プラットフォーム製法の靴

【課題】プラットフォーム構造の靴の特長を備えつつ、各人の足裏の凹凸形状の違いにあわせた靴を、プラットフォーム構造を分解して一体に縫合されたクッション材を取り出し、交換することなく、容易に実現可能とする。
【解決手段】靴底0101と、靴底側端部0104aが内側に少なくとも部分的に折り込まれたアッパー0104と、靴底及びアッパーでつくられる靴内に配置されるクッション0107とからなるプラットフォーム構造を有する靴であって、前記クッションは、裾縫糸0103にてアッパー、裾テープ0106と共に縫いつけられる靴内底上に着脱自在に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラットフォーム製法により作られ、プラットフォーム構造を有する靴に関する。
【背景技術】
【0002】
プラットフォーム製法とは、アッパーと、靴内底と、裾テープとを裾縫糸で縫い合わせた後、靴内底の靴底側となる面に配置したプラットフォームの周囲に裾テープを巻きつけて釣り込むという工程を含む靴の製造方法である。プラット製法、カリフォルニア製法などとも呼ばれる。プラットフォーム製法により作られた従来の一般的な靴の構造(プラットフォーム構造)について、図4を用いて説明する。プラットフォーム構造は、靴底(0401)の上に、プラットフォーム(0402a、0402b)が重ねられ、プラットフォームの周りには、裾縫糸(0403)によって、アッパー(0404)、靴内底(0405)と共に縫い合わせられた裾テープ(0406)が巻きつけられていることを特徴とする。
【0003】
プラットフォーム製法では、アッパー自体が引っ張られ、釣り込まれるわけではないので、アッパーの伸縮性が保持され、フィット感が得られる。また、一般に、柔らかいプラットフォームが用いられる場合が多く、屈曲性、クッション性に優れる。さらに、プラットフォームは、靴内底側(上層)がさらに柔らかい複数層で構成されている場合があり、この場合は、さらに、クッション性に優れる。なお、本明細書において、「プラットフォーム」とは、プラットフォーム構造の靴において、靴内底よりも下、靴底よりも上にあるプレート部材を指す。ただし、巻きつけられた裾テープの厚みによってできる段差を解消するため用いられる中物と呼ばれる部材はプラットフォームに含まれない。図4に示した靴では、プラットフォームは複数層(0402a、0402b)からなり、中物(0407)も配置されている。
【0004】
しかしながら、プラットフォーム製法の靴においては、一般的には靴内底面が平らに形成されている場合が多く、足裏の凹凸形状との間に隙間ができてしまう。この点、特許文献1には、足の土踏まずにフィットするプラットフォーム製法の靴を実現するために、足の土踏まずの空間を埋めるような形状の膨出部を形成したクッション材(本発明におけるプラットフォームの一部に当たる。)を靴の各部へ一体に縫合した靴が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−252805
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の靴では、各人の足裏の凹凸形状の違いにあわせた変更を行おうとすると、プラットフォーム構造を分解して一体に縫合されたクッション材を取り出し、交換しなければならず、容易ではない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、以上の課題を解決するため、本願出願人は、以下の靴を提案する。
【0008】
すなわち、第一の発明として、靴底と、靴底側端部が内側に少なくとも部分的に折り込まれたアッパーと、靴底及びアッパーでつくられる靴内に配置されるクッションと、からなるプラットフォーム構造を有する靴であって、前記クッションは、裾縫糸にてアッパー、裾テープと共に縫いつけられる靴内底上に着脱自在に配置される靴、を提案する。
【0009】
