説明

ピストンスピーカへのかたまりの負荷

スピーカ用のダイアフラムであって、複数のかたまりであって、各かたまりが、前記ダイアフラムの中心から実質的に同じ半径方向の距離に位置しており、前記複数のかたまりは、2つのアレイへと分割されており、各々のアレイが、1つ以上の個別のかたまりを含む複数のかたまりを含み、使用時に、所定の周波数において、前記アレイの組が支配的な曲げモーメントを生じさせるように機能し、前記ダイアフラムの中心が前記支配的な曲げモーメントの軸上に実質的に位置し、前記支配的な曲げモーメントは、2つ以上の曲げモーメントが生成される場合には、かたまりの組み合わせによって生成される最大の大きさを有する曲げモーメントであるダイアフラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気エネルギ(オーディオ信号)を音響エネルギ(サウンド)に変換するものとして知られているコーンスピーカなどのピストンスピーカに関する。これらの装置は、磁石構造と反応するボイスコイルによって駆動される可動のダイアフラム(例えば、円すい形、平坦な形状、または他の形状である)を備えている。
【背景技術】
【0002】
形状および材料の制約ゆえに、ピストンスピーカ用のダイアフラムは、特定の周波数において厄介なリング状の共振へと分割する傾向にある。
【0003】
スピーカ用のダイアフラムは、低い周波数においてはピストンモードで振動し、ダイアフラム上のすべての点がほぼ同じ振幅および位相を有する。より高い周波数においては、屈曲波が支配的になる遷移周波数まで、曲げモードがコーン/ダイアフラムに対して支配的になる。
【0004】
放射状モードおよび円形モードという2種類の分割モードを識別することができる。
【0005】
放射状モードにおいては、波が駆動点(ボイスコイル)において始まり、リムに向かって半径方向に移動し、一部がリムにおいて再びボイスコイルへと反射される。反射波が元の波に一致する特定の周波数において、定在波が生じ、変位ノード(振幅がゼロ)および極大(振幅が最大)がダイアフラム上の固定位置(半径)に位置し、半径によって描かれる円の全体において一様な位相および振幅を有するリング状の共振が生じる。これらの放射状モードは、SPL(音圧レベル)の周波数応答にピークおよびくぼみを生じさせる。例えば、以下により詳しく論ずる図1および図2の破線を参照されたい。SPL曲線におけるこれらのピークおよびくぼみを、例えば図1に実線で示されているように平滑にすることが望ましい。
【0006】
これが、共振の分割モードで動作しているスピーカ10を示している図3にも図示されている。ダイアフラム12が、半径rで定在波の極大を有している。
【0007】
円形モードにおいては、波が、スピーカの軸に対して同心円の方向に移動する。これは、コーン本体の密度または厚さのばらつきや、コーンに取り付けられるリード線など、ダイアフラムおよび周囲の回転対称が不都合にも不完全であることによって引き起こされる。円形モードは、通常は、コーンの異なる領域の間の位相の打ち消しゆえに、SPLに寄与することがない。
【0008】
この影響を低減しようとする1つの試みが、国際公開第2005101899号パンフレットに存在し、ダイアフラムに連結されたボイスコイル、および最低限の一機械インピーダンス手段の位置およびかたまりの選択によって、ダイアフラムにおける正味の横モード速度を低減する方法が説明されている。これが、ダイアフラム15上にボイスコイル26を中心とする3つのリング20、22、および24が位置している図4に図示されている。図5に示されている1つのさらなる手法は、特定の周波数においてコーンの縁部の挙動に影響を及ぼすように、環状のかたまりの負荷を、一般に、周囲とコーン本体との間の縁部に配置された弾性材料のじゅず玉30の形態で、コーンスピーカに適用することである。さらに、放射状モードの振幅が最大である半径上のコーンに環状のかたまりを負荷すること(図6を参照)は、問題を解決しない。これは、この放射状モードによって引き起こされるSPLのピークおよびくぼみについての解決策をもたらさず、ピークおよびくぼみをより低い周波数へずらすだけ(図2の実線)であって、ピークおよびくぼみを最小化することがなく、したがってこの問題に対する解決策をもたらさない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2005101899号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、放射状の分割モードの影響を低減するスピーカを提供することにある。さらなる態様において、本発明は、かかるスピーカの設計および/または製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
最も広い意味において、一態様において、本発明は、ダイアフラムの中心から実質的に同じ半径方向の距離に配置された少なくとも2つの追加のかたまりを含むダイアフラムを有するスピーカを提供する。これら2つのかたまりは、連続的ではなく、すなわち従来技術のような円形のかたまりを形成するようにはつながっていない。これらのかたまりがお互いから離れており、すなわち連続的でないため、それらの作用は、その半径における定在波の振幅および/または位相がダイアフラムの全周において一様でなくなるような作用である。これが、改善されたやり方で定在波を減衰させ、あるいは低減するように機能する。好ましくは、かたまりが配置される半径が、スピーカのリング共振周波数に対応する。
【0012】
別の態様において、本発明は、いくつかの減衰手段が適用されたダイアフラムを有するスピーカを提供する。これらの減衰手段は、かたまり、剛性が高められた領域、または不要な振動を減衰させる任意の他の手段であってよい。減衰手段は、ダイアフラムの表面を横切ってダイアフラムの中心(ボイスコイル)を実質的に通過する最大減衰の線を生み出すように、ダイアフラムの中心の両側におけるダイアフラムのいくつかの部位に適用される。当然ながら、この最大減衰の線は、通常は円形のダイアフラムの直径に沿って存在するが、他の形状(例えば、楕円形)のダイアフラムの表面を横切ることも同様に可能である。通常であればリング共振が生じるであろう特定の周波数において、減衰手段が、減衰手段が適用された部位の共鳴振動を減衰させ、共鳴振動は、減衰の加えられない領域において続く。このようにして、上述のように、定在波の振幅および/または位相が、ダイアフラムの全体において一様ではなくなる。したがって、定在波が、改善されたやり方で低減される。減衰が加えられていない領域において、通常はやはりダイアフラムの中心を実質的に通過する最大曲げモーメントが生じる。
【0013】
