説明

レジスト塗布装置及びレジスト塗布方法

【課題】長時間連続してレジストを塗布しても、塗布されたレジストの厚さに差が生じることを抑制できるレジスト塗布装置を提供する。
【解決手段】レジストを溶媒に溶解したレジスト溶液が保持され、ローラー4aの一部がレジスト溶液に浸漬される浸漬槽5と、浸漬槽5との間でレジスト溶液が循環するバッファー容器7と、レジスト溶液の濃度を測定する濃度計11と、濃度計11の測定結果に基づいて、レジスト溶液の濃度が一定になるように、レジスト溶液に溶媒を添加する溶媒添加部(8,8a,9,12)とを具備する。濃度計11の代わりに粘度計を用いてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト塗布装置及びレジスト塗布方法に関する。特に本発明は、長時間連続してレジストを塗布しても、塗布されたレジストの厚さに差が生じることを抑制できるレジスト塗布装置及びレジスト塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図3は、従来のレジスト塗布装置の構成を説明する為の概略図である。本図に示すレジスト塗布装置は、テープ状のフレキシブル基材101にレジスト溶液を塗布する装置である。レジスト塗布装置は、1ロットのフレキシブル基材101を処理し終わるまで、連続して動作する。フレキシブル基材101は、例えばポリイミド基材であり、テンショナー103によってテンションを与えられた状態で、バックアップローラー102によって一方向に動かされる。
【0003】
レジスト溶液は、浸漬槽105及びバッファー容器107に保持されている。浸漬槽105及びバッファー容器107は、配管106によって互いに接続されている。配管106にはポンプ106aが設けられており、ポンプ106aが動作することにより、レジスト溶液が、配管106を介して浸漬槽105及びバッファー容器107の間を循環する。
【0004】
浸漬槽105には、第1のコーティングローラー104aの下部が浸漬される。また、第1のコーティングローラー104aの上部には、第2のコーティングローラー104bの下部が接触している。これにより、浸漬槽105が保持しているレジスト溶液は、第1のコーティングローラー104aの表面に付着した後、第2のコーティングローラー104bの表面に付着する。
【0005】
第2のコーティングローラー104bの上部は、移動中のフレキシブル基材101を介してバックアップローラー102に接する。ここで、第2のコーティングローラー104bの表面に付着しているレジスト溶液は、フレキシブル基材101に塗布される。
【0006】
【特許文献1】特開2002−313848号公報(図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
レジスト溶液は、レジストを溶媒に溶解したものである。レジスト溶液の溶媒は、レジストの塗布処理中に徐々に蒸発していく。これにより、レジスト溶液の粘度が変化していく。このため、フレキシブル基材の頭部分と末尾部分とで塗布されたレジストの厚さに差が生じる。
【0008】
例えばレジストの厚さが1μm変化すると、同一の露光条件及び現像条件では、パターン幅の差は数μmになってしまう。このため、レジストの厚さに差が生じることを抑制する必要がある。この必要性は、パターンのピッチが狭い製品を製造するときに、特に顕著になる。このため、今日のパターンの微細ピッチ化が進む中で、これまでと同じロット長さで流動することが難しくなっている。加えて年々コストダウン要請が厳しくなっている状況では、装置へのセット等の工数を抑えるために、できるだけ1ロット単位の長さは長い方が効率がよい。
【0009】
本発明は上記のような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、長時間連続してレジストを塗布しても、塗布されたレジストの厚さに差が生じることを抑制できる、レジスト塗布装置及びレジスト塗布方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明に係るレジスト塗布装置は、
レジストを溶媒に溶解したレジスト溶液が保持され、ローラーの一部が前記レジスト溶液に浸漬される浸漬槽と、
