説明

ヒンジ装置と、ヒンジ装置を備えた電子機器

【課題】180°近傍の所定開き角度で良好な停止精度を備えたヒンジ装置を提供する。
【解決手段】第1のベース部材202と第2のベース部材211とを、回動範囲制限機構が装着されたシャフト213で軸着してヒンジ装置201を構成する。回動範囲制限機構には、シャフト213の回転軸中心に対する開閉可能角度に対応したピッチで一対の係合用の凸部222、223を配置する。これに対応して、ヒンジの開状態又は閉状態のときに一方の係合用の凸部222が凹部に係合して位置決めされるよう形成された第1凹部203を設ける。ヒンジの開状態のときに他方の係合用の凸部223が凹部の一方の側面にのみ当接して位置決めされ、ヒンジの閉状態のときに他方の係合用の凸部222が凹部の他方の側面にのみ当接して位置決めされる幅広の第2凹部204を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話やデジタルカメラ等の電子機器に用いられるヒンジ装置と、ヒンジ装置を備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ヒンジ装置を備えた電子機器には、例えば、情報表示部と機器本体との間を2軸のヒンジ装置で接続し、情報表示部の収納態様と展開した情報表示部の使用態様とに形態を変更可能に構成したデジタルカメラがある。
【0003】
このような情報表示部を2軸のヒンジ装置によって連結したデジタルカメラでは、撮影時のアングルを任意方向へ向けた使用状態で、情報表示部を撮影者へ向けて使用することができる。
【0004】
このようなデジタルカメラに利用される2軸のヒンジ装置には、開閉角度量を左右方向に180°の範囲内で回転可能に設定し、情報表示部を上下方向へ90°回したローアングル又はハイアングルに設定可能とする。これと共に、この2軸のヒンジ装置では、撮影レンズの対物側に表示部を向けるため180°回るようにし、合計で270°の範囲内で回転可能に構成したものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−243923
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このようなデジタルカメラで、ヒンジ装置を左右方向に180°開いた状態において上下方向に180°回転可能に構成するためには、図4に例示するようにヒンジ装置11をカメラ本体の側面から出張るように構成する必要がある。
【0007】
すなわち、この図4に例示するデジタルカメラ101では、表示部109を支持するヒンジ装置11のヒンジの軸がデジタルカメラ101本体の取り付け面より出張る構造にする。これにより、このデジタルカメラ101では、表示部109が、左右方向に180°開いた状態において上下方向に180°回転する動作の途中でデジタルカメラ101本体の側面に擦れることを防止している。
【0008】
このように構成された図4に例示するデジタルカメラ101では、ヒンジ装置11の回転部がデジタルカメラ本体101の角部分から突出して出っ張ってしまうデザインとならざるを得ない。すなわち、図4に例示するようなヒンジ装置を備えたデジタルカメラでは、カメラ本体の角部近くの側面にヒンジ装置を突出させねばならないというデザイン上の制約があった。
【0009】
本発明の目的は、所定の開き角度を、180°近くに設定しても、この所定の開き角度で、確実に停止できるように構成されたヒンジ装置を提供する。これと共に、このヒンジ装置を利用した電子機器では、ヒンジ装置に支持された表示部を180°近くの所定の開き角度まで開いたときに、表示部が電子機器に接触する前の状態で表示部の回転動作が制止されるようにする。本発明の他の目的は、このようにして表示部を支持するヒンジ装置を、電子機器本体から突出しないように配設できるようにし、デザインの制約が低減された電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明のヒンジ装置は、一方の部材に取り付けられる第1のベース部材と、他方の部材に取り付けられ、前記第1のベース部材に対して回動する第2のベース部材とを有し、前記第2のベース部材が前記第1のベース部材に対して回動する際に、前記第1のベース部材の面上には前記第2のベース部材と摺動する第1の摺動面が形成されるとともに、前記第2のベース部材の面上には前記第