説明

フェイスアップ型光半導体装置

【課題】p側電極の補助電極部とn側電極の補助電極部との距離が電流拡散距離より大きくなって弱発光領域が発生し、発光分布が不均一であった。
【解決手段】p側電極6はパッド部61、補助電極部62a、62b、62cよりなり、n側電極7はパッド部71、補助電極部72a、72bよりなる。並行に配置した補助電極部62a、62b、62cと補助電極部72a、72bとの距離がd1である領域の透明電極層5’の厚さはx・(n-1)+Tmin(n=1,2,…)とし、補助電極部62a、62b、62cと補助電極部72a、72bとの距離がd1より大きいd2である領域R1’、R2’、R3’、R4’の透明電極層5’の厚さをx・m+Tmin(m=1,2,…)(m > n-1)と厚くする。但し、Tminは透明電極層5’の光干渉を起こさない最小の厚さであり、xは光干渉を起こさない透明電極層の厚さの周期である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発光ダイオード(LED)等の光半導体装置、特に、フェイスアップ型光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、フェイスアップ型光半導体装置は、絶縁性の成長基板に形成されたn型半導体層、発光層としての活性層及びp型半導体層の各半導体層と、p型半導体層及び活性層の一部を除去して残存したp型半導体層の全面に形成された透明電極層と、透明電極層上に形成されたp側電極と、露出したn型半導体層上に形成されたn側電極とによって構成されている。この場合、透明電極層は光半導体装置全体に亘って均一に電流拡散させて発光分布を均一にさせる機能を有する。しかしながら、単純に透明電極層だけでは、電流はp側電極からn側電極を結ぶ中央部の最短距離の直線上に集中して流れ、従って、半導体層、特に、活性層に注入される電流密度分布つまり発光分布はこの直線上に集中して不均一となる。この結果、発光分布が極端に不均一となると、弱発光領域が発生して装置全体としての発光効率が低下し、また、透明電極層のシート抵抗のために装置の駆動電圧が大きくなる。
【0003】
図6は従来のフェイスアップ型光半導体装置を示し、(A)は上面図、(B)は(A)のB−B線断面図、(C)は(A)のC−C線断面図である(参照:特許文献1)。図6のフェイスアップ型光半導体装置は上方から見て正方形をなしている。
【0004】
図6において、C面サファイア成長基板1上に、n型GaN層2、発光層としての活性層3及びp型GaN層4を形成し、p型GaN層4及び活性層3の一部を除去して残存したp型GaN層4の全面に透明電極層5を形成する。透明電極層5上に形成されたp側電極6は電極台座部(以下、パッド部)61及び補助電極部62a、62b、62cによって構成されている。また、露出したn型GaN層2上に形成されたn側電極7はパッド部71a、補助電極部72a、72bによって形成されている。p側電極6の補助電極部62a、62bとn側電極7の補助電極部72a、72b、72cとを並行に配置し、その間の距離d1を略一定にすることによりp側電極6の補助電極部62a、62b、62cからn側電極7の補助電極部72a、72bへ流れる電流は均一に拡散する。つまり、図7に示すように、p側電極6の補助電極部62bとn側電極7の補助電極部72bとの間の距離d1が電流密度の急激に減少する所定の距離D(以下、電流拡散距離)より小さければ、p側電極6の補助電極部62bからn側電極7の補助電極部72bへ流れる電流は拡散し、図7の実線矢印に示すごとく、n側電極7の補助電極部72b側の透明電極層5の端5aに到達する。従って、その間の半導体層特に活性層3を通過する電流の密度を活性層全体に亘って大きくできる。この結果、発光分布は均一となる。
【0005】
尚、上述の電流拡散距離Dは、主に、透明電極層5のシート抵抗及び透明電極層5とp型GaN層4との接触抵抗率で決定される。
【0006】
また、活性層3の面積を最大限に利用するために、p側電極6のパッド部61及び補助電極部62a、62b及びn側電極7のパッド部71a及び補助電極部72a、72bの一部を光半導体装置の最外周を囲むように形成している。さらに、活性層3への電流密度つまり発光分布をより均一にするために、p側電極6の補助電極部62a、62b、62c及びn側電極7の補助電極部72a、72bを光半導体装置全体にくし状に交差させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−345480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、図6に示す従来のフェイスアップ型光半導体装置においては、光取出し効率をできるだけ大きくするために、補助電極部を最小限にしている。従って、p側電極6の補助電極部62a、62b、62cとn側電極7の補助電極部72a、72bとの距離d1は上述の電流拡散距離Dに近く設定するのが好ましい。
