説明

リチウムイオン二次電池用負極及びその負極を用いたリチウムイオン二次電池

【課題】リチウムの吸蔵・放出に伴う体積変化が大きい活物質を用いたとき、負極全体の体積変化をさらに抑制し、初期効率を高めたリチウムイオン二次電池用負極及びその負極を用いたリチウムイオン二次電池を提供する。
【解決手段】集電体と集電体の表面に形成された活物質層とを有するリチウムイオン二次電池用負極において、活物質層は、活物質、バインダー、及び緩衝材を含み、活物質はSiOx粉末(0.5≦x≦1.5)からなり、緩衝材は黒鉛粉末からなり、SiO粉末のD50は、黒鉛粉末のD50の1/4〜1/2であり、黒鉛粉末の配合量は、黒鉛粉末の質量とSiOx粉末の質量を合計したものを100質量%としたときに36質量%〜61質量%であり、バインダーの含有量は活物質層全体の質量を100質量%とした時に5質量%〜25質量%であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池用負極及びその負極を用いたリチウムイオン二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、充放電容量が高く、高出力化が可能な二次電池である。現在リチウムイオン二次電池は、主として携帯電子機器用の電源として用いられており、更に、今後普及が予想される電気自動車用の電源として期待されている。リチウムイオン二次電池は、リチウム(Li)を吸蔵および放出することが出来る活物質を正極及び負極にそれぞれ有する。そしてリチウムイオン二次電池は、両極間に設けられた電解液内をリチウムイオンが移動することによって動作する。
【0003】
リチウムイオン二次電池では、正極の活物質として主にリチウムコバルト複合酸化物等のリチウム含有金属複合酸化物が用いられ、負極の活物質としては炭素材料が主に用いられている。正、負極の極板は、これらの活物質とバインダー樹脂と導電助剤とを溶剤に分散させてスラリーとしたものを集電体である金属箔上に塗布し、溶剤を乾燥除去して合剤層を形成後、これをロールプレス機で圧縮成形して作製されている。
【0004】
近年リチウムイオン二次電池の負極活物質として、炭素材料の理論容量を大きく超える充放電容量を持つ次世代の負極活物質の開発が進められている。例えば負極活物質として炭素材料よりも高容量な珪素や珪素酸化物などの珪素系材料が検討されている。
【0005】
珪素系材料は、リチウムと合金化することで、1000mAh/g以上の高容量をもつ。しかし、珪素や酸化珪素のような珪素系材料を負極活物質として用いると、充放電サイクルにおいてリチウム(Li)の吸蔵および放出に伴って、負極活物質が膨張および収縮することが知られている。負極活物質が膨張したり収縮したりすることで、負極活物質を集電体に保持する役割を果たす結着剤に負荷がかかり、負極活物質と集電体との密着性が低下したり、電極内の導電パスが破壊されて容量が著しく低下したり、膨張と収縮の繰り返しにより負極活物質に歪が生じて微細化して電極から脱離したりする。従って、珪素や酸化珪素のような珪素系材料を負極活物質として用いることには、負極活物質の膨張、収縮により、電池の初期効率が本来有するはずのものより下がり、電池の容量が本来有するはずのものより下がり、電池のサイクル特性が本来有するはずのものより劣化するという問題点がある。
【0006】
この問題点を解決するために、負極活物質の膨張、収縮による負極の体積変化を抑制する緩衝材を負極合剤層に添加し、負極全体の体積変化を抑制することで、電池のサイクル特性の劣化を抑制することが検討されている。
【0007】
特許文献1では、ケイ素化合物と、緩衝材としての炭素材料との混合物からなり、ケイ素化合物の平均粒径が炭素材料の平均粒径よりも小さくなるようにした負極材料が提案されている。さらに特許文献1では炭素材料の重量組成が珪素化合物の重量組成よりも大きくなるようにしている。特許文献1には、珪素化合物の膨張を、炭素材料が形成する空隙が吸収して、負極全体としての体積変化を抑えることが記載されている。実施例において珪素化合物の平均粒径が炭素材料の平均粒径の1/10のもので、炭素材料60重量部と珪素化合物30重量部を混合した負極が記載されている。特許文献1において緩衝材として難黒鉛化炭素材料が少なくとも用いられ、負極活物質としてMgSi粉末が用いられている。
【0008】
特許文献2では、リチウムと合金化することのできる合金化材料と緩衝材としても機能する炭素材料を活物質とする負極を有し、合金化材料の割合が合金化材料と炭素材料との総量の1〜30重量%であり、合金化材料の平均粒径が炭素材料の平均粒径の2/5以下である非水二次電池が提案されている。特許文献2において、緩衝材はソフトカーボンが用いられ、負極活物質としてSi粉末あるいはSiO粉末が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−357515号公報
【特許文献2】特開2009−238663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1及び特許文献2に記載のように、緩衝材を添加し、負極全体の体積変化を抑制し、サイクル特性の劣化を抑制することに関して各種検討されている。具体的には、特許文献1及び2では、実施例において負極活物質の質量を減らし、緩衝材の質量を負極活物質の質量より約2倍多くいれ、負極活物質の平均粒径を緩衝材の平均粒径の2/5以下とすることによって負極全体の体積変化を抑制している。しかしながら、より高容量の電池にするには、負極活物質の量はより多く入っていることが望まれる。
【0011】
また様々な正極活物質の開発により、従来よりも負極に高い電圧をかけることになるリチウムイオン二次電池が開発されつつある。従来よりも高い電圧を負極にかけることにより、負極活物質の膨張・収縮の度合いがさらに大きくなる。そのため、さらに負極全体の体積変化を抑制しうるリチウムイオン二次電池用負極が求められている。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みて為されたものであり、リチウムの吸蔵・放出に伴う体積変化が大きい負極活物質を用いたとき、負極全体の体積変化をさらに抑制しうるリチウムイオン二次電池用負極及びその負極を用いたリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等が鋭意検討した結果、活物質としてSiOx粉末(0.5≦x≦1.5)を含む活物質層に、緩衝材として機能しうる黒鉛粉末を所定配合量で混入し、両粉末の大きさの比を特定することにより、負極全体の体積変化を大きく抑制出来ることを見いだした。
【0014】
すなわち、本発明のリチウムイオン二次電池用負極は、集電体と集電体の表面に形成された活物質層とを有するリチウムイオン二次電池用負極において、活物質層は、活物質、バインダー及び緩衝材を含み、活物質はSiOx粉末(0.5≦x≦1.5)からなり、緩衝材は黒鉛粉末からなり、SiO粉末のD50は、黒鉛粉末のD50の1/4〜1/2であり、黒鉛粉末の配合量は、黒鉛粉末の質量とSiOx粉末の質量を合計したものを100質量%としたときに36質量%〜61質量%であり、バインダーの含有量は活物質層全体の質量を100質量%とした時に5質量%〜25質量%であることを特徴とする。