1のベース部材と摺動する第2の摺動面が形成されるものであって、前記第1の摺動面または前記第2の摺動面の一方に、前記第1のベース部材に対する前記第2のベース部材の回動範囲に対応するピッチで配置された一対の凸部を形成し、前記第1の摺動面または前記第2の摺動面の他方に、前記凸部の幅より幅の狭い第1の凹部を形成するとともに、前記凸部の幅より幅の広い第2の凹部を形成し、前記一対の凸部の一方が前記第1の凹部に係合するとき、前記一対の凸部の他方が前記第2の凹部の一方端に当接するように、前記第1の凹部と前記第2の凹部とのピッチが決められることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ヒンジ装置における開き限度となる所定の開き角度を、180°近くに設定しても、この所定の開き角度で、確実に停止できるように構成されたヒンジ装置を提供できるという効果がある。これと共に、このヒンジ装置を利用した電子機器では、ヒンジ装置に支持された表示部を180°近くの開き限度となる所定の開き角度まで開いたときに、表示部が電子機器に接触する前の状態で表示部の回転動作が制止されるようにする。このようにして表示部を支持するヒンジ装置を、電子機器本体から突出しないように配設できるようにし、このヒンジ装置を利用した電子機器におけるデザインの制約を低減することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(A)は、本発明の実施の形態に係わるヒンジ装置で、ヒンジの全閉状態における第1のベース部材とクリック部材との係合状態を示す要部の詳細説明図、(B)は、図1(A)に示すB−B線による拡大断面図、(C)は、図1(A)に示すC−C線による拡大断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係わるヒンジ装置を適用したデジタルカメラ(電子機器)を正面上側から見た状態を示す全体斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係わるヒンジ装置を適用したデジタルカメラを背面下側から見た状態を示す全体斜視図である。
【図4】本発明の比較例として、左右方向に180°開くヒンジ装置をカメラ本体の側面に突設したデジタルカメラを例示する平面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係わるヒンジ装置を適用したデジタルカメラの表示部を停止位置まで横に開き、正面上側から見た状態を示す全体斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態に係わるヒンジ装置を適用したデジタルカメラの表示部を横に開いてから縦に回して表示面を上に向けた状態を示す平面図である。
【図7】本発明の実施の形態に係わるヒンジ装置を取り出して示す分解斜視図である。
【図8】(A)は、本発明の実施の形態に係わるヒンジ装置で、ヒンジの全開状態における第1のベース部材とクリック部材との係合状態を示す要部の詳細説明図、(B)は、図8(A)に示すB−B線による拡大断面図、(C)は、図8(A)に示すC−C線による拡大断面図である。
【図9】本発明の実施の形態に係わる完成状態のヒンジ装置を取り出して示す拡大斜視図である。
【図10】本発明の実施の形態に係わるヒンジ装置を適用したデジタルカメラの表示部を停止位置まで横に開き、背面上側から見た状態を示す全体斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のヒンジ装置と、ヒンジ装置を備えた電子機器に係わる実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
図2は、本発明の実施の形態に係わるヒンジ装置を適用したデジタルカメラ(電子機器)を正面上側から見た状態を示す全体斜視図である。この図2において、101は、デジタルカメラの本体であり、主にフロントカバー112とリアカバー121で覆われている。このカメラ本体101の内部には、撮影を可能とするための各種の内部部材が配設されている。これらの内部部材は、例えば、光学像を光電変換して画像データを生成する撮像素子(CCDやCMOSイメージセンサ等)、ローパスフィルタおよびカメラ全体の動作を制御する制御回路等である。
【0015】
