説明

フットボールシューズ

【課題】ボールに対する足の快適性と感受性とを改善する。
【解決手段】フットボール用スパイクシューズ30には靴底50とこの靴底に結合された靴甲40とが備わり、靴甲は、使用時に少なくとも足の甲、足の側方部およびかかとの後方部を覆うために連続状に延出しているとともに、足の挿入のための開口46を画定する上方縁部を有している。靴甲40には後方インサート70と前方インサート60とが備わっている。後方インサート70は、使用時にかかとの後方部を覆い、同シューズの後方部からの足の挿入を可能にするために同シューズの内側へ向けて構成された折り畳み可能かつ/または柔軟な材料から作られている。前方インサート60は、使用時に足の甲を覆い、靴紐および紐環の使用を必要とすることなく足の甲部分を均等に拘束し、それによって、快適性とボールに対する足の感受性とを改善するように構成された柔軟な材料から作られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、明示的な言及が行われる、フルチームフットボールかまたは5人制フットボール(5人制サッカー)あるいは7人制フットボール(7人制ラグビー)かのいずれかのためのフットボール用スパイクシューズ(a football boot)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
履物の産業分野において、多くの種類のフットボール用スパイクシューズが知られている。
【0003】
きわめて快適であって実用的なフットボール用スパイクシューズが、この出願の出願人の名前でヨーロッパ特許EP−1621089B1号公報に記載されている。
【0004】
このスパイクシューズは、靴底と、この靴底を覆う靴甲とによって構成されている。靴甲は、弾性的に変形することのできる区域がある単一部分であり、足の甲とその両側部とを覆い隠すことができる。
【0005】
靴甲は、足が挿入される楕円形開口によって上方が途切れており、使用時に足首を取り囲む。このような特定の構成によって、足の甲の上方における靴甲の部分に靴紐および紐環を設ける必要性がなくなり、快適性はもとより、ボールに関する足の上方部の感受性が改善されている。
【0006】
スパイクシューズの剛性を増大させるために、また、運動中における過剰な曲がりを回避するために、かかとの上方および後方の区域に、靴甲へ付加された一片の補強材が含まれている。上記EP−1621089B1公報において参照符号18で表示されたこの補強材は、非弾性的に変形可能な材料であり、靴甲へ局所的に結合されていて、それが付加された区域におけるその弾性変形を防止する。
【0007】
足を挿入するためには、スポーツ選手は、靴甲の上記楕円形開口を広げて、内側に足を押し込む必要がある。靴甲の弾性によって、足を滑り込ませるための充分な伸びが可能になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この種の履物は改良することができる。使用時におけるその拡張を制限するためと足へのその密着性を改善するために靴甲の変形可能区域が封入弾性材料から作られているときには、スポーツ選手は、足を挿入するときに困難性に直面することがあり、また、靴べらを使用しなければならないこともある。
【0009】
これに対して、より容易な挿入を可能にするために靴甲の変形可能区域がより弾性的、かつ、より柔軟なものであるときには、足は、どのような環境の下でも、具体的には、キックおよびジャンプの間はもとより、直線状走行、側方走行、斜め走行の間における履物の良好な調整を可能にするためと足への完全な密着を可能にするために、充分には束縛されない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の1つの目的は、従来技術を改善することである。
【0011】
この発明のさらに別の目的は、フットボール(または5人制あるいは7人制フットボール)用スパイクシューズであって、公知の型のフットボール用スパイクシューズに対してより履きやすいスパイクシューズを調達することである。
【0012】
この発明のさらに別の目的は、フットボール(または5人制あるいは7人制フットボール)用スパイクシューズであって、そのスパイクシューズの優れた調整とすべての環境おける足への完全な密着とが可能であるスパイクシューズを調達することである。
【0013】
この発明のもっと別の目的は、上記の方法で作られたスパイクシューズの製造を簡略化するとともにより経済的にすることである。
【0014】
これらの目的は、伸張可能な構成要素と伸張不可能な構成要素とから作られた靴甲の実現で達成される。
【0015】
この発明の1つの観点では、特許請求の範囲の請求項1において特定されたようなフットボール(または5人制あるいは7人制フットボール)用スパイクシューズが提供される。
【0016】
従属請求項は、この発明の好ましく、かつ、有利ないくつかの実施形態に関するものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
この発明のさらに別の特徴および利点は、スパイクシューズについての以下の見本的記載と添付図面とから、いっそう充分に明らかになる。
【図1】図1は、この発明によるスパイクシューズの分解図である。