通常は、減衰手段が、ダイアフラムの中心の両側においてダイアフラムの表面を巡って対称に適用され、その場合、最大曲げモーメントが減衰させられた部分の間に生じ、したがって最大減衰および最大曲げモーメントの線が直交する。
【0014】
上述のように、一実施形態によれば、減衰手段が、ダイアフラムの表面に分布したかたまりであってよい。通常は、これらのかたまりが、所与の半径においてダイアフラムの中心の両側に位置する2つのアレイに分布する(ダイアフラムが円形の場合)。かたまりの分布の半径は、特定の周波数においてリング共振が通常生じる半径である。ダイアフラムが円形でない実施形態においては、アレイが、通常は、特定の周波数においてリング共振が生じると考えられる経路に沿って周状に分布する。例えば、楕円形のダイアフラムの場合には、アレイが、各点における半径方向の距離の一定の割合に位置する周状の経路に沿って延びる。
【0015】
各かたまりのアレイが、単純にかたまりのグループであることが理解される。アレイにおいて、かたまりは、周状の経路を辿るように配置され、その理由は、これが、リング共鳴振動が極大となると考えられる経路だからである。当然ながら、かたまりの他の配置も、本発明にしたがって使用可能であり、あるいは各アレイがただ1つのかたまりで構成されてもよい。
【0016】
さらなる実施形態によれば、本発明を、アレイまたは他の減衰手段の間隔に関して定義することもできる。上述のように、減衰手段は、多くの場合、ダイアフラムの中心の両側に位置する。これは、減衰手段がかたまりのアレイである場合、隣り同士のアレイの間の距離が、隣り同士のかたまりの間の距離よりも大幅に大きいことを意味する。いくつかの実施形態においては、隣り合うアレイの間の間隔が、アレイ内のかたまりの間の間隔の2倍になってもよい。
【0017】
ダイアフラム上で2つ以上の周波数において生じる2つ以上のリング共振が存在する可能性があり、これを低減することが望まれる。これらの場合、異なるリング共振をそれぞれ対象とする2組以上の減衰手段を、それぞれの異なる半径においてダイアフラムに適用することができる。これらの場合、最大の減衰の線が2本以上存在でき、結果として2つ以上の曲げモーメントを、或る周波数の範囲にわたってダイアフラムに生じさせることができる。
【0018】
本発明を、特定の領域の不要な振動の減衰に関して考えることもできる。この意味において、ダイアフラムの或る領域が、例えばかたまりのアレイによって減衰させられ、或る領域には減衰が加えられない。減衰を必要とするダイアフラムの個別の領域が存在する可能性があり、これらが対象とされる領域である。最大の減衰を有するダイアフラムの地点が存在し、それらをつなぐ実質的に真っ直ぐな線が、最大減衰の線である。
【0019】
同様に、最大曲げモーメントの線が、図に図式的に示されている直線に沿っては生じず、むしろ共振が最大の振動を生じさせる領域に生じる。これらの最大曲げの領域をつなぐ実質的に真っ直ぐな線を、最大曲げモーメントと定義することができる。疑義を避けるために、最大曲げモーメントおよび最大減衰の線は、多くの場合に直交し、アレイがダイアフラムの中心の両側に配置されるため、最大減衰の線が、通常はダイアフラムの中心を通過すると言うことができる。
【0020】
本発明の一態様によれば、スピーカ用のダイアフラムであって、複数のかたまりであって、各かたまりがダイアフラムの中心から実質的に同じ半径方向の距離に位置しており、複数のかたまりは、2つのアレイへと分割されており、各アレイが、1つ以上の個別のかたまりを含む複数のかたまりを含み、使用時に、所定の周波数において、アレイの組が支配的な曲げモーメントを生じさせるように機能し、ダイアフラムの中心が前記支配的な曲げモーメントの軸上に実質的に位置し、前記支配的な曲げモーメントは、2つ以上の曲げモーメントが生成される場合には、かたまりの組み合わせによって生成される最大の大きさを有する曲げモーメントである、ダイアフラムが提供される。
【0021】
好ましくは、各アレイが、所定の線状の経路のまわりに配置されたかたまりのグループであり、リング共振が一般にはダイアフラムの中心を中心とする周方向のリングに存在するため、さらにより好ましくは、この経路がダイアフラムを巡って周方向に延在する。
【0022】
随意により、各アレイにおける各かたまりの間隔が一定であると、有益であることが明らかになっている。
【0023】
いくつかの状況においては、かたまりの各アレイまたは任意のアレイが、かたまりを1つだけ含むことができ、あるいは正確に2つのかたまりを含むことができる。随意により、アレイは、ダイアフラムの直径を中心にして実質的に対称である。
【0024】
いくつかの場合には、2つ以上のリング共振を対象とすることができる。第2のリング共振を対象とできる場合には、すでに述べたとおりのダイアフラムが、2つのさらなるアレイへと分割された第2の複数のかたまりであって、各アレイが、1つ以上の個別のかたまりを含む複数のかたまりをさらに含み、使用時に、所定の周波数において、さらなるアレイの組が第2の支配的な曲げモーメントを生じさせるように機能し、ダイアフラムの中心が前記支配的な曲げモーメントの軸上に実質的に位置し、第2の複数のかたまりの各かたまりが、ダイアフラムの中心から実質的に同じ半径方向の距離に位置しており、該距離が、前記第1の複数のかたまりの前記距離とは異なっている。
【0025】
かたまりが内部減衰を有する材料から形成されると有益であることが実験から明らかになっているため、有益には、かたまりを弾性材料または内部減衰を有する材料から製作することができる。
【0026】
好ましくは、この弾性材料または内部減衰を有する材料が、ゴム、シリコーン、発泡ゴム、または1GPa未満の弾性係数を有する他の製品から形成される。
【0027】
多くの場合、スピーカ用のダイアフラムは、ダイアフラムをダイアフラムのマウントからばねの様相で吊る環状のロールサスペンションを使用して取り付けられる。したがって、有益には、製造効率のために、複数のかたまりのうちの少なくとも1つを、環状のロールサスペンションに一体化させることができる。
【0028】
多くの場合、かたまりは、接着剤を使用してダイアフラムに取り付けられる。有利には、製造効率のために、かたまりを接着剤の滴またはじゅず玉から形成することもできる。
【0029】
接着剤がかたまりとして使用され、あるいはかたまりを取り付けるために使用されている場合、接着剤が弾性的であり、あるいは内部減衰を有することが、優れた(滑らかな)SPL(音圧レベル)曲線をもたらすことが実験によって示されているために好ましい。理想的には、接着剤の弾性係数が1GPa未満である。
【0030】
本発明の態様を定めるもう1つのやり方は、かたまりの間隔に関し、その場合には、本発明は、スピーカ用のダイアフラムであって、複数のかたまりであって、各かたまりがダイアフラムの中心から実質的に同じ半径方向の距離に位置しており、複数のかたまりは2つのアレイへと分割されており、各アレイが1つ以上の個別のかたまりを含む複数のかたまりを含み、アレイ内の隣接する各かたまりの間の周方向の距離が、隣り合うアレイの間の周方向の距離よりも小さいダイアフラムを提供する。
