説明

リーフスプリング

【課題】 積層した複数のリーフバルブ間に隙間を発生させず、組付けの誤作動を無くすることができるリーフスプリングを提供すること。
【解決手段】 環状の本体2と、本体の外周に円周方向に沿って等間隔で突出させた偶数本の支持脚3,4とからなり、直径方向に対向する一対の支持脚のうち一方を上方に他方を下方に向けて傾斜させたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リーフスプリングに関し、特に、油圧緩衝器におけるピストンバルブ又はベースバルブのリーフバルブを背面側から閉じ方向に附勢するリーフスプリングに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、油圧緩衝器のピストンバルブ又はベースバルブではピストンの端面又はベースバルブボディの端面に当接するノンリタンバルブ等を構成するリーフバルブを設け、このリーフバルブの背面に配置したリーフスプリングで当該リーフバルブを閉じ方向に附勢している。
【0003】
そして、例えば、ピストンバルブでは、ピストンの圧縮行程で高圧室側の高圧油が、ベースバルブではピストンの伸行程でリザーバの作動油が、それぞれポートよりリーフスプリングに抗してリーフバルブを押し開き低圧側室へ油を導入させている。
【0004】
そして、上記のリーフスプリングとしては、例えば、特許文献1および特許文献2に開示した構成のものが開発されている。
【0005】
特許文献1に開示されているリーフスプリングは、環状本体と、環状本体の外周縁に円周方向に沿って突出させた複数の弾性脚とからなり、これら各弾性脚の円周方向への間隔、半径方向の長さ又は幅を適宜に選択あるいは組み合わせて形成し、各弾性脚をノンリタンバルブに当接した時当該リーフスプリングがノンリタンバルブに初期荷重を与えないようにしている。
【0006】
特許文献2に開示されているリーフスプリングは、環状本体と、環状本体の外周に円周方向に沿って突出させた複数の支持片とからなり、各支持片は附勢力が順に大きくなるように基端部の巾と長さを順に大きくなるように違えて構成し、ピストンの開口窓に対向する逆止弁たるリーフバルブに対して最大の開口窓に対応する部位に附勢力の最小の支持片を当接し、最小の開口窓に対応する部位に附勢力の最大の支持片を当接させることにより圧側背面減衰力をスムースに大きくすることができるようにしている。
【特許文献1】特開平6-280920号公報(図1,要約)
【特許文献2】特開2002-195335号公報(図2,要約,段落0025)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の各リーフスプリングでは機能上特に欠陥があるわけではないが、次のような不具合の更なる改善が望まれている。
【0008】
即ち、一般にノンリタンバルブのようなリーフバルブ単体は固有の歪み(曲がり)が有り、リーフバルブ単体を積層した時この歪みでリーフバルブ間の隙間が完全に零にならない。この結果、リーフバルブの積層枚数が少ないノンリタンバルブにおいては性能のバラツキが出るが、上記従来のリーフスプリングではこの隙間を零にすることが困難である。
【0009】
更に、上記従来のリーフスプリングは、弾性脚や支持片の巾,長さ等が異なるためにこれらの弾性脚や支持片をリーフバルブの所定部位に必ず当接させる必要があるため、組付が困難で組付けの作業性に劣る。又リーフスプリングの平面形状が類似している為誤って組付ける場合があり、このように誤って組付けると、リーフバルブの特性が変化し、所望通りの性能が得られなくなり、再度組付け直す必要が生じる。
【0010】
そこで、本発明の目的は、積層した複数のリーフバルブ間に隙間を発生させず、組付けの誤作動を無くすことができるリーフスプリグを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するため、本発明のリーフスプリングは環状の本体と、本体の外周に円周方向に沿って等間隔で突出させた偶数本の支持脚とからなり、直径方向に対向する一対の支持脚のうち一方を上方に他方を下方に向けて傾斜させたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、まず、偶数本の支持脚のうち、一つ置きの支持脚が必ずリーフバルブに当接してこれを閉じ方向に附勢しているから、リーフバルブに対する附勢力が円周方向に均等に分散されて均一に押圧するから各積層されたリーフバルブ間に隙間が発生せず、リーフバルブの性能のバラツキを防止できる。
