ロッキング椅子
【課題】ベース部の組み立てが容易なロッキング椅子を提供する。
【手段】椅子はベース3を有しており、ベース3には、ロッキング用ばね手段の一例としてのトーションバー、トーションバーに対して初期荷重を付与するためのカム部材40、カム部材40を移動操作するためのハンドル軸41、カム部材40の移動をトーションバーに伝えアーム37が配置されている。カム部材40はアーム37に当接しない位置まで移動させることができる。このため、椅子の組み立てを安全かつ能率よく行える。通常はカム部材40の第2カム面40bがアーム37に当接しており、この状態では、カム部材40はハンドル軸41に固定されたビスによって弾力低下方向には移動不能に保持されている。このため、トーションバー34には最小負荷が常に作用していて安全である。
【手段】椅子はベース3を有しており、ベース3には、ロッキング用ばね手段の一例としてのトーションバー、トーションバーに対して初期荷重を付与するためのカム部材40、カム部材40を移動操作するためのハンドル軸41、カム部材40の移動をトーションバーに伝えアーム37が配置されている。カム部材40はアーム37に当接しない位置まで移動させることができる。このため、椅子の組み立てを安全かつ能率よく行える。通常はカム部材40の第2カム面40bがアーム37に当接しており、この状態では、カム部材40はハンドル軸41に固定されたビスによって弾力低下方向には移動不能に保持されている。このため、トーションバー34には最小負荷が常に作用していて安全である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、背もたれがばね手段に抗して後傾動するロッキング椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
背もたれが後傾動するロッキング椅子では、背もたれの後傾動をばね手段で支持している。ばね手段としてはコイルスプリングやトーションバー、トーションバーコイルスプリング(キックばね)などが使用されている。いずれにしても、ロッキングに対するばね手段の抵抗の大きさを調節するための弾力調節装置を設けていることが一般的である。その一例として本願出願人は、特許文献1において、ハンドル付きねじ軸の回転操作によってカム部材を左右移動させる構造の弾力調節装置を開示した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願2008−313170号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さて、着座した人が背もたれに凭れ掛かるにおいて、凭れ掛かり初期においてばね手段に全く負荷が掛かっていないと、ばね手段は荷重がゼロの状態から変形するため、背もたれが急激に後傾する現象を呈して非常に危険である。従って、ばね手段は人が背もたれにもたれ掛かっていない状態においても初期荷重が付与されていなければならない。
【0005】
また、背もたれの後傾動に連動して座が後傾又は/後退するシンクロするタイプの椅子では、座の後傾動又は/後退動もばね手段で支持しているため、非ロッキング状態において座が後傾動又は/後退動しないようにばね手段に負荷を掛けておかねばならない。
【0006】
いずれにしても、ロッキング椅子ではばね手段には初期荷重(プリテンション)を掛けておかねばならない。そこで、椅子を組み立てるに際してはばね手段に初期荷重を掛けた状態で組み立てる方法があるが、ばね手段のばね力はかなり強いので、作業が厄介であるという問題がある。
【0007】
他方、弾力調節装置としてハンドル付きねじ軸を回転操作してカム部材を移動させる方式があり、この方式では、カム部材をばね手段に全く荷重が付与されていない位置まで移動させることにより、ばね手段に初期荷重を掛けることができる。しかし、この方式では、椅子の使用状態において誤ってハンドルを戻し回転させ過ぎて、カム部材をばね手段に荷重が掛かけない位置まで移動させてしまい、このため、上記したようにロッキング時に背もたれが急激に後傾する現象を呈するおそれがある。
【0008】
本願発明はこのような現状に鑑み成されたものであり、組み立て作業性と使用状態での安全性とに優れたロッキング椅子を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明に係る椅子は、脚の上端に設けたベースに、背もたれの後傾動を支持するばね手段と、前記ばね手段の初期弾性力を調節するための弾力調節装置とを設けており、前記弾力調節装置は、人が回転操作するハンドル付きねじ軸と、前記ねじ軸の回転によって当該ねじ軸の軸方向に移動するカム部材とを有しており、前記カム部材を移動させることで前記ばね手段に付与する初期荷重を変化させるようになっている。
【0010】
そして、請求項1の発明では、上記構成において、前記カム部材は、前記ばね手段に対して初期荷重を全く掛けていないフリー位置まで移動可能であり、かつ、前記ばね手段に初期荷重が掛かっている位置から初期荷重が掛かっていない位置に移動することを阻止するストッパー手段を後付けによって設けている。請求項2の発明は、請求項1において、前記ストッパー手段は前記ねじ軸にその軸心と直交した方向からねじ込まれるビスになっている。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1又は2において、前記ばね手段は左右方向に延びるトーションバーであり、前記トーションバーにはこれにねじりの初期荷重を付加する回動式のアームが取付けられており、前記アームに前記カム部材を当接させており、前記アームとカム部材との当接面をねじ軸の軸線に対して傾斜したカム面とすることにより、前記カム部材が移動すると前記アームの初期回動量が変化してトーションバーに対する初期荷重が変化するようになっている。
【0012】
更に請求項4の発明は、請求項3において、前記カム部材のカム面は、前記トーションバーに負荷を全く付与しない完全無負荷状態からトーションバーにある程度の負荷を付与する初期負荷状態までの範囲で機能する第1カム面と、前記初期負荷状態からトーションバーに最も大きな負荷を付与する最大負荷状態までの範囲で機能する第2カム面とを有しており、前記ねじ軸の軸線に対して第1カム面が傾斜した角度を前記ねじ軸の軸線に対して第2カム面が傾斜した角度よりも大きい角度に設定している、
【発明の効果】
【0013】
本願発明では、椅子の組み立てに際しては、ばね手段には、無負荷状態からねじ軸を回転操作して徐々に負荷(初期荷重)を掛けていくことができるため、椅子の組み立てを安全かつ簡単に行える。そして、椅子の組み立て後は、ストッパー手段により、カム部材はばね手段に対して荷重が掛かっている領域でしか移動しないため、ロッキングに際して背もたれが急激に後傾する現象を防止して安全性を確保できる。
【0014】
ストッパー手段としては様々のものを採用できるが、請求項2のようにビスを採用してこれをねじ軸にねじ込むと、ごく簡単な構造でカム部材を確実に移動停止させることができる。
【0015】
さて、カム部材のカム面を全長にわたって同一プロフィールとすることも可能であるが、カム部材がばね手段に対して負荷が掛からない位置まで移動する構成では、カム部材の移動ストロークが大きくなるため、カム部材の左右移動ストロークに起因してベースの左右巾寸法を大きくせねばならないおそれがある。この点、請求項4の発明を採用すると、カム部材は、無負荷状態から初期負荷状態に至るまでの移動距離を小さくしつつ、通常の使用状態では初期荷重を比例的に変化させることができるため、ばね手段を滑らかに弾力調節できる機能を損なうことなく、ベースの左右巾寸法をできるだけ小さくすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態に係る椅子の外観図であり、(A)は斜視図、(B)は側面図である。
【図2】全体的な分離斜視図である。
【図3】全体的な分離斜視図である。
【図4】(A)はベースを中心にした部分の全体的な斜視図、(B)は全体的な分離斜視図である。
【図5】ロッキング機構及び弾力調節装置を中心にした分離斜視図である。
【図6】ベースを中心にした部分の分離斜視図である。
【図7】ロッキング機構及び弾力調節装置を中心にした分離斜視図である。
【図8】(A)はベース部の正面図、(B)はベース部を下方から見た斜視図である。
【図9】(A)は初期負荷状態でのベース部の部分底面図、(B)は最大負荷状態での部分底面図である。
【図10】(A)は無負荷状態でのベースの部分底面図、(B)は無負荷状態でのベース部を下方から見た斜視図である。
【図11】背フレームの取付け構造を示す図であり、(A)(C)は分離図、(B)は中心軸の部分斜視図である。
【図12】補足説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、事務用に多用されている回転椅子に適用している。以下の説明(及び請求項)では方向を特定するための「前後」「左右」の文言を使用するが、これは人が普通に腰掛けた状態を基準にしている。