【0031】
随意により、アレイ内の隣接する各かたまりの間の周方向の距離が、隣り合うアレイの間の周方向の距離の50%以下であってもよい。
【0032】
さらに、本発明の一態様は、スピーカ用のダイアフラムであって、ダイアフラムの表面が、その表面上に所与の半径で2つの中断のない周方向のスペースであって、前記周方向のスペースは、中断用のかたまりの2つのアレイによって隔てられており、各アレイが1つ以上の個別のかたまりを含んでおり、各かたまりがダイアフラムの中心から同じ半径方向の距離に位置するスペースを含んでおり、各ギャップの周方向の長さが、アレイ内の隣り合うかたまりの間の周方向の間隔よりも大きいダイアフラムを提供することができる。
【0033】
さらなる態様によれば、本発明は、スピーカ用のダイアフラムであって、複数のかたまりであって、各かたまりがダイアフラムの中心から実質的に同じ半径方向の距離に位置しており、複数のかたまりは、2つのアレイへと分割されており、各々のアレイが、1つ以上の個別のかたまりを含む複数のかたまりを含み、使用時に、所定の周波数において、アレイの組が、該アレイの組が取り付けられたダイアフラムの領域の共振を減衰させて前記半径方向の距離におけるダイアフラムの表面のリング共振を低減するように機能するダイアフラムを提供することができる。
【0034】
さらなる態様によれば、本発明は、スピーカ用のダイアフラムであって、複数のかたまりであって、各かたまりが、ダイアフラムの中心から実質的に同じ半径方向の距離に位置しており、複数のかたまりは、2つのアレイへと分割されており、各アレイが、1つ以上の個別のかたまりを含む複数のかたまりを含み、ダイアフラムの中心から、隣り合うかたまりのアレイの間に少なくとも90°の角度が存在するダイアフラムを提供することができる。
【0035】
またさらなる態様によれば、スピーカ用のダイアフラムであって、複数のかたまりであって、複数のかたまりは、2つのアレイへと分割されており、各アレイが、1つ以上の個別のかたまりを含んでおり、各アレイが、ダイアフラムを巡る楕円形の経路に延在している複数のかたまりを含み、使用時に、所定の周波数において、アレイの組が支配的な曲げモーメントを生じさせるように機能し、ダイアフラムの中心が前記支配的な曲げモーメントの実質的に軸上に位置し、前記支配的な曲げモーメントは、2つ以上の曲げモーメントが生成される場合には、かたまりの組み合わせによって生成される最大の大きさを有する曲げモーメントであるダイアフラムを提供することができる。
【0036】
さらに本発明は、ダイアフラムに支配的な曲げモーメントを生じさせる方法であって、複数のかたまりをダイアフラムに取り付けるステップを含んでおり、各かたまりが、ダイアフラムの中心から同じ半径方向の距離に位置しており、複数のかたまりは、2つのアレイへと分割されており、各アレイが、1つ以上の個別のかたまりを含んでおり、使用時に、所定の周波数において、アレイの組が支配的な曲げモーメントを生じさせるように機能し、ダイアフラムの中心が前記支配的な曲げモーメントの軸上に実質的に位置する方法を提供することができる。
【0037】
さらなる態様によれば、さらに本発明は、ダイアフラムに支配的な曲げモーメントを生じさせる方法であって、減衰手段をダイアフラムに取り付けるステップを含み、使用時に、所定の周波数において、減衰手段が支配的な曲げモーメントを生じさせるように機能し、ダイアフラムの中心が前記支配的な曲げモーメントの軸上に実質的に位置する方法を提供する。
【0038】
またさらなる態様によれば、本発明は、スピーカ用のダイアフラム上の所定の周波数のリング状共振を妨げる方法であって、1つ以上のかたまりからなる2つのアレイであって、各かたまりがダイアフラムの中心から実質的に同じ半径方向の距離に位置するアレイをダイアフラムの表面上に配置するステップを含み、最大の共振の減衰が、アレイ同士を結ぶダイアフラムの直径に沿って生じることで、リング状共振が低減される方法を提供する。
【0039】
本発明のさらなる態様においては、スピーカ用のダイアフラムであって、複数のかたまりであって、各かたまりが、ダイアフラムの中心から実質的に同じ半径方向の距離に位置しており、複数のかたまりは、2つのアレイへと分割されており、各アレイが、1つ以上の個別のかたまりを含む複数のかたまりを含み、使用時に、所定の周波数において、アレイの組が、ダイアフラムの所与の直径を横切る共振を減衰させることによって、ダイアフラムの該直径を横切る剛性を高めるように機能するダイアフラムが提供される。
【0040】
本発明の態様を、ダイアフラムの所定の領域に共鳴振動を生じさせる方法であって、ダイアフラム上に複数のかたまりを配置するステップであって、各かたまりが、ダイアフラムの中心から実質的に同じ半径方向の距離に位置しており、複数のかたまりは、2つのアレイへと分割されており、各アレイが、1つ以上の個別のかたまりを含むステップを含み、前記かたまりのアレイが、該かたまりのアレイが適用された領域における共鳴振動を減衰させることで、ダイアフラムの残りの減衰させられていない領域に共鳴振動を生じさせる方法と考えることもできる。
【0041】
他の態様によれば、本発明は、ダイアフラムの製造の方法であって、ダイアフラム上に複数のかたまりを配置するステップであって、各かたまりが、ダイアフラムの中心から実質的に同じ距離に位置するステップを含み、かたまりは、2つ以上のアレイに分割され、各アレイが、1つ以上のかたまりを含んでおり、各アレイ内の隣り同士のかたまりの間の間隔が、隣り同士のアレイの間の間隔よりも小さい方法を提供する。
【0042】
他の態様において、本発明は、スピーカ用のダイアフラムであって、複数のかたまりであって、複数のかたまりは、2つのアレイへと分割され、各アレイが、1つ以上の個別のかたまりを含んでおり、各アレイが、ダイアフラムを巡って周方向に延在する複数のかたまりを含み、使用時に、所定の周波数において、アレイの組が支配的な曲げモーメントを生じさせるように機能し、ダイアフラムの中心が前記支配的な曲げモーメントの実質的に軸上に位置し、前記支配的な曲げモーメントは、2つ以上の曲げモーメントが生成される場合には、かたまりの組み合わせによって生成される最大の大きさを有する曲げモーメントであるダイアフラムを提供する。
【0043】
さらなる態様において、本発明は、スピーカ用のダイアフラムであって、複数のかたまりであって、リング共振の振動の振幅が特定の周波数において極大となると考えられる所与の半径において、ダイアフラムの中心を中心に分布され、かたまりは、支配的な曲げモーメントを生じさせるように配置され、ダイアフラムの中心が前記支配的な曲げモーメントの実質的に軸上に位置する複数のかたまりを有し、前記支配的な曲げモーメントは、2つ以上の曲げモーメントが生成される場合には、かたまりの組み合わせによって生成される最大の大きさを有する曲げモーメントであるダイアフラムを提供することができる。
