説明

ポジ型レジスト組成物及びパターン形成方法

【解決手段】(A)酸不安定基を含む繰り返し単位(a1)と、環状の炭化水素基を有し、その環内にエステル基、エーテル基、炭酸エステル基又はスルホン酸エステル基のうち少なくとも1つを含む繰り返し単位(a2)と、オキシラン環を有する繰り返し単位(a3)を含み、酸によってアルカリ溶解性が向上する樹脂、(B)光酸発生剤、(C)溶剤を含有することを特徴とするポジ型レジスト組成物。
【効果】本発明によれば、良好なライン幅ラフネス(LWR)とマスク忠実性(MEF)を有し、微細パターンにおいても矩形性が高く、パターン倒れ耐性に優れたレジスト組成物を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子などの製造工程における微細加工、例えば波長193nmのArFエキシマレーザーを光源とするリソグラフィー、特に投影レンズと基板(ウエハー)の間に水を挿入する液浸フォトリソグラフィーで用いるポジ型レジスト組成物、及びこれを用いたパターン形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールの微細化が求められている中、現在汎用技術として用いられている光露光では、光源の波長に由来する本質的な解像度の限界に近づきつつある。
【0003】
これまでレジストパターン形成の際に使用する露光光として、水銀灯のg線(436nm)もしくはi線(365nm)を光源とする光露光が広く用いられた。そして、更なる微細化のための手段として、露光波長を短波長化する方法が有効とされ、64Mビット(加工寸法が0.25μm以下)DRAM(ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリー)以降の量産プロセスには、露光光源としてi線(365nm)に代わって短波長のKrFエキシマレーザー(248nm)が利用された。
【0004】
しかし、更に微細な加工技術(加工寸法が0.2μm以下)を必要とする集積度256M及び1G以上のDRAMの製造には、より短波長の光源が必要とされ、10年ほど前からArFエキシマレーザー(193nm)を用いたフォトリソグラフィーが本格的に検討されてきた。
【0005】
当初ArFリソグラフィーは180nmノードのデバイス作製から適用されるはずであったが、KrFリソグラフィーが130nmノードデバイス量産まで延命され、ArFリソグラフィーの本格適用は90nmノードからである。更に、NAを0.9にまで高めたレンズと組み合わせて65nmノードデバイスの検討が行われている。
【0006】
次の45nmノードデバイスには露光波長の短波長化が推し進められ、波長157nmのF2リソグラフィーが候補に挙がった。しかしながら、投影レンズに高価なCaF2単結晶を大量に用いることによるスキャナーのコストアップ、ソフトペリクルの耐久性が極めて低いためのハードペリクル導入に伴う光学系の変更、レジスト膜のエッチング耐性低下等の種々の問題により、F2リソグラフィーの先送りと、ArF液浸リソグラフィーの早期導入が提唱された(非特許文献1:Proc. SPIE Vol. 4690 xxix)。
【0007】
ArF液浸リソグラフィーにおいて、投影レンズとウエハーの間に水を含浸させることが提案されている。193nmにおける水の屈折率は1.44であり、NA1.0以上のレンズを使ってもパターン形成が可能で、理論上はNAを1.35にまで上げることができる。NAの向上分だけ解像力が向上し、NA1.2以上のレンズと強い超解像技術の組み合わせで45nmノードの可能性が示されている(非特許文献2:Proc. SPIE Vol. 5040 p.724)。
【0008】
しかし、回路線幅の縮小に伴い、レジスト組成物においては、酸拡散によるコントラスト劣化の影響が一層深刻になってきた。これは、パターン寸法が酸の拡散長に近づくためであり、マスク忠実性(MEF)やパターン矩形性の劣化や微細なラインパターンの不均一さ(ライン幅ラフネス(LWR))を招く。従って、光源の短波長化及び高NA化による恩恵を十分に得るためには、従来材料以上に溶解コントラストの増大、酸拡散の抑制が必要となる。
【0009】
また、パターンの微細化に伴い深刻化している別の問題として、パターン倒れの問題が注目されている。上記のコントラスト劣化の影響に止まらず、絶対寸法が小さくなるために基板との接着面が狭くなり、パターンが倒れ易くなるものと考えられる。
【0010】
パターン倒れに影響する現像工程中の挙動として、膨潤現象が挙げられている。これは、パターン側壁に疎水性の部分と親水性の部分が不均一に分布しており、親水性部分に現像液が浸透するにもかかわらず、疎水性部分は溶解しないためにパターンが膨れる現象であり、これによる応力が発生することでパターンが倒壊するものと考えられる。特にArFレジスト組成物においては、ベースポリマーのアルカリ溶解性基としてカルボン酸(ポジ型レジスト組成物の場合はカルボン酸を酸不安定基で保護した化合物)を用いる場合が多く、より酸性度の弱いPHS(ポリヒドロキシスチレン)を主体としたKrFレジスト組成物に比べ、膨潤が大きい傾向がある。
【0011】
膨潤を回避する手段として、ArFレジスト組成物においてもベースポリマーにフェノール骨格を導入することが検討され、ArF光(波長193nm)に比較的透明なナフトール単位を導入する等の提案がなされた(非特許文献3:Jap. J. Appl. Phys. Vol. 33 (12B), p.7028 (1994))が、微細パターンのテーパー形状を防ぐために必要な高透明性は得られていない。
【0012】
また、フェノール単位に近い酸性度を示すアルカリ溶解性基として、α位、α’位に複数のフッ素原子置換されたアルコール(例えば、部分構造−C(CF32OHを有するもの)をアルカリ可溶性官能基として用いる樹脂も提案されており(非特許文献4:G. Wallraff et al., “Active Fluororesists for 157nm Lithography”, 2nd International Symposium on 157nm Lithography, May 14−17, 2001)、ArF光における透明性を損なうことなく膨潤を解消させることに一定の成果を挙げた。
【0013】
しかし、ポジ型レジスト組成物のベースポリマーに酸性単位を導入することは、含有量によっては未露光部のアルカリ溶解速度を高め、溶解コントラストを低下させ、解像力不足やトップロス形状を招くおそれがある。
【0014】
また、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチルに代表される非酸性の水酸基含有単位を導入する実施例も多く提案されており、酸拡散抑制効果があることから露光量依存性の改善等に効果があるが、酸性水酸基とは異なり、溶解コントラストの低下は避けられるものの、水酸基の高い親水性により現像液やリンス水の浸透を助長しながら溶解は起こらないために、膨潤については含有量によっては軽減効果がないばかりか増大する場合がある。
なお、本発明に関連する先行技術文献は以下の通りである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2008−133448号公報
【特許文献2】特開2010−155824号公報
【特許文献3】特許第3912767号公報
【特許文献4】特開2009−244859号公報
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Proc. SPIE Vol. 4690 xxix
【非特許文献2】Proc. SPIE Vol. 5040 p.724
【非特許文献3】Jap. J. Appl. Phys. Vol. 33 (12B), p.7028 (1994)
【非特許文献4】G. Wallraff et al., “Active Fluororesists for 157nm Lithography”, 2nd International Symposium on 157nm Lithography, May 14−17, 2001
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、微細パターンの形状を矩形にすると共に良好なライン幅ラフネス(LWR)とMEFを有し、パターン倒れ耐性を向上させる効能を有する高分子化合物を含むポジ型レジスト組成物及び該ポジ型レジスト組成物を用いたパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、上記の問題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、酸不安定基を含む繰り返し単位(a1)と、環状の炭化水素基を有し、その環内にエステル基、エーテル基、炭酸エステル基又はスルホン酸エステル基のうち少なくとも1つを含む繰り返し単位(a2)と、オキシラン環を有する繰り返し単位(a3)を含み、酸によってアルカリ溶解性が向上する樹脂をベースポリマーとし、光酸発生剤、溶剤を含有するポジ型レジスト組成物が、微細パターンの矩形性とMEFを良好にすると共にパターン倒れ耐性を改善させることを知見し、本発明をなすに至った。
【0019】
ここで、酸性水酸基を含まないことによりパターントップロスを防ぎ、また、膨潤を招く非酸性の水酸基も含まないことが倒れ耐性の点で好ましいと考えられるが、その場合、酸拡散が大きくなり、MEFやLWRが悪化してしまう。そこで、本発明のポジ型レジスト組成物を用いることにより、パターン倒れ改善と酸拡散低減の両立が可能となったものである。これは、露光部がオキシラン環によって架橋することによって酸拡散が抑制され、かつ現像液やリンス液の浸透を抑制し、膨潤由来のパターン倒れが改善したものと考えられる。
【0020】
上記課題を解決するために、本発明によれば、(A)酸不安定基を含む繰り返し単位(a1)と、環状の炭化水素基を有し、その環内にエステル基、エーテル基、炭酸エステル基又はスルホン酸エステル基のうち少なくとも1つを含む繰り返し単位(a2)と、オキシラン環を有する繰り返し単位(a3)を含み、酸によってアルカリ溶解性が向上する樹脂、(B)光酸発生剤、(C)溶剤を含有することを特徴とするポジ型レジスト組成物を提供する。
【0021】
このような本発明のレジスト組成物を用いれば、露光部がオキシラン環により架橋されることにより酸拡散が抑制され、解像性が向上し、更には現像液やリンス液の浸透を抑制し、膨潤由来のパターン倒れを改善することができる。このような酸拡散抑制とパターン倒れ抑制の両立は、酸拡散抑制単位として従来まで用いていた(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチルに代表される非酸性の水酸基含有単位のみを導入した樹脂では成しえなかったことである。
【0022】
上記(A)成分中の繰り返し単位(a1)は、下記一般式(1)で示されるものであることが好ましい。
【化1】


