説明

フルオロスルホン酸化合物、その製法及びその用途

本発明は、従来のフルオロスルホン酸に比べ、安定かつ高い酸性度を有する新規フルオロスルホン酸及びその塩、並びにその合成中間体を提供する。さらに、本発明は、種々の誘導体を簡便に合成可能な新規フルオロスルホン酸の製法、およびその用途をも提供する。具体的には、一般式(1): R−S(=O)−CF−SOH (1)(式中、Rは隣接する硫黄原子と炭素原子で結合する基であり、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいハロアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいハロアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいハロアルキニル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基等を示し、nは1又は2を示す)で表される化合物又はその塩等を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、新規なフルオロスルホン酸及びその合成中間体に関する。また、本発明は、該フルオロスルホン酸の製法及びその用途に関する。
【背景技術】
一般に、有機スルホン酸化合物は、その強い酸性度により合成反応における酸触媒、イオン交換膜等として用いられ、その塩は電池の電解質、レジスト材料に混合する光酸発生剤、光増感型太陽電池、キャパシター、溶媒等の広範な用途に用いられている。中でも、スルホン酸基のα位の炭素がフッ素で置換されたスルホン酸化合物は、その酸性度が極めて高く、興味深い性質を有している。
例えば、一般式(A):
−CF−SOH (A)
で示されるフルオロスルホン酸は、その強酸性ゆえ酸触媒等として、またその塩は電池の電解質等として用いられている。具体的には、次のような化合物が報告されている。
がフッ素原子またはフルオロアルキル基である化合物:Rがアリール基である化合物(J.Org.Chem.,(1998),63,8052−8057及びTetrahedron Letters,(1999),40,4149−4152を参照):Rがシアノ基である化合物(特開2002−3466号公報を参照):Rがカルボキシル基、エステル基又はカルバモイル基である化合物(Ukr.Khim.Zh.(Russ.Ed.)(1986),52(4),405−6;Izv.Akad.Nauk SSSR,Ser.Khim.(1968),(7),1565−70;及びIzv.Akad.Nauk SSSR,Ser.Khim.(1967),(6),1289−94を参照):Rがアシル基である化合物(Zh.Org.Khim.(1975),11(8),1604−7を参照):Rがスルホン酸基、その塩、又はスルホンアミド基である化合物(J.Electrochem.Society(1985),132(10),2424−6及びZ,Naturforsch.,B:Chemical Sci.(1998),53(2),135−144を参照):Rが5フッ化硫黄基(−SF)である化合物(Inorg.Chem.(1990),29(22),4588−90を参照)等がある。これらのフルオロスルホン酸は、いずれも有機酸として高い酸性度を有するという特徴を有している。
かかる強酸性フルオロスルホン酸及びその誘導体は、上記した用途に限らず、その特徴ある性質を用いた広範な分野への応用が期待されている。そのため、上記の公知のフルオロスルホン酸よりもさらに高い酸性度を有し、安定でかつ多様な誘導体の合成が簡便に行える有機フルオロスルホン酸の探索が強く望まれている。
なお、J.Fluorine Chem.,(1994),67,27−31には、CFSOCFSOF、FSOCFSOCFSOF、及びCFSOCFSOCFSOF等のフルオロスルホン酸フルオライドの報告例がある。
【発明の開示】
本発明は、従来のフルオロスルホン酸に比べ、安定かつ高い酸性度を有する新規フルオロスルホン酸及びその合成中間体を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、種々の誘導体を簡便に合成可能な該フルオロスルホン酸の製法、及びその用途をも提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決することを目的として鋭意研究した結果、従来のフルオロスルホン酸に比べより安定でかつ強い酸性度を有する新規なフルオロスルホン酸を製造し得ることを見出し、さらに検討を重ねることにより本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、次に示すフルオロスルホン酸又はその塩、及びその製法を提供する。
項1.一般式:
−S(=O)−CF−SO
(式中、nは1又は2を示す)
で表される基を分子内に有する化合物又はその塩。
項2.一般式(1):
R−S(=O)−CF−SOH (1)
(式中、Rは、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいハロアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいハロアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいハロアルキニル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいシクロアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルケニルオキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルキニルオキシカルボニル基、置換基を有してもよいアリールオキシカルボニル基、置換基を有してもよいアシル基、置換基を有してもよいカルバモイル基、又はシアノ基を示し、nは1又は2を示す)
で表される化合物又はその塩。
項3.一般式(2):
R−S−CF−SOH (2)
(但し、記号は前記に同じ)
で表される化合物又はその塩。
項4.一般式(3):
R−S(=O)−CF−SOX (3)
(式中、Xはハロゲン原子を示し、他の記号は前記に同じ)
で表される化合物(但し、CFSOCFSOF、FSOCFSOCFSOF、及びCFSOCFSOCFSOFを除く)。
項5.一般式(4):
R−S−CF−SOX (4)
(但し、記号は前記に同じ)
で表される化合物。
項6.一般式(6):
R−SM (6)
(式中、Mは水素原子又は金属原子を示し、他の記号は前記に同じ)
で表される化合物と、一般式(7):
Y−CH−SO (7)
(式中、Yはハロゲン原子を示し、Mは金属原子を示す)
で表される化合物とを反応させて、必要に応じて塩にすることを特徴とする、一般式(8):
R−S−CH−SOH (8)
(但し、記号は前記に同じ)
で表される化合物又はその塩の製法。
項7.一般式(8):
R−S−CH−SOH (8)
(但し、記号は前記に同じ)
で表される化合物又はその塩をフッ素化し、必要に応じて塩にすることを特徴とする、一般式(2):
R−S−CF−SOH (2)
(但し、記号は前記に同じ)
で表される化合物又はその塩の製法。
項8.一般式(2):
R−S−CF−SOH (2)
(但し、記号は前記に同じ)
で表される化合物又はその塩を酸化し、必要に応じて塩にすることを特徴とする、一般式(1):
R−S(=O)−CF−SOH (1)
(但し、記号は前記に同じ)
で表される化合物又はその塩の製法。
項9.一般式(12):
R−S(=O)−CF−SR (12)
(式中、Rは置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいハロアルキル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、又は置換基を有してもよいアリール基を示し、他の記号は前記に同じ)
で表される化合物を酸化することを特徴とする、一般式(3):
R−S(=O)−CF−SOX (3)
(但し、記号は前記に同じ)
で表される化合物の製法。
項10.一般式(3):
R−S(=O)−CF−SOX (3)
(但し、記号は前記に同じ)
で表される化合物を加水分解し、必要に応じて塩にすることを特徴とする、一般式(1):
R−S(=O)−CF−SOH (1)
(但し、記号は前記に同じ)
で表される化合物又はその塩の製法。
項11.一般式(12a):
R−S(=O)−CF−S−CH−Ph (12a)
(但し、記号は前記に同じ)
で表される化合物。
項12.項1又は2に記載の化合物又はその塩からなる電解質。
項13.項12に記載の電解質を含有する電池。
項14.項1又は2に記載の化合物又はその塩からなる酸触媒。
発明の詳細な記述
以下、本発明について詳細に説明する。
I.化合物(1)及びその塩
本発明は、一般式:
−S(=O)−CF−SO
(式中、nは1又は2を示す)
で表される基を分子内に有する化合物又はその塩を提供する。具体的には、一般式(1):
R−S(=O)−CF−SOH (1)
