説明

メラノーマ抗原

【課題】T細胞によって認識されるメラノーマ抗原をコードする遺伝子、およびそれらに対応するタンパク質、ならびにこれらの遺伝子またはタンパク質を用いての予防、診断および治療方法を提供する。
【解決手段】Tリンパ球により認識されるMART−1と命名されたメラノーマ抗原をコードする核酸配列、上記核酸配列がコードするタンパク質、および上記タンパク質に対する抗体。上記抗原タンパク質および抗体を用いた、メラノーマまたは転移性メラノーマの診断、評価または予後診断するためのバイオアッセイ。さらに、MART−1に由来する免疫原性ペプチドおよびgp100と命名された第2のメラノーマ抗原。MART−1メラノーマ抗原またはgp100抗原に由来し、免疫原性を高めるように改変された免疫原性ペプチド。上記タンパク質およびペプチドの、メラノーマの予防または治療のための免疫原としての使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国特許出願第08/231,565号(1994年4月22日出願)の一部継続出願であり、ここにその全体を援用する。
【0002】
発明の分野
本発明は、ヒトの癌の予防および治療の分野内にある。より具体的には、本発明は、T細胞によって認識されるメラノーマ抗原をコードする遺伝子、およびそれらに対応するタンパク質、ならびにこれらの遺伝子またはタンパク質を用いての予防、診断および治療への適用に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
メラノーマは、メラノサイトまたはメラノサイト関連母斑細胞のいずれかから誘導される、攻撃的な、時として転移性の腫瘍である(非特許文献1)。メラノーマは全皮膚癌のおおよそ3%近くに達し、メラノーマの世界的増加は、女性の肺がんを除く他のいかなる新生物も及ばない(非特許文献1、非特許文献2)。メラノーマは、明らかに皮膚に局在している場合でさえ、最大で30%の患者は、将来、全身に転移し、その大部分は死に至るであろう(非特許文献2)。メラノーマ治療の古典的様式には、外科手術、放射線および化学療法が含まれる。過去10年間では、免疫療法および遺伝子治療が、メラノーマ治療の新しい可能性のある方法として現れてきた。
【0004】
T細胞は、ほとんどのネズミ腫瘍モデルで腫瘍の退縮に重要な役割を演じている。単一の癌抗原を認識する腫瘍浸潤リンパ球(TIL)は、多くのネズミ腫瘍から単離することができる。これらTIL+インターロイキン2の養子免疫伝達は、確立された肺および肝臓への転移の退縮を仲介することが出来る(非特許文献3)。さらに、TILを注射することによるIFN−γの分泌は、生体内(in vivo)でのネズミ腫瘍の退縮と明らかな相関を示し、腫瘍抗原によるT細胞の活性化を示唆している(非特許文献4)。腫瘍TILを、転移性メラノーマ患者内に養子免疫伝達した場合、メラノーマ患者の35〜40%の転移癌の退縮を仲介することが知られており、このTILの能力は、抗原を認識することの臨床上の重要性を証明している(非特許文献5;非特許文献6)。
【0005】
CB8T細胞上のT細胞受容体は、抗原ペプチド(HLA−A2の場合9〜10アミノ酸)、β−2ミクログロブリンおよび主要組織適合性複合体(MHC)クラスI重鎖(ヒトではHLA−A、B、C)からなる複合体を認識する。内在的に合成されたタンパク質の消化によって生成したペプチドは、小胞体に輸送され、MHCクラスI重鎖およびβ2ミクロブロブリンと結合し、最終的に、細胞表面のMHCクラスIの分子の溝に発現する。それ故、T細胞は、細胞表面上に発現した完全な分子を検出する抗体とは対照的に、細胞の内側のタンパク質を起源とする分子を検出することが出来る。それ故、T細胞によって認識される抗原は、抗体によって認識される抗原より、より有用であろう。
【0006】
癌に対する免疫応答がヒトに存在することの強力な証拠は、メラノーマ沈積物中にリンパ球が存在することによって提供される。これらのリンパ球は、単離すると、MHC拘束性に、自己のおよび同種移植のメラノーマに特異的な腫瘍抗原を認識する能力を持つ(非特許文献7、非特許文献8、非特許文献9、非特許文献10、非特許文献11、非特許文献12、非特許文献13、非特許文献14)。転移性メラノーマ患者からのTILは、生体外(in vitro)でメラノサイト−メラノーマ系列に特異的な組織抗原を含む共有抗原を認識する(非特許文献15、非特許文献16)。抗メラノーマT細胞は、生体内(in vivo)では、おそらく腫瘍部位でのクローン拡張および蓄積の結果として、TIL中に多く存在すると思われる(非特許文献17)。多くのメラノーマ患者がこれらの腫瘍に対して細胞性応答および体液性応答を装備しているという事実、ならびにメラノーマがMHC抗原および腫瘍関連抗原(TAA)の両方を発現しているという事実は、メラノーマ患者を免疫治療するためには、さらなるメラノーマ抗原の同定および特徴付けが重要であることを示唆している。
【0007】
末梢血リンパ球は、メラノーマ腫瘍抗原と思われる抗原の同定に用いられた。非特許文献18は、生体内で変異誘発腫瘍細胞を用いて繰り返し免疫化した患者の末梢血で確認されたT細胞クローンを用いて、MAGE−1と呼ばれるメラノーマ抗原をコードする遺伝子の特徴を調べた。メラノーマ患者の末梢血リンパ球から誘導された細胞毒性T細胞は、抗原ペプチドをコードするMAGE−1の同定に用いられた(非特許文献19)。また、非特許文献20は、生体外で、腫瘍で繰り返し刺激することによって感受性になった患者の末梢血リンパ球を用いて、チロシナーゼと呼ばれるメラノーマ抗原をコードする遺伝子の特徴を調べた。さらに、メラノーマ抗原の治療への可能性の確認は、Brownら(特許文献1)によって提供されている。Brownら(特許文献1)は、組換え体ワクシニアウイルスを基礎としたメラノーマワクチンに関し、この中で、メラノーマ抗原p97はネズミモデルで腫瘍細胞の挑戦を予防する効果を示すと報告している。さらなるメラノーマ抗原の特徴を調べることは、癌、特にメラノーマの免疫療法の新規戦略の開発のために重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,262,177号明細書
【特許文献2】国際公開第90/14443号
【特許文献3】国際公開第90/14424号
【特許文献4】国際公開第93/208185号
【特許文献5】欧州特許出願第0563485A1号明細書
【特許文献6】国際特許出願第184,187号
【特許文献7】欧州特許出願第0171496号明細書
【特許文献8】欧州特許出願第0173494号明細書
【特許文献9】国際公開第86/01533号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】“Cellular and Molecular Immunology”、1991、Abbas,A.K.、Lechtman,A.H.、Pober,J.S.編;W.B.Saunders Company、フィラデルフィア:340−341
【非特許文献2】KirkwoodおよびAgarwala、1993、Principles and Practice of Oncology、7:1−16
【非特許文献3】Rosenberg,S.A.ら、1986、Science、223:1318−1321
【非特許文献4】Barth,R.J.ら、1991、J.Exp.Med.173:647−658
【非特許文献5】Rosenberg,S.A.ら、1988、N.Engl.J.Med.、319:1676−1680
【非特許文献6】Rosenberg,S.A.、1992、J.Clin.Oncol.、10:180−199
【非特許文献7】Itoh,K.ら、1986、Cancer Res.、46:3011−3017
【非特許文献8】Muul,L.M.ら、1987、J.Immunol.、138:989−995
【非特許文献9】Topalian,S.L.ら、1989、J.Immunol.、142:3714−3725
【非特許文献10】Darrow,T.L.ら、1989、J.Immunol.、142:3329−3335
【非特許文献11】Hom,S.S.ら、1991、J.Immunother.、10:153−164
【非特許文献12】Kawakami,Y.ら、1992、J.Immunol.、148:638−643
【非特許文献13】Hom,S.S.ら、1993、J.Immunother.、13:18−30
【非特許文献14】O’Neil,B.H.ら、1993、J.Immunol.、151:1410−1418
【非特許文献15】Kawakami,Y.ら、1993、J.Immunother.、14:88−93
【非特許文献16】Anichini,A.ら、1993、J.Exp.Med.、177:989−988
【非特許文献17】Sensi,M.ら、1993、J.Exp.Med.、178:1231−1246
【非特許文献18】Van Der Bruggen,P.ら、1991、Science、254:1643−1647
【非特許文献19】Traversari,C.ら、1992、J.Exp.Med.、176:1453−1457
【非特許文献20】Brichard,V.ら、1993、J.Exp.Med.、178:489−495
【非特許文献21】Yokoyama,W.M.ら、1991、J.Immunol.、147:3229−3236
【非特許文献22】Singer,S.J.、1990、Annu.Rev.Cell Biol.、6:247−296
【非特許文献23】Ausbelら編、1987、“Current Protocols in Molecular Biology”、John Wiley and Sons、ニューヨーク州ニューヨーク
【非特許文献24】Sambrookら編、1989、“Molecular Cloning.A Laboratory Manual”、Cold Spring Harbor Press、Plainview、ニューヨーク
【非特許文献25】Gluzman,Y.ら、1981、Cell、23:175−182
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【非特許文献30】Alwine,J.C.ら、1977、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、74:5350−5354
【非特許文献31】Kafatos,F.C.ら、1979、Nucleic Acids Res.、7:1541−1522
【非特許文献32】Hollander,M.C.ら、1990、Biotechniques、9:174−179
【非特許文献33】Watson,J.D.ら、1992、“Recombinant DNA”、第2版、W.H.Freeman and Company、ニューヨーク
【非特許文献34】Ausbelら、1987、“Current Protocols in Molecular Biology”、増補9、1990、John Wiley and Sons、ニューヨーク州ニューヨーク
【非特許文献35】Dale,R.N.K.ら、1973、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、70:2238−2242
【非特許文献36】Hech,R.F.、1968、S.Am.Chem.Soc.、90:5518−5523
【非特許文献37】Barton,S.K.ら、1992、J.Am.Chem.Soc.、114:8736−8740
【非特許文献38】Johnson,R.T.ら、1983、Anal.Biochem.、133:125−131
【非特許文献39】Erickson,P.F.ら、1982、J.Immunol.Methods、51:241−249
【非特許文献40】Matthaei,F.S.ら、1986.Anal.Biochem.、157:123−128
【非特許文献41】Vander Ploeg,M.、Raap,A.K.、1988、“New Frontiers in Cytology”、Goerttler,K.、Feichter,GE.,Witte,S.編、13−21頁、Springer−Verlag、ニューヨーク
【非特許文献42】Merrifield,R.B.、1963、J.Amer.Soc.85:2149
【非特許文献43】“Basic and Clinical Immunology”、1991、Stites,D.F.およびTerr,A.I.編、Appleton and Lange、コネチカット州ノーウォーク、カリフォルニア州サンマテオ
【非特許文献44】KohlerおよびMilstein、1975、Nature、256:495−497
【非特許文献45】Campbell、“Monoclonal Antibody Technology,Production and Characterization of Rodent and Human Hybridomas”、Burdonら編、1985、“Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology”、第13巻、Elsevier Science Publishers、アムステルダム
【非特許文献46】Huseら、1989、Science、246:1275−1281
【非特許文献47】“Principles and Practice of Immunoassay”、1991、Christopher P.PriceおよびDavid,J.Neoman編、Stockton Press、ニューヨーク州ニューヨーク
【非特許文献48】Methods in Immunodiagnosis、第2版、RoseおよびBigazzi編、John Wiley and Sons、ニューヨーク、1980
【非特許文献49】Campbellら、Methods of Immunology、W.A.Benjamin社、1964
【非特許文献50】Oellirich,M.、1984、J.Clin.Chem.Clin.Biochem.、22:895−904
【非特許文献51】HarlowおよびLane編、1988、“Antibodies.A Laboratory Manual”、Cold Spring Harbor Press、Cold Spring Harbor、ニューヨーク
【非特許文献52】M.Bodanszky、1984、“Principles of Peptide Synthesis”、Springer Verlag、ニューヨーク州ニューヨーク
【非特許文献53】Parker,K.ら、1992、J.Immunol.、149:3580
【非特許文献54】Kubo,RTら、1994、J.Immunol.、152:3913−3924
【非特許文献55】Ruppert,J.ら、1993、Cell、74:929−937
【非特許文献56】Falk,K.ら、1991、Nature、351:290−296
【非特許文献57】Coulie,P.ら、1992、International Journal of Cancer、50:289−297
【非特許文献58】Mulligan,R.C.、1993、Science、260:926−932
【非特許文献59】Kawasaki,Y.ら、1989、J.Immunol.、142:2453−3461
【非特許文献60】Rosenberg,S.A.ら、1992、Human Gene Therapy、3:75−90
【非特許文献61】Rosenberg,S.A.ら、1992、Human Gene Therapy、3:57−73
【非特許文献62】Cabillyら、1987、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、84:3439
【非特許文献63】Nishimuraら、1987、Canc.Res.、47:999
【非特許文献64】Woodら、1985、Nature、314:466
【非特許文献65】Shawら、1988、J.Natl.Cancer Inst.、80:15553
【非特許文献66】Morrison S.、1985、Science、229:1202
【非特許文献67】Oiら、1986、BioTecniques、4:214
【非特許文献68】Jonesら、1986、Nature、321:552
【非特許文献69】Verhoeyanら、1988、Science、239:1534
【非特許文献70】Biedleretら、1988、J.Immunol.、141:4053
【非特許文献71】Goding,J.W.1983.Monoclonal Antibodies:Principles and Practice、PladermicPress社、ニューヨーク州ニューヨーク、pp.56−97
【非特許文献72】Vitettaら(1991)、“Biologic Therapy of Cancer”、De Vita VT、Hellman S.、Rosenberg,S.A.編、J.B.Lippincott社、フィラデルフィア
【非特許文献73】Larson,S.M.ら(1991)、“Biological Therapy of Cancer”、De Vita V.T.、Hellman S.、Rosenberg,S.A.編、J.B.Lippincot社、フィラデルフィア
【非特許文献74】Kwonら(1991)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:9228−9232
【非特許文献75】Mareshら(1994)DNA and Cell Biology 13:87−95
【非特許文献76】Boon,T(1992)、Advances in Cancer Research、58:177−210
【非特許文献77】Zemmour,J.ら(1992)Tissue Antigens 40:221−228
【非特許文献78】ASHI Laboratory Manual、第2版、1990
【非特許文献79】Cerundolo,V.ら(1990)Nature、345:449−452
【非特許文献80】Schwartzentruber,D.ら(1991)J.Immunol. 146:3674−681
【非特許文献81】Kawakami,Y.ら(1988)J.Exp.Med.168:2183−2191
【非特許文献82】Miki,T.ら(1989)Gene;83:137−146
【非特許文献83】Mikiら(1991)Proc.Nat.Acai.Sci.USA 88:5167−5171
【非特許文献84】Seed,B.およびAruffo,A.(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:3365−3369
【非特許文献85】Crowley,N.J.ら(1991),J.Immunol.146:1692−1699
【非特許文献86】Hunt,D.F.ら(1992)、Science 255:1261−1263
【非特許文献87】Nijman,H.W.ら(1993)、Eur.J.Immunol.23:1215−1219
【非特許文献88】Zakut,R.ら(1993),Cancer Res.53:5−8
【非特許文献89】Knuth.A.ら(1989)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:2804−2808
【非特許文献90】Wolfel,T.ら(1987),J.Exp.Med.170:797−810
【非特許文献91】Slingluff,C.L.ら(1993)、J.Immunol.150:2955−2963
【非特許文献92】Storkus,W.J.ら(1993)、J.Immunol.151:3719−3727
【非特許文献93】Nordlund,J.J.ら(1983)、J.Am.Acad.Dermatol.9:689−695
【非特許文献94】Bystryn,J−Cら(1987)、Arch.Dermatol.123:1053−1055
【非特許文献95】Richards,J.M.ら(1992)、J.Clin.Oncol.10:1338−1343
【非特許文献96】Cohen,T.ら(1990)Nucleic Acids Res.18:2807
【非特許文献97】Shilyansky,J.ら(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:2829−2833
【非特許文献98】Kim,R.およびWistow,G.J.(1992)Exp.Eye Res.55:657−662
【非特許文献99】Adema,G.I.ら(1993)Am.J.Pathology、143:1579−1585
【非特許文献100】Gown,A.M.ら(1986)Am J Pathol 123:195−203
【非特許文献101】Colombari,R.ら(1988)Virchows Archiv A Pathol Anat 413:17−24
【非特許文献102】Vennegoor,C.ら(1988)Am.J.Pathol.130:179−192
【非特許文献103】Vogel,A.M.およびEsclamado,R.M.(1988)Cancer Res.48:1286−1294
【非特許文献104】Schaumburg−Lever,G.ら(1991)J.Cutan.Pathol.18、432−435
【非特許文献105】Bakker,A.B.H.ら(1994)J.Exp.Med.179:1005−1009
【非特許文献106】Rosenberg,S.A.ら(1994)J.NCI.86:1159
【非特許文献107】Kubo,RTら(1994)J.Immunol.152:3193
【非特許文献108】Kawakami,Y.ら(1994)J.Exp.Med.180:347
【非特許文献109】Kawakami,Y.ら(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:6458
【非特許文献110】Sett A.ら(1994)Molecular Immunol.31:813
【非特許文献111】Kawakami,Y.(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:3515
【非特許文献112】Wolfel,T.(1994)Eur.J.Immunol.24:759
【非特許文献113】Cox,A.L.ら(1994).Science 264:716
【非特許文献114】Rivoltini,Lら(1995)J.Immunol.154:2257−2265
【非特許文献115】Falkら(1991)Nature.351:291
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
発明の概要
本発明は、一般的には、Tリンパ球によって認識されるメラノーマ抗原をコードする核酸配列(MART−1)、ならびにこれらの配列によってコードされるタンパク質およびペプチドに関する。さらに、本発明は、これらの核酸配列、タンパク質およびペプチドのバイオアッセイを提供する。また、本発明は、MART−1アミノ酸配列より誘導され、それらの免疫原性を増強するように修飾したペプチドを提供する。また、本発明は、ここに記載された核酸配列、タンパク質、ペプチドまたは修飾ペプチドの治療への使用を、提供する。
【0011】
本発明の一般的な目的は、MART−1メラノーマ抗原をコードする、実質的に精製され単離された核酸配列を提供することにある。
本発明のその他の目的は、ベクターおよびMART−1をコードする核酸配列の全体または部分からなる組換え分子を提供することにある。
【0012】
本発明のその他の目的は、MART−1をコードする核酸配列の全体または部分によってコードされる組換えタンパク質を作り出すことにある。
本発明のさらなる目的は、MART−1タンパク質、ペプチドまたはその部分と反応するモノクローナルまたはポリクローナル抗体を提供することにある。
【0013】
本発明の目的は、生体サンプル中のMART−1遺伝子またはMART−1 mRNAを検出する方法を提供することにある。
本発明のその他の目的は、生体サンプル中のMART−1タンパク質またはペプチドを検出する方法を提供することにある。
【0014】
本発明の目的は、ヒトの病気、特にメラノーマおよび転移性メラノーマの診断法を提供することにある。
本発明のさらなる目的は、MART−1をコードする核酸配列の全部または部分およびその対応タンパク質またはMART−1アミノ酸配列より誘導したペプチドからなる、予防的または治療的使用方法を提供することにある。
【0015】
また、本発明の目的は、MART−1をコードする核酸配列全体あるいは部分またはその対応タンパク質からなる、メラノーマを予防または治療するための、メラノーマワクチンを提供することからなる。
【0016】
本発明のさらなる目的は、ワクチンに用いるための、MART−1タンパク質配列より誘導した免疫原性ペプチドを提供することにある。
本発明のその他の目的は、MART−1タンパク質配列由来ペプチドの免疫原性を増加させるか、またはそれらペプチドのMHC分子との結合を強化することによって抗メラノーマ免疫応答の誘発を強化するように修飾した、MART−1タンパク質配列由来ペプチドを、ここに記載したような予防的または治療的方法に用いるために、提供することにある。
【0017】
さらに、本発明のその他の目的は、MART−1核酸配列の全体あるいは部分またはその対応タンパク質あるいはペプチド、および哺乳動物内でメラノーマ抗原に対する抗体産生を促進する能力を持つ少なくとも1つの免疫原性分子を含む、多価ワクチンを提供することにある。
【0018】
本発明のその他の目的は、MART−1核酸配列の全体あるいは部分またはその対応タンパク質を遺伝子治療のプロトコールに用いて、メラノーマを予防または治療する方法を提供することにある。
【0019】
本発明のさらなる目的は、ワクチンに用いるための、gp100メラノーマ抗原タンパク質配列に由来する免疫原性ペプチドを提供することにある。
本発明のさらなるその他の目的は、gp100メラノーマ抗原配列由来ペプチドの免疫原性を増加させるか、またはMHC分子との結合を強化することによって抗メラノーマ免疫応答の誘発を強化するように修飾したgp100メラノーマ抗原由来ペプチドを、ここに記載したような予防的治療的方法に用いるために、提供することにある。
【0020】
本発明のさらなるその他の目的は、ここに記載したワクチンを用いた、メラノーマの予防的治療的免疫化法を提供することにある。
本発明のさらなる目的は、免疫療法のための潜在的標的を構成するであろうメラノーマ抗原を同定する方法を提供することにある。
【0021】
本発明のさらなるその他の目的は、免疫療法に用いるための、MART−1配列またはgp100配列のいずれかに由来する免疫原性ペプチド候補を同定する方法を提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、MART−1抗原をコードするcDNAヌクレオチド配列および推定アミノ酸配列を示す。疎水性領域を下線で示す。
【図2】図2Aおよび図2Bは、TILによって認識されるMART−1ペプチドの滴定について示している。T2細胞を、様々な濃度の精製MART−1ペプチド、M9−1、M9−2、M9−3、M10−3、M10−4およびM10−5と共にインキュベートし、TILクローンA42(図2A)またはTIL細胞株TIL1235(図2B)による溶解を、E(エフェクター):T(標的)比をA42では20:1、TIL1235では40:1として、4時間−51Cr遊離細胞毒性アッセイによって測定した。ペプチドM9−2は、1ng/mlの濃度でT2細胞を感受性にした。精製したペプチドM10−4は、TIL1235によって認識されたが、A42によっては認識されなかった(M9−1 |−|、M9−2 ●−●、M9−3 ■−■、M10−2 ▲−▲、M10−3 ▼−▼、M10−4 ■−■、M10−5 +−+)。
【図3】図3Aは、自己由来111In標識TIL1200の養子免疫伝達を受けた後の転移性メラノーマ患者1200の放射性核種スキャンを示す。矢印は、左腿の転移病巣に該当するTIL蓄積領域の1つを示す。図3Bは、TIL1200+IL−2で治療後の皮下の転移腫瘍の退縮を示す。治療は0日に開始した。
【図4】図4Aおよび図4Bは、cDNA25の全長核酸配列を示す。開始コドンおよび停止コドンを下線で示す。
【図5】図5Aは、cDNA25の全長アミノ酸配列を示す。抗原ペプチドを下線で示す。図5Bは、全長cDNA25(cDNA25FL)、端を切り取った形のcDNA25(cDNA25TR)、Pme117、ME20およびgp100のアミノ酸配列の比較を示す(●は欠損を示し;−は同一を示す)。
【図6】図6A、図6Bおよび図6Cは、メラノーマ(図6A)および新生児メラノサイト細胞株(図6B)および様々な新鮮組織(図6C)(10〜20μgの全RNA)と、cDNA25プローブ(pCRII−cDNA25のSalI消化断片)およびβ−アクチンプローブ(クローンテック)とのノーザンブロット解析を示す。C32、586melメラノーマ細胞株およびNHEM529、NHEM530新生児メラノサイト細胞株は、非常に弱い陽性であった。
【図7】図7A〜図7Bは、gp100エピトープおよびエピトープ解析で試験したDNA断片の位置ならびにCTLによる認識を示す。図7A;エピトープ解析で試験した5つのDNA断片(D3、D5、D4、C4、25TR)を示す(−−−、同一アミノ酸)。同定されたエピトープの位置を下線で示す。図7B;HLA−A2.1cDNAと共に、pcDNA3プラスミド中のそれぞれのDNA断片をトランスフェクトしたCOS7細胞のCTL(620−1、620−2、660−1、1143、1200)による、IFN−γ分泌アッセイによる認識を示す(+、認識;−、非認識)。
【図8】図8A〜図8Dは、CTL溶解に対してHLA−A2.1+T2細胞を増感させることによるgp100の滴定を示す。ペプチドと共にあらかじめインキュベートしたT2細胞の溶解は、4時間−51Cr遊離細胞毒性アッセイで試験した。図8A;G9154(■)またはG10154(●)と共にインキュベートしたT2細胞のTIL1200による溶解。図8B;G9209(■)またはG10208(●)と共にインキュベートしたT2細胞のTIL620による溶解。図8C;G9280(■)と共にインキュベートしたT2細胞のTIL660−1による溶解。図8D;G10−5(■)と共にインキュベートしたT2細胞のTIL660−2による溶解。
【発明を実施するための形態】
【0023】
発明の詳細な説明
本発明をより完全に理解するために、以下の定義をここに記載する。核酸配列は、これに限定されるわけではないが、DNA、RNAまたはcDNAを含む。ここで用いられる核酸配列は、単離精製した核酸配列を指す。MART−1メッセンジャーRNA(mRNA)は、MART−1遺伝子の生成物である1種以上のRNA転写物を指す。ここで用いられている実質的に相同とは、図1に示すMART−1核酸配列(配列番号1)と任意のその他の核酸配列のそれとの間の実質的な一致を指す。実質的に相同とは、MART−1配列とその他の任意の核酸配列のそれとの間で、約50〜100%の相同性、望ましくは約70〜100%の相同性、最も望ましくは約90〜100%の相同性を意味する。さらに、ここで用いられる実質的に相同とは、図1に示すMART−1抗原のアミノ酸配列(配列番号2)と任意のその他のアミノ酸配列のそれとの間の実質的な一致をも指す。
【0024】
主要組織適合性複合体(MHC)は、ヒト白血球抗原(HLA)を含む、異なる種に記載される組織適合性抗原のシステムを包括して意味する一般的な名称である。
メラノーマという言葉は、限定するわけではないが、黒色腫、転移性黒色腫、メラノサイトまたはメラノサイト関連母斑細胞に由来する黒色腫、悪性黒色腫、黒色上皮腫、黒色肉腫、本来の位置(in situ)の黒色腫、表在拡大型黒色腫、結節型黒色腫、悪性黒子型黒色腫、末端黒子型黒色腫、侵襲性黒色腫、または家族性異型性母斑および黒色腫(FAM−M)症候群を含む。哺乳動物のそのようなメラノーマは、染色体異常、退行性成長発達障害、分裂促進剤、紫外線照射(UV)、ウイルス感染、遺伝子の不適切組織での発現、遺伝子発現の変化、または発癌剤に原因を有する場合もある。前述のメラノーマは、本出願に記載した方法に従って、診断、評価または治療することが出来る。
【0025】
非定型母斑とは、異常かつ前癌状態の特徴を持つ母斑を意味する。
