説明

フロントフォーク

【課題】 所望の高い圧側減衰力を得ると共に伸行程時に十分な作動油の吸い込み量を確保して負圧の発生を防止できるフロントフォークを提供する。
【解決手段】 車輪側チューブ1内に車体側チューブ31が摺動自在に挿入され、車輪側チューブの中央に中空ロッド2が起立し、中空ロッドの上部ピストン部が車体側チューブの内周に摺接し、中空ロッド内の油室3が中空ロッドに形成したポート4を介して車輪側チューブ内の油室5に連通しているフロントフォークにおいて、中空ロッド内の油室と車輪側チューブ内の油室とを連通する油路Aを上記ポートを迂回してもうけ、当該油路の途中に圧行程で閉じ、伸行程で開くチェックバルブB,B1を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車等の車体と車軸との間に介装されて路面からの振動を減衰する緩衝器とフォークを兼ねたフロントフォークに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のフロントフォークとしては、例えば、特許文献1に記載されたものが開発されている。
【0003】
このフロントフォークは、図5に示すように、車輪側チューブたるアウターチューブ1内に車体側チューブたるインナーチューブ31が摺動自在に挿入され、アウターチューブ1の中央から中空ロッド2が起立して当該中空ロッド2の上部ピストン部がインナーチューブ31の内周に摺接し、更に、中空ロッド2内のリザーバ側油室3を中空ロッド2に形成したポート4を介してアウターチューブ1の下部油室5に連通させたものである。
【0004】
そして、インナーチューブ31が上昇する伸行程ではリザーバ側油室3の作動油がポート4を介してアウターチューブ2内の油室5に吸い込まれ、逆にインナーチューブ31下降する圧行程では圧縮されたアウターチューブ1内の油室5の作動油がポート4を介してリザーバ側の油室3に流出し、この時ポート4による流動抵抗で圧側の減衰力を発生させる。
【特許文献1】特許第3511192号公報(図1,段落0016,同0017)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のフロントフォークでは機能上特に欠陥があるわけではないが、次のような不具合の改善が望まれている。
【0006】
即ち、中空ロッド2に形成したポート4は、伸行程において作動油を吸い込む通路として利用されると共に圧行程で減衰力を発生させるオリフィスとしても利用される共通の油孔であるため、このポート4を圧側減衰力を高くするために小径にすると伸行程時の作動油の吸い込み不足が生じて負圧が発生し、逆に吸い込み量を十分にするため大径にすると圧行程時の減衰力が不足するおそれがある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、所望の高い圧側減衰力を得る共に伸行程時に十分な作動油の吸い込み量を確保して負圧の発生を防止できるフロントフォークを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明の手段は、車輪側チューブ内に車体側チューブが摺動自在に挿入され、車輪側チューブの中央に中空ロッドが起立し、中空ロッドの上部ピストン部が車体側チューブの内周に摺接し、中空ロッド内の油室が中空ロッド形成したポートを介して車輪側チューブ内に油室に連通しているフロントフォークにおいて、中空ロッド内の油室と車輪側チューブ内の油室とを連通する油路を上記ポートを迂回して設け、当該油路の途中に圧行程で閉じ伸行程で開くチェックバルブを設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ポートを迂回する油路を設け、この油路の途中に圧行程時に閉じ、伸行程時に開くチェックバルブを設けたので、圧行程時にはポートによる所望の高い圧側減衰力を発生でき、伸行程時にはポートと油路とからリザーバ側油室より十分な作動油を吸い込みでき、負圧の発生を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下本発明の実施の形態を図にもとづいて説明するが、本発明のフロントフォークは、図1および図3に示すように、車輪側チューブたるアウターチューブ1内に車体側チューブたるインナーチューブ31が摺動自在に挿入され、車輪側チューブの中央に中空ロッド2が起立し、中空ロッド2の上部ピストン部が車体側チューブの内周に摺接し、中空ロッド2内のリザーバ側油室3が中空ロッド2に形成したポート4を介して車輪側チューブ1内の油室5に連通している。
【0011】
そして、本発明では、図1,図3の各実施の形態に示すように、中空ロッド2内の油室3と車輪側チューブ内の油室5とを連通する油路Aを上記ポート4を迂回して設け、当該油路Aの途中に圧行程で閉じ、伸行程で開くチェックバルブB,B1をそれぞれ設けたことを特徴とする。
【0012】
図1,図2は、油路AとチェックバルブBの一つの実施の形態を示し、図3,図4は他の実施の形態を示す。
【0013】
図1,図3の実施の形態では油路Aと、チェックバルブB,B1の構成において異なっているが、それ以外は共通であるので、その構造を先ず説明する。
【0014】
即ち、アウターチューブ1のボトム1A中央から中空ロッド2の下部に亘ってボルト6が挿入され、このボルト6を中空ロッド2の基端部3A内周に螺合させることにより中空ロッド2を引き付けてボトム1A上に起立させている。
【0015】
