説明

レーザ光源装置及びこれを用いた画像生成装置

【課題】線状の基本波を折り返す光路を有する共振器を備えるレーザ光源装置において、出力光の均一化と安定化を図る。
【解決手段】励起光源1と、一対の共振器ミラー5及び11とを有し、この共振器ミラーにより構成される共振器30内に少なくともレーザ媒質6と波長変換素子10を設ける。励起光源1から、横モードパターンの光でレーザ媒質6が励起され、レーザ媒質6の発振により得られる線状の基本波を波長変換素子10に照射して線状の変換波を出力する。共振器30内には光路を折り返す反射部8,9を1以上設け、線状の基本波の長手方向をこの反射部8,9の入射面に対して略垂直に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部共振器型の波長変換により、1次元横マルチモード等の線状の変換光を出力するレーザ光源装置及びこれを用いた画像生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクタやレーザプリンタなどのレーザ光源を利用する各種の光学装置において、小型で消費電力が小さく、出力が安定なレーザ光源装置が要求されている。特に、非線形光学結晶等の波長変換素子を用いた共振器構造をもち、基本波を高調波等の変換波に変換する機能を併せもつレーザ光源装置では、所定の共振器長を確保しつつ小型化を実現するために、共振器の途中に折り返しミラーを設ける構成が提案されている。またその際、波長変換素子におけるモード径を小さくし基本波のパワー密度を高くすることによって高変換効率を得るために、効果的に曲率をもつ折返しミラーを設ける構成が提案されている。
このようなレーザ光源装置において、半導体レーザを励起光源として用いた固体レーザを使用する場合、干渉に起因する照明むらを改善するために、アレイレーザ等により1次元横マルチモードの励起光を使用して特に線状(例えば楕円状)の変換波を出力することが提案されている(例えば特許文献1参照。)。このような横マルチモードの光を例えば画像生成装置に用いる場合は、光変調装置に対して比較的均質に照明できることから画質を向上させることができ、また、横マルチモードであることからスペックルノイズを低減させることができ、装置構成を複雑化することなく高効率なレーザ光源装置を得ることが期待されている。
【特許文献1】特開2006−66818号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に開示の構成とする場合に、共振器の光路を折り返して小型化を図ろうとすると、得られる線状ビームの空間モード数を十分に高めることが難しく、均一性や安定性を十分に高めることが難しいという問題がある。
図14A及びBに、一例として共振器の光路を折り返して線状の変換波を出力するレーザ光源装置の異なる方向からみた概略平面構成図を示す。図14A及びBに示すようにこのレーザ光源装置80には、励起光源61と、その出射光路上にコリメータレンズ62及び63、集光レンズ64、レーザ媒質66、平面ミラー等より成る反射部67が配置される。そして反射部67の反射光路上に、凹面ミラー等より成る反射部68、更にその反射光路上に例えば非線形光学結晶又は非線形光学素子より成る波長変換素子70と、基本波を高反射率で反射し、変換波を高透過率で透過する共振器ミラー69とが配置される。レーザ媒質66の励起光入射端には、励起光を高透過率で透過し、基本波を高反射率で反射する波長選択機能付の反射膜より成る共振器ミラー65が設けられ、共振器ミラー65及び69の間に共振器75が構成される。図14Aにおいては反射部67及び68により反射される光路の入射面と直交する方向からみた平面構成図、図14Bにおいてはこの入射面に沿う方向からみた平面構成図を示す。このように、共振器75内に、反射部67及び68を設けて折り返し光路構成とすることで、レーザ光源装置80全体の小型化を図ることができる。
【0004】
このような構成において、半導体レーザアレイ等の励起光源61から出射された横マルチモードのレーザ光は、コリメータレンズ62及び63によって平行光線化される。図14A及びBにおいて、半導体レーザアレイ等の励起光源61における発光素子の配列方向、すなわち横マルチモードとされる励起光の長手方向をy軸方向とし、励起光源61から出射される光の光路に沿う方向をx軸方向とする。横マルチモードとされる光の短軸方向がz軸方向となる。この場合、コリメータレンズ62によってx−z平面のレーザ光束が平行化され、コリメータレンズ63によってy−z平面のレーザ光束が平行化される。
これらのコリメータレンズ62及び63を透過した光は、後段の集光レンズ64によって収束され、y軸方向を長手方向とする線状ビームとして共振器ミラー65を介してレーザ媒質66の一端に照射される。そして、レーザ媒質66において励起された基本波は、y軸方向を長手方向とする線状ビームとして反射部67に入射され、ここにおいて反射され、更に反射部68により同様に反射されて折り返されて、波長変換素子70に入射される。波長変換素子70を介して共振器ミラー69に到達した基本波は、ここにおいて反射され、共振器75内を往復する。図14A及びBにおいて、レーザ媒質66から出射される基本波の長手方向を矢印e1、波長変換素子70において変換されて共振器ミラー69を透過し、外部へ出力される出射光Lo´の長手方向を矢印e3として示す。
【0005】
この場合は、共振器ミラー65及び69、反射部67及び68で構成される共振器75の発振光路は基本波ビームの長手方向と同じ面内にあるため共振器75の配置はビーム長手方向に対称ではなく、すなわち発振光路はビーム長手方向に対称ではない。このようにビーム長手方向に対して共振光路が非対称となる場合は、球面ミラーに対し線状ビームの長手方向で軸外光となってしまう。このため、曲率半径の有限な反射部68において斜入射光によるコマ収差の発生が著しくなり、波長の数倍の波面収差が容易に生じる恐れがある。例えば、曲率半径100mmの凹面ミラーに入射角10度でビーム半径10mmの平行光が入射する場合、波面収差量は波長1064nmの10倍以上にものぼる。従って、共振している基本波ビームの強度分布は図15に示すように非対称となる。波長変換においては基本波パワー密度が変換効率に大きく影響し、例えばシングルパスでの変換効率が低い場合は基本波パワー密度の2乗に比例する。図15に示すように強度分布に不均一性が生じると、基本波パワー密度も不均一となるので、変換波にも空間不均一性をもたらす。その結果、この変換波を用いて例えば画像を生成する場合には均質な画質を得る妨げの原因となり光利用効率の低下をもたらす原因となる。更に、振動等の外乱によって容易に空間モード間のパワー遷移が発生し易くなる可能性もあり、ビーム形状の安定性にとって好ましくない。
【0006】
また、共振器内波長変換における波長変換効率を上げるには、上述したように波長変換素子におけるレーザ発振のモードサイズを小さくして基本波パワー密度を上げる必要があるが、そのためには波長変換素子を含む方の共振光路の距離(共振器ミラー間距離)が、波長変換素子を含まない方の共振光路の距離に対し適度に短いことが望ましい。しかしながら、この場合は基本波の長手方向が入射面に沿う方向であり、基本波が線状に幅広く発振する。このような幅広の線状基本波の非対称性を低減するためには、例えばビーム長手方向以外の共振器構成を図14と同様の構成とする場合、反射部67及び68の入射角を抑えて共振器長を長くする必要があり、レーザの高効率化、および小型化の妨げとなる。またレーザモジュール製造の観点では、不均一なビームであることによりビーム長手方向の変動に対して十分なマージンを得る妨げになる。
【0007】
以上の理由により、共振器の光路を折り曲げる構成とする場合において、現状では線状のビームの空間モード数を十分に高めることが難しく、均一性や安定性を十分に高めることが難しい。
このような問題は、上述したプロジェクタやプリンタ等の画像生成装置のみならず、その他半導体プロセス装置等における露光やアニールなどにこのような1次元状の変換波を発生するレーザ光源装置を適用する場合も同様であり、その出力光の均一性及び安定性の向上が求められている。
【0008】