(但し、記号は前記に同じ)
で示される化合物又はその塩を提供する。
本発明の化合物(1)において、Rは隣接する硫黄原子と炭素原子で結合する基である。
Rで示される「置換基を有してもよいアルキル基」の「アルキル基」としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル基等の直鎖又は分枝鎖のC〜C20アルキル基が挙げられる。特に、直鎖又は分枝鎖のC〜Cアルキル基が挙げられる。
上記の「置換基を有してもよいアルキル基」の置換基としては、例えば、アリール、アリールオキシ、アルコキシ、ハロアルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アルコキシカルボニル、アルケニルカルボニル、アルキニルカルボニル、アシル、カルバモイル、アルキルチオ、シアノ、ニトロ、アミノ、モノ若しくはジアルキルアミノ、水酸基等が挙げられる。該アルキル基は、これらの置換基から選ばれる同一又は異なる1〜3個の基で置換されていてもよい。
本発明の化合物(1)において、Rで示される「置換基を有してもよいハロアルキル基」の「ハロアルキル基」としては、アルキル基の少なくとも1個の水素原子がハロゲン原子で置換されている基であり、例えば、直鎖又は分枝鎖のC〜C20のハロアルキル基が挙げられる。特に、ハロゲン原子がフッ素原子である直鎖又は分枝鎖のC〜C20のフルオロアルキル基が挙げられる。具体的には、トリフルオロメチル、パーフルオロプロピル、パーフルオロイソプロピル、パーフルオロブチル、パーフルオロヘキシル、パーフルオロオクチル、パーフルオロデシル基等の直鎖又は分枝鎖のC〜C20のパーフルオロアルキル基:トリフルオロエチル、トリクロロエチル、テトラフルロロエチル、ヘキサフルオロイソプロピル、2−(パーフルオロオクチル)エチル、1H,1H,3H−テトラフルオロプロピル、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル、パーフルオロ−7−メチルオクチル、4H−オクタフルオロブチル、6−ブロモヘキシル、5,6−ジブロモヘキシル、8−ヨードオクチル、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチル、6−(パーフルオロブチル)ヘキシル、2−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)エチル、2−(パーフルオロオクチル)エチル、3−(パーフルオロオクチル)プロピル、3−(パーフルオロ−3−メチルブチル)エチル、1H,1H−2,5−ジ(トリフルオロメチル)−3,6−ジオキサウンデカフルオロノニル基等の直鎖又は分枝鎖のC〜C20のポリフルオロアルキル基が挙げられる。特に、C〜Cのパーフルオロアルキル基又はC〜Cのポリフルオロアルキル基が好ましい。
上記の「置換基を有してもよいハロアルキル基」の置換基としては、例えば、アリール、アリールオキシ、アルコキシ、ハロアルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アルコキシカルボニル、アルケニルカルボニル、アルケニル、アルキニルカルボニル、アシル、カルバモイル、アルキルチオ、シアノ、ニトロ、アミノ、モノ若しくはジアルキルアミノ、水酸基、パーフルオロアルケニル、パーフルオロアルケニルオキシ基等が挙げられる。該ハロアルキル基は、これらの置換基から選ばれる同一又は異なる1〜3個の基で置換されていてもよい。
上記のパーフルオロアルケニル基としては、FC=CF−、FC(CF)=CF−、FC=C(CF)−等で示されるC〜Cパーフルオロアルケニル基が例示される。パーフルオロアルケニルオキシ基としては、FC=CF−O−、FC(CF)=CF−O−、FC=C(CF)−O−等で示されるC〜Cパーフルオロアルケニルオキシ基が例示される。
本発明の化合物(1)において、Rで示される「置換基を有してもよいアルケニル基」の「アルケニル基」としては、直鎖又は分枝鎖のC〜C20アルケニル基が挙げられる。例えば、ビニル、クロチル、1−プロペニル、イソプロペニル、アレニル、2−ブテニル、1,3−ブタジエニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、イソプレニル、4−ヘキセニル、5−ヘキセニル、3,5−ヘキサジエニル、7−オクテニル、スチニル、シンナミル、5,7,9−デカトリエニル、17−オクタデセニル、2−ノニル−2−ブテニル基等が挙げられる。なお、アルケニル基は、エポキシドのように酸化されていてもよい。
上記の「置換基を有してもよいアルケニル基」の置換基としては、例えば、アリール、アリールオキシ、アルコキシ、ハロアルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アルコキシカルボニル、アルケニルカルボニル、アルキニルカルボニル、アシル、カルバモイル、アルキルチオ、シアノ、ニトロ、アミノ、モノ若しくはジアルキルアミノ、水酸基等が挙げられる。該アルケニル基は、これらの置換基から選ばれる同一又は異なる1〜3個の基で置換されていてもよい。
本発明の化合物(1)において、Rで示される「置換基を有してもよいハロアルケニル基」の「ハロアルケニル基」としては、前述のアルケニル基の少なくとも1個の水素原子がハロゲン原子で置換されている基であり、例えば、直鎖又は分枝鎖のC〜C20のハロアルケニル基が挙げられる。特に、ハロゲン原子がフッ素原子である直鎖又は分枝鎖のC〜C20のフルオロアルケニル基が挙げられる。
上記の「置換基を有してもよいハロアルケニル基」の置換基としては、例えば、アリール、アリールオキシ、アルコキシ、ハロアルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アルコキシカルボニル、アルケニルカルボニル、アルキニルカルボニル、アシル、カルバモイル、アルキルチオ、シアノ、ニトロ、アミノ、モノ若しくはジアルキルアミノ、水酸基等が挙げられる。該ハロアルケニル基は、これらの置換基から選ばれる同一又は異なる1〜3個の基で置換されていてもよい。
本発明の化合物(1)において、Rで示される「置換基を有してもよいアルキニル基」の「アルキニル基」としては、エチニル、2−プロピニル、2−ブチニル、3−ブチニル、3−ペンチニル、4−ペンチニル、4−ヘキシニル、5−ヘキシニル、2−ペンテン−4−イニル、4−エチル−5−ヘプチニル、7−オクチニル、8−デシニル、15−ヘキサデシニル等の直鎖又は分岐鎖のC〜C20のアルキニル基が挙げられる。特に、C〜C10のアルキニル基が挙げられる。これらのアルキニル基には、二重結合が含まれていてもよい。
上記の「置換基を有してもよいアルキニル基」の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アリール、アリールオキシ、アルコキシ、ハロアルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アルコキシカルボニル、アルケニルカルボニル、アルキニルカルボニル、アシル、カルバモイル、アルキルチオ、シアノ、ニトロ、アミノ、モノ若しくはジアルキルアミノ、水酸基等が挙げられる。該アルキニル基は、これらの置換基から選ばれる同一又は異なる1〜3個の基で置換されていてもよい。
本発明の化合物(1)において、Rで示される「置換基を有してもよいハロアルキニル基」の「ハロアルキニル基」としては、前述のアルキニル基の少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換された基であり、C〜C10のハロアルキニル基が挙げられる。これらのアルキニル基には、二重結合が含まれていてもよい。ハロゲン原子は、フッ素原子が好ましい。
上記の「置換基を有してもよいハロアルキニル基」の置換基としては、上述の「置換基を有してもよいアルキニル基」の置換基が挙げられる。該ハロアルキニル基は、これらの置換基から選ばれる同一又は異なる基で置換されていてもよい。
本発明の化合物(1)において、Rで示される「置換基を有してもよいシクロアルキル基」の「シクロアルキル基」としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、デカヒドロナフタレニル、ノルボルニル、ビシクロ[3.2.1]オクチル、ビシクロ[5.2.0]ノニル、スピロ[3.4]オクチル、スピロ[4.5]デシル、スピロビシクロヘキシル基等のC〜C20のシクロアルキル基が挙げられる。特に、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル基等のC〜Cのシクロアルキル基が挙げられる。
上記の「置換基を有してもよいシクロアルキル基」の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル、アリール、アリールオキシ、アルコキシ、ハロアルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アルコキシカルボニル、アルケニルカルボニル、アルキニルカルボニル、アシル、カルバモイル、アルキルチオ、シアノ、ニトロ、アミノ、モノ若しくはジアルキルアミノ、水酸基等が挙げられる。該シクロアルキル基は、これらの置換基から選ばれる同一又は異なる1〜3個の基で置換されていてもよい。