(式中、R1は水素原子又はメチル基を示す。R2は酸不安定基を示す。kは0又は1である。kが0の場合、X1は単結合を示す。kが1の場合、X1はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の二価の炭化水素基を示す。)
このように繰り返し単位(a1)が上記一般式(1)で示されるものであることで、一層酸によるアルカリ溶解性が向上し、パターンプロファイルを良好にすることができる。
【0023】
上記(A)成分中の繰り返し単位(a2)は、ラクトン環を有する繰り返し単位であることが好ましい。
このように上記(A)成分中の繰り返し単位(a2)が、ラクトン環を有する繰り返し単位であれば、レジスト膜と基板の密着性が向上し、優れた形状を有するレジストパターンを得ることができる。
【0024】
また、前記樹脂(A)成分中の繰り返し単位(a3)は、下記一般式(2)又は(3)で示されるものであることが好ましい。
【化2】


(式中、R3、R6は水素原子又はメチル基を示し、X2、X3は単結合、又はエステル又はエーテル結合を含んでもよい二価の炭化水素基を示す。R4、R5、R7〜R9は水素原子、又は炭素数1〜5の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示す。mは0又は1である。)
このように上記(A)成分中の繰り返し単位(a3)が、上記一般式(2)又は(3)で示されるものであれば、より良好なライン幅ラフネス(LWR)を得ることができる。
【0025】
また、(A)成分の樹脂は、更に下記一般式(10)で示される繰り返し単位(a4)を含むことができる。
【化3】


(式中、R23は水素原子又はメチル基を示す。X4は炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状のアルキレン基、−O−R24−、又は−C(=O)−X5−R24−であり、アルキレン基の炭素原子に結合している水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい。X5は酸素原子又はNH、R24は炭素数1〜25の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基を示し、カルボニル基、エステル基又はエーテル基を含んでもよい。更に、R24の炭素原子に結合する水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい。M1+は置換基を有するスルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオンのいずれかを示す。)
【0026】
なおまた、(A)成分の樹脂は、更に水酸基、カルボキシル基、フルオロアルキル基、又はαトリフルオロメチルアルコールを有する繰り返し単位を含むことができる。
【0027】
上記(B)成分は、光照射によりα位がフッ素原子で置換された下記一般式(4)で示されるスルホン酸を発生させる化合物であることが好ましい。
【化4】


(式中、R10は炭素数1〜35の直鎖状、分岐状又は環状の一価の炭化水素基を示す。また、ヘテロ原子を含むことができ、炭素原子に結合する水素原子の1つ以上がフッ素原子に置換されていてもよい。)
このように(B)成分が、光照射によりα位がフッ素原子で置換された上記一般式(4)で示されるスルホン酸を発生させる化合物であれば、より優れた形状を有するレジストパターンを得ることができる。
【0028】
更に、(B)成分は、下記一般式(5)で示されるスルホニウム塩であることがより好ましい。
【化5】


(式中、R11はヘテロ原子を含んでもよい置換もしくは非置換の炭素数1〜30の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜30のアリール基を示す。R12は水素原子又はトリフルオロメチル基を示す。R13、R14及びR15は独立に置換もしくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基、アルケニル基、オキソアルキル基のいずれかを示すか、置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基、アラルキル基又はアリールオキソアルキル基を示すか、あるいはR13、R14及びR15のうちのいずれか2つ以上が相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。)
このように(B)成分が、上記一般式(5)で示されるものであれば、優れたMEFを得ることができる。
【0029】
更に、(D)成分として下記一般式(6)又は(7)で示されるスルホン酸又はカルボン酸のオニウム塩を含むことが好ましい。
【化6】


(式中、R16は酸素原子を含んでもよい炭素数1〜35の直鎖状、分岐状又は環状の一価の炭化水素基を示す。また、炭素原子に結合する水素原子の1つ以上がフッ素原子に置換されていてもよいが、スルホン酸のα位の炭素原子とフッ素原子は結合していない。R17は酸素原子を含んでもよい炭素数1〜35の直鎖状、分岐状又は環状の一価の炭化水素基を示す。また、炭素原子に結合する水素原子の1つ以上がフッ素原子に置換されていてもよいが、カルボン酸のα位の炭素原子とフッ素原子は結合していない。M2+は置換基を有する対カチオンを示し、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオン、アンモニウムカチオンのいずれかを示す。)
【0030】
このように(D)成分として上記一般式(6)又は(7)の化合物を含むことで、効果的にLWR、MEFを改善することができる。この効果は次のように考察される。露光により(B)成分から発生した酸が、上記(D)成分のスルホン酸もしくはカルボン酸のα位がフッ素置換されていないオニウム塩と塩交換を起こし、α位がフッ素置換されていないスルホン酸もしくはカルボン酸が発生する。この塩交換により発生したα位がフッ素置換されていないスルホン酸もしくはカルボン酸は酸強度が低く、樹脂の酸脱離反応に対する寄与が小さい。つまり、(D)成分のスルホン酸もしくはカルボン酸のα位がフッ素置換されていないオニウム塩は、(B)成分に対してクエンチャーとして機能し、発生酸の拡散を効果的に抑制し、LWR、MEFが改善するものと考えられる。
【0031】
更に、(D)成分は、下記一般式(8)又は(9)で示されるものであることがより好ましい。
【化7】