第二の発明として、靴内底は、裾縫糸が靴内底上に露出しないように縫代が靴底側に折り返され、前記クッションは、この折り返しのために盛り上がる靴内底凸部の段差を底部で吸収するための凹部を有する第一の発明に記載の靴、を提案する。
【0010】
第三の発明として、プラットフォームは前記クッションの材料よりも相対的に平均硬度が高い材料からなっている第一の発明又は第二の発明に記載の靴、を提案する。
【0011】
第四の発明として、靴内底とアッパーとの縫代を2ミリメートル以上確保し、いずれか又は両者の縫代の折り返しによって形成される靴内底周縁の盛り上がりを高さ1ミリメートル以上とした第一の発明から第三の発明のいずれか一に記載の靴、を提案する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の靴により、プラットフォーム構造の特長を維持しつつ、各人の足裏の形状の違いにあわせた履き心地の良い靴を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本件発明の実施の形態について、添付の図面を用いて説明する。なお、本件発明は、これら実施形態に何ら限定されるべきものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得る。なお、実施形態1は、主に請求項1などに関する。実施形態2は、主に請求項2などに関する。実施形態3は、主に請求項3などに関する。実施形態4は、主に請求項4などに関する。
<<実施形態1>>
<実施形態1:概要>
【0014】
本実施形態の靴は、プラットフォーム構造を有する靴であって、靴内底上に着脱自在に配置されるクッションを備える点に特徴を有する。本実施形態の靴においては、クッションの形状、硬度等を変更することで、プラットフォーム構造を分解することなく、容易に、各人の足裏の形状の違いにあわせた履き心地の良い靴を提供できる。
<実施形態1:構成>
【0015】
図1Aは、本実施形態の靴の構造を説明するための概念図である。(a)が斜視図であり、この図の点線で切り取った断面を観察した断面図が(b)である。なお、添付の図面(図1A、図1B、図2における断面概念図)では、各部材の間に空間がある場合があるが、これは、各部材の区別や縫代の折り返しの様子などが分かりやすいように模式的に示したためであり、実際には、各部材は密着している。これらの各部材の実際の様子(各部材が密着している様子)については、図1A(c)や図2(b)に示したとおりである。
【0016】
本実施形態の靴は、靴底と、アッパーと、クッションとからなり、プラットフォーム構造を有する。
【0017】
「靴」は、靴底及びアッパーで作られる靴内に足を入れて使用される履物である。靴には、室内履きなどを含む。
【0018】
(プラットフォーム構造)
図1A(b)を参照する。「プラットフォーム構造」は、前述の通り、靴底(0101)の上に、プラットフォーム(0102)が重ねられ、プラットフォームの周りには、裾縫糸(0103)によって、アッパー(0104)、靴内底(0105)と共に縫い合わせられた裾テープ(0106)が巻きつけられていることを特徴とする。なおこの図には、巻きつけられた裾テープの厚みによってできる段差を解消するため用いられる中物(0108)も示されている。プラットフォームの周りに巻きつけられる裾テープの一部は、靴の側面下部に露出して、靴の側面下部を形成する。図1A(a)において網掛けして示した部分が裾テープによって形成される靴の側面下部である。なお、図1A(a)では見えないが、裾テープの下には靴底が配置されている。
【0019】
また、アッパー(0104)と、靴内底(0105)と、裾テープ(0106)とは、これら三つの部材を一度に縫い合わせる場合も、あるいは、いずれか二つの部材を縫い合わせた後に他の一つの部材をさらに縫い合わせる場合もあり、プラットフォーム構造がアッパーと、靴内底と、裾テープとの三者同時縫いによって作られるか、別縫いによって作られるかは特に問わない。
【0020】
(アッパー)
