説明

ロボットシステム

【課題】ロボットに取り付けられたスイベルジョイント及び作業用機器並びに配管を取り外すことなく、スイベルジョイントの消耗部品を容易に交換できるロボットシステムを提供することと。
【解決手段】ロボット本体(マニピュレータ)の手首部10にスイベルジョイント2を介して作業用機器9が取り付けられているロボットシステムにおいて、スイベルジョイント2の側方に、当該スイベルジョイント2の回動軸心と平行に軸体32を配設し、前記軸体32を支軸としてスイベルジョイント2を、使用時にあるべき位置から完全に位置ズレさせ得るようにしてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ロボット本体の手首部にスイベルジョイントを介して作業用機器が取り付けられているロボットシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記ロボットシステムに使用されるスイベルジョイントは、一般に消耗部品であるスリップリング、回転軸流体シール材等を多く備えており(特許文献1)、これら消耗部品の交換を行う場合、以下に示す(1)〜(4)のような作業を行なわなければならなかった。
(1)スイベルジョイントに取り付けられた作業用機器を取り外す。
(2)スイベルジョイントをロボットから取り外し、消耗部品の交換を行う。なお、スイベルジョイント自体は上部側からの分解作業により上記消耗部品を比較的簡単に交換できるようになっている。
(3) 消耗部品を交換したスイベルジョイントをロボットに取り付ける。
(4)前記スイベルジョイントの下部に作業用機器を取り付ける。
【0003】
ところで、上記作業用機器は、重量バランスが悪い上重量も100kgを超えることから取り付け及び取り外しにかなりの困難性を伴い、また作業場の確保や安全上の諸注意や治工具が必要であることから、作業時間も一時間程度を要することになる。
【0004】
さらに、重量物であるが故に作業の困難さから位置決めピンや孔の変形や破損に起因する取り付け位置誤差も発生し、作業後の位置修正作業も必要であった。
【0005】
そして、配管は必要な本数分、流体管継手を用いて配管しているが、ホースの抜き差しに時間を要し、かつ復帰時の接続間違いなどを起こす危険性があった。
【特許文献1】特開2001−277168
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、この発明では、ロボットに取り付けられたスイベルジョイント及び作業用機器並びに配管を取り外すことなく、スイベルジョイントの消耗部品を容易に交換できるロボットシステムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(請求項1記載の発明)
この発明は、ロボットの手首部にスイベルジョイントを介して作業用機器が取り付けられているロボットシステムにおいて、スイベルジョイントの側方に、当該スイベルジョイントの回動軸心と平行に軸体を配設し、前記軸体を支軸としてスイベルジョイントを、使用時にあるべき位置から完全に位置ズレさせ得るようにしてある。
【0008】
(請求項2記載の発明)
この発明は、上記請求項1記載の発明に関し、スイベルジョイントを使用時にあるべき位置から完全に位置ズレさせることができる位置変え手段が、軸体と、前記軸体に対して回動可能に且つ軸体の下方への移動を阻止する保持部と、前記保持部に設けられたブラケットと、軸体下部に設けられたブラケットとを備えるものであり、保持部側ブラケットを手首部側フランジにボルト止めすると共に、軸体下部側のブラケットをスイベルジョイントの下部側ブランジにボルト止めするものとしてある。
【0009】
(請求項3記載の発明)
この発明は、上記請求項2記載の発明に関し、位置変え手段は、ボルトを取り外すことにより離脱可能である。
【発明の効果】
【0010】
この発明のロボットシステムによると、ロボットに取り付けられたスイベルジョイント及び作業用機器並びに配管を取り外すことなく、スイベルジョイントの消耗部品を容易に交換できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下にこの発明のロボットシステムを実施するための最良の形態としての実施例について詳細に説明する。
【実施例1】
【0012】
