説明

ポンプを制御する方法および装置

ポンプ(22)制御のための電気油圧制御システムが開示される。油圧アクチュエータ(50)は、斜板の勾配を制御するように構成される。油圧アクチュエータ(50)の位置は、それぞれがアクチュエータ(50)のいずれかの側の2つの圧力室(54と56)の中へ(から外へ)の加圧流体の流出を制御することにより制御される。流体通路(62)は、通路をタンク(40)へ選択的に接続するように備えられる。通路は、各圧力室(54および56)のためのオリフィス(68と70)を有している。アクチュエータ(50)は、アクチュエータ(50)の位置に依存して、オリフィス(68および70)の1つ以上のすべてまたは一部を選択的に遮断するように構成される。制御システムの構成要素は、アクチュエータ(50)が電力のロスに際してニュートラルまたはニュートラルに近い位置に戻るように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に油圧アクチュエータに関し、特に可変容量型ポンプを制御するための、作動停止時にニュートラルにする電気油圧制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
可変容量型油圧ポンプは、様々な用途に対し加圧された圧液を提供するために、油圧システムで広く用いられる。ブルドーザー、ローダーなどの多くのタイプの装置は、動作するために油圧システムに大きく依存し、固定容量型ポンプを超える、より大きな制御を提供するために可変容量型ポンプを利用する。
【発明の概要】
【0003】
様々な制御方式が、このような可変容量型油圧ポンプの斜板角度を制御するために利用されている。このような1つの制御方式は、2001年7月9日にカルステン・フィビンにより出願された米国特許第6,553,891号(それは参考文献として本明細書に援用される)に開示される。しかしながら、電力喪失時に作動停止してニュートラル位置となる制御方式を提供することは有用であり得る。
【0004】
油圧システムが、加圧流体源と、タンクと、第1の圧力室および第2の圧力室との間に配置されたアクチュエータと、第1の圧力室と選択的に連通する第1のオリフィスおよび第2の圧力室との選択的に連通する第2のオリフィスを有する流体通路と、開位置および閉位置を有する流体通路に配置されたドレン弁とを有して、開示される。この開示によれば、流体は、ドレン弁が開位置である場合、第1のオリフィスおよび第2のオリフィスの両方からタンクに流入可能であり、流体は、ドレン弁が閉位置である場合には、第1のオリフィスおよび第2のオリフィスの両方からタンクへ流入することを制限される。
【0005】
斜板の勾配を制御する方法が、さらに開示される。この方法は、第1の制御弁に連結された第1の電気手段を起動し、第2の制御弁に連結された第2の電気手段を停止させ、ドレン弁に連結された第3の電気手段を起動することにより、斜板の勾配を変化させるステップと、第1の電気手段を停止させ、第2の電気手段を停止させ、第3の電気手段を停止させることにより、ニュートラル位置またはニュートラルに近い位置へ斜板を戻すステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】典型的な装置の側面概略図である。
【図2】典型的なトランスミッションの略図である。
【図3】第1の状態における典型的な制御ポンプハードウェアの略図である。
【図4】第2の状態における図3の典型的な制御ポンプハードウェアの略図である。
【図5】別の実施形態の典型的な制御ポンプハードウェアの略図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1は、典型的な装置10を図示する。装置10は、採鉱、建設、農業または当該技術分野において知られている他の産業界などの産業界に関連する作業を実行する、固定装置または可動式装置であり得る。例えば、装置10は、ブルドーザー、ローダー、バックホウトラクター、掘削機、モータグレーダ、ダンプカー、または陸地を移動する他の装置など、陸地を移動する装置であり得る。装置10は、また、発電設備、ポンプ、船舶、または他の適当な装置を具現し得る。図1および2を参照すると、装置10は、フレーム12と、機器14と、車輪またはレールなどの牽引手段18と、エンジン16(図2)から牽引手段18に対して動力を伝達するトランスミッション20(図2)とを含み得る。
【0008】
図2に示すように、トランスミッション20は、静圧トランスミッションであってもよいし、加圧流体の供給源(例えば、エンジン16によって駆動された一次ポンプ22)、モータ24、およびバイパス安全弁26)を含んでもよい。実際上、トランスミッションは、連続可変トランスミッション(CVT)、並列経路可変トランスミッション(PPV)、または当該技術分野において知られる他のトランスミッションであってもよい。本開示によれば、一次ポンプ22は、可変容量型アキシャルピストンポンプなどの可変容量型ポンプであってもよいし、その容量は、斜板(図示せず)の傾斜角の変化により変更され得る。モータ24は、固定容量型油圧モータであってもよい。しかしながら、モータ24は、その代わりに可変容量型モータであってもよい。トランスミッション20は、例えば、斜板制御ハードウェア30に対して加圧流体を提供するチャージポンプ28(それは図3に、よりいっそう詳細に示される)等の別の加圧流体の供給源をさらに含むことができる。