前記レジスト溶液を保持し、前記浸漬槽との間で前記レジスト溶液が循環するバッファー容器と、
前記レジスト溶液の濃度を測定する濃度計と、
前記濃度計の測定結果に基づいて、前記レジスト溶液の濃度が一定になるように、前記レジスト溶液に前記溶媒を添加する溶媒添加部とを具備する。
【0011】
このレジスト塗布装置によれば、前記レジスト溶液の濃度が高くなった場合には、前記溶媒添加部が動作し、前記溶媒が前記レジスト溶液に添加される。従って、レジスト溶液の濃度の変化が抑制され、長時間連続してレジストを塗布しても、塗布されたレジストの厚さに差が生じることを抑制できる。
前記濃度計は、例えば、前記浸漬槽又は前記バッファー容器に設けられたガスクロマトグラフィーである。
【0012】
本発明に係る他のレジスト塗布装置は、レジストを溶媒に溶解したレジスト溶液が保持され、ローラーの一部が前記レジスト溶液に浸漬される浸漬槽と、
前記レジスト溶液を保持し、前記浸漬槽との間で前記レジスト溶液が循環するバッファー容器と、
前記レジスト溶液の粘度を測定する粘度計と、
前記粘度計の測定結果に基づいて、前記レジスト溶液の粘度が一定になるように、前記レジスト溶液に前記溶媒を添加する溶媒添加部とを具備する。
【0013】
前記レジスト塗布装置は、例えば、前記ローラーを用いてテープ状のフレキシブル基材に前記レジスト溶液を連続して塗布する装置である。また、前記溶媒添加部は、前記バッファー容器において、前記レジスト溶液に溶媒を添加するのが好ましい。このようにすると、添加された前記溶媒は、前記浸漬槽に到達するまでに前記レジスト溶液中に分散される。
【0014】
本発明に係るレジスト塗布装置は、レジストを溶媒に溶解したレジスト溶液が保持される容器と、
前記レジスト溶液の濃度を測定する濃度計と、
前記濃度計の測定結果に基づいて、前記レジスト溶液の濃度が一定になるように、前記レジスト溶液に前記溶媒を添加する溶媒添加部とを具備する。
【0015】
本発明に係る他のレジスト塗布装置は、レジストを溶媒に溶解したレジスト溶液が保持される容器と、
前記レジスト溶液の粘度を測定する粘度計と、
前記粘度計の測定結果に基づいて、前記レジスト溶液の粘度が一定になるように、前記レジスト溶液に前記溶媒を添加する溶媒添加部とを具備する。
【0016】
本発明に係るレジスト塗布方法は、基材に、レジストを溶媒に溶解したレジスト溶液を塗布するレジスト塗布方法であって、
前記レジスト溶液を保持していてローラーの一部が前記レジスト溶液に浸漬される浸漬槽、及び、前記浸漬槽との間で前記レジスト溶液が循環するバッファー容器それぞれを準備し、
該レジスト溶液の濃度が一定になるように前記溶媒を添加しつつ、前記ローラーを用いて前記基材にレジスト溶液を連続して塗布する。
【0017】
本発明に係る他のレジスト塗布方法は、基材に、レジストを溶媒に溶解したレジスト溶液を塗布するレジスト塗布方法であって、
前記レジスト溶液を保持していてローラーの一部が前記レジスト溶液に浸漬される浸漬槽、及び、前記浸漬槽との間で前記レジスト溶液が循環するバッファー容器それぞれを準備し、
該レジスト溶液の粘度が一定になるように前記溶媒を添加しつつ、前記ローラーを用いて前記基材にレジスト溶液を連続して塗布する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係るレジスト塗布装置の構成を説明する為の概略図である。本図に示すレジスト塗布装置は、テープ状のフレキシブル基材1にレジストを塗布する装置である。レジスト塗布装置は、1ロット分のフレキシブル基材1を処理し終わるまで、連続して動作する。塗布されたレジストは、例えばフレキシブル基材1の表面に設けられた銅箔をエッチングによりパターニングする際のマスクとして用いられるが、ソルダーレジストとして用いられてもよい。また、エッチングレジスト、すなわち銅箔をパターニングする際に、フレキシブル基材1の裏面に塗布されるレジストとして用いられてもよい。
【0019】
フレキシブル基材1は、例えばポリイミド基材であり、テンショナー3によってテンションを与えられた状態で、バックアップローラー2によって一方向に動かされる。
【0020】