【0009】
他方、図6の(A)に示すように、p側電極6の補助電極部とn側電極7の補助電極部との間の距離d2がd1つまり電流拡散距離Dより大きい領域R1、R2、R3、R4が発生することになる。たとえば、図8に示すように、p側電極6の補助電極部62bとn側電極7の補助電極部72との距離d2が電流拡散距離Dより大きければ、p側電極6の補助電極部62bからn側電極7の補助電極部72bへ流れる電流は拡散できず、図8の実線矢印に示すごとく、補助電極部72b側の透明電極層5の端5bに十分に到達できない。この結果、電流拡散距離D以上の領域の活性層3を透過する電流の密度は小さくなり、上述の領域R1、R2、R3、R4は弱発光領域となる。このように、弱発光領域R1、R2、R3、R4が存在すると、発光分布がやはり不均一となり、従って、駆動電圧(順方向電圧Vf)が上昇して発光効率の低下を招くと共に、電流集中部での負荷が大きくなって信頼性が低下するという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するために、本発明に係るフェイスアップ型光半導体装置は、第1の導電型の第1の半導体層と、第1の半導体層上に設けられた活性層と、活性層上に設けられた第2の導電型の第2の半導体層と、第2の半導体層上に設けられた透明電極層と、第2の半導体層に設けられ第1のパッド部及び第1のパッド部に接続された第1の補助電極部を有する第1の電極と、第1の半導体層の露出した領域に設けられ第2のパッド部及び第2のパッド部に接続された第2の補助電極部を有する第2の電極とを具備し、第1、第2の補助電極部によって挟まれた領域において、光干渉を起こさない透明電極層の厚さの周期をxとし、第1、第2の補助電極部の距離が第1の間隔であるときに透明電極層の厚さをx・(n-1)+Tminとし、第1、第2の補助電極部の距離が第1の距離より大きい第2の距離のときに透明電極層の厚さをx・m+Tminとすれば、
m > n-1
但し、Tminは透明電極層の活性層からの光が透明電極層内で光干渉を起こさない最小の厚さ、
mは正の整数、
nは正の整数
とするものである。これにより、第1、第2の補助電極部の距離が第1の距離より大きい第2の距離の場合に、透明電極層が厚くなるので、シート抵抗を実質的に小さくしたのと同一の効果を示し、この結果、電流拡散距離が大きくなる。この場合、透明電極層の厚さを光干渉を起こさないように選択しているので、透明電極層の光透過率は低下せず、従って、光取り出し効率の低下は少ない。
【0011】
また、第1の半導体層、活性層及び第2の半導体層がGaNよりなり、透明電極層がインジウム錫酸化物(ITO)よりなり、透明電極層は樹脂で覆われ、最小の厚さTminが約60nmであり、光干渉を起こさない透明電極層の厚さの周期が約100nmである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、光取り出し効率の低下を招くことなく、電流拡散距離を大きくしているので、弱発光領域を縮小でき、発光分布を均一にできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るフェイスアップ型光半導体装置の実施の形態を示し、(A)は上面図、(B)は(A)のB−B線断面図、(C)は(A)のC−C線断面図である。
【図2】図1の(B)の部分拡大図である。
【図3】インジウム錫酸化物(ITO)の光透過特性を示すグラフである。
【図4】図1のフェイスアップ型光半導体装置の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図5】図4の変更例を示すフローチャートである。
【図6】従来のフェイスアップ型光半導体装置を示し、(A)は上面図、(B)は(A)のB−B線断面図、(C)は(A)のC−C線断面図である。
【図7】図6の(B)の部分拡大図である。
【図8】図6のフェイスアップ型光半導体装置の課題を説明するための上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は本発明に係るフェイスアップ型光半導体装置の実施の形態を示し、(A)は上面図、(B)は(A)のB−B線断面図、(C)は(A)のC−C線断面図である。
【0015】
