説明

フレキシブル基板、フレキシブル基板の実装方法及び照明装置

【課題】構成部品の構造及び製造工程を複雑化することなく、電子デバイスを所望の形状に精確に配置することが可能なフレキシブル基板、フレキシブル基板の実装方法及び照明装置を提供すること。
【解決手段】本発明に係るフレキシブル基板は、帯状の基板本体部と、前記基板本体部の長手方向に直交する方向の一方の端部から、当該長手方向に直交する方向に向かって延設された複数の突出部からなる櫛状部と、前記複数の突出部のそれぞれに配設された電子デバイスと、を備え、前記基板本体部及び前記櫛状部が湾曲変形可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル基板、フレキシブル基板の実装方法及び照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像処理装置におけるCCDカメラ用照明や、顕微鏡観察用の照明用途として、消費電力の少ないLED(発光ダイオード)を環状に複数配置する、いわゆるリング照明装置が存在する。リング照明装置は、対物レンズの周囲を取り囲むようにLEDを配置し、観察対象に対してあらゆる方向や角度から光を照射することで、対象物の表面にある微妙な凹凸に対し、陰影を作ることで輪郭を浮かび上がらせ、画像を観察しやすい状態にするものである。
【0003】
リング照明装置の製造においては、複数のLEDを環状に配置する。また、ただ環状にLEDを配置するのみではなく、個々の観察対象における表面状態に対応し、一般に0度から90度までの傾斜角度をもって対象物に光を照射するようにLEDを配置することが求められる。このため、光源の実装工程では、角度をもった傾斜面に対してLEDの実装を行う必要がある。従って、通常の平面基板実装とは異なった実装方法の工夫が、自動化設備に求められている。
【0004】
これに対し、現在の一般的な実装方法としては、例えば特許文献1に記載されているように、まず、円錐面を持った環状部品における円錐面に適合するように、形と大きさが設定された切り欠き付きのC字形状のフレキシブル基板を準備する。その後、この基板上平面に対しLEDを実装し、続いて、基板の切り欠きを繋げるように屈曲変形させて環状部品の錐面に貼り付けることで、LEDを所望の角度と環上位置に配置する。
【0005】
しかしながら、LEDの実装密度が高くなると、湾曲時にLEDの先端部がフレキシブル基板の極率半径よりも小さくなるために、LED同士が干渉を起こし、フレキシブル基板を屈曲させることは容易ではない。また、LED同士の干渉やプリント基板のハンダ接合部を屈曲させることは、ハンダ接合部に対してストレスをかける原因となる。これによってハンダ接合部にクラックが生じ、電気的接触不良が発生するという問題がある。
【0006】
このようなハンダ接合部に生じるクラックに起因する電気的接触不良を解決するために、以下に示した特許文献2では、特定の構造を有する構造体が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第2975893号
【特許文献2】特開2008−78066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献2に記載の方法を用いると、構成部品の構造及び製造工程が複雑化し、製造コストの上昇につながってしまうという問題があった。
【0009】
また、本発明者らが上記特許文献1及び特許文献2に記載の技術について検討を行った結果、上記特許文献に記載された何れの方法も、組立後におけるLEDの実装位置精度が悪いという問題に想到した。通常のリング照明装置に用いられているLEDは、LEDチップとレンズが一体構造となった、いわゆる砲弾型の製品である。このような砲弾型のLEDを実装する際の電気的接合は、LED本体から出ている2本の針金状リード線をプリント基板上に設けられたスルーホールに差し込み、ハンダ付けをすることによって行われる。ところが、初期状態でリード線に曲がりがあると、砲弾型のレンズが首を振る結果となり、取り付け角度が精確に定まらないという問題がある。
【0010】
従来のCCDカメラや顕微鏡観察用途としての照明装置であれば、さほどの実装精度を必要としないため、上述のような首振りによるLED位置決め精度のばらつきは、問題になっていなかった。
【0011】
しかしながら、近年の技術発展に伴い、従来にない新しいタイプの電子デバイスにおいて、環状照明装置を必要とし、かつ、高い位置精度で光を所望のエリアに照射することが要求されるようになってきている。
