説明

フレキシブルプリント基板、フレキシブルプリント基板の貼着方法及び電子機器

【課題】三次曲面を有する被貼着体にフレキシブルプリント基板を貼着する際にしわが生じるのを防止できるとともに、配線パターンの設計が容易化されるフレキシブルプリント基板、フレキシブル基板の貼着方法及び電子機器を提供する。
【解決手段】フィルム状の絶縁基材上に金属配線層が形成され、三次曲面を有する被貼着体に貼着されるフレキシブルプリント基板において、当該フレキシブルプリント基板の周縁部、特に貼着時に歪み応力が集中しやすい部位に、略円弧状(円弧状、楕円弧状、長円弧状など、円弧半径が徐々に変化する緩和曲線形状を含む)の切欠部を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルプリント基板、フレキシブルプリント基板の貼着方法及び電子機器に関し、特に、三次曲面を有する被貼着体にフレキシブルプリント基板を貼着する場合に有用な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フィルム状の絶縁基材上に金属配線層が形成されたフレキシブルプリント基板(FPC:Flexible printed circuits)が知られている。このフレキシブルプリント基板としては、例えば、金属配線層で電波を受信するアンテナ素子を構成したフィルムアンテナ等がある。
フィルムアンテナは、携帯電話機等の無線機器の筐体にバッテリや回路基板とともに内蔵することが可能であり、通常使用時には利用者から視認不能となるため、デザイン性の向上を図ることができる。
【0003】
ところで、フィルムアンテナを無線機器の筐体に内蔵する場合、筐体に粘着テープ等を用いてフィルムアンテナを貼着するのが一般的である。具体的には、筐体の被貼着面の所定部位(例えば平面部)にフィルムアンテナを仮貼着して位置決めした後、周縁部に向けて押し伸ばすようにして貼着される。
ここで、筐体の被貼着面が平面又は二次曲面(平面を変形させることにより形成される曲面)であれば、歪みを生じさせることなくフィルムアンテナを貼着することができるため、しわが生じることもない。
【0004】
しかしながら、筐体の被貼着面が複数のR形状を複合化した三次曲面(平面を変形させることにより形成できない曲面)を有する場合、フィルムアンテナを貼着する際に少なからず歪み応力が生じる。この歪み応力はフィルムアンテナを変形(伸張)させることで緩和できるが、完全に除去することは困難であるため、貼着したフィルムアンテナに歪み応力によるしわが生じてしまう。そして、貼着したフィルムアンテナにしわが生じると、外観が損なわれる上、被貼着面から剥離しやすくなるため、好ましくない。
特に、携帯電話機等の無線機器においては、フィルムアンテナの配置を考慮して筐体が設計されることは少なく、小型化や薄型化の観点から筐体が設計されるため、被貼着面が三次曲面を含む場合が多く、また作業者の技量によって歪み応力を緩和させることも困難となっている。
【0005】
フィルムアンテナ等のフィルム材を三次曲面に貼着する際に有用な技術としては、例えば特許文献1、2がある。特許文献1には、一対の樹脂フィルム間に液晶層を狭持してなり、三次曲面を有する一対の透明基板間に狭持される液晶調光素子において、樹脂フィルムの周縁部に全体にわたってV字状の切り込み部を形成する技術が開示されている。また、特許文献2には、2枚の合成樹脂フィルムでヒータ用金属箔を狭持してなり、三次曲面を有するパラボラアンテナに貼着される融雪ヒータにおいて、一方向に伸びる複数のスリットを合成樹脂フィルムに形成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−18856号公報
【特許文献2】特開平11−27018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の技術をフレキシブルプリント基板に適用した場合、切り込み部のエッジに歪み応力が集中するため、貼着時にしわの発生を完全に防止することは困難であり、エッジ部で破損しやすいという問題もある。また、特許文献2に記載の技術をフレキシブルプリント基板に適用した場合、スリットにより金属配線層の形成領域が分断されるため、金属配線層の形状が複雑になるという問題がある。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、三次曲面を有する被貼着体にフレキシブルプリント基板を貼着する際にしわが生じるのを防止できるとともに、配線パターンの設計が容易化されるフレキシブルプリント基板、フレキシブル基板の貼着方法及び電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、フィルム状の絶縁基材上に金属配線層が形成され、三次曲面を有する被貼着体に貼着されるフレキシブルプリント基板であって、
当該フレキシブルプリント基板の周縁部に略円弧状の切欠部が形成されていることを特徴とする。
ここで、「略円弧状」とは、円弧状、楕円弧状、長円弧状の他、円弧半径が徐々に変化する緩和曲線形状を含む。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のフレキシブルプリント基板において、当該フレキシブルプリント基板を前記被貼着体に貼着するとき、歪が集中する部位に、前記切欠部が形成されていることを特徴とする。