本実施形態の靴のプラットフォーム構造におけるアッパーの特徴を説明する。「アッパー」は、足の甲を覆う甲革をいう。アッパーは、例えば、天然皮革、合成皮革、人工皮革、布材、合成繊維等により構成すればよい。また、アッパーは、複数層によって構成されていても良い。図1A(c)は、複数層で構成されたアッパーの様子を示している。例えば、表面層(アッパーのうち、靴の最も外側を構成する層、0104−1)と、裏面層(アッパーのうち足と接する靴の最も内側を構成する層、0104−2)と、中間層(表面層と裏面層との中間の層、0104−3)とからなる三層構造であるといった具合である。この場合、表面層を、人工皮革、合成皮革、天然皮革、織布、不織布のいずれかによって構成し、裏面層を、織布、不織布、人工皮革、天然皮革、合成皮革のいずれかによって構成し、中間層をスポンジによって構成することとすれば、アッパーが柔らかく、クッション性が良くなる。特に、表面層や裏面層を薄く柔らかい上記材料(人工皮革等)とし、中間層を構成するスポンジを厚みのある反発弾性率の高い高反発スポンジとすると、足へのフィット感、クッション性が良くなり好ましい。高反発スポンジとしては、ポリウレタン系スポンジが、高反発かつ柔らかく、軽量であることから、特に好ましい。また、高反発スポンジのうち、反発弾性率が40%以上のものが、アッパーの曲面形状保持の観点から好ましい。
【0021】
図1Bは、本実施形態の靴の一例を示す部分拡大概念図である。(d)(e)は、本実施形態の靴のアッパーの一例をそれぞれ示している。これらの図を用いて、本実施形態の靴のアッパーの構成について説明する。本実施形態の靴のアッパーは、靴底側端部(0104a)が少なくとも部分的に内側に折り込まれている。「少なくとも部分的に内側に折り込まれている」とは、靴底側端部が内側を向いていることをいう。図1B(d)のように、アッパーの靴底側端部(0104a)が完全に内側を向いて、靴内底下に完全に折り込まれる場合の他、図1B(e)のように、完全に下に折り込まれなくとも裾広がりになった靴底側端部(0104a)の一部が靴内底下に折り込まれる状態になる場合をいう。このようにして靴底側端部が折り込まれることにより靴内底周縁に盛り上がりが形成される。
【0022】
これに対し、従来のプラットフォーム構造の靴では、図4のように、アッパーの靴底側端部(0404a)は、プラットフォームの側面を通り、靴底側にそのまま向かっている。図5は、従来のプラットフォーム構造の靴の部分断面拡大概念図である。図5で示されているのは、アッパーが高反発スポンジからなる層を含む複数層で構成された靴である。図5には、靴底(0501)、プラットフォーム(0502a、0502b)、裾縫糸(0503)、アッパー(0504)、アッパーの靴底側端部(0504a)、靴内底(0505)、裾テープ(0506)、中物(0507)が示されている。アッパーが高反発スポンジからなる層を含む複数層で構成されている場合には、アッパーの靴底側端部は、裾縫糸によって縫い付けられた縫い目から裾広がりに広がることとなる。このため、プラットフォームの周りに裾テープを巻きつけた際に、アッパーの靴底側端部の裾広がりになった部分が裾テープを押し広げるために、裾テープによって形成される靴の側面下部が広がって美しくない。図5では矢印で示した部分が押し広げられている。これに対し、本実施形態の靴のように、アッパーの靴底側端部が少なくとも部分的に内側に折り込まれている場合には、裾テープによって形成される靴の側面下部(図1A(a)にて網掛けで示した部分)は、靴底に向かってまっすぐに、すっきりとしたラインを形成するので、美感に優れる。
【0023】
(クッション)
