ワイヤ切断装置用取付板、ワイヤ切断装置用取付板含むワイヤ切断装置、及びワイヤ切断装置によって実行されるワイヤ切断プロセス
【課題】切断される部材を取り付けるための装置の改善。
【解決手段】ワークピース接合面152を有する板15と、板15内に少なくとも部分的に形成された少なくとも1つの溝を含む、ワイヤ切断装置にワークピースを取り付けるための装置。
【解決手段】ワークピース接合面152を有する板15と、板15内に少なくとも部分的に形成された少なくとも1つの溝を含む、ワイヤ切断装置にワークピースを取り付けるための装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はワイヤ切断装置用の取付板に関する。それはそのような取付板を含むワイヤ切断装置にも関しており、その装置は少なくとも1つの切断される部材を切断するように設計されており、少なくとも2つのワイヤガイドシリンダ間に張られた少なくとも1つのワイヤレイヤを含み、前記ワイヤレイヤはワイヤガイドシリンダの表面に備わる溝によってその場所に保持されており、少なくとも1つの支持台に固定される少なくとも1つの切断される部材を圧迫しながら、変位手段は切断される部材と前記ワイヤレイヤの間の相対前進運動を実現するために提供され、前記ワイヤは往復あるいは連続運動により移動するために適応されている。更に、本発明は、このようなワイヤ切断装置によって実行されるワイヤ切断プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤレイヤのワイヤあるいは切断される部材の変位を実行させることを単に引用したタイプのワイヤ切断装置とプロセスは、特に鉄、水晶、そしてシリカを用いた電子部品産業においては既知であり、太陽電池産業でも多結晶・単結晶のシリコン材料、あるいはGaAs、InP、GGG、あるいは再び水晶、人工サファイヤ、そしてセラミック材料のような材料の薄いスライス物を得るために用いられている。例えば半導体技術のような技術においては、このスライス物はウェハと呼ばれている。
【0003】
既知の装置において、切断部は平行に配置した1組の少なくとも2つのシリンダを含んでいる。ワイヤガイドと呼ばれるこれらのシリンダは、レイヤのワイヤ間の間隔、つまりスライス物の厚さを画定するそれらの表面に彫り込まれた溝を有する。
【0004】
切断される部材はインゴットと名付けられている。それはワイヤレイヤに垂直に動作する支持台に固定されている。それが動作する速度は、切り込み速度を画定する。ワイヤの更新とその張力の制御は、切断部の外側に位置するワイヤ管理部と呼ばれる部分で適切に行われる。切断は研磨剤、つまりワイヤに固定された砥粒あるいはスラリーとして提供される遊離砥粒のいずれかによって実現される。ワイヤが運搬剤として振舞うことはめったに無い。切断される部材は、しばしば四辺形、擬似四辺形、あるいは円形ベースを持つ円筒形状となる。
【0005】
例えば、図13に示されるような既知のワイヤ切断装置において、切断される部材110は支持台120に間接的な方法で固定される。切断される部材110は通常、「ビーム:beam」として知られる仮板112に接着され、次にそれは通常、「接着板:gluing plate」として知られるアセンブリ板114に接着される。次にアセンブリ板114はアセンブリねじ116でインゴットホルダー、例えば支持台120のガイドレールに締結した架台118に固定され、そしてこの支持台120に固定される。
【0006】
仮板112は使い捨て部品である。それはガラスや人工材料、例えば熱可塑性材料あるいは熱硬化性材料あるいは複合材料でできており、切断ワイヤは切断される部材110を切断した後にこれを貫通する。
【0007】
ガラス製の仮板は非常に良好な安定性を提供し、得られたスライス物のそりのリスクを排除する。通常、ガラス板は低コストで製造される。しかしながら、それらは穴及び/又は溝及び/又はチャネルなどのキャビティを備えることを必要とするや否や高コスト製品となる。なぜなら、そのようなキャビティはガラス板を機械加工することによってのみ得られ、機械加工は高価なプロセスであるからである。
【0008】
人工材料でできた仮板は、板の様々なデザインが製造オプションによりはるかに容易に実現できると言う利点を有しているが、得られたスライス物のそり変形が起こる欠点を有しているかもしれない。また、熱可塑性材料あるいは熱硬化性材料あるいは複合材料のような人工材料でできた板は、ガラス板よりも単価が高い。
【0009】
アセンブリ板114は、例えば鋼やアルミニウムのような金属材料でできている。それは再利用するように設計されており、仮板112が前工程の間それに接着していたので、それは各切断作業後に表面を洗浄しなければならない。
【0010】
通常の切断プロセスにおいて、切断される部材は切断作業が終了するとワイヤ切断装置から取り外される。それは切断面あるいは切断ギャップによって互いに分離した1組の平行なスライス物として現れる。そしてそれらのベースには、これらのスライス物はガラスあるいは人工材料の仮板の一部であるラグに取り付けられており、その中にワイヤレイヤのワイヤが部分的に貫通している。
【0011】
スラリーのような研磨剤の存在により、スライス物は毛細管効果によって互いにくっつく傾向にあり、この効果は切断プロセスがすでに実行されている間に開始するが、一旦切断プロセスが完了すると強調され、スライス物は依然としてラグにくっついたままとなる。
【0012】