【0009】
図3は、制御ハードウェア30の一部を図示する。制御ハードウェア30は、アクチュエータ50の並進運動が一次ポンプ22の斜板(図示せず)の角度方向の変化をもたらすように、斜板制御アーム(図示せず)を受けるように構成される接続部分52を有するアクチュエータ50を含む。アクチュエータ50の位置は、第1の圧力室54および第2の圧力室56によって制御される。第1の圧力室54は、第1の3位置および3方向制御弁58によってチャージポンプ28およびタンク40と連通するように選択的に配置され、第1の制御弁58は、スプリング63などの機械デバイスに対して機能するソレノイド61などの電気手段によって始動される。同様に、第2の圧力室56は、第2の位置および3方向の制御弁60によってチャージポンプ28およびタンク40と連通するように選択的に配置され、第2の制御弁は、スプリング67などの機械デバイスに対して機能するソレノイド65などの電気手段によって始動される。
【0010】
図3に関して、アクチュエータ50の右への動きは、第1の制御弁58連結されたソレノイド61を停止させて、第1の圧力室54をチャージポンプ28と連通するようにさせ、第2の制御弁60に連結されたソレノイド65を起動させて、第2の圧力室56をタンク40と連通するようにさせることにより達成される。同様に、アクチュエータ50の左への動きは、第1の制御弁58に連結されたソレノイド61を起動させて、第1の圧力室54をタンク40と連通するようにさせ、第2の制御弁60に連結されたソレノイド65を停止させて、第2の圧力室56をチャージポンプ28と連通するようにさせることにより達成される。
【0011】
流体通路62が、第1の圧力室54と第2の圧力室56との間に備えられる。通路62は、通路62を第1の圧力室54に接続する第1のオリフィス68と、通路62を第2の圧力室56に接続する第2のオリフィス70とを有する。図3に示される実施形態において、図示されるように、アクチュエータ50がニュートラル位置にある場合、第1のオリフィス68および第2のオリフィス70は、アクチュエータ50によって遮断される。アクチュエータのニュートラル位置は、アクチュエータが第1のオリフィス68および第2のオリフィス70に関して実質的に中心にあることにより特徴づけられ得る。アクチュエータのニュートラル位置および近ニュートラル位置は、斜板の実質的にニュートラルな配向と、プライマリーのポンプ22のヌルまたは最小容量とに対応するであることが企図される。
【0012】
図3に示される実施形態において、アクチュエータ50の比較的小さな右への動きは、第1の圧力室54に対して第1のオリフィス68を開き、アクチュエータ50の比較的小さな左への動きは、第2の圧力室54に対して第1のオリフィス68を開く。ドレン弁64が、開位置および閉位置を有する通路62内に配置される。スプリング72などの機械手段が、ドレン弁64を開位置に向かって偏向させ、ソレノイド74などの電気手段が、ドレン弁64を閉位置に向かって偏向させる。ドレン弁64が開位置にある場合、流体は、通路62を通ってタンク40に流入することができる。ドレン弁64が閉位置にある場合、流体は、通路62を介するタンク40までの流入、第1のオリフィス68および第2のオリフィス70のいずれの流れも、他方の第1のオリフィス68および第2のオリフィス70に対して制限される。
【0013】
産業上の利用可能性
一次ポンプ22の通常動作の間、ソレノイド74が作動し、ドレン弁64を閉位置に移動する。このようにして、加圧流体が第1のチャンバ54および第2のチャンバ56へ、およびそれらから提供され、アクチュエータ50を移動させ、斜板の角度を変化させて、プライマリーのポンプ22の容量を変化させることができる。
【0014】
電力喪失に際して、制御ハードウェア30は、図4において示される構成を取りうる。この状態において、第1の制御弁58および第2の制御弁60がそれぞれのスプリングによって流れ通過位置へ始動され、第1の圧力室54および第2の圧力室56の双方がチャージポンプ28と連通するようになる。さらに、ドレン弁64もまた、スプリング72によって開位置へと偏向される。さらに図4を参照すると、アクチュエータ50は、ニュートラル位置に残されており、それによって、第2の圧力室56を第2のオリフィス70の露出部(Ap2)を通じて通路62経由でタンク40と連通させる。第2の圧力室56からのタンク40への流体の流れは、第2の圧力室56が第1の圧力室54よりも低圧となる結果をもたらす。この圧力不均衡は、アクチュエータ50をニュートラル位置に向けて偏向させる。しかしながら、斜板上にかかる力により、斜板アームは、アクチュエータ50にも力(F)をかけ得る。このようにして、アクチュエータ50は、均衡点に移動するし、それは一般にニュートラル位置に近いものである。摩擦の影響を無視すると、Ap1のこの平衡面積は、式1により、近似することができる。ここで、Aは、第2の制御弁60の計測面積であり、Aactは、第2の圧力室56における圧力がかけられているアクチュエータ50の右側の表面積であり、Pchargeは、チャージポンプ28から放出されている流体の圧力である。
【0015】
【数1】