レジスト溶液は、浸漬槽5及びバッファー容器7に保持されている。浸漬槽5及びバッファー容器7は、配管6によって互いに接続されている。配管6にはポンプ6aが設けられており、ポンプ6aが動作することにより、レジスト溶液が、配管6を介して浸漬槽5及びバッファー容器7の間を循環する。
【0021】
浸漬槽5には、第1のコーティングローラー4aの下部が浸漬される。また、第1のコーティングローラー4aの上部には、第2のコーティングローラー4bの下部が接触している。これにより、浸漬槽5が保持しているレジスト溶液は、第1のコーティングローラー4aの表面に付着した後、第2のコーティングローラー4bの表面に付着する。
【0022】
第2のコーティングローラー4bの上部は、移動中のフレキシブル基材1を介してバックアップローラー2に接する。ここで、第2のコーティングローラー4bの表面に付着しているレジスト溶液は、フレキシブル基材1に塗布される。
【0023】
また、バッファー容器7には、配管8を介して溶媒保持容器9が接続されている。溶媒保持容器9には、レジスト溶液の溶媒が保持されている。配管8には、ポンプ8aが設けられている。ポンプ8aが動作すると、溶媒保持容器9に保持されている溶媒が、配管8を介してバッファー容器7内のレジスト溶液に添加される。ポンプ8aの動作は、制御部12によって制御される。
【0024】
バッファー容器7内のレジスト溶液の濃度は、濃度計11によって測定されている。濃度計11は、例えばガスクロマトグラフィーである。濃度計11の測定結果は制御部12に出力される。制御部12は、レジスト溶液の濃度が高くなった場合には、ポンプ8aを動作させ、バッファー容器7内のレジスト溶液に溶媒を添加する(例えば1mg〜10g/min)。これにより、レジスト溶液の濃度の変化が抑制される。
【0025】
以上、本発明の第1の実施形態によれば、バッファー容器7内のレジスト溶液の濃度が高くなった場合には、溶媒保持容器9に保持されている溶媒が、レジスト溶液に添加される。従って、レジスト溶液の濃度の変化が抑制され、1ロットのフレキシブル基材1の頭部分と末尾部分とで、レジストの厚さに差が生じることが抑制される。
【0026】
このため、レジストの露光条件及び現像条件を変化させなくても、同一ロットのフレキシブル基材1内で、パターン幅にばらつきが生じることが抑制され、製品の品質が安定する。また、レジストが部分的に薄くなることが抑制されるため、エッチング処理時にレジストが部分的に除去されることが抑制される。また、レジストが部分的に厚くなることも抑制されるため、レジストを剥離するときに、部分的にレジストが残留することも抑制される。
【0027】
また、装置コストの増加分は、配管8、溶媒保持容器9、濃度計11、及び制御部12のコスト分である。従って、装置コストの増加分は小さい。
【0028】
図2は、本発明の第2の実施形態に係るレジスト塗布装置の構成を説明する為の概略図である。本図に示すレジスト塗布装置は、濃度計11が、浸漬槽5のレジスト溶液の濃度を測定する点が、第1の実施形態と異なる。それ以外は、第1の実施形態と同一であるため、第1の実施形態と同一の符号を付し、説明を省略する。
本実施形態によっても、第1の実施形態と同一の効果を得ることができる。
【0029】
尚、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。例えば配管8と配管6とを接続し、配管6でレジスト溶液に溶媒を添加してもよい。また、配管8を浸漬槽5に接続し、浸漬槽5でレジスト溶液に溶媒を添加してもよい。
【0030】
また、第1及び第2の実施形態それぞれにおいて、濃度計11の代わりに粘度計を用いてもよい。この場合、制御部12は、粘度計の測定結果に基づいてポンプ8aを動作させ、バッファー容器7内のレジスト溶液に溶媒を添加し、レジスト溶液の粘度が一定になるようにする。このようにしても、上記した効果を得ることができる。
【0031】
また、第2の実施形態において、配管6、ポンプ6a及びバッファー容器7を設けずに、配管8を直接浸漬槽5に接続してもよい。この場合においても、上記した効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】第1の実施形態に係るレジスト塗布装置の構成を説明する為の断面図。