本発明の化合物(1)において、Rで示される「置換基を有してもよいシクロアルケニル基」の「シクロアルケニル基」としては、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル、1,3−シクロヘキサジエニル、ノルボルネニル、メンテニル、ボルネニル、インデニル、オクタヒドロナフタレニル、2−シクロヘキセンスピロ−2’−シクロペンテニル基等のC〜C20のシクロアルケニル基が挙げられる。特に、C〜Cのシクロアルケニル基が挙げられる。
上記の「置換基を有してもよいシクロアルケニル基」の置換基としては、上述の「置換基を有してもよいシクロアルキル基」の置換基が挙げられる。該シクロアルケニル基は、これらの置換基から選ばれる同一又は異なる1〜3個の基で置換されていてもよい。
本発明の化合物(1)において、Rで示される「置換基を有してもよいアリール基」の「アリール基」としては、フェニル、ナフチル、フェナントリル、アントリル、ピレニル基等のC〜C20の単環、2環、3環又は4環のアリール基が挙げられる。特に、フェニル基である。
上記の「置換基を有してもよいアリール基」の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル、アルケニル、アリール、アリールオキシ、アルコキシ、ハロアルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アルコキシカルボニル、アルケニルカルボニル、アルキニルカルボニル、アシル、カルバモイル、アルキルチオ、シアノ、ニトロ、アミノ、モノ若しくはジアルキルアミノ、水酸基等が挙げられる。該アリール基は、これらの置換基から選ばれる同一又は異なる1〜3個の基で置換されていてもよい。
「置換基を有するアリール基」の具体例としては、例えば、トルイル、クロロフェニル、フルオロフェニル、ジクロロフェニル、ジフルオロフェニル、ペンタフルオロフェニル、シアノフェニル、ニトロフェニル、ジニトロフェニル、メトキシフェニル、ジフェニル、ビニルフェニル、プロペニルフェニル基等が挙げられる。
本発明の化合物(1)において、Rで示される「置換基を有してもよい複素環基」の「複素環基」としては、脂肪族複素環基、芳香族複素環基が挙げられる。
脂肪族複素環基としては、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子、シリコン原子、及びホウ素原子からなる群から選ばれる同一又は異なる1〜4個のヘテロ原子を含む、単環、2環又は3環のC〜C20脂肪族複素環基が挙げられる。記脂肪族複素環基の複素環には二重結合が含まれていてもよい。また、各ヘテロ原子は、酸化されていてもよい。具体的には、ピペリジル、ピペラジル、ピロリジル、テトラヒドロフリル、ピラニル、ジオキソラニル、ジオキサニル、テトラヒドロチエニル、ペンタメチレンスルフィジル、ジチアニル、チオキサニル、ピロリジニル、ピペリジニル、モルホリニル基等が例示される。特に、単環のC〜C脂肪族複素環基である。
芳香族複素環基としては、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子、シリコン原子、及びホウ素原子からなる群から選ばれる同一又は異なる1〜4個のヘテロ原子を含む、単環、2環又は3環のC〜C14芳香族複素環基が挙げられる。具体的には、フリル、チエニル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピロリル、ピロリジニル、トリアゾリル、テトラゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイミダゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、インドリル、ピラゾリル、ピリダジニル、シノリニル、キノリル、イソキノリル、キノキサリニル、ピラジニル、ピリジル、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、テトラゾリル、イソベンゾフラニル、クロメニル、チアントレニル、イソチアゾリル、フェノキサチニル基等が例示される。特に、単環のC〜C脂肪族複素環基である。
「置換基を有してもよい複素環基」の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル、アリール、アリールオキシ、アルコキシ、ハロアルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アルコキシカルボニル、アルケニルカルボニル、アルキニルカルボニル、アシル、カルバモイル、アルキルチオ、シアノ、ニトロ、アミノ、モノ若しくはジアルキルアミノ、水酸基等が挙げられる。該複素環基は、これらの置換基から選ばれる同一又は異なる1〜3個の基で置換されていてもよい。
本発明の化合物(1)において、Rで示される「置換基を有してもよいアルコキシカルボニル基」の「アルコキシカルボニル基」としては、直鎖又は分岐鎖のC〜C10のアルコキシカルボニル基が挙げられる。具体的には、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、n−プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、n−ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、sec−ブトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、ペンチルオキシカルボニル、ヘキシルオキシカルボニル基等が例示される。
上記の「置換基を有してもよいアルコキシカルボニル基」の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アリール、アリールオキシ、アルコキシ、ハロアルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アルコキシカルボニル、アルケニルカルボニル、アルキニルカルボニル、アシル、カルバモイル、アルキルチオ、シアノ、ニトロ、アミノ、モノ若しくはジアルキルアミノ、水酸基等が挙げられる。該アルコキシカルボニル基は、これらの置換基から選ばれる同一又は異なる1〜3個の基で置換されていてもよい。
「置換基を有するアルコキシカルボニル基」としては、具体的には、2−フェニルエチルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、1−フェニルエチルオキシカルボニル、3−フェニルプロピルオキシカルボニル、4−フェニルブチルオキシカルボニル、ナフチルオキシカルボニル基などが挙げられる。
本発明の化合物(1)において、Rで示される「置換基を有してもよいアルケニルオキシカルボニル基」の「アルケニルオキシカルボニル基」としては、例えば、ビニルオキシカルボニル、2−プロペニルオキシカルボニル、3−ペンテニルオキシカルボニル、4−ペンテニルオキシカルボニル、5−ヘキセニルオキシカルボニル、3,5−ヘキサジエニルオキシカルボニル、7−オクテニルオキシカルボニル基等が挙げられる。
上記の「置換基を有してもよいアルケニルオキシカルボニル基」の置換基としては、上述の「置換基を有してもよいアルコキシカルボニル基」の置換基が挙げられる。アルケニルオキシカルボニル基は、これらの置換基から選ばれる同一又は異なる1〜3個の基で置換されていてもよい。
本発明の化合物(1)において、Rで示される「置換基を有してもよいアルキニルオキシカルボニル基」の「アルキニルオキシカルボニル基」としては、例えば、エチニルオキシカルボニル、2−プロピニルオキシカルボニル、3−ペンチニルオキシカルボニル、4−ヘキシニルオキシカルボニル、5−ヘキシニルオキシカルボニル、8−デシニルオキシカルボニル基等が挙げられる。
上記の「置換基を有してもよいアルキニルオキシカルボニル基」の置換基としては、上述の「置換基を有してもよいアルコキシカルボニル基」の置換基が挙げられる。該アルキニルオキシカルボニル基は、これらの置換基から選ばれる同一又は異なる1個の基で置換されていてもよい。
本発明の化合物(1)において、Rで示される「置換基を有してもよいアリールオキシカルボニル基」の「アリールオキシカルボニル基」としては、単環、2環又は3環のC〜C14アリールオキシカルボニル基が挙げられる。具体的にはフェノキシカルボニル、ナフチルオキシカルボニル、フェナンスリルオキシカルボニル、アンスリルオキシカルボニル基等が例示される。
上記の「置換基を有してもよいアリールオキシカルボニル基」の置換基としては、上述の「置換基を有してもよいアルコキシカルボニル基」の置換基が挙げられる。該アリールオキシカルボニル基は、これらの置換基から選ばれる同一又は異なる1〜3個の基で置換されていてもよい。