【0044】
別の態様において、本発明は、スピーカ用のダイアフラムであって、複数のかたまりであって、リング共振の振動の振幅が特定の周波数において極大となると考えられる経路に沿って、ダイアフラムの中心を中心にして分布され、かたまりは、支配的な曲げモーメントを生じさせるように配置され、ダイアフラムの中心が前記支配的な曲げモーメントの実質的に軸上に位置する複数のかたまりを有し、前記支配的な曲げモーメントは、2つ以上の曲げモーメントが生成される場合には、かたまりの組み合わせによって生成される最大の大きさを有する曲げモーメントであるダイアフラムを提供する。
【0045】
本発明は、上述の態様および好ましい特徴のあらゆる組み合わせを、そのような組み合わせが明らかに許されない場合または明示的に回避される場合を除いて包含する。
我々の提案の実施形態が、添付の図面を参照して後述される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】分割かたまりがダイアフラムに適用された後のダイアフラムの音圧レベル(SPL)曲線の変化を示している。
【図2】環状の負荷がダイアフラムに適用されたときのダイアフラムの音圧レベル(SPL)曲線の変化を示している。
【図3】共振の分割モードで動作しているスピーカを示している。
【図4】機械インピーダンスリングがダイアフラムに取り付けられたスピーカを示している。
【図5】環状のかたまりの負荷がリムに隣接して位置しているスピーカを示している。
【図6】環状のかたまりの負荷がリムから内側に位置しているスピーカを示している。
【図7】かたまりの2つの対称なアレイが適用されたスピーカを示している。
【図8】スピーカダイアフラムの表面のレーザ振動計による走査を示している。
【図9】スピーカダイアフラムの表面のレーザ振動計による走査を示している。
【図10】スピーカダイアフラムの表面のレーザ振動計による走査を示している。
【図11】2つの対称な単一のかたまりが適用されたスピーカを示している。
【図12】平たいダイアフラムおよび分割かたまりからなる2つの対称なアレイが適用されたスピーカを示している。
【図13】分割かたまりからなる対称なアレイが2組適用されたスピーカを示している。
【図14】分割かたまりからなる2つの非対称なアレイが適用されたダイアフラムを有するスピーカを示している。
【図15】図14に示したスピーカの変形版を示している。
【図16】分割かたまりからなる2つのアレイが取り付けられた楕円形のスピーカを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピーカ用のダイアフラムであって、複数のかたまりであって、各かたまりが、前記ダイアフラムの中心から実質的に同じ半径方向の距離に位置しており、前記複数のかたまりは、2つのアレイへと分割されており、各々のアレイが、1つ以上の個別のかたまりを含む複数のかたまりを含み、使用時に、所定の周波数において、前記アレイの組が支配的な曲げモーメントを生じさせるように機能し、前記ダイアフラムの中心が前記支配的な曲げモーメントの軸上に実質的に位置し、前記支配的な曲げモーメントは、2つ以上の曲げモーメントが生成される場合には、かたまりの組み合わせによって生成される最大の大きさを有する曲げモーメントであるダイアフラム。
【請求項2】
各アレイが、所定の線状の経路のまわりに配置されたかたまりのグループである請求項1に記載のダイアフラム。
【請求項3】
かたまりの各アレイが延在する前記経路が、前記ダイアフラムを巡る周方向に位置する請求項2に記載のダイアフラム。
【請求項4】
各アレイにおける各かたまりの間隔が、一定である請求項1〜3のいずれか一項に記載のダイアフラム。
【請求項5】
かたまりの各アレイまたは任意のアレイが、かたまりを1つだけ含んでいる請求項1〜4のいずれか一項に記載のダイアフラム。
【請求項6】
かたまりの各アレイまたは任意のアレイが、正確に2つのかたまりを含んでいる請求項1〜5のいずれか一項に記載のダイアフラム。
【請求項7】
前記アレイが、ダイアフラムの直径を中心にして実質的に対称である請求項1〜6のいずれか一項に記載のダイアフラム。
【請求項8】
2つのさらなるアレイへと分割された第2の複数のかたまりであって、各アレイが1つ以上の個別のかたまりを含む複数のかたまりをさらに含み、使用時に、所定の周波数において、前記さらなるアレイの組が第2の支配的な曲げモーメントを生じさせるように機能し、前記ダイアフラムの中心が前記支配的な曲げモーメントの軸上に実質的に位置し、前記第2の複数のかたまりの各かたまりが、前記ダイアフラムの中心から実質的に同じ半径方向の距離に位置しており、該距離が、前記第1の複数のかたまりの前記距離とは異なる請求項1〜7のいずれか一項に記載のダイアフラム。
【請求項9】
前記かたまりが、弾性材料または内部減衰を有する材料から形成されている請求項1〜8のいずれか一項に記載のダイアフラム。
【請求項10】
前記弾性材料または内部減衰を有する材料が、ゴム、シリコーン、発泡ゴム、または1GPa未満の弾性係数を有する他の製品から形成されている請求項9に記載のダイアフラム。
【請求項11】
前記ダイアフラムの外周をマウントに接続する環状のロールサスペンションをさらに備え、該サスペンションが、前記マウントから前記ダイアフラムを吊っており、前記複数のかたまりのうちの少なくとも1つが、前記環状のロールサスペンションに一体化されている請求項1〜10のいずれか一項に記載のダイアフラム。
【請求項12】
前記かたまりが、接着剤を使用して前記ダイアフラムに取り付けられている請求項1〜10のいずれか一項に記載のダイアフラム。
【請求項13】
前記かたまりが、接着剤の滴またはじゅず玉から形成されている請求項1〜10のいずれか一項に記載のダイアフラム。
【請求項14】
前記接着剤が、弾性的であり、あるいは内部減衰を有している請求項12または13に記載のダイアフラム。
【請求項15】
前記接着剤の弾性係数が、1GPa未満である請求項14に記載のダイアフラム。
【請求項16】
スピーカ用のダイアフラムであって、複数のかたまりであって、各かたまりが、前記ダイアフラムの中心から実質的に同じ半径方向の距離に位置しており、前記複数のかたまりは、2つのアレイへと分割されており、各アレイが、1つ以上の個別のかたまりを含む複数のかたまりを含み、アレイ内の隣接する各々のかたまりの間の周方向の距離が、隣り合うアレイの間の周方向の距離よりも小さいダイアフラム。
【請求項17】
