説明

プローブピン及びプローブピンの製造方法

【課題】均一な厚さで絶縁被覆され、各プローブ間の被膜厚のばらつきが小さく、高温雰囲気でも絶縁膜相互の融着が生じることない電着被膜にて被覆され、且つ、変形することなく先端部の電着被膜部が剥離されているプローブピンを提供する。
【解決手段】分子骨格中にシロキサン骨格を有し、分子中にアニオン性基を有するブロック共重合ポリイミドを含む絶縁体が金属細線110の表面に電着塗装されて電着被膜部130を形成しており、金属細線110の少なくとも一方の端部の電着被膜部130が、極性溶媒にて剥離除去されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属細線の胴部が高耐熱性且つ高耐電圧性の電着被膜で絶縁処理されると共に電着被膜が剥離された非コーティング部を有するプローブピン、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話等に使用される高密度実装基板、又は、パソコン等に組み込まれるCSP(Chip Size Package)やBGA(Ball Grid Array)等のICパッケージ基板等、様々な回路基板が用いられている。このような回路基板は、実装の前後の工程において、例えば直流抵抗値の測定や導通検査が行われ、その電気的特性の良否が検査されている。電気的特性の良否の検査は、電気的特性を測定する検査装置に接続されたプローブユニットを用いて行われ、例えばプローブユニットに装着されたプローブピンの先端部をその回路基板の電極に接触させることにより行われている。
【0003】
回路の高密度に伴い、回路基板や半導体素子の電極や電極パッドの数が非常に多くなり、かつそれらの配線間隔はきわめて小さくなってきている。従って、プローブユニットに取り付けられるプローブピンの本数は益々増加し、一方、プローブピン間の間隔は益々小さくなってきている。接続を確保するために、電極や電極パッドにプローブピンを押し付ける際に、隣接するプローブ間の接触が避けがたくなっており、プローブピンの胴部には柔軟かつ強固な電気絶縁性の被膜が電着により形成される。
【0004】
一方、半導体素子や電気電子部品が、車載用途をはじめとする高温環境で使用されることが多くなることに伴い、これらの半導体素子や実装された回路基板の通電検査を150℃以上の高温度で行うことが必要となってきた。その様な用途でのプローブピンの絶縁被覆は、従来の電着被膜では十分ではなく、高温度雰囲気で用いられた場合でも電気絶縁性が確保され、かつ、隣接プローブ間で接触することがあっても、融着や膜ハガレなどの欠陥が発生しない絶縁被覆が求められるようになってきた。
【0005】
特許文献1には、絶縁保護すべき部材上に剥がれや割れが生じにくい高絶縁性被膜を形成できる電着塗料組成物として、シロキサン骨格を有する特定のブロック共重合ポリイミドを樹脂成分として含有する溶液タイプの電着塗料組成物が開示されている。この電着塗料組成物は、部材との密着性や被膜の可撓性に優れるだけでなく、耐熱性や耐電圧性も良好な電着被膜(絶縁層)を形成できると記載されている。
【0006】
ここで、例えばプローブピンの先端部は、回路基板の電極に接触させるため被膜が不要である。プローブピンの先端部側を把持して電着すれば、先端部が被膜されておらず、それ以外の部分が被膜されているプローブピンを形成することも可能であるが、先端部側が寸法的に把持に必要な長さを有していない場合は、一旦、プローブピン全体をコーティングしてから先端部の皮膜を剥がす必要がある。
【0007】
プローブピンの被膜を剥がす方法としては、特許文献2に記載されているように、例えば刃物付き機械で剥離する機械的剥離や、例えばエキシマレーザーや炭酸ガスレーザーを照射して剥離するレーザー剥離がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−162954号公報
【特許文献2】特開2006−317412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、プローブピンは、例えば線径が数百μm以下、全長が数十mmの微細構造であるため、機械的剥離やレーザー剥離による衝撃により、プローブピンの先端が変形してしまう場合がある。
【0010】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、プローブピンの変形が起こりにくいプローブピンの製造方法、及び、その方法にて形成されたプローブピンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の観点に係るプローブピンの製造方法は、分子骨格中にシロキサン骨格を有し、分子中にアニオン性基を有するブロック共重合ポリイミドを含む絶縁体を金属細線に電着塗装することにより電着被膜部を形成した後、前記金属細線の少なくとも一方の端部の前記電着被膜部を、極性溶媒にて剥離除去させることを特徴とする。
【0012】
前記極性溶媒に、前記ブロック共重合ポリイミドが有するアニオン性基を中和する中和剤を添加することが好ましい。
【0013】
前記極性溶媒と前記中和剤との重量比率は、7:3〜9:1であることがこのましい。
【0014】
前記極性溶媒は、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ガンマブチロラクトン、スルホラン、アニソール、ジオキソラン、及び、プチルセルソルブアセテートの少なくとも何れかを有することが好ましい。
【0015】