図1はこの発明の実施例のロボットシステムであり、マニピュレータ1の手首10にスイベルジョイント2及び作業用機器9を取り付けた外観図、図2は
前記手首10に取り付けられたスイベルジョイント2の断面図、図3はスイベルジョイント2及び作業用機器9を使用時にあるべき位置から完全に位置ズレさせた状態を示す部分断面図、図4はスイベルジョイント2の分解順序の説明図を示している。
【0013】
(マニピュレータ1、スイベルジョイント2及び作業用機器9の位置関係)
このマニピュレータ1は、図1や図2に示すように、その手首部10にスイベルジョイント2を介して作業用機器9である溶接機が取り付けられており、位置変え手段3を介してスイベルジョイント2及び作業用機器9を使用時にあるべき位置から完全に位置ズレさせた状態となるようにしてある。
【0014】
(マニピュレータ1の手首10とスイベルジョイント2との取り付け)
マニピュレータ1の手首部10の下面には、図2や図3に示すように、フランジ11がボルト12で止めてあり、前記ボルト12はその頭部がフランジ11内に完全に埋設される態様としてある。また、前記フランジ11の周部には、図2に示すようにボルト貫通孔13を穿設してあると共に、前記ボルト貫通孔13よりもかなり大径の螺子孔14を設けてある。
【0015】
他方、スイベルジョイント2の上部には、図2や図3に示すように、上記フランジ11と接合されるフランジ20を設けてあり、前記フランジ20には上記ボルト貫通孔13と対向する位置に螺子孔21をそれぞれ設けてある。
【0016】
そして、上記したマニピュレータ1側のフランジ11とスイベルジョイント2側のフランジ20が、ボルトB1により接合一体化されている。なお、上記螺旋孔14はマニピュレータ1とスイベルジョイント2の接合一体には全く寄与しておらず、位置変え手段3のフランジ11への取り付けに寄与するものである。
【0017】
(スイベルジョイント2について)
このスイベルジョイント2では、図4において、ロングボルトLBを外した後、フランジ20やスイベル中心軸SJ等を上方に抜き取る態様で取り外す(分解する)。これらの作業により円筒型流体シール材OR及び円盤型スリップリングSR類の消耗部品を交換作業できるようにしてある。
【0018】
(スイベルジョイント2と作業用機器9の取り付け
スイベルジョイント2の下部には、図2や図3に示すように、スイベルジョイント本体2Aからはみ出した部分を有するフランジ22を設けてあり、前記フランジ22のはみ出し部分には上記螺子孔14と同等の大きさの螺子孔23を設けてある。なお、このスイベルジョイント2のフランジ22には作業用機器9がボルト24により取り付けられている。
【0019】
(位置変え手段3の構造とその取り付け)
位置変え手段3は、図2や図3に示すように、ブラケット30と、前記ブラッケット30に設けられた保持部31と、前記保持部31に回動自在に設けられた軸体32と、前記軸体32に固定されたブラケット33と、保持部31に対して軸体32を抜け止め状態にする抜け止め具34とを備えているものである。
【0020】
上記位置変え手段3は、図2や図3に示すように、ブラケット30に設けた貫通孔30aを介してボルトB2を螺子孔14に螺入し、更に、ブラケット33の貫通孔33aを介してボルトB3を螺子孔23に螺入態様で、フランジ11及びフランジ22に取り付けられている。
【0021】
なお、この位置変え手段3は、通常時において着けておいてもよいし、必要に応じて着けるようにしてもよい。
【0022】
(この位置変え手段3を介してスイベルジョイント2及び作業用機器9を、使用時にあるべき位置から完全に位置ズレさせた状態にする作業、並びにスイベルジョイント2の消耗部品の交換作業等について)
(1) 先ず、上記したマニピュレータ1側のフランジ11とスイベルジョイント2のフランジ20を、接合一体化しているボルトB1を外す。
(2) 次に、図2や図3に示すように、上記軸体32を支点にしてスイベルジョイント2及び作業用機器9を回動させて、スイベルジョイント2及び作業用機器9を使用時にあるべき位置から完全に位置ズレさせた状態とする作業を行う。
この位置ズレ作業において、図1に示すホースHの抜き取りをする必要は全くない。
(3) 図3や図4において、ロングボルトLBを外した後、フランジ20やスイベル中心軸SJ等を上方に抜き取る態様で取り外す(分解できる)。これらの作業により円筒型流体シール材OR及び円盤型スリップリングSR類の消耗部品を交換作業できることになる。