本発明の化合物(1)において、Rで示される「置換基を有してもよいアシル基」の「アシル基」としては、ホルミル、アセチル、プロピオニル、n−ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、ピバロイル基等の直鎖又は分枝鎖のC〜Cのアルカノイル基、ベンゾイル、ナフトイル基等のアリールカルボニル基等が挙げられる。
上記の「置換基を有してもよいアシル基」の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル、アリール、アリールオキシ、アルコキシ、ハロアルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アルコキシカルボニル、アルケニルカルボニル、アルキニルカルボニル、アシル、カルバモイル、アルキルチオ、シアノ、ニトロ、アミノ、モノ若しくはジアルキルアミノ、水酸基等が挙げられる。該アルコキシカルボニル基は、これらの置換基から選ばれる同一又は異なる1〜3個の基で置換されていてもよい。
置換基を有するアシル基として、具体的には、クロロアセチル、ブロモアセチル、ジクロロアセチル、トリフルオロアセチル基等の置換アセチル基:メトキシアセチル、エトキシアセチル基等のアルコキシ置換アセチル基:メチルチオアセチル基等のアルキルチオ置換アセチル基:フェノキシアセチル、フェニルチオアセチル、2−クロロベンゾイル、3−クロロベンゾイル、4−クロロベンゾイル、4−メチルベンゾイル、4−t−ブチルベンゾイル、4−メトキシベンゾイル、4−シアノベンゾイル、4−ニトロベンゾイル、4−ビニルベンゾイル基等の置換ベンゾイル基等が例示される。
本発明の化合物(1)において、Rで示される「置換基を有してもよいカルバモイル基」としては、式:−CONRで示される基が挙げられる。R及びRとしては、例えば、独立して水素原子、アルキル、ハロアルキル、アリール、ハロアリール、アラルキル基等が挙げられる。「置換基を有するカルバモイル基」の具体例としては、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル、N−クロロフェニルカルバモイル、N,N−ジエチルカルバモイル基等が挙げられる。
本発明の化合物(1)は、スルホン酸基を有しているため、塩を形成し得る。本発明の化合物(1)の塩としては、金属塩、オニウム塩などが挙げられる。
本発明の化合物(1)の金属塩を形成し得る金属原子としては、電子を放出してカチオンとなり得るものであればよく、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等のアルカリ金属:ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属:セリウム、銅、ニッケル、銀、サマリウム、イットリウム、ユーロピウム、ハフニウム、ランタニウム、スカンジウム等の遷移金属:その他、スズ、水銀、亜鉛、インジウム等の金属が挙げられる。そのうち、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属が好ましい。
本発明の化合物(1)のオニウム塩としては、含窒素オニウム塩、ホスホニウム塩などが例示される。好ましくは、含窒素オニウム塩である。
含窒素オニウム塩としては、例えば、アンモニウム塩、窒素原子上の水素原子が1〜4個の置換基で置換されたアンモニウム塩、置換基を有してもよい含窒素複素環のオニウム塩、ホスホニウム塩等が挙げられる。
窒素上の水素原子が1〜4個の置換基で置換されたアンモニウム塩の置換基としては、アルキル、アラルキル、アリール、シクロアルキル、ハロアルキル、アルコキシアルキル基等が例示される。特に、窒素上の水素原子が、同一又は異なる3又は4個のアルキル(好ましくはC〜C10アルキル)基で置換されたアンモニウム塩である。
置換基を有してもよい含窒素複素環のオニウム塩を構成する含窒素複素環としては、含窒素脂肪族複素環又は含窒素芳香族複素環が挙げられる。含窒素脂肪族複素環としては、ピペリジン、ピペラジン、アジリジン、アゼチジン、ピロリジン、1−メチルピロリジン、3,5−ジメチルピペリジン、1,4−ジメチルピペラジン、キヌクリジン、1,4−ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン、モルホリン、チオモルホリン、4−メチルモルホリン等が例示される。また、含窒素芳香族複素環としては、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、トリアゾール、オキサゾール、ピロール、1−メチルピロール、ピラゾール、イミダゾール、1−メチルイミダゾール、テトラゾール、イソチアゾール、チアゾール、インドール、カルバゾール、ベンズオキサゾール、プリン、ジピリジル、ピリダジン、トリアジン、キノリン、ビキノリン、イソキノリン、アクリジン、キノザリン、キナゾリン、フタラジン、フェナントリジン、フェナントロリン等が例示される。特に、ピリジン、イミダゾール、1,2,4−トリアゾール等が挙げられる。
これらの含窒素複素環のオニウム塩の置換基として、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アラルキル、アリール、ハロゲン原子、アルコキシ、アリールオキシ、アラルキルオキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アシル、ニトロ、シアノ、アミノ、モノ又はジアルキルアミノ、水酸基等が例示される。含窒素複素環のオニウム塩は、これらの置換基から選ばれる同一又は異なる1〜3個の基で置換されていてもよい。
含窒素複素環のオニウム塩としては、特に、トリアルキル(特に、トリC〜Cアルキル)アンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリウム塩、又は1,2,4−トリアゾリウム塩などが好適である。
ホスホニウム塩としては、リン原子上に3又は4個の置換基を有するホスホニウム塩等が挙げられる。該ホスホニウム塩の置換基としては、アルキル、アラルキル、アリール、シクロアルキル、ハロアルキル、アルコキシアルキル基等が例示され、該ホスホニウム塩のリン原子は、これらの置換基から選ばれる同一又は異なる3又は4個の基で置換されている。
本発明の化合物(1)の具体例としては、一般式(1)において、Rが置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいハロアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいハロアルケニル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、又は置換基を有してもよいアリール基であり、nが1又は2(特に2)である化合物、又はそのアルカリ金属塩又は含窒素オニウム塩が挙げられる。
置換基を有してもよいアルキル基としては、アリール及びアルコキシ基から選ばれる同一又は異なる1〜2個の基で置換されていてもよいC〜C20(好ましくはC〜C10)アルキル基が挙げられる。
置換基を有してもよいハロアルキル基としては、アリール、アルコキシ基、ハロアルケニルオキシ(好ましくは、C〜Cパーフルオロアルケニルオキシ又はC〜Cポリフルオロアルケニルオキシ)、及びアルケニルオキシ(好ましくは、C〜Cアルケニルオキシ)基から選ばれる同一又は異なる1〜2個の基で置換されていてもよいC〜C20(好ましくはC〜C10)ハロアルキル基が挙げられる。特に、C〜C10パーフルオロアルキル基又はC〜C10ポリフルオロアルキル基である。
置換基を有してもよいアルケニル基としては、アリール及びアルコキシ基から選ばれる同一又は異なる1〜2個の基で置換されていてもよいC〜C20(好ましくはC〜C10)アルケニル基が挙げられる。
置換基を有してもよいハロアルケニル基としては、アリール及びアルコキシ基から選ばれる同一又は異なる1〜2個の基で置換されていてもよいC〜C20(好ましくはC〜C10、より好ましくはC〜C)ハロアルケニル基が挙げられる。特に、C〜C10(好ましくはC〜C)のパーフルオロアルケニル基である。
置換基を有してもよいシクロアルキル基としては、アリール及びアルコキシ基から選ばれる同一又は異なる1〜2個の基で置換されていてもよいC〜C(好ましくはC〜C)シクロアルキル基が挙げられる。
置換基を有してもよいアリール基としては、ハロゲン原子(I、Br、Cl又はF、特にF)、C〜Cアルコキシ、アルケニル(好ましくは、C〜Cアルケニル)、ハロアルケニル(好ましくは、C〜Cパーフルオロアルケニル)、アルケニル(好ましくは、C〜Cアルケニル)オキシ、ハロアルケニル(好ましくは、C〜Cパーフルオロアルケニル)オキシ、及びアルケニル(好ましくは、C〜Cパーフルオロアルケニル)カルボニル基から選ばれる同一又は異なる1〜2個の基で置換されていてもよいアリール基(特に、フェニル基)が挙げられる。
アルカリ金属塩を形成するアルカリ金属原子としては、リチウム、ナトリウム又はカリウムが挙げられ、リチウムが好ましい。