本発明は、上述したような線状の基本波を折り返す光路を有する共振器をもつレーザ光源装置及びこれを用いる画像生成装置において、出力光の均一化と安定化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明によるレーザ光源装置は、励起光源と、一対の共振器ミラーとを有し、この共振器ミラーにより構成される共振器内に少なくともレーザ媒質と波長変換素子とが設けられる。そして横モードパターンの光でレーザ媒質が励起され、レーザ媒質の発振により得られる線状の基本波を波長変換素子に照射して線状の変換波を出力する構成とする。共振器内には光路を折り返す反射部を1以上設け、線状の基本波の長手方向がこの反射部の入射面に対して略垂直に配置される構成とする。
【0010】
また、本発明による画像生成装置は、レーザ光源装置と、このレーザ光源装置から出射される光を情報に対応して変調する光変調部と、投射光学部とを備える。レーザ光源装置として、上述の本発明構成のレーザ光源装置を用いて構成する。
【0011】
上述したように、本発明のレーザ光源装置においては、線状の基本波の長手方向を、共振器内に設ける凹面ミラー等の反射部の入射面、すなわち入射光線と反射光線を含む折り返し光路により構成される平面に対し、略垂直となるように配置構成するものである。本発明において線状の基本波とは、横長のビーム形状を有することを指し、例えば長軸と短軸との比(アスペクト)の高い楕円状のビーム形状の光とする。
本発明者の鋭意考察研究の結果、従来の横マルチモード等の線状の基本波を用いるレーザ光源装置において、出力光の均一性及び安定性の向上を阻害する原因は、線状ビームの長手方向に対して空間的な対称性が取れていないためであることを究明した。
これに対し、本発明構成によれば、上述したように基本波の長手方向は反射部による折り返し光路の平面内と略垂直な方向とされるので、基本波の長手方向に関して空間的な対称性を保つことができる。したがって、波長変換素子において変換される変換波においても長手方向に関する非対称化、不均一化を抑制し、結果的に出力光の均一化及び安定化を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のレーザ光源装置及びこれを用いた画像生成装置によれば、出力光の均一性及び安定性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下本発明を実施するための最良の形態の例を説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
(第1の実施形態)
図1A及びBは、本発明の実施形態例に係るレーザ光源装置の一例の概略平面構成図である。図1A及びBに示すように、このレーザ光源装置20は、励起光源1と共振器30とを備え、共振器30内にレーザ媒質6及び波長変換素子10と、光路を折り返す2つの反射部8及び9を設ける例を示す。図1Aにおいては反射部8及び9により反射される光路の入射面に沿う方向からみた平面構成図、図1Bにおいてはこの入射面と直交する方向からみた平面構成図である。励起光源1の出射光路上には、2つのコリメータレンズ2及び3、集光レンズ4、共振器ミラー5、レーザ媒質6、波長選択素子7、平面ミラー等より成る反射部8が配置される。そして反射部8の反射光路上に、凹面ミラー等より成り、基本波を高反射率で反射する反射部9を配置する。反射部9の折り返し光路上には、非線形光学結晶、非線形光学素子等より成る波長変換素子10、共振器ミラー11を配置する。このように、共振器ミラー5及び11の間の光路で構成される共振器30内に、反射部8及び9を設けて折り返し光路構成とすることで、レーザ光源装置20全体の小型化を図ることができる。図示の例ではレーザ媒質6の片側の端面に共振器ミラー5として基本波に対し高反射率の選択反射機能膜を設ける例を示す。この場合レーザ媒質6として作用すると同時に、共振器平面ミラーとして機能させ、部品点数の削減、光学的調整の簡易化を図ることができる。もちろん、レーザ媒質6とは別体の共振器ミラー5として配置してもよい。
【0014】
このような構成において、半導体レーザアレイ等の励起光源1から出射された例えば横マルチモードのレーザ光は、コリメータレンズ2及び3によって平行光線化される。これらのコリメータレンズ2及び3は、例えば半導体レーザのファスト軸及びスロー軸の各方向の発散をコリメートするシリンドリカルレンズを組み合わせて構成される。コリメータレンズ2としてファスト軸方向にコリメートする非球面シリンドリカルレンズ、コリメータレンズ3としてスロー軸方向にコリメートし、半導体レーザアレイの発光素子12の配列ピッチ及び発散角に合わせた球面シリンドリカルレンズアレイより構成できる。図1A及びBにおいて、半導体レーザアレイ等の励起光源1における発光素子12の配列方向、すなわち横マルチモードとされる励起光の長手方向をY軸方向とし、励起光源1から出射される光の光路に沿う方向をX軸方向とする。横マルチモードとされる光の短軸方向がZ軸方向となる。この場合、コリメータレンズ2によってX−Z平面のレーザ光束が平行化され、コリメータレンズ3によってY−Z平面のレーザ光束が平行化される。
半導体レーザを用いる場合、X−Z平面内ではY−Z平面内に比べて大きな発散角をもつが、各面について別個のシリンドリカルレンズを用いるので、出射ビーム径をそれぞれ独立に制御して所望のビーム形状にすることができる。また、レーザダイオードの発光領域の大きさにより非点収差が問題となるときは、その補正用として上記のシリンドリカルレンズを用いることが好ましい。
【0015】
これらのコリメータレンズ2及び3を透過した光は、後段の集光レンズ4によって収束され、矢印a1で示す方向(Y軸方向)を長手方向とする線状ビームとして共振器ミラー5を介してレーザ媒質6の一端に照射される。この例においては、レーザ媒質6の入射端面に波長選択性を有する反射膜として共振器ミラー5を設ける例を示す。この共振器ミラー5は、励起光源1から出射される励起光を高い透過率で透過し、レーザ媒質6において励起される基本波を高い反射率で反射する構成とする。そして、レーザ媒質6において励起された基本波は、矢印a2で示す方向(上記矢印a1で示す方向と同様Y軸方向)を長手方向とする線状ビームとして、例えば波長選択機能も有するブリュースター板より成る波長選択素子7を介して偏光方向が矢印p1で示すように調整され、基本波を高い反射率で反射する反射部8により反射される。更に反射部9により同様に反射されて折り返された基本波は、非線形光学結晶又は非線形光学素子より成る波長変換素子10に入射される。波長変換素子10を介して共振器ミラー11に到達した基本波は、ここにおいて反射され、共振器30内を往復する。
【0016】
波長変換素子10において、2次高調波等の変換波は共振器30の光路に沿う2方向に発生する。一方の変換波は反射部9側に出射されて、変換波に対して高い透過率を有する反射部9を透過して外部に出力される。波長変換素子10から共振器ミラー11側に出射された光は、変換波に対して高い透過率を有する共振器ミラー11を透過して外部に矢印a3を長手方向とする線状ビームとして出力される。この変換波の偏光方向を矢印p2で示す。なお、基本波及び変換波の偏光方向の選定条件については後述する。なお、反射部9を、基本波に対して高反射率で且つ変換波に対して高透過率とし、共振器ミラー11を基本波及び変換波に対して共に高反射率とすることによって、一方の変換波を他方の変換波に重ね合わせて一方向に出力する構成とすることも可能である。この場合は光の利用効率を高めつつ装置の小型化を図ることが可能となる。また、反射部8を基本波に対し高反射で且つ変換波に対して高透過とすることによって、励起光源への変換波の漏れを防ぐことができる。この場合、反射部8または共振器ミラー11側に漏れるわずかな変換波をモニター用として利用することも可能である。
【0017】
共振器内波長変換を行うレーザ光源装置において、変換効率を高めるためには、波長変換素子内部において共振する基本波パワー密度を高めることが要求され、すなわち基本波のモードサイズが波長変換素子で小さくなるように構成することが望ましい。このような効果が得られる共振器の配置としては、図1に示す例のように、レーザ媒質で生じた基本波が共振器内で共振する光路では略平行光とされ、中間に配置して光路を折り曲げる反射部として例えば凹面ミラーを用い、そこで折り返された基本波共振光を波長変換素子に集光する配置が挙げられる。一例として、往復型共振器の配置において両端に平面ミラー、途中に例えば曲率半径100mmの凹面ミラーを配置し、安定共振条件の範囲で一方の平面ミラーと凹面ミラーの距離は凹面ミラーの焦点距離(この場合50mm程度)よりも十分に長くとり、その間にレーザ媒質を配置し、他方を凹面ミラーの焦点距離程度とし平面ミラー近傍に波長変換素子を配置してもよい。このように配置することにより、レーザ媒質が光路に含まれる方の共振光路はモードサイズの大きいほぼ平行光となり、その結果レーザ媒質における熱効果を起こりにくくすることができる。しかも波長変換素子においては共振光が集光しているためモードサイズが小さく基本波パワー密度を十分に高めることにより、高効率に波長変換光を得ることができる。
