説明

ファイバレーザ発振方法およびファイバレーザ発振装置

【課題】容易な制御で高出力な発振光を安定して得られるファイバレーザ発振方法および装置を提供すること。
【解決手段】制御装置10は異波長の複数の励起光L2,L3,L4のうち光ファイバ1の吸収率が最低の励起光L2を最初に入射するので、励起光L2の強度はファイバ全長において発振光の発振が可能な閾値を超えた値に維持され、ファイバ全体を反転分布の状態にし、反転分布状態に至らないファイバ部分が存在により発生し易いジャイアントパルスによるファイバ破損を防止できる。そして、その後に残りの励起光L3,L4を入射して発振光L1を発生、増幅させるので、容易な制御で高出力な発振光を安定して得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ活性物質を含むコア部材を内部に有する光ファイバに励起光を入射し、コア部材の内部で発振光を発生および増幅させ出射するファイバレーザ発振方法およびファイバレーザ発振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、所定のパターン信号を生成するパターン発生器と、該パターン信号を入力してレーザ光を出射する複数の半導体レーザと、該レーザ光を一端面から入射して増幅し他端面から出射する光ファイバとを備えたファイバレーザ発振装置(ファイバレーザ変調装置)が開示されている。このファイバレーザ発振装置は、パターン信号を低出力期間、出力上昇期間、高出力期間および出力低下期間の4期間の出力レベルで形成しているので、サージパルスを伴わない矩形状のパルス光となるレーザ光を出射することができる。
【0003】
また、特許文献2には、レーザ活性物質を含む光ファイバと、光ファイバの両端側に配置され所定の波長の光のみ反射する2つのミラーと、光ファイバの一端面から波長の異なる2つの励起光を入射する2つの励起光源とを備え、光ファイバの内部で発振光を発生および増幅させ光ファイバの他端面から出射するファイバレーザ発振装置(光ファイバレーザ)が開示されている。このファイバレーザ発振装置は、一方の励起光源によりレーザ発振状態における所定のエネルギ準位にある原子を下部エネルギ準位へ遷移し、他方の励起光源により発振光を励起しているので、安定したレーザ発振を持続することができる。
【0004】
また、特許文献3には、ダブルクラッド型の光ファイバと、光ファイバの一端面からコア部材に信号光を入射する信号光源と、光ファイバの一端面からコア部材又は内側クラッド部材に信号光とは波長の異なる励起光を入射する励起光源とを備え、励起光により信号光を増幅させ光ファイバの他端面から出射するファイバレーザ発振装置(ファイバレーザ)が開示されている。このファイバレーザ発振装置は、信号光の出射を待機状態にするときに、入射される励起光のパワーを0より大きなパワーで一定時間保持した後に0としているので、装置の立ち上がり時の信号光の出射状態を改善することができる。
【0005】
また、特許文献4には、レーザ活性物質を含む光ファイバと、光ファイバの一端面および他端面から励起光を夫々入射する2つの励起光源とを備え、光ファイバの内部で発振光を発生および増幅させ光ファイバの他端面から出射するファイバレーザ発振装置(ファイバレーザ発振器)が開示されている。このファイバレーザ発振装置は、発振光の出射面である光ファイバの他端面が発振光に対して部分透過性を有し、光ファイバの一端面が発振光に対して高反射性を有するように形成されているので、高出力の発振光を出射することができる。
【0006】
また、特許文献5には、戻り光防止部を介して連結された2本の光ファイバと、光ファイバの一端面から波長の異なる2つの励起光を入射する2つの励起光源とを備え、各光ファイバの内部で2つの発振光を発生および増幅させ光ファイバの他端面から出射するファイバレーザ発振装置(ファイバレーザ装置)が開示されている。このファイバレーザ発振装置は、一方の波長の光が他方の波長の光を含んで共振状態が起こらないようにしているので、2つの発振光を確実に出射することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007‐142380号公報(段落0010,0021、図4)
【特許文献2】特許第2905251号公報(第2頁左欄第29行〜第34行、図1)
【特許文献3】特開2008‐91773号公報(段落0010,0012)
【特許文献4】特開2009‐253075号公報(段落0011,0022、図1)
【特許文献5】特開2004‐165396号公報(段落0017〜0022、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の特許文献1に記載のファイバレーザ発振装置では、パターン信号を低出力期間、出力上昇期間、高出力期間および出力低下期間の4期間の出力レベルで形成する必要があるため、制御が複雑で高コストとなる傾向にある。また、特許文献2に記載のファイバレーザ発振装置では、一方の励起光源はレーザ発振状態における所定のエネルギ準位にある原子を下部エネルギ準位へ遷移させるものであり、他方の励起光源のみが発振光を励起させるものであるため、より高出力な発振光を得ることができない。
【0009】
