説明

フロントフォーク

【課題】 二輪車等の前輪を懸架するフロントフォークの改良をする。
【解決手段】 フロントフォークが、アウターチューブと、このアウターチューブ内に軸方向に摺動自在に挿入されるインナーチューブと、このインナーチューブを囲うステンレス鋼からなる筒状のカバーとを有してなり、このカバーの外面を研磨して鏡面状とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、二輪車等の前輪を懸架するフロントフォークの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
二輪車等の前輪を懸架するフロントフォークは、例えば、自動二輪車に搭載されて、路面凹凸による運転手への衝撃を緩和するサスペンションや、路面振動を減衰する緩衝器として機能する。
【0003】
そして、特に、上記自動二輪車が悪路を走行する場合においては、路面からの飛び石や泥はねにより、インナーチューブの外面が傷ついたり汚れが付着したりする場合がある。
【0004】
インナーチューブの外面は、アウターチューブとインナーチューブとの摺動面であるため、アウターチューブとインナーチューブとの摺動の妨げとなる虞がある。
【0005】
そこで、特許文献1に開示されるように、インナーチューブの外面を筒状のカバーで囲う技術が開発され、インナーチューブの外面の傷つきや汚れを防止している。
【0006】
また、上記フロントフォークは、自動二輪車において目立つ位置に配置される外装部品であり、装飾性及び耐食性が要求されるため、特許文献2に開示されるように、カバーの外面にめっきを施して装飾性及び耐食性を向上させたフロントフォークが開発されている。
【0007】
しかしながら、上記フロントフォークにおいては、自動二輪車の走行時の飛び石や泥はねによりカバーの外面に傷がつき、めっきが部分的に剥がれる虞がある。
【0008】
このめっきが剥がれた部分は、素材面が露出するため、この素材面とめっき面とで色調の相違が生じてカバーの外面が斑となり、装飾性が著しく低下する虞がある。
【0009】
また、露出した素材面は、めっき面と比較して耐食性が劣るため、優先的に腐食が進行してめっき膨れやめっき剥がれが起こり、装飾性が著しく低下する虞がある。
【0010】
そこで、カバーの外面にめっきを施すことなく耐食性を得るため、カバーをステンレス鋼で形成する方法が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第3932219号
【特許文献2】特願2003−193811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記従来の技術においては、カバーの外面が傷ついた場合に、その傷が目立たない点で有用であるが、めっきを施した場合と比較して耐食性及び装飾性が劣る不具合があり、その改善が望まれている。
【0013】
そこで、本発明は、このような現状を鑑みて創案されたものであって、その目的とするところは、装飾性及び耐食性に優れると共に、カバーの外面に傷がついた場合においても装飾性が著しく低下することを防ぐことが可能なフロントフォークを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するための手段は、アウターチューブと、このアウターチューブ内に軸方向に摺動自在に挿入されるインナーチューブと、上記アウターチューブまたは上記インナーチューブを囲うステンレス鋼からなるカバーとを有してなり、このカバーの外面を研磨して鏡面状とすることである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ステンレス鋼からなるカバーの外面を研磨して鏡面状とすることにより、カバーの外面の表面積を小さくすると共に撥水性を向上させて、装飾性及び耐食性に優れたフロントフォークとすることが可能となる。
【0016】
また、めっきを施すことなく上記効果を達成することが可能であることから、カバーの外面に傷がついた場合においても、従来と比較して装飾性が著しく低下することを防ぐことが可能となる。
【0017】
更に、めっきと比較して、製造が容易且つ安価である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施の形態を示すフロントフォークの部分側面図であり、その一部分について断面で示した。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に一実施の形態を示すフロントフォークについて、図面を参照して説明する。
【0020】
図1に示すように、本発明の一実施の形態を示すフロントフォークは、例えば、自動二輪車に搭載されて前輪を懸架する。
【0021】
上記フロントフォークは、前輪を左右から支持する左右一対のフロントフォーク部材Aからなり、各フロントフォーク部材Aの上部は、上下一対のブラケットB1、B2を介して連結されると共に自動二輪車の車体側に連結され、各フロントフォーク部材Aの下部はボトム部材(図示せず)及びアクスルブラケット(図示せず)を介して前輪の車軸の両側にそれぞれ連結されている。
【0022】