ここで、「歪が集中する部位」とは、切欠部を形成していないフレキシブルプリント基板を被貼着体に貼着したときに、実際にしわが生じる部位である。したがって、フレキシブルプリント基板の被貼着体への貼着方法によって、歪が集中する部位は変化する。例えば、中央部から周縁部に向かってフレキシブルプリント基板を押し伸ばしながら貼着する場合、最終的に周縁部の一部に歪が集中することになる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のフレキシブルプリント基板において、前記金属配線層が、電波を受信可能なアンテナ素子を構成することを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、フィルム状の絶縁基材上に金属配線層が形成されたフレキシブルプリント基板を、三次曲面を有する被貼着体に貼着するときの貼着方法であって、
前記フレキシブルプリント基板の周縁部に略円弧状の切欠部を形成し、
当該フレキシブルプリン基板を前記被貼着体の所定部位に仮貼着し、
前記切欠部に向かって押し伸ばしながら貼着することを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1から3の何れか一項に記載のフレキシブルプリント基板が、前記被貼着体となる筐体に貼着されていることを特徴とする電子機器である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、三次曲面を有する被貼着体にフレキシブルプリント基板を貼着する際に、歪み応力が効果的に分散され除去されるので、しわの発生を防止することができる。したがって、電子機器の筐体等にフレキシブルプリント基板を貼着したときの外観向上及びフレキシブルプリント基板の接着性の向上を図ることができる。
また、金属配線層の形成領域が分断されることなく広範囲となり、形成領域による制約が少なくなるので、配線パターンの設計が容易化される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】筐体片へのフィルムアンテナの貼着状態を示す外観斜視図である
【図2】フィルムアンテナの要部構成を示す平面図である。
【図3】筐体片への貼着時にフィルムアンテナに生じるしわの一例を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。本実施形態では、本発明に係るフレキシブルプリント基板の一例として、携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistant)、ノートパソコン等の無線機器に内蔵されるフィルムアンテナについて説明する。
【0017】
図1は筐体片へのフィルムアンテナの貼着状態を示す外観斜視図、図2はフィルムアンテナの要部構成を示す平面図である。無線機器にフィルムアンテナ1を内蔵する場合、例えば図1に示すように、筐体の一部をなす筐体片2にフィルムアンテナ1が粘着テープ(図示略)により貼着され、これが本体ケース内にバッテリーや回路基板等とともに収容される。フィルムアンテナ1は、無線機器の通常使用時には利用者から視認不能となるが、バッテリーの取替え時など利用者から視認可能となる場合があるため、外観も重要視される。
【0018】
筐体片2は、無線機器の本体ケースに装着可能な形状を有し、フィルムアンテナ1が貼着される被貼着面21は三次曲面を含む形状に形成されている。図1に示す筐体片2では、被貼着面21の下辺部21aがRのきつい三次曲面となっている。
【0019】
フィルムアンテナ1は、図2に示すように、合成樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET))製のフィルム基材11上に、金属配線層(例えば銅箔)12が形成された構成を有している。金属配線層12には給電線(図示略)が接続されており、金属配線層12で電波を受信することにより発生した電力が、給電線を介して無線機器に内蔵された受信回路に伝送される。つまり、金属配線層12が、電波を受信可能なアンテナ素子を構成している。
【0020】
フィルムアンテナ1は、筐体片2の被貼着面21の形状に合わせて形成される。具体的には、金属配線層12の形成領域、筐体片2に貼着するときの作業性、フィルムアンテナ1の加工性等を考慮して設計される。
【0021】
本実施形態では、フィルムアンテナ1の周縁部の一部、すなわち被貼着面21の下辺部21aに対応する部分の4箇所に、曲率半径2〜5mmの半円弧状の切欠部11aを形成している。これにより、フィルムアンテナ1を筐体片2に貼着する際に、歪み応力が効果的に分散され除去される。
【0022】
筐体片2にフィルムアンテナ1を貼着する場合、例えば、筐体片2の所定部位にフィルムアンテナ1を配置した状態で仮貼着して位置決めする。ここでは、筐体片2の上辺部21bがRの緩い曲面となっているので、この部位にフィルムアンテナ1を仮貼着する。そして、フィルムアンテナ1の中央部から周縁部に向けてフィルムアンテナ1を押し伸ばしながら貼着する。一般には、歪み応力が生じにくい領域から順に、すなわち、平面、二次曲面、複合Rの緩い三次曲面、複合Rのきつい三次曲面の順にフィルムアンテナ1を貼着することで、しわの発生程度を小さくできると考えられる。
