説明

ファイバスコープ装置

【課題】観察部分側への照明光の伝送を容易とした、新規なファイバスコープ装置の実現、および画像伝送ファイバの実現を課題とする。
【解決手段】入力側端面に入力する光画像を、出力側端面に画像伝送して出力する画像伝送ファイバ11を用い、画像伝送ファイバの内部を通して、照明光Lを入力側端面110Aに伝送して射出させ、射出光により観察部分の照明を行い、対物光学系100により入力側端面に結像した光画像を出力側端面110Bへ画像伝送し、撮像素子124により画像情報化するファイバスコープ装置において、画像伝送ファイバ11の、入力側端面と出力側端面との間に、光ファイバ束の画像伝送領域外に、光ファイバ束の軸に対して交わる入射用断面110Cが形成され、1以上の照明光源121aからの照明光を入射用断面110Cから光ファイバ束110内に入射させる構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はファイバスコープ装置に関する。この発明のファイバスコープ装置は、医療用の内視鏡や、工業用の観察装置として実施できる。
【背景技術】
【0002】
ファイバスコープ装置は、人体内部を観察する医療用内視鏡や、工業上の構造体内部や機器内部を「狭隘な隙間や小さな開口」を通して観察する観察装置として広く実用化されている。
このようなファイバスコープ装置は、観察部分を照明する照明手段と、照明された観察部の像を結像する対物光学系と、この対物光学系により結像した光画像を伝送する像伝送手段と、伝送された光画像を観察像として結像させる結像光学系と、この結像光学系により結像された観察像を撮像する撮像素子を有するのが一般である。
【0003】
このようなファイバスコープ装置では、観察の際の人体への負担を軽減し、また、構造体への進入部を「より狭隘化」できるように、「挿入部の小径化」が求められ、これに応じて像伝送手段の小径化も進んでいる。
【0004】
「像伝送手段」は、可撓性の光学材質で所望の長さを有し、対物光学系により結像された観察部分の光画像を長さ方向に伝送するものであるが、従来から「セルフォック」なる登録商標により知られる「集束性光伝送体」を一本用いるものや、数μmないし数十μmの径の細い光ファイバ(ガラスファイバやプラスチックファイバ)を束ねたものが知られている。
【0005】
光ファイバを束ねた像伝送手段では、その両端における個々の光ファイバの端面の集合面が像伝送手段の長さ方向に直交する平面をなし、且つ「両端における光ファイバの配列が同一配列」となっている。
【0006】
個々の光ファイバが光を伝送することにより、像伝送手段の一端における光画像である「光強度分布」が、他端部に再現される。このようにして一端から他端への像伝送が実現される。
【0007】
集束性光伝送体を用いる像伝送手段は、集束性光伝送体自体に結像作用が付与されるため、その長さを自由に設定できない。また、像伝送路としての集束性光伝送体は、大きな曲率で撓めることが難しく、撓みが大きくなって曲がり部の曲率半径が小さくなると「像伝送機能」が低下したり、あるいは破断して折れたりすることなどが考えられる。
【0008】
「光ファイバを束ねた像伝送手段」の場合は、その光伝送路としての長さを所望の長さに設定することが容易であり、小さな曲率半径で曲げることもできる。
【0009】
一般に、このようなファイバスコープ装置では、観察対象を照明する照明手段として細身の像伝搬手段に沿わせるように「光ファイバからなるライトガイドファイバ」を備えている(特許文献1)。
【0010】
ライトガイドファイバには観察対象を正確かつ効率よく照明することが要求されるが、挿入部を細径化するとライトガイドファイバの端部加工に高い精度が必要となり、加工コストや本体価格の高価格化を招来し易い。
【0011】