一方、特許文献3〜5に記載のファイバレーザ発振装置では、複数の励起光源を用いて発振光を励起させているため、より高出力な発振光を得ることができる。ここで、図9(A)に示すように、光ファイバの入射面(一端面)から入射され透過する励起光の強度は、光ファイバの入射面からの距離が長くなるにつれて指数関数的に減少していく。すなわち、励起光は光ファイバの入射面からファイバ内を進行するに従って光ファイバに徐々に吸収される。光ファイバの入射面の近傍の位置P1においては、励起光の強度は発振光を発振させることが可能な0より大きい値の閾値、すなわち、光ファイバを反転分布の状態にするための励起光の限界強度よりも大きな値となっており、図9(B)に示すように、エネルギ準位E0の基底状態にある電子eよりもエネルギ準位E3の励起状態にある電子eの数が多い反転分布の状態となっている。電子eは、エネルギ準位E3に遷移し、ある緩和時間がたつとよりエネルギの低い状態に落ちる。そのとき電子eは、励起していた準位と遷移した光の単位エネルギ差に等しいエネルギの光を放出する。緩和時間の最も長い準位差のものが最もエネルギ、位相、進行方向の揃った光を放出する。緩和時間が長い準位差の励起側の準位にある電子eが誘導放出され、発振光が出射される。
【0010】
励起光の強度が発振光を発振させることが可能な閾値よりも僅かに大きな値となる光ファイバの入射面から所定距離離間した位置P2においては、図9(C)に示すように、エネルギ準位E0の基底状態にある電子eよりもエネルギ準位E3の励起状態にある電子eの数が僅かに多い反転分布の状態となっている。よって、図9(B)の領域で放出された緩和時間が長い準位差の光により誘導放出され、発振光が出射される。
【0011】
一方、光ファイバの位置P2からさらに離間した位置P3においては、励起光の強度は発振光を発振させることが可能な閾値よりも小さな値となっており、図9(D)に示すように、エネルギ準位E0の基底状態にある電子eよりもエネルギ準位E3の励起状態にある電子eの数が少なく反転分布の状態に至っていない。よって、図9(B)〜図9(C)の領域で放出された緩和時間の長い準位差の光は励起光として吸収され、誘導放出されない。この状態で励起光の入射が継続されると、図9(D)の領域で吸収が進み、反転分布状態に至った時点でファイバ全体が発振光を出射可能な状態となり、一気に誘導放出が起きるので、光ファイバを破損させるようなジャイアントパルスが発生する。特許文献3〜5に記載のファイバレーザ発振装置では、上述の理由からジャイアントパルスが発生して光ファイバが破損するおそれがある。
【0012】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、容易な制御で高出力な発振光を安定して得ることができるファイバレーザ発振方法およびファイバレーザ発振装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
〔ファイバレーザ発振方法〕
(請求項1)本発明のファイバレーザ発振方法は、レーザ活性物質を含む光ファイバに波長の異なる複数の励起光を入射して発振光を発生および増幅させ出射するファイバレーザ発振方法であって、前記複数の励起光のうち前記光ファイバに吸収される吸収率が最も低い前記励起光を前記光ファイバに最初に入射し、その後に残りの前記励起光を前記光ファイバに入射して前記発振光を発生および増幅させる。
【0014】
(請求項2)前記吸収率が最も低い前記励起光は前記光ファイバの一端側から入射し、残りの前記励起光は前記光ファイバの一端側および他端側の一方もしくは両方から入射するとよい。
【0015】
(請求項3)前記吸収率が最も低い前記励起光が前記光ファイバの内部を進行して端部に達したときに該励起光の強度が前記発振光を発振させることが可能な0より大きい値の閾値を下回らないようにするとよい。
【0016】
〔ファイバレーザ発振装置〕
(請求項4)本発明のファイバレーザ発振装置は、レーザ活性物質を含む光ファイバと、該光ファイバに波長の異なる複数の励起光を夫々入射可能な複数の励起光源と、該複数の励起光源における前記励起光の出射を制御する制御装置と、を備えたファイバレーザ発振装置であって、前記制御装置は、前記複数の励起光のうち前記光ファイバに吸収される吸収率が最も低い前記励起光を前記光ファイバに最初に入射し、その後に残りの前記励起光を前記光ファイバに入射して前記発振光を発生および増幅させる。
【0017】
(請求項5)前記吸収率が最も低い前記励起光を出射する前記励起光源は前記光ファイバの一端側に配置され、残りの前記励起光を出射する前記励起光源は前記光ファイバの一端側および他端側の一方もしくは両方に配置されているとよい。
【0018】
(請求項6)前記光ファイバのファイバ長は、一端側から入射される前記吸収率が最も低い前記励起光が他端側に達したときに該励起光の強度が前記発振光を発振させることが可能な0より大きい値の閾値を下回らない長さに設定されているとよい。
【0019】
(請求項7)前記光ファイバの他端側に達したときの前記吸収率が最も低い前記励起光の強度は、前記光ファイバの他端側における該励起光の強度の10〜30%の強度であるとよい。
【発明の効果】
【0020】