【0015】
なお、D50とはレーザー回析法による粒度分布測定における体積分布の積算値が50%に相当する粒子径を指す。つまり、D50とは、体積基準で測定したメディアン径を指す。
【0016】
SiO粉末と黒鉛粉末のD50が上記の関係にあり、黒鉛粉末の配合量が上記の範囲にあり、バインダーの含有量が上記範囲にあることによって、黒鉛粉末が形成する空隙内にSiO粉末が配置され、かつSiO粉末が膨張しても、負極の厚みが厚くならないようにSiO粉末及び黒鉛粉末が再配置される。再配置とは、SiO粉末及び黒鉛粉末が負極活物質層の厚み方向には膨らまないように幅方向にずれ、再度黒鉛粉末が形成する空隙内にSiO粉末が配置されることを称す。このように負極活物質層の厚み方向には膨らまないようにSiO粉末及び黒鉛粉末が再配置されることによって、負極の体積変化が大幅に抑制されることが出来る。
【0017】
SiO粉末のD50は、黒鉛粉末のD50の1/4〜1/2であることによって、黒鉛粉末が形成する空隙内にSiO粉末がうまく入り込み、黒鉛粉末とSiO粉末とがより高い密度で配置される。SiO粉末のD50が黒鉛粉末のD50の1/4より小さいと、SiO粉末は凝集してバインダーを含んだ粗大粒子を作ってしまい、黒鉛粉末が形成する空隙内に粗大粒子がうまく入り込めなくなる。SiO粉末のD50が黒鉛粉末のD50の1/2より大きいと黒鉛粉末が形成する空隙内にSiO粉末がうまく入り込めなくなる。
【0018】
黒鉛粉末の配合量は、黒鉛粉末の質量とSiOx粉末の質量を合計したものを100質量%としたときに36質量%以上あれば、黒鉛粉末が形成する空隙内にSiO粉末がうまく入り込み負極の体積変化を抑制でき、61質量%以下であれば負極の電極容量をあまり下げないですむ。
【0019】
また上記した効果は、バインダーの含有量が上記範囲であると顕著である。活物質層全体の質量を100質量%とした時にバインダーが5質量%より少ないとSiO粉末及び黒鉛粉末が再配置することによって黒鉛粉末及びSiO粉末が集電体から剥離してしまうので好ましくなく、バインダーが25質量%より多いと、絶縁性のバインダーの量が多くなるため、電極全体の導電性が低下し内部抵抗が高くなるので好ましくない。
【0020】
負極活物質層が厚み方向に膨張すると、活物質、導電助剤などの間に形成されていた導電パスが切れ、負極の導電性が低下する。負極の導電性が低下すると、放電時にリチウムイオンが放出されにくくなる。負極の体積変化を抑制できることによって、放電時にリチウムイオンが放出されにくくなるのを抑制することができ、電池の初期効率(最初の充電容量に対する最初の放電容量の割合)の低下を抑制することができる。
【0021】
また、負極活物質層が厚み方向に膨張すると、負極活物質と集電体との密着性が低下したり、負極活物質の膨張と収縮の繰り返しにより負極活物質に歪が生じて微細化して電極から脱離したりして、電池の電気容量及びサイクル特性が悪くなる。負極の体積変化を抑制できることによって、電池の電気容量及びサイクル特性の劣化を抑制することができる。
【0022】
上記黒鉛粉末の配合量は、36質量%〜49質量%とすることがさらに好ましい。黒鉛粉末の配合量を上記範囲とすることによって、さらに負極の体積変化を抑制でき、よりサイクル特性の劣化を抑制した電池とすることが出来る。黒鉛粉末の配合量が49質量%より多いと、繰り返しの充放電によって、SiO粉末よりもD50の大きな黒鉛粉末がバインダーから剥離しやすくなるため、サイクル特性が劣化する。
【0023】
また上記リチウムイオン二次電池用負極は、圧縮成形工程を経て形成されたものであり、圧縮成形工程におけるプレス圧より高いプレス圧でリチウムイオン二次電池用負極を圧縮する場合、圧縮方向の負極活物質層の厚みが減少することが好ましい。
【0024】
このようにより高いプレス圧を用いて負極活物質層の厚みを減少できるということは、高いプレス圧をかけることによって、SiO粉末はさらに黒鉛粉末が形成する空隙に入り込むことができることを示す。つまり、負極活物質層には、SiO粉末が膨張しても、SiO粉末及び黒鉛粉末がSiO粉末の膨張に伴い再配置される余地があることを示す。
【0025】
上記のリチウムイオン二次電池用負極を用いることにより、負極の体積変化を抑制しうるリチウムイオン二次電池とすることが出来る。
【0026】
また上記リチウムイオン二次電池は、xLi1・(1−x)LiM22(0<x≦1,Mは4価のMnを必須とする一種以上の金属元素、Mは4価のMnを必須とする二種以上の金属元素)で表されるリチウムマンガン系酸化物を基本組成とする正極活物質を含む正極を有することが好ましい。正極活物質として、上記のリチウムマンガン系酸化物を用いる場合、その活物質の活性化工程において、電池に4.5Vの電圧をかける。これは上記のリチウムマンガン系酸化物が、4.5Vかけないと活性化できないためである。電池に4.3V以上電圧をかけると電解液の分解を起こしやすいため、通常、電池にかける電圧は4.3Vが上限とされている。電池に電圧を4.5Vかけると、負極活物質であるSiO粉末の膨張は、電圧を4.3Vかけたものより2倍も大きくなる。本発明の負極を用いると、このような高電圧の場合でも負極全体の体積変化を抑制することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明のリチウムイオン二次電池用負極を用いることによって、負極の体積変化を抑制しうるリチウムイオン二次電池とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明のリチウムイオン二次電池用負極を説明する模式図である。
【図2】本発明のリチウムイオン二次電池用負極の体積変化を説明する模式図である。
【図3】SiO粉末2のD50が黒鉛粉末3のD50とほぼ同等か少し小さいものを用いたリチウムイオン二次電池用負極を説明する模式図である。
【図4】図3に記載のリチウムイオン二次電池用負極の体積変化を説明する模式図である。
【図5】SiO粉末と黒鉛粉末の粒径比と電極密度とを比較したグラフである。
【図6】実施例2〜4のサイクル試験結果を示すグラフである。
【図7】試験例2の負極の断面のSEM(走査型電子顕微鏡)写真である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
<リチウムイオン二次電池用負極>
本発明のリチウムイオン二次電池用負極は、集電体と、集電体の表面に形成された活物質層を有する。
【0030】
集電体は放電或いは充電の間、電極に電流を流し続けるための化学的に不活性な電子高伝導体のことである。集電体は箔、板等の形状とすることが出来るが、目的に応じていればその形状は特に限定されない。集電体として、例えば銅箔、ニッケル箔、アルミニウム箔、ステンレス箔などの金属箔を好適に用いることが出来る。
【0031】
活物質層は、活物質、バインダー及び緩衝材を含む。活物質層には、必要に応じて導電助剤を加えても良い。
【0032】
