家具において、蝶番の固定片のような固定部には第1磁石を、蝶番の可動片のような可動部には第2磁石を、それら第1磁石と第2磁石とが扉の開閉途中において密着又は近接した状態で行き違うように設け、これら第1磁石と第2磁石とが行き違うときに互いに相対向する面の磁極を同じ磁極に設定したことを特徴とする家具の扉装置が知られている(例えば特許文献3参照)。
【0007】
この家具の扉装置では、キャビネットの扉を閉めたときに、扉に強い衝撃が作用することを防止することが可能であるとされている。
【0008】
また従来の折り畳み式小型電子機器として、上ケースと下ケースとをヒンジ結合して一つに折り畳める構成としたケースの開閉操作補助機構を備える折り畳み式小型電子機器が知られている。この開閉操作補助機構は、折り畳み状態での上ケースと下ケースの相対する部分にそれぞれ配置した上ケース用マグネット及び下ケース用マグネットを備え、それら両マグネットの少なくとも一方のマグネットは他方のマグネットに対して外部からの押圧操作により移動可能であり、かつ、押圧操作時に両マグネットどうしが反発し合い、押圧操作解除時に引き合うような極性の配置形態を有する構成としたことに特徴があるとされている(例えば特許文献4参照)。
【0009】
この折り畳み式小型電子機器では、折り畳み式小型電子機器のクローズ状態保持をボタン一つで解除でき、なおかつ機器がマグネットの反力で開くために、オープン動作が片手で容易に行えるとされている。
【0010】
また従来の折り畳み式小型電気機器として、第1のケース体と第2のケース体とをヒンジ部を介して回動可能に結合された折り畳み型電子機器が知られている。この折り畳み式小型電気機器のヒンジ部は、前記第1のケース体と一体成形された円弧形状の第1ヒンジ部と、前記第2のケース体と一体成形された円柱形の第2ヒンジ部と、前記円弧形状の第1ヒンジ部の内面に嵌合する前記円柱形の第2ヒンジ部の逸脱を防止する円弧形状の第3ヒンジ部とからなり、前記第1と第3のヒンジ部の内周壁に磁石を具備し且つ前記第2ヒンジ部の外周壁に磁石を具備して、お互いが面する前記磁石の引き合う磁性力によって前記第1のケース体と前記第2のケース体を任意な角度で係止させることを特徴としている(例えば特許文献5参照)。
【0011】
この折り畳み型電子機器では、折り畳み型電子機器のヒンジ部に磁石を用いて係止するように構成しているので、第1のケース体を第2のケース体に対して任意の角度に固定することが出来且つその時の位置を保持するための支持部を必要としないのでヒンジ部が破損する事は無く、ネジやばねを使って固定する従来の方法に比べて組立が簡単で部品点数も少なくて良い旨の記載がなされている。
【0012】
また従来の携帯機器では、コイルバネまたは板バネとカムとで発生する回転力を利用して開閉動作を制御するヒンジ機構も知られている。
【特許文献1】特開2000−179227号公報
【特許文献2】特開2000−297574号公報
【特許文献3】特開平8−151850号公報
【特許文献4】特開平11−234377号公報
【特許文献5】特開平11−252223号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところが、特許文献1に記載のヒンジ構造ではN極、S極などの磁極の存在は示されているものの、このヒンジ構造ではヨークを用いていないので扉の位置決めのための保持力は弱いものと推測できる。また、回転途中の任意の位置で扉を係止させることができないという不具合を生じていた。
【0014】
また、特許文献2に記載の蝶番では、位置決め位置以外の部分ではウェーブばねが圧縮されているために、回動の際の抵抗力が大きく、ノートパソコンの表示装置、ビデオカメラの液晶表示装置、電器釜や電気ポットの蓋、扉等の開閉操作のために大きな力が必要であるという不具合を生じていた。
【0015】