【図2】図2は、完全に組み付けられたときの、図1におけるスパイクシューズの外部側方斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明によるフットボール用スパイクシューズ30は、長手方向の鉛直平面に対して対称的なものであっても、非対称的なものであってもよく、また、靴底50とその上に重ね合わされた靴甲40とを備えている。
【0019】
フルチームフットボール用バージョンでは、靴底50は、図1に例示された型の複数のスタッド52を備えている。
【0020】
5人制あるいは7人制フットボール用バージョンでは、靴底50は、使用の相異なる要件のために適したスタッド(図示略)が備わった他の形態を採ってもよく、あるいは、完全にスタッドがなくてもよい。
【0021】
靴甲40は、実質的に伸張不可能な材料、例えば、場合によっては伸張不可能な材料の層へ結合される天然皮革あるいは合成皮革から作られており、また、前舌42と側方部分44とを備えている。
【0022】
前舌42と側方部分44とは、単一片で作られていてもよく、あるいは、互いに接合されたいくつかの部分から作られていてもよい。
【0023】
図2に示されたように、これらの側方部分44は、かかとに関して先細り状に接合されているとともに、後方では、かかとを取り巻くストリップ47によって接合されている。
【0024】
舌42は、前方インサート60によって側方部分44から隔てられており、前方インサート60は、共通の基部62から延出する実質的に平行な区分64a,64bによって形成されている。前方インサート60は、舌42の周りで靴甲40の中に挿入されており、この目的のために、靴甲40は、区分64a,64bとほぼ同一の寸法の空き部分48を備えている。
【0025】
区分64a,64bの備わった前方インサート60の形状には、足に適合するとともに足の周りに対称的に延出していて、このスパイクシューズの前方部の包囲を快適に振り分けるという利点がある。
【0026】
かかとを覆う後方インサート70は靴甲40の後方に配置されており、この後方インサート70は、柔軟な、かつ/または、折り畳み可能な材料から作ることができるとともに、後ろからこのスパイクシューズの中へ足を挿入することができるようにするために、折り畳まれるとともに変形されるようになっている。
【0027】
この発明のある実施形態では、後方インサート70は、足の挿入の間にこのスパイクシューズの内側へ向けて折り畳むことができるが、他の実施形態では、後方インサート70は、外方へ向けて折り畳まれてもよく、かつ/または、後ろからこのスパイクシューズの中へ足を挿入することができるように構成されていてもよい。
【0028】
前方インサート60もまた、折り畳み可能な、かつ/または、柔軟な材料から作ることができる。
【0029】
インサート60および70が作られる折り畳み可能な、かつ/または、柔軟な材料は、使用の間に、その弾性性能を維持しなければならず、また、気候条件に左右される変化を受けてはならない。
【0030】
例えば、これらのインサートの材料は、使用の間に、その弾性性能を維持するように構成されているとともに気候条件に左右される変化を受けないように構成されている熱可塑性材料である。
【0031】
後方インサート70は、キャップ状であって、側方において2つのとがった部分74a,74に終わる凹状本体72と、底部における尾76とを有している。
【0032】
本体72および尾76は、靴甲40により良好に一体化するために、それらの縁部が多かれ少なかれ丸みを帯びていてもよい。
【0033】
このスパイクシューズ30は、下方において靴底50によって閉鎖されており、この靴底50には、1つの前方隆起縁部54と2つの後方隆起翼部56a,56bとがあるが、これらは、靴甲40の下方縁部を覆うとともに包み込み、優れた把握性を保証する。これらの翼部56a,56bは、後方インサート70が見えるように、また、後方インサート70がまったく覆われないかあるいはほんのわずかだけ覆われるかのいずれかになるように、高さがより低い区域57によってかかと域における後方で接合される。
【0034】
組み付けられたこのスパイクシューズでは、前方インサート60は、空き部分48の中で、かつ、舌42の周りに配置されており、後方インサート70は、後方で靴甲40へ結合されて、かかとを覆っている。
【0035】
これらのインサート60,70は、縫い付け、接着、熱シールなどによって、あるいは他の接合手段によって、靴甲40に一体化することもできる。
【0036】
この発明のある実施形態では、インサート60,70は、それぞれ単独のものであってもよく、あるいは、足の挿入を促進するために、両方とも、弾性的に柔軟な材料から作られてもよい。使用時に足の甲を覆う前方インサート60は、靴紐および紐環の使用を必要とすることなく足の甲部分を均等に拘束し、それによって、快適性とボールに対する足の感受性とを改善する。
【0037】
概して、組み付けの後に、部分44の上方縁部、基部62の上方縁部および本体72の上方縁部によって、連続状縁部があるスパイクシューズ30に、足の挿入のための開口46が画定される。
【0038】
このスパイクシューズは次のように使用される。
【0039】
結ぶべき靴紐は存在しないが、開口46の寸法を増大させるために、また、足の挿入を容易にするために、後方インサート70は、折り畳まれてスパイクシューズ30の内側へ向けて下げられる。足の挿入に関しては、後方インサート70は、指で定位置に引き上げられるが、この操作のために、小さいタブ(図示略)をインサート70に結合することができ、あるいは、インサート70を定位置に弾性的に戻すことができる。