(式中、R18、R19、R21、R22は水素原子又はトリフルオロメチル基を示す。R20は水素原子、水酸基、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の置換もしくは非置換のアルキル基、又は炭素数6〜30の置換もしくは非置換のアリール基を示す。nは1〜3の整数である。M2+は置換基を有する対カチオンを示し、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオン、アンモニウムカチオンのいずれかを示す。)
このように(D)成分が、上記一般式(8)又は(9)であることでより効果的にLWR、MEFを改善することができる。
【0032】
更に、(D)成分の含有量が、(A)成分の含有量100質量部に対し0.5〜15質量部であることが好ましい。
(D)成分の含有量が、(A)成分の含有量100質量部に対し0.5〜15質量部であれば、上記本発明の効果が十分に発揮されるために好ましい。
【0033】
更に、(B)成分の含有量が、(A)成分の含有量100質量部に対し3〜25質量部であることが好ましい。
(B)成分の含有量が、(A)成分の含有量100質量部に対し3〜25質量部であれば、上記本発明の効果が十分に発揮されるために好ましい。
【0034】
更に、本発明は、塩基性化合物を含むことが好ましい。塩基性化合物を含むことで良好なパターン形状を得ることができる。
更に、前記塩基性化合物の含有量が、(A)成分の含有量100質量部に対し0.1〜3質量部であることが好ましい。
塩基性化合物の含有量が、(A)成分の含有量100質量部に対し0.1〜3質量部であれば、上記本発明の効果が十分に発揮されるために好ましい。
【0035】
更に、本発明は、上記ポジ型レジスト組成物を基板上に塗布する工程と、加熱処理後、高エネルギー線で露光する工程と、現像液を用いて現像する工程とを含むパターン形成方法を提供する。
このように本発明のパターン形成方法によれば、微細パターンの形状を矩形にすると共にライン幅ラフネス(LWR)とMEFを改善し、パターン倒れ耐性を向上させることができる。
この場合、上記高エネルギー線を波長180〜250nmの範囲のものとすることが好ましい。
更に、本発明は、上記高エネルギー線で露光する工程を、レジスト膜と投影レンズの間を水で介して液浸露光する工程を含むパターン形成方法を提供する。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、良好なライン幅ラフネス(LWR)とマスク忠実性(MEF)を有し、微細パターンにおいても矩形性が高く、パターン倒れ耐性に優れたレジスト組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明者らは、上記の問題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、酸不安定基を含む繰り返し単位(a1)と、環状の炭化水素基を有し、その環内にエステル基、エーテル基、炭酸エステル基又はスルホン酸エステル基のうち少なくとも1つを含む繰り返し単位(a2)と、オキシラン環を有する繰り返し単位(a3)を含み、酸によってアルカリ溶解性が向上する樹脂をベースポリマーとし、光酸発生剤、溶剤を含有するポジ型レジスト組成物が、良好なライン幅ラフネス(LWR)とMEFを有し、パターンの矩形性を向上させると共に、パターン倒れ耐性を改善させることを知見するに至った。
【0038】
即ち、本発明は、(A)酸不安定基を含む繰り返し単位(a1)と、環状の炭化水素基を有し、その環内にエステル基、エーテル基、炭酸エステル基又はスルホン酸エステル基のうち少なくとも1つを含む繰り返し単位(a2)と、オキシラン環を有する繰り返し単位(a3)を含み、酸によってアルカリ溶解性が向上する樹脂、(B)光酸発生剤、(C)溶剤を共に含むことを特徴とするポジ型レジスト組成物を提供するものである。
【0039】
以下、本発明のポジ型レジスト組成物について更に詳述する。
(A)成分は、酸不安定基を含む繰り返し単位(a1)を含むことを特徴とする。酸不安定基を含む繰り返し単位とは、カルボン酸、フェノール、フルオロアルコール等の酸性基が酸不安定基により保護された構造を有する繰り返し単位であり、酸により脱保護し、アルカリ現像液に対する溶解性を向上させることができる。なお、酸不安定基を含む繰り返し単位は、(A)成分中に2種類以上含まれていてもよい。
【0040】
酸不安定基としては種々用いることができるが、具体的には下記一般式(L1)で示されるアルコキシアルキル基、下記一般式(L2)〜(L8)で示される三級アルキル基、下記一般式(L9)で示されるアルコキシカルボニル基又はアルコキシカルボニルアルキル基を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【化8】

【0041】
上記式中、破線は結合手を示す(以下、同様)。また、RL01、RL02は水素原子又は炭素数1〜18、好ましくは1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示し、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、アダマンチル基等が例示できる。RL03は炭素数1〜18、好ましくは炭素数1〜10の酸素原子等のヘテロ原子を有してもよい一価の炭化水素基を示し、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基等に置換されたものを挙げることができ、具体的には、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基としては上記RL01、RL02と同様のものが例示でき、置換アルキル基としては下記の基等が例示できる。
【化9】