また、特許文献3に記載の家具の扉装置では、磁石による力を用いて、扉を閉じる方向や開く方向に付勢することが可能であるが、扉の開位置や閉位置に位置決めを行うには別途機構による係止機構を設ける必要があるという不具合を生じていた。また、回転途中の任意の位置で扉を係止させることができないという不具合を生じていた。
【0016】
また、特許文献4に記載の折り畳み式小型電子機器では、磁石による力を用いて小型電子機器のクローズ状態保持とオープン動作を行うことが可能であるが、小型電子器機器のクローズ位置や閉位置の位置決めを行うには、別途係止機構を設ける必要があるという不具合を生じていた。また、回転途中の任意の位置で扉を係止させることができないという不具合を生じていた。
【0017】
また、特許文献5に記載の折り畳み式小型電子機器では、閉じ位置から開く動作を行う際に、中間位置までは常に磁石の吸引力に逆らって開動作を行わなければならず、開閉動作の広い範囲において回動抵抗が大きくなるという不具合を生じている。また同様に、開位置から閉じる動作を行う際にも、中間位置までは常に磁石の吸引力に逆らって閉動作を行わなければならないという不具合を生じていた。
【0018】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、その第1の目的は、別途係止機構を設けることなく強い保持力で任意の位置に回動部材を位置決めすることが可能なヒンジ機構を提供することにある。
【0019】
また本発明の第2の目的は、前記第1の目的に加えて特定の位置決め位置における保持力を強化させることが可能なヒンジ機構を提供することにある。
【0020】
また本発明の第3の目的は、特定の位置決め位置における保持力を強化させつつ、位置決め位置以の範囲においては回転抵抗を減らして回動しやすくすることが可能なヒンジ機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
前記第1の目的を達成するために本発明のヒンジ機構は、軸外周の円周方向に第1の磁極、第2の磁極、第1の磁極の順に磁極を構成した軸部材と、軸部材の磁極部分を挿入する部材内周の円周方向に第2の磁極、第1の磁極、第2の磁極の順に磁極を構成した回動部材とを備えたことを特徴とする。
【0022】
また前記第2の目的を達成するために本発明のヒンジ機構は、軸の放射方向に第1の磁極及び第2の磁極を有する磁石と第1の磁極から第2の磁極の両側に向かって磁力線を通すヨークとを収納部に収納して軸外周の円周方向に第1の磁極、第2の磁極、第1の磁極の順に磁極を構成した軸部材と、軸の放射方向に第1の磁極及び第2の磁極を有する磁石と第2の磁極から第1の磁極の両側に向かって磁力線を通すヨークとを収納部に収納して軸部材の磁極部分を挿入する部材内周の円周方向に第2の磁極、第1の磁極、第2の磁極の順に磁極を構成した回動部材とを備えたことを特徴とする。
【0023】
また前記第2の目的を達成するために本発明のヒンジ機構は、前記ヨークと磁石との間に非磁性体からなるスペーサを設置したことを特徴としている。
【0024】
また前記第2の目的を達成するために本発明のヒンジ機構は、軸の放射方向に第2の磁極及び第1の磁極を有する2つの磁石と軸の放射方向に第1の磁極及び第2の磁極を有する1つの磁石とを収納部に収納して軸外周の円周方向に第1の磁極、第2の磁極、第1の磁極の順に磁極を構成した軸部材と、軸の放射方向に第2の磁極及び第1の磁極を有する2つの磁石と軸の放射方向に第1の磁極及び第2の磁極を有する1つの磁石とを収納部に収納して軸部材の磁極部分を挿入する部材内周の円周方向に第2の磁極、第1の磁極、第2の磁極の順に磁極を構成した回動部材とを備えたことを特徴とする。
【0025】