【0012】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、構成部品の構造及び製造工程を複雑化することなく、電子デバイスを所望の形状に精確に配置することが可能な、フレキシブル基板、フレキシブル基板の実装方法及び照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、帯状の基板本体部と、前記基板本体部の長手方向に直交する方向の一方の端部から、当該長手方向に直交する方向に向かって延設された複数の突出部からなる櫛状部と、前記複数の突出部のそれぞれに配設された電子デバイスと、を備え、前記基板本体部及び前記櫛状部が湾曲変形可能である、フレキシブル基板が提供される。
【0014】
前記電子デバイスは、前記基板本体部の板面に対して垂直な方向に向かって配設されることが好ましい。
【0015】
前記電子デバイスは、前記突出部のそれぞれにおいて、当該突出部の長手方向に沿って複数配列していてもよい。
【0016】
前記基板本体部及び前記櫛状部の表面には、配線パターンが設けられていてもよい。
【0017】
前記電子デバイスは、発光素子、トランジスタ、抵抗、コンデンサー、センサ、発振器及びICチップからなる群より選択される少なくとも何れかであることが好ましい。
【0018】
前記基板本体部及び前記櫛状部は、ポリイミド、PET、PEN、PES等の樹脂フィルムを用いて形成されていてもよい。
【0019】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、帯状の基板本体部と、前記基板本体部の長手方向に直交する方向の一方の端部から、当該長手方向に直交する方向に向かって延設された複数の突出部からなる櫛状部と、前記複数の突出部のそれぞれに配設された電子デバイスと、を備え、前記基板本体部及び前記櫛状部が湾曲変形可能であるフレキシブル基板の前記基板本体部を、筒状部と、前記筒状部の軸方向の一方の端部に連結された錐状部と、を有し、前記筒状部を前記軸方向に直交する方向で切断した場合の断面が任意の形状を有する筺体の前記筒状部に対して、前記櫛状部が前記錐状部の方向に向くように当該筒状部の周方向に貼付するステップと、前記櫛状部のそれぞれの前記突出部を前記錐状部の錐面に沿って湾曲させるステップと、を含むフレキシブル基板の実装方法が提供される。
【0020】
前記フレキシブル基板の基板本体部は、前記筒状部の外周に沿って貼付されてもよい。
【0021】
前記フレキシブル基板の基板本体部は、前記筒状部の内周に沿って貼付されてもよい。
【0022】
前記錐状部には、前記電子デバイスの形状に適合する貫通孔が複数形成されており、前記フレキシブル基板は、前記電子デバイスが前記貫通孔を貫通するように前記胴体部に貼付されてもよい。
【0023】
前記錐状部は、前記電子デバイスの形状に適合する凹部と、当該凹部の底面に形成された貫通孔とを複数備え、前記フレキシブル基板は、前記電子デバイスが前記凹部の底面に当接するように前記胴体部に貼付されてもよい。
【0024】
前記錐状部の錐面に沿って湾曲させた前記櫛状部の外側から、弾性部材を用いて前記櫛状部を押圧してもよい。
【0025】
また、上記課題を解決するために、本発明の更に別の観点によれば、帯状の基板本体部と、前記基板本体部の長手方向に直交する方向の一方の端部から、当該長手方向に直交する方向に向かって延設された複数の突出部からなる櫛状部と、前記複数の突出部のそれぞれに配設された電子デバイスと、を有し、前記基板本体部及び前記櫛状部が湾曲変形可能であるフレキシブル基板と、筒状部と、前記筒状部の軸方向の一方の端部に連結された錐状部と、を有し、前記筒状部を前記軸方向に直交する方向で切断した場合の断面が任意の形状を有する筺体と、を備え、前記フレキシブル基板の前記基板本体部が、前記筐体の前記筒状部に対して、前記櫛状部が前記錐状部の方向に向くように当該筒状部の周方向に貼付され、かつ、前記櫛状部のそれぞれの前記突出部が、前記錐状部の錐面に沿って貼付された照明装置が提供される。
【0026】
前記発光素子は、チップタイプの発光ダイオードであり、前記錐状部には、前記チップタイプの発光ダイオードの形状に適合した凹部と、当該凹部の底面に形成された貫通孔とが複数形成されており、前記チップタイプの発光ダイオードが、前記凹部の底面に当接するようにはめ込まれていてもよい。
【0027】