【0018】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態として、図2A及びBに示すように、図1における反射部9を省いた構成とし、反射部8による反射光路上の共振器ミラー11との間に波長変換素子10を配置する実施形態を説明する。図2A及びBにおいて、図1A及びBと対応する部分には同一符号を付して重複説明を省略する。本実施形態では、反射部8及び共振器ミラー11が基本波に対して高反射率とされ、変換波に対して高透過率をもつ波長選択機能を有する例を示す。図2A及びBにおいて、励起光、基本波及び変換波の長手方向をそれぞれ矢印a4、a5及びa6として示す。また、基本波及び変換波の偏光方向をそれぞれ矢印p3及びp4として示す。すなわちこの場合、線状の基本波及び変換波の長手方向とこれらの偏光方向が略直交する例を示す。第2高調波等の変換波は、反射部8を透過して出力される。共振器ミラー11を基本波及び変換波に対して共に高反射率を有する構成とするときは、共振器ミラー11側に出力される変換波を折り返して反射部8側に出力する変換波に重ね合わせて効率よく出力することが可能となる。このように凹面ミラー等の反射部を省く場合は部品点数の低減とそれによる高信頼性化を図ることができる。この場合においても、共振器ミラー11側に漏れるわずかな変換波をモニター用として利用することが可能である。
【0019】
上述の第1の実施形態及び第2の実施形態においては、励起方式としていわゆるエンドポンプ方式を示す。すなわちこれらの場合、レーザ媒質6に対してレーザ共振光路に沿う方向の端部に励起光源1からの励起光を照射する端面励起方式とする例を示す。このようにエンドポンプ方式とする場合は、共振器30内で発振する線状の基本波の発振光路で作られる平面に対して、励起光源1から出射される横モードパターンの出射光の長手方向が略垂直となるように配置されることによって、この線状の基本波の長手方向を、共振器30に設けられる反射部8の入射面に対して略垂直に配置される構成とすることができる。
【0020】
これに対し、サイドポンプ方式、すなわちレーザ媒質に対してレーザ共振光路に沿う側面に励起光を照射する側面励起方式としてもよい。この場合は、共振器内で発振する線状の基本波の発振光路で作られる平面に対して、励起光源からの光のレーザ媒質に入射する入射方向が略垂直となるように配置することによって、線状の基本波の長手方向が、共振器に設ける反射部の入射面に対して略垂直となる。次に、このサイドポンプ方式とする実施形態について説明する。
【0021】
(第3の実施形態)
第3の実施形態に係るレーザ光源装置として、サイドポンプ方式とした場合の概略構成図を図3A〜Cに示す。図3A及びBにおいては、このレーザ光源装置20の概略側面構成図及び概略上面構成図を示し、図3Cにおいては、図3A及びBのA−A´線上の概略断面構成図を示す。図3A〜Cにおいて、図1及び図2と対応する部分には同一符号を付して重複説明を省略する。この実施形態例においては、共振器30内で発振する線状の基本波の長手方向と基本波の発振光路に沿う方向とで作られる平面に対して、励起光源1から出射される横モードパターンの出射光の長手方向が略平行となるように配置されて成る。そして励起光源1及び共振器30を構成する各光学部品は断面略L字型の支持体40上の、互いに略直交する第1及び第2の面40A及び40Bに配置される。第1の面40Aには、共振器ミラー5、レーザ媒質6、波長選択素子7、反射部8が配置され、かつ、反射部8の反射光路上に波長変換素子10及び共振器ミラー11が配置される。第2の面40Bには、励起光源1が配置され、そのレーザアレイ等よりなる並列化された発光素子12から出射した励起光が第1の面40A上のレーザ媒質6の側面6S(この場合上面)に照射される配置とする。
【0022】
このような構成において、励起光源1から出射された励起光がレーザ媒質6の側面6Sに照射されるとレーザ媒質6において基本波が発振し、レーザ媒質6の端面6A及び6Bから出力される。一方の端面6Bから出力された基本波は共振器ミラー5で反射されてレーザ媒質6に戻され、他方の端面6A側に出力される基本波と重ね合わせて線状ビームとして出力され、共振器ミラー5及び11の間を往復する。
励起光源1から線状のレーザ光をレーザ媒質6の側面6Sに入射する際、励起光源1から出射されてレーザ媒質6に入射されるレーザ光の入射方向と、レーザ媒質6から出射される基本波の進行方向とで作る平面に対して励起光源1から出射されるレーザ光の長手方向が平行である場合、レーザ媒質6から出射される基本波の長手方向もこの平面に沿う方向となる。したがって、励起光源1から出射されてレーザ媒質6に入射する励起光の入射方向を、共振器30内で発振する線状の基本波の発振光路で作られる平面に対して略垂直となるように配置すると、基本波の長手方向は共振器30に設ける反射部8の入射面に対して略垂直となる。
【0023】
図示の例では、この基本波の長手方向は光軸と略直交し、図3Aの紙面に沿い、図3Bの紙面と略直交する矢印a7で示す方向とされる。この場合においても、図2に示す例と同様に、反射部8は基本波に対し高反射率をもち、波長変換素子10において変換される変換波に対して高透過率を有する構成として、変換波が反射部8を透過して、矢印a8で示すように光軸と略直交し、図3Aの紙面に沿い、図3Bの紙面と略直交する方向を長手方向とする線状ビームとして出力される。共振器ミラー11は基本波及び変換波共に高反射率を有する構成として漏れ光をモニター用として用いてもよい。または、基本波を高反射率で反射し変換波に対して透過する構成としてもよい。この例において、基本波の偏光方向を矢印p5、変換波の偏光方向を矢印p6でそれぞれ示す。
【0024】
なお、このように支持体40に各部を配置する場合、例えば励起光源1を配置する第2の面40Bの裏側にペルチェ素子等を用いた排熱部41を設けてもよい。励起光源1及びレーザ媒質6は発熱するので、適切に排熱する必要がある。特に励起光源だけではなく、レーザ媒質においても、吸収した励起光のうち発振に寄与しなかった分は多くが熱に変換されるため、このように排熱部41により排熱することが望ましい。支持体40を例えば銅、アルミなどの熱伝導性の良い材料より構成し、この支持体40を必要に応じ励起光源1の裏側に配置するペルチェ素子等の排熱部41により排熱することで、効率よく励起光源1及びレーザ媒質6の排熱を行うことができる。このため、高安定性、高信頼性を備えたレーザ光源装置20を提供することができる。
【0025】
以上説明した第1〜3の実施形態のいずれの場合においても励起光源1として半導体レーザによる並列化光源いわゆるレーザアレイを用いることができるが、励起光源はレーザアレイに限定されるものではない。また、第1、第2の実施形態においては、垂直及び水平両方向にマイクロレンズを用いて励起光を平行ビームにし、さらにレーザ媒質に集光するレンズを配置しているのに対して、第3の実施形態においては、レーザ媒質6の側面からの直接励起方式であるが、用途に応じて適切な励起光のビーム整形をして照射することが望ましいことはいうまでもない。
【0026】
本発明のレーザ光源装置に用いるレーザ媒質としては、例えば、青及び緑色領域への波長変換には、例えばNdイオンをイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAl12)にドープしたNd:YAGや、Nd:YVO、Nd:GdVO、Yb:YAGなどの、希土類添加の固体レーザ材料などを用途によって選択できる。YAGなどでは利用する波長の近辺に他の発振線をもつ。この場合は、図1に示す例のように、共振器内に寄生発振抑制のための波長選択素子7を配置することが望ましい。例えば水晶による複屈折フィルタを波長選択素子7として利用することができ、図1に示すように、ブリュースター角を利用して配置することによって、波長に加えて偏光選択の機能を兼ねることができる。図1の例においては、基本波の長手方向と平行な偏光を選択する例を示す。寄生発振が問題にならない用途においては、水晶などからなる複屈折フィルタに代えて石英、光学ガラスなどのブリュースター板を用いても構わない。