【0042】
L01とRL02、RL01とRL03、RL02とRL03とは互いに結合してこれらが結合する炭素原子や酸素原子と共に環を形成してもよく、環を形成する場合には環の形成に関与するRL01、RL02、RL03はそれぞれ炭素数1〜18、好ましくは炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示す。
【0043】
L04、RL05、RL06はそれぞれ独立に炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基等が例示できる。
【0044】
L07は炭素数1〜10の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示し、置換されていてもよいアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基等の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基、シアノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、スルホ基等に置換されたもの、又はこれらのメチレン基の一部が酸素原子又は硫黄原子に置換されたもの等が例示でき、置換されていてもよいアリール基としては、具体的にはフェニル基、メチルフェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基等が例示できる。式(L3)において、rは0又は1、sは0,1,2,3のいずれかであり、2r+s=2又は3を満足する数である。
【0045】
L08は炭素数1〜10の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示し、具体的にはRL07と同様のもの等が例示できる。RL09〜RL18はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜15の一価の炭化水素基を示し、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基等の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基、シアノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、スルホ基等に置換されたもの等が例示できる。RL09〜RL18は互いに結合して環を形成していてもよく(例えば、RL09とRL10、RL09とRL11、RL10とRL12、RL11とRL12、RL13とRL14、RL15とRL16等)、その場合には炭素数1〜15の二価の炭化水素基を示し、具体的には上記一価の炭化水素基で例示したものから水素原子を1個除いたもの等が例示できる。また、RL09〜RL18は隣接する炭素に結合するもの同士で何も介さずに結合し、二重結合を形成してもよい(例えば、RL09とRL11、RL11とRL17、RL15とRL17等)。
【0046】
L19は炭素数1〜10の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示し、具体的にはRL07と同様のもの等が例示できる。
【0047】
L20は炭素数1〜10の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示し、具体的にはRL07と同様のもの等が例示できる。Xはこれが結合する炭素原子と共に置換又は非置換のシクロペンタン環、シクロヘキサン環、又はノルボルナン環を形成する二価の基を表す。RL21、RL22はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の一価炭化水素基を表し、又は、RL21とRL22は互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に置換又は非置換のシクロペンタン環、又はシクロヘキサン環を形成する二価の基を表す。pは1又は2を表す。
【0048】
L23は炭素数1〜10の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示し、具体的にはRL07と同様のもの等が例示できる。Yはこれが結合する炭素原子と共に置換又は非置換のシクロペンタン環、シクロヘキサン環、又はノルボルナン環を形成する二価の基を表す。RL24、RL25はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の一価炭化水素基を表し、又は、RL24とRL25は互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に置換又は非置換のシクロペンタン環、又はシクロヘキサン環を形成する二価の基を表す。qは1又は2を表す。
【0049】
L26は炭素数1〜10の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示し、具体的にはRL07と同様のもの等が例示できる。Zはこれが結合する炭素原子と共に置換又は非置換のシクロペンタン環、シクロヘキサン環、又はノルボルナン環を形成する二価の基を表す。RL27、RL28はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の一価炭化水素基を表し、又は、RL27とRL28は互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に置換又は非置換のシクロペンタン環、又はシクロヘキサン環を形成する二価の基を表す。
【0050】
L29は炭素数4〜20、好ましくは炭素数4〜15の三級アルキル基、各アルキル基がそれぞれ炭素数1〜6のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のオキソアルキル基又は上記一般式(L1)で示される基を示し、三級アルキル基としては、具体的にはtert−ブチル基、tert−アミル基、1,1−ジエチルプロピル基、2−シクロペンチルプロパン−2−イル基、2−シクロヘキシルプロパン−2−イル基、2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)プロパン−2−イル基、2−(アダマンタン−1−イル)プロパン−2−イル基、1−エチルシクロペンチル基、1−ブチルシクロペンチル基、1−エチルシクロヘキシル基、1−ブチルシクロヘキシル基、1−エチル−2−シクロペンテニル基、1−エチル−2−シクロヘキセニル基、2−メチル−2−アダマンチル基、2−エチル−2−アダマンチル基等が例示でき、トリアルキルシリル基としては、具体的にはトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチル−tert−ブチルシリル基等が例示でき、オキソアルキル基としては、具体的には3−オキソシクロヘキシル基、4−メチル−2−オキソオキサン−4−イル基、5−メチル−2−オキソオキソラン−5−イル基等が例示できる。yは0〜3の整数である。
【0051】
上記式(L1)で示される酸不安定基としては、具体的には下記の基が例示できる。
【化10】

【0052】
上記式(L1)で示される酸不安定基のうち環状のものとしては、具体的にはテトラヒドロフラン−2−イル基、2−メチルテトラヒドロフラン−2−イル基、テトラヒドロピラン−2−イル基、2−メチルテトラヒドロピラン−2−イル基等が例示できる。
【0053】
上記式(L2)の酸不安定基としては、具体的にはtert−ブチル基、tert−アミル基、及び下記の基が例示できる。
【化11】

【0054】
上記式(L3)の酸不安定基としては、具体的には1−メチルシクロペンチル基、1−エチルシクロペンチル基、1−n−プロピルシクロペンチル基、1−イソプロピルシクロペンチル基、1−n−ブチルシクロペンチル基、1−sec−ブチルシクロペンチル基、1−シクロヘキシルシクロペンチル基、1−(4−メトキシ−n−ブチル)シクロペンチル基、1−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)シクロペンチル基、1−(7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)シクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−エチルシクロヘキシル基、3−メチル−1−シクロペンテン−3−イル基、3−エチル−1−シクロペンテン−3−イル基、3−メチル−1−シクロヘキセン−3−イル基、3−エチル−1−シクロヘキセン−3−イル基等が例示できる。
【0055】
上記式(L4)の酸不安定基としては、下記式(L4−1)〜(L4−4)で示される基が特に好ましい。
【化12】

【0056】
前記一般式(L4−1)〜(L4−4)中、破線は結合位置及び結合方向を示す。RL41はそれぞれ独立に炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基等の一価炭化水素基を示し、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等を例示できる。
【0057】
前記一般式(L4−1)〜(L4−4)には、エナンチオ異性体(enantiomer)やジアステレオ異性体(diastereomer)が存在しえるが、前記一般式(L4−1)〜(L4−4)は、これらの立体異性体の全てを代表して表す。これらの立体異性体は単独で用いてもよいし、混合物として用いてもよい。
【0058】
例えば、前記一般式(L4−3)は下記一般式(L4−3−1)、(L4−3−2)で示される基から選ばれる1種又は2種の混合物を代表して表すものとする。
【化13】

(式中、RL41は前述と同様である。)
【0059】
また、上記一般式(L4−4)は、下記一般式(L4−4−1)〜(L4−4−4)で示される基から選ばれる1種又は2種以上の混合物を代表して表すものとする。
【化14】

(式中、RL41は前述と同様である。)
【0060】
上記一般式(L4−1)〜(L4−4)、(L4−3−1)、(L4−3−2)、及び式(L4−4−1)〜(L4−4−4)は、それらのエナンチオ異性体及びエナンチオ異性体混合物をも代表して示すものとする。
なお、式(L4−1)〜(L4−4)、(L4−3−1)、(L4−3−2)、及び式(L4−4−1)〜(L4−4−4)の結合方向がそれぞれビシクロ[2.2.1]ヘプタン環に対してexo側であることによって、酸触媒脱離反応における高反応性が実現される(特開2000−336121号公報参照)。これらビシクロ[2.2.1]ヘプタン骨格を有する三級exo−アルキル基を置換基とする単量体の製造において、下記一般式(L4−1−endo)〜(L4−4−endo)で示されるendo−アルキル基で置換された単量体を含む場合があるが、良好な反応性の実現のためにはexo比率が50%以上であることが好ましく、exo比率が80%以上であることが更に好ましい。
【化15】

(式中、RL41は前述と同様である。)
【0061】
上記式(L4)の酸不安定基としては、具体的には下記の基が例示できる。
【化16】

【0062】
上記式(L5)の酸不安定基としては、具体的には下記の基が例示できる。
【化17】

【0063】
上記式(L6)の酸不安定基としては、具体的には下記の基が例示できる。
【化18】

【0064】
上記式(L7)の酸不安定基としては、具体的には下記の基が例示できる。
【化19】

【0065】
上記式(L8)の酸不安定基としては、具体的には下記の基が例示できる。
【化20】

【0066】
上記式(L9)の酸不安定基としては、具体的には下記の基が例示できる。
【化21】

【0067】
酸不安定基を有する繰り返し単位の具体例を下記に示すが、これらに限定されるものではない。
【化22】

【0068】
【化23】

【0069】
(A)成分中の酸不安定基を有する繰り返し単位(a1)は、特に下記一般式(1)で示される構造の繰り返し単位がより好ましい。
【化24】

【0070】
ここで上記式中、R1は水素原子又はメチル基を示す。R2は酸不安定基を示す。kは0又は1である。kが0の場合、X1は単結合を示す。kが1の場合、X1はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の二価の炭化水素基を示す。
【0071】
上記に例示された酸不安定基を有する繰り返し単位(a1)の具体例を下記に示すが、これらに限定されるものではない。
【0072】
【化25】