前記中和剤は、N,N−ジメチルアミノエタノール、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、N−ジメチルベンジルアミン、アンモニア、ピロ−ル、イミダゾール、オキサゾール、ピラゾール、イソキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペリジン、ピペラジン、及びモルホリンの少なくとも何れかを有することが好ましい。
【0016】
前記ブロック共重合ポリイミドにおいて、シロキサン骨格は10重量%以上25重量%以下含有されていることが好ましい。
【0017】
前記ブロック共重合ポリイミドの分子骨格における各シロキサン骨格の分子量は、600以上1000以下であることが好ましい。
【0018】
前記電着被膜部の膜厚は、5μm以上15μm以下であることが好ましい。
【0019】
前記ブロック共重合ポリイミドが、ジアミン成分の1つとして、分子骨格中にシロキサン骨格を有するジアミンを含むことが好ましい。
【0020】
前記分子骨格中にシロキサン骨格を有するジアミンが、ビス(4−アミノフェノキシ)ジメチルシラン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、及び下記の一般式(I)で表される化合物よりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることが好ましい。
【0021】
【化1】

(式中、4つのRは、それぞれ独立して、アルキル基、シクロアルキル基、フェニル基又は1個乃至3個のアルキル基若しくはアルコキシル基で置換されたフェニル基を表し、l及びmはそれぞれ独立して1〜4の整数を表し、nは1〜20の整数を表す)
【0022】
前記アニオン性基が、カルボキシル基若しくはその塩、及び/又は、スルホン酸基若しくはその塩であることが好ましい。
【0023】
前記ブロック共重合ポリイミドが、ジアミン成分の1つとして、芳香族ジアミノカルボン酸を含むことが好ましい。
【0024】
前記金属細線の少なくとも一方の端部の前記電着被膜部を極性溶媒にて剥離させる際に、超音波を電着被膜部の剥離対象部に照射することが好ましい。
【0025】
また、本発明の第2の観点に係るプローブピンは、金属細線の表面に絶縁体からなる被膜部が形成されたプローブピンにおいて、分子骨格中にシロキサン骨格を有し、分子中にアニオン性基を有するブロック共重合ポリイミドを含む絶縁体が前記金属細線の表面に電着塗装されて電着被膜部を形成しており、前記金属細線の少なくとも一方の端部の前記電着被膜部が、極性溶媒にて剥離除去されていることを特徴とする。
【0026】
前記極性溶媒に、前記ブロック共重合ポリイミドが有するアニオン性基を中和する中和剤を添加することが好ましい。
【0027】
前記極性溶媒と前記中和剤との重量比率は、7:3〜9:1であることが好ましい。
【0028】
前記極性溶媒は、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ガンマブチロラクトン、スルホラン、アニソール、ジオキソラン、及び、プチルセルソルブアセテートの少なくとも何れかを有することが好ましい。
【0029】
前記中和剤は、N,N−ジメチルアミノエタノール、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、N−ジメチルベンジルアミン、アンモニア、ピロ−ル、イミダゾール、オキサゾール、ピラゾール、イソキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペリジン、ピペラジン、及びモルホリンの少なくとも何れかを有することが好ましい。
【0030】
前記ブロック共重合ポリイミドにおいて、シロキサン骨格は10重量%以上25重量%以下含有されていることが好ましい。
【0031】
前記ブロック共重合ポリイミドの分子骨格における各シロキサン骨格の分子量は、600以上1000以下であることが好ましい。
【0032】
前記電着被膜部の膜厚は、5μm以上15μm以下であることが好ましい。
【0033】
前記ブロック共重合ポリイミドが、ジアミン成分の1つとして、分子骨格中にシロキサン骨格を有するジアミンを含むことが好ましい。
【0034】
前記分子骨格中にシロキサン骨格を有するジアミンが、ビス(4−アミノフェノキシ)ジメチルシラン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、及び下記の一般式(I)で表される化合物よりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることが好ましい。
【0035】
【化2】

(式中、4つのRは、それぞれ独立して、アルキル基、シクロアルキル基、フェニル基又は1個乃至3個のアルキル基若しくはアルコキシル基で置換されたフェニル基を表し、l及びmはそれぞれ独立して1〜4の整数を表し、nは1〜20の整数を表す)
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、均一な厚さで絶縁被覆され、各プローブ間の被膜厚のばらつきが小さく、高温雰囲気でも絶縁膜相互の融着が生じることない電着被膜にて被覆され、且つ、変形することなく例えば先端部の電着被膜部が剥離されているプローブピンが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本実施形態に係るプローブピンを説明する図である。