(請求項1)本発明によると、光ファイバに入射される波長の異なる複数の励起光のうち光ファイバに吸収される吸収率が最も低い励起光を光ファイバに最初に入射しているので、励起光の強度は光ファイバ全長において発振光を発振させることが可能な閾値を超えた値に維持される。よって、光ファイバ全体を反転分布の状態にすることができ、反転分布の状態に至らないファイバ部分が存在しているときに発生し易いジャイアントパルスによる光ファイバの破損を防止することができる。そして、その後に残りの励起光を光ファイバに入射し、最初に入射した励起光を含む全ての波長の異なる励起光により合波した発振光を発生および増幅させているので、容易な制御で高出力な発振光を安定して得ることができる。
【0021】
(請求項2)吸収率が最も低い励起光は光ファイバの一端側から入射しているので、光ファイバの他端側にて該励起光の漏れ光の処理を行うことができる。また、残りの励起光は光ファイバの一端側および他端側の一方もしくは両方から入射するようにしているので、発振光の出力を広い範囲で制御することができる。
【0022】
(請求項3)吸収率が最も低い励起光が光ファイバの内部を進行して端部に達したときに該励起光の強度が発振光を発振させることが可能な0より大きい値の閾値を下回らないようにしている。この閾値は、光ファイバを反転分布の状態にするための励起光の限界強度である。よって、光ファイバ全体を反転分布の状態に確実に変化させることができ、ジャイアントパルスの発生を防止して光ファイバの破損を防止することができる。
【0023】
(請求項4)制御装置により光ファイバに入射される波長の異なる複数の励起光のうち光ファイバに吸収される吸収率が最も低い励起光を光ファイバに最初に入射するように制御しているので、励起光の強度は光ファイバ全長において発振光を発振させることが可能な閾値を超えた値に維持される。よって、光ファイバ全体を反転分布の状態にすることができ、反転分布の状態に至らないファイバ部分が存在しているときに発生し易いジャイアントパルスによる光ファイバの破損を防止することができる。そして、その後に残りの励起光を光ファイバに入射し、最初に入射した励起光を含む全ての波長の異なる励起光により合波した発振光を発生および増幅させるように制御しているので、容易な制御で高出力な発振光を安定して得ることができる。
【0024】
(請求項5)吸収率が最も低い励起光は光ファイバの一端側から入射するように構成しているので、光ファイバの他端側にて該励起光の漏れ光の処理を行うことができ簡易な構成とすることができる。また、残りの励起光は光ファイバの一端側および他端側の一方もしくは両方から入射するように構成しているので、制御装置により発振光の出力を広い範囲で制御することができる。
【0025】
(請求項6)光ファイバのファイバ長を一端側から入射される吸収率が最も低い励起光が他端側に達したときに該励起光の強度が発振光を発振させることが可能な0より大きい値の閾値を下回らない長さとなるように設定しているので、光ファイバ全体を反転分布の状態に確実に変化させ、ジャイアントパルスの発生を防止して光ファイバの破損を防止することができる。
【0026】
(請求項7)光ファイバの他端側に達したときの吸収率が最も低い励起光の励起光強度は、光ファイバの一端側における該励起光の強度の10〜30%の強度となるように設定しているので、光ファイバの他端側を発振光の出射面とした場合に該出射面からは適度な漏れ量の漏れ光が出射されることになり、発振効率を高めて高出力の発振光を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るファイバレーザ発振装置の全体構成を示す図である。
【図2】図1のファイバレーザ発振装置における光ファイバに入射され透過する励起光の吸収率の変化を示す図である。
【図3】図1のファイバレーザ発振装置の変形例における光ファイバに入射され透過する励起光の吸収率の変化を示す図である。
【図4】励起光の波長と光ファイバにおける励起光の吸収係数との関係を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係るファイバレーザ発振装置の全体構成を示す図である。
【図6】図5のファイバレーザ発振装置における光ファイバに入射され透過する励起光の吸収率の変化を示す図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態に係るファイバレーザ発振装置の全体構成を示す図である。
【図8】図7のファイバレーザ発振装置における光ファイバに入射され透過する励起光の吸収率の変化を示す図である。
【図9】光ファイバに入射され透過する励起光の強度の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
<第1実施形態>
(ファイバレーザ発振装置の概要)
第1の実施の形態に係るファイバレーザ発振装置の概要を説明する。ファイバレーザ発振装置は、ジャイアントパルスの発生を防止しつつ、高出力の発振光を得ることができるようにしている。
【0029】
ここで、図9を参照して説明したように、緩和時間の長い準位差の光は励起光として吸収され、誘導放出されない状態で励起光の入射が継続されると吸収が進む。そして、反転分布状態に至った時点でファイバ全体が発振光を出射可能な状態となり、一気に誘導放出が起きるので、光ファイバを破損させるようなジャイアントパルスが発生する。そこで、光ファイバの一端側から入射される励起光が他端側に達したときに該励起光の強度が発振光を発振させることが可能な0より大きい値の閾値、すなわち、光ファイバを反転分布の状態にするための励起光の限界強度を下回らない長さとなるようにファイバ長を設定、すなわち図9に示す光ファイバの入射面から所定距離離間した位置P2を出射面として形成する。これにより、光ファイバ全体を反転分布の状態に確実に変化させ、ジャイアントパルスの発生を防止して光ファイバの破損を防止することができる。