【0023】
(この実施例のロボットシステムの優れた点について)
このロボットシステムであれば、上述した如く軸体32を支軸にしてスイベルジョイント2及び作業用機器9を回動させて、スイベルジョイント2及び作業用機器9を使用時にあるべき位置から完全に位置ズレさせた状態とする作業を行うことにより、前記スイベルジョイント2が分解可能となり、その結果、消耗部品の交換作業に際して、スイベルジョイント2及び作業用機器9並びに配管を取り外すことなく、スイベルジョイント2の消耗部品を容易に交換できることになる。
【0024】
したがって、このロボットシステムでは、以下の優れた効果を奏する。
(1) 先行技術のものでは、上述した如く作業用機器9は、重量バランスが悪い上重量も100kgを超えることから取り付け及び取り外しにかなりの困難性を伴い、また作業場の確保や安全上の諸注意や治工具が必要であることから、作業時間も一時間程度を要することになっていた。
【0025】
これに対して、困難性を有するスイベルジョイント2及び作業用機器9の取り付け及び取り外し作業がないので、作業時間が激減することになる。
【0026】
(2) 先行技術のものでは、重量物であるが故に作業の困難さから位置決めピンや孔の変形や破損に起因する取り付け位置誤差も発生し、作業後の位置修正作業も必要であった。
【0027】
これに対して、ロボットシステムでは、フランジ11、フランジ20及びボルトB2を剛性の高いものとすれば、上記のような面倒な作業は不必要である。
【0028】
(3) 先行技術のものでは、ホースHは必要な本数分、流体管継手を用いて配管しているが、ホースHの抜き差しに時間を要し、かつ復帰時の接続間違いなどを起こす危険性があった。
【0029】
これに対して、このロボットシステムでは、ホースHの抜き差し作業が存在しないので、時間が短縮できると共に復帰時の接続間違いなどを起こす危険性は全く無くなる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明の実施例のロボットシステムであり、マニピュレータの手首にスイベルジョイント及び作業用機器を取り付けた外観図。
【図2】前記手首に取り付けられたスイベルジョイントの断面図。
【図3】前記スイベルジョイント及び作業用機器を使用時にあるべき位置から完全に位置ズレさせた状態を示す部分断面図。
【図4】前記スイベルジョイントの分解順序の説明図。
【符号の説明】
【0031】
1 マニピュレータ
10 手首部
11 フランジ
2 スイベルジョイント
20 フランジ
22 フランジ
3 位置変え手段
30 螺子孔
30a 貫通孔
31 保持部
32 軸体
33 ブラケット
33a 貫通孔
34 抜け止め具
9 作業用機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットの手首部にスイベルジョイントを介して作業用機器が取り付けられているロボットシステムにおいて、スイベルジョイントの側方に、当該スイベルジョイントの回動軸心と平行に軸体を配設し、前記軸体を支軸としてスイベルジョイントを、使用時にあるべき位置から完全に位置ズレさせ得るようにしてあることを特徴とするロボットシステム。
【請求項2】
スイベルジョイントを使用時にあるべき位置から完全に位置ズレさせることができる位置変え手段が、軸体と、前記軸体に対して回動可能に且つ軸体の下方への移動を阻止する保持部と、前記保持部に設けられたブラケットと、軸体下部に設けられたブラケットとを備えるものであり、保持部側ブラケットを手首部側フランジにボルト止めすると共に、軸体下部側のブラケットをスイベルジョイントの下部側ブランジにボルト止めするものとしてあることを特徴とする請求項1記載のロボットシステム。
【請求項3】
位置変え手段は、ボルトを取り外すことにより離脱可能であることを特徴とする請求項2記載のロボットシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−80455(P2008−80455A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−264204(P2006−264204)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(000111085)ニッタ株式会社 (588)
【Fターム(参考)】