前記錐状部の錐面に沿って貼付された前記櫛状部を、当該櫛状部の更に外側から押圧する弾性部材を更に備えても良い。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように本発明によれば、構成部品の構造及び製造工程を複雑化することなく、電子デバイスを所望の形状に精確に配置することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るフレキシブル基板の一例を示した説明図である。
【図2】図1をA−A切断線で切断した場合の断面を模式的に示した断面図である。
【図3】同実施形態に係るフレキシブル基板の一例を示した説明図である。
【図4A】同実施形態に係る照明装置の一例を示した説明図である。
【図4B】同実施形態に係る照明装置の一例を示した説明図である。
【図4C】同実施形態に係る照明装置の一例を示した説明図である。
【図4D】同実施形態に係る照明装置の一例を示した説明図である。
【図5A】同実施形態に係る照明装置の一例を示した説明図である。
【図5B】同実施形態に係る照明装置の一例を示した説明図である。
【図5C】同実施形態に係る照明装置の一例を示した説明図である。
【図6】同実施形態に係るフレキシブル基板の一例を示した説明図である。
【図7A】同実施形態に係る照明装置の一例を示した説明図である。
【図7B】同実施形態に係る照明装置の一例を示した説明図である。
【図7C】同実施形態に係る照明装置の一例を示した説明図である。
【図8】同実施形態に係るフレキシブル基板の実装方法の応用例を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0031】
なお、説明は、以下の順序で行うものとする。
(1)第1の実施形態
(1−1)フレキシブル基板について
(1−2)フレキシブル基板の実装方法について
(1−3)照明装置について
(1−4)フレキシブル基板の実装方法の応用例について
(2)まとめ
【0032】
(第1の実施形態)
<フレキシブル基板について>
まず、図1及び図2を参照しながら、本発明の第1の実施形態に係るフレキシブル基板について、詳細に説明する。図1は、本実施形態に係るフレキシブル基板の一例を示した説明図であり、図2は、図1に示したフレキシブル基板をA−A切断線で切断した場合の断面を模式的に示した断面図である。
【0033】
図1に示したように、本実施形態に係るフレキシブル基板10は、基板本体部11と、櫛状部13とを備え、その外形がいわゆる櫛形形状となっている基板である。かかるフレキシブル基板10において、基板本体部11及び櫛状部13は、自由に湾曲変形させることが可能である。
【0034】
基板本体部11は、フレキシブル基板10の帯状の部分である。また、基板本体部11の長手方向(図1におけるx軸方向)と直交する方向(y軸方向)の一方の端部には、y軸方向に向かって、複数の突出部15が延設されており、これら複数の突出部15が櫛状部13となっている。これら基板本体部11及び複数の突出部15からなる櫛状部13は、例えばポリイミドのような母材101により形成される。なお、本実施形態に係るフレキシブル基板10に用いられる母材101は、上記ポリイミドに限定されるわけではなく、PET、PEN、PES等の樹脂フィルムなど、他の樹脂からなる母材を利用することも可能である。
【0035】
複数の突出部15のそれぞれには、図1に示したように、1又は複数の電子デバイス103が実装されており、基板本体部11及び櫛状部13に対応する母材101上には、縦配線及び横配線の組み合わせで形成された配線パターン105が設けられている。
【0036】
この際、各電子デバイス103は、本実施形態に係るフレキシブル基板10を湾曲させた場合に、互いの電子デバイス103が干渉を起こさない方向(すなわち、突出部15の長手方向であるy軸方向)に並んで配設される。
【0037】
また、図2に示したように、各突出部15に配設される電子デバイス103は、基板本体部11の板面に対して垂直な方向(すなわち、図1及び図2におけるz軸方向)に向かって実装される。この際、電子デバイス103は、例えば水平に載置された母材101上に実装されることとなるため、本実施形態に係るフレキシブル基板10では、電子デバイス103を極めて精確に母材101上に実装することが可能となる。電子デバイス103は、ハンダ接合、異方性導電膜(Anisotoropic Conductive Film:ACF)接合、超音波接合等の方法により、母材101又は配線パターン105上に固定される。
【0038】