図1においては、図6の透明電極層5の代りに透明電極層5’を設けてある。透明電極層5’においては、図6の(A)の弱発光領域R1、R2、R3、R4に相当する領域R1’、R2’、R3’、R4’における厚さを他の領域の厚さより厚くしてある。これにより、厚膜領域R1’、R2’、R3’、R4’における透明電極層5’のシート抵抗を実質的に低下させたのと同一の効果を生じさせ、他の領域の透明電極層5’に比較してより電流を拡散させる。つまり、厚膜領域R1’、R2’、R3’、R4’の電流拡散距離はDより大きいD’(>D)となる。たとえば、図2に示すように、p側電極6の補助電極部62bとn側電極7の補助電極部72との距離d2が距離Dより大きくても大きくなった電流拡散距離D’と同程度であれば、p側電極6の補助電極部62bからn側電極7の補助電極部72bへ流れる電流は拡散し、図2の実線矢印に示すごとく、補助電極部72b側の透明電極層5の端5’bに十分に到達する。この結果、厚膜領域R4’の活性層3を透過する電流の密度も大きくなり、厚膜領域R1’、R2’、R3’、R4’は発光領域となる。このように、厚膜領域R1’、R2’、R3’、R4’の存在により、発光分布が均一となり、従って、駆動電圧(順方向電圧Vf)を下げて発光効率を上昇させることができると共に、電流集中部での負荷を小さくして信頼性を向上させることができる。
【0016】
透明電極層5’の厚さは、光半導体装置の光取出し効率が最大となるように、つまり、透過率TRが最大となるように、設定される。たとえば、透明電極層5’をインジウム錫酸化物(ITO)により形成すると、光透過率TRは繰返し波形となる。ここで、図3は発光素子をGaNとし、室温、20mAでのピーク波長である発光波長が450nm、発光素子の周囲をエポキシ樹脂で覆ったときの光透過率TRを示している。つまり、活性層3からの光は透明電極層5’を透過してその上の空気(もしくは樹脂)との間で反射して透明電極層5’内に戻る。このとき、活性層3からの光と位相が一致すると強め合い、逆に位相が不一致であると弱め合う。従って、透明電極層5’のいずれの領域でも光干渉を起こさないように透明電極層5’の厚さを設定するには、図3に示すように、透明電極層5’の厚さTは約60nm(=Tmin)、約160nm(=100+Tmin)、約260nm(=200+Tmin)、約360nm(=300+Tmin)、…となる。たとえば、厚膜領域R1’、R2’、R3’、R4’の透明電極層5’の厚さを約160nm(=100+Tmin)とした場合には、他の領域の透明電極層5’の厚さを約60nm(=Tmin)とする。また、厚膜領域R1’、R2’、R3’、R4’の透明電極層5’の厚さを約260nm(=200+Tmin)とした場合には、他の領域の透明電極層5’の厚さを約60nm(=Tmin)もしくは160nm(=100+Tmin)とする。さらに、厚膜領域R1’、R2’、R3’、R4’の透明電極層5’の厚さを約460nm(=400+Tmin)とした場合には、他の領域の透明電極層5’の厚さを約60nm(=Tmin)、160nm(=100+Tmin)、260nm(=200+Tmin)もしくは360nm(=300+Tmin)とする。一般的には、透明電極層5’の活性層3からの光が透明電極層5’内で光干渉を起こさない最小の厚さをTminとし、光干渉を起こさない透明電極層5’の厚さの周期をxとし、厚膜領域R1’、R2’、R3’、R4’の透明電極層5’の厚さをx・m+Tmin(m=1,2,…)、他の領域の透明電極層5’の厚さをx・(n-1)+Tmin(n=1,2,…)とすれば、
m > n-1
なる関係が成立する。
【0017】
次に、図1のフェイスアップ型光半導体装置の製造方法を図4を参照して説明する。尚、透明電極層5’の厚膜領域R1’、R2’、R3’、R4’の厚さは約160nmとし、他の領域の厚さは約60nmとする。
【0018】
始めに、ステップ401において、C面サファイア成長基板1上にn型GaN層2、発光層としての活性層3及びp型GaN層4を有機金属化学気相成長(MOCVD)法により順次エピタキシャル成長させる。
【0019】
具体的には、AlxInyGazN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、x+y+z=1)が成長可能なC面サファイア成長基板1をMOCVD装置に投入し、水素雰囲気中で約1000℃、約10分間の加熱によりサーマルクリーニングを行う。次いで、トリメチルガリウム(TMG):10.4μmol/min、NH3:3.3LM(標準状態のリットル/分)を約500℃、約3分間供給して低温GaNバッファ層(図示せず)を成長させる。次いで、約1000℃まで昇温して約30秒間保持して低温GaNバッファ層を結晶化させ、その温度で、TMG:45μmol/min、NH3:4.4LMを20分間供給して厚さ約1μmの下地GaN層(図示せず)を形成する。引き続き、その温度1000℃で、TMG:45μmol/min、NH3:4.4LM、SiH4:2.7×10-9μmol/minを約60分間供給して厚さ約4μmのn型GaN層2を成長させる。