含窒素オニウム塩としては、アリール、アルキル、及びアラルキルから選ばれる同一又は異なる1〜4個の基で置換されていてもよいアンモニウム塩、或いはアリール、アルキル及びアラルキルから選ばれる同一又は異なる1〜2個の基で置換されていてもよい含窒素複素環のオニウム塩が挙げられる。含窒素オニウム塩としては、特に、トリアルキルアンモニウム塩、ピリジニウム、イミダゾリウム、又は1,2,4−トリアゾリウムなどが好適である。
本発明の化合物(1)のうち、他の具体例としては、一般式(1)において、Rが1〜2個のハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基、nが1又は2(特に2)である化合物、又はそのトリC〜Cアルキルアンモニウム塩が挙げられる。
また、本発明は、化合物(1)又はその塩の合成中間体である、一般式(2):
R−S−CF−SOH (2)
(但し、記号は前記に同じ)
で表される化合物又はその塩、一般式(3):
R−S(=O)−CF−SOX (3)
(式中、Xはハロゲン原子を示し、他の記号は前記に同じ)
で表される化合物(但し、CFSOCFSOF、FSOCFSOCFSOF、及びCFSOCFSOCFSOFを除く)、及び一般式(4):
R−S−CF−SOX (4)
(但し、記号は前記に同じ)
で表される化合物をも提供する。これらの化合物はいずれも新規な化合物である。なお、化合物(2)〜(4)におけるRは、化合物(1)におけるRと同義である。また、化合物(3)及び(4)におけるXで示されるハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を表す。
本発明の化合物(1)又はその塩は、例えば、以下の<スキーム1>及び<スキーム2>のようにして製造されるが、これらに限定されるものではない。
<スキーム1>

(式中、Mは水素原子又は金属原子を示し、Yはハロゲン原子を示し、Mは金属原子を示し、他の記号は前記に同じ)
化合物(8)は、化合物(6)と化合物(7)を、溶媒の存在下、塩基の存在化又は非存在化反応させた後、酸処理することにより製造することができる。ここで、Mで示される金属原子とは、Li、Na、K等のアルカリ金属であればよい。溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさない溶媒であればよく、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、メタノール、エタノール、水等、又はこれらの混合溶媒が例示される。塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム等の塩基が挙げられる。Mが金属原子の場合は、塩基を用いることなく反応させることもできる。化合物(7)の使用量は、化合物(6)1当量に対し、0.1〜10当量程度、好ましくは0.5〜2当量程度である。塩基の使用量は、化合物(6)1当量に対し、0.5〜10当量程度、好ましくは0.8〜1.5当量程度である。反応温度は、通常、−20〜200℃程度であればよい。続く酸処理に用いられる酸としては、塩酸、硫酸等が好適に用いられる。
化合物(2)は、化合物(8)を、溶媒の存在下又は非存在下、フッ素化剤を用いてフッ素化することにより製造することができる。溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさない溶媒であればよく、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、塩化メチレン、酢酸エチル、ギ酸、酢酸、フッ化水素等、又はこれらの混合溶媒が例示される。フッ素化剤としては、XeF、アセチルハイポフルオライト、N−フルオロピリジニウム塩、N−フルオロ−2,4,6−トリメチルピリジニウム塩、N,N’−ジフルオロ−2,2’−ビピリジニウム塩、1−フルオロ−4−クロロメチル−1,4−ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタンビス(テトラフルオロボレート)、5フッ化ヨウ素、フッ素ガス等が挙げられるが、5フッ化ヨウ素が特に好ましい。フッ素化剤の使用量は、化合物(8)1当量に対し、通常、0.8〜10当量程度、好ましくは1〜5当量程度である。反応温度は、通常、−100〜200℃程度であればよい。なお、化合物(2)は、酸処理することなく、反応で用いた塩基との塩として得ることもできる。
化合物(1)は、化合物(2)又はその塩を、溶媒の存在下、酸化剤を用いて酸化することにより製造することができる。溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさない溶媒であればよく、例えば、アセトニトリル、メタノール、エタノール、塩化メチレン、水、酢酸等、又はこれらの混合溶媒が例示される。酸化剤としては、例えば過酸化水素、過酢酸、ヒドロペルオキシド、ペルオキシ硫酸カリウム、過マンガン酸塩、過ホウ酸ナトリウム、酸素+遷移金属触媒、メタ過ヨウ素酸ナトリウム、メタクロロ過安息香酸、酸化オスミウム(VII)、酸化ルテニウム(VII)、硝酸、クロム酸、ニクロム酸ナトリウム、ハロゲン、次亜塩素酸ナトリウム、ヨードベンゼンジクロリド、ヨードベンゼンジアセタート、オゾン、一重項酸素等が挙げられ、これらの酸化剤により化合物(1)を与える。簡便性、経済性の観点から、過酸化水素を用いる酸化反応が好ましく、過酸化水素を用いる方法としては、たとえば、(Pestycydy,(1−2),29−41,2001)を挙げることができる。なお、原料化合物(2)が塩の場合でも、上記と同様にして目的の化合物(1)の塩を得ることもできる。
化合物(4)は、化合物(2)又はその塩を、ハロゲン化剤でハロゲン化(スルホン酸ハライド化)することにより製造することができる。ハロゲン化剤としては、例えば、塩化チオニル、オキサリルクロリド、塩化ホスホリル、五塩化リン等が例示される。反応条件は公知の条件を採用することができる。
化合物(3)は、化合物(4)を出発物質として、化合物(2)から化合物(1)を製造する方法と同様にして製造することができる。
化合物(1)は、化合物(3)を加水分解することにより製造することができる。加水分解は、塩基性条件下でも酸性条件下でも実施することができる。用いる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属塩基又は、アンモニア、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、トリエチルアミン、アニリン、ピリジン等の有機塩基が挙げられる。酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、などが挙げられる。酸又は塩基の使用量は、化合物(4)1当量に対し、通常、0.5〜5当量程度であればよい。また、得られるスルホン酸は、必要に応じて、公知の方法に準じて各種塩に変換することができる。
<スキーム2>

(式中、Rは置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいハロアルキル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、又は置換基を有してもよいアリール基を示し、Wはハロゲン原子、−SR、−SOを示し、他の記号は前記に同じ)
で示される、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいハロアルキル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、又は置換基を有してもよいアリール基は、本発明の化合物(1)におけるRと同義である。
化合物(9)は、化合物(6a)と公知化合物であるHCFClとを、溶媒中、塩基の存在下反応させることにより製造することができる。例えば、Pestycydy,(1−2),29−41,(2001)の記載に従って製造することができる。
化合物(10)は、化合物(9)を出発物質として前記<スキーム1>における化合物(2)から化合物(1)を製造する方法と同様にして製造することができる。酸化剤としては、過酸化水素が好ましい。
化合物(12)は、化合物(10)と化合物(11)を、溶媒中、塩基の存在下反応することにより製造することができる。溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさない溶媒であればよく、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、塩化メチレン、水等が例示される。塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、tert−ブトキシカリウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム等が例示される。化合物(11)の使用量は、化合物(10)1当量に対し、通常、0.5〜5当量程度、好ましくは1〜2当量程度である。塩基の使用量は、化合物(10)1当量に対し、通常、0.5〜5当量程度、好ましくは0.8〜1.2当量程度である。反応温度は、通常、−100〜100℃程度であればよい。例えば、J.Fluorine.Chem.,43,53−66,(1989)の記載に従い製造することができる。