ここで、本実施形態に係る突出部15に実装される電子デバイス103としては、例えば、発光ダイオード(LED)等の発光素子、トランジスタ、抵抗、コンデンサー、光センサ等の各種センサ、発振器、ICチップ等の電子部品を挙げることができる。また、本実施形態に係る突出部15に実装可能な電子部品は上記の例に限定されるわけではなく、他の任意の電子部品を実装することも可能である。
【0039】
また、本実施形態に係るフレキシブル基板10では、配線パターン105の配線形状を、縦配線と横配線の組み合わせで実現可能であるため、従来技術のように基板形状(例えば、略C字形状の基板等)にあわせた曲線パターンを用いる必要がない。その結果、本実施形態に係るフレキシブル基板10では、狭ピッチかつ高精度な配線パターンをフレキシブル基板10上に製造することが可能となる。
【0040】
また、本実施形態に係るフレキシブル基板10は、帯状の基板本体部11と、基板本体部11から突出形成された櫛状部13という、従来技術におけるフレキシブル基板に比べてシンプルな外形となっている。そのため、材料価格の高いポリイミド等の母材を用いた場合であっても、母材から効率良く型抜きすることが可能となり、1枚の母材からより多くのフレキシブル基板10を取り出すことができる。その結果、フレキシブル基板の製造コストを従来に比べて低く抑えることが可能となる。
【0041】
以上、図1及び図2を参照しながら、本実施形態に係るフレキシブル基板10の構成について、詳細に説明した。
【0042】
<フレキシブル基板の実装方法>
続いて、図1及び図2に示したようなフレキシブル基板10を実装する方法について、説明する。
【0043】
本実施形態に係るフレキシブル基板10は、筒状部と、筒状部の軸方向の一方の端部に連結された錐状部とを有し、筒状部を軸方向に直交する方向で切断した場合の断面が任意の形状を有する筺体に対して、好適に実装可能である。換言すれば、本実施形態に係るフレキシブル基板10を好適に実装可能な筐体は、円環状、楕円環状、多角形環状等の任意環状の錐状部及び筒状部を併せ持った、環状の構造体である。
【0044】
本実施形態に係るフレキシブル基板の実装方法では、まず、図1等に示したフレキシブル基板10の基板本体部11を、環状の構造体における筒状部の周囲に沿って貼り付ける。この際、フレキシブル基板10の櫛状部13が環状の構造体の錐状部の方向に向くように、フレキシブル基板10の配置方向を設定する。
【0045】
その後、図1等に示したフレキシブル基板10の各突出部15を、環状の構造体の錐状部に沿って湾曲させて、突出部15が環状の構造体の錐面に被さるように貼り付ける。
【0046】
本実施形態に係るフレキシブル基板10は、図1に示したように、隣り合う突出部15の間には、フレキシブル基板の母材101が存在しない。そのため、電子デバイス103間の基板による拘束を緩めることができ、電子デバイス103の位置ズレを起因とする接合部(電子デバイスと母材等との接合部)の応力を緩和することができる。これにより、フレキシブル基板10を湾曲させた際に、電子デバイス103(例えば、LED)の首振りバラツキによる機械的・物理的な干渉が存在したとしても、櫛状部13の隙間が拡がったり縮まったりすることで、接合部へのストレスを無くすことができる。
【0047】
また、本実施形態に係るフレキシブル基板10を用いることで、任意の断面形状を有する環状の構造体であれば、円環の半径や錐面傾斜角度に応じた専用のフレキシブル基板形状を設計することなく、フレキシブル基板を構造体に実装することができる。
【0048】
このように、本実施形態に係るフレキシブル基板の実装方法は、既存インフラである実装機を用いた自動実装を行う上で有利な、平面形状のフレキシブルプリント基板を用いる実装方法である。本実施形態に係るフレキシブル基板の実装方法を用いることで、高い実装位置精度と高い信頼性とを両立することが可能となる。
【0049】
なお、上述の説明では、フレキシブル基板10の基板本体部11を環状の構造体の筒状部に貼り付けた上で、フレキシブル基板10の櫛状部13を環状の構造体の錐面に貼り付ける手順を説明した。しかしながら、本実施形態に係るフレキシブル基板の実装方法は、上記手順に限定されるわけではなく、フレキシブル基板10の櫛状部13を環状の構造体の錐面に貼り付けた上で、フレキシブル基板10の基板本体部11を環状の構造体の筒状部に貼り付けても良い。また、フレキシブル基板10の基板本体部11と櫛状部13との環状の構造体への貼り付けを同時に行っても良い。
【0050】
<照明装置について>
続いて、電子デバイス103としてLEDが実装されたフレキシブル基板10を利用して、照明装置を製造する場合を例にとって、本実施形態に係るフレキシブル基板の実装方法を具体的に説明する。