【図2】本実施形態に係るプローブピンを製造する工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態について具体的に説明するが、当該実施形態は本発明の原理の理解を容易にするためのものであり、本発明の範囲は、下記の実施形態に限られるものではなく、当業者が以下の実施形態の構成を適宜置換した他の実施形態も、本発明の範囲に含まれる。
【0039】
本実施形態に係るプローブピン100は、図1に示されるように、例えば、金属細線110と、検体の電極と接触するためのプローブピン先端部120と、金属細線110の胴部に被膜された電着被膜部130と、プローブ治具(図示せず)と接続するための治具接続先端部140と、を有して構成される。プローブピン先端部120は例えばストレート状に尖頭加工された形状(直径が徐々に減少するテーパー形状)であるが、この形状に限定されることはなく、検査対象に応じて任意に加工することができ、例えば、尖頭加工された先端部の途中から先が、検査すべき例えば集積回路ウエハ上の電極パッドに当接するようカギ形に曲折された形状を採用することも可能である。
【0040】
金属細線110の金属素材は、特に限定されるものではないが、高い導電性と高い弾性率を有する金属線が用いられる。例えば該金属線として、材質が硬くて弾力性のあるベリリウム銅等の銅合金、タングステン、レニウムタングステン、鋼等を使用することが可能である。
【0041】
金属細線110は、ピッチの寸法に応じて、例えば20〜500μmの外径を有しており、長さ方向の真直度及び外径の真円度が高く、かつ長手方向での外径の均一性が高いことが好ましい。もっともこの形状に限定されるものではなく、プローブピン100は、断面形状が真円以外の異形断面形状を有するものであってもよい。真円以外の異形断面形状とは、例えば長丸(トラック形状)、楕円形、矩形等であり、他にも種々の形状を採択できる。そして、その異形断面形状を有するプローブピンは、プローブピン全長にわたって異形断面を有するものであってもよいし、部分的に異形断面を有するものであってもよい。部分的に異形断面を有するプローブピンとしては、例えばピン胴部が真円断面で先端部が異形断面のプローブピンがある。
【0042】
金属細線110の胴部に形成された電着被膜部130は、分子骨格(即ち、ポリイミドの主鎖)中に、シロキサン結合(−Si−O−)を有するシロキサン骨格を備えており、分子中にアニオン性基を有するブロック共重合ポリイミドを含むサスペンジョン型電着塗料組成物を用いて形成されている。
【0043】
本発明でいう「分子骨格中にシロキサン骨格を有し、分子中にアニオン性基を有するブロック共重合ポリイミドを含む電着被膜」とは、具体的には「分子骨格中にシロキサン骨格を有し、分子中にアニオン性基を有するブロック共重合ポリイミドを比較的大きな粒径の析出粒子として分散させたサスペンジョン型電着塗料組成物を電着して得られる電着被膜」のことであり、ここで「サスペンジョン型電着塗料組成物」とは、電気泳動法光散乱法(レーザードップラー法)での粒径分析装置ELS−Z2(大塚電子株式会社製)を用いて測定し、測定結果をキュムラント解析法にて解析したポリイミド粒子の粒子径が0.1〜10μm、粒子径の標準偏差が0.1〜8μmで分散されているサスペンジョン型電着塗料組成物である。
【0044】
「分子骨格中にシロキサン骨格を有し、分子中にアニオン性基を有するブロック共重合ポリイミド」における「ブロック共重合ポリイミド」とは、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを加熱してイミドオリゴマーを生成させ(第1段階反応)、次いでこれに上記テトラカルボン酸二無水物と同一若しくは異なるテトラカルボン酸二無水物又は/及び上記のジアミンとは異なるジアミンを加えて反応(第2段階反応)することによって、アミック酸間で起る交換反応に起因するランダム共重合化を防止して得られる、共重合ポリイミドのことを意味する。
【0045】
本発明における「分子骨格中にシロキサン骨格を有し、分子中にアニオン性基を有するブロック共重合ポリイミド」において、主鎖中のシロキサン骨格はテトラカルボン酸二無水物成分由来のシロキサン骨格であっても、ジアミン成分由来のシロキサン骨格であってもよいが、好ましくはジアミン成分由来のシロキサン骨格であり、通常、ジアミン成分の少なくとも1部に、分子骨格中にシロキサン骨格を有するジアミン化合物(以下、「シロキサン骨格含有ジアミン」とも呼ぶことがある。)を用いて得られたブロック共重合ポリイミドである。
【0046】
本発明におけるブロック共重合ポリイミド100重量部に対して、ブロック共重合ポリイミドに含まれるシロキサン骨格は、10重量部以上25重量部以下含有されていることが好ましい。シロキサン骨格の含有量が25重量部よりも多いと、電着被膜部130の耐熱性や絶縁性が低下する可能性があるからであり、一方、シロキサン骨格の含有量が10重量部よりも少ないと、後述するように金属細線110に形成された電着被膜部を極性溶媒にて剥離除去する際に、極性溶媒に対する電着被膜部の溶解性が低下して剥離除去しにくくなる可能性があるからである。
【0047】
また、本発明におけるブロック共重合ポリイミドの分子骨格における各シロキサン骨格の分子量は、600以上1000以下であることが好ましい。各シロキサン骨格の分子量が1000よりも多くなると、後述するように金属細線110に形成された電着被膜部を極性溶媒にて剥離除去する際に、極性溶媒に対する電着被膜部の溶解性が低下して剥離除去しにくくなる可能性があるからである。各シロキサン骨格の分子量が600よりも少なくなると、電着被膜部130の耐熱性や絶縁性が低下する可能性があるからである。
【0048】