化合物(3)は、化合物(12)を、酸化剤により酸化することにより製造することができる。酸化剤としては、分子状ハロゲン、特に塩素(ガス)が挙げられる(酸化的塩素化反応)。例えば、J.Org.Chem.,44,1708−1711,(1979)、J.Fluorine.Chem.,43,27−34,(1989)、米国特許4329435号公報等の記載に従って製造することができる。
ここで、Rとしては、酸化反応の簡便さの点から、ベンジル基、炭素数1〜6の直鎖アルキル基、t−ブチル基が好ましく、なかでもベンジル基が特に好ましい。
また、Xがフッ素原子(F)の場合、フッ素ガスを作用させてもよいが、クロロスルホニル体に更にフッ化カリウムなどのフッ化物を反応させることによっても合成することができる。
化合物(1)は、化合物(3)を出発物質として前記<スキーム1>における化合物(3)から化合物(1)を製造する反応と同様にして製造することができる。
なお、本発明の目的化合物を合成するにあたり、官能基を適切な保護基で保護し、また必要がなくなれば脱保護してもよい。保護基の使用は、当業者の知識で適宜選択可能である。
なお、本発明において特に断りのない限り、アルキルとは、直鎖又は分岐鎖のC〜C20のアルキルを表し、好ましくはC〜Cのアルキルを表す。ハロアルキルとは、直鎖又は分岐鎖のC〜C20のハロアルキルを表し、好ましくはC〜Cのハロアルキルを表す。ハロアルキルは、直鎖又は分岐鎖のC〜C20アルキルの少なくとも1個の水素原子がハロゲン原子で置換されている。アルケニルとは、直鎖又は分岐鎖のC〜C20のアルケニルを表し、好ましくはC〜Cのアルケニルを表す。アルキニルとは、直鎖又は分岐鎖のC〜C20のアルキニルを表し、好ましくはC〜Cのアルキニルを表す。シクロアルキルとはC〜C10のシクロアルキルを表し、好ましくはC〜Cのシクロアルキルを表す。アルコキシとは、直鎖又は分岐鎖のC〜C20のアルコキシを表し、好ましくはC〜Cのアルコキシを表す。アリールとは、単環、2環又は3環のC〜C14のアリールを表し、好ましくはフェニルである。アラルキルとは、C〜C15のアラルキルを表し、好ましくはC〜Cのアラルキルを表す。ハロゲン原子とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を表す。アシルとしては、ホルミル、アセチル、プロピオニル、n−ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、ピバロイル基等の直鎖又は分枝鎖のC〜Cのアルカノイル基、ベンゾイル、ナフトイル基等のアリールカルボニル基等が挙げられる。カルバモイルとは、式:−CONRが挙げられる。R及びRとしては、例えば、独立して水素原子、アルキル、ハロアルキル、アリール、ハロアリール、アラルキル基等が挙げられる。これらの基としては、上述のものが挙げられる。
II.本発明化合物の特性
本発明のフルオロスルホン酸は、従来には報告例のない新規化合物であり、高い酸性度を有するという特徴を有している。一般に、スルホン酸基の近傍に置換基が存在する場合、該置換基の電気吸引性能が大きいほどのスルホン酸のプロトンは解離し易くなり強酸となる。本発明のフルオロスルホン酸は、基:−CF−SOHに、極めて高い電子吸引性基:R−S(=O)−が結合しているため、高い酸性度を示す。
参考までに、各置換基のハメット定数を下記に示す(日本化学会編 化学便覧基礎編 改訂4版 11−347、348頁より)。

この表から見て分かるように、置換基−SOCH、−SOCH、又は−SOCFのハメット定数は高く、特に、SOCH又はSOCFは極めて高い値を示している。本発明のフルオロスルホン酸はこれらの基を含有するため、高い酸性度を有していることが分かる。
しかも、上述の本発明化合物の製法をみれば理解できるように、基Rに多様な官能基を容易に導入することが可能であるという利点も有している。
III.本発明化合物の用途
上述したように、本発明のフルオロスルホン酸は高い酸性度を有しており、該フルオロスルホン酸又はその塩は合成反応における触媒(酸触媒)として用いることができる。
また、本発明の化合物は、レジスト材料に用いる光酸発生剤、すなわち光を照射すると効率よく酸を発生し、レジスト(化学増幅フォトレジスト、液晶カラーフィルタなど)に好適に使用しうる光酸発生剤として用いることができる。
本発明のフルオロスルホン酸の塩は、各種電池の電解質として用いることができる。例えば、リチウムイオン(一次または二次)電池の電解質として、特に非水系リチウムイオン(一次または二次)電池の電解質として好適である。電解液に用いられる溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジメトキシエタン、γ−ブチロラクトン、酢酸メチル、蟻酸メチル等の公知の非水有機溶媒が挙げられる。この溶媒に、本発明の化合物を電解質の一部として加えて電解液とすることができる。この電解液は当然のことながら、水分が10ppm以下のものを用いることが好ましい。
本発明のフルオロスルホン酸の塩は、例えば文献J.Electrochem.Soc.,(2000)147,34に記載されるように、リチウムイオン伝導性を有する非水溶液用電解質として、及びこれをポリマーマトリックスで固定したゲル電解質として用いることができる。リチウムイオン(一次または二次)電池の正極、負極、セパレータなどは、公知のものが使用できる。電池の形状としては、例えば、円筒型、角型、コイン型、フィルム状等を挙げることができる。負極材料としては、例えば、リチウム金属およびその合金、リチウムをドープ・脱ドープできる炭素材料や高分子材料、金属酸化物などのリチウムインターカレート化合物等が挙げられる。正極材料としては、例えば、LiCoO,LiNiO,LiMn,LiMnOなどのリチウムと遷移金属の複合酸化物や、高分子材料等が挙げられる。セパレータとしては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等の高分子材料の多孔膜や、本発明の電解液を吸蔵して固定化する高分子材料(いわゆるゲル電解質)等を用いることができる。集電体の材料としては、例えば、銅、アルミ、ステンレススチール、チタン、ニッケル、タングステン鋼、炭素材料等が用いられ、その形状は、箔、網、不織布、パンチドメタル等が挙げられる。
また、本発明のフルオロスルホン酸の塩は、他に、光増感型太陽電池用電解液、キャパシター用電解質又は電解液、エレクトロクロミズム、フォトクロミズム等としても用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はそれに限定されるものではない。
【実施例1】
トリエチルアンモニウム(4−クロロフェニルチオ)ジフルオロメタンスルホナートの合成

p−クロロベンゼンチオール26.0g(0.18mol)のメタノール150ml溶液に、氷冷下、水酸化ナトリウム7.98g(0.20mol)の水150ml溶液を加え攪拌し、さらに室温で30分攪拌した(反応混合物A)。500Lのステンレス製オートクレーブにクロロメタンスルホン酸ナトリウム22.9g(0.15mol)を入れ、ここに上で調製した反応混合物Aを加え、室温から160℃までゆっくり昇温、さらに160℃で17時間攪拌した。反応混合物を減圧下濃縮し、得られた残さに酢酸エチルを加えた後、酢酸エチルに溶けない結晶を濾取し、酢酸エチルで充分洗浄後乾燥し約40gの粗結晶を得た。この粗結晶をエタノールを用いてソックスレーで抽出し精製することにより、(4−クロロフェニルチオ)メタンスルホン酸 21.9g(収率56%)を得た。
アルゴン雰囲気下、フッ素樹脂製の反応容器に、EtN・3HF 38.7g(240mmol)とIF 53.3g(240mmol)を入れ攪拌した。ここにヘプタン160mlを加えた後、氷冷下、(4−クロロフェニルチオ)メタンスルホン酸 20.9gを約1分間かけて加えた。氷浴をはずし、室温からゆっくり昇温、70℃下16時間攪拌した。放冷後、反応混合物を水800ml中にあけ、ジクロロメタンで3回抽出した。抽出した有機層に内部標準としてフルオロベンゼン1.88ml(20mmol)を加え、19F−NMRを測定したところ、トリエチルアンモニウム(4−クロロフェニルチオ)ジフルオロメタンスルホナートが約59%の収率で生成していた。有機層をチオ硫酸ナトリウム水溶液で2回、水で1回洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥、乾燥剤を濾去後、溶液を濃縮し、15.3gの粗結晶を得た。この粗結晶を酢酸エチル−n−ヘキサンで再結晶することにより、トリエチルアンモニウム(4−クロロフェニルチオ)ジフルオロメタンスルホナート 9.7g(収率32%)を得た。
H−NMR(500MHz,CDCl)(ppm):1.38(9H,t,J=7.4Hz),3.16(6H,qd,J=7.4,4.9Hz),7.35(2H,dm,J=8.6Hz),7.63(2H,dm,J=8.6Hz).