活物質とは、充電反応及び放電反応などの電極反応に直接寄与する物質のことである。本発明における活物質は、SiOx粉末(0.5≦x≦1.5)からなる。SiO(0.5≦x≦1.5)は二酸化珪素(SiO)と金属珪素(Si)とを原料として得られる非晶質の珪素酸化物の総称を表す一般式である。SiOは、熱処理されると、SiとSiOとに分解することが知られている。これは不均化反応といい、SiとOとの比が概ね1:1の均質な固体の一酸化珪素SiOであれば、固体の内部反応によりSi相とSiO相の二相に分離する。分離して得られるSi相は非常に微細であり、SiO相の中に分散している。また、Si相を覆うSiO相が電解液の分解を抑制する働きをもつ。したがって、Si相とSiO相とに分解したSiOからなる負極活物質を用いたリチウムイオン二次電池は、サイクル特性に優れている。
【0033】
SiOx粉末(0.5≦x≦1.5)において、xが0.5未満であると、Si相の占める比率が高くなるため充放電時の体積変化が大きくなりすぎて、サイクル特性が低下する。またxが1.5を超えると、Si相の比率が低下してエネルギー密度が低下するようになる。さらに好ましいxの範囲は、0.7≦x≦1.2である。
【0034】
一般に、酸素を断った状態であれば800℃以上で、ほぼすべてのSiOが不均化して二相に分離すると言われている。具体的には、非結晶性のSiO粉末を含む原料酸化珪素粉末に対して、真空中または不活性ガス中などの不活性雰囲気中で800〜1200℃、1〜5時間の熱処理を行うことで、非結晶性のSiO相および結晶性のSi相の二相を含むSiO粒子からなる粉末が得られる。
【0035】
SiOx粉末は、略球状の粒子からなるのが好ましい。リチウムイオン二次電池の充放電特性の観点からは、SiOx粉末のD50が小さいほど好ましい。しかし、D50が小さすぎると、負極の形成時に凝集して粗大な粒子となるため、リチウムイオン二次電池の充放電特性が低下する場合がある。またSiO粉末のD50が小さすぎると、SiO粉末の表面積が大きくなり、SiOx粉末と電解質との接触面が多くなって、電解質の分解が進んでしまい、リチウムイオン二次電池のサイクル特性が悪くなる。そのため、SiOx粉末のD50は、2μm以上であることが好ましい。なお、D50とはレーザー回析法による粒度分布測定における体積分布の積算値が50%に相当する粒子径を指す。つまり、D50とは、体積基準で測定したメディアン径を指す。
【0036】
また、SiO粉末のD50は、15μm以下であることが好ましい。D50が15μmより大きいと、SiO粉末は導電率が悪いため、電極全体の導電性が不均一になり、リチウムイオン二次電池の充放電特性が低下する。 SiO粉末のD50が、4μm〜10μmであることがさらに好ましい。
【0037】
SiO粉末のスパンは1.1〜2.3であることが好ましい。特にSiO粉末は1.3〜1.4のスパンを持つものが好ましい。スパンとは、レーザー回析法による粒度分布測定における積算値が10%、50%、90%に相当する粒子径をD10,D50,D90としたときに、(D90―D10)/D50の値を指す。 SiO粉末のスパンが1.1〜2.3であることは、粒度分布の幅が狭く、粒径のばらつきが小さいことを意味する。SiO粉末の粒径のばらつきが小さいと、SiOx粉末はそのD50と比べて極端に小さい粒子径を有するものや極端に大きな粒子径を有するものを含まない。D50よりも極端に小さな粒子径を有するSiOx粉末が含まれると、SiOx粉末の表面積が大きくなり、SiOx粉末と電解質との接触面が多くなって、電解質の分解が進んでしまい、リチウムイオン二次電池のサイクル特性が悪くなる。またD50よりも極端に大きな粒子径を有するSiOx粉末が含まれると、SiOx粉末は緩衝材である黒鉛粉末の形成する空隙に充填されないかもしれない。
【0038】
SiOx粉末として、所望のD50を有する市販のSiOx粉末を用いることができる。またSiOx粉末のD50を調整するためには、一般的によく知られた粉砕方法や粉砕機を用いることができる。例えばボールミル、ローラミル、ジェットミル、ハンマーミルなどを用いることができる。またこの粉砕は、湿式、乾式のどちらで行ってもよいが、ヘキサンなどの有機溶媒を共存させた湿式粉砕を用いると、粉砕時の酸化珪素の表面酸化を防止できる。不活性なSiOの割合が大きくなることを防止できるため、有機溶媒を用いた湿式粉砕が望ましい。
【0039】
また、SiO粉末は、表面に炭素材料からなる被覆層を備えるとよい。炭素材料からなる被覆層は、SiO粉末に導電性を付与するだけでなく、SiO粉末とフッ酸などとの反応を防止することができ、リチウムイオン二次電池の電池特性が向上する。被覆層を構成する炭素材料としては、天然黒鉛、人造黒鉛、コークス、メソフェーズ炭素、気相成長炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、PAN系炭素繊維などを用いることができる。また被覆層を形成するには、珪素酸化物と炭素材料前駆体とを混合して焼成するとよい。炭素材料前駆体としては、糖類、グリコール類、ポリピロール等のポリマーなどの有機化合物やアセチレンブラックなど、焼成により炭素材料に転化しうる有機化合物が使用可能である。その他、メカノフュージョンなどの機械的表面融合処理法、CVDなどの蒸着法を用いても、被覆層を形成することができる。
【0040】
被覆層の形成量は、SiO粉末と被覆層の合計に対して1質量%〜50質量%とすることができる。被覆層が1質量%未満では導電性向上の効果が得られず、50質量%を超えるとSiO粉末の割合が相対的に減少して負極容量が低下してしまう。被覆層の形成量は5質量%〜30質量%の範囲が好ましく、5質量%〜20質量%の範囲がさらに望ましい。
【0041】
なお、SiO粉末の表面に炭素材料からなる被覆層を備える場合において、活物質層全体の質量を100質量%とした時のSiO粉末の含有量には被覆層の質量を含む。
【0042】
SiO粉末のD50は、緩衝材である黒鉛粉末のD50の1/4〜1/2である。上記黒鉛粉末とSiO粉末のD50の関係が上記範囲にあれば、黒鉛粉末が形成する空隙にSiO粉末が配置される。 SiO粉末の含有量は、活物質層全体の質量を100質量%とした時に、32質量%以上52質量%以下となることが好ましい。SiO粉末の含有量が32質量%より小さいと黒鉛の量が相対的に増えることになりバインダーの接着が不十分でリチウムイオン二次電池のサイクル特性が悪くなる。SiO粉末の含有量が52質量%より大きいとSiO粉末が凝集しリチウムイオン二次電池のサイクル特性が悪くなる。
【0043】
バインダーは、活物質及び緩衝材を集電体に固定するための結着剤として用いられる。バインダーはなるべく少ない量で活物質等を結着させることが求められる。本発明の場合、活物質層全体の質量を100質量%とした時に、バインダーの含有量が5質量%〜25質量%である。バインダーの含有量は、8質量%〜15質量%であることがより好ましい。
【0044】
バインダーとして、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)の硬化物、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系ポリマーの硬化物、スチレンブタジエンゴム(SBR)等のゴムの硬化物、ポリイミド、ポリアミドイミド等のイミド系ポリマーの硬化物、アルコキシシリル基含有樹脂の硬化物を用いることが出来る。