スピーカ用のダイアフラムであって、複数のかたまりであって、各かたまりが、前記ダイアフラムの中心から実質的に同じ半径方向の距離に位置しており、前記複数のかたまりは、2つのアレイへと分割されており、各アレイが、1つ以上の個別のかたまりを含む複数のかたまりを含み、アレイ内の隣接する各々のかたまりの間の周方向の距離が、隣り合うアレイの間の周方向の距離の50%以下であるダイアフラム。
【請求項18】
スピーカ用のダイアフラムであって、前記ダイアフラムの表面が、その表面上に所与の半径で、2つの中断のない周方向のスペースであって、前記周方向のスペースは、中断用のかたまりの2つのアレイによって隔てられており、各アレイが1つ以上の個別のかたまりを含んでおり、各かたまりが前記ダイアフラムの中心から同じ半径方向の距離に位置するスペースを含み、各ギャップの周方向の長さが、アレイ内の隣り合うかたまりの間の周方向の間隔よりも大きいダイアフラム。
【請求項19】
スピーカ用のダイアフラムであって、複数のかたまりであって、各かたまりが、前記ダイアフラムの中心から実質的に同じ半径方向の距離に位置しており、前記複数のかたまりは、2つのアレイへと分割されており、各アレイが、1つ以上の個別のかたまりを含む複数のかたまりを含み、使用時に、所定の周波数において、前記アレイの組が、該アレイの組が取り付けられた前記ダイアフラムの領域の共振を減衰させて前記半径方向の距離におけるダイアフラムの表面のリング共振を低減するように機能するダイアフラム。
【請求項20】
スピーカ用のダイアフラムであって、複数のかたまりであって、各かたまりが、前記ダイアフラムの中心から実質的に同じ半径方向の距離に位置しており、前記複数のかたまりは、2つのアレイへと分割されており、各アレイが、1つ以上の個別のかたまりを含む複数のかたまりを含み、前記ダイアフラムの中心から、隣り合うかたまりのアレイの間に少なくとも90°の角度が存在するダイアフラム。
【請求項21】
スピーカ用のダイアフラムであって、複数のかたまりであって、前記複数のかたまりは、2つのアレイへと分割されており、各アレイが、1つ以上の個別のかたまりを含んでおり、各アレイが、ダイアフラムを巡る楕円形の経路に延在する複数のかたまりを含み、使用時に、所定の周波数において、前記アレイの組が支配的な曲げモーメントを生じさせるように機能し、前記ダイアフラムの中心が前記支配的な曲げモーメントの実質的に軸上に位置し、前記支配的な曲げモーメントは、2つ以上の曲げモーメントが生成される場合には、かたまりの組み合わせによって生成される最大の大きさを有する曲げモーメントであるダイアフラム。
【請求項22】
ダイアフラムに支配的な曲げモーメントを生じさせる方法であって、複数のかたまりを前記ダイアフラムに取り付けるステップを含み、各かたまりが、前記ダイアフラムの中心から同じ半径方向の距離に位置しており、前記複数のかたまりは、2つのアレイへと分割されており、各々のアレイが、1つ以上の個別のかたまりを含んでおり、使用時に、所定の周波数において、アレイの組が支配的な曲げモーメントを生じさせるように機能し、前記ダイアフラムの中心が前記支配的な曲げモーメントの軸上に実質的に位置する方法。
【請求項23】
ダイアフラムに支配的な曲げモーメントを生じさせる方法であって、減衰手段を前記ダイアフラムに取り付けるステップを含み、使用時に、所定の周波数において、前記減衰手段が支配的な曲げモーメントを生じさせるように機能し、前記ダイアフラムの中心が前記支配的な曲げモーメントの軸上に実質的に位置する方法。
【請求項24】
スピーカのダイアフラム上の所定の周波数のリング状共振を妨げる方法であって、1つ以上のかたまりからなる2つのアレイであって、各かたまりが前記ダイアフラムの中心から実質的に同じ半径方向の距離に位置するアレイを、前記ダイアフラムの表面に配置するステップを含み、最大の共振の減衰が、前記アレイ同士を結ぶダイアフラムの直径に沿って生じることで、リング状共振が低減される方法。
【請求項25】
スピーカ用のダイアフラムであって、複数のかたまりであって、各かたまりが、前記ダイアフラムの中心から実質的に同じ半径方向の距離に位置しており、前記複数のかたまりは、2つのアレイへと分割されており、各アレイが、1つ以上の個別のかたまりを含む複数のかたまりを含み、使用時に、所定の周波数において、前記アレイの組が、前記ダイアフラムの所与の直径を横切る共振を減衰させることによって、前記ダイアフラムの前記直径を横切る剛性を高めるように機能するダイアフラム。
【請求項26】
ダイアフラムの所定の領域に共鳴振動を生じさせる方法であって、前記ダイアフラム上に複数のかたまりを配置するステップであって、各かたまりが、前記ダイアフラムの中心から実質的に同じ半径方向の距離に位置しており、前記複数のかたまりは、2つのアレイへと分割されており、各アレイが、1つ以上の個別のかたまりを含むステップを含み、前記かたまりのアレイが、該かたまりのアレイが適用された領域における共鳴振動を減衰させることで、前記ダイアフラムの残りの減衰させられていない領域に共鳴振動を生じさせる方法。
【請求項27】
ダイアフラムを製造する方法であって、前記ダイアフラム上に複数のかたまりを配置するステップであって、各かたまりが、前記ダイアフラムの中心から実質的に同じ距離に位置するステップを含み、前記かたまりは、2つ以上のアレイへと分割され、各アレイが、1つ以上のかたまりを含んでおり、各アレイ内の隣り同士のかたまりの間の間隔が、隣り同士のアレイの間の間隔よりも小さい方法。
【請求項28】
スピーカ用のダイアフラムであって、複数のかたまりであって、前記複数のかたまりは、2つのアレイへと分割され、各アレイが、1つ以上の個別のかたまりを含んでおり、各アレイが、ダイアフラムを巡って周方向に延在する複数のかたまりを含み、使用時に、所定の周波数において、前記アレイの組が支配的な曲げモーメントを生じさせるように機能し、前記ダイアフラムの中心が前記支配的な曲げモーメントの実質的に軸上に位置し、前記支配的な曲げモーメントは、2つ以上の曲げモーメントが生成される場合には、かたまりの組み合わせによって生成される最大の大きさを有する曲げモーメントであるダイアフラム。
【請求項29】
スピーカ用のダイアフラムであって、複数のかたまりであって、リング共振の振動の振幅が所定の周波数において極大となると考えられる所与の半径に分布され、前記かたまりは、支配的な曲げモーメントを生じさせるように配置され、前記ダイアフラムの中心が前記支配的な曲げモーメントの実質的に軸上に位置する複数のかたまりを有し、前記支配的な曲げモーメントは、2つ以上の曲げモーメントが生成される場合には、かたまりの組み合わせによって生成される最大の大きさを有する曲げモーメントであるダイアフラム。
【請求項30】