特許文献2には、照明光源からの照明光を「光ファイバと集光レンズを複数個用い、集光レンズによる光が「像伝送手段の結像側の端面の周辺部」に円環状に集光するようにし、上記結像側端面から照明光を像伝送手段に入射させて、対物側端部へ「光伝送する」ことにより、像伝送手段自体を照明光のライトガイドとして用いることにより、挿入側を小径化する方法が開示されている。
【0012】
しかし、この照明方式でも、像伝送手段が小径化するに従い、照明光を結像側端面の周辺部に集光される集光スポットを小径化する必要があり、レンズ径・レンズ厚の制約や収差存在により集光レンズの配置が困難となりやすく、小径の集光スポットを結像させる集光レンズ自体も構成が複雑となりやすい。
【0013】
特許文献3には、像伝送手段として「1本のセルフォックレンズ」を用い、このセルフォックレンズ自体により「照明光を観察部分側へ伝送」する方法が記載されている。この方法は優れているが、観察部分の光画像を伝送する像伝送体部分と、照明光を伝送する部分とがセルフォックレンズ内で分離していないので、伝送された照明光がセルフォックレンズの観察部側端面で反射し、伝送された「観察部の像」に重畳して、強いハレーションを生じる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
この発明は、観察部分側への照明光の伝送を容易とした、新規なファイバスコープ装置の実現、および画像伝送ファイバの実現を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明のファイバスコープ装置は「光ファイバを束ねた光ファイバ束の、入力側端面に入力する光画像を、出力側端面に画像伝送して出力する画像伝送ファイバを用い、該画像伝送ファイバの内部を通して、照明光を入力側端面に伝送して射出させ、射出光により観察部分の照明を行い「対物光学系により入力側端面に結像した観察部分の光画像」を出力側端面へ画像伝送し、撮像素子により画像情報化するファイバスコープ装置」である。
【0016】
「画像伝送ファイバ」は、「高屈折率のコア部が低屈折率のクラッド部で被覆され、直径が数μmないし数十μmで、所望の長さを持つ細い光ファイバ」を多数本束ね、光ファイバ長手方向の一端を「ファイバ端面の集合面が、光ファイバの長さ方向に直交する平面状の入力端面をなす」ように配列一体化し、他端を「ファイバ端面の配列を入力端面におけるファイバ端面の配列に整合させて平面状の出力端面をなす」ように配列し、全体を外皮チューブで一体化したものである。
【0017】
「光ファイバ」は、従来から知られた石英ガラス等のガラス材料や、光学樹脂をコア部の材料とするものを用いることができる。ガラス材料を用いる光ファイバは、ファイバ径を小さくでき、それに応じて伝送する光画像の解像度を高くすることが出来る。一方、樹脂材料による光ファイバは、ファイバ系の細さではガラス製のファイバほどの細さを現段階では実現するのが困難であるが、光ファイバの長さは数100mオーダで長くすることが可能であり、画像伝送ファイバの長さを極めて長くでき、巨大装置の内部の観察や、あるいは地中の大深度領域の観察等も可能である。
【0018】
「対物光学系」は、観察対象の「照明された観察部分」の像を結像する光学系である。 「撮像素子」は、画像伝送ファイバの出力側端面に伝送された光画像を撮像して、画像情報かする。撮像素子としては通常のCCDエリアセンサやCMOSセンサ等を用いることができる。
【0019】
請求項1のファイバスコープ装置は、以下の如き特徴を有する。
即ち、画像伝送ファイバの「入力側端面と出力側端面との間」において、光ファイバ束の「画像伝送領域外」に、光ファイバ束の軸に対して交わる「入射用断面」が形成されており、1以上の照明光源からの照明光が「入射用断面から光ファイバ束内に入射」する構成である。
【0020】
「1以上の照明光源」は照明用の光である照明光を放射する。
「照明光源」は、光源のみ、もしくは「光源と、光源からの光束を、平行光束や、弱い集光光束、あるいは弱い発散光束等、入射用断面への入射に適した光束径体に変換するレンズ等」を含むことができる。