【0045】
活物質層には、導電助剤が、電極層の導電性を高めるために必要に応じて添加される。導電助剤として、炭素質微粒子であるカーボンブラック、黒鉛、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック(KB)、気相法炭素繊維(Vapor Grown Carbon Fiber:VGCF)等を単独でまたは二種以上組み合わせて添加することが出来る。導電助剤の使用量については、特に限定的ではないが、例えば、活物質100質量%に対して、2質量%〜10質量%程度とすることができる。
【0046】
緩衝材は黒鉛粉末からなる。黒鉛は、黒鉛構造(炭素原子が構成する六角網平面が規則性を持って積層した構造)を有する。従って黒鉛は層状構造を有し、各層と各層は弱いファンデルワールス力で結合している。そのため圧力をかけられた黒鉛粉末は、各層の層間距離を小さくすることによってその圧力を吸収することができる。また黒鉛はその層状構造のため、層間すべりを起こしやすく、黒鉛粉末にかかった圧力は、層間がすべることによっても吸収される。つまり、黒鉛粉末はSiOの膨張の一部を黒鉛粉末が内部で弾性変形することによって吸収することができる。
【0047】
黒鉛粉末としては、天然黒鉛粉末、人造黒鉛粉末、球晶黒鉛粉末(黒鉛化メソフェーズカーボン小球体)、グラファイト系炭素材料粉末などを用いることができる。グラファイト系炭素材料としては、ピッチ、コークスなどの縮合多環炭化水素化合物の熱分解物などを用いることができる。このような黒鉛粉末は、黒鉛構造が非常に発達しており、例えば粉末X線回折法で求められる(002)面の平均面間隔d002が0.336nm以下である。
【0048】
黒鉛粉末のD50は、SiO粉末のD50の2倍〜4倍であり、黒鉛粉末の配合量は、黒鉛粉末の質量とSiOx粉末の質量を合計したものを100質量%としたときに36質量%〜61質量%である。
【0049】
SiO粉末のD50と黒鉛粉末のD50とが上記関係にあることによって、大きな粒子径を有する黒鉛粉末が形成する空隙に小さい粒子径を有するSiO粉末が充填される。黒鉛粉末として、D50が4μm〜30μmであるものを用いることが好ましい。特に黒鉛粉末はD50が5μm〜25μmであるものが好ましく、D50が8μm〜20μmであることがより望ましい。
【0050】
黒鉛粉末のD50が小さくなると、活物質層における黒鉛粉末の充填率は下がる。これは粉末をある体積の容器につめる場合に、タップ回数及びタップ圧力によって程度は異なるが、同じタップ回数及びタップ圧力において、D50が小さいほうが、間に空気をかんで、充填率が下がることによる。 ここで、黒鉛粉末の活物質層における充填率は、以下の式によって求められる。
【0051】
充填率=(単位体積あたりの黒鉛の質量/黒鉛の真密度)×100
黒鉛粉末の充填率が下がると、黒鉛粉末が形成する空隙に充填されるSiO粉末の充填率も必然的に下がる。SiO粉末の充填率が下がると、電極全体の電池容量が下がることになる。そのため、黒鉛粉末のD50は4μm以上とすることが好ましい。
【0052】
また黒鉛粉末のD50が30μm以下のものを用いることによってエネルギー密度と出力密度を両立することができる。エネルギー密度とは電池重量あるいは電池容積あたりの電力容量であり、出力密度とは電池重量あるいは電池容積あたりに出すことができる最大の電力量を示す。黒鉛粉末のD50が30μmより大きいと、スラリーの塗布時に黒鉛粉末の最大粒径以下の塗布厚みには出来ないため、必然的に塗膜厚みが厚くなってしまう。塗膜厚みが厚くなると、出来上がった塗膜にすじが入ることがあり、エネルギー密度があるわりには、出力密度が低下してしまう。
【0053】
黒鉛粉末の配合量は、黒鉛粉末の質量とSiOx粉末の質量を合計したものを100質量%としたときに36質量%〜61質量%である。
【0054】
黒鉛粉末の質量が少ないと緩衝効果は見られず、黒鉛粉末の質量が多くなりSiO粉末の質量が少なくなると、電極容量が下がってしまう。電極容量と緩衝効果の両方の観点から、黒鉛粉末と、SiO粉末との配合割合は、上記範囲とすることが好ましい。さらに黒鉛粉末の配合量は、36質量%〜49質量%とすることが好ましい。黒鉛粉末の配合量がこの範囲にあるとリチウムイオン二次電池のサイクル特性が劣化しにくい。 活物質層において、黒鉛粉末が形成する空隙内にSiO粉末が配置され、かつSiO粉末が膨張しても、SiO粉末及び黒鉛粉末が活物質層の厚み方向に膨張しないように再配置される。そのためSiO粉末が膨張しても、負極の厚み方向への体積変化は抑制される。
【0055】
このような再配置できる余地が有るということを別の形で表現すると、リチウムイオン二次電池用負極は、圧縮成形工程を経て形成されたものであり、圧縮成形工程におけるプレス圧より高いプレス圧でリチウムイオン二次電池用負極を圧縮する場合、圧縮方向の活物質層の厚みは減少する。再配置できる余地がない場合、さらに高いプレス圧でリチウムイオン二次電池用負極を圧縮しても活物質層の厚みは減少できない。
【0056】
SiO粉末が黒鉛粉末の形成する空隙の中に充填された状態となっていると、充填効率がよくなって単位体積あたりに含まれる黒鉛粉末及びSiO粉末の量が増えることになり、電極密度が高くなる。すなわちある一定のプレス圧で比較した場合に電極密度が高いということが、黒鉛粉末及びSiO粉末が上記のように黒鉛粉末が形成する空隙内にSiO粉末が配置され、かつSiO粉末が膨張しても、SiO粉末及び黒鉛粉末が再配置される状態で充填されていることを示す指標となる。また電極密度が高いものは、黒鉛粉末の活物質層における充填率も高くなる。
【0057】
この電極密度は電極密度=(集電体を除いた電極の質量)/(集電体を除いた電極の体積)の式により求められる。実施例において後で説明するが、SiO粉末のD50と黒鉛粉末のD50とが上記関係にあると、電極密度が高くなることが確かめられた。また電極密度が高いため、電極の単位体積あたりの電池容量も高くなる。
【0058】
ここで、SiO粉末が膨張しても負極の体積変化が抑制されるメカニズムを図1〜図4を用いて説明する。図1は本発明のリチウムイオン二次電池用負極を説明する模式図である。図1には、SiO粉末2と、黒鉛粉末3とがバインダー4を介して集電体1上に結着され、集電体1上に活物質層5が形成されている様子が模式的に示されている。図1において、SiO粉末2のD50は黒鉛粉末3のD50の1/4〜1/2であるものとして記載している。図2は本発明のリチウムイオン二次電池用負極の体積変化を説明する模式図である。図2の左図は図1と同じものであり、SiO粉末2が充電により膨張した後の配置を図2の右図に示す。
【0059】
図1において、SiO粉末2は黒鉛粉末3が形成した空隙の中に配置されている。またSiO粉末2と黒鉛粉末3の配置状態は、さらに活物質層に上から圧力をかければ、活物質層5の厚みをさらに薄くすることができる余地がある。
【0060】