メラノーマ抗原または免疫原とは、哺乳動物中の細胞性あるいは体液性免疫応答の原因となり得る、MART−1タンパク質の全てあるいはその部分またはMART−1タンパク質配列を基礎としたペプチドを意味する。そのような抗原はまた、MART−1タンパク質(配列番号2)の全て、一部または複数の部分を用いて免疫化された動物の抗体と反応するであろう。そのようなタンパク質またはペプチドは、本発明のMART−1核酸配列の全てまたは部分によってコードされるであろう。
【0026】
免疫原性ペプチドとは、哺乳動物中で細胞性あるいは体液性免疫応答の原因となり得る、MART−1タンパク質配列またはgp100タンパク質配列に由来するペプチドを意味する。そのようなペプチドは、ペプチドで免疫化された動物の抗体と反応するであろう。そのようなペプチドは、アミノ酸の長さが約5〜20、望ましくは約8〜15、最も望ましくは約9〜10である。
【0027】
当業者は、本発明のバイオアッセイが任意の脊椎動物種の生体サンプルまたは組織の分析に用い得ることを理解するであろう。望ましい実施態様では、哺乳類の生体サンプルまたは組織が分析される。
【0028】
組織は、単一細胞、臓器全体およびその部分を含むが、これらに限定されるわけではない。生体サンプルは、組織、哺乳動物組織の初代培養物、生体組織検査(生検)検体、病理検体、および検死検体を含むが、これらに限定されるわけではない。哺乳動物は、ヒト、サル、イヌ、ネコ、ネズミ、ラット、ブタ、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジおよびヤギを含むが、これらに限定されるわけではない。
【0029】
本発明は、T細胞によって認識される、新規のメラノーマ抗原をコードする核酸配列を提供する。この新規メラノーマ抗原は、MART−1(Melanoma Antigen Recognized by T−cells−1)と呼ぶ。MART−1は、いかなる既知のメラノーマ抗原とも意味のある相同性を示さず、それ故新しいメラノーマ抗原であると言える。MART−1抗原は、アミノ酸27〜47位(配列番号2)とそれに続く3つのアルギニン残基からなる高疎水性領域を含み、この配列は膜貫通タンパク質を示唆している。タンパク質全体とは明らかな相同性は存在しなかったが、以前にネズミのナチュラルキラー細胞表面タンパク質NKR−P1(非特許文献21)として認知された、II型膜タンパク質と37%の同一性を示す、27アミノ酸からなるセグメント(アミノ酸57〜83位;配列番号2)が存在する。MART−1は、多くのI型膜タンパク質の特徴であるリーダータンパク質を含まない(非特許文献22)。
【0030】
MART−1RNAの発現は、新鮮なおよび培養したメラノーマおよびメラノサイト細胞株およびヒト網膜に限定されるようであり、この発現は、試験したその他のいかなる新鮮なまたは培養した組織またはその他の腫瘍組織にも見出されなかった。MART−1のcDNA配列を図1(配列番号1)に示す。また、MART−1タンパク質の推定アミノ酸配列を図1(配列番号1)に示す。
【0031】
図1(配列番号1)に示すMART−1核酸配列は、本発明の望ましい実施態様を表している。しかしながら、遺伝子コードの縮重によって、図1(配列番号1)に示すcDNA配列を変化させても、依然としてMART−1タンパク質抗原をコードすることの出来るDNA配列が結果として得られるであろうことは、当業者に理解される。それ故、そのようなDNA配列は、図1(配列番号1)に示した配列と機能的に等価であり、本発明の内に包含されるであろう。さらに、当業者は、図1(配列番号1)に示すMART−1核酸配列が所定の種の中で対立遺伝子変化を自然に起こすことを理解するであろう。これらの変化もまた、本発明に包含されるであろう。
【0032】
予想されるMART−1抗原は、約13kDの118アミノ酸からなるタンパク質である。本発明は、さらに、本発明のMART−1抗原またはタンパク質と実質的に同一の機能を持つ、MART−1タンパク質またはペプチドまたはその類似体を含む。そのようなタンパク質またはポリペプチドは、タンパク質断片、またはMART−1タンパク質の置換、付加、あるいは欠損変異体を含むが、これらに限定されるわけではない。また、本発明は、MART−1抗原と実質的に相同であるタンパク質またはペプチドを包含する。実質的に相同とは、MART−1と任意のその他のアミノ酸配列またはタンパク質またはペプチドとの間の、約50〜100%の相同性、望ましくは約70〜100%の相同性、最も望ましくは約90〜100%の相同性を意味する。
【0033】
「類似体」という言葉は、具体的にここに示したMART−1配列(図1、配列番号1)と実質的に同一なアミノ酸残基配列を持つ任意のポリペプチドであって、その1つ以上の残基が機能的に同様の残基と保存的に置換され、かつここに記載したようなMART−1抗原の機能的態様を示している、前記のポリペプチドを含む。保存的置換の例としては、イソロイシン、バリン、ロイシンまたはメチオニンのような非極性(疎水性)残基の1つをそれ以外の非極性残基と置換すること、アルギニンとリジンとの間、グルタミンとアスパラギンとの間、グリシンとセリンとの間、のように、極性(親水性)残基の1つをもう1つと置換すること、リジン、アルギニンまたはヒスチジンのような塩基性残基の1つをそれ以外の塩基性残基と置換すること、アスパラギン酸またはグルタミン酸のような酸性残基の1つをそれ以外の酸性残基と置換することが含まれる。
【0034】
また「保存的置換」という語句は、非誘導体化残基の代わりに化学的に誘導体化した残基を用いることを含む。「化学的誘導体」とは、官能基側鎖の反応によって化学的に誘導体化した1つ以上の基を持つ対象ポリペプチドを指す。そのような誘導体化分子の例としては、例えば、遊離アミノ基を誘導体化して、アミン塩酸塩、p−トルエン硫酸基、カルボベンゾキシ基、t−ブチルオキシカルボニル基、クロロアセチル基またはホルミル基を形成するようなそれらの分子が含まれる。遊離カルボキシル基を誘導体化して、塩、メチルおよびエチルエステルあるいはその他の型のエステルまたはヒドラジンを形成させても良い。遊離水酸基を誘導体化して、o−アシルまたはo−アルキル誘導体を形成させても良い。ヒスチジンのイミダゾール窒素を誘導体化して、N−im−ベンジルヒスチジンを形成させても良い。また、化学的誘導体としては、20の標準アミノ酸の1つ以上の自然発生アミノ酸誘導体を含む、タンパク質またはペプチドを含む。例えば:4−ヒドロキシプリンはプリンと置換されて良く;5−ヒドロキシリジンはリジンと置換されて良く;3−メチルヒスチジンはヒスチジンと置換されて良く;ホモセリンはセリンと置換されて良く;またオルニチンはリジンと置換されて良い。また、必要な活性が維持される限り、本発明のタンパク質またはポリペプチドは、その配列がMART−1のDNAにコードされるポリペプチドの配列と関連する、1つ以上の残基の付加および/または欠損を持つ任意のポリペプチドを含む。
【0035】
また、本発明は、MART−1核酸配列(配列番号1)の全体または部分およびベクターからなる組換えDNA分子を提供する。本発明で用いるに適した発現ベクターは、核酸配列に機能し得るように結合させた少なくとも1つの発現制御エレメントからなって良い。発現制御エレメントは、ベクター中に挿入され、核酸配列の発現を制御調節する。発現制御エレメントの例として、lacシステム、ファージλのオペレータおよびプロモーター領域、酵母プロモーター、ならびにポリオーマ、アデノウイルス、レロトウイルスまたはSV40から誘導したプロモーターが含まれるが、これらに限定されるわけではない。さらに、望ましいかまたは必要とされる機能エレメントには、リーダー配列、終止コドン、ポリアデニル化シグナル、ならびに宿主システム中で核酸配列を適切に転写し次いで翻訳するに必要なまたは望ましいその他の任意の配列が含まれるが、これらに限定されるわけではない。当業者は、必要または望ましい発現制御エレメントの適切な組み合わせは、選択した宿主のシステムに依存することを理解するであろう。さらに、発現ベクターは、宿主システム中で核酸配列を含む発現ベクターを伝達し次いで複製するに必要なエレメントをさらに含むべきであることを理解するであろう。そのようなエレメントの例としては、複製起源および選択マーカーが含まれるが、これらに限定されるわけではない。さらに、当業者は、そのようなベクターが従来の方法を用いて容易に構築され(非特許文献23)、または商品として入手できることを理解するであろう。
【0036】
本発明のその他の態様は、MART−1核酸配列の全体または部分を含む組換え発現ベクターが挿入された宿主生物体に関する。本発明のMART−1核酸配列で形質転換される宿主細胞には、動物、植物、昆虫および酵母細胞のような真核生物、ならびに大腸菌のような原核生物が含まれる。遺伝子を運ぶベクターを細胞中に導入する手段としては、DEAEデキストラン法、リポフェクション、リン酸カルシウム法あるいはその他の当業者に既知の方法(非特許文献24)を用いたマイクロインジェクション、エレクトロポレーション、形質導入、またはトランスフェクションが含まれるが、これらに制限されるわけではない。
【0037】
望ましい実施態様では、真核生物細胞内で機能する真核生物発現ベクターが用いられる。そのようなベクターの例としては、これらに限定されるわけではないが、レトロウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、鶏痘ウイルスベクター、細菌発現ベクター、pcDNA3(インビトロジェン、カリフォルニア州サンディエゴ)のようなプラスミド、またはバキュウロウイルス伝達ベクターが含まれる。望ましい真核生物細胞株には、COS細胞、CHO細胞、HeLa細胞、NIH3T3細胞、293細胞(ATCC#CRL1573)、T2細胞、樹状突起細胞、または単核細胞が含まれるが、これらに限定されるわけではない。特に望ましい実施態様では、組換えMART−1タンパク質発現ベクターは、MART−1タンパク質に固有なプロセシングおよび修飾を確実にするために、NIH3T3細胞、COS細胞、CHO細胞、293細胞(ATCC#CRL1573)、T2細胞、樹状突起細胞、または単核細胞のような哺乳動物細胞に導入される。別の実施態様では、MART−1 DNAが、COS7(非特許文献25)中に導入される。適当な細胞の選択は、当業者の内にある。
【0038】
ある実施態様では、発現した組換えMART−1タンパク質は、MART−1タンパク質に特異的な抗体を用いたクマシーブルー染色およびウエスタンブロッティングを含むこの技術分野で既知の方法に従って、検出されるであろう。
【0039】
さらなる実施態様では、宿主細胞によって発現した組換えタンパク質は、粗溶解物として得られるか、または分別沈殿、モレキュラーシーブクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、等電点電気泳動、ゲル電気泳動、親和性および免疫親和性クロマトグラフィーおよびその類似物などを含む、この技術分野で既知の標準的なタンパク質精製法によって精製することが出来る(非特許文献23)。免疫親和性クロマトグラフィーの場合には、組換えタンパク質は、MART−1タンパク質に特異的な抗体を結合させた樹脂を含むカラムを通過させることによって精製されるであろう(非特許文献23)。
【0040】
本発明の核酸配列またはその部分は、正常なおよび病的な組織中でのMART−1遺伝子発現を検出するプローブとして有用である。それ故、本発明のその他の態様は、(a)本発明の核酸配列の全体または部分を、生体サンプルと、核酸配列とmRNAとの間で複合体を形成させるような条件下で接触させ、(b)該複合体を検出し、さらに(c)該mRNAのレベルを定量する:工程からなる、生体サンプル中のMART−1タンパク質をコードするmRNAを検出するバイオアッセイに関する。
【0041】
RNAは、全細胞RNAとして、またはポリ(A)RNAとして単離することが出来る。全細胞RNAは、当業者に既知のいろいろな方法によって単離できる(非特許文献23)。そのような方法には、分別沈殿によるRNA抽出(非特許文献26)、有機溶媒によるRNA抽出(非特許文献27)、および強変性剤によるRNA抽出(非特許文献28)が含まれる。ポリ(A)RNAは、オリゴd(T)カラムを用いた親和性クロマトグラフィー(非特許文献29)によって、全細胞RNAから選択することが出来る。工程(c)の細胞内mRNAレベルを定量する方法の例としては、これに限られるわけではないが、ノーザンブロッティング(非特許文献30)、ドットスロット−ハイブリダイゼーション(非特許文献31)、フィルターハイブリダイゼーション(非特許文献32)、RNase防御(非特許文献24)、ポリメラーゼ連鎖反応(非特許文献33)および核ランオフアッセイ(非特許文献34)が含まれる。
【0042】
また、バイオアッセイの工程(b)の複合体の検出は、様々な技術によって実行することが出来る。シグナル増幅による複合体の検出は、放射性標識および酵素を含むいくつかの従来の標識技術によって成し遂げることが出来る(非特許文献24、非特許文献23)。また、放射性標識キットは、商品として入手することが出来る。バイオアッセイの工程(c)でプローブとして用いられるMART−1核酸配列は、RNAであっても、またはDNAであって良い。DNA配列を標識する望ましい方法は、クレノウ酵素またはポリヌクレオチドキナーゼを用い、32Pで標識する方法である。RNAまたはリボプローブ配列を標識する望ましい方法は、RNAポリメラーゼを用い、32Pまたは35Sで標識する方法である。さらに、ピリミジンおよびプリン環に化学基を付着させる方法(非特許文献35、非特許文献36)、化学蛍光によって検出する方法(非特許文献37)およびビオチン化した核酸プローブを用いる方法(非特許文献38、非特許文献39、非特許文献40)、および商品として入手できる製品を用いた蛍光による検出方法を含む、放射能によらないシグナル増幅技術が知られている。
【0043】
このバイオアッセイ中で用いることの出来る生体サンプルの例としては、これらに限られるわけではないが、哺乳動物の初代培養物、メラノサイト細胞株のような哺乳動物の継代細胞株、皮膚または網膜のような哺乳動物の臓器、組織、生体組織検査検体、新生物、病理検体、および検死検体が含まれる。
【0044】
望ましい実施態様では、実施例1に例示されているように、32P放射性標識MART−1プローブが用いられる。望ましいMART−1プローブは、図1の全長cDNA(配列番号1)である。おおよそ1.6kbのcDNA(図1;配列番号1)は、ベクター内へクローン化され、得られたプラスミドは、American Type Culture Collection(ATCC)、12301 Parklawn Drive、メリーランド州ロックビル 20852、米国に1994年4月14日に寄託され、ATCC受託番号75738を付与された。全長MART−1核酸配列は、pCRIIプラスミドをHindIIIおよびXhoI制限酵素で消化することによって単離することが出来る。この1.6kbの核酸配列は、次に、プローブとして用いることが出来る。このプローブは、様々な組織あるいは生体サンプルから単離された全RNAまたはポリARNA中のMART−1 mRNAの検出に用いられる。
【0045】
その他の実施態様では、図1(配列番号1)のMART−1配列を基にしたオリゴヌクレオチド対の組み合わせは、生体サンプル中のMART−1 mRNAを検出するためのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プライマーとして用いられる。これらのプライマーは、選択されたRNA核酸配列を増幅するための逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)工程後の方法中で用いることが出来、その詳細は、非特許文献23の15章に記載されている。オリゴヌクレオチドは、様々な製造者によって販売されている自動装置によって合成することが出来、あるいは、本発明の核酸配列を基にして商品として製造することもできる。当業者は、サンプル中のMART−1 RNAを増幅させるための、MART−1核酸配列を基にしたPCRプライマーを選択する方法を知るであろう。
【0046】
本発明のMART−1核酸配列またはその部分(図1:配列番号1)は、正常または異常な哺乳動物組織中のMART−1遺伝子の変化を検出するのに有用である。変化とは、MART−1遺伝子配列の付加、欠失、置換あるいは重複、またはMART−1遺伝子配列の遺伝子増幅を意味する。それ故、本発明のその他の態様は、(a)本発明の核酸配列の全体または部分を、生体サンプルから単離したゲノムDNAと、該核酸配列と該ゲノムDNAの間で複合体が形成されるような条件下で接触させ、(b)該サンプルを検出し、さらに、(c)対照サンプルと比較することによって、該MART−1遺伝子中の変化を決定する:工程からなる、生体サンプル中のMART−1遺伝子の変化を検出するためのアッセイに関する。
【0047】
生体サンプルからDNAを単離し、遺伝子中の変化を検出し、MART−1核酸プローブとゲノムDNA配列との複合体を検出するための、標準的方法は、非特許文献24、および非特許文献23のようなマニュアルに提供されている。
【0048】
また、本発明のMART−1核酸配列(図1;配列番号1)は、他の種のMART−1相同体を単離するプローブとして用いることが出来る。望ましい実施態様では、MART−1 cDNA(図1;配列番号1)は、哺乳動物cDNAライブラリーのスクリーニングに用いられ、陽性クローンを選択し、配列決定を行う。cDNAライブラリーを構築できる組織源の例としては、皮膚、網膜、メラノサイト、新生児の皮膚および胚が含まれるが、これらに限られるわけではない。望ましくは、哺乳動物のライブラリーは、プローブとしてMART−1 cDNA(図1;配列番号1)を用いてスクリーニングされる。当業者は、相同体の検出に用いられるに適当なハイブリダイゼーション条件を理解するであろう。核酸のハイブリダイゼーション、ライブラリーの構築およびクローニング技術のための従来からの方法は、非特許文献24および非特許文献23に記載されている。
【0049】
MART−1タンパク質の全体またはその部分は、メラノーマ細胞上に提示される抗原であることが知られている。それ故、本発明のその他の態様では、病気に苦しむ哺乳動物から単離した生体サンプル中のMART−1 RNAまたはMART−1 mRNAのレベルの変化の検出に用いられるMART−1核酸プローブを提供する。そのような病気の例としては、これらに限られるわけではないが、メラノーマが含まれる。MART−1 mRNAレベルでの変化とは、対照となるサンプルと比較したRNAレベルの増加あるいは減少、または対照サンプルと比較したMART−1 mRNAの出現あるいは消滅を意味する。MART−1 mRNAの変化の検出は、病状の診断または評価を可能にするであろう。それ故、MART−1 mRNAレベルの変化は、罹患した哺乳動物の予後を予想するであろう。
【0050】
その他の実施態様では、本発明の核酸は、哺乳動物組織のin situハイブリダイゼーションに用いられ、組織内でのMART−1遺伝子発現の正確な位置または細胞内での位置を決定することが出来る。MART−1核酸配列を標識する望ましい方法は、SP6ポリメラーゼを用いた生体外での転写による35S標識RNAプローブを合成することである。MART−1プラスミド(ATCC受託番号75738)では、センス鎖はT7プロモーターの制御下にあり、アンチセンス鎖はSP6プロモーター制御下にある。プローブは、おおよそ長さ400〜200塩基対のプローブに加水分解されることが望ましい。組織をin situハイブリダイゼーションのために調製し、プローブを合成し、シグナルを検出する従来の方法は、非特許文献23の14章および非特許文献41に見出すことが出来る。次いで、プローブを哺乳動物の組織切片と接触させ、そのままの位置で、従来の方法によって解析が行われる。用い得る組織の例としては、哺乳動物の胚、皮膚、リンパ節および網膜のような哺乳動物成体組織、生検検体、病理検体および検死検体が含まれるが、これらに限られるわけではない。望ましい実施態様では、MART−1 in situハイブリダイゼーション用プローブは、侵襲性初期メラノーマの病変組織中でMART−1 RNAの発現を評価してメラノーマ病変の急激な垂直増殖期を特徴付けるために、また組織内での病変の辺縁を評価するために用いられても良い。
【0051】
本発明のさらなるその他の実施態様では、MART−1(配列番号1)核酸配列の全体またはその部分は、トランスジェニック動物を作り出すために用いることが出来る。望ましくは、MART−1遺伝子は、胚形成期、望ましくは1細胞期、一般的には8細胞期より以前に、動物または動物の原細胞に導入される。MART−1遺伝子を持つトランスジェニック動物を作り出す手段はいくつかある。その1つの方法は、MART−1配列の全体または部分を持つレトロウイルスを使用することからなる。トランス遺伝子を含むレトロウイルスは、トランスフェクションによって胚期動物内に導入される。その他の方法は、胚内にトランス遺伝子を直接注入することを含む。さらなるその他の方法としては、当業者に既知の胚幹細胞法または相同組換え法が用いられる。MART−1トランス遺伝子を導入できる動物の例としては、霊長類、マウス、ラットまたはその他の齧歯類が含まれるが、これらに限られるわけではない。そのようなトランスジェニック動物は、メラノーマ研究用生体モデルとして、また、メラノーマの診断法または治療法を評価するために有用であろう。
【0052】
さらに、本発明は、MART−1タンパク質、または、図1(配列番号2)に定義したアミノ酸配列あるいはその特有部分を持つ、ペプチドまたは修飾ペプチドまたはその類似体と反応するひとつの抗体または複数の抗体類からなる。本発明の実施態様では、抗体は、起源的にモノクローナルまたはポリクローナルである。抗体を産生するために用いられるMART−1タンパク質またはペプチドは、天然物または組換え体を源にして良く、化学合成によって合成しても良い。天然MART−1タンパク質は、哺乳動物の生体サンプルから単離することが出来る。生体サンプルには、新鮮なメラノーマ、皮膚、網膜のような、哺乳動物組織、メラノーマ培養物あるいは培養メラノサイトのような哺乳動物細胞の初代培養物または継代培養物が含まれるが、これらに限られるわけではない。天然MART−1タンパク質は、組換えタンパク質の単離法として上に記載した方法と同一の方法で単離しても良い。組換えMART−1タンパク質またはペプチドは、従来の方法で産生して良く、また従来の方法で精製しても良い。合成MART−1ペプチドは、本発明の推定アミノ酸配列(図1;配列番号2)を基にして特別注文するかあるいは商品として製造するか、または当業者に既知の方法(非特許文献42)によって合成しても良い。MART−1ペプチドの例としては、AAGIGILTV(M9−2;配列番号4)、EAAGIGILTV(M10−3;配列番号17)およびAAGIGILTVI(M10−4;配列番号18)(ペプチドは、1文字アミノ酸コードで表す)が含まれるが、これらに限られるわけではない。最も望ましいペプチドは、AAGIGILTV(配列番号4)である。
【0053】
別の方法として、MART−1タンパク質配列に由来するペプチドは、ペプチドが存在しているMHC分子とペプチドとの結合を強化することによってそれらの免疫原性を増加させるように修飾しても良い。用いられて良いそのような修飾MART−1ペプチドの例は、表14に示すペプチドであるが、これらに限定されるわけではない。望ましい実施態様では、MHCクラスIとの結合を強化するように修飾されたMART−1ペプチドは、AAGIGILTV(配列番号4)である。修飾ペプチドの例としては、ALGIGILTV(M9−2−2L)(配列番号50)、WAGIGILTV(M9−2−1W)(配列番号53)、FAGIGILTV(M9−2−1F)(配列番号54)およびAAYIGILTV(M9−2−3Y)(配列番号58)が挙げられる。ペプチドまたは修飾ペプチドは、ペプチドの抗原性を強化するためにキャリヤー分子と結合させても良い。キャリヤー分子の例としては、これらに限定されるわけではないが、ヒトアルブミン、ウシアルブミン、リポタンパク質およびキーホールリンペットヘモシアニン(非特許文献43)が含まれる。
【0054】
本発明の検出方法として用いられる典型的な抗体分子は、完全な免疫グロブリン分子、実質的に完全な免疫グロブリン分子、または、抗原結合部位を含む免疫グロブリン分子の部分であり、F(ab)、F(ab’)、F(ab)およびF(V)としてこの技術分野で既知のそれら免疫グロブリン分子の部分を含む。ポリクローナルまたはモノクローナル抗体は、この技術分野で既知の方法に従って産生して良い(非特許文献44;非特許文献45)。また、抗体または抗原結合断片は、遺伝子工学によって作り出されても良い。大腸菌内で重鎖と軽鎖の両方の遺伝子を発現させる技術は、PCT特許出願:特許文献2および特許文献3、ならびに非特許文献46の主題である。
【0055】
本発明の抗体は、天然のまたは変性させたMART−1タンパク質、ペプチドあるいはその類似体、または修飾ペプチドあるいはその類似体と反応するであろう。抗体が用いられる具体的なイムノアッセイは、抗体に望ましいように行われるであろう。抗体は、MART−1タンパク質あるいはその部分に対して、またはMART−1アミノ酸配列に相同な合成ペプチドに対して産生されて良い。
【0056】
1つの実施態様では、本発明の抗体は、生体サンプル中の新規MART−1タンパク質を検出するためにイムノアッセイに用いられる。この方法では、本発明の抗体を生体サンプルと接触させ、MART−1抗原と抗体との間の複合体の形成を検出する。本発明のイムノアッセイは、ラジオイムノアッセイ、ウエスタンブロットアッセイ、免疫蛍光アッセイ、酵素イムノアッセイ、化学蛍光アッセイ、免疫組織化学アッセイおよびその類似アッセイなどであって良い(非特許文献47、非特許文献23)。この技術分野で既知のELISAの標準技術は、非特許文献48および非特許文献49に記載されており、これらの両方はここに援用される。そのようなアッセイは、以下に記載されている、直接的、間接的、競合的または非競合的イムノアッセイであって良い(非特許文献47、非特許文献50)。そのような検出アッセイに適当な生体サンプルは、哺乳動物組織、メラノーマおよびメラノサイト細胞株、皮膚、胚、リンパ節、病理検体、検死検体、および生検検体を含む。タンパク質は、以下に記載の従来の方法で、生体サンプルから単離されて良い(非特許文献23)。
【0057】
本発明の抗体は、それ故、病気または疾病に苦しむ哺乳動物から単離した生体サンプル中の、MART−1抗原またはMART−1抗原の発現レベルの変化を検出するイムノアッセイに用いることが出来る。生体サンプルの例としては、これらに限定されるわけではないが、哺乳動物組織、生検組織サンプル、メラノーマおよびリンパ節生検サンプル、病理および組織サンプルが含まれる。これらのイムノアッセイによって評価できる病気の例としては、これらに限定されるわけではないが、メラノーマおよびメラノーマが次に転移する部位の組織が含まれる。発現レベルの変化とは、対照サンプルと比較してのMARTタンパク質あるいはその部分の増加または減少を意味する。また、変化とは、MART−1タンパク質の置換、欠失または付加変異を包含する。そのような変異は、MART−1タンパク質に特異的なエピトープと反応することが知られている本発明の抗体を用いることによって、また対照と比較してエピトープが存在するか否かを決定することによって決定することが出来る。それ故、本発明の抗体は、病気に罹った哺乳動物を診断、評価、予知するためのイムノアッセイに用いることが出来る。
【0058】
望ましい実施態様では、本発明のMART−1抗体は、免疫細胞化学の手法を用いてメラノーマに苦しむ哺乳動物の組織生検からMART−1抗原の存在を評価するために用いられる。そのような病気組織中のMART−1抗原の詳述な評価は、病気に苦しむ哺乳動物の病気の進行を予知するために用いることが出来る。具体的には、MART−1抗体は、メラノーマ病変の急激な垂直増殖期を特徴づけるために用いることが出来る。免疫組織化学のための従来の方法は、非特許文献51および非特許文献23に記載されている。
【0059】
その他の実施態様では、本発明の抗体は、MART−1タンパク質またはその部分を精製するために用いられて良い。免疫親和性クロマトグラフィーは、当業者に既知の従来の方法によって行うことが出来る(非特許文献23)。
【0060】
その他の望ましい実施態様では、MART−1タンパク質を特異的に認識する抗体を含むウサギの抗血清は、ウエスタンブロット解析で該タンパク質を検出するために用いられる。そのような抗血清は、MART−1タンパク質の全体あるいはその1つあるいはいくつかの部分、またはMART−1タンパク質配列から合成したペプチドに対するものである。望ましくは、MART−1の推定アミノ酸配列に由来するMART−1合成ペプチドが用いられる(図1、配列番号2)。別の方法として、修飾MART−1ペプチドを用いても良い。ペプチドは、自動ペプチド合成機を用いて標準方法で合成され、実施例2に記載したような高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて精製される。精製したペプチドは、非特許文献52に記載のように、担体に結合させて良い。従来の方法を用いて、担体と結合させたMART−1タンパク質またはペプチドでウサギを免疫して良い。望ましくは、アジュバンド中、約0.1〜約10mgの抗原を用いて良く、最も望ましくは、アジュバンド中、約1mgの抗原を用いて良い。動物は同様の効能促進剤の投与を受け、抗血清力価はELISAアッセイによって評価される。抗血清の満足できるレベルは、抗ペプチド抗体力価がプラトーに達する時点で得られる。この抗体は、上記の標準イムノアッセイに用いることが出来る。
【0061】
Tリンパ球は、MHC分子と結合したペプチド断片の形でMHCクラスIまたはクラスII分子と関連する抗原を認識する。与えられたMHC対立遺伝子と結合するペプチドの程度は、ペプチド内での特定位置のアミノ酸による(非特許文献53、非特許文献54、非特許文献55、非特許文献56、これらはそれぞれここに援用される)。それ故、本発明のその他の実施態様は、ペプチドの関連するMHC分子とペプチドとの結合を強化することによって、免疫原性を増加させるように修飾した、MART−1タンパク質配列(図1;配列番号2)由来ペプチドに関する。例として、修飾は、所定免疫原性ペプチド配列内のアミノ酸の置換、欠失あるいは付加、所定免疫原性ペプチド配列内に存在するアミノ酸変異または所定免疫原性ペプチド配列内の存在するアミノ酸の誘導体化を含んで良い。免疫原性ペプチド配列からなる任意のアミノ酸は、本発明に従って修飾されて良い。望ましい実施態様では、所定免疫原性ペプチド配列内で、少なくとも1つのアミノ酸が置換される。任意のアミノ酸が、免疫原性ペプチド配列内の所定アミノ酸を置換するために用いられて良い。修飾ペプチドとは、修飾され、T細胞に存在する場合に関連するMHC分子との結合強化を示す、任意の免疫原性MART−1ペプチドを含むことを意図する。
【0062】
例として、HLA−A2対立遺伝子は、9または10アミノ酸からなるペプチドを結合する。結合を強化するために変えても良いペプチドの位置の例としては、ペプチドの第1位、第2位、第3位、および最終位が含まれるが、これらに限定されるわけではない。免疫原性ペプチド配列のこれらの位置を置換するために、任意のアミノ酸が用いられて良い。HLA−A2との結合を強化するために、ペプチドの第2位のアミノ酸は疎水性の脂肪族アミノ酸であることが望ましい。第2位で用いられて良いアミノ酸の例としては、これらに限られるわけではないが、ロイシン、メチオニン、アラニン、イソロイシン、バリン、スレオニンまたはグリシンが含まれる。望ましくは、ロイシンまたはメチオニンがペプチドの第2位に見出される。ペプチドの最後のアミノ酸(ペプチドの長さによって9位か10位のアミノ酸)は、疎水性脂肪族アミノ酸が望ましい。ペプチドの最後の位置に用いても良いアミノ酸の例としては、バリン、メチオニン、ロイシン、アラニン、イソロイシン、スレオニンまたはグリシンが含まれるが、これらに限られるわけではない。望ましくは、バリンがペプチドの最後の位置に見出される。また、ペプチドの第1位および第3位のアミノ酸は、MHCクラスI分子とペプチドの結合を強化するために修飾されても良い。ペプチドの第1位および第3位のアミノ酸は、任意のアミノ酸であって良い。望ましくは、第1位および第3位のアミノ酸は、疎水性の脂肪族アミノ酸または芳香族アミノ酸である。これらの位置に用いられて良いアミノ酸の例としては、ロイシン、メチオニン、バリン、アラニン、イソロイシン、スレオニン、グリシン、トリプトファン、フェニルアラニン、チロシン、セリン、アスパラギン酸またはリジンが含まれるが、これらに限られるわけではない。修飾されて良いMART−1ペプチドの例としては、これらに限定されるわけではないが、AAGIGILTV(配列番号4)、EAAGIGILTV(配列番号17)およびAAGIGILTVI(配列番号18)(ペプチドは1文字アミノ酸コードで表されている)が含まれる。例として、免疫原性MART−1ペプチドAAGIGILTV(配列番号4)は、次式XIGILTX(配列番号122)、に従って修飾されて良い:
式中、Xは、任意のアミノ酸、望ましくは任意の疎水性脂肪族アミノ酸、または芳香族アミノ酸であって良い。用いて良いアミノ酸の例としては、これらに限られるわけではないが、アラニン、トリプトファン、フェニルアラニン、チロシン、リシン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、スレオニン、グリシンまたはセリンが含まれる。
は、任意の疎水性アミノ酸、望ましくは脂肪族疎水性アミノ酸であって良い。用いて良いアミノ酸の例としては、これらに限られるわけではないが、ロイシン、メチオニン、イソロイシン、バリン、スレオニン、アラニンまたはグリシンが含まれる。
は、任意のアミノ酸、望ましくは、任意の疎水性の脂肪族アミノ酸、または芳香族アミノ酸であって良い。用いて良いアミノ酸の例としては、これらに限られるわけではないが、トリプトファン、フェニルアラニン、チロシン、リジン、アスパラギン酸、セリン、アラニン、グリシン、イソロイシン、バリン、またはスレオニンが含まれる。
は、任意の疎水性アミノ酸、望ましくは疎水性の脂肪族アミノ酸であって良い。用いられて良いアミノ酸の例としては、これらに限られるわけではないが、バリン、ロイシン、イソロイシン、アラニン、スレオニン、またはグリシンが含まれる。
【0063】
作り出されて良い修飾AAGIGILTV(配列番号4)ペプチド配列の例として、表14(実施例5)にペプチドを示すが、これらに限られるわけではない。
さらに、本発明は、修飾したMART−1アミノ酸配列(図1;配列番号2)に由来するこれらの免疫原修飾ペプチドの類似体を含む。類似体という言葉は、これらの修飾ペプチドの機能的態様を示す任意のペプチドを含むことを意図する。類似体という言葉は、また、上記のようなこれらの修飾ペプチドの保存的置換または化学的誘導体を含む。これらの修飾ペプチドは、従来の方法に従って、合成によってまたは組換えによって作り出されて良い。
【0064】
組換えあるいは天然のMART−1タンパク質、ペプチドあるいはその類似体、または修飾MART−1ペプチドあるいはその類似体は、予防または治療のためのワクチンとして用いられて良い。治療目的で提供される場合、ワクチンは、メラノーマのいかなる存在にも先だって提供される。MART−1ワクチンの予防投与では、哺乳動物内のメラノーマを防ぐかまたは減退させるために供されるべきである。望ましい実施態様では、メラノーマに罹る危険性の高い哺乳動物、望ましくはヒトは、本発明のワクチンで予防的に処置される。そのような哺乳動物の例としては、これらに限られるわけではないが、メラノーマの家族歴を持つヒト、異型性母斑歴を持つヒト、FAM−M症候群歴を持つヒト、または以前に切除したメラノーマに苦しみ、それ故再発の危険性のあるヒトが含まれる。治療目的で提供される場合、ワクチンは、メラノーマまたは転移性メラノーマ上に存在する腫瘍抗原への患者自身の免疫応答を強化するために提供される。免疫原として作用するワクチンは、細胞、組換え発現ベクターをトランスフェクトした細胞からの細胞溶解物、MART−1組換え発現ベクターをトランスフェクトした細胞からの細胞溶解物、または発現したタンパク質を含む培養上清であって良い。別の方法では、免疫原は、部分的にあるいは実質的に精製した組換えMART−1タンパク質、ペプチドあるいはその類似体、または修飾したペプチドあるいはその類似体である。タンパク質またはペプチドは、リポタンパク質と結合させるか、またはリポゾームの形であるいは補助剤と共に投与されて良い。
【0065】
免疫原は純粋なまたは実質的に純粋な形で投与することが出来るが、医薬組成物、調合物または調製物として存在することが望ましい。
本発明の調合物は、獣医学およびヒトへの両方に用いられるが、1つ以上の医薬として許容可能な担体、および所望するならばその他の治療成分と共に、上記のような免疫原からなる。担体は、調合物のその他の成分と適合し、その宿主に有害でないという意味で「許容可能」であらねばならない。調合物は、便宜上、単位投与の形で存在して良く、医薬分野で熟知されている任意の方法によって調製されて良い。
【0066】
すべての方法は、1つ以上の補助成分を構成する担体と共に活性成分を組み合わせの中に持ち込む工程を含む。一般的には、調合物は、液体担体または微細に分割される固体担体またはその両方と共に活性成分を組み合わせの中に均一にかつ親密に持ち込み、次いで、必要であれば、生成物を望ましい調合物に形成することによって、調製される。
【0067】
静脈内、筋肉内、皮下、または腹腔内投与に適した調合物は、宿主の血液と等張であることが望ましい溶液と共に、活性成分の無菌水溶液からなると便利である。そのような調合物は、便宜上、塩化ナトリウム(例えば0.1〜2.0M)、グリシンなどのような生理学的に適合する物質を含み、かつ生理的条件と適合する緩衝pHを持つ水中に固体活性成分を溶解して水溶液を生成し、該水溶液を無菌にすることによって調製されて良い。これらは、ユニット中または複数の投与容器中、例えば密封アンプルまたはバイアル中に存在して良い。
【0068】
本発明の調合物は、安定化剤を組み込んでも良い。安定化剤の例としては、それら単独でまたは混合物として用いられるポリエチレングリコール、タンパク質、サッカライド、アミノ酸、無機酸および有機酸が挙げられる。これらの安定化剤は、望ましくは、免疫原重量部当たり0.11〜10,000重量部の量で混合される。2種類以上の安定化剤が用いられる予定の場合、それらの総量は上記の範囲であることが望ましい。これらの安定化剤は、適当な濃度およびpHの水溶液中で用いられる。そのような水溶液の具体的な浸透圧は、一般的には、0.1〜3.0オスモルの範囲であり、望ましくは0.8〜1.2の範囲である。水溶液のpHは、5.0〜9.0の範囲内、望ましくは6〜8の範囲内に調製される。本発明の免疫原の調合には、抗吸着剤を用いても良い。
【0069】
さらなる医薬的方法が、作用の持続期間を制御するために用いられても良い。制御放出調製物は、タンパク質またはそれらの誘導体を複合または吸収するポリマーの使用を通して成し遂げられて良い。制御送達は、適当な高分子(例えばポリエステル、ポリアミノ酸、ポリビニル、ピロリドン、エチレンビニルアセテート、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、または硫酸プロタミン)、および高分子の濃度、ならびに放出を制御するために組み込み方法を選択することによって、行われて良い。制御放出調製物より作用持続期間を制御するためのその他の可能な方法は、ポリエステル、ポリアミノ酸、ヒドロゲル、ポリ乳酸またはエチレンビニルアセテート共重合体のような重合体物質の粒子内に、MART−1タンパク質、ペプチドおよびその類似体を組み込むことである。別法として、重合体粒子内にこれらの薬剤を組み込む代わりに、例えばコアセルベーション技術あるいは界面重合(例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロース、あるいは、ゼラチン−ミクロカプセルおよびポリメチルメタシレートミクロカプセル)によって調製されたミクロカプセル内に、または、コロイド薬剤送達システム(例えば、リポソーム、アルブミン小球、ミクロエマルジョン、ナノ粒子およびナノカプセル)内、およびマクロエマルジョン内に、これらの物質を閉じ込めることが可能である。
【0070】
経口調製物が所望される場合、組成物は、ラクトース、スクロース、デンプン、タルク、ステアリン酸マグネシウム、結晶化セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、グリセリン、アルギン酸ナトリウムまたはアラビアゴムのような、典型的な担体と組み合わせて良い。
【0071】
本発明のタンパク質は、キットの形で、単独でまたは上記の医薬組成物の形で供給されて良い。
ワクチン注射は、従来の方法で行うことが出来る。例えば、免疫原は、塩類溶液または水のような適当な希釈液、または完全あるいは不完全な補助剤中で用いることが出来る。さらに、免疫原は、タンパク質免疫原性を作り出すために担体に結合させても良いが、させなくても良い。そのような担体分子には、これらに限られるわけではないが、ウシ血清アルブミン(BSA)、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、破傷風毒素などが含まれる。また、免疫原は、リポタンパク質とカップリングさせても、またはリポソームの形であるいは補助剤と共に投与されても良い。免疫原は、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、およびその類似部位等のような、抗体産生に適した任意の経路によって投与することが出来る。免疫原は、1度に、または抗MART−1免疫細胞または抗MART−1抗体の有効な力価が作り出されるまで断続的な間隔で投与されて良い。抗MART−1免疫細胞の存在は、免疫化される前および後のMART−1抗原に対するCTL前駆体(細胞毒性Tリンパ球)の頻度を、CTL前駆体分析アッセイ(非特許文献57)を用いて測定することによって評価されてであろう。抗体は、上記のイムノアッセイを用いて血清中で検出されるであろう。
【0072】
本発明のワクチンまたは免疫原の投与は、予防目的または治療目的のいずれかであって良い。予防目的で提供される場合、免疫原は、メラノーマによるいかなる存在にも先んじてまたはいかなる徴候にも先んじて提供される。免疫原の予防投与では、哺乳動物内のメラノーマを予防するかまたは弱毒化するために供される。治療目的で提供される場合、免疫原は、病気の始まりに(あるいは直後に)または病気の任意の徴候の始まりに提供される。免疫原の治療投与は、病気を弱毒化するために供される。
【0073】
望ましい実施態様では、ワクチンは、組換えMART−1タンパク質またはペプチド発現ベクターを用いて調製される。個体にワクチンを供給するために、MART−1核酸配列の全体または部分をコードする遺伝子配列を、上記のように発現ベクター内に挿入し、免疫化される哺乳動物内に導入する。前述のワクチンに用いて良いベクターの例としては、これらに限定されるわけではないが、不完全なレトロウイスルベクター、アデノウイルスベクター、ワクチニアウイルスベクター、鶏痘ウイルスベクター、またはその他のウイルスベクターが含まれる(非特許文献58)。MART−1核酸配列の全体または部分を有するウイルスベクターは、メラノーマのいかなる証拠も認められない間に、またはメラノーマに罹った哺乳動物の病気の退縮を仲介するためかのどちらかに哺乳動物内に導入することが出来る。哺乳動物にウイルスベクターを投与するための方法の例としては、これらに限られるわけではないが、生体外(ex vivo)でウイルスに細胞をさらすこと、罹患組織内へのレロトウイルスまたはウイルスの産生細胞株の注入、またはウイルスの静脈内投与が含まれる。別法として、MART−1核酸配列の全体または部分を持つウイルスベクターは、医薬として許容可能な担体内で、メラノーマ内に直接注入するかまたは局所適用することによって局所的に投与されて良い。MART−1核酸配列の全体または部分を持つウイルスベクターの投与量は、ウイルス粒子の力価を基本とする。投与される免疫原の望ましい範囲は、哺乳動物、望ましくはヒト当たり約10〜約1011ウイルス粒子であろう。免疫化後のワクチンの効果は、特異的溶解活性あるいは特異的サイトカイン産生によってまたは腫瘍退縮によって評価されるのと同様に、抗原を認識する抗体または免疫細胞の産生によって評価することが出来る。当業者は、前述のパラメータを評価する従来からの方法を知っているであろう。免疫化される哺乳動物が既にメラノーマまたは転移性メラノーマに罹っている場合、ワクチンは、その他の治療処置と共に投与することが出来る。その他の治療処置の例としては、これらに限られるわけではないが、T細胞免疫療法の採用、サイトカインまたはメラノーマ用のその他の治療薬剤の共投与が含まれる。
【0074】
あるいは、実質的にあるいは部分的に精製したMART−1タンパク質の全体または部分を、医薬として許容可能な担体内のワクチンとして投与しても良い。投与されて良いMART−1タンパク質の範囲は患者当たり約0.001〜約100mgであり、望まし投与量は患者当たり約0.01〜約100mgである。望ましい実施態様では、MART−1ペプチドAAGIGILTV(配列番号4)(1文字コードで表す)またはその類似体が、そのような治療を必要とする哺乳動物に治療目的でまたは予防目的で投与される。修飾MART−1ペプチドの代わりに、表14に示した例を用いても良い。望ましい投与量は約0.001mg〜約100mg、最も望ましくは約0.01mg〜約100mgであろう。ペプチドは、合成によってまたは組換えによって作り出されて良い。免疫化は、抗免疫原抗体または免疫細胞の充分な力価が得られるまで、必要に応じて繰り返して行われる。
【0075】
さらなるその他の代わりの実施態様では、レトロウイルスベクターのようなウイルスベクターを哺乳動物細胞内へ導入することもできる。レトロウイルスベクターを導入することの出来る哺乳動物細胞の例としては、これらに限られるわけではないが、哺乳動物の初代培養物または哺乳動物の継代培養物、COS細胞、NIH3T3、または293細胞(ATCC#CRL1573)が含まれる。遺伝子を運搬するベクターを細胞内に導入する手段には、これらに限られるわけではないが、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、トランスフェクション、またはDEAEデキストラン、リポフェクチン、リン酸カルシウムを用いたトランスフェクション、または当業者に既知のその他の方法(非特許文献24)が含まれる。MART−1抗原を発現している哺乳動物細胞は、哺乳動物に投与することができ、ワクチンまたは免疫原として供される。MART−1抗原発現細胞を投与する方法の例としては、これらに限られるわけではないが、静脈内、腹腔内または病巣内が含まれる。望ましい実施態様では、ペプチドAAGIGILTV(配列番号4)に関連するMART−1核酸配列の部分が、MART−1発現ベクターに挿入され、哺乳動物細胞内に導入される。あるいは、MHC分子とのそれらの結合を強化するように修飾されたMART−1ペプチド関連核酸配列を用いても良い。例として、表14に示す修飾ペプチドをコードする核酸配列を発現ベクターに挿入し、哺乳動物細胞内に導入しても良い。
【0076】
本発明のワクチン調合物は、メラノーマ関連MART−1抗原のようなメラノーマ関連抗原に対して直接的な免疫応答を誘発する免疫原からなる。ワクチン調合物は、最初に動物モデルで、手始めに齧歯動物、次いでヒト以外の霊長類、最後にヒトで評価されて良い。免疫化法の安全性は、免疫化された動物の一般的健康状態への免疫化による影響(体重変化、発熱、食欲状態等)を探し出すことによって、また検死の病理学的変化を探し出すことによって決定される。動物で最初に試験した後、メラノーマ癌患者で試験できる。従来からの方法を用いて、患者の免疫応答が評価され、ワクチンの効果が決定されるであろう。
【0077】
本発明のさらなるその他の実施態様では、MART−1タンパク質の全体、1つあるいはいくつかの部分、またはMART−1ペプチドあるいはその類似体または修飾MART−1ペプチドあるいはその類似体を、生体外(in vitro)で培養された樹状突起細胞にさらして良い。培養樹状突起細胞は、樹状突起細胞修飾抗原または抗原でパルス処理した樹状突起細胞からなるT細胞依存性抗原を作り出す手段を提供し、樹状突起細胞内で、抗原は処理され抗原活性化樹状突起細胞上に発現する。MART−1抗原活性化樹状突起細胞または処理された樹状突起細胞抗原は、ワクチンまたはメラノーマ治療用の免疫原として用いられて良い。樹状突起細胞は、抗原が中に取り込まれ樹状突起細胞表面上に示されるに充分な時間、抗原にさらされるべきである。得られた樹状突起細胞または樹状突起細胞処理抗原は、次いで、治療を必要とする個体に投与することが出来る。そのような方法は、Steinmanら(特許文献4)およびBanchereauら(特許文献5)に記載されており、ここに援用する。
【0078】
本発明のさらなるその他の実施態様では、個体から単離されたT細胞は生体外で(in vitro)MART−1タンパク質あるいはその部分、またはMART−1ペプチドあるいはその類似体、またはMART−1修飾ペプチドあるいはその類似体にさらし、次いでそのような治療を必要とする患者に治療上有効な量を投与することが出来る。Tリンパ球を単離できる例としては、これらに限られるわけではないが、末梢血リンパ球(PBL)、リンパ節、または腫瘍浸潤リンパ球(TIL)が含まれる。そのようなリンパ球は、処置した個体からまたは宿主から、この技術分野で既知の方法によって単離し、生体外で培養することが出来る(非特許文献59)。リンパ球は、RPMIあるいはRPMI 1640またはAIM−Vのような培地中で1〜10週間培養される。生存能はトリパンブルー色素排除試験によって評価される。リンパ球は、培養の一部または全期間中、MART−1タンパク質の全体または部分にさらされる。望ましい実施態様では、リンパ球は10細胞当たり約1〜約10μg/mlの濃度で、リンパ球培養の全期間または一部期間、AAGIGILTV(配列番号4)ペプチド(1文字コードで表す)にさらされる。ペプチドに感作させた後、Tリンパ球は、そのような治療を必要とする哺乳動物に投与される。あるいは、表14に示す修飾MART−1ペプチドをリンパ球にさらしても良い。このような感作T細胞を哺乳動物に投与するための方法の例としては、これらに限られるわけではないが、静脈内、腹腔内、または病巣内が含まれる。これらの感作Tリンパ球の効果を測定し評価するパラメータには、これらに限定されるわけではないが、治療される哺乳動物内での免疫細胞の産生または腫瘍の退縮が含まれる。従来からの方法が、これらのパラメータを評価するために用いられる。そのような治療は、サイトカインまたは遺伝子修飾細胞と共に施すことが出来る(非特許文献60、非特許文献61)。
【0079】
ワクチンとしての使用に加えて、組成物は、MART−1抗原、ペプチドあるいはその類似体、または修飾MART−1ペプチドおよびその類似体に対する抗体を調製するために用いることが出来る。抗体は、抗メラノーマ薬剤として直接用いることが出来る。抗体を調製するために、宿主動物は、MART−1タンパク質、ペプチドあるいはその類似体、または修飾ペプチドあるいはその類似体を免疫原として用いて免疫化され、上記のようなワクチン用担体と結合される。宿主の血清または血漿は、適当な時間間隔で集められて、免疫原と反応する抗体からなる組成物を提供する。γ−グロブリン画分またはIgG抗体は、例えば、飽和硫酸アンモニウムあるいはDEAEセファデックス、またはその他の当業者に既知の技術を用いることによって得ることが出来る。抗体は、化学療法のようなその他の抗癌薬剤と関連するであろう多くの不利な副作用とは実質上無関係である。
【0080】
抗体組成物は、潜在する不利な免疫システム応答を最小にすることによって、宿主システムにより一層適合させることが出来る。このことは、外来種抗体のFc部分の全体あるいは一部を除去することによって、または、例えばヒト/ヒトハイブリドーマからの抗体を用いるといったような宿主動物と同一種の抗体を用いることによって成し遂げられる。ヒト化(即ちヒトに非免疫原性である)抗体は、例えば、抗体の免疫原性部分を、類似しているが非免疫原性である部分で置換する(即ちキメラ抗体)ことによって作られて良い。そのようなキメラ抗体は、1つの種からの抗体の反応性部分または抗原結合部分、および異なる種からの抗体のFc部分(非免疫原性)を含んでよい。キメラ抗体の例としては、これらに限られるわけではないが、非ヒト哺乳動物−ヒトのキメラ、齧歯動物−ヒトのキメラ、ネズミ−ヒトおよびラット−ヒトのキメラ(Robinsonら(特許文献6)、Taniguchi M.(特許文献7)、Morrisonら(特許文献8)、Neubergerら(特許文献9)、非特許文献62、非特許文献63、非特許文献64、非特許文献65、ここにそのすべてを援用する)が含まれる。
【0081】
「ヒト化」キメラ抗体の一般的概説は、非特許文献66によっておよび非特許文献67によって提供される。
適当な「ヒト化」抗体は、CDRまたはCEAの置換によって代わりに作り出すことが出来る(非特許文献68、非特許文献69、非特許文献70、これらのすべてはここに援用する)。
【0082】
抗体または抗原結合断片は、遺伝子工学によって作り出されても良い。大腸菌内で重鎖および軽鎖の両方の遺伝子を発現させるための技術は、以下のPCT特許出願:特許文献2および特許文献3、ならびに非特許文献46の主題である。
【0083】
また、抗体は、免疫応答を強化する手段として用いることもできる。抗体は、抗体のその他の治療投与に用いられるそれと同様の量を投与することが出来る。例えば、プールしたγグロブリンは、患者当たり約1mg〜約100mgの範囲で投与される。このように、MART−1抗原と反応する抗体は、単独でまたはメラノーマに罹った哺乳動物への他の抗癌治療と共に、抵抗なく投与することが出来る。抗癌治療の例としては、これらに限られるわけではないが、化学療法、放射線治療、TILを用いた養子免疫療法が含まれる。
【0084】
あるいは、抗MART−1抗原抗体は、免疫原としての抗イディオタイプ抗体を投与することによって誘発することもできる。便宜上、上記の方法に従って調製した精製抗MART−1抗体調製物を用いて、宿主動物に抗イディオタイプ抗体を誘発させる。組成物は、適当に希釈されて宿主動物へ投与される。投与後、通常は繰り返し投与後、宿主は抗イディオタイプ抗体を作り出す。Fc領域への免疫原性応答を排除するために、宿主動物と同一種によって作り出した抗体を用いるか、または投与した抗体のFc領域を排除することが出来る。宿主動物内の抗イディオ抗体の導入に次いで、血清または血漿は、抗体組成物を提供するために取り除かれる。組成物は、抗MART−1抗体のための上記の方法に従って、または親和性マトリックスに結合した抗MART−1抗体を用いた親和性クロマトグラフィーによって精製することができる。産生された抗イディオタイプ抗体は、標準的なMART−1抗原と立体構造が同じであり、MART−1タンパク質、ペプチド類似体またはその部分を用いるよりもむしろ、MART−1メラノーマ抗原ワクチンを調製するために用いられて良い。
【0085】
動物に抗MART−1抗体を誘発させる手段として用いた場合、抗体を注入する方法は、ワクチン注射の目的と同じ、即ち、補助剤とともにまたは補助剤を用いずに、生理学的に適当な希釈剤中有効濃度で、筋肉内、腹腔内、皮下、病巣内、またはその類似部位などに注射される。1種類以上の効能促進剤の注入が望ましい。
【0086】
また、本発明のMART−1誘導タンパク質またはペプチドまたは修飾ペプチドは、病気前後の予防を意図する抗血清の産生に用いることを意図する。ここでは、MART−1抗原、ペプチドあるいはその類似体、または修飾MART−1ペプチドあるいはその類似体は、適当な補助剤と調合され、ヒト抗血清を産生するための既知の方法に従って、ヒトボランティアに注射により投与される。注射されたタンパク質に応答する抗体は、免疫化に次いで、数週間の間、末梢血清をサンプリングすることによって、抗MART−1血清抗体の存在を検出するために、ここに記載されたようなイムノアッセイを用いて、モニターされる。
【0087】
免疫化された個体からの抗血清は、進行性メラノーマの危険性のある個体の予防処置として投与されて良い。抗血清は、メラノーマに罹った個体の病後の予防治療にも有用である。
【0088】
MART−1抗原の抗体および抗イディオタイプ抗体のin vivoでの使用および診断的使用の両方に対してモノクローナル抗体を使用するのが好適であろう。モノクローナル抗MART−1抗体または抗イディオタイプ抗体は以下のように製造できる。免疫化動物から脾臓またはリンパ球を取り出し、不死化させるかまたは当業者には既知の方法によりハイブリドーマの製造に使用した(非特許文献71)。ヒト−ヒトハイブリドーマを製造するために、ヒトリンパ球供与者が選択された。MART−1抗原を運ぶメラノーマを持つことが知られている供与者が適したリンパ球供与者であろう。リンパ球は末梢血試料から単離でき、もし供与者が脾摘出を受けるならば脾臓細胞を使用してもよい。エプスタインーバールウイルス(EBV)がヒトリンパ球の不死化に使用でき、ヒト−ヒトハイブリドーマを産生するためにはヒト融合パートナーが使用できる。ペプチドによるin vitroでの1次免疫化もまたヒトモノクローナル抗体の産生に使用できる。好適なMART−1ペプチドの例としては、AAGIGILTV(配列番号4)、EAAGIGILTV(配列番号17)およびAAGIGILTVI(配列番号18)(ペプチドは1文字アミノ酸コードで表されている)が挙げられるがそれらに制限されるわけではない。最も好適にはAAGIGILTV(配列番号4)が免疫原として使用される。もしくは、MART−1アミノ酸配列から誘導され、MHCクラスI分子への結合性を促進させるように修飾されたペプチドもまた使用される。例えば、表14に示された修飾ペプチドが免疫原として使用されるであろう。
【0089】
不死化細胞により分泌される抗体をスクリーニングして所望の特異性を持つ抗体を分泌するクローンを決定する。モノクローナルMART−1抗原またはペプチド抗体については、抗体はMART−1抗原またはペプチドに結合しなければならない。モノクローナル抗イディオタイプ抗体については、抗体は抗MART−1抗体に結合しなければならない。所望の特異性を持つ抗体を産生する細胞が選択される。
【0090】
ここに記載された抗体またはキメラ抗体はまた常法により毒素分子、放射性同位元素および薬剤と結合させてもよい(非特許文献72、非特許文献73)。抗体が結合されるであろう毒素の例としてはリシンまたはジフテリア毒素が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。薬剤または化学療法剤の例にはシクロホスファミドまたはドキソルブシンが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。放射性同位元素の例には131Iが挙げられるが、それに限定されるわけではない。上記の薬品に共有結合で結合する抗体は癌免疫療法においてメラノーマに処置に使用できる。
【0091】
病変のある部位への局所的投与は、局所適用、注射および組換え的に注入液を発現している細胞を含む多孔性装置の移植、MART−1抗体またはキメラ抗体、毒素、薬剤または放射性標識またはそれらの一部が含まれた多孔性装置の移植を含む(これらに限定されるわけではない)本分野では既知の手段により達成される。
【0092】
上記の抗体およびそれらの抗原結合性断片はキット単独としてまたはin vivo使用のための医薬組成物として供給される。抗体は治療的使用、イムノアッセイにおける診断的使用またはここに記載したMART−1タンパク質またはペプチドを精製するための免疫親和性試薬としての使用において用いられるであろう。
【0093】
本発明はまた、腫瘍浸潤リンパ球により認識される第2のメラノーマをコードしているcDNA25(図4Aおよび図4B;配列番号26)と称される、実質的に精製され単離された核酸配列も提供する。cDNA25によりコードされたメラノーマ抗原を認識するTILはin vivo腫瘍排除に関連している。TILはHLA−A2に関連してcDNA25によりコードされているメラノーマ抗原を認識した。cDNA25核酸配列(図4Aおよび図4B;配列番号26)とメラノサイト−メラノーマ特異的タンパク質gp100をコードしている遺伝子の核酸配列との比較により、この配列はgp100として以前に同定された配列とは似てはいるが異なっていることが示された。gp100として以前に同定された配列にはgp100(GenBank受託番号M32295;gp95とも称される)、Pmel 17(GenBank受託番号M77348;非特許文献74)およびME20(非特許文献75)が挙げられる。
【0094】
ここに提供されるcDNA25配列(図4Aおよび図4B;配列番号26)はGenbankの以前に報告されたgp100配列(GenBank受託番号M32295)とは2ヌクレオチド異なっており、Pmel 17配列(非特許文献74)とは3ヌクレオチド異なっており、かつ21塩基対が欠失し、およびME20配列(非特許文献75)とは1ヌクレオチド異なっている。アミノ酸レベルでは、cDNA25によりコードされているタンパク質はGenbankのgp100配列(GenBank受託番号M32295)とは162位の1アミノ酸、Pmel 17と比較すると162位および272位の2つのアミノ酸が異なっており、しかもPmel 17の588〜594位に存在している7アミノ酸が含まれていない。従って、cDNA25はgp100の遺伝子の異なった1つの形をコードしているように思われる。cDNA25核酸配列(図4Aおよび図4B;配列番号26)およびアミノ酸配列(図A;配列番号27)と以前に報告されているgp100配列間の相違は多形、対立遺伝子変異または腫瘍中での突然変異によるものであろう。マウス腫瘍での実験でT細胞により認識される新規抗原は不活性化遺伝子のコード領域における点突然変異から生じることが示されている(非特許文献76)。
【0095】
本発明はまたここで提供されるgp100タンパク質配列またはその類似体から誘導される免疫原性ペプチドを提供する。(図5Aおよび図7A;配列番号27および121)。これらの免疫原性ペプチドはTILにより認識されるgp100タンパク質の抗原性部分(図5Aおよび図7A;配列番号27および121)を表している。免疫原性ペプチドの例にはLLDGTATLRL(ペプチドG10−4;配列番号33)、VLYRYGSFSV(ペプチドG10−5;配列番号34)、ALDGGNKHFL(ペプチドG10−22;配列番号35)、VLKRCLLHL(ペプチドG9−19;配列番号36)、VLPSPACQLV(ペプチドG10−8;配列番号37)、SLADTNSLAV(ペプチドG10−9;配列番号38)、SVSVSQLRA(ペプチドG9−216;配列番号39)、YLEPGPVTA(ペプチドG9−280;配列番号40)、LNVSLADTN(ペプチドG10−400;配列番号41)、KTWGQYWQV(ペプチドG9154;配列番号46;図7A;アミノ酸154〜162位)、KTWGQYWQVL(ペプチドG10154;配列番号47;図7A;アミノ酸154〜163位)、ITDQVPFSV(ペプチドG9209;配列番号48;図7A;アミノ酸209〜217位)およびTITDQVPFSV(ペプチドG10208;配列番号49;図7A;アミノ酸208〜217位)が挙げられるがこれらに限定されるわけではない。本発明はさらにgp100アミノ酸配列(図5Aおよび図7A;配列番号27および121)から誘導されるこれらの免疫原性ペプチドの類似体も含んでいる。類似体という用語はこれらの免疫原性ペプチドの機能的特色を示す任意のペプチドを含んでいる。類似体という用語はまた上記のペプチドの保存的置換体または化学的誘導体も含んでいる。これらの免疫原性ペプチドはMART−1に対して記載したように、同一の方法または様式により合成的にまたは組換えにより製造されるであろう。
【0096】
本発明のさらに別の態様では、gp100配列(図5Aおよび図7A;配列番号27および121)に由来する免疫原性ペプチドは、T細胞に提示された場合にペプチドが会合するMHC分子への結合を促進することにより免疫原性を増加させるように修飾される。例えば、修飾には免疫原性ペプチド配列内の1以上のアミノ酸の欠失または付加、または所定の免疫原性ペプチド配列内のアミノ酸の挿入、または所定の免疫原性ペプチド配列内に存在するアミノ酸の誘導体化、または所定の免疫原性ペプチド配列内のアミノ酸の突然変異が含まれるであろう。好適な修飾においては、所定の免疫原性ペプチド配列において少なくとも1つのアミノ酸が置換される。所定の免疫原性ペプチド配列を構成する任意のアミノ酸は本発明により修飾されるであろう。任意のアミノ酸が免疫原性ペプチド配列内の所定のアミノ酸の置換に使用されるであろう。修飾は免疫原性gp100ペプチド内のどのアミノ酸位置で生じてもよい。修飾gp100ペプチドにはT細胞に提示された場合にペプチドが会合するMHC分子への結合促進を示す任意の修飾gp100ペプチドが含まれることを意図する。