【0021】
「画像伝送領域」は、光ファイバ束に束ねられた光ファイバのうちで、画像伝送に拘わる光ファイバの集合である。そして、この画像伝送領域よりも外側にある領域が「画像伝送領域外」であり、この部分に入射用断面が形成される。
【0022】
請求項1記載のファイバスコープ装置は、画像伝送ファイバの入射用断面とともに「画像伝送ファイバの外周面に向かって断面形状楔形に開く反射面」を有し、1以上の照明光源からの照明光を上記反射面により反射させて入射用断面に入射させる構成とすることができる(請求項2)。
【0023】
請求項1記載のファイバスコープ装置はまた、画像伝送ファイバの外周面に「断面四辺形状の切り欠き」が形成され、この切り欠きにおける深さをなす面を入射用断面とし、切り欠き内に「照明光源の少なくとも一部をなす半導体光源」を1以上配置し、半導体光源から光ファイバ束の軸方向へ放射される照明光を、入射用断面から入射させる構成とすることができる(請求項3)。
【0024】
「半導体光源」は、LED光源や半導体レーザである。照明光源は、この場合「半導体光源のみ」もしくは「半導体光源から放射される光束を平行光束や、弱い集光光束、あるいは弱い発散光束等、入射用断面への入射に適した光束径体に変換するレンズ等」を含むことができる。
【0025】
請求項2の場合には、光源を、画像伝送ファイバの外側に設け、照明光を「反射面を介して入射用断面に入射」させる構成とすることができる。従って、この場合、光源としては、LED光源や半導体レーザに限らず、ハロゲン光源、キセノン光源、固体レーザや基体レーザ等のレーザ光源を用いることもできる。
【0026】
請求項1〜3の任意の1に記載のファイバスコープ装置は「撮像素子の受光面を、画像伝送ファイバの出力側端面に直接接触させて、画像伝送された光画像を受光する構成」とすることができる(請求項4)。
【0027】
請求項1〜3の任意の1に記載のファイバスコープ装置はまた、画像伝送ファイバの出力短側に画像伝送された光画像を、結像レンズを介して撮像素子の受光面上に結像させる構成とすることができる(請求項5)。
【0028】
請求項1〜5の任意の1に記載のファイバスコープ装置は「観察部分の像を光ファイバ束の入力側端面に結像させる対物光学系」が対物レンズであることができる(請求項6)。対物レンズは、光ファイバ束の入力側端面のサイズが小さい場合には、マイクロレンズとして構成することができる。
【0029】
請求項1〜5の任意の1に記載のファイバスコープ装置は「観察部分の像を光ファイバ束の入力側端面に結像させる対物光学系」がロッドレンズであって、入力側端面に向いた面を結像面として、入力側端面に密接させた構成であることができる(請求項7)。このようにする代わりに、ロッドレンズと入力側端面とを離隔させ、ロッドレンズによる観察部分の像が、入力側端面に結像するようにすることができる。
【0030】
請求項7のように、ロッドレンズの入力側端面に向いた面を結像面として、入力側端面に密接させた構成とすると、このロッドレンズの「入力側端面に向いた面」と密着する光ファイバの集合面が「画像伝送ファイバの画像伝送領域」を規定することになる。
【0031】
この発明の画像伝送ファイバは、上記請求項1〜7の何れかに記載された画像伝送ファイバである。
【発明の効果】
【0032】
以上に説明したように、この発明によれば新規なファイバスコープ装置と、これに用いる画像伝送ファイバを実現できる。この発明の画像伝送ファイバは、上記の如く、入力側端面と出力側端面との間に入射用断面が形成され、この入射用断面により照明光を画像伝送ファイバ内に入射させるので、画像伝送ファイバへの照明光の入射部分の構成を簡素化できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】ファイバスコープ装置の実施の形態を説明するための図である。
【図2】ファイバスコープ装置の実施の別形態2例を要部のみ示す図である。