また、吸収特性と発振特性に異方性のある例えばYVOを用いる場合には、励起光源の偏光方向、即ちYVOに吸収させる偏光方向を、発振させるYVOの偏光方向と合わせることが望ましい。励起光源が半導体レーザである場合には、その発振偏光によっては励起光が共振器に入射する前に、半波長板(図示せず)等を用いて偏光方向をほぼ90度回転させるなどして必要な偏光方向とすることが望ましい。その場合、偏光方向が使用用途に十分な程度に安定するのであれば、偏光選択素子であるブリュースター板を省くこともできる。図2には励起光源の偏光方向が、ビーム長手方向と垂直である場合を示している。なお、レーザ媒質の形状は直方体に限定されるものではなく、傾斜面や部分的に曲面を有する形状等としてもよい。
【0027】
本発明のレーザ光源装置において波長変換素子は、例えば第2高調波発生や、和周波発生、パラメトリック発振、第3高調波発生などの波長変換に用いられる。使用材料としては、KTiOPO(KTP)、β−BaB(BBO)、LiB(LBO)、MgO:LiNbOや、PP−KTiOPO、PP−MgO:LiNbO、PP−MgO:S−LiNbO、PP−S−LiTaO、PP−MgO:S−LiTaO等の非線形光学材料が挙げられる。なお、ここで「PP」は「Periodical Poling(周期分極反転構造)」を意味し、非線形光学結晶に対し電圧印加等による周期分極制御により周期分極反転構造をもつ非線形光学素子が得られる。これらの材料は、使用波長に合わせて、位相整合条件を満たす適切な角度で加工され、あるいは適切な周期分極反転構造を作ることによって(擬似)位相整合条件が満たされる。「S」は「Stoichiometric(化学量論組成)」を意味する。また、波長変換素子の大きさは、共振器内部での基本波及び変換波の線状ビームサイズよりも適切量大きいサイズとすることが望ましい。
【0028】
なお、波長変換素子に入射する基本波の偏光方向は、位相整合条件に合わせて波長変換素子の適切な方向に合わせる。例えば、PPSLTでは結晶のz方向(ウェハ面と垂直方向)に偏光方向をもつ基本波を入射すると、同じ偏光方向の高調波を効率よく発生することができる。この場合、c軸を法線方向とするウェハ面内方向に伝搬するように周期分極反転を行うのが適切であるが、通常ウェハ厚みは1mm程度以下であるからビーム長手方向はウェハ面内方向にとることが好ましい。従って、この場合の偏光方向は、図2に示す例のように基本波及び変換波とも長手方向と略垂直な方向となる。一方、LBO等のように周期分極反転を用いない波長変換素子においては、素子サイズをある程度大きく例えば数mm角程度にとることができるので、図1及び図3に示す例のように、利用する非線形性を有する結晶方位とその位相整合条件および使用用途に応じて偏光方向をビーム長手方向と平行にとることも可能であり、また図示しないが偏光方向をビーム長手方向と垂直にとることもできる。
【0029】
そして本発明のレーザ光源装置においては、線状の基本波の長手方向が、凹面ミラー等の反射部8、9への入射面と略垂直となる構成とするので、長手方向が入射面内にある従来の配置によるレーザ光源装置比べて、同じ入射角であれば収差量を十分に小さくすることができる。
従来の場合は、前述の図10において説明したように、共振器の発振光路がビーム長手方向と同じ面内にあるため共振器の配置はビーム長手方向に対称ではなく、すなわち発振光路はビーム長手方向に対称ではない。このようにビーム長手方向に対して共振光路が非対称となる場合は、前述したように図11に示すように強度分布に不均一性が生じ、基本波パワー密度も不均一となって、変換波にも空間不均一性をもたらす。またこのような幅広の線状基本波の非対称性を低減するために、例えば共振光路を折り曲げる反射部の入射角を抑えて共振器長を長くする必要があり、レーザの高効率化、および小型化の妨げとなる。またレーザモジュール製造の観点では、不均一なビームであることによりビーム長手方向の変動に対して十分なマージンを得る妨げになる。
【0030】
これに対し、本発明構成のレーザ光源装置においては、図4に示すように、ビーム長手方向に関して略一様に発振した強度分布とすることができる。このため空間モードを高次モードまで平均的に発振させることができ、また発振する線状基本波の対称性がよくなる。波長変換後の変換波も空間的に均一で一様なビーム形状となる。その結果、画像生成装置の光源に適用する場合は均質な画質を得ることができる。また、振動などの外乱によってもビーム形状の対称性がよいため空間モード間のパワー遷移が起きにくくなる。その結果、本発明のレーザ光源装置を例えば1次元光変調装置を利用した画像生成装置や、光プロセス装置などに用いる場合に、線状のレーザ光の均質性、利用効率及び安定性の向上、ノイズの低減化を図ることができる。また、レーザモジュールの製造マージンも拡大されることが確認されている。
【0031】
本発明のレーザ光源装置において、レーザ媒質及び波長変換素子の入出射面のうち少なくとも片側の端面が、基本波の入出射に対して略ブリュースター角をもつように加工されていてもよい。基本波がレーザ媒質及び波長変換素子のブリュースター加工された端面において入射面内偏光をもつように配置構成することによって、透過損失を低減化することができる。また、波長変換素子において発生する線状の変換波の偏光方向が、基本波の偏光方向と略平行であるように構成されることによって、同様に波長変換素子のブリュースター加工された端面において変換波の透過損失も低減化することが可能となる。次に、このようにレーザ媒質や波長変換素子にブリュースター加工を施す実施形態例について説明する。
【0032】
(第4の実施形態)
図5A及びBは本発明の実施形態例に係るレーザ光源装置の一例を示す概略平面構成図である。図5Aは共振器内の反射光路における入射面に沿う平面内の平面構成図を示し、図5Bは入射面に沿う方向からみた概略平面構成図を示す。
図5に示す例においては、レーザ媒質の共振器方向に沿う端面から励起光を入射するエンドポンプ方式を採る場合で、レーザ媒質6及び波長変換素子10の一方の端面6B及び10Bを基本波に対しブリュースター角をもつブリュースター面として設ける例を示す。励起光源1から出射する励起光の光路上にコリメータレンズ2、半波長板13、共振器ミラー5を端面6Aに設けたレーザ媒質6が配置される。そしてレーザ媒質6の他方の端面6Bがブリュースター面とされる。ブリュースター面においては図5Aにおいて矢印p11で示す紙面内偏光が高透過となるので、ブリュースター面を偏光選択素子として機能させることができる。そしてその出射光路上には凹面ミラー等より成る反射部9が配置され、その反射光路上に波長変換素子10が配置される。波長変換素子10の反射部9側の端面10Bはブリュースター面とされ、他方の端面10Aに共振器ミラー11が設けられる。ここで共振器ミラー5及び11は基本波に対し高反射率を有する。また、反射部9は基本波に対し高反射率をもち、変換波に対し高透過率を有する。更に共振器ミラー11は、例えば基本波及び変換波に対し高反射率をもつ構成とする。
【0033】
このような構成において、励起光源1から出射された励起光は円筒レンズ等のコリメータレンズ2により発光素子12のエミッタ厚方向にコリメートされ、半波長板13を介してレーザ媒質6の一方の端面6Aから入射される。このとき、レーザ媒質6が異方性媒質である場合、例えば吸収効率と発振効率の高い結晶方位が同じc軸方向であるNd:YVOの場合、半導体レーザの発振偏光方向がエミッタ厚方向と平行であるような励起光源を使うときは、図5に示す例のように、レーザ媒質6の入射前に半波長板13により偏光を90度回転して、共振させるべき基本波の偏光方向と揃えておくことが好ましい。すなわちこの場合、励起光源1の発光素子12から出射される光の偏光方向は矢印p10で示すように光軸及び図5Aの紙面と直交し、図5Bの紙面に沿う方向であり、半波長板13によって、偏光方向は矢印p11で示すように光軸と直交し、図5Aにおいて紙面に沿う方向で、且つ図5Bにおいて紙面と直交する方向となる。レーザ媒質6の他方の端面6Bはブリュースター面とされるので、この矢印p11で示す偏光方向の光が高透過で出射される。この例では、共振器ミラー、レーザ媒質及びブリュースター板の3つの素子の機能を1つの素子で実現でき、部品点数の削減を図ることができる。レーザ媒質6から出射されて反射部9において反射された基本波は波長変換素子10に入射される。波長変換素子10にはやはり一方の端面10Bに基本波に対するブリュースター角をもつ面として構成するので、図5Aにおいて紙面内偏光をもつ光は高透過であり、共振器内の光学損失を低く抑えることができ、高効率な基本波発振を得ることができる。