【0018】
(1).椅子の概要
まず、図1〜図5に基づいて椅子の概要を説明する。図1,2に示すように、椅子は、主要要素として、脚支柱2を有する脚装置1、脚支柱2の上端に固定されたベース3、ベース3の上方に配置された座4、背もたれ5を構成するバックフレーム8備えている。
【0019】
脚装置1は放射状に延びる複数本の枝足を備えており、各枝足の先端にはキャスタを設けている。なお、図では枝足は一部しか表示しいない。脚支柱2は伸縮自在なガスシリンダを使用している。椅子はまた、ベース3の左右両側において前後方向に延びる背フレーム7を有しており、背フレーム7の後部に上向きに延びる背支柱7aを一体に設け、左右の背支柱7aに正面視略四角形のバックフレーム8をねじで固定している。バックフレーム8にはメッシュ状のシート材9を張っている。従って、本実施形態ではバックフレーム8とシート材9とで背もたれ5が構成されている。
【0020】
図4(B)に示すように、背フレーム7は、その前端部を中心にして後傾するようにベース3に左右横長の中心軸10で連結されている。中心軸10は中空筒を使用しており、その内部にはばね手段の一例としてのトーションバーが内蔵されており、背もたれ5はトーションバーの弾性に抗して後傾動する(詳細は後述する。)。
【0021】
図3に符号11で示す部材はランバーサポート、図3に符号12で示す部材はロッキング時にランバーサポート11を相対的に後退動させるためのリアリンクである。リアリンク12の上端にランバーサポート11を取付けており、ロッキング時にはランバーサポート11が後退してシート材9に対するテンションが弱くなる(或いはシート材9が弛む。)。
【0022】
図2に示すように、座4は樹脂製のインナーシェル13にクッション材14を張った構造であり、インナーシェル13はその下方に配置した樹脂製のアウターシェル15に固定されている。アウターシェル15はその下方に配置された平面視略四角形の座受け部材16に前後位置調節可能に取り付けられている。
【0023】
図5から理解できるように、ベース3の前部側面には左右一対の支持筒18を左右外向きに突設しており、この支持筒18にフロントリンク19が回転自在に嵌め込まれている。他方、例えば図3に示すように、座受け部材16の前端部には下向きのフロント軸受け部20が形成されており、フロントリンク19がフロント軸受け部20にフロントピン21で連結されている。
【0024】
図3に示すように、座受け部材16の後部にはリア軸受け部22が下向きに突設されており、このリア軸受け部22の下端と背フレーム7とがリアピン23で連結されている。リアピン23は、背フレーム7の内側面に形成したガイド長穴24に角形スライダー25を介してスライド自在に嵌まっている。フロントリンク19が後傾動しつつリアピン23が背フレーム7のガイド長穴24をスライドすることにより、背フレーム7の後傾動が許容される。リアリンク12の前端はピン21で座受け部材16に連結されている。
【0025】
(2).ベースとその周辺部の構造の概略
次に、ベース3とその周辺部材の概略を、図6以下の図面も参照して説明する。ベース3はアルミダイキャストのような金属成形品であり、例えば図5に示すように、全体的には平面視で前後に長い長方形であり、その前部を除いて概ね上向きに開口した形態になっている。ベース3の後端部に脚支柱2が嵌まっている。
【0026】
ベース3のうちやや前寄り部位には、その左右側部を上向きに開口させた軸受け凹所28が形成されており、この軸受け凹所28に中心軸10が嵌まっている。中心軸10は、上下分離式の樹脂製ブッシュ29(特に図7参照)を介してベース3に回転自在に嵌まっている。ブッシュ29は押さえ板31(図6参照)で上下離反不能に保持されており、押さえ板31はベース3にビスで固定されている。
【0027】
例えば図5から理解できるように、左右中心軸10の基部は、正面視で略上向き開口コの字形のセンターブラケット32に溶接で固定されている。すなわち、左右中心軸10の基部をセンターブラケット32の側板32aに溶接している。従って、左右の中心軸10はセンターブラケット32と共に一体に回転(回動)する。
【0028】
図7に示すように、中心軸10の内部にはトーションバー34が配置されている(図7ではトーションバー34を引き出して表示している。)。トーションバー34は4本の単位棒を束ねることで全体として角柱状になっている。
【0029】
中心軸10はトーションバー34の外接円よりも大きい内径のパイプを素材にして製造されており、その外端部に角形の保持部35(図5参照)が嵌着又は潰し加工されており、保持部35にトーションバー34の端部が相対回転不能に嵌め込まれている。また、中心軸10の外端部には後ろ向きに延びる補助ブラケット36が溶接によって固定されており、補助ブラケット36が背フレーム7の前端部に固定されている(詳細は後述する。)。
【0030】
例えば図7に示すように、トーションバー34のうちセンターブラケット32の内部に入り込んだ部位には、前向きに延びる弾力調節用のアーム37が相対回転不能に嵌め込まれており、アーム37はベース3に設けた貫通穴38から前向きに突出している。また、例えば図8に示すように、ベース3の前部には下向き開口凹所39が形成されており、この下向き開口凹所39に弾力調節用のカム部材40が配置されている。
【0031】
カム部材40はアーム37に上方から当たっており、カム部材40が左右移動するとアーム37が上下に回動して、トーションバー34に対する初期荷重(プリテンション)が変化する。アーム37は金属製である。アーム37は、カム部材40の動きをトーションバー34に作用させる荷重作動体一例である。
【0032】
カム部材40にはトーションバー34と平行に延びる左右長手のハンドル軸(ねじ軸)41が挿通しており、ハンドル軸41はベース3の支持筒18に貫通している。ハンドル軸41の一端部(外端部)は右側の支持筒18から外側に突出しており、この突出した端部にハンドル(摘まみ)42が固定されている。例えば図4(B)に示すように、ベース3には上カバー43と下カバー44とを装着している。上カバー43は前後分離方式になっている。
【0033】
(3).ロッキング弾力調節機構
次に、アーム37やカム部材40等で構成されている弾力調節装置の詳細を説明する。図面では明示してないが、図7から理解できるように、中心軸10はセンターブラケット32の内部に入り込む内向き端部10aを有しており、この内向き端部にリング体45が嵌まっている。そして、アーム37には、リング45に上方から重なる張り出し部37aを設けている。このため、トーションバー44に曲げ荷重が作用することを防止できる。
【0034】
既述のとおり、アーム48にはカム部材40が上方から重なっている。従って、アーム48とカム部材40とは互いに重なる当接面が存在するが、図8から理解できるように、、カム部材40には、正面視でハンドル軸41の軸線に対して傾斜した第1カム面40a及び第2カム面40bを形成している。両カム面40a,40bはハンドル42に近づくほどハンドル軸41に近づくように傾斜しており、かつ、第1カム面40aの傾斜角度が第2カム面40aの傾斜角度よりも大きくなっている。
【0035】
第1カム面40aは椅子の組み立てや分解時に使用されるもので、椅子を使用する状態では第2カム面40bが使用される。アーム37の当接面(カム面)はカム部材40の第2カム面40bと密着するように設定している。なお、カム部材40及びアーム37のカム面40a,40b,37bは、ハンドル42から遠ざかるほどハンドル軸41の軸心に近づくように傾斜させてもよい。
【0036】
カム部材40は樹脂製又は金属製であり、その上部にハンドル軸(ねじ軸)51が挿通されている。そして、図示していないが、カム部材40にはナットが回転不能に嵌め込まれており、ハンドル軸41の雄ねじ部がこのナットにねじ込まれている(なおナットの位置は任意に設定でき、また、複数個のナットを嵌め込むことも可能である。)。ハンドル軸41は、カム部材40がアーム37に対して一方方向(右方向)から当接していることにより、回転のみする状態に抜け不能に保持されている。
【0037】
従って、摘まみ42に掴んでハンドル軸41を回転させるとカム部材40は左右移動する。図9(B)に示すように、カム部材40がトーションバー34に対する負荷を最も大きくした位置まで移動すると、カム部材40はベース3の内側面に当接してそれ以上の移動が規制ささる。
【0038】
カム部材40は、例えば図9、図10に示すように、カム部材40は、その第2カム面40bがアーム37に当接する領域で移動可能であることは当然として、第1カム面40aがアーム37に対向した領域まで移動させることが可能である。
【0039】
そして、既述のとおり、通常の使用状態では、カム部材40は、その第2カム面40bがアーム37に当接する領域で使用される。つまり、第2カム面40bのうち第1カム面40aに近い端部にアーム37が当接した状態でも、トーションバー34には負荷が作用した初期負荷状態になっており、従ってこの初期負荷状態でトーションバー34に初期弾性力が蓄えられているが、この初期負荷状態での弾性復元力は、着座した人が背もたれ5に凭れ掛かっても背もたれ5が急激に後傾しない程度の強さに設定されている。