【0030】
また、発振光を発振させる際の効率を高めるためには光ファイバはある程度の長さが必要であり、高出力の発振光を得るためには光ファイバには波長の異なる複数の励起光を入射する必要がある。しかし、複数の励起光すべてが、上述したように、ジャイアントパルスの発生を防止できるような構成とすることは容易ではない。
【0031】
そこで、複数の励起光のうち光ファイバに吸収される吸収率が最も低い励起光を上述の所定長の光ファイバに最初に入射する。そうすることで、励起光の強度を光ファイバ全長において発振光を発振させることが可能な閾値を超えた値に維持することができ、光ファイバ全体を反転分布の状態にすることができる。
【0032】
そして、その後に残りの励起光を光ファイバに入射する。残りの励起光は、当該励起光が他端側に達したときに、当該励起光の強度が発振光を発振させることが可能な閾値を下回るものを選択することもできる。仮に、残りの励起光単独で、光ファイバに入射した場合には、ジャイアントパルスが発生するおそれがある。しかし、残りの励起光が光ファイバに入射される前に、既に最低吸収率の励起光が光ファイバに入射されている。そのため、光ファイバ全体が既に反転分布の状態になっている。従って、残りの励起光を入射したとしても、ジャイアントパルスが発生することはない。そして、最初に入射した励起光を含む全ての波長の異なる励起光により合波した高出力な発振光を容易な制御で安定して得ることができる。
【0033】
ところで、出射面からの漏れ光は漏れ量が多い場合は発振効率が低下して高出力の発振光を得ることが困難となるため、入射面において励起光の強度を100%としたときに出射面において10〜30%の強度の漏れ光となるように光ファイバのファイバ長を設定する。
【0034】
(ファイバレーザ発振装置の詳細構成)
次に、ファイバレーザ発振装置の詳細構成について、図1を参照して説明する。図1に示すように、ファイバレーザ発振装置は、光ファイバ1と、第1〜第3励起光源2〜4と、第1〜第3ダイクロイックミラー5〜7と、コリメートレンズ8と、集光レンズ9と、第1〜第3励起光源2〜4の励起光の出射を制御する制御装置10とを備えている。光ファイバ1の一端側(図示左側)の端面を光の入射面1aとしたとき、入射面1aに対し垂直方向に延びる光軸A1上において入射面1aよりも遠方から順(左から順)に、第1ダイクロイックミラー5、第2ダイクロイックミラー6、コリメートレンズ8、集光レンズ9が配置され、光ファイバ1の他端側(図示右側)の端面(出射面1b)に対し垂直方向に延びる光軸A1上において第3ダイクロイックミラー7が配置されている。
【0035】
そして、第1ダイクロイックミラー5は、光ファイバ1の光軸A1に垂直な面に対し図示左回りにθ°回転配置されている。第2ダイクロイックミラー6は、光ファイバ1の光軸A1に垂直な面に対し図示右回りにθ°回転配置されている。第1励起光源2は、該光源2から出射される励起光L2が第1ダイクロイックミラー5で反射されたとき、励起光L2の光軸A2が光ファイバ1の光軸A1と一致するように配置されている。第2励起光源3は、該光源3から出射される励起光L3が第2ダイクロイックミラー6で反射されたとき、励起光L3の光軸A3が光ファイバ1の光軸A1と一致するように配置されている。第3励起光源4は、該光源4から出射される励起光L4の光軸A4が光ファイバ1の光軸A1と一致するように配置されている。第3ダイクロイックミラー7は、光ファイバ1の光軸A1に垂直な面に対し図示左回りにθ°回転配置されている。なお、各励起光源2,3からの励起光L2,L3の入射角(θ°)を小さくすることによりミラーコーティングのコストを低く抑えたファイバレーザ発振装置を構成することができる。
【0036】
光ファイバ1は、断面の中心に形成され、例えば、レーザ活性物質である希土類元素としてYbがドープされたコア部材1cと、該コア部材1cの周囲に形成されコア部材1cよりも低屈折率の第1クラッド部材1dと、該第1クラッド部材1dの周囲に形成され第1クラッド部材1dよりも低屈折率の第2クラッド部材1eとで構成されたダブルクラッドタイプのアクティブファイバである。光ファイバ1の入射面1aには、発振光L1を反射する全反射ミラーが設けられ、光ファイバ1の出射面1bには、低強度の発振光を反射し高強度の発振光L1を透過する出力ミラーが設けられている。
【0037】
この光ファイバ1の励起光としては、例えば、915nm、940nm、976nmの3種類の波長で効率よく励起させることができる。図4に示すように、励起光の波長を変化させたときのこの光ファイバ1の吸収係数は、波長が915nmのときは0.5dB/m、940nmのときは0.2dB/m、976nmのときは2.0dB/mとなる。この光ファイバ1は、例えば、Ybなどを配合しているものとしている。つまり、940nmの波長の励起光の吸収係数が最小、すなわち吸収率(=10^(−吸収係数/10*光ファイバにおける入射面から距離))が最低となる(図2参照)。よって、光ファイバ1のファイバ長は、入射面において励起光の強度を100%としたときに出射面において15%程度の強度の漏れ光となるように、40mと設定される。