図2の右図にSiO粉末2が膨張したときの状態を示す。図2の左図(膨張前の状態、図1と同じもの)と比較して説明する。SiO粉末2は充電によって体積が約2倍に膨張する。SiO粉末2の体積が約2倍に膨張するということは、SiO粉末2のD50が約1割増えるとして図示している。
【0061】
SiO粉末2は膨張することによって、近くに配置された黒鉛粉末3に接触する。黒鉛粉末3の接触表面において、黒鉛粉末3は層間すべりがおこり、SiO粉末2の膨張の一部を黒鉛粉末3の表面の弾性変形によって吸収する。
【0062】
図2の右図において、SiO粉末2が膨張すると、膨張したSiO粉末2と近くに配置された黒鉛粉末3とが、活物質層5の厚み方向に膨らまないように、再配置される。そのため再度SiO粉末2は、黒鉛粉末3の形成した空隙に配置されることになり、活物質層5の厚みはほとんど変わらない。
【0063】
図3は、SiO粉末2のD50が黒鉛粉末3のD50とほぼ同等か少し小さいものを用いたリチウムイオン二次電池用負極を説明する模式図であり、図4は、図3に記載したリチウムイオン二次電池用負極の体積変化を説明する模式図である。図4の左図は図3と同じものであり、SiO粉末2が充電により膨張した後の配置を図4の右図に示す。
【0064】
図3において、SiO粉末2のD50は黒鉛粉末3のD50と同等より少し小さいものとして記載している。図3において、図1と同様にSiO粉末2と、黒鉛粉末3とがバインダー4を介して集電体1上に結着され、集電体1上に活物質層5が形成されている様子が模式的に示されているが、SiO粉末2のD50は黒鉛粉末3のD50とほぼ同等であるため、SiO粉末2は黒鉛粉末3とぶつかりあうように充填され、SiO粉末2と黒鉛粉末3とが積み重なって活物質層5の厚みを形成している。図3の活物質層5において、図1の活物質層5よりも多くの空隙が見られるが、その空隙にSiO粉末2が入り込むことができないため、図3の活物質層5にこれ以上、上から圧力を加えても、粉末を破壊しない限り、活物質層5の厚みを薄くすることはできない。
【0065】
従って同じ圧力でプレスした場合、図1の活物質層5と比較して図3の活物質層5のほうが厚みは厚くなる。
【0066】
図4の右図と図4の左図(膨張前の状態、図3と同じもの)と比較して説明する。図4の右図において、SiO粉末2は膨張することによって、近くに配置された黒鉛粉末3に接触する。黒鉛粉末3の接触表面において、黒鉛粉末3は層間すべりがおこり、SiO粉末2の膨張の一部を黒鉛粉末3の表面の弾性変形によって吸収する。
【0067】
また図4の活物質層5においてはSiO粉末2と黒鉛粉末3とが再配置できる余地がないため、SiO粉末2の膨張によって、黒鉛粉末3及びSiO粉末2は厚み方向に移動せざるを得ない。そのため、図4の活物質層5の厚みが厚くなる。
【0068】
活物質層5の厚みが厚くなると、バインダー4とSiO粉末2との結着力が弱くなってSiO粉末2がバインダー4から剥離し、電極内の導電パスが破壊される。またこのような膨張・収縮が繰り返されると、SiO粉末2が集電体1から脱離したり、SiO粉末2に歪が生じて微細化して集電体1から脱離したりする。
【0069】
なお、SiO粉末2のD50が黒鉛粉末3のD50の1/4より小さい場合は、SiO粉末2同士の凝集が起こる。SiO粉末2同士の凝集が起こると、上記の図3及び図4で説明したSiO粉末2のD50が黒鉛粉末3のD50とほぼ同等か少し小さいものを用いたリチウムイオン二次電池用負極と同様のことが起こる。
【0070】
このようなメカニズムによって、本発明のリチウムイオン二次電池用負極は、活物質としてSiOx粉末(0.5≦x≦1.5)を含む活物質層に、緩衝材として機能しうる黒鉛粉末を所定配合量で混入し、両粉末の大きさの比を特定することにより、負極全体の体積変化を大きく抑制出来る。
【0071】
リチウムイオン二次電池用負極は、公知の製造方法によって製造できる。例えば、スラリー作成工程と、スラリー塗布工程と、圧縮形成工程と、熱処理工程とを有する製造方法によって製造できる。スラリー作成工程では、活物質と、バインダー樹脂と、緩衝材と、を混合してスラリーを作成する。必要に応じて溶媒、導電助剤をスラリーに添加しても良い。
【0072】
溶媒は特に限定されない。溶媒として、N−メチルピロリドン(NMP)、メタノール、メチルイソブチルケトン(MIBK)などが使用できる。
【0073】
活物質、バインダー樹脂、緩衝材、導電助剤及び溶媒を混合してスラリーとするには、プラネタリーミキサー、脱泡ニーダー、ボールミル、ペイントシェーカー、振動ミル、ライカイ機、アジテーターミル等の一般的な混合装置を使用すればよい。
【0074】
スラリー塗布工程では、上記スラリーを集電体の表面に塗布する。スラリーの塗布方法として、ロールコート法、ディップコート法、ドクターブレード法、スプレーコート法、カーテンコート法など二次電池用電極を作製する際に一般的に用いる塗布方法を用いることが出来る。集電体の表面に塗布されたスラリーの塗布厚みは10μm〜30μmが好ましい。
【0075】
圧縮成形工程では、スラリーが塗布された集電体をロールプレス機で圧縮成形する。圧縮成形することによって集電体とスラリーとを密着接合させる。ロールプレス機は一般的に用いられるものが使用できる。圧縮成形は、例えば線圧10kg/cm〜2000kg/cmでプレス成形することで行うことが出来る。この線圧は、エネルギー密度と電池寿命の観点から適宜最適な電極密度になるように制御されればよい。
【0076】
熱処理工程では、集電体の表面に密着接合されたスラリーを加熱することによって、バインダー樹脂を硬化させる。熱処理工程では、使用するバインダー樹脂の硬化温度にあわせて加熱する。この熱処理工程によって、集電体上に活物質層が形成される。
【0077】
<リチウムイオン二次電池>
本発明のリチウムイオン二次電池は、負極が上記リチウムイオン二次電池用負極である。負極が上記リチウムイオン二次電池用負極であることによって、充放電時の負極全体の体積変化が抑制される。負極全体の体積変化が抑制されるため、リチウムイオン二次電池の初期効率の低下を抑制することができる。
【0078】
初期効率は、電池の最初の充電容量に対する放電容量の割合である。負極において充電時にリチウムイオンが吸蔵され、放電時にリチウムイオンが放出される。充電時にリチウムイオンが吸蔵されて負極活物質が膨張して負極全体の厚みが厚くなると、負極内の導電性パスが切断され負極の導電性が低下する。負極の導電性が低下すると、放電時にリチウムイオンが放出されにくくなる。それにより、放電容量が低下して初期効率が低下する。
【0079】
本発明のリチウムイオン二次電池は、負極全体の体積変化が抑制されるため、初期効率の低下を抑制できる。また電池の初期効率の低下を抑制できることは、負極に貯蔵されたままで、放出されないリチウムイオン量が減ることでもあるので、電池の初期効率の低下を抑制できると、負極と正極間を移動するリチウムイオンの量が増え、結果的に電池の電気容量が低下するのを抑制できる。
【0080】
また負極全体の体積変化が抑制されるため、活物質が集電体から剥離・脱落することが抑制でき、本発明のリチウムイオン二次電池はサイクル特性の劣化が抑制できる。