【0040】
そこで、例えば図9に示すように、ハンドル軸41のうち他端部(内端部)には、カム部材40が第2カム面40bをアーム37に当接させた状態から外れないように移動を規制するストッパー手段としてビス46をねじ込み固定している。これにより、人がトーションバー34の弾力を弱めるようにハンドル軸41を回転操作しても、カム部材40の第2カム面40bがアーム37から外れることはない。その結果、安全性が確保される。
【0041】
他方、椅子の組み立てはビス46を取り外した状態て行われるる。すなわち、図9に示すようにカム部材40を左端に寄せた状態でハンドル軸41のねじ込んでいく。すると、アーム37は、無負荷状態から第1カム面40aが当接した負荷状態になり、更に、カム部材40の第2カム面40bが当接した負荷状態になる。そして、カム部材40がその第2カム面40bをアーム37に当接させた状態まで移動したら、ビス45をハンドル軸41にねじ込む。
【0042】
このように、トーションバー34に初期荷重が作用していない無負荷状態でハンドル軸41やカム部材40の取付けを行えるため、椅子の組み立てを楽に行えるのであり、かつ、既述のように使用状態での安全性も確保されている。そして、本実施形態のように第1カム面40aの傾斜角度を第2カム面40bの傾斜角度よりも大きい角度に設定していると、カム部材40の移動距離をできるだけ小さくした状態で無負荷状態から負荷状態に移行できるため、ベース3の左右巾をできるだけ小さくできると共に、ハンドル軸41及びカム部材40をセットするに際してハンドル軸41の回転数を抑制できるため、組み立ての手間も軽減できる。分解は逆の手順で行われる。
【0043】
さて、アーム37が回動すると、その当接面37bとベース3の上面との相対姿勢が変化する。従って、カム部材40が側面視での姿勢を変えることなく単に左右移動するに過ぎない場合は、アーム37とカム部材40とは、面接触するのは両者が特定の角度になっている状態のみで他の角度においては両者は線接触又は点接触することなる。
【0044】
これに対して本実施形態では、カム部材40はハンドル軸41の軸心回りに回動するようになっており、このため、アーム37の回動角度に関係なく、カム部材40のカム面40a,40bとアーム37の当接面37bとは面接触状態が保持される。このため、カム部材40が樹脂製であっても高い耐久性を確保できる。
【0045】
また、例えば図7に示すように、カム部材40の上端面はハンドル軸51の軸心回りに延びる円弧面40cになっている一方、ベース3における下向き開口凹所39の上内面はカム部材40が密着する円弧面になっており、このため、カム部材40はその回動姿勢に関係なく広い面積でベース3に支持されており、従って、アーム37を介して作用した大きな荷重を的確に支持できる。また、ハンドル軸41に曲げ力が作用することがないため、ハンドル軸41とカム部材40とにこじれが生じることはなく、このため、ハンドル軸41の回転操作も軽快に行える。これらは本実施形態の利点の一つである。
【0046】
(4).ロック機構・昇降作動機構
次に、背もたれ5の傾動制御機構と座の昇降作動機構とを簡単に説明しておく。例えば図6に示すように、センターブラケット32にはブロック状の第1ロック体48がビスで固定されており、第1ロック体48の後面には左右横長のロック溝49が多段に形成されている。
【0047】
第1ロック体48の後ろ側には、水平旋回することで第1ロック体48のロック溝49に嵌脱する第2ロック体50が配置されている。第2ロック体50は平面視で略左右方向に延びる形態であり、その一端部(右端部)を中心にして水平回動するようにベース3に設けたボス体51に嵌め込まれている。第1ロック体48の任意のロック溝49に第2ロック体50が選択的に嵌まったり、第2ロック体50が第1ロック体48から離脱したりすることにより、背もたれ5はある角度に固定されたり、自在に後傾動したりというように制御される。
【0048】
ベース3のボス体51にはロータ52が回転自在に嵌め込まれている。ロータ52にはコイル式トーションばね53が嵌め込れまており、コイル式トーションばね53により、第2ロック体50は第1ロック体49から離脱する方向に付勢されている。第2ロック体50の回動制御は、ロックワイヤー56を引くことで行われる。ロックワイヤー56の引き操作は制御装置55を介して第2ロック体50に伝達される。すなわち、ロックワイヤー56を引く操作により、第2ロック体50は第1ロック体49と係合可能なロック姿勢と係合不能なフリー姿勢とに交互に切り換わる。ロックワイヤー56はアウターシェル15の右側面に設けたレバー(図示せず)に連結されている。
【0049】
図5に示すうに、昇降作動機構は、脚支柱2のプッシュバルブを押し下げる第1レバー57と、第1レバー57を回動操作する第2レバー58とを備えている。両レバー57,58はベース3に回動可能に取付けられている。第2レバー58は側面視略三角形になっていて上端部に昇降用ワイヤー59が係止されている。
【0050】
昇降用レバー59を引くと第2レバー59が回動し、すると第1レバー57が第2レバー58の押圧作用によって下向き回動し、これによって脚支柱2のプッシュバルブが押し下げられる。昇降用ワイヤー59もアウターシェル15の右側面に設けたレバー(図示せず)に連結されている。
【0051】
(5).背フレームの取付け構造
次に、図11を参照して背フレーム7の取付け構造を説明する。既述のとおり中心軸10には補助ブラケット36が固定されており、この補助ブラケット36に背フレーム7が固定されている。
【0052】
補助ブラケット36は正面視でコの字の形態を成している一方、背フレーム7の内側面には補助ブラケット36の内部に嵌まり込むブロック状の突部61が形成されている。従って、突部61は3つの溝62で囲われている。背フレーム7のうち突部61の下方の部分は、補助ブラケット36を嵌め込むめたの切欠き部63になっている。
【0053】
背フレーム7の前端部は側面視で円弧状になっており、切欠き部63は円弧状の部分よりも後ろに形成されている。従って、背フレーム7は単に上から下に移動させただけでは補助ブラケット36に嵌め込むことはできず、O2に示すように、上向きに起こした状態でまず中心軸10の端部を背フレーム7の前端部に嵌め込み、それから背フレーム7を所定姿勢に倒すという操作により、補助ブラケット36と突部61とを嵌め合わせることができる。
【0054】
補助ブラケット36はボルト64とナット65とで突部61に固定されている。すなわち、突部61に内向き開口したナット保持溝66を形成し、このナット保持溝66に嵌め込んだナット65にボルト64をねじ込むことにより、補助ブラケット36を突部61に固定している。
【0055】
さて、中心軸10の補助ブラケット36に背フレーム7を固定することは従来から行われているが、単に補助ブラケット36に背フレーム7を重ねてボルトで締結しただけでは、背フレーム7の位置決めが面倒であると共に、背フレーム7の姿勢を保持しながらボルトのねじ込み作業をせねばならないため作業も厄介である。
【0056】
これに対して本実施形態では、突部61と補助ブラケット36とが嵌まり合うことで背フレーム7の左右位置が正確に固定され、しかも、補助ブラケット36を突部61に嵌め込むと背フレーム7は上向き抜け不能に保持されるため、ボルト64の回転操作に際して一々背フレーム7を手で保持している必要はない。このため組み立て作業を容易に行える。
【0057】
(6).補足説明(その1)
次に、実施形態の構成を補足説明しておく。図3に示すように、座受け部材16のリア軸受け部22の下端には、その外面に位置して手前に向けて突出したカバー片22bを設けており、このカバー片22bで背フレーム7のガイド長穴24を外側から覆っている。このため、人がガイド長穴24に指を差し込もうとしてもできず、このため指を挟むことを防止できる。
【0058】
図12(C)に明示するように、背フレーム7におけるガイド長穴24の上面は側面視で上向き凹状に湾曲しており、ガイド長穴24に嵌め込まれる上ブッシュ72もその上内面は側面視で上向き凹状に湾曲している(ガイド長穴24には下ブッシュも嵌め込まれるが、図では省略している。)。このため、ロッキングに際して角形スライダー25がガタつくことを防止できる。これは次の理由による。
【0059】
さて、ロッキングに際して角形スライダー25は背フレーム7に対して前後方向に相対動するが、ロッキングに際しての角形スライダー25の上面とガイド長穴24との当接点の軌跡は側面視で上向き凹状に湾曲しており、このため、角形スライダー25は側面視での姿勢を変えて相対動するが、ガイド長穴24の上面が側面視で直線であると、角形スライダー25の姿勢変化を許容するためガイド長穴24の上下内巾寸法は大きくせねばならず、すると、角形スライダー25と背フレーム7とにの間に遊びができて背フレーム7にガタ付きが発生し易くなり、かつ、座4はその後部が背フレーム7で支持されているため、座4もガタ付き易くなる。