再び図1A(b)を参照する。「クッション」(0107)は、靴底及びアッパーでつくられる靴内に配置される。また、「クッション」は、靴内底上に、着脱自在に配置される。「靴内底」が裾縫糸にてアッパー、裾テープと共に縫いつけられている点は前述の通りであり、アッパーと、靴内底と、裾テープとは、これら三つの部材を一度に縫い合わせる場合も、あるいは、いずれか二つの部材を縫い合わせた後に他の一つの部材をさらに縫い合わせる場合も、「共に縫いつけられている」といえる。また、「着脱自在」とは、靴のプラットフォーム構造を分解することなく取り付け、取り外しが可能となっているとの趣旨である。本実施形態の靴は、クッションが着脱自在であるために、各人の足裏の形状にあわせたクッションを取り付けることにより、容易に各人の足裏の形状に合わせた靴を提供することができる。クッションは、各人の足裏の形状に合わせて適した形状と硬度とすることが好ましい。特に、クッションは、足裏がしっかりとクッションの央部におさまるように、すり鉢状にできていると、なお良い。
<実施形態1:効果>
【0024】
本実施形態の靴により、靴内底上にクッション取り付けることで、容易に、各人の足裏の形状の違いにあわせた履き心地の良い靴を提供できる。
<<実施形態2>>
<実施形態2:概要>
【0025】
実施形態1の靴は、プラットフォーム構造を分解することなく、容易に、各人の足裏の形状の違いにあわせた履き心地の良い靴を提供できる。しかしながら、プラットフォーム構造の靴において、靴内底は、裾縫糸が靴内底上に露出しないように縫代が靴底側に折り返されているために、このままでは靴内底に段差を生じる。本実施形態の靴は、クッションが、この靴内底凸部の段差を底部で吸収するための凹部を有する点に特徴を有する。
<実施形態2:構成>
【0026】
本実施形態の靴は、靴底と、アッパーと、クッションとからなり、プラットフォーム構造を有する。靴底と、アッパーと、クッションと、プラットフォーム構造については、実施形態1で説明したところと同様であるので、説明を省略する。
【0027】
本実施形態の靴について、図2を用いて説明する。図2は、本実施形態の靴の部分断面を示す概念図である。(a)が模式的な概念図であり、(b)は実際に近い様子を示している。これらの図には、靴底(0201)、プラットフォーム(0202)、裾縫糸(0203)、アッパー(0204)、アッパーの靴底側端部(0204a)、靴内底(0205)、裾テープ(0206)、クッション(0207)、中物(0210)が示されている。
【0028】
(靴内底凸部)
靴内底は、裾縫糸が靴内底上に露出しないように縫代(0205a)が靴底側に折り返される。このため、靴内底周縁には、靴内底凸部(0208)が形成される。特に靴内底の材厚が厚い場合には靴内底凸部はさらに厚く形成される。ただし、靴内底凸部は、靴内底凸部が靴内底周縁の全部に形成されている場合も、靴内底周縁の一部に形成されている場合も本件発明の靴の構成に含まれる。靴内底周縁の一部に靴内底凸部が形成される場合としては、靴の一部のみがプラットフォーム構造である場合がある。あるいは、靴の全部がプラットフォーム構造であるが、靴内底の縫代が、靴内底周縁の全部ではなく一部のみ靴底側に折り返されている場合、靴内底の素材が一部で異なり材厚が厚い部分が靴内底凸部を形成する場合などがある。なお、前述のように、本実施形態の靴のアッパーの靴底側端部は少なくとも一部が内側に折り込まれており、これによっても盛り上がりが形成されるので、これも含めるとさらに靴内底凸部の段差が大きくなる。
【0029】
このように靴内底凸部が靴内底周縁に形成されるが、この部分は靴内底の材料が折り返されて重ねられた構造となっており、さらにアッパーの靴底側端部の少なくとも一部も重ねられ、少なくとも二重構造、場所により三重構造となっていることとなり、靴のクッション性が高まる。一般に、靴内底凸部が厚くなるとその効果は大きくなる。
【0030】
以上のように、靴内底凸部によってクッション性が高まるが、靴内底凸部の段差上に底部が平らなクッションを配置すると、クッションがぐらついたり、ずれたりして履き心地が悪い。そこで、本実施形態の靴において、クッションは、靴内底の折り返しのために盛り上がる靴内底凸部の段差を底部で吸収するための凹部(0209)を有する。図3(a)は、本実施形態の靴のクッションを取り外した状態を示す概念斜視図であり、(b)は、取り外したクッションの底部側を上に向けた状態を示す概念斜視図である。また(c)はクッションの底部概念図、(d)はクッションのA−A断面概念図である。図3(a)のように、靴内底(0301)の折り返しのために盛り上がる靴内底凸部(0302)の段差は、靴内底周縁に形成されるので、図3(b)(c)のように、これを吸収するためのクッション(0303)の凹部(0304)も靴内底上に配置されるクッションの底部外周に沿って形成される。靴内底凸部の段差とクッション底部の凹部とがかみあうことで、クッションがずれにくく、履き心地がさらに良くなる。また、クッションの凹部によってクッションが軽量化できる。