【0016】
したがって、式1を用いることによって、アクチュエータ50の定常状態位置は、第2のオリフィス70の露出面積(Ap2)とアクチュエータ50位置とを比較するマップを用いることにより、近似することができる。
【0017】
図5に示された別の実施形態において、アクチュエータ50の大きさは、ニュートラル位置の下に部分的に重なるような(アンダーラッピングのような)サイズである。つまり、ニュートラル位置において第1のオリフィス68および第2のオリフィス70の両方が、それぞれ対応する圧力室54および56と連通している。このようなアンダーラッピング状態において、Ap1が第1のオリフィス68の露出面積である場合、Ap1およびAp2関するよる均衡点は、式2(Eq.2)によって近似することができる。
【0018】
【数2】

【0019】
したがって、下方ラッピング状態において、式2を用いることにより、アクチュエータ50の定常状態位置は、アクチュエータ50位置を露出面積の平方の差分(すなわち、Ap1−Ap2)と比較するマップを用いることにより、近似することができる。
【0020】
開示された油圧システムに対して、様々な変更および変形をすることができることが、当業者にとって明らかであろう。他の実施形態は、開示される油圧システムの詳説および方式の実践から、当業者に明らかとなるであろう。特に、可変容量型ポンプの利用のための本明細書に記載された制御システムは、可変容量型モータにも利用されてもよいことは、当業者にとって明らかであろう。詳説および例は単なる例であるとみなされ、真の範囲は以下の特許請求の範囲およびそれらの等価物によって示されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧流体の供給源と、
タンク(40)と、
第1の圧力室(54)と第2の圧力室(56)との間に配置されたアクチュエータ(50)と
前記第1の圧力室(54)と選択的に連通する第1のオリフィス(68)と前記第2の圧力室(56)と選択的に連通する第2のオリフィス(70)とを有する流体通路(62)と、
前記流体通路(62)に配置された、開位置および閉位置を有するドレン弁(64)と
を備え、
前記ドレン弁(64)が開位置にある場合、流体は、前記第1のオリフィス(68)および前記第2のオリフィス(70)の両方から前記タンク(40)に流入可能であり、
前記ドレン弁(64)が閉位置にある場合に、流体は、前記第1のオリフィス(68)および前記第2のオリフィス(70)の両方から前記タンク(40)に流入するこを制限されること
を特徴とする油圧システム。
【請求項2】
前記ドレン弁(64)は、第1の機械手段によって開位置に向かって偏向され、第1の電気手段によって閉位置に向かって偏向されることを特徴とする請求項1に記載の油圧システム。
【請求項3】
第1の位置と第2の位置とを有する第1の制御弁(58)をさらに含み、前記第1の制御弁(58)の前記第1の位置は、第1の圧力室(54)を前記供給源と連通させ、前記第1の制御弁(58)の前記第2の位置は、前記第1の圧力室(54)を前記タンク(40)と連通させることを特徴とする請求項2に記載の油圧システム。
【請求項4】
前記第1の制御弁(58)は、第2の機械手段によって前記第1の位置に向かって偏向されることを特徴とする請求項3に記載の油圧システム。
【請求項5】
前記第1の制御弁(58)は、第2の電気手段によって前記第2の位置に向かって偏向されることを特徴とする請求項4に記載の油圧システム。
【請求項6】
第1の位置と第2の位置とを有する第2の制御弁(60)をさらに備え、前記第2の制御弁(60)の前記第1の位置は、第2の圧力室(56)を前記供給源と連通させ、前記第2の制御弁(60)の前記第2の位置は、前記第2の圧力室(56)を前記タンク(40)と連通させることを特徴とする請求項5に記載の油圧システム。
【請求項7】
前記第2の制御弁(60)は、第3の機械手段によって前記第1の位置に向かって偏向されることを特徴とする請求項6に記載の油圧システム。
【請求項8】
前記第2の制御弁(60)は、第3の電気手段によって前記第2の位置に向かって偏向されることを特徴とする請求項7に記載の油圧システム。
【請求項9】
傾斜角を有する斜板をさらに備え、前記アクチュエータの動きは、前記傾斜角における変化をもたらすことを特徴とする請求項8に記載の油圧システム。
【請求項10】
前記供給源は、チャージポンプ(28)であることを特徴とする請求項9に記載の油圧システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−508620(P2013−508620A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−536815(P2012−536815)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/049037
【国際公開番号】WO2011/056302
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(391020193)キャタピラー インコーポレイテッド (296)
【氏名又は名称原語表記】CATERPILLAR INCORPORATED
【Fターム(参考)】