【0060】
これに対して本実施形態のようにガイド長穴24の上内面24aを湾曲させると、角形スライダー25はガイド長穴24の上内面24aに面接触した状態で相対動するのであり、このため、ガイド長穴24と角形スライダー25との間には遊びは殆ど不要となり、その結果、背フレーム7のガタツキを防止できるのである。
【0061】
リアリンク12の前端部はピン12′で座受け部材16の後部に連結されている。このため、座受け部材16の後部にはピン12′が嵌まる穴16aを設けている。そして、ピン12′にはその軸心を通るタップ穴が貫通しており、座受け部材16に上から挿通したビスをタップ穴にねじ込むことで抜け不能に保持されている。この場合、ピン12′はタップ穴が上下方向に向くようにその姿勢を保持した状態で座受け部材16に嵌め込む必要がある。
【0062】
そこで、ピン12′の先端る一対の傾斜面12を形成することでピン12′の先端部をくさび状先端部12″と成している一方、座受け部材16におけるピン穴16aの奥部にはくさび状先端部12″がきっちり嵌まる嵌合溝を形成している。従って、ピン12′はタップ穴が上下に向く姿勢にしたときのみピン穴16aに奥まで差し込むことができて、正確に姿勢合わせすることができる。
【0063】
(7).補足説明(その2)
図12(A)(B)に示すように(図3も参照)、リアリンク12の後部は上向きに延びる支柱部12aになっており、この支柱部12aにホルダー12b′を介してランパーサポート12cを高さ調節可能に取付け、ランバーサポート12cでシート材9を支持している(ランバーサポート12cは足部12c′を有しており、この足部12c′をホルダー12b′に設けた空所12b″に挿入している。)。
【0064】
従って、ランバーサポート12cを昇降させるとシート材9のうち側面視で最も前向きに突出した部分の高さが変わり、すると、着座した人を後ろから支える高さを変えることができる(ロッキングするとリアリンク12が回動してランバーサポート12cは背フレーム7に対して相対的に後退動し、その結果、シート材9のテンションが緩む。)。
【0065】
この種のランバーサポート機能は、本願出願人が特開2008−295515号公報で開示している。そして、この公報の実施形態では、リアリンク12の支柱部12に側面視波形の凹凸部を形成して、この凹凸部に沿ってランバーサポートを上下動させている。本実施形態はこの先願出願の改良を成している。すなわち、先願公報では、ランバーサポート12cを昇降させるに際してランバーサポート12cは前後方向に移動することになり、このためシート材9が強く張られているとランバーサポート12cを昇降させにくい場合があり得る。
【0066】
これに対して本実施形態では、リアリンク12の支柱部12cに角形の係合穴12a′を上下に並べて複数個設け、ランバーサポート12cの足部12c′に設けた係合突起71を係合穴12a′に係合させている。この実施形態では、ランバーサポート12cは支柱部12aの前端面に当接した状態で上下動するため、ランバーサポート12cは前後動することなく上下動のみして係合突起71が係合穴12a′に嵌脱するのであり、このこため、ランバーサポート12cの昇降操作を軽い力で軽快に行うことができる。支柱部12aに係合突起を横向き突設して、足部12c′に係合穴を設けることも可能である。
【0067】
更に本実施形態の好適な変形例として、図12(B)に一点鎖線で示すように、支柱部12aの前端面と係合穴12a′の並び線とを側面視で前向き凹状に湾曲させることが可能である。これにより、ランバーサポート12cの上下動のストロークよりもシート材9の頂点の上下ストロークを大きくできる。つまり、シート材9の押圧位置を高さ調節できる範囲(上下ストローク)を、ランバーサポート12cの昇降ストロークよりも大きくできる。これは次の理由による。
【0068】
さて、ランバーサポート12cは側面視で前向き凸形に湾曲しており、支柱部12aの前端が直線の場合には、ランバーサポート12cは高さ位置に関係なく頂点部P0がシート材9に当接しており、このため、シート材9の頂点が上下に変化するストロークはランバーサポート12cの昇降ストロークと同じである。
【0069】
これに対して変形例を採用すると、ランバーサポート12cは上下動しつつ側面視での姿勢が変化する。すなわち、ランバーサポート12cは上下中間高さ位置ではその頂点部P0がシート材9に当接するが、ランバーサポート12cが中間高さ位置から下降すると、点線bで示すように、ランバーサポート12cは下端部端が手前に突出するように傾斜することになり、このため、シート材9に当接する位置Pbは頂点部P0よりも下に移行する。従って、シート材9は、ランバーサポート12cが平行移動した場合よりも下の部分が最も前となるように後ろから押される。
【0070】
ランバーサポート12cが中間高さ位置から上昇すると、点線aに示すように、ランバーサポート12cはその上端部が手前に突出するように傾斜することになり、このため、シート材9に当接する位置Pbは頂点部P0よりも下に移行する。従って、シート材9は、ランバーサポート12cが平行移動した場合よりも上の部分が最も前となるように後ろから押される。
【0071】
結局、変形例では、ランバーサポート12cの上下動を増幅してシート材9に伝えることができるのである。ランバーサポート12cが傾斜してもその姿勢をしっかりと保持できるようにするのが好ましい。この点については、例えば、ランバーサポート12cの足部12c′に上下2つの係合突起71を設けて、2つの係合突起71を2つの係合穴12a′に係合させる、という方法で対処できる。ランバーサポート12cと支柱部12aとを面接触させることによって姿勢を保持できる。
【0072】
敢えて述べるまでもないが、この変形例は上記した特開2008−295515号のように支柱部に山形の凹凸部を形成したものにも適用できる。また、ホルダー12bを使用せずにランバーサポート12cを支柱部12aに直接に装着してもよい。
【0073】
(8).その他
本願発明は、上記の実施形態の他にも様々に具体化できる。例えば上記の実施形態は座が背もたれにシンクロして後退しつつ後傾するタイプに適用しているが、背もたれのみが後傾するタイプにも適用できることは言うまでもない。敢えて述べるまでもないが、劇場用椅子のような固定式椅子にも適用できる。
【0074】
また、ばね手段としてはコイルばねや板ばねなど、各種のものを使用できる。カム部材の形態も必要に応じて変更できるのであり、更に、カム部材は必ずしもアームに当接させる必要はないのであり、例えば、カム部材でくさび部材を移動させてばね手段の弾力を変える方式も採用可能である。ストッパー手段は必ずしもねじ軸に設ける必要はないのであり、例えばベースのような他の部材に設けることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本願発明は椅子に適用して有用性を発揮する。従って産業上利用できる。
【符号の説明】
【0076】
1 脚装置
3 ベース
4 座
5 背もたれ
7 背フレーム
10 中心軸
34 ばね手段の一例としてのトーションバー
37 荷重作用体の一例としてのアーム
40 カム部材
40a 第1カム面40a
40b 第2カム面40b
41 ハンドル軸
42 ハンドル(摘まみ:グリップ)
46 ストッパー手段の一例としてのビス
【技術分野】
【0001】
本願発明は、背もたれがばね手段に抗して後傾動するロッキング椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
背もたれが後傾動するロッキング椅子では、背もたれの後傾動をばね手段で支持している。ばね手段としてはコイルスプリングやトーションバー、トーションバーコイルスプリング(キックばね)などが使用されている。いずれにしても、ロッキングに対するばね手段の抵抗の大きさを調節するための弾力調節装置を設けていることが一般的である。その一例として本願出願人は、特許文献1において、ハンドル付きねじ軸の回転操作によってカム部材を左右移動させる構造の弾力調節装置を開示した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願2008−313170号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さて、着座した人が背もたれに凭れ掛かるにおいて、凭れ掛かり初期においてばね手段に全く負荷が掛かっていないと、ばね手段は荷重がゼロの状態から変形するため、背もたれが急激に後傾する現象を呈して非常に危険である。従って、ばね手段は人が背もたれにもたれ掛かっていない状態においても初期荷重が付与されていなければならない。
【0005】
また、背もたれの後傾動に連動して座が後傾又は/後退するシンクロするタイプの椅子では、座の後傾動又は/後退動もばね手段で支持しているため、非ロッキング状態において座が後傾動又は/後退動しないようにばね手段に負荷を掛けておかねばならない。