【0031】
(アッパーが柔らかい材料により構成されている場合)
なお、実施形態1において述べたように、本実施形態の靴のアッパーを複数層から構成し、表面層や裏面層を薄く柔らかい人工皮革等とし、中間層を構成するスポンジを厚みのある反発弾性率の高い高反発スポンジとすると、足へのフィット感、クッション性が良くなり好ましい。ただし、この場合には、アッパーが柔らかい材料でできているために、裾縫糸からかかる荷重で破れやすいという問題を生じる。そこで、アッパーが破れることのないよう、アッパーの縫代を広めに(3ミリメートル程度)とる必要がある。この縫い合わせの一例としては、アッパー端部と靴内底端部とを縫製の際に利用されるガイドなどに重ねて突き当てたり、あるいは目視にて縫い合わせ部分を都度縁合わせしたりする。その後、縁合わせされた端部から所定の位置を合わせ縫いする。
【0032】
以上のように、アッパーを柔らかい材料により構成する場合には、折り返されることで靴内底凸部を形成することとなる靴内底の縫代が一般的なプラットフォーム構造の靴と比べて、比較的多いために、靴内底周縁に形成される靴内底凸部の段差も比較的厚くなる。したがって、靴内底周縁に形成される靴内底凸部によって得られるクッション性が大きくなる一方で、靴内底の上に配置されるクッションには、靴内底凸部の段差を底部で吸収するための凹部を設ける必要性が大きい。このように、本実施形態の靴は、アッパーが柔らかい材料で構成されている場合に、特に顕著な効果を奏する。
<実施形態2:効果>
【0033】
本実施形態の靴により、靴内底上にクッションを取り付けることで、容易に、各人の足裏の形状の違いにあわせた履き心地の良い靴を提供できる。さらに、靴内底凸部によってクッション性が高まる。また、靴内底凸部の段差とクッション底部の凹部とがかみあうことで、クッションがずれにくく、履き心地がさらに良くなる。
<<実施形態3>>
<実施形態3:概要>
【0034】
実施形態1及び2の靴は、靴内底上に各人の足裏の形状の違いに応じたクッションを取り付けることで、容易に、各人の足裏の形状の違いにあわせた履き心地の良い靴を提供できる。しかしながら、靴の履き心地は、クッションと組み合わせたプラットフォームの構成にも影響される。従来のプラットフォーム構造の靴のように、柔らかいプラットフォームが用いられる場合や、プラットフォームの靴内底側(上層)が柔らかい層で構成されている場合においては、クッションとプラットフォームとを組み合わせた際の履き心地を想定する際に、プラットフォームの与える影響が大きいので、クッションの設計時の考慮要素が多くなって煩雑である。また、プラットフォームの与える影響が大きいので、ユーザーが適したクッションを選択することが困難となる。これに対し、本実施形態の靴において、プラットフォームは、クッションの材料よりも相対的に平均硬度が高い材料からなっていることを特徴とする。プラットフォームが硬い場合には、プラットフォームが大きく沈み込むことがないので、履き心地に大きな影響を与えず、適切なクッションを取り付けることで、容易に、各人の足裏の形状の違いにあわせた履き心地の良い靴を提供できる。
【0035】
なお、実施形態2で述べたように、本実施形態の靴の靴内底は、縫代が靴底側に折り返され、この折り返しのために靴内底凸部が靴内底周縁に形成される。この靴内底凸部は、クッション性を有するが、この緩衝効果は、靴内底周縁にのみ生じる。靴内底周縁付近のクッション性は、各人の足裏の形状の違いをそれほど考慮する必要がないから、各人の足裏の形状の違いに応じてその部分に関しては設計者がクッションを設計したり、ユーザーが適したクッションを選択したりする必要はなく、共通形状とし得る。一方で、靴内底周縁以外の部分(特に足裏が載せられる部分)では、各人の足裏の形状の違いに応じてクッションを設計したり、適したクッションを選択したりする必要があり、プラットフォームの与える影響をあわせ考慮しなければならないという前述の課題が生じる。