スピーカ用のダイアフラムであって、複数のかたまりであって、リング共振の振動の振幅が所定の周波数において極大となると考えられる経路に沿って分布され、前記かたまりは、支配的な曲げモーメントを生じさせるように配置され、前記ダイアフラムの中心が前記支配的な曲げモーメントの実質的に軸上に位置する複数のかたまりを含み、前記支配的な曲げモーメントは、2つ以上の曲げモーメントが生成される場合には、かたまりの組み合わせによって生成される最大の大きさを有する曲げモーメントであるダイアフラム。
【請求項31】
実質的に添付の図面を参照して本明細書において説明され添付の図面に図示されたとおりのダイアフラムまたは方法。

【図16】分割かたまりからなる2つのアレイが取り付けられた楕円形のスピーカを示している。
【図17】スピーカ用のダイアフラム上に本発明の一実施形態によって生じる支配的な曲げモーメントを示している。
【図18】スピーカ用のダイアフラム上に本発明の一実施形態によって生じる支配的な曲げモーメントを示している。
【図19】スピーカ用のダイアフラム上に本発明の一実施形態によって生じる支配的な曲げモーメントを示している。
【図20】スピーカ用のダイアフラム上に本発明の一実施形態によって生じる支配的な曲げモーメントを示している。
【図21】接着剤でスピーカ用のダイアフラムに取り付けられた分割かたまりの一変種を示している。
【図22】ダイアフラムに取り付けられた分割かたまりの一変種を示しており、かたまりが付着物の滴である。
【図23】ダイアフラムに取り付けられた分割かたまりの一変種を示しており、かたまりが、スピーカ内でダイアフラムを吊るロールサスペンションに一体化されている。
【図24】ダイアフラムに取り付けられた分割かたまりの一変種を示しており、かたまりが、スピーカ内でダイアフラムを吊るロールサスペンションに一体化されている。
【図25】ダイアフラムに取り付けられた分割かたまりの一変種を示しており、かたまりがダイアフラムに一体化されている。
【図26】ダイアフラムに取り付けられた分割かたまりの一変種を示しており、かたまりがダイアフラムの縁部に配置されている。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図1に、或る周波数の範囲についてスピーカ用のダイアフラムの音圧レベル(SPL)曲線を示している。破線40が、分割かたまりのアレイが適用されていないときの応答を示している。見て取ることができるとおり、この特定のダイアフラムについては、2kHz〜5kHzの間で共振が生じる。実線42が、分割かたまりの適用後の同じダイアフラムについての周波数応答を示しており、共振が取り除かれていることを見て取ることができる。
【0048】
従来技術は、ダイアフラムの共鳴振動を減衰させるために環状のかたまりの負荷を使用することによって、ダイアフラムの分割の問題に対処しようと試みてきた。これは、図2の実線によって示されているように、単にダイアフラムの共振周波数を下げるだけであるため、上手くいかないことが明らかになっている。
【0049】
図3に、分割モードで動作中のダイアフラム12を有するスピーカ10を示している。ダイアフラム12が、スピーカの中心からの半径rにおいて、振幅v1の共鳴振動に直面している。図4に、この分割を機械インピーダンス手段を適用することによって改善する試みを示している。ダイアフラム15が、ボイスコイル26を中心にして位置するリング20、22、24を有している。残念ながら、これは分割の問題に対処するものではなく、単に図2に示されるように分割をより低い周波数へと移動させるだけである。
【0050】
図5に、ダイアフラム12の縁部の付近に環状のかたまり30を配置することによってダイアフラム12の縁部へと向かう分割に対処すべく環状のかたまり負荷の試みを示しており、図6に、ダイアフラム12の縁部よりも内側に環状のかたまり30を配置することによってダイアフラム12の縁部から内側へと向かう分割に対処する試みを示している。いずれも、図2に示されるように分割をより低い周波数へと移動させる効果を有している。
【0051】
図7に、本発明の一態様によるスピーカ10を示している。スピーカ10のダイアフラム12が、直径(線B−B)を中心にして対称に所定の半径rで取り付けられた分割かたまり14の2つのアレイ13を有している。この半径rは、対象とされる共鳴振動の振幅が特定の周波数において最大になると考えられる半径であるという理由で選択されている。アレイは、ダイアフラムの開き角度αについて妨害され、この場合にαは60°である。しかしながら、これは、要件に応じた任意の他の角度であってよく、おそらくは30°、45°、あるいは90°であってよい。スピーカが、共鳴振動がこの半径において生じる特定の周波数で動作しているとき、これらの分割かたまり14によって覆われたダイアフラムの部分の振動が減衰させられ、すなわちダイアフラムの振動が線A−Aの周囲で減衰させられる。ダイアフラムの残りの部分は振動を続け、最大の曲げモーメントが、最大減衰または最大剛性の線A−Aに直交する線B−Bに沿って生じる。これが、通常はダイアフラム12を巡るリングにて半径rに存在すると考えられる共振リング振動を分割させ、非一様にする。
【0052】
ダイアフラム上の2つのかたまりのアレイの分布が、単に本発明を実現する1つのやり方にすぎないことは、当業者にとって明らかであろう。実際、減衰がダイアフラムのいくつかの部位にもたらされる限りにおいて、最大の曲げモーメントを、減衰のない部分に生じさせることができる。通常は、これが、最大の曲げモーメントが最大の減衰の線に対して直角に生じるように、ダイアフラムの直径に沿ったいくつかの減衰手段の分布(ダイアフラムが実質的に円形の場合)によって実現される。これを、上述のように、周方向のアレイへと組織化されたかたまりによって達成できるが、ダイアフラムのいくつかの部位にかたまりを他のやり方でグループ化して配置することによっても容易に実現可能である。当然ながら、本発明を、もっぱら円形のダイアフラムにおいて実現しなければならないのではなく、実質的に任意の形状のダイアフラム上で実現できることを、理解できるであろう。これらの場合に、減衰手段は、ダイアフラムの「直径」を定めることが必ずしも簡単でない可能性があるため(例えば、楕円形の形状の場合)、最大の減衰の線が実質的にダイアフラムの中心を通過するようにダイアフラムの表面を横切ってもたらされるように設けられる。
【0053】
さらなる実施形態においては、本発明を、他の減衰手段が適用される場合、かたまりをまったく分布させずに実現することができる。例えば、円形のダイアフラムが、その表面の一部に半径方向に延びるリブを有する場合、それらがリブの長さに沿った剛性を高め、リブが適用された部位の振動を減衰させる。したがって、最大の曲げモーメントが、剛性が高められていない領域に生じる。また、本発明によれば、別々の領域が、さらなる減衰手段の適用を必要とすることなくこれらの領域の振動が減衰させられるように、別々の剛性または他の減衰特性を有する複合ダイアフラムも考えられる。