【0051】
[照明装置の例−その1]
以下では、図3に示したように、各突出部15に1つずつ、いわゆる砲弾型のLEDが実装されているフレキシブル基板10を用いて、環状の構造体の錐面にLEDが環状に配置された照明装置を製造する場合について、図4A〜図4Dを参照しながら具体的に説明する。図3は、本実施形態に係るフレキシブル基板の一例を示した説明図である。図4A〜図4Dは、本実施形態に係る照明装置の一例を示した説明図である。
【0052】
ここで、図3に示したフレキシブル基板10が実装される筐体20は、図4Aに示したように、XY平面の断面形状が円形状である筒状部21と、筒状部21のZ軸方向の端部に設けられた円錐形状の錐状部23と、を備える。かかる筐体20は、例えばプラスチック樹脂などの、任意の素材を利用して製造することが可能である。
【0053】
また、図4Bは、図4Aに示した筐体20をZ軸方向に沿って切断した場合の断面図であるが、本実施形態に係る筐体20の内部は、図4Bに示したように中空となっている。この中空部25に向かって、フレキシブル基板10に実装されたLEDから光が照射されることとなる。
【0054】
図4Cは、図4Aに示した筺体20に対するフレキシブル基板10の実装方法の一例を示した説明図である。図4Cに示したように、本実施形態に係るフレキシブル基板10は、筺体20の内壁201に沿って実装される。すなわち、フレキシブル基板10の基板本体部11は、筺体20の筒状部21の部分に対応する内壁201に貼り付けられ、フレキシブル基板10の各突出部15は、筺体20の錐状部23の部分に対応する内壁201に沿って湾曲され、貼り付けられる。この際、フレキシブル基板10は、図4Cに示したように、LEDが筺体20の中空部25に向くように、中空部25に配設される。
【0055】
このようにしてフレキシブル基板10が筺体20の内部に実装されることで、図4Dに示したような照明装置が製造されることとなる。図4Dに示した照明装置は、フレキシブル基板10に実装されたLEDが、筺体20の錐面に応じた角度で環状に配設され、全てのLEDからの放射光を、所望の角度で所望の位置に投光できるようになっている。すなわち、本実施形態に係るフレキシブル基板の実装方法を用いて製造された照明装置は、筺体20の錐面の角度を変更することで、LEDからの放射光の照射角度を自由に変更することが可能となる。
【0056】
[照明装置の例−その2]
以上説明した、照明装置の第1例では、図3に示したフレキシブル基板10を、筺体20の内部に実装するものであった。以下で、図5A〜図5Cを参照しながら説明する照明装置の第2例は、図3に示したフレキシブル基板10を、筺体20の外周に沿って実装することで製造されるものである。このような照明装置を実現するために、筺体20の錐状部23には、LEDに対応する部分に貫通孔やエンボス形状や平面形状等を設け、これらの貫通孔やエンボス形状や平面形状等の部分に、LEDを装着する。
【0057】
図5A〜図5Cに示した例では、筺体20の錐状部23に貫通孔を設けて、いわゆる砲弾型のLEDを実装する場合について説明する。図5A〜図5Cは、本実施形態に係る照明装置の一例を示した説明図である。
【0058】
本例における筺体20の錐状部23には、図5Aに示したように、LEDに対応する部分に、LEDの形状に合わせた貫通孔203が形成されている。これらの貫通孔203は、装着されたLEDが所望の光照射角度となるような角度で、図5Aに示したように環状に配設されている。
【0059】
かかる場合において、図3に示したフレキシブル基板10は、筺体20の外壁に沿って実装される。すなわち、フレキシブル基板10の基板本体部11は、図5Bに示したように、筺体20の筒状部21の部分に対応する外壁に貼り付けられ、フレキシブル基板10の各突出部15は、錐状部23に設けられた貫通孔203にLEDが挿入されるように、錐状部23の錐面に沿って湾曲され、貼り付けられる。
【0060】
このようにしてフレキシブル基板10が筺体20の外周に沿って実装されることで、図5Cに示したような照明装置が製造されることとなる。図5Cに示した照明装置は、フレキシブル基板10に実装されたLEDが筺体20の錐面に形成された貫通孔に挿入されており、全てのLEDからの放射光が貫通孔の角度で所望の位置に投光できるようになっている。図5Cに示したように、貫通孔203にLEDを挿入することで、LEDの位置及び実装角度を機械的・物理的に規制することが可能となる。その結果、筺体20に対するLEDの実装位置の精度を更に向上させることが可能となり、光照射角度を更に精確に規制することが可能となる。