【0097】
例えば、HLA−A2に関連してT細胞に認識されるペプチドは長さ9〜10アミノ酸である。好適には、HLA−A2へのペプチドの結合促進のためには、ペプチド中の第2位および最後の位置は疎水性アミノ酸、好適には脂肪族疎水性アミノ酸である。第2位はロイシン、メチオニン、イソロイシン、バリン、トレオニン、グリシンまたはアラニンのような脂肪族疎水性アミノ酸であろうが、それらに限定されるわけではない。ペプチドの最後の位置は(ペプチドの長さに依存して第9位または第10位)バリン、ロイシン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、グリシン、メチオニン、バリン、またはトレオニンのような脂肪族疎水性アミノ酸であろうが、それらに限定されるわけではない。
【0098】
免疫原性ペプチドの第1位および第3位は、任意のアミノ酸、好適には疎水性脂肪族アミノ酸または芳香族アミノ酸で置換されていてもよい。ペプチドの第1位および第3位に使用できるアミノ酸の例としてはアラニン、ロイシン、リジン、イソロイシン、グリシン、メチオニン、バリン、トレオニン、トリプトファン、フェニルアラニン、セリン、リジンまたはチロシンが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
【0099】
本態様に従って修飾されるであろうgp100ペプチドの例としてはLLDGTATLRL(ペプチドG10−4;配列番号33)、VLYRYGSFSV(ペプチドG10−5;配列番号34)、ALDGGNKHFL(ペプチドG10−22;配列番号35)、VLKRCLLHL(ペプチドG9−19;配列番号36)、VLPSPACQLV(ペプチドG10−8;配列番号37)、SLADTNSLAV(ペプチドG10−9;配列番号38)、SVSVSQLRA(ペプチドG9−216;配列番号39)、YLEPGPVTA(ペプチドG9−280;配列番号40)、LNVSLADTN(ペプチドG10−400;配列番号41)、KTWGQYWQV(ペプチドG9154;配列番号46;図7A;アミノ酸154〜162位)、KTWGQYWQVL(ペプチドG10154;配列番号47;図7A;アミノ酸154〜163位)、ITDQVPFSV(ペプチドG9209;配列番号48;図7A;アミノ酸209〜217位)およびTITDQVPFSV(ペプチドG10208;配列番号49;図7A;アミノ酸208〜217位)が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
【0100】
例えば、免疫原性gp100ペプチドKTWGQYWQV(配列番号46)に由来する修飾gp100ペプチドは式XGQYWQX(配列番号123)を持っており、式中:
は任意のアミノ酸、好適には疎水性脂肪族アミノ酸または芳香族アミノ酸である。使用できるアミノ酸の例としてはアラニン、ロイシン、リジン、イソロイシン、グリシン、メチオニン、バリン、トレオニン、トリプトファン、フェニルアラニン、リジンまたはセリン、アスパラギン酸またはチロシンが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
は任意の疎水性アミノ酸、好適には脂肪族疎水性アミノ酸である。使用できるアミノ酸の例としてはロイシン、メチオニン、イソロイシン、アラニン、トレオニン、グリシンまたはバリンが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。最も好適であるのは、ロイシン、メチオニンまたはイソロイシンである。
は任意のアミノ酸、好適には疎水性脂肪族アミノ酸または芳香族アミノ酸である。使用できるアミノ酸の例としてはアラニン、ロイシン、リジン、イソロイシン、グリシン、メチオニン、バリン、トレオニン、トリプトファン、フェニルアラニン、セリン、リジンまたはチロシンが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
は任意の疎水性アミノ酸、好適には脂肪族疎水性アミノ酸である。使用できるアミノ酸の例としてはバリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、アラニン、トレオニンまたはグリシンが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
【0101】
修飾ペプチドの例は表15に示されている。好適な修飾ペプチドはKIWGQYWQV(G9−154−21)(配列番号70)である。
もしくは、免疫原性gp100 ITDQVPFSV(G9−209;配列番号48)が修飾され、そのような修飾ペプチドは一般式XQVPFSX(配列番号124)を持っており、式中:
は任意のアミノ酸、好適には疎水性脂肪族アミノ酸または芳香族アミノ酸である。使用できるアミノ酸の例としてはロイシン、メチオニン、アラニン、イソロイシン、バリン、トレオニン、グリシン、リジン、フェニルアラニン、トリプトファンまたはチロシン、アスパラギン酸またはセリンが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
は任意の疎水性アミノ酸、好適には疎水性脂肪族アミノ酸である。使用できるアミノ酸の例としてはロイシン、メチオニン、アラニン、イソロイシン、バリン、トレオニン、またはグリシンが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
は任意のアミノ酸、好適には疎水性脂肪族アミノ酸または芳香族アミノ酸である。使用できるアミノ酸の例としてはロイシン、メチオニン、イソロイシン、バリン、トレオニン、グリシン、リジン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、アスパラギン酸またはセリンが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
は任意の疎水性アミノ酸、好適には疎水性脂肪族アミノ酸である。使用できるアミノ酸の例としてはロイシン、メチオニン、アラニン、イソロイシン、バリンまたはトレオニンが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
【0102】
ITDQVPFSVに由来する修飾ペプチドの例が表16に示されている。好適にはペプチドFLDQVPFSV(ペプチドG9−209−1F2L)が使用される。
例えば、免疫原性gp100ペプチドYLEPGPVTA(G9−280;配列番号40)に由来する修飾gp100ペプチドはまたMHCクラスI分子、好適にはHLA−A2またはそのサブタイプへの結合を促進するように修飾される。
【0103】
修飾ペプチドは一般式XPGPVTX(配列番号125)を持っており、式中:
は任意のアミノ酸、好適には疎水性脂肪族アミノ酸または芳香族アミノ酸である。使用できるアミノ酸の例としてはロイシン、メチオニン、アラニン、イソロイシン、バリン、トレオニン、グリシン、リジン、フェニルアラニン、トリプトファンまたはチロシン、アスパラギン酸またはセリンが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
は任意の疎水性アミノ酸、好適には脂肪族疎水性アミノ酸である。使用できるアミノ酸の例としてはロイシン、メチオニン、アラニン、イソロイシン、バリン、トレオニン、またはグリシンが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
は任意のアミノ酸、好適には疎水性脂肪族アミノ酸または芳香族アミノ酸である。使用できるアミノ酸の例としてはロイシン、メチオニン、イソロイシン、バリン、トレオニン、グリシン、リジン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、アスパラギン酸またはセリンが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
は任意の疎水性アミノ酸、好適には脂肪族疎水性アミノ酸である。使用できるアミノ酸の例としてはロイシン、メチオニン、アラニン、イソロイシン、バリン、トレオニンまたはグリシンが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
【0104】
YLEPGPVTA(G9−280;配列番号40)に由来する修飾ペプチドの例は表17に示されている。好適な修飾ペプチドはYLEPGPVTV(G9−280−9V)(配列番号104)である。
【0105】
本発明にはここに開示したgp100配列(図5A;配列番号27および図7A;配列番号121)に由来するこれらの修飾ペプチドの類似体もさらに含まれる。類似体という用語には、上記のこれらの修飾ペプチドの機能的特色を示す任意のペプチドが含まれることを意図する。これらの修飾ペプチドは常法により合成的にまたは組換え的に提供される。
【0106】
別の態様では、表15〜表17に示すようなgp100アミノ酸配列または修飾gp100ペプチドまたはそれらの類似体は治療的にまたは予防的にワクチンとして使用される。予防的には、ワクチンはメラノーマの徴候の前に投与される。これらのペプチドの予防的投与は哺乳類においてメラノーマを防止または減少させるために働くはずである。
【0107】
好適な態様において、メラノーマの危険性が高い哺乳類(好適にはヒト)はこれらのワクチンで予防的に処置される。もしくは、メラノーマまたは転移性メラノーマ上に提示される腫瘍抗原への患者自信の免疫応答を促進するために治療的にワクチンが投与されるであろう。免疫原として働くワクチンは、細胞、gp100免疫原性ペプチドをコードしている核酸配列を運ぶ組換え体発現ベクターでトランスフェクトされた細胞からの細胞溶解物または発現されたタンパク質を含んでいる培養上清液であろう。これらの免疫原性ペプチドをコードしている核酸配列が導入される発現ベクターはMART−1で記載したものと同一である。もしくは、免疫原は部分的または実質的に精製された組換え体gp100ペプチドまたはそれらの類似体である。
【0108】
投与されるべき免疫原は純粋なまたは実質的に純粋な形でも可能であるが、上記MART−1で記載した医薬組成物、処方または製剤として存在させるのが好適である。ワクチン接種は前にMART−1で記載したような常法により実施できる。
gp100免疫原性ペプチドおよびそれをコードする核酸配列は、前にMART−1で記載したのと同一の方法または様式で、バイオアッセイに、または抗体の作製に用いることができる。
【0109】
本発明のさらに別の態様において、1つ以上のメラノーマ抗原に対する多価ワクチンが提供される。そのような多価ワクチンはMART−1タンパク質、ペプチドまたは修飾ペプチドの全てまたは一部、またはgp100ペプチドまたは修飾ペプチドまたはそれらの組み合わせを含んでいる。
【0110】
メラノーマ抗原をコードしている遺伝子の同定において、従来は抗原で免疫化またはあらかじめ処置したメラノーマ患者から単離されたPBLを利用していた(非特許文献18、非特許文献20、非特許文献19)。好適な方法は腫瘍を持つ患者を免疫化することなく、該患者からのTILにより認識される腫瘍抗原をコードしている遺伝子を同定することである。同定された遺伝子は増殖している癌に対する自然の免疫応答に含まれた抗原をコードしているので、そのような方法で可能性が大きくなる。従って、本発明はメラノーマを持つ患者の腫瘍からの腫瘍浸潤性リンパ球単離物(TIL)を用いるcDNA発現クローニングを利用したメラノーマ抗原コード遺伝子の同定法も提供する。本方法は以下の工程を含んでいる:(a)メラノーマを持つ哺乳類の腫瘍から腫瘍浸潤性リンパ球を単離し;(b)哺乳類細胞株内にメラノーマcDNAライブラリーを導入し;(c)該哺乳類細胞を該TILに暴露し;(d)該TILにより認識される該哺乳類細胞中の該cDNAによりコードされている抗原の発現をスクリーニングし;および(e)該抗原に対応する該cDNAを単離する。工程(a)の腫瘍浸潤性リンパ球はメラノーマを持つ患者の病巣、皮下組織または内臓を含む(しかしこれらに限定されるわけではない)から単離されるであろう。工程(b)で使用されるcDNAライブラリーの製造に使用される細胞の例としては新鮮なまたは培養されたメラノーマ細胞が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。好適には、cDNAライブラリーはメラノーマ抗原を発現していない哺乳類細胞内へ導入される。もしTILによる認識のための所望のHLAハロタイプを発現していない非ヒト哺乳類細胞またはヒト細胞が工程(b)で使用されるならば、そのような細胞は以下に記載するようにHLA遺伝子で同時トランスフェクションできる。工程(b)で使用できる細胞の例としては乳癌細胞株MDA231(ATCC#HTB26)またはCOS7細胞(ATCC#CRL1651)のような腫瘍細胞株が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。使用できるMHC遺伝子の例としてはHLA−A、HLA−BおよびHLA−C遺伝子、好適であるのはHLA−A2およびそのサブタイプ(非特許文献77)が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。使用に適したMHC遺伝子はcDNAライブラリー源であった腫瘍細胞のハロタイプにより決定される。標準的な方法が、TIL単離物により認識されるハロタイプの決定に使用できる(非特許文献78)。TILにより認識される抗原を発現しているcDNAクローンを含む細胞の認識の評価法の例としては、γインターフェロンアッセイ、TNF分泌(非特許文献18)または認識された抗原をコードするcDNAでトランスフェクトされた細胞の溶解などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。そのようなアッセイは当業者には既知の常法により実施される。cDNAを含むベクターの隣接部位に特異的なプライマーを用いるPCRによりメラノーマ抗原が単離できる。TILにより認識される抗原に対応するcDNAの単離法の例としてはPCRが挙げられるが、これに限定されるわけではない。
【0111】
メラノーマ抗原をコードしている遺伝子または核酸配列が同定されたら、次の工程はこれらの遺伝子によりコードされているタンパク質の抗原性部分またはエピトープを同定することである。従って、本発明のさらに別の態様では、MART−1タンパク質(図1;配列番号2)またはgp100タンパク質(図5Aおよび図7A;配列番号27および121)の推定アミノ酸配列に由来するペプチドの免疫原性を評価するための方法が提供される。本方法は以下の工程を含んでいる:(a)MART−1(図1;配列番号2)またはgp100(図5Aおよび図7A;配列番号27および121)アミノ酸配列に基づく多数のペプチドを調製し;(b)少なくとも1つの該ペプチドと哺乳類細胞株をインキュベートし;(c)該ペプチドとインキュベートした該哺乳類細胞を腫瘍浸潤リンパ球(TIL)に暴露し;および(d)該ペプチドとインキュベートした該細胞をTILの認識でスクリーニングする。約25〜5アミノ酸、より好適には20〜10アミノ酸、最も好適には9〜10アミノ酸のペプチドを使用するのが好ましい。工程(b)で使用される細胞の例としてはT2細胞(非特許文献79)またはEBV形質転換B細胞株(非特許文献9)が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。ペプチドとインキュベートされた細胞の認識の評価法の例としては51Cr放出細胞毒性アッセイ(非特許文献79)またはγ−IFNまたはTNF分泌のようなリンホカインアッセイ(非特許文献80)が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
【0112】
T細胞認識抗原はMHCクラスI分子と複合体を形成する。すべての哺乳類種のMHC座は多数の遺伝子を含んでおり、高度に多型である。異なったMHC分子またはハロタイプ型は異なった抗原に結合する。ヒトにおいてHLA複合体はクラスI分子をコードしているHLA−A、HLA−BおよびHLA−C遺伝子座を含んでいる。リンパ球はHLAクラスI分子に関して腫瘍抗原を認識するであろう。もし組換え体MART−1発現ベクターを含む細胞がTILでスクリーニングされるがヒト細胞ではなく(COS細胞のような)、または所望のハロタイプを発現しないならば、MHCクラスI遺伝子を含む発現ベクターが細胞内へ導入されるであろう(実施例1参照)。これは本発明のさらに別の態様を表している。MART−1抗原およびHLA抗原を発現している細胞は特異的MHCクラスI拘束型に関連して腫瘍抗原の存在を検出するためにTILでスクリーニングできる。適したハロタイプはライブラリーが誘導される腫瘍のハロタイプにより決定される。使用できるMHCクラスI遺伝子の例としてはHLA−A、HLA−BおよびHLA−C遺伝子が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。好適なMHC特異性または拘束型の例としてはHLA−A1、HLA−A2.1サブタイプ(非特許文献77)のようなHLA−A2またはHLA−A24が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。最も好適であるのはHLA−A2.1遺伝子である。
【0113】
獣医学的な使用もまた、ここに記載された組成物および治療的応用により含まれることを意図する。
本明細書で引用したすべての本、文献および特許は全文のまま援用する。以下の実施例は本発明の種々の態様を例示するものであり、その範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0114】
腫瘍内に浸潤した自己T細胞により認識される、共有ヒトメラノーマ抗原をコードする遺伝子のクローニング
細胞毒性Tリンパ球(CTL)の作製および細胞株の培養
非特許文献81に記載されているように、CTLは、切り出された腫瘍標本から細胞の懸濁液を6000IU/mlのIL−2(Cetus−腫瘍部門、カイロン社、カリフォルニア州エメリーベル)と30〜70日培養することにより作製した。TIL501およびTIL1235は主としてCD8であり、進行した転移性メラノーマを持つ患者の腫瘍標本に由来した。CD8T細胞クローン、TIL501.A42は限界希釈法により確立され、120IU/mlのIL−2と照射された(週に1度を4〜6回)自己由来腫瘍細胞とともに培養された。
【0115】
メラノーマ細胞株397mel、501mel、526mel、537mel、624mel、888mel、952mel、およびエプスタインーバールウイルス(EBV)形質転換B細胞株、501EBVB、836EBVBは我々の研究室で確立され、10%ウシ胎児血清(FCS)(Biofluids、メリーランド州ロックビル)を含むRPMI 1640(GIBCO/Lifetechnologies、ニューヨーク州グランドアイランド)培地中で培養された(非特許文献9)。正常培養メラノサイト、NHEM483、NHEM493、NHEM527、NHEM529、NHEM530、NHEM533、NHEM616およびNHEM680はクローンテック、カリフォルニア州サンディエゴから購入され、FM725、FM801、FM902はWistar Institute、ペンシルバニア州フィラデルフィアのM.Herlynから提供を受け、HA002はエール大学、コネチカット州ニューヘーブンのR.Halabanから提供を受け、メラノサイト増殖培地(MGM、クローンテック)中で培養した。メラノーマ細胞株C32、RPMI7951、WM115、A375、HS695T、Malme3M、結腸癌細胞株Collo、SW480、WiDr、乳癌細胞株MDA231、MCF7、HS578、ZR75、神経芽細胞腫細胞株SR−N−SH、膠腫細胞株U138MG、HS683、H4、肉腫細胞株143B、アデノウイルスタイプ5で形質転換された胎児性腎臓細胞株293はATCC、メリーランド州ロックビルから購入され、腎癌細胞株UOK108およびUOK117はNIH、メリーランド州ベセスダのM.Linehanから提供を受けた。肺小細胞癌細胞株H1092はテキサス大学サウスウェスタン、テキサス州ダラスのJ.D.Minnaから提供された。Ewing肉腫細胞株TC71、RD−ES、6674はNIH、メリーランド州ベセスダのM.Tsokosから提供された。神経芽細胞腫細胞株SK−N−ASはNIH、メリーランド州ベセスダのO.M.El Badryから提供を受けた。形質細胞腫細胞株HMY−C1RおよびM1線維芽細胞株はNIH、メリーランド州ベセスダのW.Biddisonから提供を受けた。腎臓上皮細胞KAM、WLCはサウスカロライナ医科大学、サウスカロライナ州チャールストンのD.J.Hazen−MartinおよびD.A.Sensから提供された。サル腎臓細胞株COS7はNIH、メリーランド州ベセスダのW.Leonardから提供を受けた。
【0116】
細胞毒性アッセイ
51Cr放出アッセイは非特許文献83に記載されているように実施された。簡単に記すと、51Crで標識された5000個の標的細胞を異なった数のエフェクター細胞と混合し、5時間インキュベートした。次に上清液を集め、放射活性を測定して特異的溶解の割合を計算した。
【0117】
IFN−γ放出アッセイ
96穴平底マイクロプレートを用い、ウェル当たり120IU/mlのIL−2を含む300μlのAIM−V培地中、5万〜10万個の応答細胞および4×10〜10個の刺激細胞を混合した。20時間インキュベートした後、100μlの上清を集め、抗ヒトIFN−γモノクローナル抗体(mAb)(Biosource、カリフォルニア州カマリロ)で被覆した酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)プレート(Immunoplate MaxiSorp、Nunc、デンマーク)に加えた。4℃で1晩インキュベートした後、プレートを3回洗浄し、ウサギ抗ヒトIFN−γポリクローナル抗体(Ab)(Biosource、カリフォルニア州カマリロ)の1:2000希釈液を100μl加えて37℃で2時間インキュベートした。プレートは3回洗浄し、アルカリホスファターゼ標識ヤギ抗ウサギIgGポリクローナル抗体(Ab)(ベーリンガーマンハイム、インディアナ州インディアナポリス)の1:2000希釈液を100μl加えた。37℃で1時間インキュベートした後、100μlの4mg/ml p−ニトロフェノール ホスフェート(シグマ、ミズーリ州セントルイス)を加え、室温で暗所にて10〜20分インキュベートし、反応を停止させるために25μlの1N NaOHを加えた。405nmの波長で光学密度を測定し、同一のアッセイで測定された組換え体IFN−γ標品(Biogen、マサチューセッツ州ケンブリッジ)と比較してIFN−γの濃度を計算した。
【0118】
cDNA発現クローニング
cDNAライブラリーは非特許文献82および非特許文献83に記載されているようにHLA−A2メラノーマ細胞株501melからのポリA RNAから構築された。簡単に記すと、第1鎖cDNAはリンカープライマーGGACAGGCCGAGGCGGCC(T)40(配列番号42)で合成され、続いて第2鎖cDNA合成が行われた。T4 DNAリガーゼで処理した後、2つのオリゴヌクレオチドCCAITCGCGACC(配列番号43)およびGGTCGCGATTGGTAA(配列番号44)からなるSfiIアダプターをcDNAの末端に連結した。cDNAはSfiIで消化し、消化された断片はスパンカラムを通して単離された。cDNAは次にSfiI消化により調製されたバクテリオファージλpCEV27(非特許文献83)ベクターアームと混合し、in vitroパッケージングが実施された。
【0119】
メラノーマ抗原をスクリーニングするため、改良リン酸カルシウム法(Mammalian Transfection Kit、ストラタジーン)を用いて、約10クローンを含む増幅cDNAライブラリーが、HLA−A2抗原非発現細胞株MDA231クローン7およびA375クローン1−4内へトランスフェクトされた。G418(BRL、メリーランド州ゲイサーズバーグ)選択後、個々のコロニーを単離し、96穴マイクロプレート中で培養してレプリカプレートを作製した。5×10TIL1200および5×10TIL1235の混合物を、コンフルエント近くまで増殖しているトランスフェクト体を含むマイクロプレートのウェルに加え、20時間インキュベートした。上清を集め、IFN−γをELISAで測定した。
【0120】
陽性トランスフェクト体のゲノムDNAからトランスフェクトされた遺伝子を取り出すため、挿入された遺伝子に隣接するSP6およびT7プライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)が実施された。増幅産物はpcDNA3ベクター(インビトロジェン、カリフォルニア州サンディエゴ)内へクローン化された。cDNA22および23については、完全長cDNAを含むHindIIIおよびXhoI断片が発現ベクターpcDNA3(インビトロジェン、カリフォルニア州サンディエゴ)内へサブクローン化された。
【0121】
クローン化cDNAが腫瘍抗原をコードしているかどうかを試験するため、クローン化遺伝子を含むpcDNA3がDEAEデキストラン法(非特許文献84)によりCOS7細胞株内へ一過性にトランスフェクトされた。簡単に記すと、6穴プレートを用い、ウェル当たり3×10個の細胞を100μgのDEAEデキストラン(シグマ)、0.1mMのクロロキンおよびクローン化遺伝子および/またはpcDNA−HLA−A2.1(非特許文献77)を含むpcDNA3を1μg含む0.75mlのDMEM中、37℃で4時間インキュベートした。培地を除去した後、10%DMSOを含むHBSS緩衝液を加えて2分間インキュベートした。細胞をPBSで1回洗浄し、7.5%FCS DMEM中で2日間インキュベートした。293細胞株はリポフェクタミン(BRL、メリーランド州ゲイサーズバーグ)を用い、使用説明書に従って一過性にトランスフェクトされた。インキュベーション後、トランスフェクトされたCOS7または293細胞のTILからIFN−γ放出を媒介する能力が評価された。HLA−A2遺伝子の発現はフローサイトメトリーにより試験された。安定なトランスフェクト体はリン酸カルシウム法により作製され、個々のコロニーおよびプールされたトランスフェクト体は細胞毒性およびIFN−γ放出アッセイによりTILへの反応性が試験された。
【0122】
クローン化遺伝子のDNA配列決定はdGTPおよび7−デアザ−dGTPを用いるジデオキシ鎖停止法により実施された。DNAおよびタンパク質配列はGeneBankのGCGプログラム、EMBLデータライブラリー ヌクレオチドデータベースおよびSWISS−PROT、PIR、GenPept、Brookhavenタンパク質データバンクタンパク質データベースにより解析された。
【0123】
ノーザンブロット解析
全RNAはグアニジン−イソシアネート−塩化セシウム遠心分離法(非特許文献28)により単離された。正常組織からの全RNAはクローンテック(カリフォルニア州パロアルト)から購入された。全RNAの10〜20μgが1%アガロース ホルムアルデヒドゲル電気泳動にかけられ、ナイロン膜(Duralon−UV膜、ストラタジーン、カリフォルニア州ラホヤ)へ転写された。クローン22からの完全長cDNAを含むSalI消化断片およびβ−アクチンcDNA(クローンテック)はランダムプライミングにより標識され、プローブとして使用された。プローブとのハイブリダイゼーションはQuikHybプロトコール(ストラタジーン)に従って68℃で2〜16時間行われた。膜を、2×SSC/0.1%SDSを用いて2回、60℃にて15分間、0.1×SSCを用いて1回、60℃にて15分間洗浄し、オートラジオグラフィーを行った。
【0124】
メラノーマ患者からの培養TILの特徴付け
HLA−A2メラノーマ患者から複数のTILが確立され、HLA−A2およびHLA−A2患者からのメラノーマ細胞株の溶解が試験された。患者のHLA型検査は通常のHLA型検査技術により実施された。MHCクラスI抗原を最もよく発現し、メラノーマ抗原認識の優勢な拘束要素であることが示されている(非特許文献85)ので、HLA−A2が選択された。TIL501、TIL1235およびTIL1200はHLA−A2拘束性様式で共有メラノーマ抗原の特異的認識を示した。TIL501.A42は限界希釈によりTIL501から確立されたT細胞クローンであった。これらのTILは種々のHLA−A2メラノーマまたはメラノサイト細胞株と同時培養された場合には溶解またはIFN−γ、TNFαおよびGM−CSFを含むサイトカインの放出を起こすが、HLA−A2メラノーマ細胞株または乳癌細胞株MDA231を含むHLA−A2非メラノーマ細胞株では起こさない。2つの代表的な実験が表1に示されている。従って、これらのCTLはメラノサイト系列特異的抗原に由来する非突然変異体ペプチドを認識するように思われる。
【0125】
T細胞により認識されるメラノーマ抗原をコードするcDNAのクローニング
HLA−A2501melメラノーマ細胞株からのcDNAライブラリーを、2つの非常にトランスフェクト可能なHLA−A2.1癌細胞株MDA231およびA375内へトランスフェクトした。これらの細胞株はメラノーマ特異的TILにより溶解されないが、M159−66ペプチド(GILGFVFTL;1文字コード(配列番号45)、インフルエンザマトリックスタンパク質由来)でインキュベーション後またはM1遺伝子を含む組換え体ワクシニアウイルスの感染後にHLA−A2拘束性インフルエンザM1特異的CTLにより溶解される(データは示されていない)。従って、これらの細胞株は正常な抗原プロセッシングおよび提示能を示すが、関連メラノーマ抗原の発現が欠けているためこれらメラノーマ特異的TILにより溶解されない。G418で選択後、各々の細胞株から約6700個のトランスフェクトされたクローンが単離され、マイクロプレートで増殖された。IFN−γ放出アッセイを用い、21個のMDA231および27個のA375陽性クローンが単離され、再スクリーニングされた。これらのクローンの内、8個のMDA231および7個のA375クローンが2回目のスクリーニングアッセイで陽性であった。
【0126】
組み込まれた遺伝子をとるため、これら陽性トランスフェクト体からのゲノムDNAを用い、挿入遺伝子に隣接するSP6およびT7プライマーでPCRが行われた。MDA−22およびMDA−23トランスフェクト体からの1.6kbバンドを含む1〜2本の鮮明なバンドを示した7個のトランスフェクト体から増幅された8つの遺伝子がpCRIIクローニングベクター内へサブクローン化され、さらにpcDNA3真核生物発現ベクター内へクローン化された。cDNA22プローブによるノーザンブロット解析により検出された1.6kbバンドは、この断片が完全長cDNAであったことを示唆した。
【0127】
クローン22または23からのcDNAを含む発現ベクターpcDNA3のCOS7または293細胞内への一過性トランスフェクションは、HLA−A2.1遺伝子と一緒に加えると、IFN−γの特異的放出により示されるTIL1235およびTIL501.A42への反応性を与えた(表2、実験1および実験2)。これらcDNA断片のMDA231またはA375mel細胞株内への安定なトランスフェクションもまた、TIL1235およびTIL501.A42への反応性を与えた(表2、実験3)。TIL501.A42はcDNA22で安定にトランスフェクションされたMDA231を溶解できた(データは示されていない)。以上の結果は、メラノーマ患者からのHLA−A2拘束性TILにより認識されるメラノーマ抗原をこれらのcDNAがコードしていることを示している。別のクローン、MDA−25のトランスフェクションはTIL1200のみからインターフェロンγの放出を刺激した。このcDNAの特徴付けにより、それはモノクローナル抗体HMB45により認識され、従来記述されているメラノーマ抗原gp100とは類似しているものの異なっていることが明らかにされた。このクローンは実施例3にさらに詳細に記載されている。
【0128】
【表1A】