図8、図9、および図10に、約3kHzで振動しているスピーカ10の表面のレーザ振動計の走査を示しており、この約3kHzは、周波数応答に不要なピークを生じさせるこのスピーカのリング状の共振周波数である。これらの走査は、スピーカの各領域の振動の振幅をグレースケールの濃淡で示している。暗い領域が、ダイアフラム上の大きな振幅の振動の領域に相当する一方で、より明るい領域が、より小さな振幅で振動している領域に相当する。
【0054】
図8に、いかなるかたまりも適用されていないときのスピーカ10の振動を示している。図示のとおり、ダイアフラムの縁部に向かって暗いリングが存在し、ダイアフラムのまわりのこの半径におけるリング共振を示している。図9に、約90°の開き角度でダイアフラムにかたまり14のアレイが適用された同じスピーカを示している。対象の半径におけるダイアフラムの振幅が、もはや一様でないことが明らかである。これらのかたまりが、適用の領域の振動を減衰させる(明るい部分として見て取ることができる)一方で、残りの領域は振動を続ける(暗い部分として見て取ることができる)ことができる。これが、線B−Bを中心とする最大曲げモーメントを生じさせ、リング状の共振の解消を可能にする。
【0055】
図10に、本発明の実施形態によるわずかに異なる分割かたまりのアレイを有する同じスピーカを示している。この場合には、図23および24にさらに示されるように、かたまりのアレイが弾性ゴム製ロールサスペンションに一体化されている。対象の半径におけるダイアフラムの振幅が、もはや一様でないことが明らかである。
【0056】
図11に、アレイが、半径rにおいてスピーカ10のダイアフラム12を周状に延びている単一のかたまり14から形成されている本発明の実施形態を示している。これらのアレイは、複数のかたまりからなるアレイと同じ様相で機能し、対象の共鳴振動を断ち、ダイアフラムに最大曲げモーメント(図示せず)を生じさせる。
【0057】
図12に、本発明のさらなる態様による実施形態を示している。この場合には、分割かたまり14からなる2つのアレイが、半径rにおいてダイアフラム16の直径について対象に配置されている。この場合には、ダイアフラムが円すい形ではなくて平坦であるが、本発明は図7に関して説明した様相と同じ様相で機能する。
【0058】
図13に、分割かたまりの4つのアレイが2つの組にてスピーカ10のダイアフラム12に適用されている本発明の態様を示している。アレイ18の第1の組が、ダイアフラムの中心から半径r1に配置され、この地点におけるリング共鳴振動を妨げるように配置されている。これにより、図7に関して説明した様相と同じ様相で、線D−Dに沿って最大曲げモーメントが生じる。この場合には、ダイアフラムの中心から半径r2に配置され、この地点におけるリング共振を妨げるように配置されたアレイ21の第2の組も存在する。これらも、上述のように、それらの配置場所の共鳴振動を減衰させ、線C−Cに沿って最大曲げモーメントを生じさせる。この方法を使用して、特定の周波数においてリング共振が生じる2つの別個の領域を、対象とすることが可能である。この場合には、各アレイが、60°の開き角度αに分布している。
【0059】
さらに図13には、アレイ内のかたまりについて考えられるいくつかの配置が示されている。アレイ18には、周状の経路に等しく分布した5つのかたまりが存在している。これは、かたまりが、この場合には円形であるダイアフラムの外周に整列した経路に沿って線形に配置されていることを意味する。アレイ21は、それ自身が周状の経路に沿って延びている単一のかたまりから形成されている。アレイを、要件ならびに実験的に決定される性能に応じて、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、または任意の数のかたまりから形成することが可能である。
【0060】
図14に、2つのアレイの分割かたまりが非対称である本発明のさらなる態様を示している。この場合には、かたまり14のアレイがスピーカ10のダイアフラム23の中心から半径rに配置されており、これが特定の周波数においてリング共鳴振動が生じる半径だからである。この場合に、ダイアフラム22は、すでに示した形状とは異なる非円すい形を有しており、ひだ23aのパターンが形成された環状の皿の形態である。これは、本発明を、本明細書に示される形状に限られず、さまざまなダイアフラムの形状について使用できることを示している。
【0061】
一方のアレイ27が、周方向に延びる単一のアレイから形成されている一方で、他方のアレイ25は、ダイアフラム23の中心からの距離が実質的に同じである2つの分割かたまりから形成されている。これは、さまざまなかたまりアレイの構成が可能であり、それらが本明細書に示される例に限られないことを示している。最大曲げモーメントが減衰用の分割かたまりの間に生じる限りにおいて、アレイおよびかたまりの多数の組み合わせが可能である。
【0062】
図15に、図14に示したダイアフラム23の変形版を示している。図14と同様に、分割かたまりが対称でなく、スピーカ10のダイアフラム23が、ひだ23aのパターンが形成された環状の皿の形態である。やはり図14と同様に、かたまり14のアレイがスピーカ10のダイアフラム23の中心から半径rに配置されており、これが特定の周波数においてリング共鳴振動が生じる半径だからである。しかしながら、図14とは異なり、図15に示されているダイアフラム23では、ひだ23aが、図14に示されている規則的なパターンではなく、不規則なパターンにて分布している。また、図15のダイアフラムにおいては、ひだの数23aがより少ない。やはりこれも、本発明を、本明細書に示される形状に限らず、さまざまなダイアフラムの形状について使用できることを示している。
【0063】
図16に、かたまり31が楕円形のスピーカ11の楕円形のダイアフラム9に取り付けられている本発明の実施形態を示している。かたまり31が、この場合には楕円形である周状の経路を辿る2つのアレイ28にグループ化されている。かたまりがこの構成にて配置されている理由は、この場合にはリング共振が楕円形の経路を辿ると考えられるからであり、これらのかたまりが、ダイアフラム上のそれぞれの特定の位置において振動を減衰させる。当然ながら、本発明を、特有のリング共鳴振動を減衰させ、最大曲げモーメントを生じさせるために、多数のさまざまな形状のダイアフラムに使用できることは、当業者にとって明らかであろう。
【0064】
図17、図18、図19、および図20に、生じる最大曲げモーメントをさらに詳しく示している。
【0065】