また図2で、102は、撮影レンズを有するレンズ鏡筒であり、光軸方向に繰り出したり繰り込んだりすることによって撮影光学系の焦点距離を変更可能に構成されている。図2で、103は、レリーズボタンであり、半押しによって撮影準備動作(焦点調節動作等)が開始され、全押しによって撮影動作(撮像素子で読み出された画像データの記録媒体への記録)が開始されるように構成されている。
【0016】
図2で、104は、被写体に照明光を照射する開閉式ストロボユニットである。この開閉式ストロボユニット104は、図2に示す閉状態で発光させることができない。この開閉式ストロボユニット104は、ストロボ発光が必要になったときに、撮影者がストロボユニット104を開き上げて、ストロボ窓部(不図示)を露出させ、発光可能な状態にセットして用いる。
【0017】
図3は、本実施の形態に係わるヒンジ装置を適用したデジタルカメラを背面下側から見た状態を示す全体斜視図である。この図3で、105は、電子ビューファインダの接眼窓部である。撮影者は、電子ビューファインダ105を利用して被写体像を観察することができる。図3で、106は、再生モードへの切り換えボタンである。この再生モードへの切り換えボタン106は、撮影モード又は電源オフ時に、押下られると再生モードへ遷移させる機能を備える。さらに、この切り換えボタン106は、記録媒体に記録されている画像データを電子ビューファインダ105又は後述の液晶表示部109に表示させる機能を備える。
【0018】
また、レリーズボタン103を半押した場合には、再生モードから撮影モードへ遷移する。また、レリーズボタン103を全押しした場合には、撮影が行われる。
【0019】
図3で、107は、モードダイアルであり、様々な撮影モード(オート撮影モード、絞り優先AEモード、シャッタ速度優先AEモード等)に切り替える操作を行えるように構成されている。
【0020】
図3で、108は、動画撮影ボタンであり、押下すると、例えば、モードダイアルで動画モードに設定していない場合でも動画記録が開始されるように構成されている。
【0021】
図3で、109は、液晶表示ユニットであり、撮影モード設定時にファインダとして機能し、再生モード設定時に記録媒体に記録されている画像データのビューワとして機能する。
【0022】
図3で、110は、後述のヒンジ装置201の保護カバーであり、ヒンジ装置201の目隠しと回転の支障になるような内部へのゴミの侵入を防止する機能を備える。
【0023】
次に、本実施の形態に係わるヒンジ装置について、図7を参照して説明する。
【0024】
図7は、本発明の実施の形態に係わるヒンジ装置を取り出して示す分解斜視図である。このヒンジ装置201は、いわゆる2軸ヒンジ装置として構成する。このヒンジ装置201は、第1の回転軸(液晶表示部109の左右回転用の軸部)と、この第1の回転軸に対して交差(ここでは直交)する方向に配置された第2の回転軸(液晶表示部109の上下回転用の軸部)とを備える。
【0025】
図7で、202は、第1のベース部材であり、カメラ本体のシャーシ(不図示)に2本のビスで固定されている。この第1のベース部材202は、液晶表示部109に外力が加わった際に、ヒンジ装置201がカメラ本体から脱落しないようにするため、強固に締結されている。
【0026】
次に、第1の回転軸である液晶表示部109の左右回転用の軸部の構成について説明する。
【0027】
第1のベース部材202には、第1の回転軸である液晶表示部109の左右回転用の軸部が設けられている。この液晶表示部109の左右回転用の軸部は、第2のベース部材211の相対向する両端部に同軸上に配置された2つの穴に対して構成されている。この液晶表示部109における上側の軸部には、回動範囲制限機構が装着されたシャフトである上シャフト213が軸着される。この上シャフト213には、回動範囲制限用の複数の部材が装着される。
【0028】
この液晶表示部109の上側に配置される回動範囲制限機構付きシャフトの構造について、上シャフト213に取り付ける順に説明する。まず、上シャフト213のフランジ上には、上シャフト213に挿通された皿ばね212を置く。この皿ばね212上には、上シャフト213に挿通された第2のベース部材211が配置され、その上に、上シャフト213に挿通されたスペーサー214が配置される。
【0029】
また、上シャフト213には、第1のベース部材202の上側端部の軸穴が軸着されて、スペーサー214上に重ねられる。さらに、上シャフト213には、クリック部材221が挿通されてスペーサー214上に配置される。