【図3】ファイバスコープ装置の実施の他の形態例を要部のみ示す図である。
【図4】ファイバスコープ装置の実施の他の形態例を要部のみ示す図である。
【図5】ファイバスコープ装置の実施の他の形態例を要部のみ示す図である。
【図6】反射面による好適な反射角を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、実施の形態を説明する。
図1(a)はファイバスコープ装置の実施の1形態を説明図的に示している。
ファイバスコープ装置は、主として、符号10、11、12で示す3つの部分で構成されている。
【0035】
符号10で示す部分は、図の左方に存在する図示されない観察対象に対して照明光を照射し、照明された観察部分の像を結像するための「照明・対物部分」であり、対物光学系(対物レンズ)である屈折率分布型のロッドレンズ100と、これを囲繞する照明光導光筒101により構成されている。
【0036】
符号11で示す部分は「画像伝送ファイバ」を構成し、光ファイバ束110とこれを被覆する外皮チューブ111とを有している。光ファイバ束110の「ロッドレンズ100側の端面」は「入力側端面」であって、ロッドレンズ100の光軸に直交する平面をなしている。なお、外皮チューブ111は画像伝送ファイバ11の入力側(図の左方)へ延長され、照明光導光筒101とロッドレンズ100とは、延長された外皮チューブ111に囲繞されて設けられている。
【0037】
観察部分の像は、ロッドレンズ100により入力側端面上に結像される。この例においては、ロッドレンズ100の入力側端面側の端面は、入力側端面に密接している。
【0038】
光ファイバ束110の、図で右側の端面は「出力側端面」である。
符号12で示す部分は「画像伝送ファイバ11に照明光Lをカップリングさせる部分」と、画像伝送ファイバ11により伝送された「観察部分の像」を撮像するための部分を含む「照明・撮像部分」であり、照明光を放射する光源121a、121bと、結像レンズ123と、撮像素子124と、これらを収納するケーシング126と、隔壁127とを有する。
図示されない電源ケーブル・信号ケーブルが、ケーシング126の外部と撮像素子124とを連結している。
【0039】
この例において照明用光源をなす光源121a、121bは、白色LEDであって白色光を放射する。なお、図1(a)には2個の光源が描かれているが、光源の数は2個に限られない。
【0040】
画像伝送ファイバ11は上記の如く、外皮チューブ111により光ファイバ束110を被覆した構造をなしている。光ファイバ束110の部分は、図1(b)に示すように、光ファイバFを多数本束ねて構成されている。
【0041】
個々の光ファイバFは石英ガラスあるいは樹脂によるもので「高屈折率のコア部が低屈折率のクラッド部で被覆されて直径が数μmないし数十μmで、所望の長さ」を持つ。
【0042】
束ねられた光ファイバ長手方向の一端は「ファイバ端面の稠密な集合面が、像伝送手段11の長さ方向に直交する平面状の入力側端面110A」をなすように配列一体化され、他端側は「ファイバ端面の配列を入力端面におけるファイバ端面の配列に整合させて平面状の出力側端面110Bをなすように、稠密に配列一体化」されている。
【0043】
図1(c)は、画像伝送ファイバ11に照明光をカップリングさせる部分を説明図的に示している。
この実施の形態において、画像伝送ファイバ11の、入力側端面と出力側端面110Bとの間に、光ファイバ束の画像伝送領域外に光ファイバ束の軸(光画像を伝送する方向)に対して交わる入射用断面110Cが形成され、この入射用断面110Cとともに、画像伝送ファイバの外周面(外皮チューブ111の外周面)に向かって「断面形状楔形」に開く反射面112を有する。
【0044】
説明中の実施の形態においては、図1(b)において破線で示す円形状110Dの中側に束ねられている光ファイバ束部分が「画像伝送領域」であり、その外側の部分が「画像伝送領域外」である。
【0045】