図17では、かたまり32の2つのアレイ28が、線A−Aを中心にして分布している。したがって、線A−Aが最大減衰の線であり、この線に沿ったダイアフラムの領域が、この場所において実質的にボイスコイル36とのピストンモードで動作する。ピストンモードは、ダイアフラムの要素が、きわめてわずかな位相差または位相差なしでボイスコイルと一緒に往復運動する場合である。ダイアフラムの線34に沿った領域は、減衰させられないため、通常であればリング共振が生じであろう特定の周波数で共振する。したがって、この領域の中心を通過するダイアフラムの直径、すなわち線34が、アレイの中心の線A−Aに対して直角な最大曲げモーメントの線になる。
【0066】
図18は、かたまり32のアレイ28が図17のかたまりとは異なる形状の2つのかたまりのみを含んでいる点を除き、同様の構成を示している。しかしながら、これらは実質的に同じやり方で機能して、特定の周波数におけるリング共振を解消させ、最大曲げモーメント34を生じさせる。
【0067】
図19は、図13に示した筋書きと同様に、2組の対称アレイがダイアフラムの異なる領域に適用されている筋書きを示している。第1の組のアレイは、ダイアフラムの中心から半径r1においてダイアフラムに取り付けられ、この地点におけるリング共振を妨げる。これは、アレイの中心を通過する直径に直交する第1の最大曲げモーメント34を生じさせる。しかしながら、この場合には、ダイアフラムの中心から半径r2に位置する第2組のアレイが存在する。これらは、特定の周波数における半径r2の位置のリング共振を妨げるように配置されている。やはりこれらは、これらが適用されたダイアフラムの部位を減衰させ、線38に沿った最大曲げモーメントを生じさせる。したがって、図18においては、(半径r1および半径r2における)2つのリング共振を妨げる2つの最大曲げモーメントが生成される。
【0068】
図20に、各々のアレイ30において隣り合うかたまり32の間の間隔が一定でない筋書きを示している。実際、この筋書きにおいては、それらが増加する間隔にて周状に分布するように図示されている。これは、リング共振の解消のために効果的に機能することが明らかになっており、上述のように最大曲げモーメントが線34に沿って発生する。当然ながら、この「増加する間隔」の構成が、アレイのかたまりの間の間隔が不規則である多数の実施形態の一例にすぎないことを、当業者であれば理解できるであろう。
【0069】
図21〜図26に、ダイアフラム46の分割かたまりの負荷に使用されるかたまり44について考えられる構成を示している。
【0070】
図21に、接着剤50によってダイアフラム46に取り付けられたかたまり44を示している。一般に、かたまり44は、ゴムブロック、金属ステープル、などである。高い損失係数(内部減衰に起因)を有するかたまりが、SPL応答曲線について優れた平滑化効果を有する(図20)。かたまり44をダイアフラム46に取り付けるために、さまざまな接着剤50を使用することができるが、やはり高い損失係数(内部減衰に起因)を有する接着剤を使用することが、SPL曲線について平滑化効果を有することが明らかになっている。
【0071】
図22に、かたまり44がダイアフラム46の表面への付着物の滴から形成されている実施形態を示している。この実施形態においては、付着物44の滴の付着性ゆえに、接合用の接着剤が不要であり、やはり内部減衰に起因する高い損失係数を有する付着物が、より平滑なSPL曲線をもたらす。
【0072】
図23に、ダイアフラム46がロールサスペンション48によってマウント(図示せず)に取り付けられ、かたまり44がロールサスペンション48から形成されている実施形態を示している。したがって、かたまりを別途に取り付けるための接着剤が不要である。この実施形態においては、一体型のかたまり44が、ダイアフラム46の後ろ側に位置している。
【0073】
図24においては、かたまり44が、やはりロールサスペンション48に一体化されているが、この場合には平坦なダイアフラム46の前側に取り付けられている。
【0074】
図25においては、かたまり50がダイアフラム46に一体化されている(一体である)。これは、かたまりの適用という余分な組み立て工程が不要であるため、製造コストを削減し、製造効率を改善することができる。この場合には、かたまり50が、単純にダイアフラム46の一部として形成されている。
【0075】
図26においては、ダイアフラム46の外縁部46aが、ロールサスペンション48との接合部をわずかに超えて突き出している。この場合には、対象の共振周波数がダイアフラムの外縁部において生じ、したがってかたまり44(この例では付着物の滴から形成されている)がこの外縁部46aに配置されている。ここで、かたまり44は、使用時にロールサスペンション48と干渉することがないように、ダイアフラムの下面(ロールサスペンション48の取り付けとは反対側の面)に適用されている。当然ながら、かたまり44をダイアフラム46のいずれの面にも適用できることに、注意すべきである。
【0076】
図26に、外縁部46aがロールサスペンション48との接合部をわずかに超えて突き出している円形のダイアフラム46を示しているが、図26に関して、ダイアフラム46が必ずしも円形でなくてもよいことに注意すべきである。かたまり44をロールサスペンション48との接合部を超えて位置させることが望まれる場合に、ダイアフラム46の外縁部を、ダイアフラムの円周の少なくとも一部についてはロールサスペンションとの接合部において(例えば、図26に示されている線Q−Qにおいて)終端させ、かたまり44を適用すべきダイアフラム46の部分だけを、この接合部よりも突出させることができる。
【0077】
当業者であれば、以上の説明を検討した後に、本明細書に開示の広い考え方から外れることなく、均等物のさまざまな変更、修正、および削除を行なうことができるであろう。したがって、本明細書にもとづいて与えられる本発明の範囲は、本明細書に記載の実施形態の限定によってではなく、添付の特許請求の範囲によってのみ、本明細書および図面を参照して解釈されるとおりに限定される。
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公表番号】特表2013−520905(P2013−520905A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−554441(P2012−554441)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【国際出願番号】PCT/IB2011/000441
【国際公開番号】WO2011/104624
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(507176747)ピーエスエス・ベルギー・エヌブイ (10)
【氏名又は名称原語表記】PSS Belgium NV
【住所又は居所原語表記】Hoogveld 50, 9200 Dendermonde, Belgium
【Fターム(参考)】