また前記第2の目的を達成するために本発明のヒンジ機構は、回動部材の軸方向の一端面に回動側磁性体を設け、回動部材の軸方向の一端面と対向する位置に存在する軸部材側に軸側磁性体を設け、回動側磁性体又は軸側磁性体の少なくとも一方に磁石を設け、回動側磁性体と軸側磁性体とによる吸引力又は反発力に基づいて軸部材と回動部材との間に回転抵抗を生じさせる軸部材側摩擦面及び回動部材側摩擦面を備えたことを特徴とする。
【0026】
また前記第3の目的を達成するために本発明のヒンジ機構は、回動部材の軸方向の一端面に回動側磁性体を設け、回動部材の軸方向の一端面と対向する位置に存在する軸部材側に軸側磁性体を設け、回動側磁性体又は軸側磁性体の少なくとも一方に磁石を設け、更に回動側磁性体と軸側磁性体とによる吸引力又は反発力に基づいて軸部材と回動部材との間に回転抵抗を生じさせる軸部材側摩擦面及び回動部材側摩擦面と、回動部材と軸部材とを軸方向に相対的に移動して軸部材側摩擦面と部材側摩擦面とを隔離する隔離機構とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、軸外周の円周方向に第1の磁極、第2の磁極、第1の磁極の順に磁極を構成した軸部材と、前記軸部材の磁極部分を挿入する部材内周の円周方向に第2の磁極、第1の磁極、第2の磁極の順に磁極を構成した回動部材とを備えたので、別途係止機構を用いることなく、より強い力で回動途中の任意の位置かつ特定の位置で回動部材を位置決めすることが可能となる。また、位置決め位置以外における回動のための抵抗力を小さくすることが可能となる。
【0028】
また本発明によれば、軸の放射方向に第1の磁極及び第2の磁極を有する磁石と前記第1の磁極から前記第2の磁極の両側に向かって磁力線を通すヨークとを収納部に収納して軸外周の円周方向に第1の磁極、第2の磁極、第1の磁極の順に磁極を構成した軸部材と、軸の放射方向に第1の磁極及び第2の磁極を有する磁石と前記第2の磁極から前記第1の磁極の両側に向かって磁力線を通すヨークとを収納部に収納して前記軸部材の磁極部分を挿入する部材内周の円周方向に第2の磁極、第1の磁極、第2の磁極の順に磁極を構成した回動部材とを備えたので、別途係止機構を用いることなく、より強い力で回動途中の任意の位置かつ特定の位置で回動部材を位置決めすることが可能となる。また、位置決め位置以外における回動のための抵抗力を小さくすることが可能となる。また、ヨークを用いることによって、軸部材と回動部材との隙間の局部に磁力線を集中させることが可能となるので、特定の位置決め位置における保持力を強くすることが可能となる。
【0029】
また本発明によれば、ヨークと磁石との間にスペーサを設置したので、軸部材と回動部材との隙間により多くの磁力線を出すことが可能となり、特定の位置決め位置における保持力を強くすることが可能となる。
【0030】
また本発明によれば、軸の放射方向に第2の磁極及び第1の磁極を有する2つの磁石と軸の放射方向に第1の磁極及び第2の磁極を有する1つの磁石とを収納部に収納して軸外周の円周方向に第1の磁極、第2の磁極、第1の磁極の順に磁極を構成した軸部材と、軸の放射方向に第2の磁極及び第1の磁極を有する2つの磁石と軸の放射方向に第1の磁極及び第2の磁極を有する1つの磁石とを収納部に収納して前記軸部材の磁極部分を挿入する部材内周の円周方向に第2の磁極、第1の磁極、第2の磁極の順に磁極を構成した回動部材とを備えたので、別途係止機構を用いることなく、より強い力で回動途中の任意の位置かつ特定の位置で回動部材を位置決めすることが可能となる。また、位置決め位置以外における回動のための抵抗力を小さくすることが可能となる。
【0031】
また本発明のヒンジ機構によれば、回動部材の軸方向の一端面に回動側磁性体を設け、回動部材の軸方向の一端面と対向する位置に存在する軸部材側に軸側磁性体を設け、回動側磁性体又は軸側磁性体の少なくとも一方に磁石を設け、回動側磁性体と軸側磁性体とによる吸引力又は反発力に基づいて軸部材と回動部材との間に回転抵抗を生じさせる軸部材側摩擦面及び回動部材側摩擦面を備えたので、位置決め位置における保持力を強化させることが可能となる。