【0061】
また、図5Cに示したように、錐状部23の錐面に沿って貼付された複数の突出部15からなる櫛状部13を、櫛状部23の更に外側から(すなわち、LEDが実装されている部分の裏側から)、弾性部材27で押圧するようにしてもよい。このようにすることで、貫通孔203に挿入されたLEDのガタつきを更に抑制することが可能となり、LEDの位置決め精度を更に向上させることが可能となる。このような弾性部材27として、例えば、ゴム、スプリング、板バネ等を挙げることが可能であり、櫛状部13をどのくらいの力で押圧するかに応じて、適宜選択すればよい。
【0062】
[照明装置の例−その3]
また、図6に示したように、いわゆるチップタイプのLEDを電子デバイス103として実装したフレキシブル基板10を利用して、照明装置を製造することも可能である。チップタイプのLEDを筺体20に対して実装する際に例えばクリームハンダを利用することで、クリームハンダをベークする工程において、いわゆるセルフアラインメントの効果が働く。その結果、いわゆる砲弾型のLEDを用いる場合と比べて、より高精度にLEDの位置決めを行うことが可能となる。以下、図7A〜図7Cを参照しながら、チップタイプのLEDが実装されたフレキシブル基板を利用することで製造される照明装置について説明する。
【0063】
図6に示したような、チップタイプのLEDが実装されたフレキシブル基板10を利用する場合、筺体20の錐状部23には、図7Aに示したように、チップタイプのLEDに対応する部分に、当該LEDの外形に適合した凹部207が環状に形成される。また、図7Bは、ある凹部207の断面を拡大して示したものであるが、この図に示したように、錐状部23に形成される凹部207の底面209には貫通孔211が形成されており、凹部207に実装されたLEDから放射された光が、筺体20の中空部25に透過可能となっている。また、貫通孔211の中空部25側の端部には、光学レンズや光学フィルタ等の光学部材が設けられていてもよい。
【0064】
かかる場合において、図6に示したフレキシブル基板10は、筺体20の外壁に沿って実装される。すなわち、フレキシブル基板10の基板本体部11は、図7Cに示したように、筺体20の筒状部21の部分に対応する外壁に貼り付けられ、フレキシブル基板10の各突出部15は、錐状部23に設けられた凹部207の底面209にLED当接するように錐状部23の錐面に沿って湾曲され、貼り付けられる。
【0065】
図7Cに示した照明装置は、フレキシブル基板10に実装されたチップタイプのLEDが、筺体20の錐面に形成された凹部207の底面209に当接しており、全てのLEDからの放射光が貫通孔の角度で所望の位置に投光できるようになっている。図7Cに示したように、凹部207の底面209に当接するようにチップタイプのLEDを挿入することで、チップタイプのLEDの角度をも規制することが可能となり、更に高精度な照明装置を実現することが可能となる。
【0066】
また、図7Cに示したように、本例においても、錐状部23の錐面に沿って貼付された複数の突出部15からなる櫛状部13を、櫛状部23の更に外側から(すなわち、LEDが実装されている部分の裏側から)、弾性部材27で押圧するようにしてもよい。このようにすることで、貫通孔203に挿入されたLEDのガタつきを更に抑制することが可能となり、LEDの位置決め精度を更に向上させることが可能となる。
【0067】
以上説明した第1例〜第3例の照明装置では、各突出部15にLEDを1つずつ配置したフレキシブル基板10を利用した。そのため、第1例〜第3例の照明装置では、筺体20の錐状部23に、LEDが環状に1周分だけ配設されたものとなる。しかしながら、フレキシブル基板10の各突出部15に実装するLEDの個数を増やすことによって、筺体20の錐状部23に実現される環状のLEDが何重のリングになるかを変更することができる。
【0068】
以上、図3〜図7Cを参照しながら、本実施形態に係るフレキシブル基板の実装方法を利用することで製造可能な照明装置について、具体的に説明した。
【0069】
<フレキシブル基板の実装方法の応用例>
以上説明したような照明装置では、筺体20が、円柱状の筒状部21と円錐形状の錐状部23の組み合わせからなる構造体として形成されていたが、筺体20は、角柱状の筒状部21と角錐形状の錐状部23の組み合わせからなる構造体であってもよい。また、円形や角形以外にも、楕円形状であっても多角形であっても、錐面を持った環状の構造体であれば、任意の形状であってもよい。