説明中の実施例では、図1(c)に示すような「断面形状楔形の切り込み」が、切り込みの尖端部が上記「画像伝送領域」を囲むように形成されている。この切れ込みで形成される一方の面、即ち、入射用断面110Cをなす部分は、光ファイバ即の軸に対して直交する平面となっている。
【0046】
これに対し、反射面112を形成される部分は、円錐面をなしている。
即ち、画像伝送ファイバ11に対して上記の如き「切れ込み」が形成され、切れ込みによって形成された一方の断面が入射用断面110Cであり、この入射用断面110Cとともに切れ込みをなす「円錐面をなす部分」に反射用金属膜がアルミニウム等の蒸着により反射面112として形成される。
【0047】
図1(a)に示す光源121a、121bから放射された照明光Lは、図1(c)に示すように、反射面112に向かって照射され、反射面112により入射用断面110Cに向けて反射され、入射用断面110Cから画像伝送ファイバ11内に入射する。そして、画像伝送ファイバ1の「画像伝送領域外をなしている光ファイバ」内を入力側端面に向けて伝送され、照明光導光筒101内を伝送されて同筒101の端面から射出し、図示されない観察対象物の観察部分を照明する。
【0048】
照明された観察部分からの光は、ロッドレンズ100に入射し、ロッドレンズ100の結像作用により、光ファイバ束110の入力側端面110Aに光画像として結像する。
【0049】
この光画像は、画像伝送ファイバ11によりその出力側端面110Bに伝送され、出力側端面110Bに光画像が現れる。
【0050】
このように出力側端面110Bに伝送された光画像は、図1(a)に示すように、結像レンズ123により撮像素子124の受光面上に結像され、撮像素子124により撮像されて画像情報化される。なお、ケーシング126内に設けられた隔壁127は、画像伝送ファイバ11の出力側部分を保持するとともに、光源121a、121bからの照明光が迷光として撮像素子124に入射するのを防ぐ遮光手段としての機能を果たしている。
【0051】
入射用断面110Cから画像伝送領域外の光ファイバに入射した照明光の一部は、光ファイバの入力側端面と照明光導光筒101との境界で反射して戻り、入射用断面から射出して「戻り迷光」となる。観察部分で反射された反射光の一部は、照明光導光筒101に入射して光ファイバ内を戻り入射用断面110Cから射出して「反射迷光」となる。
【0052】
これら「戻り迷光、反射迷光」は、反射面112で反射されるので、画像伝送ファイバ11の出力側端面110Bに伝送されることはなく、したがって、撮像素子124に迷光として入射することはない。
【0053】
換言すれば、画像伝送ファイバ11の光ファイバ束110の出力側端面110Bにおける「画像伝送領域」は、伝送される光画像に対するイメージサークルをなし、このイメージサークル内に迷光が侵入することが有効に防止される。説明中の例では、このイメージサークルの大きさは「ロッドレンズ100の径を直径とする円の大きさ」に等しい。
【0054】
以下、変形例を説明する。繁雑を避けるため、混同の恐れが無いと思われるものについては、図1におけると同一の符号を用いる。
図2(a)は、照明・対物部分10の部分を変形した実施の形態であり「観察部分の像を光ファイバ束110の入力側端面に結像させる対物光学系」を対物レンズ100Aで構成した例である。
この場合には、観察部分からの反射光は、対物レンズ100Aにより入力側端面110Aに光画像として結像し、画像伝送ファイバ11の出力側端面に伝送される。
【0055】
図2(b)は、画像伝送ファイバ11の出力側を変形させた例であり、出力側端面110Bに撮像素子124Aの受光面を密着させ、出力側端面110Bに伝送された光画像を直接撮像素子124で読取って画像信号化するようにした構成である。この構成では、図1の実施の形態における結像レンズ123を省略することができ、ケーシング126を小型化できるとともにコストを下げることができる。