上記のシロキサン骨格含有ジアミンは、テトラカルボン酸二無水物との間でイミド化し得るものであれば特に制限はなく、例えば、ビス(4−アミノフェノキシ)ジメチルシラン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、及び一般式(I)で表される化合物が挙げられる。
【0049】
【化3】

【0050】
式中、4つのRは、それぞれ独立して、アルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、又は1個乃至3個のアルキル基若しくはアルコキシル基で置換されたフェニル基を表し、l及びmはそれぞれ独立して1〜4の整数を表し、nは1〜20の整数を表す。また、当該一般式(I)で表される化合物は、式中nが1又は2の単一化合物、及びポリシロキサンジアミンを含む。
【0051】
式(I)中の4つのRにおいて、アルキル基、シクロアルキル基の炭素数は1〜6が好ましく、1〜2がより好ましい。また、1個乃至3個のアルキル基若しくはアルコキシル基で置換されたフェニル基における、1個乃至3個のアルキル基若しくはアルコキシル基は、それが2又は3個の場合、互いに同一であっても異なってもよい。また、アルキル基、アルコキシル基は、それぞれ、炭素数が1〜6が好ましく、1〜2がより好ましい。
【0052】
かかる一般式(I)で表される化合物は、式中の4つのRが同一のアルキル基(特にメチル基)又はフェニル基であるのが好ましく、また、式中l及びmが2〜3、nが5〜15であるポリシロキサンジアミンが好ましい。
【0053】
なお、ポリシロキサンジアミンの好ましい例としては、ビス(γ−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン(式(I)中、l及びmが3、4つのRがメチル基のもの。)、ビス(γ−アミノプロピル)ポリジフェニルシロキサン(式(I)中、l及びmが3、4つのRがフェニル基のもの。)が挙げられる。
【0054】
本発明において、シロキサン骨格含有ジアミンは、いずれか一種の化合物の単独であっても、2種以上の化合物の併用であってもよい。
【0055】
本発明における「分子骨格中にシロキサン骨格を有し、分子中にアニオン性基を有するブロック共重合ポリイミド」において、アニオン性基とは、電着組成物の溶媒中でアニオンになる基であり、好ましくはカルボキシル基若しくはその塩、及び/又は、スルホン酸基若しくはその塩である。アニオン性基は、シロキサン含有ジアミンやテトラカルボン酸二無水物成分が有していてもよいが、アニオン性基を有するジアミンをジアミン成分の1つとして用いることが好ましい。ポリイミドの耐熱性、被電着物との密着性、重合度向上のためこのようなアニオン性基含有ジアミンは、芳香族ジアミンであることが好ましい。即ち、芳香族ジアミノカルボン酸及び/又は芳香族ジアミノスルホン酸が好ましい。芳香族ジアミノカルボン酸としては、例えば、3,5−ジアミノ安息香酸、2,4−ジアミノフェニル酢酸、2,5−ジアミノテレフタル酸、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,5−ジアミノパラトルイル酸、3,5−ジアミノ−2−ナフタレンカルボン酸、1,4−ジアミノ−2−ナフタレンカルボン酸等が挙げられ、芳香族ジアミノスルホン酸としては、2,5−ジアミノベンゼンスルホン酸、4,4’−ジアミノ−2,2’−スチルベンジスルホン酸、o−トリジンジスルホン酸等が挙げられる。これらの中でも、3,5−ジアミノ安息香酸が特に好ましい。このようなアニオン性基含有芳香族ジアミンは、単独で用いることもできるし、複数種類を組み合わせて用いることもできる。なお、シロキサン骨格含有ジアミンがアニオン性基を有している場合には、ジアミン成分は、シロキサン骨格含有ジアミンのみであってもかまわない。
【0056】
ジアミン成分として、上記したシロキサン骨格含有ジアミン及びジアミノカルボン酸に加え、更に他のジアミンが含まれていてもよい。このようなジアミンとしては、ポリイミドの耐熱性、被電着物への密着性、重合度向上のため通常は芳香族ジアミンが用いられる。このような芳香族ジアミンの例として、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチル−1,1’−ビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,6−ジアミノピリジン、2,6−ジアミノ−4−メチルピリジン、4,4’−(9−フルオレニリデン)ジアニリン、α,α−ビス(4−アミノフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼンを挙げることができ、中でも、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホンがより好ましい。
【0057】
全ジアミン成分中、シロキサン骨格含有ジアミンの割合は5〜90モル%が好ましく、より好ましくは15〜50モル%である。シロキサン骨格含有ジアミン単位が5モル%未満の場合、ポリイミドの電着塗膜は伸び率が劣り、十分な可とう性が得られにくいため、剥がれや割れを生じ易くなるため、好ましくない。また、芳香族ジアミノカルボン酸又はその塩の割合が10〜70モル%であることが好ましい(ただし、シロキサン骨格含有ジアミンと芳香族ジアミノカルボン酸又はその塩の合計は100モル%以下であり、また、上記の通り第3のジアミン成分を含んでいてもよい)。
【0058】
