説明

ラウドスピーカ

【課題】 簡単且つ効率的に振動領域の増幅を可能にする、ラウドスピーカ及びラウドスピーカアセンブリを提供する。
【解決手段】 磁場を発生する磁石ユニットが備え付けられた筐体と、フレームの中に備え付けられ、導体パターンが配置された膜とを具備して成るラウドスピーカであって、前記膜は、電流が該膜上の導体パターンを通されるときにもたらされる力によって、磁場中に配置され、前記力は、音を出力するために動く前記膜の少なくとも一部分に設定することが可能であり、前記導体パターンの一部が、少なくとも前記膜の一端の近くに、前記膜の可動部面を越えて拡張する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁場を発生する磁石ユニットが備え付けられた筐体と、フレームの中に備え付けられ、導体パターンが配置された膜とを具備して成るラウドスピーカであって、前記膜は、電流が該膜上の導体パターンを通されるときにもたらされる力によって、磁場中に配置され、前記力は、音を出力するために動く膜の少なくとも一部分に設定することが可能であるラウドスピーカに関する。
【背景技術】
【0002】
このようなラウドスピーカは、国際公開第2004/080119号(特許文献1)に開示されている。特許文献1に開示されているラウドスピーカは、高い電力(音響)レベル及び円筒状波面を有しており、これらの性質ゆえ、コンサートホール、劇場及び映画館といった、大きな場所で使用されている。膜の長さが最大レベルでなくてはならないのは、物理的制約に起因して、1つの細長いリボン状の振動領域が得られるようにするために、即ち十分な音響レベル及び最適な円筒状波面を得るために、幾つかのラウドスピーカが順序良く配置され、且つ共に連結される(“直線配列”と呼ばれている)からである。これに関連する(物理的)制約とは、前記振動領域が、膜上の垂直な導体部分と相互連結される実質的に水平な導体部分に対応する筐体の上部端及び下部端によって遮断される、といったことである。実際には、膜上の振動領域は故に、ラウドスピーカアセンブリの約80%を占める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2004/080119号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の事情に鑑み、本発明の目的は、簡単且つ効率的にラウドスピーカアセンブリにおける振動領域の増幅を可能にし、並びに/又は、既知のラウドスピーカアセンブリと比較して、力学的及び/若しくは音響学的に改善された性質を示すラウドスピーカアセンブリを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の態様は、導体パターンの一部が、膜の少なくとも1つの端部(上部及び/又は下部)に近接する前記膜の可動部(連続的、幾何学的)面を超えて拡張する。前記導体パターンの一部は、前記導体パターンの上部及び下部端で、実質的に水平な導体部であり、筐体の上部及び下部端の上又は中で固定され、音を出力するための膜の動きに関係しない。「実質的に水平な導体部」とは、ラウドスピーカが垂直に置かれている場合には、膜の可動部上の垂直的導体部とは異なる導体部と理解される。本発明の好ましい態様は、前記導体部が半円状の導体部である。
【0006】
このことは、筐体の上部及び下部縁の垂直寸法を少なくするといったこと、並びに共に接近した垂直的アセンブリの中に膜の可動部を配置すること及び更に例えば前述の80%より大きい振動領域を得ることが可能になる。更に、より大きな垂直的/水平的な音の放出が実感されるように、振動領域の重大な喪失無しでお互いに関係する角度に、垂直的/水平的なアセンブリに様々なラウドスピーカの膜を配置することが可能になる。
【0007】
好ましくは、前記膜の可動部面を超えて拡大する前記導体パターンの一部が、前記膜の可動部(の端部)と、45〜180度、より好ましくは約90度の角度を形成する。このことは、前記(折りたたまれた)導体パターンの一部が、多数の襞を具備し、それ故、膜の可動部と成す様々な角度を形成する可能性、又はカーブもしくは巻かれる可能性を包含する。
【0008】
好ましい態様は、前記導体パターンの一部が、フレームの折りたたまれた端面部に備え付けられる。好ましい態様は、前記導体パターンは、膜の可動部に向かって拡張している細長コイルの中の直線部及びフレームの折りたたまれた端面部に向かって拡張している細長コイル中のワイヤの屈曲部と一体となって、前記膜及び前記フレーム上に細長コイルを備え付けられた導電ワイヤを具備する。
【0009】
好ましい態様は、前記膜の可動部面を越えて伸びる前記導体パターンの一部が、途切れる又は筐体の外壁の短側面に非常に接近して設置される。結果として、隣接した2つのラウドスピーカの前記導体部品は、実質的にお互いに隣接するよう配置され得る。