【0038】
第1励起光源2は、例えば、波長が940nmの励起光L2を出射可能な光源である。第2励起光源3は、例えば、波長が915nmの励起光L3を出射可能な光源である。第3励起光源4は、例えば、波長が976nmの励起光L4を出射可能な光源である。そして、第1ダイクロイックミラー5は、波長が940nmの励起光L2を反射可能であって波長が976nmの励起光L4を透過可能なミラーである。第2ダイクロイックミラー6は、波長が915nmの励起光L3を反射可能であって波長が940nmおよび976nmの励起光L2,L4を透過可能なミラーである。第3ダイクロイックミラー7は、波長が940nmの漏れ光Laを反射可能であって発振光L1を透過可能なミラーである。
【0039】
(ファイバレーザ発振装置の動作)
このような構成のファイバレーザ発振装置の動作を説明する。先ず、制御装置10は、第1励起光源2から940nmの波長の励起光L2を出射させる。940nmの波長の励起光L2は、第1ダイクロイックミラー5で反射されて第2ダイクロイックミラー6を透過し、コリメートレンズ8で平行光にされ集光レンズ9で光ファイバ1の入射面1aに集光されて光ファイバ1内に導光される。光ファイバ1内に導光された940nmの波長の励起光L2は、第2クラッド1e内面で反射しながら第1クラッド1d内を透過する。このとき、図2に示すように、940nmの波長の励起光L2は光ファイバ1に吸収されつつも光ファイバ1の出射面1bまで到達するので、光ファイバ1全体を一様の反転分布の状態にすることができる。さらに、940nmの波長の励起光L2が第1クラッド1d内を透過するときにコア部材1cを透過するとコア部材1c内の希土類元素が励起されて発振光が発生する。
【0040】
次に、制御装置10は、第2励起光源3から915nmの波長の励起光L3を出射させると共に第3励起光源4から976nmの波長の励起光L4を出射させる。これらの励起光L3,L4の出射タイミングは同時に出射、もしくは何れか一方の励起光を先に出射した後に他方の励起光を出射する。915nmの波長の励起光L3は、第2ダイクロイックミラー6で反射されてコリメートレンズ8で平行光にされ、集光レンズ9で光ファイバ1の入射面1aに集光されて光ファイバ1内に導光される。976nmの波長の励起光L4は、第1ダイクロイックミラー5および第2ダイクロイックミラー6を透過してコリメートレンズ8で平行光にされ、集光レンズ9で光ファイバ1の入射面1aに集光されて光ファイバ1内に導光される。
【0041】
光ファイバ1内に導光された915nmおよび976nmの波長の励起光L3,L4は、第2クラッド1e内面で反射しながら第1クラッド1d内を透過する。このとき、図2に示すように、915nmの波長の励起光L3は、940nmの波長の励起光L2よりも大量に光ファイバ1に吸収されて光ファイバ1の出射面1bに到達するまでに略0になる。976nmの波長の励起光L4は、915nmの波長の励起光L3よりもさらに大量に光ファイバ1に吸収されて光ファイバ1の出射面1bに到達する前に略0になる。これら両励起光L3,L4は、吸収率が100%になるまでに透過したコア部材1c内の希土類元素を励起して発振光を発生させる。
【0042】
以上の3つの励起光L2,L3,L4により発生した発振光は合波され、光ファイバ1の出射面1bと入射面1aとの間で反射され増幅されて最終的に高強度となった発振光L1が出射面1bから出射される。出射面1bから出射された発振光L1は、第3ダイクロイックミラー7を透過して図略のレーザ出射部に導光されて出射される。また、出射面1bから漏れる940nmの波長の励起光L2の漏れ光Laは、第3ダイクロイックミラー7で反射されて図略の漏れ光処理部に導光されて装置外部に漏れないように処理される。
【0043】
(ファイバレーザ発振装置の作用効果)
以上説明したように、第1の実施の形態のファイバレーザ発振装置によれば、制御装置10により光ファイバ1に入射される波長の異なる3つの励起光L2,L3,L4のうち光ファイバ1に吸収される吸収率が最も低い励起光L2を光ファイバ1に最初に入射するように制御している。よって、励起光の強度は光ファイバ1全長において発振光L1を発振させることが可能な閾値を超えた値に維持され、光ファイバ1全体を反転分布の状態にすることができる。その結果、反転分布の状態に至らないファイバ部分が存在しているときに発生し易いジャイアントパルスによる光ファイバ1の破損を防止することができる。そして、その後に残りの励起光L3,L4を光ファイバ1に入射している。従って、最初に入射した励起光L2を含む全ての波長の異なる励起光L2,L3,L4により合波した発振光を発生および増幅させるように制御しているので、容易な制御で高出力な発振光L1を安定して得ることができる。
【0044】
また、吸収率が最も低い励起光L2は光ファイバ1の一端側から入射するように構成しているので、光ファイバ1の他端側にて該励起光L2の漏れ光Laの処理を行うことができ簡易な構成とすることができる。また、残りの励起光L3,L4は光ファイバ1の一端側から入射するように構成しているので、制御装置10により発振光L1の出力を広い範囲で制御することができる。