一方、ポリイミド中のテトラカルボン酸二無水物成分としては、ポリイミドの耐熱性、ポリシロキサンジアミンの相溶性の点から芳香族テトラカルボン酸二無水物が通常使用され、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3',4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられ、これらの中でもポリイミドの耐熱性、被電着物への密着性、ポリシロキサンジアミンの相溶性、重合速度等の観点から3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物等が特に好ましいものとして挙げられる。これら例示のテトラカルボン酸二無水物は、何れか一種の化合物を単独で使用しても、二種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0059】
金属細線110に電着塗装した電着被膜部130は、特に限定されるものではないが、例えば1.5μm〜50μm、好ましくは3μm〜30μm、より好ましくは5μm〜15μmの均一な厚さの絶縁性に優れた薄膜である。
【0060】
また、サスペンジョン型電着塗料組成物は、ブロック共重合ポリイミドの分散粒子(析出粒子)が金属細線110の表面に堆積(付着)しやすいため、従来のポリイミド系電着組成物では困難であった20μmを超える厚みの電着被膜130を成長させることができる。厚みが20μmを超える電着被膜130を形成することで、電着被膜130によって絶縁保護及び耐熱保護のみならず、外傷保護が図られた、絶縁被覆されたプローブピンを実現することができる。この結果、本発明により、用途に応じて、1.5μm〜50μmという広範囲の膜厚の絶縁被覆によって絶縁保護及び耐熱保護のみならず、外傷保護が図られた、高性能、高信頼性のプローブピンを実現できる。
【0061】
本実施形態に係るプローブピン100は、図1に示されるように、プローブピン先端部120及び治具接続先端部140を極性溶媒にて剥離したものである。
【0062】
極性溶媒は、特に限定されるものではないが、例えばN−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ガンマブチロラクトン、スルホラン、アニソール、ジオキソラン、プチルセルソルブアセテート、及び、これらの混合物である。
【0063】
この極性溶媒には、ブロック共重合ポリイミドが有するアニオン性基を中和する中和剤を添加することも可能である。極性溶媒に中和剤を添加させることにより、ポリイミド中の酸性基が水溶液中に安定に溶解又は分散して、電着被膜部130を剥離除去させやすくなるからである。極性溶媒と中和剤との重量比率は、特に限定されるものではないが、例えば7:3〜9:1である。
【0064】
中和剤は、特に限定されるものではないが、塩基性含窒素化合物が好ましく、例えば、アンモニア、モノエタノールアミン、エチルアミン、ジエタノールアミン、N,N−ジメチルアミノエタノール、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、N−ジメチルベンジルアミン、トリエタノールアミン等の第1級アミン、第2級アミン又は第3級アミンを使用することができる。また、ピロ−ル、イミダゾール、オキサゾール、ピラゾール、イソキサゾール、チアゾール、イソチアゾール等の含窒素五員複素環化合物やピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン等の含窒素六員複素環化合物等の含窒素複素環式化合物を使用することもできる。
【0065】
次に、上述の実施形態に係るプローブピン100の製造方法を説明する。
【0066】
まず、金属細線(被電着物)110を電着塗料組成物に浸漬し、該金属細線110を陽極として電流を通じて該金属細線100上にポリイミド被膜を成長させる電着工程を行う。
【0067】
ブロック共重合ポリイミドを含む重合反応後組成物を加熱溶融する。加熱温度は通常100〜180℃程度、好ましくは120〜160℃程度である。加熱温度が100℃未満では、ブロック共重合ポリイミドが溶解せず、他の溶媒と分散しにくい傾向となり、180℃を超えると、加水分解を起こし、分子量が低下する傾向となる。
【0068】
次に、加熱溶融後の組成物に塩基性化合物を添加、攪拌してブロック共重合ポリイミドを中和した後、組成物を40℃以下に冷却し、更にブロック共重合ポリイミドの貧溶媒及び水を添加し、混合攪拌して、サスペンジョンを調製する。
【0069】
かかる塗料組成物の製造工程において、ブロック共重合ポリイミドを中和した後の組成物の冷却後温度が40℃を超える場合、中和剤によりポリイミドが分解する傾向となる。組成物の冷却温度はより好ましくは30℃以下である。なお、組成物の冷却温度が低すぎると、再び固化が始まる傾向となるため、冷却温度の下限は20℃以上が好ましい。
【0070】
上記塩基性化合物は、ブロック共重合ポリイミドが有するアニオン性基を中和し得るものであれば特に制限なく使用できるが、塩基性含窒素化合物が好ましく、例えば、N,N−ジメチルアミノエタノール、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、N−ジメチルベンジルアミン、アンモニア等の第1級アミン、第2級アミン又は第3級アミンが挙げられる。また、ピロ−ル、イミダゾール、オキサゾール、ピラゾール、イソキサゾール、チアゾール、イソチアゾール等の含窒素五員複素環化合物やピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン等の含窒素六員複素環化合物等の含窒素複素環式化合物が挙げられる。なお、脂肪族アミンは臭気が強いものが多いので、低臭気である点から含窒素複素環式化合物が好ましい。また、塗料の毒性を考慮した場合、含窒素複素環式化合物の中でも毒性が低いピペリジン、モルホリンが好ましい。当該塩基性化合物の使用量はポリイミド中の酸性基が水溶液中に安定に溶解又は分散する程度でよく、通常、理論中和量の30〜200モル%程度である。