【0056】
図3に示す実施の形態は、画像伝送ファイバの光ファイバ束の「入射用断面110Cから出力側端面110Bにいたる部分」において、出力側端面よりも外側の部分(画像伝送領域外の部分)を切除し、この部分に、画像伝送ファイバとは別体の反射面部剤122を取り付けるようにした変形例である。
【0057】
反射面部剤122は、切頭円錐形状をなし、外周の円筒面部分が反射面122Aに形成され、軸を含む円筒状の筒穴に、図3(b)に示す如く「画像伝送ファイバの入力用断面110Cから出力側端面110Bに至る部分」を嵌め込んで両者を一体化する。
【0058】
照明光Lを反射面122Aにより反射させて、入射側断面110Cから「画像伝送領域外の光ファイバ」に入射させて、入力側端面へ向けて導光させる。
【0059】
反射面部剤122は、例えば金属で形成して円錐面部分を反射面としても良いし、樹脂で成形した部材の円錐面部分に反射面を蒸着等により形成しても良い。
図4に示す実施の形態は、画像伝送ファイバに、断面矩形状の切り欠きを形成し、この切り欠き部分に、断面三角形状のリング状の反射面部剤130を嵌め、反射面部剤130の外面をなす円錐面部分を反射面130Aとし、照明光Lを反射面130Aにより反射させて入力用断面110Cに照射するようにした構成のものである。
【0060】
上に説明した図1に示す実施の形態、図2(b)に示す実施の形態、図3、図4に示した実施の形態の何れにおいても、画像伝送ファイバには、入射用断面110Cと共に「画像伝送ファイバの外周面に向かって断面形状楔形に開く」反射面112(図1、図2(b)、122A(図3)、130A(図4)を有し、1以上の照明光源からの照明光Lをこれら反射面により反射させて入射用断面110Cに入射させる構成である。
【0061】
図5に示す実施の形態は、画像伝送ファイバの外周面に、図4に示す実施の形態と同様の「断面四辺形状の切り欠きを形成し、この切り欠きにおける「深さをなす面」を入射用断面110Cとし、上記切り欠き内に、1以上の半導体光源としてLED光源150a、150bを配置し、半導体光源150a、150bから光ファイバ束110の軸方向(図の左右方向)へ放射される照明光を、入射用断面110Cから入射させるようにした構成の形態例である。
【0062】
この場合には「照明光源と画像伝送ファイバとの組み合わせ」の構成を極めて簡素化でき、コンパクト化できる。
図4、図5の実施の各形態においては、上記「断面四辺形状の切り欠き」は、リング状であり、画像伝送ファイバの外周を1周するように形成されるが、これに限らず、断面四辺形状の切り欠きは「穴状のもの」でもよく、この穴状の切り欠きごとに反射部材や半導体光源を埋め込むように設けても良い。
【0063】
なお、図5の実施の形態の場合、切り欠きを成す面のうち、切り欠き底面にたたる部分と、入射用断面に対向する(出力側の断面)の部分には、反射膜を形成して、前述の反射迷光・戻り迷光が出力側端面に伝送されないようにするのが良い。
【0064】
上に説明した実施の各形態において、入射用断面は「画像伝送ファイバにおける伝送方向に直交する平面」として形成しているが、入射用断面は、必ずしもこれに限らず、上記伝送方向に対して直角以外の角を成す面としてもよい。この場合には入社用断面は一般に円錐面もしくはその一部となる。
【0065】
上に説明した実施の各形態においては、照明光Lを入射用断面110Cに向かって反射させる反射面の傾きについては特に説明しなかった。
【0066】
反射面の果たすべき機能は、照明光源からの照明光Lを、入射用断面110Cに向けて反射することであるが、反射面による照明光Lの反射の態様は、入射用断面110Cに対して「照明光が効率よく光ファイバ内に入射し、入力側端面へ向かって良好に伝搬する」ように定められることは言うまでもない。
反射面により反射されて入射用断面に照射される照明光は、入射用断面に対する入射角が大きすぎると、光ファイバ内で全反射せず、一部が光ファイバ外壁から漏れて、隣接する光ファイバに入り込んだりし、照明光強度を減衰させたり迷光の原因となったりする。