【0006】
いずれにしても、ロッキング椅子ではばね手段には初期荷重(プリテンション)を掛けておかねばならない。そこで、椅子を組み立てるに際してはばね手段に初期荷重を掛けた状態で組み立てる方法があるが、ばね手段のばね力はかなり強いので、作業が厄介であるという問題がある。
【0007】
他方、弾力調節装置としてハンドル付きねじ軸を回転操作してカム部材を移動させる方式があり、この方式では、カム部材をばね手段に全く荷重が付与されていない位置まで移動させることにより、ばね手段に初期荷重を掛けることができる。しかし、この方式では、椅子の使用状態において誤ってハンドルを戻し回転させ過ぎて、カム部材をばね手段に荷重が掛かけない位置まで移動させてしまい、このため、上記したようにロッキング時に背もたれが急激に後傾する現象を呈するおそれがある。
【0008】
本願発明はこのような現状に鑑み成されたものであり、組み立て作業性と使用状態での安全性とに優れたロッキング椅子を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明に係る椅子は、脚の上端に設けたベースに、背もたれの後傾動を支持するばね手段と、前記ばね手段の初期弾性力を調節するための弾力調節装置とを設けており、前記弾力調節装置は、人が回転操作するハンドル付きねじ軸と、前記ねじ軸の回転によって当該ねじ軸の軸方向に移動するカム部材とを有しており、前記カム部材を移動させることで前記ばね手段に付与する初期荷重を変化させるようになっている。
【0010】
そして、請求項1の発明では、上記構成において、前記カム部材は、前記ばね手段に対して初期荷重を全く掛けていないフリー位置まで移動可能であり、かつ、前記ばね手段に初期荷重が掛かっている位置から初期荷重が掛かっていない位置に移動することを阻止するストッパー手段を後付けによって設けている。請求項2の発明は、請求項1において、前記ストッパー手段は前記ねじ軸にその軸心と直交した方向からねじ込まれるビスになっている。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1又は2において、前記ばね手段は左右方向に延びるトーションバーであり、前記トーションバーにはこれにねじりの初期荷重を付加する回動式のアームが取付けられており、前記アームに前記カム部材を当接させており、前記アームとカム部材との当接面をねじ軸の軸線に対して傾斜したカム面とすることにより、前記カム部材が移動すると前記アームの初期回動量が変化してトーションバーに対する初期荷重が変化するようになっている。
【0012】
更に請求項4の発明は、請求項3において、前記カム部材のカム面は、前記トーションバーに負荷を全く付与しない完全無負荷状態からトーションバーにある程度の負荷を付与する初期負荷状態までの範囲で機能する第1カム面と、前記初期負荷状態からトーションバーに最も大きな負荷を付与する最大負荷状態までの範囲で機能する第2カム面とを有しており、前記ねじ軸の軸線に対して第1カム面が傾斜した角度を前記ねじ軸の軸線に対して第2カム面が傾斜した角度よりも大きい角度に設定している、
【発明の効果】
【0013】
本願発明では、椅子の組み立てに際しては、ばね手段には、無負荷状態からねじ軸を回転操作して徐々に負荷(初期荷重)を掛けていくことができるため、椅子の組み立てを安全かつ簡単に行える。そして、椅子の組み立て後は、ストッパー手段により、カム部材はばね手段に対して荷重が掛かっている領域でしか移動しないため、ロッキングに際して背もたれが急激に後傾する現象を防止して安全性を確保できる。
【0014】
ストッパー手段としては様々のものを採用できるが、請求項2のようにビスを採用してこれをねじ軸にねじ込むと、ごく簡単な構造でカム部材を確実に移動停止させることができる。
【0015】
さて、カム部材のカム面を全長にわたって同一プロフィールとすることも可能であるが、カム部材がばね手段に対して負荷が掛からない位置まで移動する構成では、カム部材の移動ストロークが大きくなるため、カム部材の左右移動ストロークに起因してベースの左右巾寸法を大きくせねばならないおそれがある。この点、請求項4の発明を採用すると、カム部材は、無負荷状態から初期負荷状態に至るまでの移動距離を小さくしつつ、通常の使用状態では初期荷重を比例的に変化させることができるため、ばね手段を滑らかに弾力調節できる機能を損なうことなく、ベースの左右巾寸法をできるだけ小さくすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態に係る椅子の外観図であり、(A)は斜視図、(B)は側面図である。
【図2】全体的な分離斜視図である。
【図3】全体的な分離斜視図である。
【図4】(A)はベースを中心にした部分の全体的な斜視図、(B)は全体的な分離斜視図である。
【図5】ロッキング機構及び弾力調節装置を中心にした分離斜視図である。
【図6】ベースを中心にした部分の分離斜視図である。
【図7】ロッキング機構及び弾力調節装置を中心にした分離斜視図である。
【図8】(A)はベース部の正面図、(B)はベース部を下方から見た斜視図である。
【図9】(A)は初期負荷状態でのベース部の部分底面図、(B)は最大負荷状態での部分底面図である。
【図10】(A)は無負荷状態でのベースの部分底面図、(B)は無負荷状態でのベース部を下方から見た斜視図である。
【図11】背フレームの取付け構造を示す図であり、(A)(C)は分離図、(B)は中心軸の部分斜視図である。
【図12】補足説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、事務用に多用されている回転椅子に適用している。以下の説明(及び請求項)では方向を特定するための「前後」「左右」の文言を使用するが、これは人が普通に腰掛けた状態を基準にしている。
【0018】
(1).椅子の概要
まず、図1〜図5に基づいて椅子の概要を説明する。図1,2に示すように、椅子は、主要要素として、脚支柱2を有する脚装置1、脚支柱2の上端に固定されたベース3、ベース3の上方に配置された座4、背もたれ5を構成するバックフレーム8備えている。
【0019】
脚装置1は放射状に延びる複数本の枝足を備えており、各枝足の先端にはキャスタを設けている。なお、図では枝足は一部しか表示しいない。脚支柱2は伸縮自在なガスシリンダを使用している。椅子はまた、ベース3の左右両側において前後方向に延びる背フレーム7を有しており、背フレーム7の後部に上向きに延びる背支柱7aを一体に設け、左右の背支柱7aに正面視略四角形のバックフレーム8をねじで固定している。バックフレーム8にはメッシュ状のシート材9を張っている。従って、本実施形態ではバックフレーム8とシート材9とで背もたれ5が構成されている。
【0020】
図4(B)に示すように、背フレーム7は、その前端部を中心にして後傾するようにベース3に左右横長の中心軸10で連結されている。中心軸10は中空筒を使用しており、その内部にはばね手段の一例としてのトーションバーが内蔵されており、背もたれ5はトーションバーの弾性に抗して後傾動する(詳細は後述する。)。
【0021】
図3に符号11で示す部材はランバーサポート、図3に符号12で示す部材はロッキング時にランバーサポート11を相対的に後退動させるためのリアリンクである。リアリンク12の上端にランバーサポート11を取付けており、ロッキング時にはランバーサポート11が後退してシート材9に対するテンションが弱くなる(或いはシート材9が弛む。)。
【0022】
図2に示すように、座4は樹脂製のインナーシェル13にクッション材14を張った構造であり、インナーシェル13はその下方に配置した樹脂製のアウターシェル15に固定されている。アウターシェル15はその下方に配置された平面視略四角形の座受け部材16に前後位置調節可能に取り付けられている。
【0023】
図5から理解できるように、ベース3の前部側面には左右一対の支持筒18を左右外向きに突設しており、この支持筒18にフロントリンク19が回転自在に嵌め込まれている。他方、例えば図3に示すように、座受け部材16の前端部には下向きのフロント軸受け部20が形成されており、フロントリンク19がフロント軸受け部20にフロントピン21で連結されている。
【0024】
図3に示すように、座受け部材16の後部にはリア軸受け部22が下向きに突設されており、このリア軸受け部22の下端と背フレーム7とがリアピン23で連結されている。リアピン23は、背フレーム7の内側面に形成したガイド長穴24に角形スライダー25を介してスライド自在に嵌まっている。フロントリンク19が後傾動しつつリアピン23が背フレーム7のガイド長穴24をスライドすることにより、背フレーム7の後傾動が許容される。リアリンク12の前端はピン21で座受け部材16に連結されている。
【0025】
(2).ベースとその周辺部の構造の概略