【0013】
つぎに、支持脚は、偶数本あり、且つ必ず隣接する二つの支持脚のうち、一方が上方に他方が下方に傾斜しているからリーフスプリング自体は上下対称であって機能は同じであるから、リーフバルブに対して上下逆に組付けてもリーフバルブ自体の性能は同じとなる。又、円周方向のどの位置に当接させてもリーフバルブに対する円周方向の附勢力は均一に分散される。その結果、リーフスプリング自体に組付の誤りを防止でき、リーフバルブの性能に悪影響を与えない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下本発明の実施の形態を図にもとづいて説明するが、本発明のリーフスプリングは、図1乃至図7に示す油圧緩衝器のベースバルブV1におけるノンリタンバルブたるリーフバルブ1や図8に示すピストンバルブV2における伸側減衰バルブたるリーフバルブ2の背面側に配置されてこれを閉じ方向に附勢するものである。
【0015】
図1乃至図7に示すリーフスプリングSの基本形態は、平面ヒトデ型の同一構造を有し、これは、環状の本体2と、本体2の外周に円周方向に沿って等間隔で突出させた偶数本の支持脚3,4とからなり、直径方向に対向する一対の支持脚のうち、言い換えれば円周方向に隣接する一対の支持脚のうち、一方の支持脚3を上方に、他方の支持脚4を下方に向けて傾斜させたことを特徴とする。
【0016】
そして、このリーフスプリングSは、上記したように油圧緩衝器のピストンバルブV2又はベースバルブV1におけるリーフバルブ1,1Aの背面側に配置され、同一方向に傾斜する一つ置きの各支持脚4がリーフバルブ1,2の背面に当接して当該リーフバルブ1、1Aを閉じ方向に附勢するものである。
【0017】
以下に、更に詳しく説明すると、図1,図4,図5,図6,図7は、本発明にか係るリーフスプリングSを利用した油圧緩衝器のベースバルブV1を示すものであり、各リーフスプリングSは、上記のように同一構造のものを使用している。
【0018】
即ち、中央孔を形成した環状本体2の外周に円周方向に沿って等間隔に三つの上向きの支持脚3と、三つの下向きの支持脚4とで合計6個の支持脚3,4を有している。
【0019】
各支持脚3,4は、先細状に形成され、図1,図3に示すように、対角線上に対向する支持脚3,4が互い反対方向にそり返っており、言い換えれば、隣接する二つの支持脚3,4のうち、一方の支持脚3の先端側が上方に向けて傾斜し、他方の支持脚4の先端側が下方に向けて傾斜している。
【0020】
ベースバルブV1は、シリンダ5の下部に結合したバルブボディ6と、バルブボディ6に形成した伸側ポート7及び圧側ポート8と、伸側ポート7の出口端に開閉自在に設けられて二枚積層したノンリタンバルブたるリーフバルブ1と、圧側ポート8の出口端に開閉自在に設けた複数のリーフバルブを積層した圧側減衰バルブ9と、ノンリタンバルブ1の背面に配置されたリーフスプリングSとで構成されている。リーフスプリングSとノンリタンバルブ1とバルブボディ6と圧側減衰バルブ9とはボルトのフランジ10とナット11とで挟持されている。
【0021】
この際、環状本体2と下向きの支持脚4がリーフバルブ1の背面に当接してナット11の締付力と支持脚4のばね力でリーフバルブ1を閉じ方向に附勢している。
【0022】
上記支持脚4の弾性による附勢力は、この支持脚4が円周方向に等間隔で設けられていることからリーフバルブ1に対して均一に付与され、リーフバルブ1の固有の歪み(曲がり)を押え込み、各複数枚のリーフバルブ1間の隙間を零にすることができ、これによりリーフバルブ1を伸作動時にリーフスプリングSに抗して均一に開かせ、性能のバラツキを防止する。
【0023】
更に、リーフスプリングSは、上下対称の構造で各支持脚3,4が等間隔に形成されていることからベースバルブとして組付ける時上下逆に組付けて支持脚3をリーフバルブ1に当接させてもリーフバルブ1に対する支持脚3の当接位置が他方の支持脚4との当接位置と異なるだけであって機能は支持脚4が当接する場合と全く同じになり、組付時の誤作動を回避できる。
【0024】
図4乃至図8は、本発明の他の実施形態を示し、これらは、リーフバルブ1の積層枚数と各リーフバルブ1の構造を変更したものであり、その他の構造は、図1乃至図3の実施の形態と同じであり、同じ構造のものは同一の符号を付すことで詳細は省略する。