【0129】
【表1B】

【0130】
TIL501.A42およびTIL1235はほとんどのHLA−A2メラノーマ細胞株を溶解し、HLA−A2メラノーマおよびメラノサイトと培養した場合IFN−γを分泌した。
*51Cr放出アッセイはTIL501.A42に対してはE:T=20:1で、TIL1235に対しては40:1で行われた。乳癌細胞株MDA231を除いて全ての標的はメラノーマ細胞株である。
**TILおよび刺激細胞を20時間一緒にインキュベートした後、上清中のIFN−γが測定された。501melおよび586melはメラノーマ細胞株である。他の全ては正常メラノサイト細胞株である。
LAK:リンホカイン活性化キラー細胞。
++TIL586はMHCクラスI拘束性メラノーマ特異的TILであり、HLA−A2により拘束されない。
【0131】
クローン22および23のcDNA配列はPCRにより導入された変化と信じられる単一の塩基を除いて同一であった。2つの他の独立して増幅された断片もまたこの領域を明らかにするために配列決定され、コンセンサス配列が図1に示されている。この遺伝子中の最長のオープンリーディングフレームは13kdの118アミノ酸タンパク質に対応する354塩基から成っている。この配列は確立されたデータベース内のどの完全長ヌクレオチド配列またはタンパク質配列とも有意な類似性を示さなかった。アミノ酸27〜47位はHLA−A2結合ペプチド(非特許文献56、非特許文献86、非特許文献55、非特許文献87)を含むであろう疎水性領域から成っている。cDNA22および23によりコードされている抗原はMART−1(T細胞−1により認識されるメラノーマ抗原)と称された。作製した10種のHLA−A2拘束性TIL株のうち9種がMART−1を認識し、4種がここに記載し、単離されたgp100の1つの型を認識したが(実施例3参照)、どれもMAGE−1を認識しなかった(非特許文献88;データは示されていない)。
【0132】
【表2】

【0133】
DEAEデキストラン法によりHLA−A2.1および/またはcDNA22を含むpcDNA3で一過性にトランスフェクトされたCOS7または293細胞株(実験1および実験2)、またはcDNA23で安定にトランスフェクトされたA375またはMDA231細胞株(実験3)と一緒にTILを20時間インキュベートした後に上清中のIFN−γが測定された。IFN−γはTILがcDNA22または23でトランスフェクトされたHLA−A2細胞株とインキュベートされた場合のみに分泌された。
刺激因子なしのTIL単独により分泌されたIFN−γ(<50pg/ml)は差し引かれている。
実施されなかった。
【0134】
【表3】