次に、ベース3とその周辺部材の概略を、図6以下の図面も参照して説明する。ベース3はアルミダイキャストのような金属成形品であり、例えば図5に示すように、全体的には平面視で前後に長い長方形であり、その前部を除いて概ね上向きに開口した形態になっている。ベース3の後端部に脚支柱2が嵌まっている。
【0026】
ベース3のうちやや前寄り部位には、その左右側部を上向きに開口させた軸受け凹所28が形成されており、この軸受け凹所28に中心軸10が嵌まっている。中心軸10は、上下分離式の樹脂製ブッシュ29(特に図7参照)を介してベース3に回転自在に嵌まっている。ブッシュ29は押さえ板31(図6参照)で上下離反不能に保持されており、押さえ板31はベース3にビスで固定されている。
【0027】
例えば図5から理解できるように、左右中心軸10の基部は、正面視で略上向き開口コの字形のセンターブラケット32に溶接で固定されている。すなわち、左右中心軸10の基部をセンターブラケット32の側板32aに溶接している。従って、左右の中心軸10はセンターブラケット32と共に一体に回転(回動)する。
【0028】
図7に示すように、中心軸10の内部にはトーションバー34が配置されている(図7ではトーションバー34を引き出して表示している。)。トーションバー34は4本の単位棒を束ねることで全体として角柱状になっている。
【0029】
中心軸10はトーションバー34の外接円よりも大きい内径のパイプを素材にして製造されており、その外端部に角形の保持部35(図5参照)が嵌着又は潰し加工されており、保持部35にトーションバー34の端部が相対回転不能に嵌め込まれている。また、中心軸10の外端部には後ろ向きに延びる補助ブラケット36が溶接によって固定されており、補助ブラケット36が背フレーム7の前端部に固定されている(詳細は後述する。)。
【0030】
例えば図7に示すように、トーションバー34のうちセンターブラケット32の内部に入り込んだ部位には、前向きに延びる弾力調節用のアーム37が相対回転不能に嵌め込まれており、アーム37はベース3に設けた貫通穴38から前向きに突出している。また、例えば図8に示すように、ベース3の前部には下向き開口凹所39が形成されており、この下向き開口凹所39に弾力調節用のカム部材40が配置されている。
【0031】
カム部材40はアーム37に上方から当たっており、カム部材40が左右移動するとアーム37が上下に回動して、トーションバー34に対する初期荷重(プリテンション)が変化する。アーム37は金属製である。アーム37は、カム部材40の動きをトーションバー34に作用させる荷重作動体一例である。
【0032】
カム部材40にはトーションバー34と平行に延びる左右長手のハンドル軸(ねじ軸)41が挿通しており、ハンドル軸41はベース3の支持筒18に貫通している。ハンドル軸41の一端部(外端部)は右側の支持筒18から外側に突出しており、この突出した端部にハンドル(摘まみ)42が固定されている。例えば図4(B)に示すように、ベース3には上カバー43と下カバー44とを装着している。上カバー43は前後分離方式になっている。
【0033】
(3).ロッキング弾力調節機構
次に、アーム37やカム部材40等で構成されている弾力調節装置の詳細を説明する。図面では明示してないが、図7から理解できるように、中心軸10はセンターブラケット32の内部に入り込む内向き端部10aを有しており、この内向き端部にリング体45が嵌まっている。そして、アーム37には、リング45に上方から重なる張り出し部37aを設けている。このため、トーションバー44に曲げ荷重が作用することを防止できる。
【0034】
既述のとおり、アーム48にはカム部材40が上方から重なっている。従って、アーム48とカム部材40とは互いに重なる当接面が存在するが、図8から理解できるように、、カム部材40には、正面視でハンドル軸41の軸線に対して傾斜した第1カム面40a及び第2カム面40bを形成している。両カム面40a,40bはハンドル42に近づくほどハンドル軸41に近づくように傾斜しており、かつ、第1カム面40aの傾斜角度が第2カム面40aの傾斜角度よりも大きくなっている。
【0035】
第1カム面40aは椅子の組み立てや分解時に使用されるもので、椅子を使用する状態では第2カム面40bが使用される。アーム37の当接面(カム面)はカム部材40の第2カム面40bと密着するように設定している。なお、カム部材40及びアーム37のカム面40a,40b,37bは、ハンドル42から遠ざかるほどハンドル軸41の軸心に近づくように傾斜させてもよい。
【0036】
カム部材40は樹脂製又は金属製であり、その上部にハンドル軸(ねじ軸)51が挿通されている。そして、図示していないが、カム部材40にはナットが回転不能に嵌め込まれており、ハンドル軸41の雄ねじ部がこのナットにねじ込まれている(なおナットの位置は任意に設定でき、また、複数個のナットを嵌め込むことも可能である。)。ハンドル軸41は、カム部材40がアーム37に対して一方方向(右方向)から当接していることにより、回転のみする状態に抜け不能に保持されている。
【0037】
従って、摘まみ42に掴んでハンドル軸41を回転させるとカム部材40は左右移動する。図9(B)に示すように、カム部材40がトーションバー34に対する負荷を最も大きくした位置まで移動すると、カム部材40はベース3の内側面に当接してそれ以上の移動が規制ささる。
【0038】
カム部材40は、例えば図9、図10に示すように、カム部材40は、その第2カム面40bがアーム37に当接する領域で移動可能であることは当然として、第1カム面40aがアーム37に対向した領域まで移動させることが可能である。
【0039】
そして、既述のとおり、通常の使用状態では、カム部材40は、その第2カム面40bがアーム37に当接する領域で使用される。つまり、第2カム面40bのうち第1カム面40aに近い端部にアーム37が当接した状態でも、トーションバー34には負荷が作用した初期負荷状態になっており、従ってこの初期負荷状態でトーションバー34に初期弾性力が蓄えられているが、この初期負荷状態での弾性復元力は、着座した人が背もたれ5に凭れ掛かっても背もたれ5が急激に後傾しない程度の強さに設定されている。
【0040】
そこで、例えば図9に示すように、ハンドル軸41のうち他端部(内端部)には、カム部材40が第2カム面40bをアーム37に当接させた状態から外れないように移動を規制するストッパー手段としてビス46をねじ込み固定している。これにより、人がトーションバー34の弾力を弱めるようにハンドル軸41を回転操作しても、カム部材40の第2カム面40bがアーム37から外れることはない。その結果、安全性が確保される。
【0041】
他方、椅子の組み立てはビス46を取り外した状態て行われるる。すなわち、図9に示すようにカム部材40を左端に寄せた状態でハンドル軸41のねじ込んでいく。すると、アーム37は、無負荷状態から第1カム面40aが当接した負荷状態になり、更に、カム部材40の第2カム面40bが当接した負荷状態になる。そして、カム部材40がその第2カム面40bをアーム37に当接させた状態まで移動したら、ビス45をハンドル軸41にねじ込む。
【0042】
このように、トーションバー34に初期荷重が作用していない無負荷状態でハンドル軸41やカム部材40の取付けを行えるため、椅子の組み立てを楽に行えるのであり、かつ、既述のように使用状態での安全性も確保されている。そして、本実施形態のように第1カム面40aの傾斜角度を第2カム面40bの傾斜角度よりも大きい角度に設定していると、カム部材40の移動距離をできるだけ小さくした状態で無負荷状態から負荷状態に移行できるため、ベース3の左右巾をできるだけ小さくできると共に、ハンドル軸41及びカム部材40をセットするに際してハンドル軸41の回転数を抑制できるため、組み立ての手間も軽減できる。分解は逆の手順で行われる。
【0043】
さて、アーム37が回動すると、その当接面37bとベース3の上面との相対姿勢が変化する。従って、カム部材40が側面視での姿勢を変えることなく単に左右移動するに過ぎない場合は、アーム37とカム部材40とは、面接触するのは両者が特定の角度になっている状態のみで他の角度においては両者は線接触又は点接触することなる。
【0044】
これに対して本実施形態では、カム部材40はハンドル軸41の軸心回りに回動するようになっており、このため、アーム37の回動角度に関係なく、カム部材40のカム面40a,40bとアーム37の当接面37bとは面接触状態が保持される。このため、カム部材40が樹脂製であっても高い耐久性を確保できる。
【0045】
また、例えば図7に示すように、カム部材40の上端面はハンドル軸51の軸心回りに延びる円弧面40cになっている一方、ベース3における下向き開口凹所39の上内面はカム部材40が密着する円弧面になっており、このため、カム部材40はその回動姿勢に関係なく広い面積でベース3に支持されており、従って、アーム37を介して作用した大きな荷重を的確に支持できる。また、ハンドル軸41に曲げ力が作用することがないため、ハンドル軸41とカム部材40とにこじれが生じることはなく、このため、ハンドル軸41の回転操作も軽快に行える。これらは本実施形態の利点の一つである。