【0010】
更に本発明は、少なくとも2つのラウドスピーカを具備したラウドスピーカアセンブリであって、前記ラウドスピーカの2つの短側面が、少なくとも実質的にお互いに接触する。好ましくは、導体パターンの一部が、膜の2つの向かい合っている端部に近接する前記膜の可動部面を越えて拡張する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るラウドスピーカにより、大きい振動領域を得ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るラウドスピーカの斜視図である。
【図2】膜ユニットの斜視図である。
【図3】図1に示すラウドスピーカの断面図である。
【図4】図1に示すラウドスピーカがホーンを有した場合の断面図である。
【図5】本発明に係るラウドスピーカの部分的斜視図である。
【図6】本発明に係る膜ユニットの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1,図5では、ラウドスピーカが、2つの実質的同一な金属部品で構成される筐体1,2を具備し、前記筐体1,2は、ネジ3によって共に締められている。筐体1,2はそれぞれ2つの細長型溝若しくは音筒4,5を有し、該音筒は、外に向かってラウドスピーカから発生した音を導く。更に筐体1には、アンプの音響信号に連結されうる電気的接続点6,7が備え付けられている。筐体1,2には、外側及び長手方向に向かって拡張している冷却用リブ8が備え付けられ、該リブ8はラウドスピーカから発生する熱を消散する働きを有する。
【0015】
図2で示す態様では、筐体1,2は、第1窓加工フレーム部材9及び2つのストリップ加工フレーム部材10,11から成るフレームを取り囲む。該フレーム部材9,10及び11は、好ましくは銅又は陽極酸化アルミニウムから成る。該フレーム部材9,10及び11の外部表面は、全て筐体1,2に接触する。平面振動膜12は、糊若しくは薄い両面接着テープによって、フレーム部材9に貼付される。前記糊若しくは両面テープは熱伝導性である。該平面振動膜12には導電パターン14が設置され、(電気的)接続点6,7に連結され、アンプがラウドスピーカを通じて電気信号を発振したときには膜を振動させるようになっている。
【0016】
このことを受けて、ラウドスピーカは、図3に示されるような、平面振動膜12の導体パターン14が配置される(永久)磁場を発生する磁石13を具備する。該導体パターン14は導電ワイヤで形成され、平面振動膜12の一側面に細長で、長方形型のコイルが設置されている。該長方形コイルの短側面において、フレーム部材10,11が、導体パターンに直接的に備え付けられる。その結果、前記フレーム部材が導体ワイヤに貼付されるのに使用される糊若しくは両面接着テープは、電気的に絶縁される必要がある。他方の平面振動膜12の短側面では、前記導体パターンの短側面が同様に覆われる、即ち第1窓加工フレーム部材9によって覆われる。このように、導体パターン14は、両側のフレーム部材9,10及び11に熱を逃すことができる。
【0017】
導体ワイヤの2つの端部は、フレーム部材10上の電源ケーブル接続部15,16に連結され、該端部は同様に接続点6,7に連結されている。該電源ケーブル接続部15,16は、フレーム部材10から電気的に絶縁される。フレーム部材10,11間で長手方向にお互い平行に拡張する導体パターン14の線は、2つの間隔振動領域17,18を形成する。
【0018】
図3に関して、しかしながら、ラウドスピーカが片側にのみ音を放出しなくてはならないため、音筒(音響チャネル)4,5は、平面振動膜12表面上の2つの間隔振動領域17,18に近接した位置から筐体1,2の外側部に向かって伸び、その上該音響チャネル4,5は、片側で塞ぎ板25によって閉じられる。膜、即ち磁石13で成される領域から見られると、前記音響チャネル4,5は、初めに膜から離れて拡張し、後に前記音響チャネル4,5が互いの方に向いて傾く。音響チャネル4,5それぞれの内壁19及び外壁20がお互いの方向に向いて傾き、同時に、該内壁19及び外壁20はお互い平行に拡張し続けている。ラウドスピーカの外側では、2つの音響チャネル4,5の内壁19に残る間隔は、とても小さく、少なくとも数倍は振動領域17,18間の間隔よりも小さい。このように、2つの振動領域17,18から発生した波長面は、お互いに導かれ、連結され、それゆえに2つの波面の間における有害な妨害を防ぐ。
【0019】
図4はサウンドホーン21を示し、該サウンドホーン21は、ネジ23でラウドスピーカのネジ穴に備え付けられている。音響チャネル4,5の外壁19が、サウンドホーン21の壁22を連結する。波面が更に周囲へ広がる前に、サウンドホーン21は、音響チャネル4,5を委ねる前記波面のゆるやかな拡張をもたらす。好ましくは金属製のサウンドホーンは、ラウドスピーカの放熱に寄与する。