【0020】
次いで、活性層3としてInGaN/GaNよりなる多重量子井戸(MQW)構造を採用する。すなわち、TMG:3.6μmol/min、トリメチルインジウム(TMI):10μmol/min、 NH3:4.4LMを約700℃で約33秒間供給して厚さ約2.2nmのInGaN井戸層を成長させ、引き続き、同一温度で、TMG:3.6μmol/min、NH3:4.4LMを約320秒間供給して厚さ約15nmのGaN障壁層を成長させ、これを5周期分繰返す。尚、活性層3は単一量子井戸(SQW)構造でも、単層でもよい。
【0021】
次いで、温度を約870℃まで上昇させ、TMG:8.1μmol/min、トリメチルアルミニウム(TMA):7.5μmol/min、NH3:4.4LM、ビスシクロペンタジニエルマグネシウム(CP2Mg):2.9×10-7μmol/minを約5分間供給して厚さ約40nmのp型AlGaNクラッド層(図示せず)を成長させる。引き続き、その温度で、TMG:18μmol/min、NH3:4.4LM、CP2Mg:2.9×10-7μmol/minを約7分間供給して厚さ約150nmのp型GaN層4を成長させる。
【0022】
次に、ステップ402において、フォトリソグラフィ/エッチング法によりn型GaN層2の一部を露出させる。
【0023】
具体的には、n型GaN層2の露出させる領域以外の領域にフォトレジストパターンを形成する。次いで、反応性イオンエッチング(RIE)装置に投入し、p型GaN層4及び活性層3を除去する。そしてフォトレジストパターンを除去する。
【0024】
次に、ステップ403において、透明電極層5’の第1層を形成する。
【0025】
具体的には、n型GaN層2の露出領域のみにフォトリソグラフィ法によりフォトレジストパターンを形成した後、厚さ約60nmのインジウム錫酸化物(ITO)よりなる透明電極層を形成する。次いで、この透明電極層上にフォトリソグラフィ法により別のフォトレジストパターンを形成し、関東化学製ITO用エッチントITO02(商標)の溶液に40℃、60秒間浸漬させることにより厚膜領域R1’、R2’、R3’、R4’上の不要な透明電極層を除去して透明電極層5’の第1層を完成させる。そして、フォトレジストパターンを除去する。
【0026】
次に、ステップ404において、透明電極層5’の第2層を形成する。
【0027】
具体的には、n型GaN層2の露出領域と透明電極層5’の第1層の領域R1’、R2’、R3’、R4’以外の領域とにフォトリソグラフィ法によりフォトレジストパターンを形成した後、厚さ約160nmのITOよりなる透明電極層を形成する。次いで、フォトレジストパターンを除去する。このように、リフトオフ法により透明電極層5’の第2層を完成させる。
【0028】
その後、酸素を含む雰囲気中で600℃、1分間加熱して透明電極層5’全体を酸化させて光透過率を向上させる。
【0029】
尚、透明電極層5’の材料としては、ITO以外に、In、Sn、Znの1つもしくは2つ以上の酸化物でもよく、また、AuNi等でもよい。成膜方法としては、EB蒸着法、スパッタリング法、アーク放電式イオンプレーティング法があるが、膜質、ウエハへのダメージから、成膜時に、ウエハをプラズマに直接曝すことがないアーク放電式イオンプレーティング法が好ましい。
【0030】
次に、ステップ405において、リフトオフ法によりp側電極6つまりパッド部61、補助電極部62a、62b、62cを形成する。
【0031】
具体的には、フォトリソグラフィ法によりフォトレジストパターンを形成する。次いで、EB蒸着法等により、厚さ約10ÅのTi、厚さ約1000ÅのAl、PtもしくはRhを順次成膜する。次いで、フォトレジストパターンを除去することにより、この成膜層をパターニングする。尚、Pt、Rhは活性層3から放射される青色光に対して高い反射率を有し、ITOとの接触抵抗率が低いので、光吸収を低減できる。
【0032】
次に、ステップ405において、リフトオフ法によりn側電極7を形成する。
【0033】
具体的には、フォトリソグラフィ法によりn側電極7を形成しない領域にフォトレジストパターンを形成する。次いで、EB蒸着法等により、厚さ約10ÅのTi、厚さ約10000ÅのAlを順次成膜する。次いで、フォトレジストパターンを除去することにより、この成膜層をパターニングする。