またこの場合は、基本波の長手方向に対して偏光方向を略直交する方向とするので、ブリュースター面から出射される角度偏向方向は図5Aの紙面に沿う方向(図5Bの紙面と直交する方向)、すなわち共振光路の反射部9における入射面に沿う方向となり、各光学部品の配置構成が容易となるという利点を有する。なお、基本波と高調波等の変換波のブリュースター角は通常大きさが近く、変換波に対しても反射損失は十分に小さいため、損失低減のための反射防止膜を設けなくてよい。
【0034】
以上の構成とすることによって、凹面ミラー等の反射部9を介して、レーザ媒質6の一端面に設ける共振器ミラー5と波長変換素子10の一端面に設ける共振器ミラー11との間で共振器を構成することができる。このとき、本発明により、基本波の長手方向を偏光と垂直な方向、すなわち図5Aにおいて紙面と垂直な方向で、図5Bにおいて紙面に沿う方向として、基本波の長手方向を反射部9における入射面に対して略垂直となる構成とするので、部品点数が少なくまた共振器の光学損失が少ない状態で、反射部9における入射角を小さくできる。同時に、基本波の長手方向を反射部9の入射面に沿う方向とする従来の配置と比べて、ビーム長手方向の対称性を改善し、一様で安定なビーム形状を得ることができて、空間モードを高次モードまで均一に発振させることができる。また、振動などの外乱によってもビーム形状の対称性がよいため空間モード間のパワー遷移が起きにくくなり、画像生成装置や、光プロセス装置などに用いる場合に、線状のレーザ光の均質性、利用効率及び安定性の向上、ノイズの低減化を図ることができる。また、レーザモジュールの製造マージンも拡大される。
【0035】
(第5の実施形態)
図6A及びBにおいては励起光源1をいわゆるサイドポンプ方式に配置する例を示す。図6A及びBにおいて、図5A及びBと対応する部分には同一符号を付して重複説明を省略する。この例においては、レーザ媒質6及び波長変換素子10の一方の端面6B及び10Bを基本波に対しブリュースター角をもつブリュースター面とし、側面6Sから励起光源1からの励起光を照射する例を示す。レーザ媒質6で発振する基本波の偏光方向は矢印p14及びp15で示すように光軸と直交し図6Aの紙面に沿う方向で、且つ図6Bの紙面と直交する方向であり、それぞれレーザ媒質6及び波長変換素子10に対し高透過で入出射する構成とされる。この場合、上述の図5に示す例と同様に、部品点数が少なくまた共振器の光学損失が少ない状態で、反射部9における入射角を小さくでき、同時に、基本波の長手方向を反射部9の入射面に沿う方向とする従来の配置と比べて、ビーム長手方向の対称性を改善して一様なビーム形状とし、空間モードを高次モードまで均一に発振させることができる。また、振動などの外乱によってもビーム形状の対称性がよいため空間モード間のパワー遷移が起きにくくなり、画像生成装置や、光プロセス装置などに用いる場合に、線状のレーザ光の均質性、利用効率及び安定性の向上、ノイズの低減化を図ることができる。また、レーザモジュールの製造マージンも拡大される。
そしてこの場合においても、基本波の長手方向に対して偏光方向を略直交する方向とするので、ブリュースター面から出射される角度偏向方向は図6Aの紙面に沿う方向(図6Bの紙面と直交する方向)、すなわち共振光路の反射部9における入射面に沿う方向となり、各光学部品の配置構成が容易となるという利点を有する。
なお、図6に示す例においては直接励起とする場合を示すが、レーザ媒質内に励起光を閉じこめるための反射膜をレーザ媒質の表面又は外部に設けたり、適切なマイクロレンズなどによりレーザ媒質内に励起光を集光したりコリメートしたりする構成としても構わない。
【0036】
以上説明した第1、第2、第4及び第5の各実施形態例において、共振光路を形成する平面と平行な面内で、励起光源やレーザ媒質から発生した熱をペルチェ素子などによって排熱することが難しい場合は、例えば図3に示す第3の実施形態と同様に、排熱が容易な銅、アルミといった材料からなるL字型の支持体を用いることが望ましい。L字型の支持体を用いる実施形態を図7〜図10を参照して説明する。
【0037】
(第6の実施形態)
図7A及びBにおいては、上述の第4の実施形態の構成とする場合に、L字型の支持体40を用いる場合の概略平面構成図を示す。図7A及びBにおいて、図5A及びBと対応する部分には同一符号を付して重複説明を省略する。
本実施形態においては、L字型の支持体40の第1の面40Aに励起光源1及びレーザ媒質6を固定配置し、第2の面40Bにその他の光学素子、例えばコリメータレンズ2及び3、波長板13、反射部9、波長変換素子10を第2の面40Bに固定配置する例を示す。光軸位置調整のために、適当な位置調整部材を用いることが望ましい。この実施形態においては、図7Aに示すように、レーザ媒質6が位置調整部材42を介して第1の面40A上に配置され、図7Bに示すように、波長変換素子10が位置調整部材43を介して第2の面40B上に配置される例を示す。
【0038】
(第7の実施形態)
図8A及びBにおいては、上述の第5の実施形態の構成とする場合に、L字型の支持体40を用いる場合の概略平面構成図を示す。図8A及びBにおいて、図6A及びBと対応する部分には同一符号を付して重複説明を省略する。
本実施形態においては、L字型の支持体の第1の面40Aに励起光源1、第2の面40Bにレーザ媒質6、反射部9及び波長変換素子10を固定配置する例を示す。この場合においても、光軸位置調整のために、位置調整部材43を介して波長変換素子10が第2の面40B上に配置される例を示す。
【0039】
(第8の実施形態)
図9A及びBにおいては、上述の第2の実施形態の構成とする場合に、L字型の支持体40を用いる場合の概略平面構成図を示す。図9Bにおいて、図2A及びBと対応する部分には同一符号を付して重複説明を省略する。
本実施形態においては、L字型の支持体40の第1の面40Aは一平面をもつ形状とし、これとは略直交する第2の面としては、Y軸方向に高さの異なる第2の面40B1及び40B2を備える形状とする例を示す。第1の面40Aに励起光源1、レンズ4を配置し、第2の面40B2に、レーザ媒質6、反射部8、波長変換素子10及び共振器ミラー11を固定配置する。図示しないがコリメータレンズ2及び3は適切な位置調整部材を介して第1の面40A上に固定配置されていてもよく、又は第2の40B1上に固定配置されていてもよい。すなわちこの場合、第2の面40B2はレーザ媒質6、反射部8等を配置する平面として設けられ、これとは平行な第2の面40B1は励起光源1からレーザ媒質6に至る光路で光束を遮らないようにY軸方向に窪んだ構成となっている。なお、第2の面40B1及び40B2を設ける代わりに、適切な位置調整部材を用いてレーザ媒質6、反射部8、波長変換素子10及び共振器ミラー11を配置してもよい。
【0040】
(第9の実施形態)
図10A及びBにおいては、図9A及びBに示す実施形態において、励起光源1と集光レンズ4との間に、光路を偏向する光学部材としてプリズム21を用いる場合の概略平面構成図を示す。図10A及びBにおいて、図9A及びBと対応する部分には同一符号を付して重複説明を省略する。本実施形態においては、プリズム21として、基本波及び変換波のビーム長手方向(Y軸方向)とレーザ媒質6を通過する光路の光軸に沿う方向(X軸方向)とで作られる平面(X−Y平面)においては断面が略長方形であり、X軸方向とビーム短軸方向(Z軸方向)とで作られる平面(X−Z平面)においては断面が略二等辺直角三角形の三角柱形状のものを用いる。コリメータレンズ3から出射されてプリズム21に入射した光は、プリズム21の断面略三角形を構成する斜面によって、図10Bに示すように光路を2回略直交する方向に曲げられて折り返され、集光レンズ4に入射する構成とされる。つまりこの場合、励起光源1から出射された光は、コリメータレンズ2及び3を介してプリズム21に入射すると、このプリズム21によって光路を略180度を変換され、集光レンズ4を介してレーザ媒質6に向かう構成となる。