【0081】
上記したリチウムイオン二次電池用負極を用いるリチウムイオン二次電池は、上記のリチウムイオン二次電池用負極を用いる以外は公知の電池構成要素を用いることが出来、また公知の手法により製造することができる。
【0082】
すなわち、電池構成要素として、正極、負極、セパレータ、電解液を用いる。
【0083】
正極は、負極同様に集電体と、集電体の表面に結着させた活物質層を有する。活物質層は、活物質、バインダーを含み、必要に応じて導電助剤を含む。集電体、バインダー、導電助剤は負極で説明したものと同様である。
【0084】
正極活物質としては、リチウム含有化合物が適当である。例えばリチウムコバルト複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムマンガン複合酸化物などのリチウム含有金属複合酸化物などを用いることが出来る。また正極活物質として他の金属化合物あるいは高分子材料を用いることも出来る。他の金属化合物としては、例えば酸化チタン、酸化バナジウムあるいは二酸化マンガンなどの酸化物、または硫化チタンあるいは硫化モリブデンなどの硫化物が挙げられる。高分子材料としては例えばポリアニリンあるいはポリチオフェンなどの導電性高分子が挙げられる。
【0085】
正極活物質として、xLi1・(1−x)LiM22(0<x≦1,Mは4価のMnを必須とする一種以上の金属元素、Mは4価のMnを必須とする二種以上の金属元素)で表されるリチウムマンガン系酸化物を用いる場合、その活物質の活性化工程において、電池に4.5Vの電圧をかける。これは上記のリチウムマンガン系酸化物が、層状岩塩構造を有し、4.5Vかけないと活性化できないためである。電池に電圧を4.5Vかけると、負極活物質であるSiO粉末の膨張は、電圧を通常の4.3Vかけたものより2倍も大きくなる。本発明の負極を用いると、このような高電圧の場合でも負極全体の厚みの膨張を抑制することができる。上記のリチウムマンガン系酸化物として、LiMnO
0.5LiMnO・0.5LiNi1/3Co1/3Mn1/3を用いることができる。
【0086】
セパレータは正極と負極とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。セパレータは、例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、あるいはポリエチレンなどの合成樹脂製の多孔質膜、またはセラミックス製の多孔質膜が使用できる。
【0087】
電解液は、溶媒とこの溶媒に溶解された電解質とを含んでいる。
【0088】
例えば溶媒として環状エステル類、鎖状エステル類、エーテル類が使用できる。環状エステル類として、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ガンマブチロラクトン、ビニレンカーボネート、2−メチル−ガンマブチロラクトン、アセチル−ガンマブチロラクトン、ガンマバレロラクトン等が使用できる。鎖状エステル類として、例えばジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルエチルカーボネート、プロピオン酸アルキルエステル、マロン酸ジアルキルエステル、酢酸アルキルエステル等が使用できる。エーテル類として、例えばテトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン等が使用できる。
【0089】
また上記電解液に溶解させる電解質として、例えばLiClO、LiAsF、LiPF、LiBF、LiCFSO、LiN(CFSO等のリチウム塩を使用することが出来る。
【0090】
例えば、電解液として、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネートなどの溶媒にLiClO、LiPF、LiBF、LiCFSOなどのリチウム塩を0.5mol/lから1.7mol/l程度の濃度で溶解させた溶液を使用することが出来る。
【0091】
本発明のリチウムイオン二次電池は、形状に特に限定はなく、円筒型、積層型、コイン
型等、種々の形状を採用することができる。いずれの形状を採る場合であっても、正極お
よび負極にセパレータを挟装させ電極体とし、正極集電体および負極集電体から外部に通
ずる正極端子および負極端子までの間を、集電用リード等を用いて接続した後、この電極
体を電解液とともに電池ケースに密閉して電池となる。
【実施例】
【0092】
以下、一実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。
【0093】
<電極密度測定>
活物質として、スパン2.0、D50が2μmのSiO(アルドリッチ社製)、スパン1.1、D50が5μmのSiO(アルドリッチ社製)、スパン1.2、D50が10μmのSiO(アルドリッチ社製)、スパン1.2、D50が15μmのSiO(アルドリッチ社製)及びスパン1.4、D50が20μmのSiO(アルドリッチ社製)を準備した。
【0094】
バインダー樹脂としてアルコキシ基含有シラン変性ポリアミドイミド樹脂(荒川化学工業株式会社製、商品名コンポセラン、品番H901−2、溶剤組成:N-メチルピロリドン(NMP)/キシレン(Xyl)、硬化残分30%、粘度8000mPa・s、硬化残分中のシリカ、2wt%、硬化残分とは樹脂硬化させ揮発性成分を除いた固形分を意味する)を準備した。
【0095】
緩衝材として、D50が10μmの塊状人造黒鉛“MAG(Massive Artifical Graphite)”(日立化成工業株式会社製)及びD50が20μmの塊状人造黒鉛“MAG(Massive Artifical Graphite)”(日立化成工業株式会社製)を準備した。
【0096】
導電助剤としてケッチェンブラックインターナショナル社製のKB(ケッチェンブラック)を準備した。
【0097】
リチウムイオン二次電池用負極を以下のように作製した。
【0098】
上記活物質、緩衝材、導電助剤及びバインダー樹脂を、SiO粉末:黒鉛粉末:導電助剤:バインダー樹脂=40:42:3:15の質量比で混合した。黒鉛粉末の質量とSiOx粉末の質量を合計したものを100質量%としたときに、黒鉛粉末の配合量は44質量%である。上記混合物に、溶媒としてNMPを適量入れて調整してスラリーとした。
【0099】
厚さ20μmの電解銅箔に上記スラリ−をのせて、ドクターブレードを用いて電解銅箔にスラリーを膜状に塗布した。得られたシートを80℃で20分間乾燥してNMPを揮発させて除去した後、ロ−ルプレス機により、線圧40kg/cmで集電体と集電体上の塗布物を強固に密着接合させた。接合物を200℃で2時間、真空乾燥機で加熱し、所定の形状(26mm×31mmの矩形状)に切り取り、厚さ18μm程度の電極とした。
【0100】
SiO粉末と黒鉛粉末の粒径比を変え、後の条件は同じにして試験例1〜7の負極を作製し、その電極密度を測定した。電極密度は作製した各電極の質量及び体積を測定し、集電体の質量及び体積を除いて電極密度=(集電体を除いた電極の質量)/(集電体を除いた電極の体積)の式により計算で求めた。また黒鉛粉末の活物質層における充填率(%)を黒鉛充填率=(黒鉛の質量/黒鉛の真密度)/(集電体を除いた電極の体積)×100の式から求めた。結果を表1にまとめた。