【0040】
足の挿入は、前方部で靴甲40を一時的に広げるという押し込み動作の下での前方インサート60の伸張によってもまた促進され、かつ/または、後方インサート70もまた弾性変形可能な材料から作られているこの発明の実施形態では、かかと域の伸張によって促進される。
【0041】
使用時におけるこのスパイクシューズの快適性を損なうことなく足の挿入をさらに促進するために、前方インサート60および/または後方インサート70には、足をスパイクシューズの中へ挿入して舌42を広げるとともに舌42を部分44から一時的に遠ざける段階の間などに、全体あるいは一部を蛇腹にした構造またはプリーツ状構造があってもよい。
【0042】
後方部からの足の差し込みに関するこのような新しい型の構造のおかげで、この発明のフットボール(または5人制あるいは7人制フットボール)用スパイクシューズは、容易に履くことができ、また、ほとんど曲がらない靴甲の前方部によって、スパイクシューズの優れた調整とあらゆる環境における足への完全な密着とが可能になる。
【0043】
さらにまた、この発明のフットボール(または5人制あるいは7人制フットボール)用スパイクシューズは、靴紐および紐環の使用を必要とすることなく足の甲部分を均等に拘束し、それによって、快適性とボールに対する足の感受性とを改善する。
【0044】
この発明は、この明細書において想定されたように、多数の修正および改変が可能であり、それらのすべては、特許請求の範囲の保護の適用範囲に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フットボールまたは5人制あるいは7人制フットボールのためのスパイクシューズ(30)であって、
靴底(50)とこの靴底に結合された靴甲(40)とを備えてなり、
靴甲(40)は、使用時に少なくとも足の甲、足の側方部およびかかとの後方部を覆うために実質的に連続状に延出しているとともに、足の挿入のための開口(46)を画定する上方縁部を有し、
靴甲(40)は、使用時にかかとの後方部を覆う後方インサート(70)を備え、後方インサート(70)は、このスパイクシューズ(30)の後方部からの足の挿入を可能にするためにスパイクシューズ(30)の内側へ向けて折り畳まれるように構成された折り畳み可能かつ/または柔軟な材料から作られていることを特徴とするスパイクシューズ(30)。
【請求項2】
前記後方インサート(70)は、このスパイクシューズ(30)の後方部からその中への足の挿入を可能にするためにスパイクシューズ(30)の内側へ向けて折り畳まれかつ/または変形されるように構成されている請求項1に記載のスパイクシューズ(30)。
【請求項3】
使用時に少なくとも足の甲および側方部を覆う靴甲(40)の一部は、実質的に伸張不可能な材料から作られている請求項1または2に記載のスパイクシューズ(30)。
【請求項4】
使用時に少なくとも足の甲を覆う靴甲(40)の前記一部は、弾性的に変形することのできる前方インサート(60)からなっている請求項1〜3のいずれか1つに記載のスパイクシューズ(30)。
【請求項5】
前記前方インサート(60)は、前記開口(46)の縁部の一部を画定する縁部の一部分と、足の甲の上方で靴甲(40)の中へ延出する延出部とからなっていることを特徴とする請求項4に記載のスパイクシューズ(30)。
【請求項6】
前記前方インサート(60)の延出部は、実質的に平行であって互いに間隔が置かれているとともに前記縁部部分へ結合されている2つの区分(64a,64b)からなっていることを特徴とする請求項5に記載のスパイクシューズ(30)。
【請求項7】
前記前方インサート(60)は、使用の間に、その弾性性能を維持するように構成されているとともに気候条件に左右される変化を受けないように構成されている熱可塑性材料から作られている請求項4〜6のいずれか1つに記載のスパイクシューズ(30)。
【請求項8】
靴甲(40)は、天然皮革あるいは合成皮革から、または、実質的に伸張不可能な材料へ結合された天然皮革あるいは合成皮革から作られている請求項1〜7のいずれか1つに記載のスパイクシューズ(30)。
【請求項9】
使用時にかかとの後方部を覆う前記後方インサート(70)が作られる前記柔軟な材料は、弾性変形可能な材料である請求項1〜8のいずれか1つに記載のスパイクシューズ(30)。
【請求項10】
使用時にかかとの後方部を覆う前記後方インサート(70)は、足の挿入の間に一時的に広げるために蛇腹構造あるいはプリーツ状構造を有している請求項1〜9のいずれか1つに記載のスパイクシューズ(30)。
【請求項11】
使用時に少なくとも足の甲を覆う靴甲(40)の一部分における前記前方インサート(60)は、足の挿入の間に一時的に広げるために蛇腹構造あるいはプリーツ状構造を有している請求項4〜10のいずれか1つに記載のスパイクシューズ(30)。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−92724(P2011−92724A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−242307(P2010−242307)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(506215168)
【Fターム(参考)】