そしてこの実施形態においては、プリズム21をL字型の支持体40の第1の面40A又は第2の面40Bに固定配置する。この例ではレーザ媒質6、反射部8、波長変換素子10及び共振器ミラー11は第2の面40B上に固定した位置調整部材44上に固定配置される。この場合においても、図示しないがコリメータレンズ2及び3は適切な位置調整部材を介して第1の面40A上、又は第2の面40B上に固定配置されていてもよい。尚、コリメータレンズ、プリズム、集光レンズなどの順番などの配置についてはこの例に限るものではなく、適切な励起の仕方に適った配置をすればよいことはいうまでもない。
【0041】
以上の第6〜第9の実施形態においては、L字型の支持体40及び必要に応じて位置調整部材を利用して励起光源及び共振光路を構成する各光学部品を配置する。このようにL字型の支持体を用いることによって、本発明のレーザ光源装置を容易に支持体上に配置することができる。また、必要に応じて第1及び/又は第2の面40A及び40Bの裏面等にペルチェ素子等より成る排熱部を設け、特に励起光源やレーザ媒質等の排熱が必要な光学部品を銅やアルミニウム等の熱伝導率の高い部材より成る支持体40を介して排熱部に近接させる構成とすることにより、排熱を容易にすることができる。特に、支持体40の面のうち、発熱の多い励起光源とレーザ媒質に近接した面の方の裏面等に排熱部を設けることは、排熱抵抗を小さくする意味でも好ましい。
【0042】
ところで、本発明のレーザ光源装置において、反射部として用い得る凹面ミラーの曲率半径とミラー面有効半径(共振器ミラーとして利用できる有効範囲)については、使用用途による共振器設計により選定されるものであるが、例えば、以下の組み合わせが挙げられる。例えば曲率半径100mmのミラーに有効半径4mm(比率25)で入射角5度、あるいは曲率半径100mmのミラーに有効半径3mm(比率約33)で入射角20度、曲率半径50mmのミラーに有効半径3mm(比率約16)で入射角10度、曲率半径20mmのミラーに有効半径1.5mm(比率約13)で入射角5度等である。これらの組み合わせとする場合、線状基本波の長手方向を凹面ミラーの入射面内とする従来構成ではコマ収差による波面収差量が簡単に波長程度以上になってしまう。回折限界からコマ収差は波長の4分の1以下程度とすることが必要であるので、このような場合は特に、本発明構成とし、すなわち線状の基本波の長手方向を共振光路の反射光路の入射面と略垂直とすることによる効果が大きいといえる。
【0043】
更に、凹面ミラー等の反射部への入射角は各光学部品の大きさと共振光路のビーム径などを考慮して決められるが、本発明構成とする場合は線状の基本波の長手方向を凹面ミラー等の反射部への入射面に対し略垂直にすることから、基本波の長手方向が入射面内にある従来配置に比べて、凹面ミラーの有効径と横マルチモードのモード数を保ったまま、入射角を十分に小さくすることができる。凹面ミラーだけでなく、図1におけるレーザ媒質側の共振光路における共振器ミラー5のような平面ミラーにおいても、ビーム長手方向が斜入射になることによるミラーに必要な有効径増大を避けることができる。これらミラー有効径の縮小、入射角の低減は、装置の低コスト化、小型化、ひいては高信頼性化に寄与することができ、また、波長変換素子を含む共振光路を構成するミラー間距離の低減により、波長変換素子におけるモードサイズを低減して共振器内基本波パワー密度を向上することによって高効率化を図ることができる。
【0044】
本発明のレーザ光源装置においては、線状の基本波の長手方向を反射部における入射面に対して略90度とするものであるが、上述した波面収差量を考慮した場合に、この角度が許容される範囲について検討した。以下この結果を説明する。以下の例では線状の基本波が横マルチモードパターンのビーム形状であり、断面が略楕円状とされ、その長軸方向が長手方向となる場合を示す。
図11においては本発明の実施形態例に係るレーザ光源装置の一例の要部の概略平面構成図を示す。図11において、共振器ミラー5から反射部8までの光路長をb1、反射部8から凹面ミラー等より成る反射部9までの光路長をb2とする。ここで、光路長bをb=b1+b2とする。凹面ミラー等より成る反射部9と共振器ミラー11までの光路長をaとする。共振器ミラー5と反射部8との間には図示を省略するがレーザ媒質が配置され、共振器ミラー5と反射部9との間の光路においては、基本波はコリメート状態とされ、モード径は略一定である。高効率波長変換のために、波長変換素子10の近傍でのモード径は小さいことが望ましく、およそ2a<bの関係とされる。反射部9が曲率半径Rの凹面ミラーであるときは、光路長bは、R〜aであることから、
b>2R ・・・(1)
となる。
一方、線状の基本波の短軸側は横シングルモード(略ガウシアンビーム)とされ、安定共振条件にはbがレイリー長(ビーム径がウエスト径の√2倍になる長さ)以下であるようなモード半径が目安となる。ωを短軸方向(すなわち横マルチモードとする場合はシングルモード方向)のビームウエスト半径、λを波長、ガウシアンビームとすると、レイリー長Lrは
Lr=2×π×ω/λ
で与えられる。したがって、ビームウエスト半径ωは、
ω≧√{λ×b/(2π)) ・・・(2)
の条件を満たす必要がある。例えばλ=1.064μmのとき、
ω=0.5mm → Lr=1480mm
ω=0.2mm → Lr=236mm
ω=0.1mm → Lr=59mm
ω=0.05mm → Lr=15mm
となる。
また、コマ収差量が増大して回折限界の目安である波面収差λ/4を超えないようにビームウエスト半径ωの上限を選定する必要がある。
【0045】
ここで、図12に示すように、線状の基本波ビームの長手方向が、破線で示すように反射部の入射面内に沿うx方向から、入射面に対し直交するy方向に角度Φをもつとする。図11及び図12において実線B1、B2及びB3はそれぞれΦ=90°、45°、0°の場合のビーム形状を示す。また、図11に示すように、反射部9により折り返される共振光路の成す角度をαとする。共振光路の角度αは小さい方が、レーザ光源装置全体の小型化に有利である。
このとき、共振光路の角度αが10°の場合と30°の場合において、反射部9を構成する凹面ミラーの曲率Rを100mm、75mm、50mm、25mmとした場合の光路長b、高効率波長変換をもたらす共振器構成になるような、共振器ミラー5と反射部9の間の基本波の短軸方向(横マルチモードとする場合はシングルモード方向)のビーム半径下限(これを条件1とする)、コマ収差がλ/4を超えない共振器ミラー5と反射部9の間のビーム半径の反射部9における入射面への射影成分の上限(これを条件2とする)、更に、基本波の長手方向の入射面からの角度Φがそれぞれ0°、45°、90°のときの上記条件1及び2を満たすアスペクト(基本波ビーム長軸方向及び短軸方向の長さの比)の上限を解析した。この結果を下記の表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
上記表1の結果から、本発明構成とする場合、すなわち基本波の長手方向の入射面からの角度Φを90°とする場合は、条件1及び2を満たすアスペクトの上限が無限大となり、長軸と短軸の比を十分に大とすることができることがわかる。
次に、角度Φを90°からずらす場合に、コマ収差を波長の4分の1以下とすることができる角度範囲について検討した。このようにコマ収差をある程度以下に抑えられる角度範囲は、図11に示す共振光路の角度αや反射部9として用いる凹面ミラーの曲率R、基本波の短軸側半径の下限、線状の基本波の長軸と短軸との比(アスペクト)、基本波の波長λ等によって異なってくる。以下の例では、基本波の波長を1064nmとした。
先ず、共振光路の角度αを30°とし、反射部として用いる凹面ミラーの曲率半径Rが15mmの場合、50mmの場合と75mmの場合とにおいて、基本波のアスペクトを10、20、30、50と変化させ、角度Φを90°から80°、70、45°、0°と変化させたときのコマ収差を解析した結果を下記の表2〜表4に示す。なお、式(1)及び(2)から、凹面ミラーの曲率半径Rが15mmの場合は横シングルモード側(ビーム短軸側)半径下限目安を0.07mm、曲率半径Rが50mmの場合は横シングルモード側半径下限目安を0.13mm、曲率半径Rが75mmの場合は横シングルモード側半径下限目安を0.16mmとした。コマ収差は波長λを単位として記載した。すなわち0.25未満で良、0.25以上で不良となる。下記の表においては、モード径の共振光路で作られる平面方向の射影成分も示す。なお、Φ=0°とする例が、従来の構成である。