【0032】
また本発明のヒンジ機構によれば、回動部材の軸方向の一端面に回動側磁性体を設け、回動部材の軸方向の一端面と対向する位置に存在する軸部材側に軸側磁性体を設け、回動側磁性体又は軸側磁性体の少なくとも一方に磁石を設け、更に回動側磁性体と軸側磁性体とによる吸引力又は反発力に基づいて軸部材と回動部材との間に回転抵抗を生じさせる軸部材側摩擦面及び回動部材側摩擦面と、回動部材と軸部材とを軸方向に相対的に移動して軸部材側摩擦面と部材側摩擦面とを隔離する隔離機構とを備えたので、特定の位置決め位置における保持力を強化させつつ、位置決め位置以の範囲においては回転抵抗を減らして回動しやすくすることが可能となる。
【0033】
また本発明によれば、回転力が磁力に基づくため劣化を少なくすることが可能となり、単純構造により小型化が可能になることに加えて軸部材と回動部材との特定相対角度のみに回転力を発生させることが可能となる。また、回転摺動抵抗を任意に付与または削除することが可能となり、折り畳み携帯機器の操作性を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面に基づき説明する。
【0035】
図1は、本発明に係るヒンジ機構の分解斜視図である。
【0036】
同図に示すように本発明に係るヒンジ機構10は、ヒンジ機構10の固定軸となる軸部材20と、ヒンジ機構10の回動側の軸となる回動部材40と、前記回動部材40を軸部材20に対してスラスト方向及びラジアル方向に軸支するブッシュ50、52とを備えている。なお同図に示す例では、ブッシュ50、52は回動部材40の内面に圧入する構造としているために、ブッシュ50、52は回動部材40と共に回動する。
【0037】
同図に示す例では、軸部材20の軸の放射方向に、第1の磁極(例えばN極)及び第2の磁極(例えばS極)を有する磁石22、23と、前記第1の磁極から前記第2の磁極の両側に向かって磁力線を通すための磁性素材からなるヨーク24、25と、前記ヨーク24、25と磁石22、23との間に設置する非磁性体からなるスペーサ26、27とを収納する収納部28を2カ所設けてある。このように磁石22、23を配置することによって、軸部材20の軸外周の円周方向に第1の磁極(例えばN極)、第2の磁極(例えばS極)、第1の磁極(例えばN極)の順に磁極を構成している。
【0038】
また軸部材20には、ブッシュ50、回動部材40、磁性板60、ブッシュ52、摺動部材62の脱落を防止するためのCリング70を装着するリング溝30を設けてある。
【0039】
また、軸部材20の先端には、摺動部材62の回動を制限する面取32(同図に示す例では上下の2面)を設けてあり、一方の摺動部材62には、当該面取32と勘合する回動制限面64を設けてある。同図に示す例では摺動部材62を磁石で構成しており、必要に応じて磁性板60を吸着してブッシュ52の回動部材側摩擦面と摺動部材62の軸部材側摩擦面との間で摩擦力を生じ、回動部材40に回動抵抗を発生させることが可能となっている。
【0040】
また、回動部材40の内面には、軸の放射方向に第1の磁極(例えばN極)及び第2の磁極(例えばS極)を有する磁石42、43と、前記第2の磁極から前記第1の磁極の両側に向かって磁力線を通すためのヨーク44、45と、前記ヨーク44、45と磁石42、43との間に設置する非磁性体からなるスペーサ46、47とを収納する収納部48を2カ所設けてある。このように磁石42、43を配置することによって、軸部材20の磁極部分を挿入する回動部材40の内周の円周方向に第2の磁極(例えばS極)、第1の磁極(例えばN極)、第2の磁極(例えばS極)の順に磁極を構成している。
【0041】