19F−NMR(500MHz,CDCl)(ppm):−79.1(2F,s).
【実施例2】
トリエチルアンモニウム(4−クロロフェニルスルホニル)ジフルオロメタンスルホナートの合成

トリエチルアンモニウム(4−クロロフェニルチオ)ジフルオロメタンスルホナート 220mg(0.59mmol)の酢酸1ml溶液に、室温で31%過酸化水素水643mg(5.9mmol)の酢酸1ml溶液を滴下した。その後、混合液をゆっくり80℃に昇温して、そのまま3日間加熱した後、さらに系内に31%過酸化水素水643mg(5.9mmol)の酢酸1ml溶液を追加して100℃で3日間加熱した。反応液を放冷後、系内に内部標準としてフルオロベンゼン94μl(1mmol)を加え19F−NMRを測定したところ、トリエチルアンモニウム(4−クロロフェニルスルホニル)ジフルオロメタンスルホナートが収率77%、トリエチルアンモニウム(4−クロロフェニルスルフィニル)ジフルオロメタンスルホナートが収率6%生成していた。反応液にトリエチルアミンを加え中和後、ジクロロメタンで抽出、有機層を水洗後無水硫酸マグネシウムで乾燥、乾燥剤を濾去後、溶液を濃縮することにより、206mgの粗結晶を得た。この粗結晶をメタノールを展開溶媒としてシリカゲルプレートで精製することにより、トリエチルアンモニウム(4−クロロフェニルスルホニル)ジフルオロメタンスルホナート 117mg(収率49%)を得た。
H−NMR(500MHz,CDOD)(ppm):1.29(9H,t,J=7.3Hz),3.15(6H,q,J=7.3Hz),7.68(2H,dm,J=8.8Hz),8.01(2H,dm,J=8.8Hz).
19F−NMR(500MHz,CDOD)(ppm):−103.6(2F,s).
【実施例3】
トリエチルアンモニウム(4−クロロフェニルスルホニル)ジフルオロメタンスルホナートの合成
トリエチルアンモニウム(4−クロロフェニルチオ)ジフルオロメタンスルホナート 72mg(0.16mmol)のメタノール1ml溶液に、オキソン(Oxone)(2KHSO・KHSO・KSO)197mgの水0.75ml懸濁液を加え、室温で一日攪拌した。さらにメタノール0.5ml、水0.38ml、及びオキソン100mg添加した後7日間攪拌した。反応液の19F−NMRを測定したところ、トリエチルアンモニウム(4−クロロフェニルスルホニル)ジフルオロメタンスルホナートとトリエチルアンモニウム(4−クロロフェニルスルフィニル)ジフルオロメタンスルホナートが82:18の比で生成していた。
【実施例4】
トリエチルアンモニウム(4−クロロフェニルスルフィニル)ジフルオロメタンスルホナートの合成

トリエチルアンモニウム(4−クロロフェニルチオ)ジフルオロメタンスルホナート 500mg(1.33mmol)の酢酸2.5ml溶液に、室温で31%過酸化水素水292mg(2.66mmol)の酢酸1ml溶液を滴下した。その後、ゆっくり80℃に昇温し、そのまま20時間過熱した。反応液を放冷後、系内に内部標準としてフルオロベンゼン188μl(2mmol)を加え19F−NMRを測定したところ、トリエチルアンモニウム(4−クロロフェニルスルフィニル)ジフルオロメタンスルホナートが収率77%、トリエチルアンモニウム(4−クロロフェニルスルホニル)ジフルオロメタンスルホナートが収率23%で生成していた。反応液にトリエチルアミンを加え中和後、ジクロロメタンで抽出した。有機層を水洗後無水硫酸マグネシウムで乾燥、乾燥剤を濾去後、溶液を濃縮し、334mgの油状物を得た。さらなる精製は、メタノールを展開溶媒とし、シリカゲルプレートでおこなった。
H−NMR(500MHz,CDOD)(ppm):1.28(9H,t,J=7.3Hz),3.13(6H,q,J=7.3Hz),7.62(2H,dm,J=8.7Hz),7.82(2H,dm,J=8.7Hz).
19F−NMR(500MHz,CDOD)(ppm):−104.8(1F,d,J=204Hz),−108.7(1F,d,J=204Hz).
【実施例5】
スルフィド化合物6の合成

ジフルオロメタンスルホニルベンゼン 500mg(2.59mmol)のジクロロメタン6ml溶液にベンジルジスルフィド 638mg(2.59mmol)及びテトラブチルアンモニウムブロミド 20mgを加え、室温で50%水酸化ナトリウム水溶液6ml%を滴下した後、そのまま24時間室温で攪拌した。冷却しながら、水及び酢酸エチルを加え、酢酸エチル抽出を二回行った。希塩酸及びブラインで洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥、乾燥剤を濾去後、溶液を濃縮した。残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:1)で精製することにより、スルフィド化合物を無色結晶として収率66%で得た。
H−NMR(500MHz,CDCl)(ppm):4.32(2H,s),7.28−7.35(5H,m),7.55−8.05(5H,m,)
19F−NMR(500MHz,CDCl)(ppm):−81.0(s)
HRMS: 理論値 314.02468 (M
実測値 314.02422 (M
融点: 54.1−55.2℃
【実施例6】
スルホニル化合物7の合成

スルフィド化合物 1g(3.19mmol)を水10mlに分散させ、内温0〜5℃にて塩素ガスを4時間バブリングさせた。冷却しながら、水及びジクロロメタンを加え、ジクロロメタン抽出を二回行った。ブラインで洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥、乾燥剤を濾去後、溶液を濃縮し、970mgの油状物を得た。系内に内部標準としてフルオロベンゼン299μl(3.19mmol)を加え19F−NMRを測定し、内部標準を基準として収率を求めたところ、スルホニルクロライドが91%で生成していることを確認した。
H−NMR(500MHz,CDCl)(ppm):7.72−8.15(5H,m)
19F−NMR(500MHz,CDCl)(ppm):−96.0(s)
【実施例7】
スルフィド化合物8の合成

ジフルオロメタンスルホニルベンゼン 500mg(2.59mmol)のジクロロメタン6ml溶液に、n−ブチルジスルフィド 492.5μl(2.59mmol)及びテトラブチルアンモニウムブロミド 20mgを加え、室温で50%水酸化ナトリウム水溶液6ml%を滴下した後、そのまま72時間室温で攪拌した。冷却しながら、水及び酢酸エチルを加え、酢酸エチル抽出を二回行った。希塩酸及びブラインで洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥、乾燥剤を濾去後、溶液を濃縮した。残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:1)で精製することにより、スルフィド化合物を無色透明液体として収率67%で得た。
H−NMR(500MHz,CDCl)(ppm):0.93(3H,t,J=7.34),1.45(2H,dt,J=7.34,7.25),1.67(2H,dd,J=7.25,7.46),3.08(2H,t,J=7.46),7.54−8.05(5H,m)
19F−NMR(500MHz,CDCl)(ppm):−80.6(s)
【実施例8】
スルホニル化合物7の合成

(1)スルフィド化合物 1g(3.56mmol)をトリフルオロ酢酸10mlに溶かし、内温度0〜5℃にて塩素ガスを10時間バブリングさせた。系内に内部標準としてフルオロベンゼン334μl(3.56mmol)を加え19F−NMRを測定したところ、サルファークロリド化合物が収率55%で生成していた。溶液を濃縮し、820mgの油状物を得た。
H−NMR(500MHz,CDCl)(ppm):7.63−8.10(5H,m)
19F−NMR(500MHz,CDCl)(ppm):−81.1(s)
(2)上記820mgの未精製のサルファークロリド化合物を水10mlに分散させ、内温度0〜5℃にて塩素ガスを5時間バブリングさせた。冷却しながら、水及びジクロロメタンを加え、ジクロロメタン抽出を二回行った。ブラインで洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥、乾燥剤を濾去後、溶液を濃縮し、450mgの油状物を得た。系内に内部標準としてフルオロベンゼン334μl(3.56mmol)を加え19F−NMRを測定したところ、スルホニル化合物がスルフィド化合物からのトータル収率45%で生成していた。
得られるスルホニル化合物は、公知の方法により、スルホン酸(又はその塩)に変換することができる。
H−NMR(500MHz,CDCl)(ppm):7.72−8.15(5H,m)
19F−NMR(500MHz,CDCl)(ppm):−96.0(s)
なお、本明細書に記載された公知文献は、参考として援用される。
【発明の効果】
本発明のフルオロスルホン酸は、従来のフルオロスルホン酸に比べ、安定かつ高い酸性度を有している。そして、本発明のフルオロスルホン酸化合物の製法によれば、種々の誘導体を簡便に合成することが可能である。また、本発明のフルオロスルホン酸化合物は、強酸触媒、電解質等の広範な用途に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式:
−S(=O)−CF−SO
(式中、nは1又は2を示す)
で表される基を分子内に有する化合物又はその塩。
【請求項2】
一般式(1):
R−S(=O)−CF−SOH (1)
(式中、Rは、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいハロアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいハロアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいハロアルキニル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいシクロアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルケニルオキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルキニルオキシカルボニル基、置換基を有してもよいアリールオキシカルボニル基、置換基を有してもよいアシル基、置換基を有してもよいカルバモイル基、又はシアノ基を示し、nは1又は2を示す)
で表される化合物又はその塩。
【請求項3】
一般式(2):
R−S−CF−SOH (2)
(式中、Rは、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいハロアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいハロアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいハロアルキニル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいシクロアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルケニルオキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルキニルオキシカルボニル基、置換基を有してもよいアリールオキシカルボニル基、置換基を有してもよいアシル基、置換基を有してもよいカルバモイル基、又はシアノ基を示す)