【0135】
遺伝子22の完全長cDNAをプローブとして、10〜20μgの全RNAをノーザンブロット解析で調べた。ほとんどのメラノーマ、試験された全てのメラノサイト細胞株および網膜が陽性であった。
【0136】
MART−1の発現
MART−1をコードしている遺伝子の発現を評価するため、メラノーマ、メラノサイトおよび非メラノーマ癌細胞株ならびに正常組織を含む種々の細胞株のノーザンブロット解析が実施された(表3)。10種のHLA−A2メラノーマ細胞株の内の7種、4種全てのHLA−A2メラノーマ細胞株、および試験された7種全てのメラノサイト株でMART−1 RNA発現が陽性であった。最近我々の研究室で確立された全てのHLA−A2メラノーマ細胞株はこのノーザンブロット解析においてMART−1 RNAを発現した。表3に示した10種のHLA−A2メラノーマ細胞株においてMART−1発現とTIL501.A42による溶解の間には完全な相関がある。MART−1抗原を認識するTIL501.A42は試験された17種のHLA−A2メラノーマ細胞株の内13種(76%)を溶解させた(データは示されていない)。ノーザンブロット解析によりmRNA発現が試験された10種の正常ヒト組織では網膜のみが陽性であった。T細胞、B細胞、腎臓上皮細胞または線維芽細胞、または19種の非メラノーマ腫瘍では陽性は観察されなかった。従って、MART−1は、皮膚および網膜由来のメラノサイト系列細胞で発現され、またメラノーマ細胞でも発現される、これまでに記載のない抗原であるようである。
【0137】
T細胞クローンおよび免疫選択されたメラノーマクローン(非特許文献89、非特許文献90)の一団を用いた研究、並びにメラノーマ細胞からのHPLC分画ペプチド分析の研究(非特許文献91、非特許文献92)は、免疫応答を惹起できる複数の抗原ペプチドがメラノーマ上に存在することを示唆している。cDNAクローニングにより、メラノーマ抗原をコードしている2つの遺伝子が同定されている;MART−1(図1;配列番号1)およびgp100遺伝子(実施例3参照;図4Aおよび図4B;配列番号26)。MART−1およびここで同定された型のgp100(図4および図5A;配列番号26および27)は両方ともHLA−A2.1拘束性TILで認識される。MART−1抗原は約13kdの118アミノ酸のタンパク質である。MART−1に関する遺伝子またはアミノ酸配列はこれまで報告されていない。
【0138】
MART−1 RNAは14種のHLA−A2.1陽性または陰性メラノーマ株の内11種、7種のメラノサイト株の内7種で発現された。網膜組織を除き、試験された正常組織、T細胞株、B細胞株、腎臓上皮株、線維芽細胞株、または結腸癌、乳癌、脳腫瘍、腎臓癌、肺癌または骨肉腫由来の19種の腫瘍細胞株ではMART−1発現は観察されなかった。
【0139】
繰り返しのin vivoまたはin vitro免疫化後の末梢血リンパ球に由来するT細胞により認識される別のメラノーマ抗原、MAGE−1が記載されている(非特許文献18)。
【0140】
メラノーマ腫瘍抗原に関連した遺伝子の同定は、ウイルスまたは細菌ベクター系内へのこれら遺伝子の導入に基づいた癌患者の免疫療法において活性で特異的な免疫化法に対する新規な可能性を開くものである。MART−1のようなメラノサイト−メラノーマ系列抗原に対して誘導された免疫応答は正常細胞に対しても発生されるであろう可能性が存在する。多分抗メラノサイト免疫応答から生じる白斑が好ましい予後に関連することがメラノーマ患者において報告されており(非特許文献93、非特許文献94)、化学免疫療法に対応する患者においても報告されている(非特許文献95)。抗メラノサイト−メラノーマ反応性を持つTILが進行メラノーマ患者に投与されており(非特許文献5、非特許文献6)、散在性白斑がこれらの患者に見られるが、網膜細胞上のこれらメラノサイト抗原の潜在的発現に関係した不利な眼科学的影響は観察されなかった。
【0141】
HLA−A2は約50%の個体に存在しており、HLA−A2拘束性MART−1抗原もまたメラノーマ上に広く発現されているので、MART−1による免疫化は活性な免疫療法の開発に特に有用であろう。
【実施例2】
【0142】
MART−1の免疫原性エピトープの特徴付け
メラノーマ特異的CTL株およびTIL由来クローンの作製
メラノーマ特異的CTL株は、前に報告されているように(非特許文献81)、転移性メラノーマから作製される単一細胞懸濁液を6000U/mlのIL−2(Cetus−Oncology Division、カイロン社、カリフォルニア州エメリービル)と培養することにより作製した。T細胞クローンA42は患者501から限界希釈法により確立された。
【0143】
CTLによる抗原認識の評価
非特許文献81に記載されているように、IFN−γ、GM−CSFおよびTNF−αを測定するために51Cr放出アッセイおよびELISAを用いたサイトカイン放出アッセイが実施され、TILの反応性が解析された(実施例1参照)。メラノーマ細胞株は本研究室で確立された。TILによる既知抗原認識の解析のため、MART−1、gp100、またはチロシナーゼ関連タンパク質(gp75)(非特許文献96)をコードしているcDNAをHLA−A2.1 cDNAとともにトランスフェクトされたCOS7細胞株がTILと20時間インキュベートされ、上清へ分泌されたIFN−γ量が実施例1に記載されたようにELISAにより測定された。プラスミドpcDNA3(インビトロジェン、カリフォルニア州サンディエゴ)中のMART−1(実施例1参照)またはgp100(実施例3参照)をコードするcDNAは、TIL1235またはTIL1200を各々スクリーニングすることにより501melメラノーマcDNAからクローン化された(実施例1参照)。pCEV27プラスミド中のチロシナーゼ関連タンパク質(gp75)は、gp75の報告されている配列(非特許文献96)に基づいてPCRにより作製したプローブを用いて501melメラノーマcDNAライブラリーから単離された。
【0144】
ペプチド合成および抗原ペプチドの同定
ペプチドはGilson AMS422多ペプチド合成機を用いて固相法により合成された。ペプチドはVydac C−4カラムを用いて0.05%TFA/水−アセトニトリルで溶出するHPLCにより精製した。抗原ペプチドを同定するため、各々のペプチドと2時間あらかじめインキュベートしたT2細胞株のTIL溶解が51Cr放出細胞毒性アッセイを用いて測定された。
【0145】
HLA−A2拘束性メラノーマ特異的TIL
HLA−A2拘束性メラノーマ特異的CTL株およびクローンA42は、10人のメラノーマ患者の腫瘍浸潤リンパ球から確立された。これらのTILはHLA−A2を発現している自己由来およびほとんどの同種由来の新鮮または培養メラノーマ細胞を認識するが、HLA−A2メラノーマまたはHLA−A2非メラノーマ細胞株(非特許文献12)を認識しなかった。またそれらは新生児皮膚由来HLA−A2正常培養メラノサイトも認識した(実施例1および非特許文献15参照)。すなわち、これらのTILはHLA−A2に関連してメラノーマおよびメラノサイトで発現されるタンパク質に由来する非突然変異体自己ペプチドを認識した。
【0146】
TILによる別のメラノーマタンパク質の認識
MART−1、gp100の1つの型(図5A;配列番号26、実施例3参照)、およびチロシナーゼ関連タンパク質(gp75)を含む4種の単離されたメラノーマタンパク質の認識の頻度を評価するため、COS7に対するTILの反応性が、これら3種のタンパク質をコードしているcDNAを、HLA−A2.1をコードしているcDNAとともにまたはなしでトランスフェクトされた細胞株上で試験された。9種のTILを用いたいくつかの実験の内1つが表4に示されている。9種のHLA−A2拘束性メラノーマ特異的TILの内8種が、MART−1およびHLA−A2.1で同時にトランスフェクトされたCOS7とインキュベートした場合にIFN−γを分泌した。比較的オリゴクローナルなCTL株であるTIL1200(非特許文献97)のみがこのCOSトランスフェクト体に応答しなかった。4種のTIL(620、660、1143、1200)は、HLA−A2.1とともにトランスフェクトした場合にgp100を認識した。TIL1200はTIL620、660および1143と比較して多量のIFN−γを分泌しており、これら後者の3種のTIL株中の小さなT細胞サブセットのみがgp100を認識したことを示唆している。これらTILのいずれもがこのアッセイを用いてもgp75を認識しなかった。従って、MART−1は、メラノーマ患者に由来するほとんどのHLA−A2拘束性TILにより認識される共通のメラノーマ抗原である。
【0147】
TILに対するMART−1エピトープの同定
これらのTILに対するMART−1エピトープを同定するため、HLA−A2.1への既知ペプチドの結合モチーフ(非特許文献56、非特許文献86、非特許文献55)に基づいて23個のペプチドが選択され、合成され(>90%純度)、そして各々のペプチドとT2株をインキュベーション後にTILによるHLA−A2.1T2細胞株の溶解を試験することによりスクリーニングされた(表5)。T2細胞(非特許文献79)細胞株は、ペプチドM9−2、M10−3またはM10−4とあらかじめインキュベートした場合、試験された4種すべてのHLA−A2拘束性メラノーマ特異的TILにより溶解された。両方とも10アミノ酸ペプチドであるM10−3およびM10−4はM9−2配列を含んでおり、M10−3はそのN末端に追加のグルタミン酸を持ち、M10−4はそのC末端に余分のイソロイシンを持っている。これらのペプチドはMART−1の疎水性の推定膜貫通ドメインに位置している。これらのペプチドとインキュベートされた他のHLA−A2細胞を標的として使用した場合に同一の溶解が観察され、それらにはHLA−A2.1遺伝子でトランスフェクトされた、エプスタインーバールウイルス形質転換B細胞のK4B(NIHのWilliam Biddson博士から提供を受けた;非特許文献92)および501EBVB(非特許文献9)、またはHMY−CIR B細胞(NIHのWilliam Biddson博士;非特許文献92)が含まれる(データは示されていない)。
【0148】
ペプチドM9−1、M9−2、M9−3、M10−2、M10−3、M10−4およびM10−5はさらに精製され、MART−1反応性TIL1235またはT細胞クローンA42(図2)によるT2細胞の溶解を感作する相対的能力を評価するために力価を測定された。精製されたペプチドM9−2、M10−3およびM10−4は各々1ng/ml、100ng/mlおよび1000ng/mlの最少濃度が必要とされた。精製されたM10−4は図2に示したように10μgでさえもTILクローンA42により認識されなかった。M9−1、M9−3、M10−2およびM10−5ペプチドはA42でもTIL1235でも認識されなかった。
【0149】
【表4】

【0150】
HLA−A2.1とともにまたはなしで、メラノーマで発現されるタンパク質をコードしているcDNAで同時トランスフェクトされたCOS7細胞と一緒にHLA−A2拘束性メラノーマ特異的TILをインキュベートした後の上清でINF−γは測定された。TIL1200を除く全てのTILは、MART−1およびHLA−A2.1をコードしているcDNAで同時トランスフェクトされたCOS7と培養した場合にIFN−γを分泌した。TIL620、660、1143および1200は、gp100およびHLA−A2.1をコードしているcDNAで同時トランスフェクトされたCOS7と培養した場合にIFN−γを分泌した。
【0151】
【表5】

【0152】
23個のペプチド(配列番号3〜25)(9量体12個および10量体11個)(>90%純度)が合成され、異なった患者由来のTILクローンA42、TIL株TIL1235、TIL660およびTIL1074による溶解性が、各々のペプチド(10μg/ml)とあらかじめインキュベートされたHLA−A2T2細胞に対し、A42に対しては20:1のE:T比で、他のTIL株に対しては40:1のE:T比にて4時間の51Cr放出細胞毒性アッセイで試験された。M9−2、M10−3およびM10−4とインキュベートされた場合にT2細胞はよく溶解された。M10−3およびM10−4は全M9−2配列(下線)を含んでいる。
【0153】
異なった患者から確立されたHLA−A2拘束性TILによるMART−1ペプチドの認識
種々のHLA−A2拘束性MART−1特異的TILがMART−1抗原中の同一エピトープを認識するかまたは異なったエピトープを認識するかを評価するため、各々のペプチドとあらかじめインキュベートされたT2細胞(非特許文献79)の溶解が10人のメラノーマ患者由来TILで試験された。10種のTILを用いた代表的な実験は表6に示されている。M9−2およびM10−3は10種のTILの内9種およびA42クローンで認識され(TIL1200のみが陰性であった)、MART−1およびHLA−A2.1をコードしているcDNAで同時にトランスフェクトされたCOS7細胞と同一の溶解パターンであった。TIL620およびTIL1088はペプチドなしでまたは無関係のペプチド添加後に低レベルの非特異的溶解を示したが、M9−2、M10−3およびM10−5ペプチドとあらかじめインキュベートすると有意にT2細胞の溶解増加を示した。M10−4の認識はTIL内では異なっているが、T細胞クローンA42またはT細胞株TIL1235によるM10−4への異なった反応性と似ていた(図2Aおよび図2B)。M9−2またはM10−3に必要とされるよりも、より高濃度(1μg/ml)のM10−4が溶解のために必要とされた。これらの10種のTILおよびクローンA42はまた、M9−2またはM10−3とあらかじめインキュベートされたT2細胞とインキュベートした場合、IFN−γ、GM−CSFおよびTNF−αを含むサイトカインも分泌した(データは示されていない)。従って、M9−2またはM10−3は、HLA−A2拘束性メラノーマ特異的TILの大多数により認識される共通のエピトープである。
【0154】
【表6】

【0155】
10人の患者由来のTILクローンA42およびTIL株による、精製ペプチドM9−1、M9−2、M9−3、M10−3、M10−4およびM10−5とあらかじめインキュベートされたT2細胞の溶解性が、A42に対しては20:1のE:T比で、他のTIL株に対しては40:1のE:T比にて4時間の51Cr放出アッセイで試験された。10種のTILの内9種は、ペプチドM9−2またはM10−3とインキュベートされたT2細胞を溶解した。10種のTILの内7種は、1μg/ml濃度のペプチドM10−4とインキュベートされたT2細胞を溶解した。
【0156】
10人のメラノーマ患者由来のT細胞による既知メラノーマタンパク質認識の相対頻度が試験された。これらのTILの内9種により優勢に認識されるMART−1抗原中の共通エピトープM9−2およびM10−3も同定された。スクリーニングアッセイにおいて、TIL1235を用いたcDNA発現クローニングによりMART−1をコードしているcDNAが単離された(実施例1参照)。MART−1は1つの膜貫通ドメインを含む118アミノ酸のタンパク質であり、実施例3に記載したgp100の1つの型のcDNAの発現パターンと同様に、ほとんどのメラノーマ細胞ならびに培養メラノサイトおよび網膜で発現される。gp100は10種のTILの内4種により認識される。
【0157】
用量反応分析に基づくと、ペプチドM9−2が溶解について最も効果的にT2細胞を感作しており(図2)、このペプチドが自然にプロセシングされて腫瘍細胞上に提示されているかもしれないことが示唆される。M9−2を認識するT細胞はペプチドM10−3またはM10−4と反応するであろう(なぜなら、後者の10量体ペプチドはペプチドM9−2の9アミノ酸の配列を含んでいるから)。異なったTILによるこれら3ペプチドの認識にはいくらかの相違が存在する。例えば、M10−4はT細胞クローンA42によってはあまり認識されないが、いくつかのTIL株によってはよく認識される。しかしながら溶解を観察するにはより高濃度のM10−4が必要とされた。このことは、HLA−A2に関連するM9−2およびM10−4ペプチドへのTCR親和性の変化によるものであろうし、もしくは、TIL株はM9−2またはM10−4のみを認識する異なったT細胞クローンを含んでいるかもしれない。ペプチドM10−3およびM10−4もまた自然にプロセシングされて腫瘍細胞上に提示されるかもしれない。HLA−A2により提示される多数のメラノーマ抗原の存在は、種々のT細胞クローンによるメラノーマ細胞クローンの認識を解析することにより(非特許文献89、非特許文献90)、またはHLA−A2メラノーマ細胞から単離されたHPLCペプチド画分を解析することにより(非特許文献91、非特許文献92)、以前に示唆されている。
【0158】
メラノーマ患者由来のほとんどのHLA−A2拘束性TILが共通のMART−1ペプチドを認識するがgp75は認識しないという観察結果は、M9−2またはM10−3 MART−1ペプチドが、in vivoでT細胞応答を誘導する際に他の既知メラノーマ抗原よりも免疫原性であることを示唆している。本研究で使用されたいくつかのTILがIL−2とともに自家移植患者に注射され、興味深いことにgp100タンパク質(図5A;配列番号27)を認識する4種全てのTIL(620、660、1074、1200)が有効に腫瘍退縮を誘導した(50%を超える腫瘍減少)。TIL1200を除く全てはMART−1も認識した。
【実施例3】
【0159】
in vivo腫瘍拒絶に関連する腫瘍浸潤リンパ球により認識される第2のヒトメラノーマ抗原の同定
cDNA発現クローニング
gp100と称されるメラノーマ抗原の1つの型をコードしているcDNA25クローンは、実施例1および非特許文献83に記載されているような技術および類似の技術を用いてクローン化された。簡単に記すと、501melメラノーマ細胞株から作製されたλpCEV27中のcDNAライブラリーでトランスフェクトされた乳癌細胞株MDA231(ATCC#HTB26)をTILと同時培養した場合のインターフェロンλ(IFN−γ)分泌の測定により抗原陽性をスクリーニングした。TIL1200は非特許文献81に記載されているように作製した。組み込まれたcDNAは陽性トランスフェクト体のゲノムDNAからPCRにより回収され、哺乳類発現プラスミドpCDNA3(インビトロジェン、カリフォルニア州サンディエゴ)内へクローン化された。cDNA25の完全長cDNAはcDNA25プローブを用いて501mel λファージライブラリーから単離された。完全長cDNA25を含むλファージは、XhoIで消化し、次にT4 DNAリガーゼで自己連結してプラスミドpCEV27−FL25を作製した。もしくは、gp100のために設計された特異的プライマーを用いてPCRにより完全長cDNA25をpCRII(インビトロジェン)にクローン化し、続いてpcDNA3内へクローン化した(pcDNA3−FL25)。このcDNAがメラノーマ抗原をコードしているか否かを試験するため、COS7、A375またはMDA231内へ再トランスフェクトし、得られたトランスフェクト体はTIL1200の刺激で試験した。プラスミドクローンpCEV27−FL−25のDNA配列を自動化DNAシークエンサー(モデル373A;Applied Biosystems社)にて、Taqダイデオキシターミネーターサイクルシークエンシングキット(Applied Biosystems社)を用い、使用説明書に従って決定した。
【0160】
ペプチド合成および抗原ペプチドの同定
ペプチドはGilson AMS422多ペプチド合成機を用いて固相法により合成された。ペプチドはVydac C−4カラムを用いて0.05%TFA/水−アセトニトリルで溶出するHPLCにより精製した。抗原ペプチドを同定するため、ペプチドと2時間あらかじめインキュベートしたT2 RET細胞のTILによる溶解が51Cr放出細胞毒性アッセイを用いて測定された。
【0161】
TIL1200を用いる転移性メラノーマ患者の処置
広く転移したメラノーマを持ち、化学療法および放射線治療がうまくいかなかった29才の男性患者(患者番号1200)を25mg/kgのシクロホスホアミドの単一用量で処置し、続いて1.6×1011個のTIL(9.1×10個のインジウム標識TILを含む)に加えて7用量のIL−2(720,000IU/kg)を8時間ごとに静脈注射した。TILおよびIL−2による2回目の処置は3週間後に行われた。放射性核種スキャンはTILの腫瘍沈着による局在化を示した(図3A)。処置後8日および11日目での皮下腫瘍の生検は腫瘍へのTILの有意な局在化を示した(正常組織と比較した腫瘍グラム当たりの注射物の比は各々14.9および14.0であった)。患者の癌は1回目の処置後急速に退縮した。処置後3ヶ月では3カ所の肝臓病変の内2カ所が消失し、3番目の病変も50%退縮していた。多数の皮下転移物も図3Bに示されているように(個々の病変の垂直直径の積が示されている)完全に退縮していた。
【0162】
TIL1200のin vitro機能の特徴付け
HLA−A2メラノーマ患者から確立された多数のTIL株はMHCクラスI拘束性様式でメラノーマ細胞株を溶解させ(非特許文献12)、同一の腫瘍細胞株と一緒に培養した場合IFN−γ、腫瘍壊死因子α(TNFα)または顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)を放出することが示されている(非特許文献13)。患者1200の転移性皮下腫瘍塊から確立されたCD8CTL株TIL1200は、新鮮な自己由来メラノーマ細胞、および15種のHLA−A2同種由来メラノーマ細胞株の内10種を溶解させるが、18種のHLA−A2メラノーマ細胞株の内16種または8種のHLA−A2非メラノーマ細胞株の内6種は溶解させない(非特許文献97)。表7はTILにより溶解される5種の代表的なHLA−A2メラノーマ細胞株、TILにより溶解されない4種の代表的なHLA−A2メラノーマ細胞株および1種のHLA−A2メラノーマ細胞株に対する細胞毒性アッセイを示している。TIL1200はまた、新生児包皮から確立されたHLA−A2正常培養メラノサイトおよびHLA−A2メラノーマ細胞株が同時培養された場合にIFN−γを分泌した(表8)。従って、TIL1200はほとんどのメラノーマおよびHLA−A2拘束性様式の培養新生児メラノサイトにおいて発現される非突然変異自己ペプチドを認識するようである。
【0163】
【表7】

【0164】
前に記載したように(非特許文献81)、40:1のエフェクター:標的比で細胞毒性を測定するために5時間−51Cr放出アッセイが実施された。モノクローナル抗体HMB45(Enzo Diagnostics、ニューヨーク州ニューヨーク)により認識されるHLA−A2およびgp100の発現はフローサイトメトリー(FACS)により測定された。gp100 RNAの発現はcDNA25をプローブとし、ノーザンブロットにより解析された。
−/+は非常に弱い陽性を示している。
【0165】
【表8】

【0166】
TILによるIFN−γ分泌は前に実施例1で記載したようにELISAで測定した。TIL単独で分泌されたIFN−γ量は差し引かれている(TIL888に対しては88pg/ml、TIL1200に対してはゼロ)。TIL888はMHCクラスI拘束性メラノーマ特異的CTLであるが、HLA−A2によっては拘束されない。NHEM、FMおよびHAは正常培養メラノサイト細胞株に当てはまるが、他は全てメラノーマ細胞株である。
【0167】
T細胞に認識されるメラノーマ抗原をコードするcDNAのクローニング
ほとんどのHLA−A2拘束性メラノーマ特異的TILにより溶解されたHLA−A2501melメラノーマ細胞株からのλpCEV27中のcDNAライブラリーは、非常にトランスフェクトされ易いHLA−A2メラノーマ抗原陰性MDA231クローン7またはA375クローン1−4内へ安定にトランスフェクトされた。G418耐性細胞を集め、各々の細胞株から約6700個の個々のトランスフェクト体を単離し、TIL1200からのIFN−γ分泌を刺激する能力でスクリーニングした。2回目のスクリーニングで陽性であった4個のMDA231および1個のA375トランスフェクト体から、組み込まれたDNAに隣接するSP6/T7プライマーを用いるPCRにより6つのDNA断片が単離され、哺乳類発現ベクターpcDNA3(インビトロジェン)内へクローン化された。
【0168】
pcDNA3ベクター中のこれらの断片は、pcDNA3−HLA−A2.1とともにまたはなしで、COS7細胞において一過性に発現させた。HLA−A2.1とともに試験されたcDNAの1つ、cDNA25をCOS7内へトランスフェクトすると、再現性よくTIL1200からのIFN−γ分泌刺激能が与えられた。A375内へのcDNA25の安定なトランスフェクションもまたTIL1200からのIFN−γ放出を刺激した(表9、実験1および実験2)。cDNA25プローブを使用したメラノーマのノーザンブロット解析により検出された2.2kbバンドは、クローン化1.6kb断片は完全長cDNAではなかったことを示唆している。3個のcDNA25のクローンを独立にPCRで増幅して、GeneBankデータベースのコンセンサスDNA配列と比較したところ、cDNA25は、過去に登録された2つの遺伝子、すなわちgp100(GenBank受託番号M77348)およびPmel17(非特許文献74)とは異なることが判明した。cDNA25は、GenBankのgp100(受託番号M77348、gp95としても知られている。)とは2つのヌクレオチドが異なっており、Pmel17の配列(非特許文献74)と比べると、3塩基の違いと、21塩基の欠失がある点で異なっていた(図5B)。
【0169】
【表9】