【0020】
図5中で示される筐体は、該筐体端部の反対側の対角線上に2つの電気的接続点6,7を有し、前記筐体は、筐体に適合される2つのバネ端子61,71の端部を形成する。前記バネ端子は、フレーム部材10,11の各個に、2つのボルト(図示せず)によって連結され、膜12上の導体パターン14の端部に、それぞれ順々に連結される。
【0021】
図6に示す態様は、フレーム部材9は、2つの短側面に2つのフレーム部材10,11を具備している窓加工フレーム部材から成る物であり、片側に90度の角度で折りたたまれている。備え付けられたフレーム部材10,11は、振動領域17,18の長手方向に伸び、且つ音を生み出すように膜の振動に関与しない導体部品を具備している膜部分である。(折りたたまれた)フレーム部材10,11は、筐体部1の短側面に、外壁の縁に対して折りたたまれ、それに加えて取り付けられる。結果として、筐体1,2の端部におけるエッジの前後面は、図1の態様及び前記端部がお互いに隣接して設置されるラウドスピーカアセンブリよりも小さくなり、2つの近接したラウドスピーカの振動領域17,18の端部間で成す間隔はより小さくなる。前記間隔の低減は、折りたたまれたフレーム部材10,11の幅によって示される。
【符号の説明】
【0022】
1,2 筐体
3,23 ネジ
4,5 音筒(音響チャネル)
6,7 (電気的)接続点
8 冷却用リブ
9 (第1窓加工)フレーム部材
10,11 (ストリップ加工)フレーム部材
12 平面振動膜
13 磁石
14 導体パターン
15,16 電源ケーブル接続部
17,18 (間隔)振動領域
19 内壁
20 外壁
21 サウンドホーン
22 壁
61,71 バネ端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁場を発生する磁石ユニット(13)が備え付けられた筐体(1,2)と、
フレーム(9,10,11)の中に備え付けられ、導体パターン(14)が配置された膜(12)とを具備して成るラウドスピーカであって、
前記膜(12)は、電流が該膜(12)上の前記導体パターン(14)を通されるときにもたらされる力によって、磁場中に配置され、
前記力は、音を出力するために動く前記膜(12)の少なくとも一部分に設定することが可能であり、
前記導体パターン(14)の一部が、少なくとも前記膜(12)の一端の近くに、前記膜(12)の可動部面を越えて拡張することを特徴とするラウドスピーカ。
【請求項2】
前記導体パターン(14)の一部が、前記膜(12)の可動部と45〜180度の角度を成す請求項1に記載のラウドスピーカ。
【請求項3】
前記導体パターン(14)の一部が、前記膜(12)の可動部と約90度の角度を成す請求項1又は2に記載のラウドスピーカ。
【請求項4】
前記導体パターン(14)の一部が、フレーム(9)の折り畳まれた端面部(10,11)に備え付けられる請求項1乃至3のいずれか1項に記載のラウドスピーカ。
【請求項5】
前記導体パターン(14)は、膜(12)の可動部に向かって拡張している細長コイルの中の直線部及びフレーム(9)の折り畳まれた端面部に向かって拡張している細長コイル中のワイヤの屈曲部と一体となって、前記膜(12)及び前記フレーム(9)上に細長コイルを備え付けられた導電ワイヤを具備する請求項4に記載のラウドスピーカ。
【請求項6】
前記膜(12)の可動部面を越えて伸びる前記導体パターン(14)の一部が、途切れる又は前記筐体(1,2)の外壁の短側面に非常に接近して設置される請求項1乃至5のいずれか1項に記載のラウドスピーカ。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のラウドスピーカを少なくとも2つ具備して成るラウドスピーカアセンブリであって、前記ラウドスピーカの端面部が少なくとも実質的にお互いに接触することを特徴とするラウドスピーカアセンブリ。
【請求項8】
導体パターン(14)の一部が、膜(12)の2つの向かい合っている端部に近接する前記膜(12)の可動部面を越えて拡張する請求項7に記載のラウドスピーカアセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−519846(P2010−519846A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−550815(P2009−550815)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際出願番号】PCT/NL2008/050084
【国際公開番号】WO2008/103034
【国際公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(505325017)
【氏名又は名称原語表記】ALCONS AUDIO B.V.
【Fターム(参考)】