【0048】
【表2】

【0049】
【表3】

【0050】
【表4】

【0051】
上記表2の結果から、凹面ミラーの曲率半径をR=15mm、横シングルモード側半径下限目安を0.07mmとする場合は、ビームアスペクト比20以下のとき角度Φ=70°、すなわちΦ=90°±20°までコマ収差を波長の4分の1以下とすることができ、ビームアスペクト比が20を超えて50以下のときは角度Φ=80°、すなわちΦ=90°±10°までコマ収差を波長の4分の1以下とすることができることが分かる。
また、上記表3及び表4の結果から、凹面ミラーの曲率半径R=50mm、横シングルモード側半径下限目安を0.13mmとする場合、更に凹面ミラーの曲率半径をR=75mm、横シングルモード側半径下限目安を0.16mmとする場合は、ビームアスペクト比30以下のとき角度Φ=70°=90°±20°までコマ収差を波長の4分の1以下とすることができ、ビームアスペクト比が30を超える50以下では角度Φ=80°=90°±10°までコマ収差を波長の4分の1以下とすることができることが分かる。
【0052】
次に、基本波の波長を1064nmとして、共振光路角度をα=10°とし、凹面ミラーの曲率半径をR=75mm、横シングルモード側半径下限目安を0.16mmとして、アスペクト及び角度Φを同様に変化させてコマ収差を解析した。この結果を下記の表5に示す。
【0053】
【表5】

【0054】
上記表4より、この場合も、ビームアスペクト比30以下のとき角度Φ=70°=90°±20°までコマ収差を波長の4分の1以下とすることができ、ビームアスペクト比が30を超え、50以下では角度Φ=80°=90°±10°までコマ収差を波長の4分の1以下とすることができることが分かる。
以上の結果から、基本波として横マルチモードの光を用い、共振光路の折り返し角度が30°以下、反射部として用いる凹面ミラーの曲率を15mm以下、線状の基本波のアスペクト(長軸と短軸との比)を20以下とする場合は、基本波の長軸方向(すなわち長手方向)の折り返し光路の入射面に対する角度を90°±20°の範囲に選定できる。また、表2〜5から分かるように、アスペクト比が20を超えて50以下とする場合は90°±10°の範囲とすることが望ましい。
このように、基本波の長手方向の、レーザ共振器内に配置された反射部における入射面となす角度Φの許容範囲は適用する光学装置において選定される各種の条件、すなわち波長、変換波の形状(アスペクト)、装置構成(共振光路の折り返し角度、共振器長)等の条件によって変動が見込まれる。
【0055】
例えば、本発明のレーザ光源装置においては、共振器内の光路を折り返す反射部における基本波の入射角αが、5度以上45度以下程度の範囲で利用可能であることが望ましい。基本波の入射角が30°を超える場合は基本波の長手方向の入射面に対する角度Φをより90°に近い値とすることが望ましい。逆に、共振光路の折り返し角度αを20°以下程度に設定する場合やまたはアスペクトを小さく設定できる場合などは、基本波の長手方向の入射面に対する角度Φの許容範囲をより広く設定することができる。
【0056】
また、共振器の光路を折り返す反射部として凹面ミラーを用いる場合は、その曲率半径をこの凹面ミラーの有効径で割った値が、実用上3以上50以下であることが望ましい。本発明により、ビーム長手方向に対し斜入射になる従来の場合に比べ入射角を小さくせずに有効径を小さくでき、また収差量を大きく増やさずに曲率を小さくすることができる。
【0057】
(第10の実施形態)
次に、本発明構成のレーザ光源装置を利用した本発明の画像生成装置の一実施形態について図13を参照して説明する。図13に示すように、この画像生成装置100は本発明構成によるレーザ光源装置20と、照明光学系50、例えば回折格子型の1次元光変調装置51及び光選択部52を含む光変調部55、投射光学部53、走査素子54を有する走査光学部56から構成される。レーザ光源装置20としては、前述の実施形態例と同様に例えば横マルチモードの1次元状の変換波、例えば第2高調波を出力する構成とし得る。そしてこのレーザ光源装置20から出射されて照明光学系50において例えば光束形状を整えられたレーザ光Loは、例えば回折格子型構成の1次元光変調装置51に例えば1次元状(線状)の光ビームとして照射される。
【0058】
回折格子型の1次元光変調装置51は外部演算部150において生成された画像信号をもとに、図示しない駆動回路からの信号Spを受けて動作する。1次元光変調装置51を回折格子型構成とする場合、その回折光が光選択部52に入射される。なお、例えば三原色の光を用いる場合は、各色の光源からそれぞれ1次元照明装置、各色用光変調装置を経てL字型プリズム等の色合成部により光束を重ね合わせて光選択部に出射される構成としてもよい。
【0059】
光選択部52はオフナーリレー光学系等より成り、シュリーレンフィルター等の空間フィルター(図示せず)を有し、ここにおいて例えば+1次光が選択されて1次元画像光Lmとして出射される。更に投射光学部53によって拡大等を行い、走査光学部56における走査素子54の矢印rで示す回転によりL1、L2、・・・Ln−1、Lnで示すように走査され、スクリーン等の画像生成面60上に2次元像57が生成される。画像生成面60上において走査位置は矢印sで示すように走査される。走査素子54としては、例えばガルバノミラー、ポリゴンミラーの他、例えば電磁石等によって共振して走査を行ういわゆるレゾナントスキャナを用いることも可能である。
【0060】
光変調装置には、例えば、1次元光学変調素子である米国シリコン・ライト・マシン(SLM)社が開発したGLV(Grating Light Valve:反射型回折格子)型の光変調素子を用いることができる。このGLV素子には横マルチモードの線状光、ビーム整形された線状光、もしくは並列化光源を照射する。
レーザ光源装置20において、変換波の強度分布の不均一性が比較的大きい場合、これを画像生成装置100に適用して得られる画質は、照明むらにより品質が低下したものになる。この不均一性は、本発明構成のレーザ光源装置を用いることによって十分に低減することができ、出力が安定し、したがって照明むらの少ない良質な画質をもって画像を生成することが可能となる。または、変換波の不均一性を光変調部の信号強度補正に反映させる場合は、本発明によって光利用効率向上に繋がる。
【0061】
なお、本発明の画像生成装置は上述の例に限定されるものではなく、レーザ光源装置の少なくとも一つを本発明構成とする他は、光変調部、投射光学部、走査光学部等において種々の変形、変更が可能である。また投射型表示に限定されることなく、描画により文字情報や画像などを生成する各種の描画装置、例えばレーザプリンタにも適用可能である。
【0062】
また、本発明の画像生成装置は、上述した1次元状の光変調装置を用いる場合に限定されるものではなく、その他DMD(Digital Micro-mirror Device)や共振型走査ミラー等の2次元型の光変調装置を用いる場合においても適用可能であり、その他光源のレーザ装置以外の照明光学系、投射光学系、その他の光学系の材料構成において、本発明構成を逸脱しない範囲で種々の変形、変更が可能であることはいうまでもない。
更にまた、画像生成装置以外においても、共振器内部に波長変換素子を有するレーザ装置を1以上用いる光学装置であれば、その少なくとも1つのレーザ光源装置に本発明を適用することが可能である。
【0063】
以上説明したように本発明によれば、固体レーザ共振器内に波長変換素子を設けて線状の変換波を出力するレーザ光源装置において、共振光路によって作られる平面、特に凹面ミラーを用いる場合にはその入射面と、基本波及びこの共振器において得られる変換波の線状ビームの長手方向を略垂直に配置することによって、以下の[1]〜[5]の効果が得られる。
[1]共振器内で発振する線状の基本波及びこれを波長変換素子に照射することによって発生する高調波等の変換波の長手方向の形状の状対称性を改善し、長手方向の均一性の向上を図ることができる。これを画像生成装置や光プロセス装置等の光学装置の光源として用いる場合は、線状出力光の長手方向における均質性の向上、照射効率の向上、安定性の向上、ノイズの低減化に寄与する。