<実施形態3:構成>
【0036】
本実施形態の靴は、靴底と、アッパーと、クッションとからなり、プラットフォーム構造を有する。靴底と、アッパーと、クッションと、プラットフォーム構造については、実施形態1で説明したところと同様であるので、説明を省略する。
【0037】
(プラットフォームの構成の説明)
「プラットフォーム」は前記クッションの材料よりも相対的に平均硬度が高い材料からなっている。
【0038】
前述のとおり、「プラットフォーム」とは、プラットフォーム構造の靴において、靴内底よりも下、靴底よりも上にあるプレート部材を指す。プラットフォームはプラットフォーム構造を分解することなく取り外すことができない。なお、プラットフォームは複数層からなる場合があるが、本実施形態において比較対象となるプラットフォームの平均硬度は、複数層からなる場合には、これらの層のうち、最も柔らかい層の平均硬度を指す。足裏からの荷重を受けて大きく沈み込むといった具合に、プラットフォームにおいて、履き心地に大きな影響を与えるのは、柔らかい層だからである。プラットフォームの材料は、パルプボード、ゴム、合成樹脂等特に限定されない。
【0039】
「クッションの材料」は、特に限定されないが、合成樹脂発泡体、天然ゴム、合成ゴム、コルクなど弾力性のある素材とすれば履き心地が良いので好ましい。また、クッションは複数層からなっていても良く、前述したクッション材料の上にさらに、天然皮革、合成皮革、人工皮革、布材等からなる上層を備えていても良い。上層は、足裏に直接接することとなるので、汗を吸収する素材としたり、通気性のある材料としたりすれば、履き心地がさらに向上する。クッションの材料の「硬度」は、原材料の硬度ではなく、靴に取り付けられるべき状態に形成されたクッションを測定した場合の平均硬度をいう。すなわち、クッションの材料とプラットフォーム(場合によりプラットフォームの複数の層のうちの一部)とは、同じ素材で硬度が異なる場合もあり得る。合成樹脂発泡体などスポンジ素材では圧縮率によって形成物の硬度が異なるからである。
<実施形態3:効果>
【0040】
本実施形態の靴では、プラットフォームが履き心地に大きな影響を与えないので、適切なクッションを設計したり、選択したりすることが容易である。したがって、容易に、各人の足裏の形状の違いにあわせた履き心地の良い靴を提供できる。
<<実施形態4>>
<実施形態4:概要>
【0041】
プラットフォーム構造の靴は、アッパーの伸縮性が保持され、フィット感が得られる点に特長がある。この場合、アッパーを柔らかい材料により構成すると、特にフィット感が良く、履き心地の良い靴が得られる。ただし、この場合には、アッパーが柔らかい材料でできているために、裾縫糸からかかる荷重で破れやすいという問題を生じる。そこで、アッパーと、靴内底と、裾テープの縫代を広めに(2ミリメートル以上)とる必要がある。この場合、靴内底とアッパーとの、いずれか又は両者の縫代の折り返しによって靴内底周縁の盛り上がりが形成される。縫代が多い場合には、靴内底周縁に押し込まれる縫代によって形成される盛り上がりも高くなる。靴内底周縁の盛り上がりを高くすることにより、靴内底周縁のクッション性が高まる。この靴内底周縁のクッション性は、垂直荷重に対するクッション性でなく、斜め方向の荷重に対するクッション性であり、歩行・走行時の体重移動の際に足裏が広がろうとするのを押し返して足裏をしっかりと支えることで、さらに履き心地を向上させることができる。歩行・走行時に方向転換をする場合など、左に体を傾ける場合、右に体を傾ける場合にも、斜め方向からのクッション性が傾いた足をソフトに支えて、さらに履き心地を向上させることができる。