【0070】
以下では、図8に示したような、筒状部が任意形状となっており、かつ、錐面の角度も一様にはなっていない環状の構造体に対して、本実施形態に係るフレキシブル基板10を実装する場合について、簡単に説明する。
【0071】
本実施形態に係るフレキシブル基板10は、例えば図1に示したように、基板本体部11から延設された突出部15のそれぞれに、例えばLED等の電子デバイスが配設される。そのため、突出部15のそれぞれで、筺体の錐面に沿って貼り付ける際の湾曲度合いを調整することが可能となり、図8に示したような錐面の角度が一様にはなっていない環状の構造物に対しても、電子デバイスを容易に配設することが可能となる。
【0072】
例えば図8に示したような自由な形の環状構造体に対して、例えばLEDの配設されたフレキシブル基板10を実装することで、任意形状のエリア(中空部)に対して、あらゆる方向から光を照射することが可能な照明装置を実現することが可能となる。
【0073】
図8に示したような照明装置において、例えば紫外光を照射可能なLEDを実装し、任意形状のエリアに対して紫外光を照射することで、このエリア内に存在するUV硬化接着剤を硬化させる等といった用途に、照明装置を利用することが可能となる。
【0074】
(まとめ)
以上説明したように、本発明の実施形態によれば、帯状の基板本体部と、基板本体部から延設された複数の突出部からなる櫛状部とを備え、各突出部にLED等の電子デバイスが実装されたフレキシブル基板が提供される。かかるフレキシブル基板を用いることで、基板母材上にハンダ接合、ACF接合、超音波接合等を用いて実装された電子デバイスの電気的接合部に機械的なストレスを与えることなく、信頼性の高い環状錐面実装が可能となる。
【0075】
また、本発明の実施形態に係るフレキシブル基板は、櫛状部のそれぞれの突出部に電子デバイスが実装されている。そのため、円形環状のみならず、楕円形や多角形等、任意形状を有する環状の構造体に対して、図1等に示したような同一形状のフレキシブル基板を用いて、構造体の錐面に対する電子デバイスの実装が可能となる。更に、錐面の角度が環状の位置によって異なるような構造体であっても、本発明の実施形態に係るフレキシブル基板を用いることで、構造体の錐面に対して電子デバイスを実装することが可能となる。
【0076】
更に、本発明の実施形態に係るフレキシブル基板の形状は、従来のフレキシブル基板に比べてシンプルであるため、材料価格の高いポリイミドフィルムを母材として利用した場合であっても、一枚のフィルムからの型取り個数を増やすことが可能となる。その結果、フレキシブル基板の製造に要するコストを抑制することができる。
【0077】
また、このようなフレキシブル基板10を利用することで、環状錐面に対する電子デバイスの位置と角度を精確に実現することが可能となる。その結果、例えば電子デバイスとしてLEDを実装した照明装置を製造した場合に、光照射エリアにおける2次元的な照度のバラつきを抑制することが可能となる。また、本発明の実施形態に係るフレキシブル基板の実装方法を用いて環状の構造体にLEDを実装することで、高精度な照射性能を有する環状照明装置を安価に製造することが可能となる。
【0078】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0079】
例えば、上記実施形態では、フレキシブル基板10の突出部それぞれに、同一種類の電子デバイス(例えば、LED等)を実装する場合について説明したが、突出部に実装する電子デバイスの種類を、突出部毎に変えてもよい。また、上記実施形態では、フレキシブル基板10に設けられた突出部の長さが同一である場合について図示したが、突出部の長さをフレキシブル基板10内で変化させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0080】
10 フレキシブル基板
11 基板本体部
13 櫛状部
15 突出部
20 筺体
21 筒状部
23 錐状部
25 中空部
27 弾性部材
101 母材
103 電子デバイス
105 配線パターン
201 内壁
203 貫通孔
205 外壁
207 凹部
209 底面
211 貫通孔


【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の基板本体部と、
前記基板本体部の長手方向に直交する方向の一方の端部から、当該長手方向に直交する方向に向かって延設された複数の突出部からなる櫛状部と、
前記複数の突出部のそれぞれに配設された電子デバイスと、