このようにして筐体片2にフィルムアンテナ1を貼着すると、Rのきつい被貼着面21の下辺部21aに歪み応力が集中しやすい。例えば、図3に示すように、被貼着面21の下辺部21aにおいて、フィルムアンテナ1に複数のしわが生じる。
【0023】
これに対して、本実施形態のフィルムアンテナ1には、筐体片2に貼着する際に歪み応力が集中する部位、すなわち被貼着面21の下辺部21aに対応する部位に切欠部11aが形成されている。したがって、フィルムアンテナ1を切欠部11aに向かって押し伸ばすように貼着することで、切欠部11aによって歪み応力が分散され除去される。その結果、筐体片2に貼着したフィルムアンテナ1にはしわが発生しない。
【0024】
このように、本実施形態のフィルムアンテナ1によれば、しわの発生を効果的に防止することができるので、筐体片2にフィルムアンテナ1を貼着したときの外観の向上を図ることができる。また、しわによるフィルムアンテナ1の浮きがないため、筐体片2を本体ケース内の狭いスペースに組み込む際に擦れが生じにくく、組立作業が容易化される。また、経時的な剥離も生じにくく、フィルムアンテナ1の接着性が向上する。
さらには、金属配線層12の形成領域が分断されることなく広範囲となり、形成領域による制約が少なくなるので、アンテナパターンの設計が容易化される。
【0025】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、フィルムアンテナ1に形成される切欠部11aの位置、数又は形状は適宜変更可能である。すなわち、筐体片2の被貼着面21の形状によって、また筐体片2にフィルムアンテナ1を貼着するときの貼着順序によって、歪み応力が集中する部位は変化する。したがって、切欠部11aを形成していないフィルムアンテナ1を、実際に筐体片2に貼着したときにしわが生じた部位、及びこのときのしわの大きさに応じて切欠部11aを形成するようにすればよい。この場合、生じるしわの程度が小さくなること、貼着時の作業性が著しく低下しないこと等を考慮して、貼着順序を試行錯誤して決定した上で、切欠部11aの形成位置等を決定するのが望ましい。これにより、切欠部11aを形成することで金属配線層12の形成領域が著しく制限されるのを防止できるとともに、貼着時の作業性が低下するのを防止できる。
【0026】
切欠部11aの形状は、実施形態で示した半円弧以外の円弧状(例えば1/4円弧状)、楕円弧状、長円弧状でもよいし、円弧半径が徐々に変化する緩和曲線形状でもよい。曲率半径の小さい円弧状の切欠部11aを近接して複数形成するのであれば、楕円弧状又は長円弧状の切欠部11aを一つ形成するほうが、フィルムアンテナ1の加工は容易になると考えられる。
【0027】
また、切欠部11aの大きさは、金属配線層12の形成領域が十分に確保でき、フィルムアンテナ1を筐体片2に貼着したときの外観が損なわれない程度であれば特に制限されない。
また、フィルムアンテナ1の周縁部の全部に切欠部11aを形成すれば、筐体片2の被貼着面21のR形状が変更された場合でも効率よく対応することができる。
【0028】
本発明は、実施形態で示した無線機器に内蔵されるフィルムアンテナの他、外観が重視される外装品である車載用のフィルムアンテナにも好適である。また、本発明は、フィルムアンテナに制限されず、各種携帯型の電子機器に内蔵されるフレキシブルプリント基板に適用できる。
【0029】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0030】
1 フィルムアンテナ(フレキシブルプリント基板)
11 フィルム基材(絶縁基材)
11a 切欠部
12 金属配線層(アンテナ素子)
2 筐体片(被貼着体)
21 被貼着面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム状の絶縁基材上に金属配線層が形成され、三次曲面を有する被貼着体に貼着されるフレキシブルプリント基板であって、
当該フレキシブルプリント基板の周縁部に略円弧状の切欠部が形成されていることを特徴とするフレキシブルプリント基板。
【請求項2】
当該フレキシブルプリント基板を前記被貼着体に貼着するとき、歪が集中する部位に、前記切欠部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のフレキシブルプリント基板。
【請求項3】
前記金属配線層が、電波を受信可能なアンテナ素子を構成することを特徴とする請求項1又は2に記載のフレキシブルプリント基板。
【請求項4】
フィルム状の絶縁基材上に金属配線層が形成されたフレキシブルプリント基板を、三次曲面を有する被貼着体に貼着するときの貼着方法であって、
前記フレキシブルプリント基板の周縁部に略円弧状の切欠部を形成し、
当該フレキシブルプリン基板を前記被貼着体の所定部位に仮貼着し、
前記切欠部に向かって押し伸ばしながら貼着することを特徴とするフレキシブルプリント基板の貼着方法。
【請求項5】
請求項1から3の何れか一項に記載のフレキシブルプリント基板が、前記被貼着体となる筐体に貼着されていることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−119410(P2012−119410A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266020(P2010−266020)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】