【0071】
また、上記ブロック共重合ポリイミドの貧溶媒は、例えば、フェニル基、フルフリル基若しくはナフチル基を有するアルコール又はケトン類が挙げられ、具体的には、アセトフェノン、ベンジルアルコール、4−メチルベンジルアルコール、4−メトキシベンジルアルコール、エチレングリコールモノフェニルエーテル、フェノキシ−2−エタノール、シンナミルアルコール、フルフリルアルコール、ナフチルカルビノール等が挙げられる。また、脂肪族アルコール系溶媒は毒性が低い点で好ましく、エーテル基を有する脂肪族アルコール系溶媒が特に好ましい。例えば、脂肪族アルコール系溶媒としては、1-プロパノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール類、プロピレングリコール類が使用できる。エチレングリコール類、プロピレングリコール類としては、例えば、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(1−メトキシ−2−プロパノール)、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等が挙げられる。これら貧溶媒は1種又は2種以上を使用できる。
【0072】
かかる貧溶媒の配合量は組成物全量に対し10〜40重量%が好ましく、10〜30重量%がより好ましい。また、上記水の量は組成物全量に対し10〜30重量%が好ましく、15〜30重量%がより好ましい。
【0073】
なお、上記のブロック共重合ポリイミドの貧溶媒や水以外に、組成物の粘度、電気伝導度を調整する目的で、水溶性極性溶媒や油溶性溶媒を適量添加してもよい。ここで、水溶性極性溶媒の具体例としては、ブロック共重合ポリイミドの重合反応に使用する水溶性極性溶媒と同じものが挙げられる。なお、油溶性溶媒を添加する場合、その量は組成物全量に対し15重量%以下である。
【0074】
本発明で使用するサスペンジョン型電着塗料組成物の固形分濃度は1〜15重量%が好ましく、より好ましくは5〜10重量%である。また、水溶性極性溶媒の含有量は組成物全量に対し25〜60重量%が好ましく、より好ましくは35〜55重量%である。
【0075】
本発明で使用するサスペンジョン型電着塗料組成物に分散されているブロック共重合ポリイミドは、粒子径が0.1〜10μm、粒子径の標準偏差が0.1〜8μmであることが好ましい。更に、粒子径の平均0.5〜5μm、粒子径の標準偏差が0.3〜3μmであることがより好ましい。また、サスペンジョン型電着塗料組成物の固有対数粘度は5〜100mPasであることが好ましい。
【0076】
本発明のプローブピンでは、上記の分子骨格中にシロキサン骨格を有し、分子中にアニオン性基を有するブロック共重合ポリイミドを樹脂成分として含有するサスペンジョン型電着塗料組成物を電着して電着被膜部130を形成することにより、該電着被膜部130は金属細線(被電着体)110に対して強固に密着し、かつ、割れが生じ難い可撓性に優れるものとなり、しかも、極めて高い耐熱性を有し、JISC3003に準拠した温度指数評価法での温度指数が200℃以上となる(即ち、耐熱区分がC種以上を示す)絶縁被膜となる。また、該電着被膜部130は極めて高い耐電圧性を有し、層厚みが10μmのときのAC耐電圧が1kV以上、層厚みが20μmのときのAC耐電圧が2kV以上、層厚みが30μmのときのAC耐電圧が3kV以上を示す絶縁被膜となる。このような高度の耐熱性及び高度の耐電圧性は、上記のサスペンジョン型電着塗料組成物が、塗膜の成長過程での電気伝導度が高く、金属細線(被電着体)110の表面に膜性状の均一性の高い被膜を成長させるためであると考えられる。
【0077】
電着工程は、定電流法又は定電圧法で行うことができ、例えば、定電流法の場合、特に限定されるものではないが、電流値:1.0〜200mA、直流電圧:5〜200V(好ましくは30〜120V)の条件が挙げられる。また、電着時間は電着条件、形成すべき電着膜の厚み等によっても異なるが、一般的には10〜120秒の範囲から選択され、好ましくは30〜60秒である。また、電着の際の組成物温度は通常10〜50℃、好ましくは10〜40℃、より好ましくは20〜30℃である。電着電圧が5Vより低いと電着によって塗膜を形成させることが困難となる傾向があり、200Vよりも大きくなると被塗布物からの酸素の発生が激しくなり、均一な塗膜が形成できなくなる。また、電着時間が10秒よりも短いと、電着電圧を高めに設定しても塗膜が成長しにくいためにピンホールが発生しやすく、電着膜の耐電圧性能が著しく低下している。また、120秒を超えると、塗膜の厚さが必要以上に厚くなるだけで経済性に欠ける。また、組成物温度が10℃よりも低いと電着によって塗膜形成をさせることが困難になり、50℃よりも高くなると温度管理が必要となり生産コストを上げる原因になる。
【0078】
電着工程の後、得られた被膜に対して加熱乾燥(焼付け)工程を行う。
【0079】
焼付け工程は、例えば70〜110℃で10〜60分の第一段階の焼付け処理を行った後、例えば160〜180℃で10〜60分の第二段階の焼付け処理を行い、更に例えば200〜220℃で30〜60分の第三段階の焼付け処理を行うのが好ましい。このような3段階の焼付け処理を行うことで、金属細線(被電着物)110に対して高い密着力で密着した十分に乾燥されたポリイミドの被膜を形成することができる。