スペーサ26、27、46、47は、より多くの磁力線を軸部材20と回動部材40との隙間に出すための部材であり、各スペーの厚さは前記隙間との関係で適宜定める。また、前記隙間を広く取る必要が無い場合には、スペーサ26、27、46、47を省くようにしてもよい。
【0042】
同図に示す例では、回動部材40を180毎に位置決めするために、磁石22、磁石23及び磁石42、43を180度間隔で配置しているが、本発明は180度毎に限定されるものではなく、磁石22、磁石23、及び図磁石42、43を120度等の間隔で配置するようにしてもよい。
【0043】
また、磁力線を通すヨーク24、25、又は44、45を用いる代わりに、軸の放射方向に第2の磁極及び第1の磁極を有する2つの磁石等を用いるようにしても本発明の目的を達成することが可能である。
【0044】
図2は、軸部材と回動部材とが第1の位置決め位置に存在する場合の断面図である。
【0045】
同図に示すように、軸部材20に磁石22、23とヨーク24、25とを設けたので、軸部材20の外周の円周方向の磁極は、N極(例えば第1の磁極)、S極(例えば第2の磁極)、N極(例えば第1の磁極)の順に並ぶことになる。
【0046】
他方の回動部材40には、磁石42、43とヨーク44、45とを設けたので、回動部材40の内周の磁極は、S極(例えば第2の磁極)、N極(例えば第1の磁極)、S極(例えば第2の磁極)の順に並ぶ。
【0047】
したがって、同図に示す状態では、軸部材20の外周と回動部材40の内周に設けた各磁極同士が引き合う力を発生するので吸引力が最大となり、第1の位置決め位置として定まることになる。なお、同図に示す状態から回動部材40を右方向、又は左方向に回動させようとすると、軸部材20の外周に設けたS極(第2の磁極)と回動部材40の内周に設けたS極(第2の磁極)とが近づくので、お互いの磁極が反発する方向に力が発生するとともに、軸部材20の外周に設けたS極(第2の磁極)と回動部材40の内周に設けたN極(第1の磁極)とが吸引する力を発生するので、より強い力で第1の位置決め位置に戻すことが可能となっている。
【0048】
本発明によれば、磁石22、23、42、43の磁力線を効率よく通すヨーク24、25、44、45を設けたので、磁力線の漏洩を抑制し、軸部材20の外周又は回動部材40の外周の局部に磁力線を集中させることができる(磁力線の発生する範囲を限定することができる)ので、軸部材20と回動部材40の特定相対角度における位置決め位置を特定しやすくすることが可能となる。
【0049】
図3は、軸部材と回動部材とが位置決め位置に存在しない場合の断面図である。
【0050】
同図に示す状態では、軸部材20の外周に設けたN極(第1の磁極)と回動部材40の内周に設けたS極(第2の磁極)同士が引き合う力を発生するので、第1の位置決め位置に向かう回転力を発生している。
【0051】
そして、同図に示す状態から更に右方向に回動部材40を回動させると、軸部材20の外周に設けたN極(第1の磁極)及びS極(第2の磁極)と、回動部材40の内周に設けたS極(第2の磁極)及びN極(第1の磁極)とが反発し合う力を発生するので第1の位置決め位置に向かう回転力が減少するが、更に回動部材40を右方向に回動させると、前述のように第1の位置決め位置に向かって強い回転力が発生し、回動部材40が特定の相対角度に位置決めされる。
【0052】
図4は、図2に示す軸部材と回動部材との相対回転位置(第1の位置決め位置)を境にして回動部材を反時計回りに回転させる回転力を正として表した回転力の特性図である。
【0053】
同図に示すように本発明によれば、第1の位置決め位置(Θ=0°)及び第2の位置決め位置(Θ=180°)に向かって位置決めするための回転力を発生させることが可能となる。
【0054】