<実施形態4:構成>
【0042】
本実施形態の靴は、靴底と、アッパーと、クッションとからなり、プラットフォーム構造を有する。靴底と、アッパーと、クッションと、プラットフォーム構造については、実施形態1で説明したところと同様であるので、説明を省略する。
【0043】
本実施形態の靴は、靴内底とアッパーとの縫代を2ミリメートル以上確保する。これにより、アッパーを柔らかい材料で構成した場合にも、裾縫糸からかかる荷重で破れることを回避できる。縫代を3ミリメートル以上確保すれば、アッパーをスポンジなどの特に柔らかい材料で構成した場合にも、裾縫糸からかかる荷重で破れることを回避でき、特に好ましい。ただし、10ミリメートル以上とすると、縫代を靴内で収容するスペースが余分に必要となり、好ましくない。
【0044】
本実施形態の靴は、靴内底とアッパーの、いずれか又は両者の縫代の折り返しによって形成される靴内底周縁の盛り上がりを高さ1ミリメートル以上とする。すなわち、靴内底の縫代の折り返しのみによって、靴内底周縁の盛り上がりを高さ1ミリメートル以上とする場合のほか、アッパーの靴底側端部が内側に少なくとも部分的に折り込まれることにより、アッパーと靴内底の縫代の両者があわさって靴内底周縁の盛り上がりを高さ1ミリメートル以上としてもよい。靴内底周縁の盛り上がりを高さ1ミリメートル以上とすることにより、靴内底周縁のクッション性を高めることができ、履き心地が向上する。特に好ましくは、靴内底周縁の盛り上がりを高さ2ミリメートル以上とすることであり、クッション性を特に高めることができる。
<実施形態4:効果>
【0045】
本実施形態の靴により、靴内底周縁の斜め方向の荷重に対するクッション性を高めることができ、履き心地の良い靴を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1A】実施形態1の靴の一例を示す概念図
【図1B】実施形態1の靴の一例を示す部分拡大概念図
【図2】実施形態2の靴の一例を示す部分断面概念図
【図3】実施形態2の靴およびクッションの一例を示す図
【図4】従来のプラットフォーム構造の靴を説明するための図
【図5】従来のプラットフォーム構造の靴の部分断面拡大概念図
【符号の説明】
【0047】
靴底 0101
プラットフォーム 0102
裾縫糸 0103
アッパー 0104
アッパーの靴底側端部 0104a
靴内底 0105
裾テープ 0106
クッション 0107
中物 0108

【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴底と、
靴底側端部が内側に少なくとも部分的に折り込まれたアッパーと、
靴底及びアッパーでつくられる靴内に配置されるクッションと、
からなるプラットフォーム構造を有する靴であって、
前記クッションは、
裾縫糸にてアッパー、裾テープと共に縫いつけられる
靴内底上に着脱自在に配置される靴。
【請求項2】
靴内底は、裾縫糸が靴内底上に露出しないように縫代が靴底側に折り返され、
前記クッションは、この折り返しのために盛り上がる靴内底凸部の段差を底部で吸収するための凹部を有する請求項1に記載の靴。
【請求項3】
プラットフォームは前記クッションの材料よりも相対的に平均硬度が高い材料からなっている請求項1又は2に記載の靴。
【請求項4】
靴内底とアッパーとの縫代を2ミリメートル以上確保し、いずれか又は両者の縫代の折り返しによって形成される靴内底周縁の盛り上がりを高さ1ミリメートル以上とした請求項1から3のいずれか一に記載の靴。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−48823(P2013−48823A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189682(P2011−189682)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(591025901)株式会社村井 (18)
【Fターム(参考)】