【0080】
プローブピン100を作製する場合、上記サスペンジョン型電着塗料組成物の電着工程、焼付け工程は、例えば、図2に示すような装置で行うことができる。即ち、金属細線用ロール220に巻き線された金属細線110を引き出し、交流電源の陽極側に接続した状態で、電着塗料組成物223で満たされた電着槽222中を通過させる。電着槽222中には、陰極板224が配置され、金属細線110の通過時に上記の電圧の印加により、陽極である金属細線110と陰極である陰極板224間の電位差により、ポリイミドが金属細線110上に略均一に析出する。電着槽222の後、金属細線110は乾燥装置225内を通過する。該乾燥装置225内で、金属細線110上に析出したポリイミド中の水が蒸発する。乾燥装置225を通過した後、焼付け炉226を通過させポリイミドからなる絶縁被膜が形成し、絶縁導線をロール227で巻き取っていく。かかる装置によって、電着塗料組成物の電着、焼付け作業を行うことで、絶縁被覆線を連続的に製造することができる。この方法により、金属細線110上の全長にわたって絶縁被膜部130が形成される。
【0081】
次に、必要なプローブピン形状に加工するために、被覆された金属細線110を切断後、例えばプローブピンの先端部の絶縁被膜部を上述した極性溶媒にて剥離させて絶縁被覆がされていないプローブピン先端部120を形成する(剥離工程)。また、例えばプローブピンの治具接続部の絶縁被膜部130を上述した極性溶媒にて剥離させて絶縁被覆がされていない治具接続先端部140を形成する。なお、上述したようにこの極性溶媒に中和剤を添加することも可能である。
【0082】
極性溶媒による絶縁被膜部130の剥離は、ノズルにて極性溶媒を絶縁被膜部130に供給することが可能であり、また、貯留槽に貯留された極性溶媒に浸漬させて絶縁被膜部130を剥離させることも可能である。
【0083】
極性溶媒による絶縁被膜部130の剥離において、金属細線110を回転させる又は左右に揺動させることも可能である。これにより極性溶媒の作用が均一になり、剥離効果を更に高めることが可能となる。
【0084】
極性溶媒による絶縁被膜部130の剥離において、超音波を照射しながら、金属細線110に付着する絶縁被膜部130を除去することも可能である。超音波の周波数は、その衝撃によりプローブピンを変形させないものであれば特に限定されるものではなく、例えば0.7〜10MHzとすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0085】
高密度実装の半導体素子や電気電子部品の実装工程前後に行われる直流抵抗値の測定や通電検査に使用できる。
【符号の説明】
【0086】
100:プローブピン
110:金属細線
120:プローブピン先端部
130:電着被膜部
140:治具接続先端部
220:金属細線用ロール
222:電着槽
223:電着塗料組成物
224:陰極板
225:乾燥装置
226:焼付け炉
227:ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子骨格中にシロキサン骨格を有し、分子中にアニオン性基を有するブロック共重合ポリイミドを含む絶縁体を金属細線に電着塗装することにより電着被膜部を形成した後、前記金属細線の少なくとも一方の端部の前記電着被膜部を、極性溶媒にて剥離除去させることを特徴とするプローブピンの製造方法。
【請求項2】
前記極性溶媒に、前記ブロック共重合ポリイミドが有するアニオン性基を中和する中和剤を添加することを特徴とする請求項1に記載のプローブピンの製造方法。
【請求項3】
前記極性溶媒と前記中和剤との重量比率は、7:3〜9:1であることを特徴とする請求項2に記載のプローブピンの製造方法。
【請求項4】
前記極性溶媒は、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ガンマブチロラクトン、スルホラン、アニソール、ジオキソラン、及び、プチルセルソルブアセテートの少なくとも何れかを有することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のプローブピンの製造方法。
【請求項5】
前記中和剤は、N,N−ジメチルアミノエタノール、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、N−ジメチルベンジルアミン、アンモニア、ピロ−ル、イミダゾール、オキサゾール、ピラゾール、イソキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペリジン、ピペラジン、及びモルホリンの少なくとも何れかを有することを特徴とする請求項2乃至4の何れか1項に記載のプローブピンの製造方法。
【請求項6】
前記ブロック共重合ポリイミドにおいて、シロキサン骨格は10重量%以上25重量%以下含有されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載のプローブピンの製造方法。
【請求項7】
前記ブロック共重合ポリイミドの分子骨格における各シロキサン骨格の分子量は、600以上1000以下であることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載のプローブピンの製造方法。
【請求項8】
前記電着被膜部の膜厚は、5μm以上15μm以下であることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載のプローブピンの製造方法。