【0046】
(4).ロック機構・昇降作動機構
次に、背もたれ5の傾動制御機構と座の昇降作動機構とを簡単に説明しておく。例えば図6に示すように、センターブラケット32にはブロック状の第1ロック体48がビスで固定されており、第1ロック体48の後面には左右横長のロック溝49が多段に形成されている。
【0047】
第1ロック体48の後ろ側には、水平旋回することで第1ロック体48のロック溝49に嵌脱する第2ロック体50が配置されている。第2ロック体50は平面視で略左右方向に延びる形態であり、その一端部(右端部)を中心にして水平回動するようにベース3に設けたボス体51に嵌め込まれている。第1ロック体48の任意のロック溝49に第2ロック体50が選択的に嵌まったり、第2ロック体50が第1ロック体48から離脱したりすることにより、背もたれ5はある角度に固定されたり、自在に後傾動したりというように制御される。
【0048】
ベース3のボス体51にはロータ52が回転自在に嵌め込まれている。ロータ52にはコイル式トーションばね53が嵌め込れまており、コイル式トーションばね53により、第2ロック体50は第1ロック体49から離脱する方向に付勢されている。第2ロック体50の回動制御は、ロックワイヤー56を引くことで行われる。ロックワイヤー56の引き操作は制御装置55を介して第2ロック体50に伝達される。すなわち、ロックワイヤー56を引く操作により、第2ロック体50は第1ロック体49と係合可能なロック姿勢と係合不能なフリー姿勢とに交互に切り換わる。ロックワイヤー56はアウターシェル15の右側面に設けたレバー(図示せず)に連結されている。
【0049】
図5に示すうに、昇降作動機構は、脚支柱2のプッシュバルブを押し下げる第1レバー57と、第1レバー57を回動操作する第2レバー58とを備えている。両レバー57,58はベース3に回動可能に取付けられている。第2レバー58は側面視略三角形になっていて上端部に昇降用ワイヤー59が係止されている。
【0050】
昇降用レバー59を引くと第2レバー59が回動し、すると第1レバー57が第2レバー58の押圧作用によって下向き回動し、これによって脚支柱2のプッシュバルブが押し下げられる。昇降用ワイヤー59もアウターシェル15の右側面に設けたレバー(図示せず)に連結されている。
【0051】
(5).背フレームの取付け構造
次に、図11を参照して背フレーム7の取付け構造を説明する。既述のとおり中心軸10には補助ブラケット36が固定されており、この補助ブラケット36に背フレーム7が固定されている。
【0052】
補助ブラケット36は正面視でコの字の形態を成している一方、背フレーム7の内側面には補助ブラケット36の内部に嵌まり込むブロック状の突部61が形成されている。従って、突部61は3つの溝62で囲われている。背フレーム7のうち突部61の下方の部分は、補助ブラケット36を嵌め込むめたの切欠き部63になっている。
【0053】
背フレーム7の前端部は側面視で円弧状になっており、切欠き部63は円弧状の部分よりも後ろに形成されている。従って、背フレーム7は単に上から下に移動させただけでは補助ブラケット36に嵌め込むことはできず、O2に示すように、上向きに起こした状態でまず中心軸10の端部を背フレーム7の前端部に嵌め込み、それから背フレーム7を所定姿勢に倒すという操作により、補助ブラケット36と突部61とを嵌め合わせることができる。
【0054】
補助ブラケット36はボルト64とナット65とで突部61に固定されている。すなわち、突部61に内向き開口したナット保持溝66を形成し、このナット保持溝66に嵌め込んだナット65にボルト64をねじ込むことにより、補助ブラケット36を突部61に固定している。
【0055】
さて、中心軸10の補助ブラケット36に背フレーム7を固定することは従来から行われているが、単に補助ブラケット36に背フレーム7を重ねてボルトで締結しただけでは、背フレーム7の位置決めが面倒であると共に、背フレーム7の姿勢を保持しながらボルトのねじ込み作業をせねばならないため作業も厄介である。
【0056】
これに対して本実施形態では、突部61と補助ブラケット36とが嵌まり合うことで背フレーム7の左右位置が正確に固定され、しかも、補助ブラケット36を突部61に嵌め込むと背フレーム7は上向き抜け不能に保持されるため、ボルト64の回転操作に際して一々背フレーム7を手で保持している必要はない。このため組み立て作業を容易に行える。
【0057】
(6).補足説明(その1)
次に、実施形態の構成を補足説明しておく。図3に示すように、座受け部材16のリア軸受け部22の下端には、その外面に位置して手前に向けて突出したカバー片22bを設けており、このカバー片22bで背フレーム7のガイド長穴24を外側から覆っている。このため、人がガイド長穴24に指を差し込もうとしてもできず、このため指を挟むことを防止できる。
【0058】
図12(C)に明示するように、背フレーム7におけるガイド長穴24の上面は側面視で上向き凹状に湾曲しており、ガイド長穴24に嵌め込まれる上ブッシュ72もその上内面は側面視で上向き凹状に湾曲している(ガイド長穴24には下ブッシュも嵌め込まれるが、図では省略している。)。このため、ロッキングに際して角形スライダー25がガタつくことを防止できる。これは次の理由による。
【0059】
さて、ロッキングに際して角形スライダー25は背フレーム7に対して前後方向に相対動するが、ロッキングに際しての角形スライダー25の上面とガイド長穴24との当接点の軌跡は側面視で上向き凹状に湾曲しており、このため、角形スライダー25は側面視での姿勢を変えて相対動するが、ガイド長穴24の上面が側面視で直線であると、角形スライダー25の姿勢変化を許容するためガイド長穴24の上下内巾寸法は大きくせねばならず、すると、角形スライダー25と背フレーム7とにの間に遊びができて背フレーム7にガタ付きが発生し易くなり、かつ、座4はその後部が背フレーム7で支持されているため、座4もガタ付き易くなる。
【0060】
これに対して本実施形態のようにガイド長穴24の上内面24aを湾曲させると、角形スライダー25はガイド長穴24の上内面24aに面接触した状態で相対動するのであり、このため、ガイド長穴24と角形スライダー25との間には遊びは殆ど不要となり、その結果、背フレーム7のガタツキを防止できるのである。
【0061】
リアリンク12の前端部はピン12′で座受け部材16の後部に連結されている。このため、座受け部材16の後部にはピン12′が嵌まる穴16aを設けている。そして、ピン12′にはその軸心を通るタップ穴が貫通しており、座受け部材16に上から挿通したビスをタップ穴にねじ込むことで抜け不能に保持されている。この場合、ピン12′はタップ穴が上下方向に向くようにその姿勢を保持した状態で座受け部材16に嵌め込む必要がある。
【0062】
そこで、ピン12′の先端る一対の傾斜面12を形成することでピン12′の先端部をくさび状先端部12″と成している一方、座受け部材16におけるピン穴16aの奥部にはくさび状先端部12″がきっちり嵌まる嵌合溝を形成している。従って、ピン12′はタップ穴が上下に向く姿勢にしたときのみピン穴16aに奥まで差し込むことができて、正確に姿勢合わせすることができる。
【0063】
(7).補足説明(その2)
図12(A)(B)に示すように(図3も参照)、リアリンク12の後部は上向きに延びる支柱部12aになっており、この支柱部12aにホルダー12b′を介してランパーサポート12cを高さ調節可能に取付け、ランバーサポート12cでシート材9を支持している(ランバーサポート12cは足部12c′を有しており、この足部12c′をホルダー12b′に設けた空所12b″に挿入している。)。
【0064】
従って、ランバーサポート12cを昇降させるとシート材9のうち側面視で最も前向きに突出した部分の高さが変わり、すると、着座した人を後ろから支える高さを変えることができる(ロッキングするとリアリンク12が回動してランバーサポート12cは背フレーム7に対して相対的に後退動し、その結果、シート材9のテンションが緩む。)。
【0065】
この種のランバーサポート機能は、本願出願人が特開2008−295515号公報で開示している。そして、この公報の実施形態では、リアリンク12の支柱部12に側面視波形の凹凸部を形成して、この凹凸部に沿ってランバーサポートを上下動させている。本実施形態はこの先願出願の改良を成している。すなわち、先願公報では、ランバーサポート12cを昇降させるに際してランバーサポート12cは前後方向に移動することになり、このためシート材9が強く張られているとランバーサポート12cを昇降させにくい場合があり得る。
【0066】
これに対して本実施形態では、リアリンク12の支柱部12cに角形の係合穴12a′を上下に並べて複数個設け、ランバーサポート12cの足部12c′に設けた係合突起71を係合穴12a′に係合させている。この実施形態では、ランバーサポート12cは支柱部12aの前端面に当接した状態で上下動するため、ランバーサポート12cは前後動することなく上下動のみして係合突起71が係合穴12a′に嵌脱するのであり、このこため、ランバーサポート12cの昇降操作を軽い力で軽快に行うことができる。支柱部12aに係合突起を横向き突設して、足部12c′に係合穴を設けることも可能である。