【0073】
【化26】

【0074】
【化27】

【0075】
【化28】

【0076】
【化29】

【0077】
【化30】

【0078】
【化31】

【0079】
【化32】

【0080】
【化33】

【0081】
【化34】

【0082】
【化35】

【0083】
また、本発明のポジ型レジスト組成物に含まれる樹脂(A)は、酸不安定基を含む繰り返し単位の他に、更に環状の炭化水素基を有し、その環内にエステル基、エーテル基、炭酸エステル基又はスルホン酸エステル基のうち少なくとも1つを含む繰り返し単位(a2)を含むことを特徴とする。この場合、樹脂(A)中に繰り返し単位(a2)を2種以上含んでもよい。具体的には以下のものが例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0084】
【化36】

【0085】
【化37】

【0086】
(A)成分中の(a2)は、ラクトン環を有する繰り返し単位であることがより好ましい。具体的には以下のものが例示できるが、これらに限定されるものではない。
【化38】

【0087】
【化39】

【0088】
【化40】

【0089】
【化41】

【0090】
また、本発明のポジ型レジスト組成物に含まれる樹脂(A)は、更にオキシラン環を含む繰り返し単位(a3)を含むことを特徴とする。この場合、樹脂(A)中に繰り返し単位(a3)を2種以上含んでもよい。具体的には以下のものが例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0091】
【化42】

【0092】
【化43】

【0093】
オキシラン環を含む繰り返し単位(a3)は、下記一般式(2)又は(3)で示される繰り返し単位であることがより好ましい。
【化44】

【0094】
ここで上記式中、R3、R6は水素原子又はメチル基を示し、X2、X3は単結合、又はエステル又はエーテル結合を含んでもよい二価の炭化水素基を示す。R4、R5、R7〜R9は水素原子、又は炭素数1〜5の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示す。mは0又は1である。
【0095】
上記一般式(2)及び(3)の具体例を以下に示す構造で例示できるが、これらに限定されるものではない。
【化45】

【0096】
【化46】

【0097】
【化47】

【0098】
【化48】

【0099】
【化49】

【0100】
上記樹脂(A)は、繰り返し単位(a1)、(a2)、(a3)の他に必要に応じて下記一般式(10)で示されるオニウム塩の繰り返し単位(a4)を含むこともできる。
【化50】

【0101】
ここで上記式中、R23は水素原子又はメチル基を示す。X4は炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状のアルキレン基、−O−R24−、又は−C(=O)−X5−R24−であり、アルキレン基の炭素原子に結合している水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい。X5は酸素原子又はNH、R24は炭素数1〜25の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基を示し、カルボニル基、エステル基又はエーテル基を含んでもよい。更に、R24の炭素原子に結合する水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい。M1+は置換基を有するスルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオンのいずれかを示す。
【0102】
上記一般式(10)で示されるオニウム塩の繰り返し単位(a4)を含むことで酸拡散を抑制することができ、良好なLWRを得ることができる。
【0103】
上記一般式(10)の具体例を以下に示す構造で例示できるが、これらに限定されるものではない。
【化51】

【0104】
【化52】

【0105】
更に、上記樹脂(A)は、必要に応じて水酸基、カルボキシル基、フルオロアルキル基、又はαトリフルオロメチルアルコールを含む単位等、その他の繰り返し単位を1つ以上含んでもよい。具体的には以下のものが例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0106】
【化53】

【0107】
【化54】

【0108】
【化55】

【0109】
本発明のポジ型レジスト組成物に含まれる樹脂(A)を構成する各繰り返し単位の組成比について、(a1)の合計の含有率をaモル%、(a2)の合計の含有率をbモル%、(a3)の合計の含有率をcモル%、(a4)の合計の含有率をdモル%、その他の繰り返し単位の合計の含有率をeモル%とした場合、
a+b+c+d+e=100、
0<a≦70、
0<b≦70、
0<c≦20、
0≦d≦20、
0≦e≦30
を満たし、特に
a+b+c+d+e=100、
30≦a≦70、
20≦b≦60、
1≦c≦10、
0≦d≦10、
0≦e≦20
を満たす組成比が好ましい。
【0110】
本発明のパターン形成方法に用いられるポジ型レジスト組成物のベース樹脂となる高分子化合物は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(溶剤:テトラヒドロフラン)が1,000〜500,000、特に2,000〜30,000であることが好ましい。
【0111】
また、本発明のポジ型レジスト組成物は(B)光酸発生剤を含むことを特徴とする。なお、光酸発生剤は2種類以上含んでもよい。
【0112】
(B)成分の光酸発生剤は、光照射によりα位がフッ素原子で置換された下記一般式(4)で示されるスルホン酸を発生させる化合物であることが好ましい。
【化56】

【0113】
ここで上記式中、R10は炭素数1〜35の直鎖状、分岐状又は環状の一価の炭化水素基を示す。また、ヘテロ原子を含むことができ、炭素原子に結合する水素原子の1つ以上がフッ素原子に置換されていてもよい。
【0114】
上記一般式(4)の具体例としては、以下に示す構造の化合物を例示できるが、これらに限定されるものではない。
【化57】

【0115】
更に、(B)成分の光酸発生剤は、下記一般式(5)で示されるスルホニウム塩であることが好ましい。
【化58】

【0116】
ここで上記式中、R11はヘテロ原子を含んでもよい置換もしくは非置換の炭素数1〜30の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜30のアリール基を示す。R12は水素原子又はトリフルオロメチル基を示す。R13、R14及びR15は独立に置換もしくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基、アルケニル基、オキソアルキル基のいずれかを示すか、置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基、アラルキル基又はアリールオキソアルキル基を示すか、あるいはR13、R14及びR15のうちのいずれか2つ以上が相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。
【0117】
上記アルキル基及びアルケニル基として具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロプロピルメチル基、4−メチルシクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。また、これらの基の水素原子の一部がフッ素原子や水酸基で置換されていてもよい。
【0118】
上記オキソアルキル基の具体例としては、2−オキソシクロペンチル基、2−オキソシクロヘキシル基、2−オキソプロピル基、2−オキソエチル基、2−シクロペンチル−2−オキソエチル基、2−シクロヘキシル−2−オキソエチル基、2−(4−メチルシクロヘキシル)−2−オキソエチル基等を挙げることができる。また、これらの基の水素原子の一部がフッ素原子や水酸基で置換されていてもよい。
【0119】
アリール基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、チエニル基等や、4−ヒドロキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、2−メトキシフェニル基、4−エトキシフェニル基、4−tert−ブトキシフェニル基、3−tert−ブトキシフェニル基等のアルコキシフェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−n−ブチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基等のアルキルフェニル基、メチルナフチル基、エチルナフチル基等のアルキルナフチル基、メトキシナフチル基、エトキシナフチル基等のアルコキシナフチル基、ジメチルナフチル基、ジエチルナフチル基等のジアルキルナフチル基、ジメトキシナフチル基、ジエトキシナフチル基等のジアルコキシナフチル基等を挙げることができる。また、これらの基の水素原子の一部がフッ素原子や水酸基で置換されていてもよい。
【0120】
アラルキル基としては、ベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基等が挙げられる。また、これらの基の水素原子の一部がフッ素原子や水酸基で置換されていてもよい。
【0121】
アリールオキソアルキル基としては、2−フェニル−2−オキソエチル基、2−(1−ナフチル)−2−オキソエチル基、2−(2−ナフチル)−2−オキソエチル基等の2−アリール−2−オキソエチル基等が挙げられる。また、これらの基の水素原子の一部がフッ素原子や水酸基で置換されていてもよい。
【0122】
上記R11として具体的には以下のものが例示できるが、これらに限定されるものではない。
【化59】