【0045】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2の実施の形態に係るファイバレーザ発振装置を、第1の実施の形態に係るファイバレーザ発振装置を示す図1に対応させた図5を参照して説明する。なお、図5において図1に示す構成と同一な構成は同一番号を付して詳細な説明を省略する。
【0046】
(ファイバレーザ発振装置の構成)
図5に示すように、ファイバレーザ発振装置は、光ファイバ1と、第1〜第5励起光源2〜4,11,12と、第1〜第5ダイクロイックミラー5〜7,13,14と、2つのコリメートレンズ8,15と、2つの集光レンズ9,16と、第1〜第5励起光源2〜4,11,12の励起光の出射を制御する制御装置17とを備えている。
【0047】
光ファイバ1の入射面1a側の光学系の配置は第1の実施の形態に係るファイバレーザ発振装置と同一構成であるが、光ファイバ1の出射面1b側の光学系の配置は第1の実施の形態に係るファイバレーザ発振装置とは異なる構成となっている。すなわち、光ファイバ1の出射面1bに対し垂直方向に延びる光軸A1上において出射面1bよりも遠方から順(右から順)に、第4ダイクロイックミラー13、第5ダイクロイックミラー14、第3ダイクロイックミラー7、コリメートレンズ15、集光レンズ16が配置されている。
【0048】
そして、第4ダイクロイックミラー13は、光ファイバ1の光軸A1に垂直な面に対し図示左回りにθ°回転配置されている。第5ダイクロイックミラー14は、光ファイバ1の光軸A1に垂直な面に対し図示右回りにθ°回転配置されている。第4励起光源11は、該光源11から出射される励起光L5が第4ダイクロイックミラー13で反射されたとき、励起光L5の光軸A5が光ファイバ1の光軸A1と一致するように配置されている。第5励起光源12は、該光源12から出射される励起光L6の光軸A6が光ファイバ1の光軸A1と一致するように配置されている。
【0049】
第4励起光源11は、例えば、波長が915nmの励起光L5を出射可能な光源である。第5励起光源12は、例えば、波長が976nmの励起光L6を出射可能な光源である。そして、第4ダイクロイックミラー13は、波長が915nmの励起光L5を反射可能であって波長が976nmの励起光L6を透過可能なミラーである。第5ダイクロイックミラー14は、発振光L1を反射可能であって波長が915nmおよび976nmの励起光L5,L6を透過可能なミラーである。
【0050】
(ファイバレーザ発振装置の動作)
このような構成のファイバレーザ発振装置の動作を説明する。先ず、制御装置17は、第1励起光源2から940nmの波長の励起光L2を出射させる。940nmの波長の励起光L2は、第1ダイクロイックミラー5で反射されて第2ダイクロイックミラー6を透過し、コリメートレンズ8で平行光にされ集光レンズ9で光ファイバ1の入射面1aに集光されて光ファイバ1内に導光される。光ファイバ1内に導光された940nmの波長の励起光L2は、第2クラッド1e内面で反射しながら第1クラッド1d内を透過する。このとき、図6に示すように、940nmの波長の励起光L2は光ファイバ1に吸収されつつも光ファイバ1の出射面1bまで到達するので、光ファイバ1全体を一様の反転分布の状態にすることができる。さらに、940nmの波長の励起光L2が第1クラッド1d内を透過するときにコア部材1cを透過するとコア部材1c内の希土類元素が励起されて発振光が発生する。
【0051】
次に、制御装置17は、第2励起光源3から915nmの波長の励起光L3を出射させ、第3励起光源4から976nmの波長の励起光L4を出射させる。さらに、制御装置17は、第4励起光源11から915nmの波長の励起光L5を出射させ、第5励起光源12から976nmの波長の励起光L6を出射させる。これらの励起光L3〜L6の出射タイミングは同時に出射、もしくは任意の順に励起光を出射する。第2励起光源3の915nmの波長の励起光L3は、第2ダイクロイックミラー6で反射されてコリメートレンズ8で平行光にされ、集光レンズ9で光ファイバ1の入射面1aに集光されて光ファイバ1内に導光される。第3励起光源4の976nmの波長の励起光L4は、第1ダイクロイックミラー5および第2ダイクロイックミラー6を透過してコリメートレンズ8で平行光にされ、集光レンズ9で光ファイバ1の入射面1aに集光されて光ファイバ1内に導光される。
【0052】
一方、第4励起光源11の915nmの波長の励起光L5は、第4ダイクロイックミラー13で反射されて第5ダイクロイックミラー14および第3ダイクロイックミラー7を透過し、コリメートレンズ15で平行光にされて集光レンズ16で光ファイバ1の出射面1bに集光されて光ファイバ1内に導光される。第5励起光源12の976nmの波長の励起光L6は、第4ダイクロイックミラー13、第5ダイクロイックミラー14および第3ダイクロイックミラー7を透過してコリメートレンズ15で平行光にされ、集光レンズ16で光ファイバ1の出射面1bに集光されて光ファイバ1内に導光される。
【0053】
光ファイバ1内に導光された各励起光L2〜L6は、第2クラッド1e内面で反射しながら第1クラッド1d内を透過する。このとき、図6に示すように、第2励起光源3の915nmの波長の励起光L3は、940nmの波長の励起光L2よりも大量に光ファイバ1に吸収されて光ファイバ1の出射面1bに到達するまでに略0になる。第3励起光源4の976nmの波長の励起光L4は、915nmの波長の励起光L3よりもさらに大量に光ファイバ1に吸収されて光ファイバ1の出射面1bに到達する前に略0になる。これら両励起光L3,L4は、吸収率が100%になるまでに透過したコア部材1c内の希土類元素を励起して発振光を発生させる。