を備え、
前記基板本体部及び前記櫛状部が湾曲変形可能である、フレキシブル基板。
【請求項2】
前記電子デバイスは、前記基板本体部の板面に対して垂直な方向に向かって配設される、請求項1に記載のフレキシブル基板。
【請求項3】
前記電子デバイスは、前記突出部のそれぞれにおいて、当該突出部の長手方向に沿って複数配列している、請求項1又は2に記載のフレキシブル基板。
【請求項4】
前記基板本体部及び前記櫛状部の表面には、配線パターンが設けられる、請求項1に記載のフレキシブル基板。
【請求項5】
前記電子デバイスは、発光素子、トランジスタ、抵抗、コンデンサー、センサ、発振器及びICチップからなる群より選択される少なくとも何れかである、請求項1に記載のフレキシブル基板。
【請求項6】
前記基板本体部及び前記櫛状部は、ポリイミド、PET、PEN、PESの樹脂フィルムを用いて形成される、請求項1に記載のフレキシブル基板。
【請求項7】
帯状の基板本体部と、前記基板本体部の長手方向に直交する方向の一方の端部から、当該長手方向に直交する方向に向かって延設された複数の突出部からなる櫛状部と、前記複数の突出部のそれぞれに配設された電子デバイスと、を備え、前記基板本体部及び前記櫛状部が湾曲変形可能であるフレキシブル基板の前記基板本体部を、筒状部と、前記筒状部の軸方向の一方の端部に連結された錐状部と、を有し、前記筒状部を前記軸方向に直交する方向で切断した場合の断面が任意の形状を有する筺体の前記筒状部に対して、前記櫛状部が前記錐状部の方向に向くように当該筒状部の周方向に貼付するステップと、
前記櫛状部のそれぞれの前記突出部を前記錐状部の錐面に沿って湾曲させるステップと、
を含む、フレキシブル基板の実装方法。
【請求項8】
前記フレキシブル基板の基板本体部は、前記筒状部の外周に沿って貼付される、請求項7に記載のフレキシブル基板の実装方法。
【請求項9】
前記フレキシブル基板の基板本体部は、前記筒状部の内周に沿って貼付される、請求項7に記載のフレキシブル基板の実装方法。
【請求項10】
前記錐状部には、前記電子デバイスの形状に適合する貫通孔が複数形成されており、
前記フレキシブル基板は、前記電子デバイスが前記貫通孔を貫通するように前記胴体部に貼付される、請求項8に記載のフレキシブル基板の実装方法。
【請求項11】
前記錐状部は、前記電子デバイスの形状に適合する凹部と、当該凹部の底面に形成された貫通孔とを複数備え、
前記フレキシブル基板は、前記電子デバイスが前記凹部の底面に当接するように前記胴体部に貼付される、請求項8に記載のフレキシブル基板の実装方法。
【請求項12】
前記錐状部の錐面に沿って湾曲させた前記櫛状部の外側から、弾性部材を用いて前記櫛状部を押圧する、請求項10又は11に記載のフレキシブル基板の実装方法。
【請求項13】
帯状の基板本体部と、
前記基板本体部の長手方向に直交する方向の一方の端部から、当該長手方向に直交する方向に向かって延設された複数の突出部からなる櫛状部と、
前記複数の突出部のそれぞれに配設された電子デバイスと、
を有し、
前記基板本体部及び前記櫛状部が湾曲変形可能であるフレキシブル基板と、
筒状部と、
前記筒状部の軸方向の一方の端部に連結された錐状部と、
を有し、前記筒状部を前記軸方向に直交する方向で切断した場合の断面が任意の形状を有する筺体と、
を備え、
前記フレキシブル基板の前記基板本体部が、前記筐体の前記筒状部に対して、前記櫛状部が前記錐状部の方向に向くように当該筒状部の周方向に貼付され、かつ、前記櫛状部のそれぞれの前記突出部が、前記錐状部の錐面に沿って貼付された、照明装置。
【請求項14】
前記発光素子は、チップタイプの発光ダイオードであり、
前記錐状部には、前記チップタイプの発光ダイオードの形状に適合した凹部と、当該凹部の底面に形成された貫通孔とが複数形成されており、
前記チップタイプの発光ダイオードが、前記凹部の底面に当接するようにはめ込まれた、請求項13に記載の照明装置。
【請求項15】
前記錐状部の錐面に沿って貼付された前記櫛状部を、当該櫛状部の更に外側から押圧する弾性部材を更に備える、請求項13又は14に記載の照明装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−69673(P2012−69673A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−212395(P2010−212395)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】