【0123】
(B)成分の光酸発生剤の具体例を以下に示す構造で例示できるが、これらに限定されるものではない。
【化60】

【0124】
【化61】

【0125】
【化62】

【0126】
(B)成分の光酸発生剤の含有量は、前記樹脂(A)の含有量100質量部に対し3〜25質量部であることが、上記本発明の効果を発揮するのに好ましい。
【0127】
また、本発明のポジ型レジスト組成物は、(D)成分として下記一般式(6)又は(7)で示されるスルホン酸又はカルボン酸のオニウム塩を含むことが好ましい。
【化63】

【0128】
ここで上記式中、R16は酸素原子を含んでもよい炭素数1〜35の直鎖状、分岐状又は環状の一価の炭化水素基を示す。また、炭素原子に結合する水素原子の1つ以上がフッ素原子に置換されていてもよいが、スルホン酸のα位の炭素原子とフッ素原子は結合していない。R17は酸素原子を含んでもよい炭素数1〜35の直鎖状、分岐状又は環状の一価の炭化水素基を示す。また、炭素原子に結合する水素原子の1つ以上がフッ素原子に置換されていてもよいが、カルボン酸のα位の炭素原子とフッ素原子は結合していない。M2+は置換基を有する対カチオンを示し、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオン、アンモニウムカチオンのいずれかを示す。
【0129】
上記(D)成分は、下記一般式(8)又は(9)であることが好ましい。
【化64】

【0130】
ここで上記式中、R18、R19、R21、R22は水素原子又はトリフルオロメチル基を示す。R20は水素原子、水酸基、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の置換もしくは非置換のアルキル基、又は炭素数6〜30の置換もしくは非置換のアリール基を示す。nは1〜3の整数である。M2+は置換基を有する対カチオンを示し、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオン、アンモニウムカチオンのいずれかを示す。
【0131】
上記(D)成分の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【化65】

【0132】
【化66】

【0133】
【化67】

【0134】
【化68】

【0135】
【化69】

【0136】
【化70】

【0137】
【化71】

【0138】
【化72】

【0139】
【化73】

【0140】
(D)成分の光酸発生剤の含有量は、前記樹脂(A)の含有量100質量部に対し0.5〜15質量部であることが、上記本発明の効果を発揮するのに好ましい。
【0141】
更に、本発明のポジ型レジスト組成物は、塩基性化合物を含有することができる。
塩基性化合物としては、酸発生剤より発生する酸がレジスト膜中に拡散する際の拡散速度を抑制することができる化合物が適している。塩基性化合物の配合により、レジスト膜中での酸の拡散速度が抑制されて解像度が向上し、露光後の感度変化を抑制したり、基板や環境依存性を少なくし露光余裕度やパターンプロファイル等を向上することができる。
【0142】
このような塩基性化合物としては、特開2008−111103号公の段落[0146]〜[0164]に記載の1級、2級、3級のアミン化合物、特にはヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、ラクトン環、シアノ基、スルホン酸エステル基を有するアミン化合物、あるいは特開2001−166476号公報に記載のカーバメート基を有する化合物を挙げることができる。
前記塩基性化合物の添加量は、前記樹脂(A)の含有量100質量部に対し0〜3質量部が好ましい。
【0143】
また、本発明のポジ型レジスト組成物は、更に有機溶剤を含有することを特徴とする。
本発明のポジ型レジスト組成物に使用される有機溶剤としては、上述した樹脂(A)、光酸発生剤(B)、その他添加剤等が溶解可能な有機溶剤であればいずれでもよい。このような有機溶剤としては、例えば、シクロヘキサノン、メチル−2−n−アミルケトン等のケトン類、3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール等のアルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert−ブチル、プロピオン酸tert−ブチル、プロピレングリコールモノtert−ブチルエーテルアセテート等のエステル類、γ−ブチロラクトン等のラクトン類が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができるが、これらに限定されるものではない。本発明では、これらの有機溶剤の中でもレジスト成分中の酸発生剤の溶解性が最も優れているジエチレングリコールジメチルエーテルや1−エトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びその混合溶剤が好ましく使用される。
【0144】
有機溶剤の使用量は、レジスト組成物中のベース樹脂(樹脂(A)及びその他の樹脂成分の合計)100質量部に対して200〜4,000質量部、特に400〜3,000質量部が好適である。
【0145】
その他、界面活性剤、溶解制御剤のいずれか1つ以上を含有することができる。
界面活性剤は特開2008−111103号公報の段落[0165]〜[0166]、溶解制御剤としては特開2008−122932号公報の段落[0155]〜[0178]に記載の材料を用いることができる。
界面活性剤の配合量は、ベース樹脂100質量部に対し0.0001〜10質量部が好ましく、溶解制御剤の配合量は、ベース樹脂100質量部に対し0〜40質量部であることが好ましい。
【0146】
本発明では、上述したポジ型レジスト組成物を用いたパターン形成方法を提供する。
本発明のポジ型レジスト組成物を使用してパターンを形成するには、公知のリソグラフィー技術を採用して行うことができ、例えば、集積回路製造用の基板(Si,SiO2,SiN,SiON,TiN,WSi,BPSG,SOG,有機反射防止膜等)、あるいはマスク回路製造用の基板(Cr,CrO,CrON,MoSi等)シリコンウエハー等の基板上にスピンコーティング等の手法で膜厚が0.05〜2.0μmとなるように塗布し、これをホットプレート上で60〜150℃、1〜10分間、好ましくは80〜140℃、1〜5分間プリベークしてレジスト膜を得る。次いで目的のパターンを形成するためのマスクを上記のレジスト膜上にかざし、紫外線、遠紫外線、電子線、X線、エキシマレーザー、γ線、又はシンクロトロン放射線等の高エネルギー線を露光量1〜200mJ/cm2、好ましくは10〜100mJ/cm2となるように照射する。あるいは、パターン形成のためのマスクを介さずに電子線を直接描画する。露光は通常の露光法の他、場合によっては投影レンズとレジスト膜の間を水等により液浸するImmersion法を用いることも可能である。その場合には水に不溶な保護膜をレジスト膜上に形成して用いることも可能である。次いで、ホットプレート上で、60〜150℃、1〜5分間、好ましくは80〜140℃、1〜3分間ポストエクスポージャーベーク(PEB)する。更に、0.1〜5質量%、好ましくは2〜3質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等のアルカリ水溶液の現像液を用い、0.1〜3分間、好ましくは0.5〜2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により現像して、基板上に目的のパターンが形成される。なお、本発明のポジ型レジスト組成物は、特に高エネルギー線の中でも180〜250nmの遠紫外線又はエキシマレーザー、X線及び電子線による微細パターニングに最適である。なお、上記範囲が上限又は下限から外れる場合は、目的のパターンを得ることができない場合がある。
【0147】
上述した水に不溶な保護膜は、レジスト膜からの溶出物を防ぎ、膜表面の滑水性を上げるために用いられ、大きく分けて2種類ある。1種類はレジスト膜を溶解しない有機溶剤によってアルカリ現像前に剥離が必要な有機溶剤剥離型と、もう1種類はアルカリ現像液に可溶で、レジスト膜可溶部の除去と共に保護膜を除去するアルカリ可溶型である。
後者は、特に水に不溶でアルカリ現像液に溶解する1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有する高分子化合物をベースとし、炭素数4以上のアルコール系溶剤、炭素数8〜12のエーテル系溶剤、及びこれらの混合溶剤に溶解させた材料が好ましい。
上述した水に不溶でアルカリ現像液に可溶な界面活性剤を炭素数4以上のアルコール系溶剤、炭素数8〜12のエーテル系溶剤、又はこれらの混合溶剤に溶解させた材料とすることもできる。
また、パターン形成方法の手段として、フォトレジスト膜形成後に、純水リンス(ポストソーク)を行うことによって膜表面からの酸発生剤などの抽出、あるいはパーティクルの洗い流しを行ってもよいし、露光後に膜上に残った水を取り除くためのリンス(ポストソーク)を行ってもよい。
【0148】
投影レンズとレジスト膜の間を液浸するImmersion法で露光する場合、スピンコート後のレジスト表面の撥水性を向上させるための高分子化合物を添加することもできる。この撥水性向上剤は保護膜を用いない液浸リソグラフィーに用いることができる。このような撥水性向上剤は特定構造の1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有し、特開2007−297590号公報、特開2008−111103号公報、特開2008−122932号公報に例示されている。
【実施例】
【0149】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの記載によって限定されるものではない。
【0150】
[実施例及び比較例]
(高分子化合物の組成及び分子量/分散度)
本評価に用いた高分子化合物を構成する繰り返し単位の組成比(モル%)と分子量及び分散度を表1に示す。また、各繰り返し単位の構造を表2〜5に示す。表2中ALU−1〜ALU−12は、本発明のポジ型レジスト組成物の高分子化合物(A)において必須の酸不安基を含む繰り返し単位(a1)であり、表3中Unit−1〜Unit−11は、高分子化合物(A)において必須の環状の炭化水素基を有し、その環内にエステル基、エーテル基、炭酸エステル基又はスルホン酸エステル基のうち少なくとも1つを含む繰り返し単位(a2)である。また、表5中Unit−18〜Unit−21は本発明のポジ型レジスト組成物の高分子化合物(A)において必須のオキシラン環を有する繰り返し単位(a3)である。従ってPolymer−1〜Polymer−39が本発明の高分子化合物(A)に該当する。Polymer−40〜Polymer−43は比較例のポリマーである。
【0151】
【表1】