【0030】
このクリック部材221の第1のベース部材202に圧接する上シャフト213の周囲の面部上(第1の摺動面)には、クリック感を出すための係合用の凸部222、223を突設する。また、第1のベース部材202のクリック部材221に圧接する上シャフト213の周囲の面部上(第2の摺動面)には、クリック感を出すための係合用の第1の凹部203と係合用の第2の凹部204とを穿設する。
【0031】
そして、各部材が順に組み付けられた上シャフト213の自由端部は、第2のベース部材211が第1のベース部材202に対して軸着され、回転可能なように加締め(カシメ)により抜け止めされ、一体的な軸部が構成される。
【0032】
この回動範囲制限機構が装着されたシャフトである液晶表示部109の上側の軸部の構造では、皿ばね212の付勢力が、上シャフト213を挿通した透孔の周囲の部材間に働く。また、この上シャフト213の軸部の自由端は、加締めにより、抜け止めされている。
【0033】
よって、この回動範囲制限機構では、第1のベース部材202側の部分と第2のベース部材211側の部分とが相互に圧接された状態で相対的に回動することになる。これにより、この回動範囲制限機構では、回転時の摺動トルク及びクリック力を発生させる。
【0034】
また、この液晶表示部109の上側の軸部の構造では、クリック部材221に第1のベース部材202に取り付けられた基板216上に実装された検出スイッチ217を操作するL字曲げ部が形成されている。このため、この液晶表示部109の上側の軸部の構造では、ヒンジ装置201の開閉操作に伴って、クリック部材221のL字曲げ部がスイッチ217のノブを操作し、液晶表示部109の入/切を行う。
【0035】
次に、液晶表示部109の左右回転用の軸部を構成するため、第2のベース部材211の下側端部の軸穴に対して構成される、液晶表示部109の下側の軸部の構造について説明する。
【0036】
この液晶表示部109の下側の軸部の構造は、図7及び図9に示すように、第2のベース部材211の他端部(図で下端部)に当たる折曲された端片部に穿設された軸穴を用いて構成する。このため、第2のベース部材211の他端部の軸穴には、軸部の一端にフランジを設けた構造の下シャフト215を回転自由に挿通する。さらに、下シャフト215の軸部には、第1のベース部材202の軸穴を回転自由に挿通する。そして、この状態で、下シャフト215の軸部の自由端部を加締めすることにより、第1のベース部材202の軸穴から抜け落ちないように加工して液晶表示部109の下側の軸部の構造を完成する。このように構成した液晶表示部109の下側の軸部の構造では、第2のベース部材211が、第1のベース部材202に対して回転可能に支受することになる。
【0037】
次に、液晶表示部109の上下回転用の軸部の構成について説明する。
【0038】
図7及び図9に示すように、第2のベース部材211の略中央部には、液晶表示部109を上下回転させるための軸穴が穿孔されている。この第2のベース部材211の中央部の軸穴には、上下回転用の軸部を構成する部材と共に、第3のベース部材231に突設された軸部が軸挿される。なお、第3のベース部材231に突設された軸部231aは、貫通穴が設けられた中空構造に形成されている。この軸部231aの貫通穴内には、複数のケーブルを通し、このケーブルによって液晶表示部109とカメラ本体101との情報の伝達を行えるように構成されている。
【0039】
この第3のベース部材の軸部231aには、上下回転用の軸部を構成するための複数の部材が取り付けられる。この第3のベース部材の軸部231aに取り付けられる複数の部材を取り付け順に説明する。まず、第3のベース部材の軸部231aには、上下回転のストッパ部を備えたスペーサー232を挿通し、次に第2のベース部材211の軸穴が挿通される。
【0040】
さらに、第3のベース部材の軸部231aには、第2のベース部材211の外側に、第2のベース部材211の補強部材233、クリック用凸部を備えた皿ばね234、クリック用凹部を備えたクリック部材235が挿通される。
【0041】
これと共に、第3のベース部材の軸部231aには、クリック部材235の外側に、液晶表示部109の表示情報を上下反転させる操作部材236が取り付けられる。そして、この状態で、第3のベース部材231を第2のベース部材211に対して回転可能に加締めることで各部品の脱落を防止し、上下回転用の軸部が完成される。