前述のように、同図に示すAの位置では第1の位置決め位置に向かう回転力が減少する。軸部材20及び回動部材40との隙間の寸法や磁石22、23、42、43の磁力の強さ、ヨーク24、25、44、45の形状によっては、同図のBに示すように第1の位置決め位置に向かう回転力が負の値を取るように設計することも可能である。
【0055】
図5は、本発明に係るヒンジ機構の回転抵抗発生部を説明する正面図である。
【0056】
同図に示す状態では、回動部材40の軸方向の一端面に磁性板60(回動側磁性体)とブッシュ52とが固定されており、共に回動する。また回動部材40の軸方向の一端面と対向する位置に存在する軸部材20側に摺動部材62(軸側磁性体)を固定してある。
【0057】
同図に示す状態では、回動部材40に固定したブッシュ52の回動部材側摩擦面は、摺動部材62の軸部材側摩擦面と接触している。そして、摺動部材62は磁石で構成しているので、摺動部材62と、磁性を有する磁性板60との間では磁力による吸引力を発生している。したがって、この吸引力とブッシュ52の回動部材側摩擦面と、摺動部材62の軸部材側摩擦面との間の摩擦係数を乗算した値から、回動部材40の摺動抵抗ならびに回転抵抗力を定めることが可能となっている。なお、図5に示す例では摺動部材62(軸側磁性体)を磁石で構成する実施例を示したが、摺動部材62(軸側磁性体)又は磁性板60(回動側磁性体)の少なくとも一方を磁石としても本発明の目的を達成することが可能である。また、図5に示す例では摺動部材62の磁石と磁性板60との間に発生する吸引力を用いて摺動抵抗を発生する例で説明したが、摺動部材62と磁性板60とを同極の磁石で構成してその反発力を用いて摺動抵抗を発生する構成としてもよい。
【0058】
図6は、本発明に係るヒンジ機構の回転抵抗発生部より発生する回転抵抗の値を示す図である。
【0059】
同図に示すように、接触面の面粗さが均一ならば、ブッシュ52の回動部材側摩擦面と摺動部材62の軸部材側摩擦面との接触による回転抵抗は回転角度(Θ)及び回転方向によらずほぼ均一な抵抗値を示す。そして、回転方向が正方向である場合には逆の負方向に回転抵抗が生じ、回転方向が負方向である場合には逆の正方向に回転抵抗が生じる。
【0060】
図7は、摺動部材とブッシュとが磁力によって吸引密着している状態における回転力合力を示す図である。
【0061】
同図に示す例では、摺動部材62と磁性板60とが互いに吸引して、摺動部材62の軸部材側摩擦面とブッシュ52の回動部材側摩擦面とが互いに密着して摺動抵抗が発生している状態を示している。この状態における、軸部材20と回動部材40とを相対的に一方向に回動させるために必要な力(回転力合力)のグラフを同図に示す。
【0062】
同図に示すように回転力合力は、回転力に対向する力と回転抵抗とを加算した値となる。
【0063】
図8は、摺動部材とブッシュとが磁力によって吸引密着している状態における回転力を示す図である。
【0064】
同図に示すように回転力(復元力)は、摺動部材62の軸部材側摩擦面とブッシュ52の回動部材側摩擦面とが磁力によって吸引密着していない状態における回転力(復元力)から回転抵抗を減算した値となる。
【0065】
図9は、摺動部材とブッシュとの間にギャップが存在している状態における回転力合力を示す図である。
【0066】
軸部材20と回動部際40との相対位置を軸方向に相対的に移動させることが可能なように回動部材40を短めにした隔離機構を用いると、摺動部材62と回動部材40とを引き離す方向に軸部材20を押し込むことで、摺動部材62の軸部材側摩擦面とブッシュ52の回動部材側摩擦面とを隔離してギャップを設けることができる。すると、摺動部材62とブッシュ52との密着に基づく摩擦力を無くすことが可能となり、摺動抵抗は無くなる。
【0067】
このときの軸部材20と回動部材40との相対位置変化量は、隙間ができるわずかな変位で十分で、この相対位置変化による回転力特性への影響は無視できるレベルである。また軸部材20の押し込み力を解除すると摺動部材62と磁性板60との吸引力により軸部材20と回動部材40との相対位置は図7に戻る。