【0101】
【表1】

【0102】
この表1の結果から電極密度と粒径比を比較したグラフを図5に示す。表1及び図5からわかるように、粒径比が0.25〜0.5である試験例2、試験例3、試験例6は、粒径比が0.1、0.75、または1である試験例1、試験例4、試験例5及び試験例7に比べて電極密度が高くなっていることがわかった。また試験例3と試験例6は同じ粒径比であるが、電極密度は試験例3のほうが高くなった。これは試験例3と試験例6では黒鉛粒径D50が試験例6のほうが小さいため、電極が嵩高くなり、試験例6のほうが電極の体積が大きくなったためであると考えられる。
【0103】
試験例4、試験例5及び試験例7のように粒径比が0.75または1のように大きいものは、SiO粉末が黒鉛粉末の形成する空隙に配置されず、空隙が多くなり、負極の体積が増加して電極密度が下がったと考えられる。試験例1のように粒径比が0.1と小さいものは、SiOが凝集するため負極の体積が増加して電極密度が下がると考えられる。
【0104】
試験例1〜7は、同じ線圧を用いて圧縮成形しているため、電極密度が高いものが、黒鉛粉末が形成する空隙内にSiO粉末が配置され、かつSiO粉末が膨張しても、SiO粉末及び黒鉛粉末が負極活物質層の厚み方向には膨らまないように幅方向にずれ、再度黒鉛粉末が形成する空隙内にSiO粉末が配置される状態であるとみなすことができる。
【0105】
また電極密度が高いものは、黒鉛充填率も高くなっており、試験例1〜試験例7の結果からは、粒径比が0.25〜0.5である試験例2、試験例3、試験例6は、粒径比が0.1、0.75、または1である試験例1、試験例4、試験例5及び試験例7に比べて黒鉛充填率が高く24.2%以上になっていることがわかった。
【0106】
黒鉛粒径が20μmである試験例1と試験例2の電極密度を比較すると、試験例2のほうが0.06g/cm電極密度が高くなった。電極密度が高くなれば、電池容積あたりの電力容量であるエネルギー密度(Wh/l)も高くなる。従って試験例2のほうが試験例1に比べて約5%、エネルギー密度(すなわち電気容量)が高くなったといえる。(5(%)=0.06(電極密度差分)÷1.17(試験例1の電極密度)×100)。
【0107】
ここで、試験例2の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。SEM写真を図7に示す。図7からSiO7は黒鉛6の形成する空隙に配置され、なおかつその空隙には再配置できる余地があることが観察できた。黒鉛6はその層状構造がすべって弾性変形していることが観察された。また、図7から、電解液が含浸する空間が充分確保され、かつ導電性ネットワークもしっかり形成していることが観察できた。
【0108】
次に試験例2及び試験例4の負極を用いて、ラミネート型リチウムイオン二次電池を作製し、充放電を行って初期効率と電極膨張の膨張倍率を測定した。
【0109】
<ラミネート型リチウムイオン二次電池作製>
(実施例1)
試験例2の電極を負極とした。正極の集電体として20μmのアルミニウム箔を用意し、正極活物質としてLiMnOを用意し、正極のバインダー樹脂としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)を用意した。
【0110】
正極活物質であるLiMnOは以下のように作製した。
【0111】
溶融塩原料として0.20molの水酸化リチウム一水和物LiOH・HO(8.4g)と、金属化合物原料として0.02molの二酸化マンガンMnO(1.74g)と、を混合して原料混合物を調製した。このとき、目的生成物がLiMnOであることから、二酸化マンガンのMnが全てLiMnOに供給されたと仮定して、(目的生成物のLi)/(溶融塩原料のLi)は、0.04mol/0.2mol=0.2であった。
【0112】
原料混合物を坩堝にいれて、700℃の電気炉内に移し、真空中700℃で2時間加熱した。このとき原料混合物は融解して溶融塩となり、黒色の生成物が沈殿していた。
【0113】
次に、溶融塩の入った坩堝を電気炉内で室温まで冷却後、電気炉から取り出した。溶融塩が十分に冷却されて固体化した後、坩堝ごと200mLのイオン交換水に浸し、攪拌することで、固体化した溶融塩を水に溶解した。黒色の生成物は水に不溶性であるため、水は黒色の懸濁液となった。黒色の懸濁液を濾過すると、透明な濾液と、濾紙上に黒色固体の濾物と、が得られた。得られた濾物をさらにアセトンを用いて十分に洗浄しながら濾過した。洗浄後の黒色固体を120℃で12時間、真空乾燥した後、乳鉢と乳棒を用いて粉砕した。
【0114】
得られた黒色粉末についてCuKα線を用いたX線回折(XRD)測定を行った。XRDによれば、得られた黒色粉末は層状岩塩構造であることがわかった。また、発光分光分析(ICP)および酸化還元滴定によるMnの平均価数分析から、得られた黒色粉末の組成はLiMnOであると確認された。
【0115】
上記正極の集電体、正極活物質、正極のバインダー樹脂を用い、負極と同様な方法で正極を作成した。
【0116】
上記の正極および負極を用いて、ラミネート型リチウムイオン二次電池を製作した。詳しくは、正極および負極の間に、セパレータとしてポリプロピレン樹脂からなる矩形状シート(27×32mm、厚さ25μm)を挟装して極板群とした。この極板群を二枚一組のラミネートフィルムで覆い、三辺をシールした後、袋状となったラミネートフィルムに電解液を注入した。電解液としてエチレンカ−ボネ−ト(EC)とジエチルカ−ボネ−ト(DEC)をEC:DEC=3:7(体積比)で混合した溶媒に1モルのLiPF6を溶解した溶液を用いた。その後、残りの一辺をシールすることで、四辺が気密にシールされ、極板群および電解液が密閉されたラミネート型リチウムイオン二次電池を得た。なお、正極および負極は外部と電気的に接続可能なタブを備え、このタブの一部はラミネート型リチウムイオン二次電池の外側に延出している。以上の工程で、試験例2の電極を用いたラミネート型のリチウムイオン二次電池を得た。これを実施例1のリチウムイオン二次電池とする。
【0117】
(比較例1)
試験例4の電極を負極とした以外は実施例1と同様にして比較例1のリチウムイオン二次電池を得た。
【0118】
<充放電試験評価>
実施例1及び比較例1のリチウムイオン二次電池について、25℃にて充放電試験を行った。充放電試験は、0.1Cで4.5VまでCCCV充電(定電流定電圧充電)を行い正極活物質を活性化させた後、0.01Cの電流値まで4.5V一定電圧で充電を行った。放電は2Vまで1Cで行った。この時、電気容量を1時間で放電する電流を1C、5時間で放電する電流を0.2Cと表す。従って1Cの電流値は0.2Cの電流値の5倍である。
【0119】
充電前の電極厚みを測定し、充電後の電極厚みを測定し、膨張倍率を計算した。この時充電後の電極厚みは、充電後に電池を分解して電極の厚みを測定したものである。また、最初の充電容量に対する放電容量の割合を初期効率として求めた。
【0120】