【0067】
更に本実施形態の好適な変形例として、図12(B)に一点鎖線で示すように、支柱部12aの前端面と係合穴12a′の並び線とを側面視で前向き凹状に湾曲させることが可能である。これにより、ランバーサポート12cの上下動のストロークよりもシート材9の頂点の上下ストロークを大きくできる。つまり、シート材9の押圧位置を高さ調節できる範囲(上下ストローク)を、ランバーサポート12cの昇降ストロークよりも大きくできる。これは次の理由による。
【0068】
さて、ランバーサポート12cは側面視で前向き凸形に湾曲しており、支柱部12aの前端が直線の場合には、ランバーサポート12cは高さ位置に関係なく頂点部P0がシート材9に当接しており、このため、シート材9の頂点が上下に変化するストロークはランバーサポート12cの昇降ストロークと同じである。
【0069】
これに対して変形例を採用すると、ランバーサポート12cは上下動しつつ側面視での姿勢が変化する。すなわち、ランバーサポート12cは上下中間高さ位置ではその頂点部P0がシート材9に当接するが、ランバーサポート12cが中間高さ位置から下降すると、点線bで示すように、ランバーサポート12cは下端部端が手前に突出するように傾斜することになり、このため、シート材9に当接する位置Pbは頂点部P0よりも下に移行する。従って、シート材9は、ランバーサポート12cが平行移動した場合よりも下の部分が最も前となるように後ろから押される。
【0070】
ランバーサポート12cが中間高さ位置から上昇すると、点線aに示すように、ランバーサポート12cはその上端部が手前に突出するように傾斜することになり、このため、シート材9に当接する位置Pbは頂点部P0よりも下に移行する。従って、シート材9は、ランバーサポート12cが平行移動した場合よりも上の部分が最も前となるように後ろから押される。
【0071】
結局、変形例では、ランバーサポート12cの上下動を増幅してシート材9に伝えることができるのである。ランバーサポート12cが傾斜してもその姿勢をしっかりと保持できるようにするのが好ましい。この点については、例えば、ランバーサポート12cの足部12c′に上下2つの係合突起71を設けて、2つの係合突起71を2つの係合穴12a′に係合させる、という方法で対処できる。ランバーサポート12cと支柱部12aとを面接触させることによって姿勢を保持できる。
【0072】
敢えて述べるまでもないが、この変形例は上記した特開2008−295515号のように支柱部に山形の凹凸部を形成したものにも適用できる。また、ホルダー12bを使用せずにランバーサポート12cを支柱部12aに直接に装着してもよい。
【0073】
(8).その他
本願発明は、上記の実施形態の他にも様々に具体化できる。例えば上記の実施形態は座が背もたれにシンクロして後退しつつ後傾するタイプに適用しているが、背もたれのみが後傾するタイプにも適用できることは言うまでもない。敢えて述べるまでもないが、劇場用椅子のような固定式椅子にも適用できる。
【0074】
また、ばね手段としてはコイルばねや板ばねなど、各種のものを使用できる。カム部材の形態も必要に応じて変更できるのであり、更に、カム部材は必ずしもアームに当接させる必要はないのであり、例えば、カム部材でくさび部材を移動させてばね手段の弾力を変える方式も採用可能である。ストッパー手段は必ずしもねじ軸に設ける必要はないのであり、例えばベースのような他の部材に設けることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本願発明は椅子に適用して有用性を発揮する。従って産業上利用できる。
【符号の説明】
【0076】
1 脚装置
3 ベース
4 座
5 背もたれ
7 背フレーム
10 中心軸
34 ばね手段の一例としてのトーションバー
37 荷重作用体の一例としてのアーム
40 カム部材
40a 第1カム面40a
40b 第2カム面40b
41 ハンドル軸
42 ハンドル(摘まみ:グリップ)
46 ストッパー手段の一例としてのビス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脚の上端に設けたベースに、背もたれの後傾動を支持するばね手段と、前記ばね手段の初期弾性力を調節するための弾力調節装置とを設けており、前記弾力調節装置は、人が回転操作するハンドル付きねじ軸と、前記ねじ軸の回転によって当該ねじ軸の軸方向に移動するカム部材とを有しており、前記カム部材を移動させることで前記ばね手段に付与する初期荷重を変化させるようになっている構成であって、
前記カム部材は、前記ばね手段に対して初期荷重を全く掛けていないフリー位置まで移動可能であり、かつ、前記ばね手段に初期荷重が掛かっている位置から初期荷重が掛かっていない位置に移動することを阻止するストッパー手段を後付けによって設けている、
ロッキング椅子。
【請求項2】
前記ストッパー手段は前記ねじ軸にその軸心と直交した方向からねじ込まれるビスである、
請求項1に記載したロッキング椅子。
【請求項3】
前記ばね手段は左右方向に延びるトーションバーであり、前記トーションバーにはこれにねじりの初期荷重を付加する回動式のアームが取付けられており、前記アームに前記カム部材を当接させており、前記アームとカム部材との当接面をねじ軸の軸線に対して傾斜したカム面とすることにより、前記カム部材が移動すると前記アームの初期回動量が変化してトーションバーに対する初期荷重が変化するようになっている、
請求項1又は2に記載したロッキング椅子。
【請求項4】
前記カム部材のカム面は、前記トーションバーに負荷を全く付与しない完全無負荷状態からトーションバーにある程度の負荷を付与する初期負荷状態までの範囲で機能する第1カム面と、前記初期負荷状態からトーションバーに最も大きな負荷を付与する最大負荷状態までの範囲で機能する第2カム面とを有しており、前記ねじ軸の軸線に対して第1カム面が傾斜した角度を前記ねじ軸の軸線に対して第2カム面が傾斜した角度よりも大きい角度に設定している、
請求項3に記載したロッキング椅子。
【請求項1】
脚の上端に設けたベースに、背もたれの後傾動を支持するばね手段と、前記ばね手段の初期弾性力を調節するための弾力調節装置とを設けており、前記弾力調節装置は、人が回転操作するハンドル付きねじ軸と、前記ねじ軸の回転によって当該ねじ軸の軸方向に移動するカム部材とを有しており、前記カム部材を移動させることで前記ばね手段に付与する初期荷重を変化させるようになっている構成であって、
前記カム部材は、前記ばね手段に対して初期荷重を全く掛けていないフリー位置まで移動可能であり、かつ、前記ばね手段に初期荷重が掛かっている位置から初期荷重が掛かっていない位置に移動することを阻止するストッパー手段を後付けによって設けている、
ロッキング椅子。
【請求項2】
前記ストッパー手段は前記ねじ軸にその軸心と直交した方向からねじ込まれるビスである、
請求項1に記載したロッキング椅子。
【請求項3】
前記ばね手段は左右方向に延びるトーションバーであり、前記トーションバーにはこれにねじりの初期荷重を付加する回動式のアームが取付けられており、前記アームに前記カム部材を当接させており、前記アームとカム部材との当接面をねじ軸の軸線に対して傾斜したカム面とすることにより、前記カム部材が移動すると前記アームの初期回動量が変化してトーションバーに対する初期荷重が変化するようになっている、
請求項1又は2に記載したロッキング椅子。
【請求項4】
前記カム部材のカム面は、前記トーションバーに負荷を全く付与しない完全無負荷状態からトーションバーにある程度の負荷を付与する初期負荷状態までの範囲で機能する第1カム面と、前記初期負荷状態からトーションバーに最も大きな負荷を付与する最大負荷状態までの範囲で機能する第2カム面とを有しており、前記ねじ軸の軸線に対して第1カム面が傾斜した角度を前記ねじ軸の軸線に対して第2カム面が傾斜した角度よりも大きい角度に設定している、
請求項3に記載したロッキング椅子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−136039(P2011−136039A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−298049(P2009−298049)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000139780)株式会社イトーキ (833)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000139780)株式会社イトーキ (833)
【Fターム(参考)】
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