【0152】
【表2】

【0153】
【表3】

【0154】
【表4】

【0155】
【表5】

【0156】
(レジスト組成物の調製)
次に、上記高分子化合物の他、各種光酸発生剤、各種クエンチャーを溶剤に溶解し、溶解後にテフロン(登録商標)製フィルター(孔径0.2μm)を用い濾過し、下記表6,7に示す本発明のレジスト組成物を調製した。また、比較試料として下記表8に示すレジスト組成物を調製した。表6〜8中の光酸発生剤の構造を表9に、オニウム塩の構造を表10に、クエンチャーとして用いた塩基性化合物(A1〜A4)の構造を表11に示す。表9のうちPAG−1〜PAG−8は本発明のレジスト組成物の必須成分の光酸発生剤(B)に相当する。表10のうちSalt−1〜Salt−13は本発明のレジスト組成物の好適配合成分のオニウム塩(D)に相当する。
【0157】
【表6】

【0158】
【表7】

【0159】
【表8】

【0160】
【表9】

【0161】
【表10】

【0162】
【表11】

【0163】
また、表6〜8中に示した溶剤は以下の通りである。
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
GBL:γ−ブチロラクトン
【0164】
また、アルカリ可溶型界面活性剤SF−1(5.0質量部)と界面活性剤A(0.1質量部)を表6〜8中に示したいずれのレジスト組成物にも添加した。アルカリ可溶型界面活性剤SF−1及び界面活性剤Aの構造を以下に示す。
アルカリ可溶型界面活性剤SF−1(特開2008−122932号公報に記載の化合物):
ポリ(メタクリル酸=3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−1,1−ジメチル−2−トリフルオロメチルプロピル・メタクリル酸=1,1,1−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−6−メチル−2−トリフルオロメチルヘプタ−4−イル)(下記式)
【化74】

界面活性剤A:
3−メチル−3−(2,2,2−トリフルオロエトキシメチル)オキセタン・テトラヒドロフラン・2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール共重合物(オムノバ社製)(下記式)
【化75】

【0165】
(評価方法・評価結果)
シリコン基板上に反射防止膜溶液(日産化学工業(株)製、ARC−29A)を塗布し、200℃で60秒間ベークして作製した反射防止膜(100nm膜厚)基板上にレジスト溶液をスピンコーティングし、ホットプレートを用いて100℃で60秒間ベークし、80nm膜厚のレジスト膜を作製した。これをArFエキシマレーザースキャナー((株)ニコン製、NSR−S610C、NA=1.30、二重極、6%ハーフトーン位相シフトマスク)を用いて水により液浸露光し、任意の温度で60秒間ベーク(PEB)を施し、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液で60秒間現像を行った。
【0166】
レジスト膜の評価は、40nm1:1のライン&スペースパターンを対象とし、電子顕微鏡にて観察し、ライン寸法幅が40nmとなる露光量を最適露光量(Eop、mJ/cm2)とした。最適露光量におけるパターン形状を比較し、以下の基準により良否を判断した。
矩形:ラインパターンの垂直性が高く、好ましい形状
頭丸:ラインパターンが過剰に溶解し、パターンに高さがなくなっている状態で、好
ましくない形状
テーパー:基板に近い部分でライン寸法が増幅する傾向で、好ましくない形状
【0167】
また、最適露光量におけるライン側壁部のラフネスについて、寸法幅のバラツキ(LWR、30点測定、3σ値を算出)を求めることで数値化し、比較した(表中、LWR(単位;nm))。
【0168】
また、最適露光量から露光量を大きくしてライン寸法を細らせた場合に、ラインが倒れずに解像する範囲を求め、倒れマージン(単位;%)とした。値が大きいほど好ましい。計算は以下に示す式で求めた。
倒れマージン(%)=100×(倒れ限界露光量−Eop)/Eop
【0169】
上記最適露光量におけるウエハー上の寸法において、ピッチ固定(80nm)でライン幅のみ変化させた(38〜42nm、1nm刻み)マスクを使い、露光し、ウエハー転写後の寸法を測定した。ライン幅について、マスク設計寸法に対する転写パターンの寸法をプロットし、直線近似により傾きを算出し、これをマスクエラーファクター(MEF)とした。MEF値が小さいほど、マスクパターンの仕上がり誤差の影響を抑えることができるため、良好である。
【0170】
(評価結果)
上記表6,7に示した本発明のレジスト組成物のPEB温度及び評価結果を下記表12,13に示す。また、上記表8に示した比較レジスト組成物のPEB温度及び評価結果を下記表14に示す。
【0171】
【表12】