【図2】第2の実施形態に係るレジスト塗布装置の構成を説明する為の断面図。
【図3】従来のレジスト塗布装置の構成を説明する為の断面図。
【符号の説明】
【0033】
1,101…フレキシブル基材、2,102…バックアップローラー、3,103…テンショナー、4a,104a…第1のコーティングローラー、4b,104b…第2のコーティングローラー、5,105…浸漬槽、6,8,106…配管、6a,8a,106a…ポンプ、7,107…バッファー容器、9…溶媒保持容器、11…濃度計、12…制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レジストを溶媒に溶解したレジスト溶液が保持され、ローラーの一部が前記レジスト溶液に浸漬される浸漬槽と、
前記レジスト溶液を保持し、前記浸漬槽との間で前記レジスト溶液が循環するバッファー容器と、
前記レジスト溶液の濃度を測定する濃度計と、
前記濃度計の測定結果に基づいて、前記レジスト溶液の濃度が一定になるように、前記レジスト溶液に前記溶媒を添加する溶媒添加部と、
を具備するレジスト塗布装置。
【請求項2】
前記濃度計は、前記浸漬槽又は前記バッファー容器に設けられたガスクロマトグラフィーである請求項1に記載のレジスト塗布装置。
【請求項3】
レジストを溶媒に溶解したレジスト溶液が保持され、ローラーの一部が前記レジスト溶液に浸漬される浸漬槽と、
前記レジスト溶液を保持し、前記浸漬槽との間で前記レジスト溶液が循環するバッファー容器と、
前記レジスト溶液の粘度を測定する粘度計と、
前記粘度計の測定結果に基づいて、前記レジスト溶液の粘度が一定になるように、前記レジスト溶液に前記溶媒を添加する溶媒添加部と、
を具備するレジスト塗布装置。
【請求項4】
前記レジスト塗布装置は、前記ローラーを用いてテープ状のフレキシブル基材に前記レジスト溶液を連続して塗布する装置である請求項1〜3のいずれか一項に記載のレジスト塗布装置。
【請求項5】
前記溶媒添加部は、前記バッファー容器において、前記レジスト溶液に溶媒を添加する請求項1〜4のいずれか一項に記載のレジスト塗布装置。
【請求項6】
レジストを溶媒に溶解したレジスト溶液が保持される容器と、
前記レジスト溶液の濃度を測定する濃度計と、
前記濃度計の測定結果に基づいて、前記レジスト溶液の濃度が一定になるように、前記レジスト溶液に前記溶媒を添加する溶媒添加部と、
を具備するレジスト塗布装置。
【請求項7】
レジストを溶媒に溶解したレジスト溶液が保持される容器と、
前記レジスト溶液の粘度を測定する粘度計と、
前記粘度計の測定結果に基づいて、前記レジスト溶液の粘度が一定になるように、前記レジスト溶液に前記溶媒を添加する溶媒添加部と、
を具備するレジスト塗布装置。
【請求項8】
基材に、レジストを溶媒に溶解したレジスト溶液を塗布するレジスト塗布方法であって、
前記レジスト溶液を保持していてローラーの一部が前記レジスト溶液に浸漬される浸漬槽、及び、前記浸漬槽との間で前記レジスト溶液が循環するバッファー容器それぞれを準備し、
該レジスト溶液の濃度が一定になるように前記溶媒を添加しつつ、前記ローラーを用いて前記基材にレジスト溶液を連続して塗布するレジスト塗布方法。
【請求項9】
基材に、レジストを溶媒に溶解したレジスト溶液を塗布するレジスト塗布方法であって、
前記レジスト溶液を保持していてローラーの一部が前記レジスト溶液に浸漬される浸漬槽、及び、前記浸漬槽との間で前記レジスト溶液が循環するバッファー容器それぞれを準備し、
該レジスト溶液の粘度が一定になるように前記溶媒を添加しつつ、前記ローラーを用いて前記基材にレジスト溶液を連続して塗布するレジスト塗布方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−57694(P2007−57694A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−241373(P2005−241373)
【出願日】平成17年8月23日(2005.8.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】