【0064】
[2]共振器内で発振する基本波の空間モード数(横モード数)を増大させることができるので、干渉性の低減やビーム強度の均一化をもたらし、また、ビームの時間的安定性が増し、その結果、他の光学装置に用いる場合の高効率化、安定性向上、ノイズ低減に寄与する。
[3]共振光路間の角度が比較的大きくても基本波長手方向の共振器内凹面ミラーにおけるコマ収差の増加が抑えられるため、共振器構成の各光学素子間の距離を近づけることができる。その結果、装置の小型化、高効率化、高信頼性化、それによる低コスト化に寄与する。
[4]共振器内で発振する基本波の空間モード数を低減することなく、線状の基本波の長手方向のビーム幅を保って高アスペクト比を保持したままで、容易に共振器構成素子間の距離を近づけたり、共振光路間の角度を小さくしたりすることができる。これにより、各光学部品の配置構成のマージン(レーザモジュールマージン)の拡大、装置の小型化、高効率化、高信頼性化、それによる低コスト化に寄与する。
【0065】
[5]線状の基本波のレーザビームの光軸調整を行うにあたり、一般的にはビーム長手方向に比べて短軸方向の調整精度のほうが厳しい。本発明構成とする場合は、ビーム短軸方向が、共振光路によって作られる面内となる。したがって、共振器を構成する各光学部品を配置する平面内、すなわちこれらを配置する支持体の表面に沿う平面内で可動とされるあおり調整機構等の光学調整機構を設ければよく、これとは直交する方向についての調整機構を簡略化することが可能となる。特に、支持体表面に対して垂直な面内のあおり機構を設ける場合は駆動部が複雑となるため、これを簡略化できることは大きな利点となる。
なお、反射部を凹面鏡で構成する場合、またレーザ媒質や波長変換素子等の端面を凹面とする場合は、並進機構であおり調整を行うことができる。並進機構を設ける場合においても、支持体表面内の可動機構は垂直方向の可動機構と比べて格段に簡素な機構となる。したがって、駆動部を部品構成とするか又はマニピュレータ機構とするかに拘わらず、あおり機構及び並進機構が共に、本発明構成とすることによって光学的な調整に要する駆動部の構成を格段に簡易化できて、低コスト化、高信頼性化、小型化に寄与することとなる。
【0066】
また、共振器におけるレーザ媒質や波長変換素子の入出射面を1つ以上基本波に対してブリュースター角をもつ傾斜面、すなわちブリュースター面とする場合は、基本波長手方向が共振光路によって作られる平面と垂直であることによる上記[1]〜[5]の効果を得ることができるのに加えて、以下の[6]及び[7]の効果を得ることができる。
[6]ブリュースター面のみによって、波長変換できる方向の偏光に発振モードを制限することができるため、ブリュースター板を不要とし部品低減ができ、小型化、高効率化、高信頼性化できる。
[7]波長変換素子におけるブリュースター面において、基本波および高調波双方に高透過とすることができるので、共振器内の光学損失を低く抑えることができると共に、共振する基本波のパワー密度を高め、変換効率を高めることができる。
【0067】
なお、本発明は上述の実施形態例において説明した構成に限定されるものではなく、例えばレーザ光源装置における共振器内の折り返し反射部や光束成形用のレンズ等における光学素子の部品点数、材料構成等、本発明構成を逸脱しない範囲において種々の変形、変更が可能である。また上述したように、波長変換素子において生じる高調波は2次高調波に限定されるものではなく、3次以上の高調波でもよく、また和周波発生による高調波発生、パラメトリック発振による変換を行う場合にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】第1の実施形態に係るレーザ光源装置の概略平面構成図である。
【図2】第2の実施形態に係るレーザ光源装置の概略平面構成図である。
【図3】第3の実施形態に係るレーザ光源装置の概略平面構成図である。
【図4】本発明の実施形態例によるレーザ光源装置における出力光の強度分布を示す図である。
【図5】第4の実施形態に係るレーザ光源装置の概略平面構成図である。
【図6】第5の実施形態に係るレーザ光源装置の概略平面構成図である。
【図7】第6の実施形態に係るレーザ光源装置の概略平面構成図である。
【図8】第7の実施形態に係るレーザ光源装置の概略平面構成図である。
【図9】第8の実施形態に係るレーザ光源装置の概略平面構成図である。
【図10】第9の実施形態に係るレーザ光源装置の概略平面構成図である。
【図11】本発明の実施形態例に係るレーザ光源装置の要部の概略平面構成図である。
【図12】基本波の入射面に対する角度の説明図である。
【図13】本発明の実施形態例に係る画像生成装置の概略構成図である。
【図14】従来のレーザ光源装置の概略平面構成図である。
【図15】従来のレーザ光源装置における出力光の強度分布を示す図である。
【符号の説明】
【0069】
1.励起光源、2.コリメータレンズ、3.コリメータレンズ、4.集光レンズ、5.共振器ミラー、6.レーザ媒質、7.波長選択素子、8.反射部、9.反射部、10.波長変換素子、11.共振器ミラー、13.半波長板、20.レーザ光源装置、30.共振器、50.照明光学系、40.支持体、40A.第1の面、40B.第2の面、43.位置調整部材、44.位置調整部材、41.排熱部、51.1次元光変調装置、52.光選択部、53.投射光学部、54.走査素子、55.光変調部、56.走査光学部、57.2次元像、60.画像生成面、100.画像生成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起光源と、一対の共振器ミラーとを有し、前記共振器ミラーにより構成される共振器内に少なくともレーザ媒質と波長変換素子とが設けられるレーザ光源装置であって、
横モードパターンの光で前記レーザ媒質が励起され、前記レーザ媒質の発振により得られる線状の基本波を前記波長変換素子に照射して線状の変換波を出力する構成とされ、
前記共振器内に、光路を折り返す反射部が1以上設けられ、
前記線状の基本波の長手方向が、前記反射部の入射面に対して略垂直に配置されて成る
ことを特徴とするレーザ光源装置。
【請求項2】
前記反射部が、凹面ミラーであることを特徴とする請求項2記載のレーザ光源装置。
【請求項3】
前記励起光源が半導体レーザより成ることを特徴とする請求項1記載のレーザ光源装置。
【請求項4】
前記励起光源が、複数の半導体レーザを1次元的に配列したレーザアレイより成ることを特徴とする請求項1記載のレーザ光源装置。
【請求項5】
前記励起光源から出射される横モードパターンの出射光の長手方向と、前記励起光源からの光の前記レーザ媒質に入射する入射方向とのうちのいずれか一方が、前記共振器内で発振する前記線状の基本波の発振光路で作られる平面に対して略垂直となるように配置されて成ることを特徴とする請求項1記載のレーザ光源装置。
【請求項6】
前記励起光源及び共振器が断面略L字型の支持体上に配置されて、前記励起光源と前記共振器とが、それぞれ前記L字型の支持体の略直交する第1及び第2の面上に配置されて成ることを特徴とする請求項5記載のレーザ光源装置。
【請求項7】
前記共振器内で発振する線状の基本波の偏光方向が、前記基本波の長手方向と略垂直であることを特徴とする請求項1記載のレーザ光源装置。
【請求項8】
レーザ光源装置と、該レーザ光源装置から出射される光を情報に対応して変調する光変調部と、投射光学部とを備える画像生成装置において、
前記レーザ光源装置は、励起光源と、一対の共振器ミラーとを有し、前記共振器ミラーにより構成される共振器内に少なくともレーザ媒質と波長変換素子とを備え、
横モードパターンの光で前記レーザ媒質が励起され、前記レーザ媒質の発振により得られる線状の基本波を前記波長変換素子に照射して線状の変換波を出力する構成とされ、
前記共振器内に光路を折り返す反射部が1以上設けられ、
前記線状の基本波の長軸方向が、前記反射部の入射面に対して略垂直に配置されて成る
ことを特徴とする画像生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−153526(P2008−153526A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−341548(P2006−341548)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】