【0034】
最後に、ステップ406において、ウエハ上の各光半導体装置(チップ)をダイシング、スクライブ/ブレイキング、レーザ等で分離する。その後、サファイア成長基板1側が形成された側を、プリント基板、サブマウント上に実装し、p側電極6のパッド部61及びn側電極7のパッド部71をボンディングワイヤによってプリント基板もしくはサブマウント上の端子へ接続する。
【0035】
図5は図4の変更例を示すフローチャートである。図5においては、図4のステップ403、404の代りにステップ501、502を設けてある。
【0036】
ステップ501において、透明電極層5’を形成する。
【0037】
具体的には、n型GaN層2の露出領域のみにフォトリソグラフィ法によりフォトレジストパターンを形成した後、厚さ約160nmのITOよりなる透明電極層を形成する。
【0038】
次に、ステップ502において、透明電極層5’の厚膜領域R1’、R2’、R3’、R4’以外の領域のITOを100nmだけエッチング除去する。
【0039】
具体的には、厚膜領域R1’、R2’、R3’、R4’以外の領域にフォトリソグラフィ法により別のフォトレジストパターンを形成し、関東化学製ITO用エッチントITO02(商標)の溶液に40℃、30秒間浸漬させることにより厚膜領域R1’、R2’、R3’、R4’以外の領域の透明電極層の100nmだけを除去して透明電極層5’を完成させる。そして、フォトレジストパターンを除去する。次いで、この透明電極層上にフォトリソグラフィ法により別のフォトレジストパターンを形成し、関東化学製ITO用エッチントITO02(商標)の溶液に40℃、60秒間浸漬させることにより不要な透明電極層を除去して透明電極層5’を完成させる。そして、フォトレジストパターンを除去する。
【0040】
図4においては、リフトオフ法を用いているので、透明電極層5’の厚さを制御するのが容易である。他方、図5においては、エッチングレートの制御が難しく、かつエッチング表面にダメージが発生する。
【0041】
上述の実施の形態においては、透明電極層5’は2段階で変化させているが、3段階以上でもよく、また、連続的に変化させてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1:サファイア成長基板
2:n型GaN層
3:活性層
4:p型GaN層
5、5’:透明電極層
6:p側電極
61:パッド部
62a,62b、62c:補助電極部
7:n側電極
71:パッド部
72a,72b:補助電極部
R1、R2、R3、R4:弱発光領域
R1’、R2’、R3’、R4’:厚膜領域


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の導電型の第1の半導体層と、
該第1の半導体層上に設けられた活性層と、
該活性層上に設けられた第2の導電型の第2の半導体層と、
該第2の半導体層上に設けられた透明電極層と、
該第2の半導体層に設けられ第1のパッド部及び該第1のパッド部に接続された第1の補助電極部を有する第1の電極と、
前記第1の半導体層の露出した領域に設けられ第2のパッド部及び該第2のパッド部に接続された第2の補助電極部を有する第2の電極と
を具備し、
前記第1、第2の補助電極部によって挟まれた領域において、光干渉を起こさない前記透明電極層の厚さの周期をxとし、該第1、第2の補助電極部の距離が第1の間隔であるときに前記透明電極層の厚さをx・(n-1)+Tminとし、前記第1、第2の補助電極部の距離が前記第1の距離より大きい第2の距離のときに前記透明電極層の厚さをx・m+Tminとすれば、
m > n-1
但し、Tminは前記透明電極層の前記活性層からの光が該透明電極層内で光干渉を起こさない最小の厚さ、
mは正の整数、
nは正の整数
であるフェイスアップ型光半導体装置。
【請求項2】
前記第1の半導体層、前記活性層及び前記第2の半導体層がGaNよりなり、
前記透明電極層がインジウム錫酸化物(ITO)よりなり、
前記透明電極層は樹脂で覆われ、
前記最小の厚さTminが約60nmであり、
前記光干渉を起こさない前記電極層の厚さの周期が約100nmである請求項1に記載のフェイスアップ型光半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−146561(P2011−146561A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−6684(P2010−6684)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】