【0042】
上述した上下回転用の軸部に設けられる操作部材236には、L字状に折曲形成した操作アームが、スイッチ238のノブに臨むように、形成されている。このスイッチ238は、保持部材237上の所定位置に載置された状態で、一方のビス239aにより締結されている。
【0043】
この上下回転用の軸部では、ヒンジ装置201の開閉操作に伴って、操作部材236のL字状の操作アームがスイッチ238のノブを操作することによって液晶表示部109の表示情報を上下反転させるように構成されている。
【0044】
また、第2のベース部材211には、補強部材233が、他方のビス239bによって締結され、第2のベース部材211が補強部材233で補強されるように構成されている。さらに、この上下回転用の軸部では、皿ばね234の付勢作用により、開閉操作に伴って摺動トルクとクリック力とが発生するように構成されている。
【0045】
次に、上述したヒンジ装置201を利用して液晶表示部109をカメラ本体101に装着することにより、カメラ本体101からヒンジ装置201が突出しないように構成したヒンジ装置を備えたデジタルカメラについて説明する。
【0046】
このデジタルカメラでは、カメラ本体101(電子機器本体)の所定側面側(ここでは背面側)へ下がった位置に配置したヒンジ装置201が角部から外方へ突出しないように配設する。これと共に、このデジタルカメラでは、液晶表示部109を左右回転して開き、上下回転して表示面の向きを変える動作中に、液晶表示部109がカメラ本体101に接触しないようにクリアランスを設定して構成し、デザインの制約を低減する。
【0047】
次に、このデジタルカメラのデザインの制約を低減するための構成について説明する。このヒンジ装置201では、回動範囲制限機構付きシャフトによって、左右方向へ180°未満の所定角度までしか開かないように構成する。これにより所定角度に開いた状態のヒンジ装置201に支持された液晶表示部109を上下方向に回転させていったときに、液晶表示部109がカメラ本体101から所定のクリアランスを持って離れた状態で回転するよう構成する。
【0048】
本実施の形態では、具体例で説明すると、回動範囲制限機構が装着されたシャフトによって、ヒンジ装置201が左右方向へ172°までしか開かないように構成する。これにより、このデジタルカメラでは、液晶表示部109をヒンジ装置201の172°の全開状態まで開いてから、液晶表示部109を上下回転させていく。すると、このデジタルカメラでは、図6に示すように、液晶表示部109がカメラ本体101から距離を保ちながら接触することなく回転させることが可能となる。
【0049】
また、このデジタルカメラでは、カメラ本体101に対してヒンジ装置201が出っ張らないように、ヒンジ装置201を引き込んだ状態で配置している。このため、ヒンジ装置201は、左右回転して全開状態となったときに、回動範囲制限機構が装着されたシャフトの機能によって172°の停止角度で確実に停止するよう高い精度が求められる。
【0050】
なぜなら停止角度の精度が低い場合には、ヒンジ装置201の停止角度を172°に設定しても、停止角度に誤差が大きく180°近くまでヒンジ装置201が開いてしまうこととなると、結局カメラ本体101に擦れてしまう。
【0051】
また反対に、停止角度の精度が低い場合には、停止位置のばらつきを考慮して、予め160°等の手前の停止角度に設定すると、撮影光軸と表示部の角度のズレが著しく大きくなって、使い勝手が低下してしまう虞がある。
【0052】
そこで、本実施の形態に係わるデジタルカメラでは、液晶表示部109を支持するヒンジ装置201の停止角度が所定の停止角度(ここでは172°)で、停止させるため、回動範囲制限機構が装着されたシャフトにクリック機構を設ける。
【0053】
この回動範囲制限機構が装着されたシャフトに一体的に設けるクリック機構では、クリック力を強化するために、回転中心に対して停止角度に対応した172°開いた位置に一対の凸部222、223を配置する。すなわち、クリック部材221に設けられた凸部222、223のピッチは、ヒンジ装置201の回転軸中心に対して、液晶表示部109の開閉可能角度と同じ略172°に設定する。
【0054】