【0172】
【表13】

【0173】
【表14】

【0174】
上記表12,13及び表14に示した結果より、(A)酸不安定基を含む繰り返し単位(a1)と、環状の炭化水素基を有し、その環内にエステル基、エーテル基、炭酸エステル基又はスルホン酸エステル基のうち少なくとも1つを含む繰り返し単位(a2)と、オキシラン環を有する繰り返し単位(a3)を含み、酸によってアルカリ溶解性が向上する樹脂、(B)光酸発生剤、(C)溶剤を共に含む本発明のポジ型レジスト組成物が、ラインパターンの形状、及びLWR、MEF、倒れマージンにおいて良好な性能を示すことが確認できた(実施例1〜45)。
【0175】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)酸不安定基を含む繰り返し単位(a1)と、環状の炭化水素基を有し、その環内にエステル基、エーテル基、炭酸エステル基又はスルホン酸エステル基のうち少なくとも1つを含む繰り返し単位(a2)と、オキシラン環を有する繰り返し単位(a3)を含み、酸によってアルカリ溶解性が向上する樹脂、(B)光酸発生剤、(C)溶剤を含有することを特徴とするポジ型レジスト組成物。
【請求項2】
(A)成分中の繰り返し単位(a1)が、下記一般式(1)で示されることを特徴とする請求項1に記載のポジ型レジスト組成物。
【化1】


(式中、R1は水素原子又はメチル基を示す。R2は酸不安定基を示す。kは0又は1である。kが0の場合、X1は単結合を示す。kが1の場合、X1はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の二価の炭化水素基を示す。)
【請求項3】
(A)成分中の繰り返し単位(a2)が、ラクトン環を有する繰り返し単位であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポジ型レジスト組成物。
【請求項4】
(A)成分中の繰り返し単位(a3)が、下記一般式(2)又は(3)で示される繰り返し単位であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のポジ型レジスト組成物。
【化2】


(式中、R3、R6は水素原子又はメチル基を示し、X2、X3は単結合、又はエステル又はエーテル結合を含んでもよい二価の炭化水素基を示す。R4、R5、R7〜R9は水素原子、又は炭素数1〜5の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示す。mは0又は1である。)
【請求項5】
(A)成分の樹脂が、更に下記一般式(10)で示される繰り返し単位(a4)を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のポジ型レジスト組成物。
【化3】


(式中、R23は水素原子又はメチル基を示す。X4は炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状のアルキレン基、−O−R24−、又は−C(=O)−X5−R24−であり、アルキレン基の炭素原子に結合している水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい。X5は酸素原子又はNH、R24は炭素数1〜25の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基を示し、カルボニル基、エステル基又はエーテル基を含んでもよい。更に、R24の炭素原子に結合する水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい。M1+は置換基を有するスルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオンのいずれかを示す。)
【請求項6】
(A)成分の樹脂が、更に水酸基、カルボキシル基、フルオロアルキル基、又はαトリフルオロメチルアルコールを有する繰り返し単位を含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のポジ型レジスト組成物。
【請求項7】
(B)成分の光酸発生剤が、光照射によりα位がフッ素原子で置換された下記一般式(4)で示されるスルホン酸を発生させる化合物であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のポジ型レジスト組成物。
【化4】


(式中、R10は炭素数1〜35の直鎖状、分岐状又は環状の一価の炭化水素基を示す。また、ヘテロ原子を含むことができ、炭素原子に結合する水素原子の1つ以上がフッ素原子に置換されていてもよい。)
【請求項8】
(B)成分の光酸発生剤が、下記一般式(5)で示されるスルホニウム塩であることを特徴とする請求項7に記載のポジ型レジスト組成物。
【化5】


(式中、R11はヘテロ原子を含んでもよい置換もしくは非置換の炭素数1〜30の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜30のアリール基を示す。R12は水素原子又はトリフルオロメチル基を示す。R13、R14及びR15は独立に置換もしくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基、アルケニル基、オキソアルキル基のいずれかを示すか、置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基、アラルキル基又はアリールオキソアルキル基を示すか、あるいはR13、R14及びR15のうちのいずれか2つ以上が相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。)
【請求項9】
更に、(D)成分として下記一般式(6)又は(7)で示されるスルホン酸又はカルボン酸のオニウム塩を含むことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のポジ型レジスト組成物。
【化6】


(式中、R16は酸素原子を含んでもよい炭素数1〜35の直鎖状、分岐状又は環状の一価の炭化水素基を示す。また、炭素原子に結合する水素原子の1つ以上がフッ素原子に置換されていてもよいが、スルホン酸のα位の炭素原子とフッ素原子は結合していない。R17は酸素原子を含んでもよい炭素数1〜35の直鎖状、分岐状又は環状の一価の炭化水素基を示す。また、炭素原子に結合する水素原子の1つ以上がフッ素原子に置換されていてもよいが、カルボン酸のα位の炭素原子とフッ素原子は結合していない。M2+は置換基を有する対カチオンを示し、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオン、アンモニウムカチオンのいずれかを示す。)
【請求項10】
(D)成分が、下記一般式(8)又は(9)であることを特徴とする請求項9に記載のポジ型レジスト組成物。
【化7】


(式中、R18、R19、R21、R22は水素原子又はトリフルオロメチル基を示す。R20は水素原子、水酸基、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の置換もしくは非置換のアルキル基、又は炭素数6〜30の置換もしくは非置換のアリール基を示す。nは1〜3の整数である。M2+は置換基を有する対カチオンを示し、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオン、アンモニウムカチオンのいずれかを示す。)
【請求項11】
(D)成分の含有量が、(A)成分の含有量100質量部に対し0.5〜15質量部であることを特徴とする請求項9又は10に記載のポジ型レジスト組成物。
【請求項12】
(B)成分の含有量が、(A)成分の含有量100質量部に対し3〜25質量部であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載のポジ型レジスト組成物。
【請求項13】
更に、塩基性化合物を含むことを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載のポジ型レジスト組成物。
【請求項14】
前記塩基性化合物の含有量が、(A)成分の含有量100質量部に対し0.1〜3質量部であることを特徴とする請求項13に記載のポジ型レジスト組成物。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれか1項に記載のポジ型レジスト組成物を基板上に塗布する工程と、加熱処理後、高エネルギー線で露光する工程と、現像液を用いて現像する工程とを含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項16】
前記高エネルギー線を波長180〜250nmの範囲のものとすることを特徴とする請求項15に記載のパターン形成方法。
【請求項17】
前記高エネルギー線で露光する工程を、水を介して露光する液浸露光により行うことを特徴とする請求項16に記載のパターン形成方法。

【公開番号】特開2013−92590(P2013−92590A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233564(P2011−233564)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】