【請求項9】
前記ブロック共重合ポリイミドが、ジアミン成分の1つとして、分子骨格中にシロキサン骨格を有するジアミンを含むことを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載のプローブピンの製造方法。
【請求項10】
前記分子骨格中にシロキサン骨格を有するジアミンが、ビス(4−アミノフェノキシ)ジメチルシラン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、及び下記の一般式(I)で表される化合物よりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項9に記載のプローブピンの製造方法。
【化1】

(式中、4つのRは、それぞれ独立して、アルキル基、シクロアルキル基、フェニル基又は1個乃至3個のアルキル基若しくはアルコキシル基で置換されたフェニル基を表し、l及びmはそれぞれ独立して1〜4の整数を表し、nは1〜20の整数を表す)
【請求項11】
前記アニオン性基が、カルボキシル基若しくはその塩、及び/又は、スルホン酸基若しくはその塩であることを特徴とする請求項1乃至10の何れか1項に記載のプローブピンの製造方法。
【請求項12】
前記ブロック共重合ポリイミドが、ジアミン成分の1つとして、芳香族ジアミノカルボン酸を含むことを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載のプローブピンの製造方法。
【請求項13】
前記金属細線の少なくとも一方の端部の前記電着被膜部を極性溶媒にて剥離させる際に、超音波を電着被膜部の剥離対象部に照射することを特徴とする請求項1乃至12の何れか1項に記載のプローブピンの製造方法。
【請求項14】
金属細線の表面に絶縁体からなる被膜部が形成されたプローブピンにおいて、
分子骨格中にシロキサン骨格を有し、分子中にアニオン性基を有するブロック共重合ポリイミドを含む絶縁体が前記金属細線の表面に電着塗装されて電着被膜部を形成しており、前記金属細線の少なくとも一方の端部の前記電着被膜部が、極性溶媒にて剥離除去されていることを特徴とするプローブピン。
【請求項15】
前記極性溶媒に、前記ブロック共重合ポリイミドが有するアニオン性基を中和する中和剤を添加することを特徴とする請求項14に記載のプローブピン。
【請求項16】
前記極性溶媒と前記中和剤との重量比率は、7:3〜9:1であることを特徴とする請求項15に記載のプローブピン。
【請求項17】
前記極性溶媒は、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ガンマブチロラクトン、スルホラン、アニソール、ジオキソラン、及び、プチルセルソルブアセテートの少なくとも何れかを有することを特徴とする請求項14乃至16の何れか1項に記載のプローブピン。
【請求項18】
前記中和剤は、N,N−ジメチルアミノエタノール、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、N−ジメチルベンジルアミン、アンモニア、ピロ−ル、イミダゾール、オキサゾール、ピラゾール、イソキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペリジン、ピペラジン、及びモルホリンの少なくとも何れかを有することを特徴とする請求項15乃至17の何れか1項に記載のプローブピン。
【請求項19】
前記ブロック共重合ポリイミドにおいて、シロキサン骨格は10重量%以上25重量%以下含有されていることを特徴とする請求項14乃至18の何れか1項に記載のプローブピン。
【請求項20】
前記ブロック共重合ポリイミドの分子骨格における各シロキサン骨格の分子量は、600以上1000以下であることを特徴とする請求項14乃至19の何れか1項に記載のプローブピン。
【請求項21】
前記電着被膜部の膜厚は、5μm以上15μm以下であることを特徴とする請求項14乃至20の何れか1項に記載のプローブピン。
【請求項22】
前記ブロック共重合ポリイミドが、ジアミン成分の1つとして、分子骨格中にシロキサン骨格を有するジアミンを含むことを特徴とする請求項14乃至21の何れか1項に記載のプローブピン。
【請求項23】
前記分子骨格中にシロキサン骨格を有するジアミンが、ビス(4−アミノフェノキシ)ジメチルシラン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、及び下記の一般式(I)で表される化合物よりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項22に記載のプローブピン。
【化2】

(式中、4つのRは、それぞれ独立して、アルキル基、シクロアルキル基、フェニル基又は1個乃至3個のアルキル基若しくはアルコキシル基で置換されたフェニル基を表し、l及びmはそれぞれ独立して1〜4の整数を表し、nは1〜20の整数を表す)

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−137416(P2012−137416A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290752(P2010−290752)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000003263)三菱電線工業株式会社 (734)
【出願人】(397025417)株式会社ピーアイ技術研究所 (50)
【Fターム(参考)】