このヒンジ装置201では、一対の凸部222、223と着脱可能に係合する第1凹部203と第2凹部204とを、第1のベース部材202の上シャフト213を軸着した透孔の周囲の面部上の所定位置に配置する。図1(C)に示すように、この第1凹部203は、凸部222、223に比べて幅を狭く形成する。また、図1(B)に示すように、第2凹部204は、凸部222、223に比べて、所定距離だけ幅を広く形成する。
【0055】
このヒンジ装置201の回動範囲制限機構付きシャフトでは、液晶表示部109がカメラ本体101に収納された状態(図3に示す状態)において、クリック機構が図1に示す係合状態となっている。すなわち、この液晶表示部109を所定側面上に収納した収納状態(全閉状態)では、ヒンジ装置201の第1のベース部材202とクリック部材221との間に配設された、クリック機構が図1に示す係合状態で係合する。
【0056】
この液晶表示部109の収納状態では、第1のベース部材202に対する第2のベース部材211の回動位置が回動可能範囲の一方端となる。このとき、クリック部材221に形成された凸部の一方の凸部222が、第1のベース部材202に形成された幅の狭いほうの第1凹部203に嵌った係合状態で係合する。第1凹部203は、凸部222に比べて、幅が狭く小さいため、凸部222の先端が第1凹部203の底面には届いていない係合状態で嵌っている。
【0057】
一方、クリック部材221に形成された他方の凸部223は、第1のベース部材202に形成された幅の広いほうの第2凹部204に嵌った係合状態で係合する。このとき、このクリック機構では、一方の凸部222と第1凹部203との係合によって、位相が決定している。
【0058】
このため、第1のベース部材202に形成された他方の凸部223は、凹部204の一方端の傾斜面に押し当てられて位置決めされるよう付勢された状態で留められている状態となっている。言い換えると、第1のベース部材202に形成された他方の凸部223は、第2凹部204の中央部に遊置されているものではない。
【0059】
よって、液晶表示部109の収納状態(全閉状態)におけるヒンジ装置201では、上述した一対の凸部222、223と、第1凹部203と第2凹部204との係合によって、ガタが抑えられた状態で保持されている。
【0060】
次に、液晶表示部109を、回動範囲制限機構付きシャフトの作用で収納状態から左右方向へ回転して、全開状態まで開く場合について説明する。この液晶表示部109の全開状態では、第1のベース部材202に対する第2のベース部材211の回動位置が回動可能範囲の他方端となる。
【0061】
操作者が、図1及び図3に示す収納状態から液晶表示部109を開いていくと、凸部222が第1凹部203から離脱するときに、操作者にクリック感を伝えて、これと同時に係合状態が解除される。さらに、操作者は、液晶表示部109を開くように操作する。すると、この操作者の操作に対しては、ヒンジ装置201の回動範囲制限機構付きシャフト部分の作用によって所定の摺動トルクが与えられる。
【0062】
操作者が、液晶表示部109を左右方向へ回転して全開状態の位置に至ると、ストッパに当接して液晶表示部109が停止し、ヒンジ装置201における第1のベース部材202とクリック部材221とは、図8に示す状態に至る。
【0063】
このヒンジ装置201では、一対の凸部222、223のピッチがヒンジ装置201の回転軸中心に対して、液晶表示部109の開閉可能角度と同じ略172°に設けられている。これと共に、このヒンジ装置201では、第2凹部204が所定幅を持つ幅広の溝に構成されている。
【0064】
このため、この液晶表示部109の全開状態でのクリック機構の係合状態は、液晶表示部109の収納状態(全閉状態)でのクリック機構の係合状態と反対の関係になっている。
【0065】
すなわち、クリック部材221に設けられた他方の凸部223は、第1のベース部材202に形成された幅狭の凹部である第1凹部203に嵌った状態となる。そして、一方の凸部222は、第1のベース部材202に形成された幅広の第2凹部204に嵌った状態となる。
【0066】
さらに、この液晶表示部109の全開状態でのクリック機構の係合状態では、他方の凸部223が第1凹部203に係合して位相が決定している。このため、第1のベース部材202に形成されたもう一方の凸部222は、幅広の凹部204の中央部に位置するのではなく、幅広の凹部203の他方端の傾斜面に押し当てられて位置決めされるよう付勢された状態で留められている。