図1には、フロントフォークにおける左のフロントフォーク部材Aのみを示し、右のフロントフォーク部材は左のフロントフォーク部材Aと同様であるため省略する。
【0023】
上記各フロントフォーク部材Aは、上方に配置され上下のブラケットB1、B2に固定されるインナーチューブ2と、このインナーチューブ2の下方に配置されてボトム部材に固定されるアウターチューブ3と、上記インナーチューブ2を囲うカバー1とを有してなり、上記アウターチューブ3内に上記インナーチューブ2が摺動自在に挿入されている。
【0024】
そして、上記インナーチューブ2を囲うカバー1は、ブラケットB1と下側ブラケットB2とで挟持されてインナーチューブ2の上端から下側ブラケットB2までを囲う上カバー1aと、下側ブラケットB2の下端にボルト4で固定されてインナーチューブ2の下側ブラケットB2よりも下方を囲う下カバー1bとからなる。
【0025】
上記下カバー1bは、フロントフォーク部材Aの最伸張時、即ち、インナーチューブ2がアウターチューブ3から最も露出したときに、アウターチューブ3の上部を覆う長さに設定され、また、その内径は、アウターチューブ3の外径よりもやや大径に設定される。
【0026】
当該構成を備えることにより、カバー1bがアウターチューブ3とインナーチューブ1との摺動の妨げにならず、インナーチューブ2の外面を露出させることなく確実に覆うことが可能となるがこの限りではなく、上記カバー1の形状及び取付方法は適宜選択することが可能である。
【0027】
例えば、カバー1を一体的に形成するとしても良く、カバー1の取付方法においては、上下のカバー1a、1bを下側ブラケットB2に固定したり、下側ブラケットB2に固定した下カバー1bの上端に上カバー1aを固定したりするとしても良い。
【0028】
上記カバー1は、筒状のステンレス鋼からなり、その外面は鏡面状に研磨されている。
【0029】
例えば、カバー1を鏡面状とするため、先ず、荒バフで表面上の深い傷等を滑らかにし、次いで、2回の中間バフで段階的に研磨溝を浅くし、最後に、仕上げバフで鏡面状とすることが好ましいがこの限りではなく、カバー1外面を鏡面状とし得る限りにおいて適宜方法を選択することが可能である。
【0030】
カバー1外面を鏡面状に研磨することにより、カバー1の外面の表面積を小さくすると共に撥水性を向上させることが可能となる。
【0031】
従って、雨や泥はね等による水滴とカバー1の外面との接触面積が少なくなると共に、水滴とカバー1の外面との接触時間を短くすることが可能となり、耐食性を向上させることが可能となる。
【0032】
また、めっきを施すことなく耐食性を向上することが可能となることから、カバー1の外面に傷がついた場合においても従来と比較して傷が目立たず、装飾性が著しく低下することを防ぐことが可能となる。
【0033】
また、カバー1の外面が鏡面状に形成されることから、カバー1の外力が作用した場合に応力の集中が起こらず、カバー1の強度を増すことが可能となる。
【0034】
更に、カバー1の外面が鏡面状であることから装飾性に優れ、めっきと比較して製造が容易且つ安価である。
【0035】
尚、上記カバー1において、耐食性及び装飾性を向上させる必要のある部分のみを研磨して鏡面状とすれば良く、必ずしもカバー1の外面全てを研磨する必要はない。
【0036】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱することなく改造、変形及び変更を行うことができることは理解すべきである。
【0037】
例えば、本実施の形態においては、上方に位置するインナーチューブ2が下方に位置するアウターチューブ3内に挿入される正立型のフロントフォークを示したが、倒立型のフロントフォークとしても良い。
【0038】
この場合において、インナーチューブ2にボトム部材が結合されることから、このボトム部材にカバーを固定すれば良い。
【0039】
また、本実施の形態においては、インナーチューブ2を囲うカバー1としたが、このカバー1をアウターチューブ3を囲うカバーとしても良いことは勿論である。
【符号の説明】
【0040】
A フロントフォーク部材
B1、B2 ブラケット
1 カバー
1a 上カバー
1b 下カバー
2 インナーチューブ
3 アウターチューブ
4 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウターチューブ3と、このアウターチューブ3内に軸方向に摺動自在に挿入されるインナーチューブ2と、上記アウターチューブ3または上記インナーチューブ2を囲うステンレス鋼からなる筒状のカバー1とを有してなり、このカバー1の外面を研磨して鏡面状とすることを特徴とするフロントフォーク。

【図1】
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【公開番号】特開2011−94721(P2011−94721A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−249828(P2009−249828)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】