【0170】
一部欠損cDNA25を含むpcDNA3(pcDNA3−25)を安定にトランスフェクトしたHLA−A2A375(実験1)、またはpcDNA3−25(実験2)、全長cDNA25を含むpcDNA3(pcDNA3−FL25)もしくは全長cDNA25を含むpCEV27(pCEV27−FL25)(実験3)をHLA−A2.1を含むpcDNA3(HLA−A2.1)と共に一過性にトランスフェクトしたCOS7を、TIL1200とともにインキュベートしたところ、TIL1200はIFN−γを分泌した。HLA−A2の発現はフローサイトメトリーにより決定され、インターフェロンγの分泌はELISAにより測定された。
【0171】
全長cDNA25(FL25)を、2つのプラスミドpCEV27−FL25またはpcDNA3−FL25に単離した。いずれのプラスミドもpcDNA3−HLA−A2.1と共にCOS7にトランスフェクトしたところ、TIL1200によるIFN−γ分泌誘導能がCOS7に付与された。全長DNAとHLA−A2.1とをトランスフェクトしたCOS7により刺激されたIFN−γの分泌量は、501melの刺激による量と同程度であり、一部欠損cDNA25をトランスフェクトしたCOS7の刺激による量よりも高かった。これはおそらく一部欠損cDNA25において、正常AUG開始コドンで開始される翻訳が改良されたことによると思われる(表9、実験2および実験3)。あるいは、一部欠損cDNA25で失われた5’領域が、TIL1200においてクローンにより認識される他のエピトープを含んでいるのかもしれない。TIL1200からのIFN−γ放出にはHLA−A2.1の発現が必要であったこと、およびトランスフェクトされた細胞が無関係なTILからのIFN−γ分泌を刺激しなかったという事実(データは示していない)は、cDNA25がHLA−A2.1存在下でTIL1200により認識される抗原をコードしていたこと、およびT細胞からのIFN−γ放出を非特異的に誘導する分子をコードしていなかったことを示す。
【0172】
cDNA25プローブを用いたスクリーニングにより501mel cDNAライブラリーからクローニングされた一部欠損cDNA25および全長cDNA25の塩基配列および対応するアミノ酸配列(図5A)を、正常メラノサイトから単離されたPmel17、およびメラノーマ細胞株MEL−1から単離されたgp100のGenBank配列(図5B)と比較した。全長cDNA25は、gp100のアミノ酸配列と比べると162位において異なっていた。このアミノ酸の相違は、おそらく多型または腫瘍における突然変異により生じたのであろう。Pmel17と比較すると、cDNA25は162位および274位の2つのアミノ酸が異なり、Pmel17では588〜594位に存在した7アミノ酸を含まなかった。オリジナルのMDA231トランスフェクト体から単離された一部欠損cDNA25のアミノ酸配列は、1つの余分なシチジル酸によるフレームシフトのために3’末端(649位〜最後まで)に異なる配列を持つ。この相違が、真に異なる対立遺伝子であることによるのか、またはDNAを操作する過程で生じた突然変異によるのかは明確ではない。とはいえ、TIL1200は、236位〜648位までの間に位置する非突然変異ペプチドを認識するようである。cDNA25はまた、アミノ酸配列において、ウシの網膜色素上皮で特異的に発現するcDNA RPE1(非特許文献98)と87%の類似性、およびニワトリの色素上皮細胞から単離されたメラノソーム基質タンパク質をコードするcDNA MMP115(非特許文献97)と60%の類似性を示した。
【0173】
gp100タンパク質は、モノクローナル抗体HMB45により認識されることが知られていた(非特許文献99)。全長cDNA25をトランスフェクトしたCOS7細胞は、フローサイトメトリーで、このモノクローナル抗体を用いて検出された。pCEV27−FL25またはpcDNA3−FL25のいずれかを一過性に発現した後、COS7は、HMB45により検出される抗原を発現した(データは示していない)。
【0174】
cDNA25のRNAの発現
cDNAの組織特異的発現を評価するため、cDNA25プローブを用いてノーザンブロット解析を行った。15種のメラノーマ細胞株のうち10種、および6種のメラニン細胞株の全てがcDNA25を発現していた(図6Aおよび図6B)。多くの正常組織では網膜のみで発現が見られた(図6C)。T細胞(TILA、B)由来の7種の細胞株、B細胞(501EBVB、836EBVB)および線維芽細胞(M1)、および20種の非メラノーマ腫瘍細胞株(結腸癌のCollo、SW480、WiDr;乳癌のMDA231、MCF7、HS578、ZR75;神経芽細胞腫のSK−N−AS、SK−N−SH;ユーイング肉腫のTC75、RD−ES、6647;肉腫の143B;神経膠腫のU138MG、HS683;腎細胞癌のUOK108、UOK117;肺小細胞癌のH1092;バーキットリンパ腫のDaudi;骨髄腫のHMY)は全てcDNA25を発現していなかった(データは示していない)。したがって、この遺伝子は、モノクローナル抗体であるHMB45、NKI/betab、またはHMB−50を用いて解析したときの、先に単離された型のgp100の発現パターンと同様に、メラノサイト系列細胞で特異的に発現していることが明らかとなった(非特許文献99、非特許文献100、非特許文献101、非特許文献102、非特許文献103)。cDNA25プローブにより新生児の培養メラノサイト細胞株で検出されたRNAの発現レベルは、メラノーマ細胞株での発現に比べて有意に低かった。cDNA25を用いたノーザンブロット解析およびHMB45抗体を用いたフローサイトメトリーにより検出されたgp100の発現と、10種のHLA−A2メラノーマ細胞株でのTIL1200によるメラノーマの溶解との間には、表7に示すように完全な相関があった。
【0175】
gp100でのエピトープの同定
一部欠損した形のcDNA25のアミノ酸配列をHLA−A2.1の既知の結合領域(非特許文献56、非特許文献86、非特許文献55)と比較することにより、cDNA25をもとに長さ9または10アミノ酸の30個のペプチドを合成した。TIL1200は、LLDGTATLRL配列のペプチド(配列番号27、残基457〜486。図5A、配列番号33)と共にインキュベートしたときのみHLA−A2細胞株T2を溶解したが、他の29個のペプチドと共にインキュベートしたときには溶解しなかった(表10、図5A)。LLDGTATLRL配列のペプチド(配列番号33)のみが、TIL1200によるIFN−γ分泌をも刺激することができた(データは示していない)。
【0176】
TIL由来の多くのメラノーマ特異的CTLが、メラノサイト−メラノーマ系列に特異的なタンパク質に由来する非突然変異自己ペプチドを認識するようである。なぜなら、これらのTILは、適切な拘束要素を共有するほとんどのメラノーマ細胞株および正常培養メラノサイトを認識するからである(非特許文献16、非特許文献15)。メラノーマ患者の免疫療法に有益なメラノーマ抗原を単離および同定する目的でTIL1200が用いられた。TILは転移癌の患者に投与すると腫瘍部位に局在し、かつ腫瘍の劇的な退縮を伴った。非活性化リンパ球およびリンホカイン活性化キラー細胞とは対照的に、自己TILは腫瘍部位に局在することが示されている。この局在は、これらのTILが腫瘍の退縮を仲介する能力と相関していた(データは示していない)。複数のCTL種を含むTIL株の1つであるTIL1200は、最も高頻度で発現するMHCクラスI抗原(約50%の人がもつ)でありかつメラノーマ特異的CTLの誘導における主要な拘束要素であることが示されているHLA−A2の存在下で、腫瘍抗原を認識した(非特許文献85)。
【0177】
T細胞による認識をスクリーニングに用いてcDNA発現クローニングを行うことにより、TIL1200によって認識される抗原をコードし、かつモノクローナル抗体HMB45、HMB50、またはNKI/betabによっても認識される膜局在糖タンパク質gp100の1つの型として同定された、1つのcDNA(図4Aおよび図4B、配列番号26)が同定されている(非特許文献99、非特許文献100、非特許文献101、非特許文献102、非特許文献103)。これらの抗体は、メラノサイト系列の組織に高度に特異的で、かつほとんどのメラノーマ細胞を強く染色する。NKI/betabは、成人の正常皮膚のメラノサイトとも反応する(非特許文献102)。HMB45またはNKI/betab抗体のいずれかを用いた免疫電子顕微鏡の研究によって、gp100タンパク質は、主に膜および細胞質内の第IおよびII期のメラノソームの線維状マトリックスに位置することが明らかになった(非特許文献102、非特許文献104)。全く独立な手順によって別の型のgp100をコードするcDNAもgp100に対するウサギポリクローナル抗血清を用いたスクリーニングによって単離され(非特許文献99)、TIL1200はこのcDNAクローンをトランスフェクトさせたHLA−A2細胞株も溶解した(非特許文献105)。
【0178】
【表10】

【0179】
TIL1200は、LLDGTATLRL(残基457〜466)の10量体ペプチドと共に刺激するとT2細胞を溶解したが、他の29個のペプチド(配列番号27)(残基273〜281、残基297〜306、残基373〜381、残基399〜407、残基399〜408、残基409〜418、残基456〜464、残基463〜471、残基465〜473、残基476〜485、残基511〜520、残基519〜528、残基544〜552、残基544〜553、残基570〜579、残基576〜584、残基576〜585、残基585〜593、残基592〜600、残基597〜605、残基597〜606、残基602〜610、残基602〜611、残基603〜611、残基605〜614、残基606〜614、残基606〜615、残基619〜627、残基629〜638)の場合は溶解しなかった。
TIL1235は、HLA−A2拘束性メラノーマ特異的CTLであり、gp−100を認識しない。
**E:Tは50:1である。
++NDは、行っていないことを示す。
【0180】
腫瘍内の自己抗原gp100と反応性のあるT細胞の存在、および抗原反応細胞の特異的な蓄積および増加から考えられる結果としての腫瘍部位におけるこれらT細胞の豊富化の可能性(非特許文献17)は、癌の増殖における自己抗原への免疫応答の性質および自己抗原に対する免疫寛容の機構について重要な疑問を提起する。ノーザンブロット解析によって示されたメラノサイトにおけるgp100の発現と比べてメラノーマ細胞におけるgp100の発現が増加していること、または腫瘍部位に独特の炎症状態(サイトカインの分泌および細胞表面の補助刺激性分子の発現と関係していると思われる)が存在することが、gp100に対する寛容を発生させる可能性がある。脱色素化が、優れた予後と関連し(非特許文献93、非特許文献94)、そしてメラノーマ患者への化学免疫療法に対する臨床反応(非特許文献95)とも関連することが報告されている。メラノーマ特異的TILが投与された患者には散発性の白斑が見られるが、メラノサイトの破壊に関連する不都合な眼科学的作用は観察されていない。患者1200は白斑またはいかなる眼科的副作用も生じなかった。
【0181】
TIL1200とIL−2を患者1200へ導入することが癌の退縮に関連していたため、gp100タンパク質(図5A;配列番号27)および同定された10アミノ酸からなるペプチドはヒトの腫瘍拒絶抗原を代表すると思われる。IL−2もまた腫瘍拒絶に関連しているであろうが、生体内(in vivo)におけるTIL2000の腫瘍堆積物への到達および抗腫瘍応答の急速性はTIL療法に対する応答の特徴である。MART−1同様にgp100を認識した他の3種のTIL株の養子免疫伝達も腫瘍の退縮に関連していた(データは示していない)。
【0182】
チロシナーゼ(非特許文献20)およびMART−1(実施例1を参照)はHLA−A2拘束性CTLによって認識されたメラノーマ抗原として同定されている。もう1つの抗原であるMAGE−1はHLA−A1拘束性メラノーマ特異的CTLによって認識され、精巣および様々な癌細胞において発現している(非特許文献18)。しかし、近年開発された10種のHLA−A2拘束性TILはいずれもMAGE−1を認識しないと思われている(非特許文献88)。
【0183】
メラノーマにおけるgp100タンパク質の広範な発現、腫瘍に浸潤するT細胞によるペプチドの認識、個人の50%に存在しているHLA−A2によるその拘束性、および抗gp100反応性と患者1200における癌退縮との関連性は、gp100抗原、特にgp100アミノ酸配列に由来する新規免疫原ペプチド(図5A;配列番号27)がメラノーマ患者に対する有効な免疫療法の開発に特に有用であることを示唆する。
【実施例4】
【0184】
生体内(in vivo)腫瘍認識に関連するTILによるヒトメラノーマ抗原の複数エピトープの認識
材料と方法
TILからのCTLの作製および転移性メラノーマ患者の治療
メラノーマ特異的なCTLは、以前に記載された方法(非特許文献81)に従って、6000IUのIL−2を含む培地においてTILから誘導および増殖させた。NCIの外科部門の自家移植患者に投与された全ての使用可能なHLA−A2拘束性メラノーマ特異的CTLが本研究において使われた。TILは以前に報告されているように(非特許文献5、非特許文献106)、IL−2とともに転移性メラノーマの自家移植患者の静脈内に投与した。フィッシャーの正確確立検定を使用して、TILによるgp100の認識とTIL処理に対する外科的応答との関連性の決定、並びにMART−1認識との関連性の決定を行った。
【0185】
ペプチドの合成
ペプチドはペプチド合成機(モデル AMS 422;Gilson社、オハイオ州ワージントン)を使用して固相法により合成した(純度>90%)。合成されるペプチドは、報告されているHLA−A2.1結合モチーフに基づくヒトgp100配列から選択した(非特許文献56、非特許文献86、非特許文献55、非特許文献107)。以下のペプチドも試した:8量体ペプチド8個(199位、212位、218位、237位、266位、267位、268位、269位の残基から始まる;図7A参照)、9量体ペプチド84個(残基が2位、4位、11位、18位、154位、162位、169位、171位、178位、199位、205位、209位、216位、241位、248位、250位、255位、262位、266位、267位、268位、273位、278位、280位、283位、286位、287位、298位、290位、309位、316位、332位、335位、350位、354位、358位、361位、371位、373位、384位、389位、397位、399位、400位、402位、407位、408位、420位、423位、425位、446位、449位、450位、456位、463位、465位、485位、488位、501位、512位、536位、544位、563位、570位、571位、576位、577位、578位、583位、585位、590位、592位、595位、598位、599位、601位、602位、603位、604位、606位、607位、613位、619位、648位から始まる;図7A参照)および10量体ペプチド77個(残基が9位、17位、57位、87位、96位、154位、161位、169位、177位、197位、199位、200位、208位、216位、224位、232位、240位、243位、250位、266位、267位、268位、272位、285位、287位、289位、297位、318位、323位、331位、342位、350位、355位、357位、365位、380位、383位、388位、391位、395位、399位、400位、406位、407位、409位、415位、432位、449位、453位、457位、462位、476位、484位、489位、492位、511位、519位、536位、543位、544位、548位、568位、570位、571位、576位、577位、584位、590位、595位、598位、599位、601位、602位、603位、605位、611位、629位から始まる;図7A参照)を合成した。第1のスクリーニングにおいて同定された、可能性のあるエピトープはC−4カラム(VYDAC、カリフォルニア州ヘプセリア)を用いてHPLCによって精製し(>98%純度)、ペプチドの分子量は以前に記載されているように(実施例3;非特許文献108、非特許文献109)、質量分析測定によって確認された。
【0186】
HLA−A2.1へのペプチド結合アッセイ
以前に記述されているように(非特許文献55、非特許文献54、非特許文献110)、可溶性HLA−A2.1重鎖、ヒトβ2−マイクログロブリン、放射性標識したペプチドHBc18−27(FLPSDYFPSV)および様々な濃度の試料ペプチドを、プロテアーゼ阻害剤の存在下で2日間室温でともにインキュベートした。HLA−A2.1に結合した標識ペプチドの割合はゲルろ過による分離後に計算され、標識ペプチドの結合の50%を阻害するのに必要な試料ペプチドの濃度を計算した。ペプチドのHLA−A2.1への相対親和性についても、以前に記載されたように(非特許文献110)、比(標識ペプチドの結合を50%阻害するための標準HBc18−27ペプチド濃度/標識ペプチドの結合を50%阻害するための試料ペプチド濃度)として計算した。ペプチドの結合は、強(<50nMで50%を阻害、比>0.1)、中(50〜500nM、比0.1〜0.01)、または弱(>500nM、比<0.01)として定義する(非特許文献55、非特許文献54、非特許文献110)。
【0187】
gp100の全長cDNAを含むpcDNA3プラスミド(実施例3;非特許文献109)をXhoIおよびXbaIで消化した。α−ホスホロチオン酸デオキシヌクレオシド3リン酸をXbaI部位へ組込ませた後、Exo Size Deletion Kit(New England Biolabs社、マサチューセッツ州ベバリー)を用いて標準エクソヌクレアーゼIII段階的欠失(nested deletion)を行った。欠失したクローンは自己連結および増幅を行った。それぞれのクローンの正確な欠失はDNA配列決定によって確認した。エピトープを含む領域を同定するために、全長gp100 cDNAの3’末端からエクソヌクレアーゼによる連続欠失によって作製されたcDNA断片(D3、D5、D4、C3)並びに5’コード領域を欠く欠失型gp100 cDNA(25TR)(実施例63;非特許文献109)を含むpcDNA3プラスミド(インビトロジェン、カリフォルニア州サンディエゴ)をHLA−A2.1 cDNAとともにCOS7細胞にトランスフェクトさせ、トランスフェクトされたCOS細胞のTILによる認識をIFN−γ放出アッセイを用いて評価した(実施例1;非特許文献111)。
【0188】
T細胞による抗原認識の評価
T細胞による抗原認識を調査するために、51Cr放出アッセイまたはIFN−γ放出アッセイを以前に記載されている方法によって行った(実施例1および実施例2;非特許文献111、非特許文献81)。メラノーマ抗原をコードするcDNAおよびHLA−A2.1 cDNAをトランスフェクトされたCOS7細胞、またはペプチドと事前にインキュベートしておいたT2細胞のいずれかを刺激因子としてIFN−γ放出アッセイに使用した。ペプチドで刺激したT2細胞は細胞毒性アッセイの標的としても使用した(非特許文献108)。
【0189】
TIL処理に対する臨床応答に相関したTILによるgp100の認識
TILに由来するHLA−A2拘束性メラノーマ特異的CTL14種の内4種がgp100を認識し、13種がMART−1を認識した(3種はgp100およびMART−1の両方を認識した)。メラノーマ抗原をコードするcDNAをHLA−A2.1 cDNAとともにトランスフェクトしたCOS7細胞に対するTILの反応性によって調べたところ、いずれもチロシナーゼまたはgp75を認識しなかった(実施例2;非特許文献108)。これら4種のgp100反応性CTLのHLA−A2拘束性および認識特異性については以前に立証されている(実施例1〜3;非特許文献109、非特許文献12、非特許文献14、非特許文献97)。これら14種のCTLの内10種をIL−2とともに自家移植患者に投与した。表11に概説するように、gp100を認識可能なCTLによって処置した患者4人全てが客観的な部分的応答(>50%の腫瘍退縮)を生じた。TIL療法に対する臨床応答は、TILのgp100に対する反応性と関連した(p=0.0048)が、MART−1とは関連しなかった(p=0.4)。これらのデータは、gp100が生体内で(in vivo)腫瘍縮退に関与し得るエピトープを含むことを示唆した。
【0190】
gp100反応性TILによって認識されるエピトープの同定
これら4種のgp100反応性CTLによって認識されるエピトープを同定するために、HLA−A2.1結合モチーフを含む169個のペプチドを合成した。ペプチド認識は、それぞれのペプチドとともに予めインキュベートしたHLA−A2.1 T2細胞に対するこれらのCTLの反応性を細胞毒性アッセイおよびIFN−γ放出アッセイを用いて試験することによって評価した。表12に示すように、細胞毒性アッセイにおいて7個のペプチドがgp100反応性TILによって認識された。同時に行われたIFN−γ放出アッセイの結果は細胞毒性アッセイの結果と矛盾しないものであった。TIL620(620−1、620−2)またはTIL660(660−1、660−2、660−3)の別々のサブカルチャーを、自家移植患者に投与したTIL培養物から増殖させて別々に培養すると、少しずつ異なる特異性をもっていたが、これは恐らく試験管内(in vitro)で異なるクローンが増殖したことによると思われる。G9209(ITDQVPFSV)(配列番号48)およびG9209のN末端に余分のスレオニンを持つG10208(TITDQVPFSV)(配列番号49)はTIL620によってのみ認識された。G9154(KTWGQYWQV)(配列番号46)およびG9154のC末端に余分にロイシンを持つG10154(KTWGQYWQVL)(配列番号47)はTIL1200、TIL620−2およびTIL660−2によって認識された。G10−4(LLDGTATLRL)(配列番号33)は示したように(実施例3)、TIL1200によって認識された。ペプチドG9280(YLEPGPVTA)(配列番号40)はTIL660およびTIL1143によって認識された。TIL660−3はG9280同様にG10−5(VLYRYGSFSV)(配列番号34)も認識した。G10−5とともに予めインキュベートしたT2細胞の溶解は反復的に低く、これは恐らくT細胞クローン中の小サブセットがこのエピトープに特異的であったためである。
【0191】
既知のHLA−A2.1結合モチーフを用いてエピトープの同定を補うために、もう1つの方法がエピトープを含む領域の同定に使用された。5種のgp100 cDNA断片すなわち、4種はcDNAの3’末端からのエクソヌクレアーゼ欠失により作製され(D3、D4、D5、C4)、1種は5’コード領域の最初の705塩基対を欠失する部分的なcDNAクローン(25TR)であり、これらをpcDNA3プラスミドに挿入し、HLA−A2.1 cDNAとともにCOS7細胞にトランスフェクトさせた。断片の位置は図7Aに示してある。4種のgp100反応性TILによるこれらトランスフェクト体の認識はIFN−γ放出アッセイを用いて評価した(図7B)。TIL1200は25TR、D5、D4またはC4断片をトランスフェクトしたCOS細胞を認識したが、D3については認識せず、少なくとも2個のエピトープがアミノ酸残基146〜163および236〜661の領域に存在していることを示唆している。146〜163の領域にHLA−A2.1結合モチーフを含むペプチドはG9154およびG10154のみに過ぎず、両者ともTIL1200によって認識された。G10−4は領域236〜661に位置し、TIL1200によって認識された。TIL620−1はC4をトランスフェクトしたCOS細胞を認識したが、D3、D5、D4または25TRについては認識せず、エピトープは残基187〜270の内部に存在することを示唆している。TIL620−1によって認識されたG9209およびG10208はこの領域に位置した。TIL620のもう1つのサブカルチャーであるTIL620−2もまたD5およびD4をトランスフェクトした細胞を認識したがD3は認識せず、および147〜163の領域内のG9154およびG10154を認識した(これらはTIL1200によっても認識された)。TIL660−1およびTIL1143はC4または25TRをトランスフェクトした細胞を認識したがD3、D5、またはD4は認識せず、エピトープが187〜270および236〜661の2領域に存在することを示唆している。25TR断片内に位置するがC4断片内には位置しないG9280はTIL660およびTIL1143によって認識された。
【0192】
メラノーマのエピトープの試験管内での(in vitro)HLA−A2.1に対する結合親和性
T2細胞をCTL溶解に対し感受性にするために1μg/mlの濃度が必要であるG10−4を除き(実施例3;非特許文献109)、この研究で同定されたすべてのgp100エピトープはT2細胞をCTL溶解に対し1ng/mlの濃度で感受性にした(図8A〜図8D)。G10−5は10ng/ml以上の濃度ではCTLでの細胞毒性を阻害するようであった。なぜなら、全4時間の細胞毒性アッセイの間ペプチドが培養液中に存在する条件では、10ng/ml以上のG10−5と共にインキュベートしたT2細胞の溶解は、このアッセイを1〜10ng/mlの濃度で行ったときより低くなったからである(図8D)。これらのエピトープのHLA−A2.1に対する相対結合親和性も試験管内の競合的結合アッセイを用いて測定された(表13)。G9154のHLA−A2.1分子に対する結合親和性(11nMで標準的ペプチドの50%を阻害)は、G9154のC末端に余分なロイシンを含むG10154(1010nM)より高く、G10154よりも低濃度でT2細胞を感受性にすることが出来た(図8A)。G9209のHLA−A2.1への結合親和性(84nM)はまた、G9209のN末端に余分のスレオニンを含むG10208より(2080nM)高く、G10208よりも低濃度でT2細胞を感受性にすることが出来た(図8B)。ゆえに、9量体ペプチドは、対応する10量体ペプチドよりCTL溶解に対してT2細胞を感受性にする効果が大きく、HLA−A2.1に対する結合親和性も、より高かった。これは、同定されたMART−1の9及び10アミノ酸ペプチド(M9−2、M10−3、M10−4)にもあてはまった(実施例2;非特許文献108)。T2細胞溶解アッセイにおけるペプチド滴定の結果は、試験管内結合アッセイで測定したHLA−A2.1結合親和性の結果と相関した。他のgp100エピトープG9280、G10−4またはG10−5は、HLA−A2.1に対して各々95nM、483nMまたは13nMで50%阻害を示す結合親和性を持っていた。以前に同定されたHLA−A2拘束性メラノーマエピトープのHLA−A2.1結合親和性は、MART−1(実施例2;非特許文献108)およびチロシナーゼ(非特許文献112;配列番号31および32)においても測定された(M9−2(397nM)、M10−3(2272nM)、M10−4(5555nM)、T9(333nM)、T9369(40nM))。10量体ペプチド(G10154、G10208、G10−3、G10−4)を除き、これらに重複する9量体エピトープ(G9154、G9209、M9−2)が存在するが、全てのメラノーマエピトープはいずれもHLA−A2.1に対して高い(G9154、G10−5、T9369)または中程度の(G9209、G9280、G10−4、M9−2、T9)結合親和性を持っている。
【0193】
考察
自家移植患者へ養子免疫伝達した場合の腫瘍退縮に関連する4種のTILによって認識されるヒトメラノーマ抗原gp100の複数のエピトープがこの研究で同定された。この研究で記載された5つのエピトープのうち、G9154またはG10154が最も一般的に認識されるようであった。これらは異なる患者由来の4種のgp100反応性TILの内3種によって認識されたからである。G9280ペプチドは異なる患者のPBL由来の5種全てのCTLによって認識されることが報告されているが(非特許文献113)、この研究では、これは4種のgp100反応性TILのうち2種にしか認識されなかった。この相違は、使われたT細胞の源(TILとPBL)によるものであろう。
【0194】
MART−1ペプチドのM9−2はM927とも呼ばれ、MART−1ペプチドM10−3はM1026とも呼ばれ、そしてMART−1ペプチドのM10−4はM1027とも呼ばれることは理解されよう。また、gp100ペプチドG10−4もまたG10457と呼ばれ、gp100ペプチドG10−5もまたG10476と呼ばれることが認められるであろう。
【0195】
【表11】