【0067】
図6(a)において、角:θ3は入射用断面110Cと画像伝送ファイバの画像伝送方向(軸方向)と為す角で、簡単のため、直角であるとする。光ファイバFの端面に入射角:θ1をもって入射する光は、光ファイバF内に入射する際、屈折角:θ2をもって屈折する。空気中における角:θ1と屈折角:θ2の関係は、光ファイバF(のコア)の屈折率:nにより、
n=sinθ1/sinθ2
で定まる。
【0068】
角「90度―θ2」の大きさが、光ファイバのコアの周面での全反射角:θAよりも小さいと、光ファイバFに入射した光は、その一部が光ファイバ外へ抜けてしまう。従って、光ファイバFに「全反射による光伝送」を行なわせるためには、入射角:θ1は、開口数:NA=n・sinθAに対して、
n・sinθ1<NA
を満足しなければならない。
【0069】
具体的な例を挙げると、図6(b)において、反射面112の「軸方向に対する角」をθ5、反射面112に対する入射角:θ6、反射角:θ7、入射用断面110Cの軸方向に対する傾き角:θ4とする。
【0070】
また、光ファイバFの開口数:NA=0.22とし、照明光は、平行光束にコリメートされているものとする。
この場合、入射用断面110Cの軸方向に対する傾き角:θ4を90度とし、入射光Lの入射方向を軸方向に対して直角とすると、反射面112の傾き角:θ5を45度〜51.3度とするか、もしくは、傾き角:θ5を45度とし、コリメートされた照明光Lの光ファイバ端面への入射角を0〜12.7度の範囲とすればよい。
【実施例】
【0071】
図1(a)に示す画像伝送ファイバ11として、ファイバ束110の径が1.5mm、外皮チューブ111の外径が1.7mmで、光ファイバ束を構成する光ファイバ数:Nとして7400本のものを用いた。
【0072】
ロッドレンズ100として、直径:1mmのセルフォックによるレンズを用い、照明光導光筒121として、外径:1.5mm、内径:1.0mmの透明アクリル材円筒を用い、ロッドレンズ100を嵌装した。透明アクリル材円筒の光射出面は「粗し処理」を施し、拡散光照明を行うようにした。
【0073】
ロッドレンズ100は、入力側端面の中心に光軸を合致させて入力側端面に密着させ、像伝送効率を良くするように、屈折率整合性をもった接着剤で固定した。ロッドレンズ径:1mmの外側になる部分を「画像伝送領域外」とし、この部分に光ファイバ束の軸に直交する断面による「入射用断面」を形成するとともに、上記軸に対する傾き角が45度であるような円錐面状の部分を形成し、この部分にアルミニウムを蒸着して反射膜を形成し、反射面とした。
【0074】
従って、画像伝送ファイバ11における画像伝送領域は、入力側端面・出力側端面の中心を中心とする半径:0.5mmの円形領域であり、照明光導光領域は、この直径:1mmの画像伝送領域の外側の幅:0.25mmのリング状領域である。
【0075】
光源121a等としては4個の白色LEDを用い、上記反射面の周りに軸対称に配置した。また、各光源からの光束をコリメートレンズで平行光束として照明光とした。
【0076】
結像レンズ123はガラスレンズとし、拡大倍率:7倍に設定した。
撮像素子124としては、5mm×5mmの正方形の受光面を持ち、30万画素のカラー撮像素子を用いた。
このような構成で、カラーの良好な観察画像を得ることができた。
【0077】
なお、結像レンズ123と撮像素子124の間に半透鏡を配して結像光束を分割し、分割した結像光束を接眼レンズを介して、観察画像を目視で観察できるようにすることができる。
【0078】
補足すると、例えば、上の実施の形態で、対物光学系と照明光導光筒の部分を交換可能なユニットとして形成し、交換して用いたり「使い捨て」にしたりすることができる。
【0079】
ファイバスコープ装置を内視鏡等の医療目的に使用する場合には、上記部分を使い捨てにしたり、場合により画像伝送ファイバの部分も使い捨てにするのがよい。