【0054】
一方、第4励起光源11の915nmの波長の励起光L5の吸収率の変化は、第2励起光源3の915nmの波長の励起光L3の吸収率の変化と光ファイバ1の長手中央で対称形状であり光ファイバ1の入射面1aに到達するまでに略0になる。第5励起光源12の976nmの波長の励起光L6の吸収率の変化は、第3励起光源4の976nmの波長の励起光L4の吸収率の変化と光ファイバ1の長手中央で対称形状であり光ファイバ1の入射面1aに到達する前に略0になる。これら両励起光L5,L6は、吸収率が100%になるまでに透過したコア部材1c内の希土類元素を励起して発振光を発生させる。
【0055】
以上の5つの励起光L2〜L6により発生した発振光は合波され、光ファイバ1の出射面1bと入射面1aとの間で反射され増幅されて最終的に高強度となった発振光L1が出射面1bから出射される。出射面1bから出射された発振光L1は、集光レンズ16、コリメートレンズ15および第3ダイクロイックミラー7を透過し、第5ダイクロイックミラー14で反射され図略のレーザ出射部に導光されて出射される。また、出射面1bから漏れる940nmの波長の励起光L2の漏れ光Laは、集光レンズ16およびコリメートレンズ15を透過し、第3ダイクロイックミラー7で反射されて図略の漏れ光処理部に導光されて装置外部に漏れないように処理される。
【0056】
(ファイバレーザ発振装置の作用効果)
以上説明したように、第2の実施の形態のファイバレーザ発振装置によれば、第1の実施の形態のファイバレーザ発振装置と同様の効果を得ることができる。さらに、5つの励起光L2〜L6により発振光を発生させているので、より高出力な発振光L1を得ることができる。また、励起光L2以外の励起光L3〜L6は光ファイバ1の一端側および他端側の両方から入射するように構成しているので、制御装置17により発振光L1の出力をさらに広い範囲で制御することができる。
【0057】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3の実施の形態に係るファイバレーザ発振装置を、第1の実施の形態に係るファイバレーザ発振装置を示す図1に対応させた図7を参照して説明する。なお、図7において図1に示す構成と同一な構成は同一番号を付して詳細な説明を省略する。
【0058】
(ファイバレーザ発振装置の構成)
図7に示すように、ファイバレーザ発振装置は、光ファイバ1と、第2および第3励起光源3,4と、第1および第3ダイクロイックミラー6,7と、コリメートレンズ8と、集光レンズ9と、第2および第3励起光源3,4の励起光の出射を制御する制御装置18とを備えている。すなわち、第3の実施の形態に係るファイバレーザ発振装置は、第1の実施の形態に係るファイバレーザ発振装置の第1励起光源2および第2ダイクロイックミラー6が除かれた構成となっている。この場合、最低吸収率の励起光は第2励起光源3が出射する波長が915nmの励起光L3となり、光ファイバ1の長さは第1の実施の形態に係るファイバレーザ発振装置の光ファイバ1の長さよりも短くなる。すなわち、光ファイバ1のファイバ長は、入射面において励起光の強度を100%としたときに出射面において18%程度の強度の漏れ光となるように、15mと設定される。
【0059】
(ファイバレーザ発振装置の動作)
このような構成のファイバレーザ発振装置の動作を説明する。先ず、制御装置18は、第2励起光源3から915nmの波長の励起光L3を出射させる。915nmの波長の励起光L3は、第2ダイクロイックミラー6で反射され、コリメートレンズ8で平行光にされ集光レンズ9で光ファイバ1の入射面1aに集光されて光ファイバ1内に導光される。光ファイバ1内に導光された915nmの波長の励起光L3は、第2クラッド1e内面で反射しながら第1クラッド1d内を透過する。このとき、図8に示すように、915nmの波長の励起光L3は光ファイバ1に吸収されつつも光ファイバ1の出射面1bまで到達するので、光ファイバ1全体を一様の反転分布の状態にすることができる。さらに、915nmの波長の励起光L3が第1クラッド1d内を透過するときにコア部材1cを透過するとコア部材1c内の希土類元素が励起されて発振光が発生する。
【0060】
次に、制御装置18は、第3励起光源4から976nmの波長の励起光L4を出射させる。976nmの波長の励起光L4は、第2ダイクロイックミラー6を透過してコリメートレンズ8で平行光にされ、集光レンズ9で光ファイバ1の入射面1aに集光されて光ファイバ1内に導光される。光ファイバ1内に導光された励起光L4は、第2クラッド1e内面で反射しながら第1クラッド1d内を透過する。このとき、図8に示すように、976nmの波長の励起光L4は、915nmの波長の励起光L3よりも大量に光ファイバ1に吸収されて光ファイバ1の出射面1bに到達するまでに略0になる。976nmの波長の励起光L4は、強度が0になるまでに透過したコア部材1c内の希土類元素を励起して発振光を発生させる。
【0061】