【0067】
なお、このヒンジ装置201におけるクリック機構では、全開時の開き角度が180°未満である172°である。このため、第1のベース部材202には、全開時の開き角度位置と、全閉時の閉じ角度位置とに、凸部222、223の各々が係合する各凹部を、それぞれ独立して形成することができない。これは、全開時の開き角度位置と、全閉時の閉じ角度位置とに、それぞれ凸部222、223が係合する凹部を形成すると、これらが重なって一体化してしまうからである。
【0068】
そこで、このクリック機構では、一対の凸部222、223のピッチを、収納状態(全閉状態)から全開状態までの開閉可能角度と略同じ角度(ここでは172°)に設定する。これと共に、このクリック機構では、第1凹部203によって、全開時の開き角度位置と、全閉時の閉じ角度位置との位相を高い精度で位置決めする。
【0069】
また、このクリック機構では、収納状態(全閉状態)にあるときに、凸部223と、第2凹部204の一方の斜面との圧接と、第1凹部203と凸部222との係合とによって、ヒンジ装置201が開くことを抑制する。このため、このクリック機構では、収納状態(全閉状態)から、開動作を開始するときのクリック感を比較的に強くできる。
【0070】
さらに、このクリック機構では、全開状態にあるときに、凸部223と第1凹部203との係合と、凸部222と第2凹部204の他方の斜面との圧接とによって、ヒンジ装置201が閉じることを抑制する。このため、このクリック機構では、全開状態から、閉動作を開始するときのクリック感を比較的に強くできる。
【0071】
また、上述したヒンジ装置201を備えたデジタルカメラでは、クリック部材221と第1のベース部材202との関係のみで停止位置が決められるように構成されているので、停止位置精度を高くできる。
【0072】
次に、このヒンジ装置201に設ける補助ストッパ(補助停止手段)について説明する。
【0073】
この補助ストッパは、全開状態にあるヒンジ装置201の開き方向に所定値以上の力が加わった時に、ヒンジ装置201で支持された液晶表示部109が、さらに開く方向に移動することを防止するものである。
【0074】
図7に示すように、この補助ストッパは、ストッパ片224と、第1のベース部材202にそれぞれ設けられた、全閉制止部202aと、全開制止部202bとで構成する。
【0075】
このストッパ片224は、クリック部材221からL字状に立ち曲げられた突片として形成する。この全閉制止部202aは、図1に示すように、全閉状態でストッパ片224の側面が当接してそれ以上閉方向へ移動するのを制止するように、第1のベース部材202の所定位置に当接面として一体的に形成する。
【0076】
この全開制止部202bは、図8に示すように、全開状態でストッパ片224の側面が当接してそれ以上開方向へ移動するのを制止するように、第1のベース部材202の所定位置に当接面として一体的に形成する。
【0077】
このように構成された補助ストッパは、カメラ本体101の外から見えないヒンジ装置20と一体的に設けているので、デジタルカメラの外観に影響を及ぼさない。また、このような補助ストッパを設けた場合には、ヒンジ装置に支持された液晶表示部109が過剰に回転してカメラ本体101の外観面へ当たって傷付けたり、打痕を発生させたりすることを防止できる。
【0078】
また、このデジタルカメラでは、液晶表示部109が収納状態(全閉状態)となったときに、液晶表示部109を安定して支持するため、図10に示すように、カメラ本体101側に一対の受け部111を設ける。
【0079】
この受け部111を設けた場合には、液晶表示部109の自由端部周辺に当接して、液晶表示部109を閉め切った状態で不用意な隙間をカメラ本体101と液晶表示部109との間に生じさせないようにできる。
【0080】
また、このヒンジ装置201では、凸部222、223が第1凹部203、第2凹部204に嵌っている状態以外の途中の開閉時に、凸部222、223を含む突出部が第1のベース部材202の平面上を摺動する。よって、このヒンジ装置201では、開ききった時及び閉じきった時にのみ、使用者にクリック感が伝えられるので操作性が高められる。
【0081】
なお、本実施の形態では、ヒンジ装置201を全開まで開いた時の開き角度が172°に設定されている。これにより全開状態において、液晶表示部109を上下に回転させたとき、液晶表示部109がカメラ本体101と所定距離を保って回転する。