【0025】
図4のベースバルブV1は、図4(B)(C)に示す二枚のリーフバルブ1B,1Cと図4(D)のリーフスプリングSを利用し、リーフバルブ1Bは支持環12と支持環12に支持片14を介して結合した環状の弁体13とからなり、リーフバルブ1Cは支持環15と、支持環15に三つの支持片16を介して結合した環状の弁体17とで構成されている。
【0026】
同じく図5のベースバルブV1は、図4(B)に示すリーフバルブ1Bに代えて図5(B)に示すリーフバルブ1Dを使用したものであり、このリーフバルブ1Dは、円板状の弁体18に対して円周方向に複数のポート19を穿設したものである。
【0027】
同じく図6のベースバルブV1は、図5のリーフバルブ1C,1Dに加えてリーフバルブ1とリーフスプリングSとの間に間座20を介在させたものである。
【0028】
同じく図6のベースバルブV1は、図6のV1に対してリーフバルブ1に代えてリーフバルブ1Dを利用し、同じリーフバルブ1Dを二枚利用したものである。
【0029】
上記各図4乃至図7のベースバルブV1の作用,効果は、図1の実施の形態と同じである。
【0030】
図8、図9は、本発明のリーフスプリングSをピストンバルブV2に利用したもので、リーフスプリングSは、図9に示すように、環状本体2と、上下に傾斜する一対の支持脚3,4とからなり、この点は上記図2の実施の形態と基本的に同じであるが、各支持脚3,4の半径方向の長さが若干短く形成され、平面が船の操舵輪型に形成されている。
【0031】
これは、支持脚3,4の長さが短いだけで作用,効果は上記した図2のリーフスプリングSと同じである。
【0032】
ピストンバルブV2は、ピストンロッド23に結合したピストン20と、ピストン20に形成した伸ポート22及び圧ポート21と、伸ポート22の出口端に開閉自在に設けた伸側減衰バルブたるリーフバルブ1Aと、圧ポート21の出口端に開閉自在に設けたチェックバルブ25と、リーフバルブ1Aの背面に配置したリーフスプリングSと、リーフスプリングSの背部に設けたスプリング押え24とで構成されている。
【0033】
この場合もリーフスプリングSの作用でリーフバルブ1Aに隙間が出るのを防止し、リーフバルブ1Aを均一に附勢している。又リーフスプリングSを上下逆に組付けても当該リーフスプリングの作用は同じとなり、組付誤作動を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明のリーフバルブを利用したベースバルブの一実施形態の縦断正面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るリーフスプリングの平面図である。
【図3】図2のリーフスプリングの正面図である。
【図4】(A)(B)(C)(D)は他の実施形態に係るベースバルブの縦断正面図と、リーフバルブとリーフスプリングの平面図である。
【図5】(A)(B)(C)(D)は他の実施形態に係るベースバルブの縦断正面図と、リーフバルブとリーフスプリングの平面図である。
【図6】(A)(B)(C)(D)(E)は他の実施形態に係るベースバルブの縦断正面図と、リーフバルブとリーフスプリングの平面図である。
【図7】(A)(B)(C)(D)(E)は他の実施形態に係るベースバルブの縦断正面図と、リーフバルブとリーフスプリングの平面図である。
【図8】ピストンバルブの縦断正面図である。
【図9】他の実施の形態にかかるリーフスプリングの平面図である。
【符号の説明】
【0035】
V1 ベースバルブ
V2 ピストンバルブ
2 環状の本体
3,4 支持脚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の本体と、本体の外周に円周方向に沿って等間隔で突出させた偶数本の支持脚とからなり、直径方向に対向する一対の支持脚のうち一方を上方に他方を下方に向けて傾斜させたことを特徴とするリーフバルブ。
【請求項2】
油圧緩衝器のピストンバルブ又はベースバルブにおけるリーフバルブの背面側に配置され、同一方向に傾斜する一つ置きの各支持脚がリーフバルブの背面に当接して当該リーフバルブを閉じ方向に附勢する請求項1のリーフスプリング。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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