で表される化合物又はその塩。
【請求項4】
一般式(3):
R−S(=O)−CF−SOX (3)
(式中、Rは、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいハロアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいハロアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいハロアルキニル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいシクロアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルケニルオキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルキニルオキシカルボニル基、置換基を有してもよいアリールオキシカルボニル基、置換基を有してもよいアシル基、置換基を有してもよいカルバモイル基、又はシアノ基を示し、Xはハロゲン原子を示し、nは1又は2を示す)
で表される化合物(但し、CFSOCFSOF、FSOCFSOCFSOF、及びCFSOCFSOCFSOFを除く)。
【請求項5】
一般式(4):
R−S−CF−SOX (4)
(式中、Rは、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいハロアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいハロアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいハロアルキニル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいシクロアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルケニルオキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルキニルオキシカルボニル基、置換基を有してもよいアリールオキシカルボニル基、置換基を有してもよいアシル基、置換基を有してもよいカルバモイル基、又はシアノ基を示し、Xはハロゲン原子を示す)
で表される化合物。
【請求項6】
一般式(6):
R−SM (6)
(式中、Rは、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいハロアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいハロアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいハロアルキニル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいシクロアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルケニルオキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルキニルオキシカルボニル基、置換基を有してもよいアリールオキシカルボニル基、置換基を有してもよいアシル基、置換基を有してもよいカルバモイル基、又はシアノ基を示し、Mは水素原子又は金属原子を示す)
で表される化合物と、一般式(7):
Y−CH−SO (7)
(式中、Yはハロゲン原子を示し、Mは金属原子を示す)
で表される化合物とを反応させて、必要に応じて塩にすることを特徴とする、一般式(8):
R−S−CH−SOH (8)
(但し、記号は前記に同じ)
で表される化合物又はその塩の製法。
【請求項7】
一般式(8):
R−S−CH−SOH (8)
(式中、Rは、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいハロアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいハロアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいハロアルキニル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいシクロアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルケニルオキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルキニルオキシカルボニル基、置換基を有してもよいアリールオキシカルボニル基、置換基を有してもよいアシル基、置換基を有してもよいカルバモイル基、又はシアノ基を示す)
で表される化合物又はその塩をフッ素化し、必要に応じて塩にすることを特徴とする、一般式(2):
R−S−CF−SOH (2)
(但し、記号は前記に同じ)
で表される化合物又はその塩の製法。
【請求項8】
一般式(2):
R−S−CF−SOH (2)
(式中、Rは、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいハロアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいハロアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいハロアルキニル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいシクロアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルケニルオキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルキニルオキシカルボニル基、置換基を有してもよいアリールオキシカルボニル基、置換基を有してもよいアシル基、置換基を有してもよいカルバモイル基、又はシアノ基を示す)
で表される化合物を酸化し、必要に応じて塩にすることを特徴とする、一般式(1):
R−S(=O)−CF−SOH (1)
(式中、nは1又は2を示し、他の記号は前記に同じ)
で表される化合物又はその塩の製法。
【請求項9】
一般式(12):
R−S(=O)−CF−SR (12)
(式中、Rは、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいハロアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいハロアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいハロアルキニル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいシクロアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルケニルオキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルキニルオキシカルボニル基、置換基を有してもよいアリールオキシカルボニル基、置換基を有してもよいアシル基、置換基を有してもよいカルバモイル基、又はシアノ基を示し、nは1又は2を示し、Rは、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいハロアルキル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、又は置換基を有してもよいアリール基を示す)
で表される化合物を酸化することを特徴とする、一般式(3):
R−S(=O)−CF−SOX (3)
(但し、記号は前記に同じ)
で表される化合物の製法。
【請求項10】
一般式(3):
R−S(=O)−CF−SOX (3)
(式中、Rは、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいハロアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいハロアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいハロアルキニル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいシクロアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルケニルオキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルキニルオキシカルボニル基、置換基を有してもよいアリールオキシカルボニル基、置換基を有してもよいアシル基、置換基を有してもよいカルバモイル基、又はシアノ基を示し、nは1又は2を示し、Xはハロゲン原子を示す)
で表される化合物を加水分解し、必要に応じて塩にすることを特徴とする、一般式(1):
R−S(=O)−CF−SOH (1)
(但し、記号は前記に同じ)
で表される化合物又はその塩の製法。
【請求項11】
一般式(12a):
R−S(=O)−CF−S−CH−Ph (12a)
(式中、Rは、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいハロアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいハロアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいハロアルキニル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいシクロアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルケニルオキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルキニルオキシカルボニル基、置換基を有してもよいアリールオキシカルボニル基、置換基を有してもよいアシル基、置換基を有してもよいカルバモイル基、又はシアノ基を示し、nは1又は2を示す)
で表される化合物。
【請求項12】
請求項1又は2に記載の化合物又はその塩からなる電解質。
【請求項13】
請求項12に記載の電解質を含む電池。
【請求項14】
請求項1又は2に記載の化合物又はその塩からなる酸触媒。

【国際公開番号】WO2004/072021
【国際公開日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【発行日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−504998(P2005−504998)
【国際出願番号】PCT/JP2004/001547
【国際出願日】平成16年2月13日(2004.2.13)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】