【0082】
このため、カメラ本体101に液晶表示部109が当たって傷付くことを防止できる。これと共に、このデジタルカメラでは、ヒンジ装置201を図4に示したような突き出たデザインではなく、図6に示すように突出を抑えた形状にすることができ、デザインの制約を少なくすることができる。
【0083】
また、このように構成したデジタルカメラでは、液晶表示部109が図5に示すようにカメラ本体101に対して左寄りに位置することになる。しかし、このデジタルカメラでは、撮影者が被写体中央にカメラ本体101を構えた状態でヒンジ装置201を全開まで開いたときの開き角が172°である。このため、このデジタルカメラでは、無意識に液晶表示部109の表示面が撮影者301側を向くことになり、液晶表示部109の視認性を高めることができる。
【0084】
また、前述のとおりヒンジ装置201は、上下への回転軸と左右への回転軸とを有する2軸構造であるため、液晶表示部109を自由な角度に設定することが可能である。よって、このデジタルカメラでは、ハイアングル撮影やローアングル撮影時等でも液晶表示部109を撮影者寄りに向けたまま、レンズを被写体側に向けることができる。
【0085】
なお、本実施の形態のヒンジ装置201では、開き角度が172°の場合について説明したが、172°丁度である必要はなく180°前後近傍の開き角度であっても同様に構成可能である。また、本実施の形態では、カメラに限って説明を行っているが、ビデオカメラ、携帯電話等、ヒンジ装置201を有するあらゆる電子機器においても適用できる。
【符号の説明】
【0086】
101 カメラ本体
109 液晶表示部
201 ヒンジ装置
202 第1のベース部材
202a 全閉制止部
202b 全開制止部
203 第1凹部
204 第2凹部
211 第2のベース部材
212 皿ばね
213 上シャフト
221 クリック部材
222 凸部
223 凸部
224 ストッパ片
231 第3のベース部材
231a 第3のベース部材の軸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の部材に取り付けられる第1のベース部材と、
他方の部材に取り付けられ、前記第1のベース部材に対して回動する第2のベース部材とを有し、
前記第2のベース部材が前記第1のベース部材に対して回動する際に、前記第1のベース部材の面上には前記第2のベース部材と摺動する第1の摺動面が形成されるとともに、前記第2のベース部材の面上には前記第1のベース部材と摺動する第2の摺動面が形成されるものであって、
前記第1の摺動面または前記第2の摺動面の一方に、前記第1のベース部材に対する前記第2のベース部材の回動範囲に対応するピッチで配置された一対の凸部を形成し、
前記第1の摺動面または前記第2の摺動面の他方に、前記凸部の幅より幅の狭い第1の凹部を形成するとともに、前記凸部の幅より幅の広い第2の凹部を形成し、
前記一対の凸部の一方が前記第1の凹部に係合するとき、前記一対の凸部の他方が前記第2の凹部の一方端に当接するように、前記第1の凹部と前記第2の凹部とのピッチが決められることを特徴とするヒンジ装置。
【請求項2】
前記第1のベース部材に対する前記第2のベース部材の回動位置が回動範囲の一方端にあるとき、前記一対の凸部の一方が前記第1の凹部に係合するとともに、前記一対の凸部の他方が前記第2の凹部の一方端に当接し、前記第1のベース部材に対する前記第2のベース部材の回動位置が回動範囲の他方端にあるとき、前記一対の凸部の他方が前記第1の凹部に係合するとともに、前記一対の凸部の一方が前記第2の凹部の他方端に当接することを特徴とする請求項1に記載のヒンジ装置。
【請求項3】
前記第1のベース部材が電子機器の本体に固定され、前記第2のベース部材が前記電子機器の表示部に固定されることで、請求項1または2に記載したヒンジ装置を介して前記本体に前記表示部を取り付けることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−58603(P2011−58603A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−211888(P2009−211888)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】