その結果、比較例1のリチウムイオン二次電池は、初期効率が75%、電極の膨張倍率が2.1倍であったのに対し、実施例1のリチウムイオン二次電池は、初期効率が80.5%、電極の膨張倍率が1.1倍と、大幅に電極膨張を抑制でき、初期効率の劣化を抑制できた。
【0121】
またこの電池は活性化時に4.5V以上の電圧をかけた、より電極が膨張する条件で行っており、電圧が低電圧においても、同様の効果が得られると考える。また試験例2の負極を用いた実施例1のリチウムイオン二次電池の結果は、試験例3及び試験例6の負極を用いても同様な結果が出ると思われる。
【0122】
比較例1の電極の膨張倍率2.1倍は、SiO粉末の膨張によってバインダーとSiO粉末とが剥離を起こし、そこに電解液が入り込んで、電極の厚みがさらに膨張したと考えられる。また電極の厚みは、充電後の電池を分解して電極を取り出してから測定しているので、電池内部ではこれほど膨張してはいない。
【0123】
このように本発明のリチウムイオン二次電池用負極を用いることによって大幅に負極全体の膨張を抑制することができ、本発明のリチウムイオン二次電池は初期効率の劣化を抑制できた。
【0124】
<サイクル試験評価>
負極のSiO粉末と黒鉛粉末の配合比率を変えた以外は実施例1と同様にして以下の実施例2〜4のリチウムイオン二次電池を作製し、サイクル試験を行った。
【0125】
(実施例2)
負極をSiO粉末:黒鉛粉末:導電助剤:バインダー樹脂=32:50:3:15の質量比で混合して作成した以外は実施例1と同様にして、実施例2のリチウムイオン二次電池を作製した。実施例2において黒鉛粉末の質量とSiO粉末の質量を合計したものを100質量%としたときに黒鉛粉末の配合量は60.9質量%にあたる。黒鉛充填率は29.3%であった。実際の黒鉛充填率の計算方法を示す。表1の試験例2の結果から、電極密度が1.23g/cmであるので、電極体積が1cmとして計算すると、1.23g(電極重量)×50%(質量比)=0.615g、黒鉛充填率は、0.615g/1cm/(2.1g/cm)(黒鉛真密度)×100=29.3%となる。
【0126】
(実施例3)
負極をSiO粉末:黒鉛粉末:導電助剤:バインダー樹脂=42:40:3:15の質量比で混合して作成した以外は実施例1と同様にして、実施例3のリチウムイオン二次電池を作製した。実施例3において黒鉛粉末の質量とSiO粉末の質量を合計したものを100質量%としたときに黒鉛粉末の配合量は48.8質量%にあたる。黒鉛充填率は23.4%であった。
【0127】
(実施例4)
負極をSiO粉末:黒鉛粉末:導電助剤:バインダー樹脂=52:30:3:15の質量比で混合して作成した以外は実施例1と同様にして、実施例4のリチウムイオン二次電池を作製した。実施例4において黒鉛粉末の質量とSiO粉末の質量を合計したものを100質量%としたときに黒鉛粉末の配合量は36.6質量%にあたる。黒鉛充填率は17.6%であった。
【0128】
(サイクル試験条件)
サイクル試験は60℃の恒温槽中で充電電流2Cで4.2VまでCC充電し、10分休止後、2Cで2VまでCC放電することを1サイクルとし、150サイクル行った。サイクルごとの放電容量維持率(%)を求めた。放電電流容量維持率(%)は以下の式で求めた。
【0129】
放電電流容量維持率(%)=(各サイクルの放電電流容量/初回の放電電流容量)×100
結果を図6に記載する。図6は実施例2〜4のサイクル試験結果を示すグラフである。
【0130】
実施例2〜4はともにサイクル数70回程度までは、放電容量維持率が85%以上あるサイクル特性の優れたものであった。100サイクル目まで実施例2〜4はともに75%以上の放電容量維持率を有していた。150サイクル目において、実施例2は放電容量維持率が50%まで落ちてしまったが、実施例3及び4は放電容量維持率を70%程度まで維持していた。従って実施例2〜4はいずれも放電容量維持率が高く、ともに100サイクル目までのサイクル特性が優れているといえる。
【0131】
上記の結果から、黒鉛粉末の質量とSiO粉末の質量を合計したものを100質量%としたときに黒鉛粉末の配合量が36質量%〜61質量%であると、電極容量とサイクル特性の両方を兼ね備えたリチウムイオン二次電池とすることが出来た。また黒鉛粉末の配合量が36質量%〜49質量%であると特にサイクル特性の劣化を抑制した電極とすることが出来た。
【0132】
本発明のリチウムイオン二次電池は、電極厚みの膨張を抑制でき、さらに電気容量及びサイクル特性に関しても優れた結果が得られた。
【符号の説明】
【0133】
1:集電体、2:SiO粉末、3:黒鉛粉末、4:バインダー、5:活物質層、6:黒鉛、7:SiO。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体と前記集電体の表面に形成された活物質層とを有するリチウムイオン二次電池用負極において、
前記活物質層は、活物質、バインダー、及び緩衝材を含み、
前記活物質はSiOx粉末(0.5≦x≦1.5)からなり、
前記緩衝材は黒鉛粉末からなり、
前記SiO粉末のD50は、前記黒鉛粉末のD50の1/4〜1/2であり、
前記黒鉛粉末の配合量は、前記黒鉛粉末の質量と前記SiOx粉末の質量を合計したものを100質量%としたときに36質量%〜61質量%であり、
前記バインダーの含有量は前記活物質層全体の質量を100質量%とした時に5質量%〜25質量%であることを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極。
【請求項2】
前記黒鉛粉末の配合量は、36質量%〜49質量%である請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用負極。
【請求項3】
請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池用負極は、圧縮成形工程を経て形成されたものであり、
該圧縮成形工程におけるプレス圧より高いプレス圧で該リチウムイオン二次電池用負極を圧縮する場合、圧縮方向の前記活物質層の厚みは減少する請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池用負極。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用負極を有するリチウムイオン二次電池。
【請求項5】
xLi1・(1−x)LiM22(0<x≦1,Mは4価のMnを必須とする一種以上の金属元素、Mは4価のMnを必須とする二種以上の金属元素)で表されるリチウムマンガン系酸化物を基本組成とする正極活物質を含む正極を有する請求項4に記載のリチウムイオン二次電池。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−101921(P2013−101921A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−224851(P2012−224851)
【出願日】平成24年10月10日(2012.10.10)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】