【0080】
医療目的に用いる場合には、対物光学系が設けられるファイバスコープ装置の先端部の形状を、滑らかな流線型等にして、挿入の際に生体を傷つけないようにする。
【符号の説明】
【0081】
121a 光源(白色LED)
112 反射面
110C 入射用断面
123 結像レンズ
124 撮像素子
11 画像伝送ファイバ
110 光ファイバ束
100 屈折率分布型のロッドレンズ
101 照明光導光筒
【先行技術文献】
【特許文献】
【0082】
【特許文献1】特開平2−272515号公報
【特許文献2】特開平6−250104号公報
【特許文献3】特開2008−289683号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバを束ねた光ファイバ束の、入力側端面に入力する光画像を、出力側端面に画像伝送して出力する画像伝送ファイバを用い、該画像伝送ファイバの内部を通して、照明光を上記入力側端面に伝送して射出させ、射出光により観察部分の照明を行い、対物光学系により上記入力側端面に結像した上記観察部分の光画像を出力側端面へ画像伝送し、撮像素子により画像情報化するファイバスコープ装置において、
画像伝送ファイバの、入力側端面と出力側端面との間に、光ファイバ束の画像伝送領域外に、光ファイバ束の軸に対して交わる入射用断面が形成され、1以上の照明光源からの照明光を上記入射用断面から光ファイバ束内に入射させる構成としたことを特徴とするファイバスコープ装置。
【請求項2】
請求項1記載のファイバスコープ装置において、
画像伝送ファイバの入射用断面とともに、画像伝送ファイバの外周面に向かって断面形状楔形に開く反射面を有し、1以上の照明光源からの照明光を上記反射面により反射させて上記入射用断面に入射させる構成としたことを特徴とするファイバスコープ装置。
【請求項3】
請求項1記載のファイバスコープ装置において、
画像伝送ファイバの外周面に、断面四辺形状の切り欠きを形成し、この切り欠きにおける深さをなす面を入射用断面とし、
上記切り欠き内に、照明光源の少なくとも一部をなす半導体光源を1以上配置し、上記半導体光源から光ファイバ束の軸方向へ放射される照明光を、上記入射用断面から入射させる構成としたことを特徴とするファイバスコープ装置。
【請求項4】
請求項1〜3の任意の1に記載のファイバスコープ装置において、
撮像素子の受光面を、画像伝送ファイバの出力側端面に直接接触させて、画像伝送された光画像を受光する構成としたことを特徴とするファイバスコープ装置。
【請求項5】
請求項1〜3の任意の1に記載のファイバスコープ装置において、
画像伝送ファイバの出力端面側に画像伝送された光画像を、結像レンズを介して撮像素子の受光面上に結像させる構成としたことを特徴とするファイバスコープ装置。
【請求項6】
請求項1〜5の任意の1に記載のファイバスコープ装置において、
観察部分の像を光ファイバ束の入力側端面に結像させる対物光学系が対物レンズであることを特徴とするファイバスコープ装置。
【請求項7】
請求項1〜5の任意の1に記載のファイバスコープ装置において、
観察部分の像を光ファイバ束の入力側端面に結像させる対物光学系がロッドレンズであって、上記入力側端面に向いた面を結像面として、上記入力側端面に密接させたことを特徴とするファイバスコープ装置。
【請求項8】
請求項1〜7の任意の1に記載された画像伝送ファイバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−147804(P2012−147804A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6355(P2011−6355)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(000115728)リコー光学株式会社 (134)
【Fターム(参考)】