【0068】
同図に示すように、摺動部材62とブッシュ52との間にギャップが存在している状態における回転力合力は、図4に示す回転力に対抗する力となる。
【0069】
したがって、軸部材20と回動部材40とが第1の位置決め位置にあるときに摺動部材62とブッシュ52とを互いに密着させて摺動抵抗を発生させることによって、第1の位置決め位置における保持力を強化させることが可能となる。
【0070】
また、軸部材20と回動部材40とを第1の位置決め位置から動かす場合には、摺動部材62と回動部材40とを引き離す方向に軸部材20を押し込むことで摺動部材62とブッシュ52との間にギャップを設けて、摩擦力による回転抵抗を無くして回動しやすくすることが可能となる。
【0071】
なお、軸部材20と回動部材40とが第1の位置決め位置にあるときには摺動部材62とブッシュ52とが互いに密着し、軸部材20と回動部材40とを第1の位置決め位置から小角度動かすと摺動部材62と回動部材40とを引き離す方向に変位させるカムなどの変位機構を設けることによって、第1の位置決め位置にあるときの保持力を強めるとともに、回動時には回転の抵抗を減じて回動しやすくさせることも可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明によれば、開閉部を任意の位置に位置決め可能な操作感の優れた小型のヒンジ機構を備えた折り畳み式携帯電話器、携帯端末等を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明に係るヒンジ機構の分解斜視図である。
【図2】軸部材と回動部材とが第1の位置決め位置に存在する場合の断面図である。
【図3】軸部材と回動部材とが位置決め位置に存在しない場合の断面図である。
【図4】第1の位置決め位置を境にして回動部材を反時計回りに回転させる回転力を正として表した回転力の特性図である。
【図5】本発明に係るヒンジ機構の回転抵抗発生部を説明する正面図である。
【図6】本発明に係るヒンジ機構の回転抵抗発生部より発生する回転抵抗の値を示す図である。
【図7】摺動部材とブッシュとが磁力によって吸引密着している状態における回転力合力を示す図である。
【図8】摺動部材とブッシュとが磁力によって吸引密着している状態における回転力を示す図である。
【図9】摺動部材とブッシュとの間にギャップが存在している状態における回転力合力を示す図である。
【符号の説明】
【0074】
10 ヒンジ機構
12 回転抵抗発生部
20 軸部材
22、23 磁石
24、25 ヨーク
26、27 スペーサ
28 収納部
30 リング溝
32 面取
40 回動部材
42、43 磁石
44、45 ヨーク
46、47 スペーサ
48 収納部
50、52 ブッシュ
60 磁性板
62 摺動部材
64 回動制限面
70 Cリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸外周の円周方向に第1の磁極、第2の磁極、第1の磁極の順に磁極を構成した軸部材と、
前記軸部材の磁極部分を挿入する部材内周の円周方向に第2の磁極、第1の磁極、第2の磁極の順に磁極を構成した回動部材と、
を備えたことを特徴とするヒンジ機構。
【請求項2】
軸の放射方向に第1の磁極及び第2の磁極を有する磁石と、前記第1の磁極から前記第2の磁極の両側に向かって磁力線を通すヨークとを収納部に収納して、軸外周の円周方向に第1の磁極、第2の磁極、第1の磁極の順に磁極を構成した軸部材と、
軸の放射方向に第1の磁極及び第2の磁極を有する磁石と、前記第2の磁極から前記第1の磁極の両側に向かって磁力線を通すヨークとを収納部に収納して、前記軸部材の磁極部分を挿入する部材内周の円周方向に第2の磁極、第1の磁極、第2の磁極の順に磁極を構成した回動部材と、