【0196】
【表12】

【0197】
1μg/ml( 1ng/ml)のMART1エピトープM9−2(AAGIGILTV)及びgp100エピトープG9154(KTWGOYWQV)、G10154(KTWGQYWGVL)、G9209(ITDQVPFSV)、G10208(TITDQVPFSV)、G9280(YLEPGPVTA)、G10−4(LLDGTATLRL)、G10−5(VLYRYGSFSV)と共にあらかじめインキュベートしたT2細胞のTILによる溶解は、4時間−51Cr遊離アッセイで測定された。TIL620−1、TIL620−2またはTIL660−1、TIL660−2、TIL660−3は、自己移植患者に投与されたTILと同一TILから増殖させたが、但し別々に培養した。624melは、HLA−A2、gp100、MART−1のメラノーマ細胞株であり、397melは、HLA−A2メラノーマ細胞株であり、T2細胞は、HLA−A2T細胞−B細胞ハイブリドーマである。
下線:統計的に有意な溶解である。
【0198】
【表13】

【0199】
a.標準放射性標識HBC18−27ペプチドの50%阻害に必要とされる試料ペプチド濃度。
b.試料ペプチドの結合親和性と、標準ペプチド(5nMで50%阻害)の結合親和性の比。ペプチドは、高結合ペプチド(<50nM、比>0.1で50%阻害);中程度結合ペプチド(50〜500nM、比0.1〜0.01);弱結合ペプチド(>500nM、比<0.01)と定義される。
【実施例5】
【0200】
免疫原性の改良のためのメラノーマエピトープの改変
材料と方法
ペプチド合成とHLA−A2.1結合アッセイ
ペプチドは固相法により多ペプチド合成機を用いて合成され、前に記載したようにHPLCによって精製された(非特許文献114)。ペプチドのHLA−A2.1に対する相対結合は、界面活性剤で可溶化したMHC分子に対する放射性標識標準ペプチドの結合阻害に基づいて、前に記載したように測定された(非特許文献114)。手短にいうと、様々な濃度の試験ペプチド(100μM〜1nMの範囲)を、5nMの放射性標識Hbc18−27(FLPSDYFPSV)(配列番号125)ペプチド及びHLA−A2.1重鎖及びβ2−ミクログロブリンと共に室温で2日間プロテアーゼ阻害剤存在下でインキュベートした。MHCに結合した放射能の割合はゲルろ過によって決定され、各々のペプチドについて50%阻害する量が計算された。
【0201】
ペプチド特異的CTLの誘導
PBMCはHLA−A2メラノーマ患者及び正常な供与者の末梢血からフィコール−ハイパック勾配遠心によって分離され、新鮮な状態または低温保存の試料として用いられた。ペプチド特異的CTL株は以下のように作製された。0日目に、PBMCを1.5×10/mlの濃度で24穴プレート(2ml/ウェル)内の10%ヒトAB血清、L−グルタミン、抗生物質(CM)を含むIscove’s培地に1μg/mlのペプチドが存在下で培養した。2日後、12IU/mlのインターロイキン2(IL−2)(カイロン社、カリフォルニア州エメリービル)を培養液に加えた。リンパ球は次のように毎週再刺激された:応答細胞を回収し、1度洗浄し、24穴プレートに2.5×10細胞/mlの濃度になるようCM存在下で移した。自家移植したPBMCを解凍し、PBSで2回洗浄し、5〜8×10細胞/mlの濃度にCMに再懸濁する。そして1μg/mlペプチドと15mlの円錐型チューブ(5ml/チューブ)中において3時間37℃でパルスした。これらのPBMC(刺激細胞)に3000ラドの線量の放射線を照射して、1度PBSで洗浄し、応答細胞に応答細胞:刺激細胞の比が1:3〜1:10の範囲で加えた。次の日、12IU/mlのIL−2を培養液に加えた。これらのCTLの活性は最低2ラウンド(14日間)のペプチド刺激後に細胞毒性アッセイによって試験された。TILからCTLを作製するため、解離させた腫瘍の懸濁液を1〜2日間、腫瘍細胞の接着を許す10%FCS/RPMI 1640培地で培養した。非接着画分から回収されたリンパ球は前に記載したようにペプチド特異的CTLの誘導に用いられた。
【0202】
CTLによる抗原認識の評価
51Cr放出細胞毒性アッセイをCTLによるペプチドとメラノーマ細胞の認識を検出するために行った。ペプチドの認識を解析するためT2細胞株を1μg/mlのペプチドと共に37℃で2時間あらかじめインキュベートした。そして、洗浄してから51Cr放出細胞毒性アッセイに標的細胞として用いた。メラノーマ細胞株624melは我々の研究室において確立された(実施例1参照)。
【0203】
抗メラノーマT細胞の誘導のために、自然のメラノーマエピトープより抗原性の強いペプチドを作製する目的で、特異的MHCクラスI対立形質に結合するペプチドのコンセンサスモチーフをもとに、少なくとも1つのアミノ酸を変化させた様々なペプチドを作製した(非特許文献115、非特許文献54、非特許文献53、非特許文献55)(表14、表15、表16、及び表17)。従来単離されたウイルス性エピトープ及び自然にプロセシングされたHLA−A2.1結合ペプチドのほとんどは、第2の主要なアンカー部位にロイシンまたはメチオニンを、最後の主要なアンカー部位(優勢なアンカーアミノ酸)にバリンを含み、HLA−A2.1に対し高い結合親和性を持っていたが、単離されたMART−1またはgp100メラノーマエピトープは、主要なアンカー部位にアラニン(M9−2の第2位及びG9−280の第9位)やスレオニン(G9−154及びG9−209の第2位)のような非優勢アミノ酸を含む。M9−2、G9−209及びG9−280は高親和性の結合ペプチドではない。HLA−A2のペプチドへの結合には重要であるが、T細胞受容体による認識にはそれほど重要でない第1位、2位、3位、または9位のアミノ酸を変化させることによって、HLA−A2.1により高い親和性で結合し、しかも天然のエピトープ特異的T細胞によって認識され得る人工ペプチドを作ることができる。
【0204】
修飾されたM9−2、G9−280、G9−209、G9−154ペプチドのうちで、M9−2−2L、M9−2−1F、M9−2−3Y、G9−280−9V、G9−280−9L、G9−280−9I、G9−280−1F、G9−209−2L、G9−209−2M、G9−209−2I、G9−209−1F、G9−209−1Y、G9−209−1W2L、G9−209−1F2L、G9−209−1Y2Lは、より高い結合親和性を持ち、元のメラノーマ反応性T細胞によって認識される(表14、表15、表16、及び表17)。G9−154−2I、G9−209−1F2LまたはG9−280−9V(表18、表19及び表20)とともにパルスした自家移植PBMCで刺激したPBLは、天然エピトープ(G9−154、G9−209、G9−280)で刺激したPBLより元のエピトープのみならずメラノーマ細胞(624mel)をもよく認識し、溶解させた。
【0205】
これらの結果は、修飾したペプチドは天然エピトープのかわりに抗腫瘍T細胞の誘導のために使うことが出来ることを示した。我々の研究で使われた特定のT細胞によって認識されなかったがHLA−A2.1に対して高い結合親和性を持つ他のペプチドは、試験管内(in vitro)または生体内(in vivo)で元のメラノーマエピトープを認識可能な異なるT細胞セットを誘導するであろう。これらの修飾したペプチドは、試験管内(in vitro)での抗メラノーマT細胞の誘導、及びメラノーマ患者の治療またはメラノーマの予防のための患者に対する免疫付与に用いることが出来るだろう。
【0206】
【表14】

【0207】
【表15】

【0208】
【表16】

【0209】
*標準放射性標識ペプチドHBC18−27を50%阻害するのに必要な試料ペプチドの濃度。ペプチドは、高結合ペプチド(<50nMで50%阻害)、中結合ペプチド(50〜500nM)、および低結合ペプチド(>500nM)として定義される(実施例4参照)。
【0210】
【表17】

【0211】
【表18】

【0212】
51Cr放出アッセイは、ペプチドであらかじめインキュベートした自家移植PBMCで4回刺激した後に行った。
【0213】
【表19】

【0214】
51Cr放出アッセイは、ペプチドであらかじめインキュベートした自家移植PBMCで4回刺激した後に行った。
【0215】
【表20】

【0216】
51Cr放出アッセイは、ペプチドであらかじめインキュベートした自家移植PBMCで4回刺激した後に行った。
【実施例6】
【0217】
哺乳動物におけるメラノーマの治療のためのMART−1ワクチン
MART−1ワクチンは、メラノーマにくるしむ哺乳動物を治療するのに効果的であろう。例えば、MART−1は個体に投与できる。哺乳動物は、本明細書中に記載したMART−1タンパク質、ペプチドまたは改変ペプチド約1mg〜約100mgの範囲で免疫することができる。または、哺乳動物、好適にはヒトは、ワクシニアウイルス、アデノウイルスまたは鶏ポックスウイルスのようなウイルスベクター中に挿入したMART−1核酸配列で免疫することができる。免疫原性MART−1ペプチドまたは改変ペプチドまたはその類似体に対応するMART−1核酸配列を持つウイルス粒子を、哺乳動物、好適にはヒトあたり約10〜約1011個の範囲で投与することができる。哺乳動物は、免疫原に対する抗体について、または免疫原を認識する細胞毒性リンパ球(CTL)の増加について従来の方法によって、または活動性疾患の臨床的症候の緩和についてモニターされる。評価の対象となる特定パラメータには、ワクチン抗原または腫瘍退縮を認識する免疫細胞の産生が含まれる。このようなワクチンは、予防的にまたは治療的に投与される。哺乳動物は、また、レトロウイルスベクターに挿入したgp−100核酸配列またはGP−100免疫原性ペプチドまたは改変ペプチドまたはその類似体で免疫できる。使用されるレトロウイルス中の抗原の示唆される量の範囲は、哺乳動物、好適にはヒトあたりウイルス粒子約10〜約1011個である。レトロウイルスワクチンの反応および効能は、上述したように評価される。
【実施例7】
【0218】
メラノーマに苦しむ哺乳動物を治療的に処置するための、メラノーマ抗原由来免疫原性ペプチドに対して感作されたリンパ球の使用
メラノーマ抗原に対してあらかじめ感作されたTリンパ球は、メラノーマに苦しむ哺乳動物を治療的に処置するのに効果的である。Tリンパ球は、末梢血リンパ球または腫瘍浸潤リンパ球より単離し、in vitroでMART−1タンパク質またはペプチドにさらす。Tリンパ球は、末梢血またはメラノーマ懸濁液から単離し、in vitroで培養する(非特許文献81)。Tリンパ球は、約1〜約10mg/mlの濃度にて約1〜16時間のあいだMART−1ペプチドAAGIGILTVにさらす。抗原にさらされたTリンパ球は、哺乳動物、好適にはヒトに約10〜約1012リンパ球/哺乳動物にて投与される。あるいは、Tリンパ球は改変MART−1ペプチドにさらされる。リンパ球は、静脈内、腹膜内または傷害部に投与される。この処置は、サイトカイン、放射線療法、メラノーマ病変の外科的切除および化学療法薬、養子免疫法によるTリンパ球治療のような他の治療的処置とともに同時に投与できる。または、Tリンパ球を、gp100免疫原ペプチドまたは本明細書中に記載した改変免疫原ペプチドにさらしてもよい。
【0219】
寄託した態様は本発明の1つの側面についての単なる例示であり、本発明は寄託した核酸配列の範囲に限らず、機能的に同等であるいかなる配列も本発明の範囲内である。実際に、本明細書中に示し、記載したものに加えて発明を様々に改変することは、前の記載および以下の図により当業者には可能である。このような改変は、請求の範囲内である。
[配列表]
【表1−1】

【表1−2】

【表1−3】

【表1−4】

【表1−5】

【表1−6】

【表1−7】

【表1−8】

【表1−9】

【表1−10】

【表1−11】

【表1−12】

【表1−13】

【表1−14】

【表1−15】

【表1−16】

【表1−17】

【表1−18】

【表1−19】

【表1−20】

【表1−21】

【表1−22】

【表1−23】

【表1−24】

【表1−25】

【表1−26】

【表1−27】

【表1−28】

【表1−29】

【表1−30】

【表1−31】

【表1−32】

【表1−33】

【表1−34】

【表1−35】

【表1−36】

【表1−37】

【表1−38】

【表1−39】

【表1−40】

【表1−41】

【表1−42】

【表1−43】

【表1−44】

【表1−45】

【表1−46】

【表1−47】

【表1−48】

【表1−49】

【表1−50】

【表1−51】

【表1−52】

【表1−53】

【表1−54】

【表1−55】

【表1−56】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1のヌクレオチド配列、又は配列番号1のヌクレオチド配列に縮重しているヌクレオチド配列を含む、単離された核酸。
【請求項2】
配列番号2の部分、及びAAGIGILTV(配列番号4)、EAAGIGILTV(配列番号17)、又はAAGIGILTVI(配列番号18)のアミノ酸配列を含むペプチド。
【請求項3】
MART−1タンパク質を製造する方法であって、
(a)請求項1の核酸を発現ベクターに挿入し、
(b)該発現ベクターを宿主細胞内に移入し、
(c)該ベクターの増幅及び該タンパク質の発現に適する条件下で該宿主細胞を培養し、そして
(d)該タンパク質を収穫する
ことを含む、上記方法。
【請求項4】
発現ベクターがバキュロウイルスベクターである、請求項3の方法。
【請求項5】
宿主細胞が昆虫細胞である、請求項3の方法。
【請求項6】
請求項1の核酸を含む、組換え発現ベクター。
【請求項7】
請求項6の組換え発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項8】
前記組換え発現ベクターによりコードされる前記タンパク質の発現を可能にするように、請求項6の組換え発現ベクターでトランスフォーム又はトランスフェクトされた宿主生物。
【請求項9】
生物学的サンプル中のMART−1(配列番号2)をコードするmRNAを検出するin vitroの方法であって、
(a)前記生物学的サンプルと請求項1の核酸の相補体とを該相補体と該mRNAとの間に複合体が形成される条件下で接触させ;そして
(b)該複合体を検出する
工程を含む、前記方法。
【請求項10】
サンプルが、哺乳類組織、哺乳類細胞、剖検サンプル、病理サンプル、及び生検サンプルからなる群から選択される、請求項9の方法。
【請求項11】
生物学的サンプルが疾患状態に苦しむ哺乳類からのものである、請求項9又は10の方法。
【請求項12】
(c)前記mRNAのレベルを決定することをさらに含む、請求項9〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記疾患状態がメラノーマ又は転移性メラノーマである、請求項11又は12の方法。
【請求項14】
生物学的サンプル中のMART−1タンパク質(配列番号2)を検出するin vitroの方法であって、
(a)サンプル中の上記タンパク質と特異的に反応して複合体を形成する試薬を接触させ;そして
(b)該タンパク質と該試薬との間に該複合体の形成を検出する
工程を含む、前記方法。
【請求項15】
サンプルが、哺乳類組織、哺乳類細胞、剖検サンプル、病理サンプル、及び生検サンプルからなる群から選択される、請求項14の方法。
【請求項16】
試薬が抗体又はその抗原結合断片である、請求項14又は15の方法。
【請求項17】
試薬がモノクローナル抗体である、請求項16の方法。
【請求項18】
生物学的サンプルが疾患状態に苦しむ哺乳類からのものである、請求項14〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
疾患状態がメラノーマ又は転移性メラノーマである、請求項18の方法。
【請求項20】
生物学的サンプル中のMART−1(配列番号2)をコードするゲノム核酸を検出するin vitroの方法であって、
(a)請求項1の核酸を、該核酸と該ゲノム核酸との間に複合体が形成される条件下で生物学的サンプルと接触させ;そして
(b)該複合体を検出する
工程を含む、前記方法。
【請求項21】
さらに、
(c)ゲノム配列の変化を決定する
ことを含む請求項20の方法であって、前記変化が該ゲノムDNA配列の欠失、置換、付加又は増幅である、前記方法。
【請求項22】
配列番号2の部分からなる単離された免疫原性ペプチドであって、当該部分がMART−1配列(配列番号2)に由来する5〜20個の隣接するアミノ酸を含み、細胞性応答又は液性応答を引き起こし得る前記ペプチド。
【請求項23】
配列番号2の少なくとも5〜20個の隣接するアミノ酸を含む単離された免疫原性ペプチドであって、アミノ酸置換を含み、細胞性応答又は液性応答を引き起こし得る前記ペプチド。
【請求項24】
ペプチドの長さが少なくとも9アミノ酸である、請求項22又は23の単離された免疫原性ペプチド。
【請求項25】
(i)AAGIGILTV(配列番号4)、(ii)EAAGIGILTV(配列番号17)、及び(iii)AAGIGILTVI(配列番号18)から成る群から選択される配列を含む、請求項22の単離された免疫原性ペプチド。
【請求項26】
AAGIGILTV(配列番号4)である、請求項25の単離された免疫原性ペプチド。
【請求項27】
ペプチド配列が、MHC分子へのペプチドの結合を増強するために、MART−1配列(配列番号2)の少なくとも1つのアミノ酸の改変を含有する、請求項22〜26のいずれか1項に記載の単離された免疫原性ペプチド。
【請求項28】
アミノ酸配列WAGIGILTV(配列番号53)を含む、請求項27の単離された免疫原性ペプチド。
【請求項29】
ペプチドの長さが少なくとも9アミノ酸である、請求項27の単離された免疫原性ペプチド。
【請求項30】
改変が、ペプチド配列中の少なくとも1つのアミノ酸の置換を含む、請求項27又は29の単離された免疫原性ペプチド。
【請求項31】
アミノ酸の置換が、ペプチド配列中の(i)第1位、(ii)第2位、(iii)第3位、(iv)第9位、(v)第10位、及び(vi)上記(i)〜(v)のうちの少なくとも2つの組み合わせ、からなる群から選択される部位に存在する、請求項30の単離された免疫原性ペプチド。
【請求項32】
アミノ酸の置換が第1位に存在する、請求項31の単離された免疫原性ペプチド。
【請求項33】
アミノ酸置換が第2位又は第9位に存在する、請求項31の単離された免疫原性ペプチド。
【請求項34】
式:XIGILTX
(式中、Xは任意のアミノ酸であり;
は任意の疎水性脂肪族アミノ酸であり;
は任意のアミノ酸であり;そして
は任意の疎水性脂肪族アミノ酸である)
のアミノ酸配列を含む、請求項22又は23の単離された免疫原性ペプチド。
【請求項35】
がメチオニン、ロイシン、アラニン、グリシン、スレオニン、イソロイシン、チロシン、バリン、トリプトファン、フェニルアラニン、セリン、リジン又はアスパラギン酸からなる群から選択される、請求項34の単離された免疫原性ペプチド。
【請求項36】
がメチオニン、ロイシン、アラニン、グリシン、イソロイシン、バリン又はスレオニンからなる群から選択される、請求項34又は35の単離された免疫原性ペプチド。
【請求項37】
がメチオニン、ロイシン、アラニン、グリシン、スレオニン、イソロイシン、チロシン、バリン、トリプトファン、フェニルアラニン、リジン、セリン又はアスパラギン酸からなる群から選択される、請求項34〜36のいずれか1項に記載の単離された免疫原性ペプチド。
【請求項38】
がメチオニン、ロイシン、アラニン、グリシン、イソロイシン、バリン又はスレオニンからなる群から選択される、請求項34〜37のいずれか1項に記載の単離された免疫原性ペプチド。
【請求項39】
配列番号4及び50〜67から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項34〜38のいずれか1項に記載の単離された免疫原性ペプチド。
【請求項40】
配列番号50、53、54、及び58から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項39の単離された免疫原性ペプチド。
【請求項41】
ペプチドが、HLA−A2により認識される、請求項22〜40のいずれか1項に記載の単離された免疫原性ペプチド。
【請求項42】
ペプチドが天然、合成又は組換えペプチドである、請求項22〜41のいずれか1項に記載の単離された免疫原性ペプチド。
【請求項43】
請求項22〜42のいずれか1項に記載のペプチドをコードする、単離された核酸。
【請求項44】
請求項43の少なくとも1つの核酸を含む、組換え発現ベクター。
【請求項45】
請求項44の組換え発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項46】
請求項44の組換え発現ベクターで、該組換え発現ベクターによりコードされるタンパク質が発現するように、トランスフォーム又はトランスフェクトされた宿主生物。
【請求項47】
請求項22〜42のいずれか1項に記載の免疫原性ペプチドと反応し得る抗体。
【請求項48】
モノクローナル抗体である、請求項47の抗体。
【請求項49】
薬学的に許容される担体中の請求項1又は43の核酸によってコードされるタンパク質又はペプチドを含む、哺乳類を免疫するためのワクチン。
【請求項50】
MART−1タンパク質(配列番号2)に由来するペプチドの免疫原性を評価する方法であって、
(a)MART−1のアミノ酸配列(配列番号2)に基づいて複数のペプチドを調製し;
(b)該ペプチドの少なくとも1つを哺乳類細胞株とインキュベートし;
(c)該細胞株の哺乳類細胞を腫瘍浸潤リンパ球(TIL)に暴露し;そして
(d)該細胞によるTILの認識をスクリーニングする
工程を含む、前記方法。
【請求項51】
工程(a)のペプチドが約9〜10アミノ酸である、請求項50の方法。
【請求項52】
工程(b)の該細胞株の細胞が、COS細胞、T2細胞、293細胞、CHO細胞、HeLa細胞、NIH3T3細胞、樹状突起細胞、単核細胞、及びEBVでトランスフォームされたB細胞株からなる群から選択される、請求項51の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−178739(P2010−178739A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−31273(P2010−31273)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【分割の表示】特願2005−253464(P2005−253464)の分割
【原出願日】平成7年4月21日(1995.4.21)
【出願人】(502006782)アメリカ合衆国 (47)
【Fターム(参考)】