中空ロッド2の基端部3A側は屈曲して小径にされ、当該基端部3Aの外側にカラー7を圧入した油孔桿8を上下移動自在に起立させ、又油孔桿8はカラー7に担持されたリターンスプリング9を介してボトム1A側に附勢されている。圧行程ではインナーチューブ31の下部に設けたオイルロックカラー32が油孔桿8の外周に侵入しオイルロック室を形成し、両者の間の隙間によってオイルロックを発生させる。
【0016】
そして、油孔桿8とオイルロックカラー32の隙間からオイルロック室の作動油を流出させることで最圧縮の衝撃を吸収する。
【0017】
伸行程時にはオイルロックカラーが油孔桿8の外周から上方に抜け出るが、この時オイルロック室に負圧が発生しないように、リザーバ側油室3から油孔桿8の下部油室10と油孔桿8の内周に形成した切欠き8aとを介して作動油がオイルロック室内に吸い込まれるようになっている。
【0018】
次に、図1,図2の油路AとチェックバルブBの構成について説明するが、これは、中空ロッド2の下部内周にバルブホルダ11をカシメ等で固定して設け、当該バルブホルダ11の外周に形成した二段の環状溝12,13と中空ロッド2に形成した通孔14とで油路Aを構成し、上記一方の大径側環状溝12内に切欠きを備えたチェックバルブBを開閉自在に設けたものである。
【0019】
この為、圧行程ではインナーチューブ31が下降し、アウターチューブ1内の油室5が加圧され、この油室5の内圧でチェックバルブBが図1のように押し上げられて油路Aを閉じ、油室5の作動油はポート4を介してリザーバ側の油室3に流出して減衰力を発生する。
【0020】
伸行程では、図2に示すように、インナーチューブ31が上昇して油室5の内圧が下がり、リザーバ側油室3の圧力でチェックバルブBをリターンスプリング9に抗して開かせ、リザーバ側油室3の作動油をポート4と油路A及びポート4を介して油室5に吸い込ませることになり、この為、油室5への作動油の吸込み量を十分に確保できる。
【0021】
次に、図3に示す油路AとチェックバルブB1について説明すると、これは、中空ロッド2の下部内周にバルブシート15とバルブホルダ16をカシメ等で固定して設け、バルブシート15内と、バルブシート15とバルブホルダ16間の室17と、中空ロッド2に形成した通孔18とで油路Aを形成し、チェックバルブB1をバルブホルダ16内に移動自在に挿入した弁体19と、この弁体19をバルブシート15のシート面に押圧するスプリング20とで構成させている。
【0022】
バルブホルダ16には室17を下方の室21に連通させるポート22を形成している。
【0023】
この為、図3に示すように、圧行程時には油室5が加圧されて弁体19をバルブシート15のシート面に押圧して油路4を閉塞する。
【0024】
従って、油室5の作動油がポート4を介してリザーバ側の油室3側に流出し、ポート4による圧側減衰力を発生する。
【0025】
伸行程では油室5の内圧が下がり、リザーバ側油室3の圧力でチェックバルブB1を開かせ、リザーバ側油室3の作動油をチェックバルブB1及びポート4を介して油室5に吸い込ませる。
【0026】
従って、伸行程時にはポート4と油路Aからの作動油の供給により油の吸い込み不足が防止され、負圧の発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施の形態に係るフロントフオークの一部切欠き縦断面図である。
【図2】伸行程時におけるチェックバルブの位置を示す図1の一部縦断面図である。
【図3】他の実施の形態に係るフロントフォークの一部切欠き縦断面図である。
【図4】伸行程時におけるチェックバルブの位置を示す図3の一部縦断面図である。
【図5】従来のフロントフォークの一部切欠き縦断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 車体側チュウーブたるインナーチューブ
2 中空ロッド
3,5 油室
4 ポート
7 カラー
8 油孔桿
10 室
18 通孔
A 油路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪側チューブ内に車体側チューブが摺動自体に挿入され、車輪側チューブの中央に中空ロッドが起立し、中空ロッドの上部ピストン部が車体側チューブの内周に摺接し、中空ロッド内の油室が中空ロッドに形成したポートを介して車輪側チューブ内の油室に連通しているフロントフォークにおいて、中空ロッド内の油室と車輪側チューブ内の油室とを連通する油路を上記ポートを迂回して設け、当該油路の途中に圧行程で閉じ伸行程で開くチェックバルブを設けたことを特徴とするフロントフォーク。
【請求項2】
中空ロッドの下部内周にバルブホルダを固定して設け、当該バルブホルダの外周に形成した環状溝と中空ロッドに形成した通孔とで油路を構成し、上記環状溝内にチェックバルブを開閉自在に設けている請求項1のフロントフォーク。
【請求項3】
中空ロッドの下部内周にバルブシートとバルブホルダを固定して設け、バルブシート内と、バルブシートとバルブホルダ間の室と、中空ロッドに形成した通孔とで油路を構成し、チェックバルブをバルブホルダ内に移動自在に挿入した弁体と、この弁体をバルブシートのシート面に押圧するスプリングとで構成させている請求項1のフロントフォーク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−17160(P2006−17160A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−193047(P2004−193047)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】