を備えたことを特徴とするヒンジ機構。
【請求項3】
軸の放射方向に第1の磁極及び第2の磁極を有する磁石と、前記第1の磁極から前記第2の磁極の両側に向かって磁力線を通すヨークと、前記ヨークと磁石との間に設置する非磁性体からなるスペーサとを収納部に収納して、軸外周の円周方向に第1の磁極、第2の磁極、第1の磁極の順に磁極を構成した軸部材と、
軸の放射方向に第1の磁極及び第2の磁極を有する磁石と、前記第2の磁極から前記第1の磁極の両側に向かって磁力線を通すヨークと、前記ヨークと磁石との間に設置する非磁性体からなるスペーサとを収納部に収納して、前記軸部材の磁極部分を挿入する部材内周の円周方向に第2の磁極、第1の磁極、第2の磁極の順に磁極を構成した回動部材と、
を備えたことを特徴とするヒンジ機構。
【請求項4】
軸の放射方向に第2の磁極及び第1の磁極を有する2つの磁石と、軸の放射方向に第1の磁極及び第2の磁極を有する1つの磁石とを収納部に収納して、軸外周の円周方向に第1の磁極、第2の磁極、第1の磁極の順に磁極を構成した軸部材と、
軸の放射方向に第2の磁極及び第1の磁極を有する2つの磁石と、軸の放射方向に第1の磁極及び第2の磁極を有する1つの磁石とを収納部に収納して、前記軸部材の磁極部分を挿入する部材内周の円周方向に第2の磁極、第1の磁極、第2の磁極の順に磁極を構成した回動部材と、
を備えたことを特徴とするヒンジ機構。
【請求項5】
軸の放射方向に第2の磁極及び第1の磁極を有する2つの磁石と、軸の放射方向に第1の磁極及び第2の磁極を有する1つの磁石と、前記3つの磁石間に設置する非磁性体からなるスペーサとを収納部に収納して、軸外周の円周方向に第1の磁極、第2の磁極、第1の磁極の順に磁極を構成した軸部材と、
軸の放射方向に第2の磁極及び第1の磁極を有する2つの磁石と、軸の放射方向に第1の磁極及び第2の磁極を有する1つの磁石と、前記3つの磁石間に設置する非磁性体からなるスペーサとを収納部に収納して、前記軸部材の磁極部分を挿入する部材内周の円周方向に第2の磁極、第1の磁極、第2の磁極の順に磁極を構成した回動部材と、
を備えたことを特徴とするヒンジ機構。
【請求項6】
請求項1乃至5に記載のヒンジ機構において、
前記回動部材の軸方向の一端面に回動側磁性体を設け、
前記回動部材の軸方向の一端面と対向する位置に存在する前記軸部材側に軸側磁性体を設け、
前記回動側磁性体、又は、前記軸側磁性体の少なくとも一方に磁石を設け、
前記回動側磁性体と前記軸側磁性体とによる吸引力、又は、反発力に基づいて、前記軸部材と回動部材との間に回転抵抗を生じさせる軸部材側摩擦面及び回動部材側摩擦面を備えたことを特徴とするヒンジ機構。
【請求項7】
請求項1乃至5に記載のヒンジ機構において、
前記回動部材の軸方向の一端面に回動側磁性体を設け、
前記回動部材の軸方向の一端面と対向する位置に存在する前記軸部材側に軸側磁性体を設け、
前記回動側磁性体、又は、前記軸側磁性体の少なくとも一方に磁石を設け、
前記回動側磁性体と前記軸側磁性体とによる吸引力、又は、反発力に基づいて、前記軸部材と回動部材との間に回転抵抗を生じさせる軸部材側摩擦面及び回動部材側摩擦面と、
前記回動部材と前記軸部材とを軸方向に相対的に移動して前記軸部材側摩擦面と回動部材側摩擦面とを隔離する隔離機構と、
を備えたことを特徴とするヒンジ機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−112523(P2006−112523A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−300500(P2004−300500)
【出願日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】