以上の2つの励起光L3,L4により発生した発振光は合波され、光ファイバ1の出射面1bと入射面1aとの間で反射され増幅されて最終的に高強度となった発振光L1が出射面1bから出射される。出射面1bから出射された発振光L1は、第3ダイクロイックミラー7を透過して図略のレーザ出射部に導光されて出射される。また、出射面1bから漏れる915nmの波長の励起光L3の漏れ光Laは、第3ダイクロイックミラー7で反射されて図略の漏れ光処理部に導光されて装置外部に漏れないように処理される。
【0062】
(ファイバレーザ発振装置の作用効果)
以上説明したように、第3の実施の形態のファイバレーザ発振装置によれば、第1の実施の形態のファイバレーザ発振装置と同様の効果を得ることができる。さらに、励起光源3,4が2つであるため第1の実施の形態のファイバレーザ発振装置と比較して光学素子が少なくなり、コストを低減させることができる。
【0063】
<第1、第2、第3実施形態の変形態様>
なお、上述した各実施形態では、光ファイバ1の出射面1bから漏れる漏れ光Laは、第3ダイクロイックミラー7で反射されて漏れ光処理部に導光される構成とした。この構成に代えて、光ファイバ1の出射面1bを漏れ光Laの反射が可能な機能を有するように形成することにより、例えば、図1に示すように、光ファイバ1の出射面1bで反射された励起光L2を漏らさずに光ファイバ1で吸収させることができる。これにより、第3ダイクロイックミラー7が不要となり、低コスト化を図ることができる。また、光ファイバ1として希土類元素としてYbを含むアクティブファイバを選択したが、他のレーザ活性物質を含むアクティブファイバを選択しても同様の効果を得ることができる。また、各実施形態での励起光源の数および配置に限定されるものではなく、任意の数の励起光源を選択することができ、それらを光ファイバ1の一端側および他端側の一方もしくは両方の任意の位置に配置することができる。
【符号の説明】
【0064】
1:光ファイバ、 1a:入射面、 1b:出射面、 2〜4,11,12:第1〜第5励起光源、 5〜7,13,14:第1〜第5ダイクロイックミラー、 8,15:コリメートレンズ、 9,16:集光レンズ、 10,17,18:制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ活性物質を含む光ファイバに波長の異なる複数の励起光を入射して発振光を発生および増幅させ出射するファイバレーザ発振方法であって、
前記複数の励起光のうち前記光ファイバに吸収される吸収率が最も低い前記励起光を前記光ファイバに最初に入射し、
その後に残りの前記励起光を前記光ファイバに入射して前記発振光を発生および増幅させることを特徴とするファイバレーザ発振方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記吸収率が最も低い前記励起光は前記光ファイバの一端側から入射し、残りの前記励起光は前記光ファイバの一端側および他端側の一方もしくは両方から入射することを特徴とするファイバレーザ発振方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記吸収率が最も低い前記励起光が前記光ファイバの内部を進行して端部に達したときに該励起光の強度が前記発振光を発振させることが可能な0より大きい値の閾値を下回らないことを特徴とするファイバレーザ発振方法。
【請求項4】
レーザ活性物質を含む光ファイバと、
該光ファイバに波長の異なる複数の励起光を夫々入射可能な複数の励起光源と、
該複数の励起光源における前記励起光の出射を制御する制御装置と、を備えたファイバレーザ発振装置であって、
前記制御装置は、前記複数の励起光のうち前記光ファイバに吸収される吸収率が最も低い前記励起光を前記光ファイバに最初に入射し、その後に残りの前記励起光を前記光ファイバに入射して前記発振光を発生および増幅させることを特徴とするファイバレーザ発振装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記吸収率が最も低い前記励起光を出射する前記励起光源は前記光ファイバの一端側に配置され、残りの前記励起光を出射する前記励起光源は前記光ファイバの一端側および他端側の一方もしくは両方に配置されていることを特徴とするファイバレーザ発振装置。
【請求項6】
請求項4又は5において、
前記光ファイバのファイバ長は、一端側から入射される前記吸収率が最も低い前記励起光が他端側に達したときに該励起光の強度が前記発振光を発振させることが可能な0より大きい値の閾値を下回らない長さに設定されていることを特徴とするファイバレーザ発振装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記光ファイバの他端側に達したときの前記吸収率が最も低い前記励起光の強度は、前記光ファイバの一端側における該励起光の強度に対し10〜30%の強度であることを特徴とするファイバレーザ発振装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−129264(P2012−129264A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−277559(P2010−277559)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】