その後、インゴットホルダー、接着板、ビーム、そしてラグに取り付けられたスライス物の中で切断された部材から成る全保持セットが切断装置から取り除かれる。これは、スライス物がワイヤ切断領域の外で行われる清浄作業に託されることを意味している。まず、依然として保持セットに取り付けられているスライス物は、更なる洗浄あるいはすすぎ作業の前に洗浄バスあるいはすすぎバスの中に浸漬される。スライス物の洗浄、すすぎ、そして分離ステップは、切断装置の外で行われる。
【0013】
本発明の1つの目的は、上述の欠点を克服するための取付板、ワイヤ切断装置、及びワイヤ切断プロセスを提供することである。
【発明の開示】
【0014】
第1態様によると、本発明はセラミック材料の押し出し成型によって得られ、その面の1つに少なくとも1つの溝を含むワイヤ切断装置用取付板に関する。
【0015】
取付板の特定の構成によると、それはその相対する2つの側面の間に延びる少なくとも1つのチャネルを含んでいる。
【0016】
取付板の更なる構成は添付の請求項2、4、及び5に規定されている。
【0017】
第2態様によると、本発明は、少なくとも1つの切断される部材を切断するように設計されており、少なくとも2つのワイヤガイドシリンダ間に張られた少なくとも1つのワイヤレイヤを含み、前記ワイヤレイヤはワイヤガイドシリンダの表面に備わる溝によってその場所に保持されており、少なくとも1つの支持台に固定される少なくとも1つの切断される部材を圧迫しながら、変位手段は切断される部材と前記ワイヤレイヤの間の相対前進運動を実現するために提供され、前記ワイヤは往復あるいは連続運動により移動するために適応されており、更に前記支持台は前記切断される部材を前記支持台のガイドレールと協調する架台に固定するための固定手段を含んでおり、前記固定手段は前記切断される部材が接着される本発明の第1態様に係る取付板と前記取付板を前記架台に直接留める留め手段を含んでいるワイヤ切断装置に関する。
【0018】
前記支持台は、切断装置の切断ヘッド内のクランプ台に取り付けられている板である。
【0019】
このような装置は、従来技術における2つの隣接する板、つまりアセンブリ板と仮板の代わりに、切断される部材を支持台に固定するために1つの取付板を含むのが有利である。切断ワイヤが切断される部材を切断した後でそれを切断するので、この取付板は再利用できない。従来の2つの板の代わりに1つの取付板のみを使用することによって、仮板をアセンブリ板から取り外す作業が削除され、時間とコストの削減につながる。
【0020】
ワイヤ切断装置の特定の構成によると、取付板は少なくとも1つの流体供給手段と接続されている少なくとも1つのチャネルを含んでいる。
【0021】
ワイヤ切断装置の更なる構成は添付の請求項7〜11に見出される。
【0022】
第3態様によると、本発明は、少なくとも1つのワイヤレイヤが少なくとも2つのワイヤガイドシリンダ間に張られ、前記ワイヤレイヤはワイヤガイドシリンダの表面に備わる溝によってその場所に保持されており、少なくとも1つの支持台に固定される少なくとも1つの切断される部材を圧迫しながら、前記ワイヤは往復あるいは連続運動により移動するために適応されており、切断は前記切断される部材と前記ワイヤレイヤの間で進む相対運動によって実現することによって、少なくとも1つの部材を切断するワイヤ切断プロセスに関する。また、ワイヤ切断プロセスは、本発明の第2態様に係るワイヤ切断装置によって実行され、前記装置は少なくとも1つのチャネルを備える取付板を有し、ワイヤレイヤのワイヤは切断スロットによって分離されるスライス物が生成される間、切断される部材を通り抜ける。
【0023】
取付板のチャネルは、切断プロセスの異なるステップにおいて異なる目的のために使用することができる。それは、洗浄液あるいはすすぎ液を取付板内で循環させるために使用することができる。それはまた、冷却剤あるいは加熱剤を取付板内で循環させるために使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明は、添付の図面を参照しながら、これらに限定されることがない例として与えられる取付板及びワイヤ切断装置における以下に挙げる特定の実施形態の詳細な記述を読むことによってより良く理解される。
【0025】
【図1】本発明によるワイヤ切断装置の正面図である。
【図2】架台上で、切断ワイヤに平行でワイヤレイヤに垂直な断面内に留められた取付板の第1実施形態を示す図である。
【図3】図2と類似した、取付板の第2実施形態の部分図である。
【図4】図2と類似した、取付板の第3実施形態を示す図である。
【図5】切断作業前の図2の取付板を、切断ワイヤに平行でワイヤレイヤに垂直な断面で示す図である。
【図6】切断作業後の図5の取付板を、切断スロットに沿った横断面で示す図である。
【図7】取付板の第4実施形態の第1実施例を、図5のA−A断面で示す図である。
【図8】〜
【図12】図7に類似した、取付板の第4実施形態のそれぞれ第2、第3、第4、第5、第6実施例を示す図である。
【図13】上述した、切断される部材が仮板とアセンブリ板を介して支持板に固定される従来技術による方法を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1を参照すると、ワイヤ切断装置1はフレーム2とワイヤガイドシリンダ3、4を含んでおり、この2つはフレーム2上にそれらの軸が平行となるように取り付けられており、その装置は2より多いシリンダ、例えば4つのシリンダを有することが理解される。
【0027】
ワイヤ6は図示されない供給スプールから取り外され、そして切断部に平行ワイヤの少なくとも1つのレイヤ7を形成するために、ワイヤガイドシリンダ3、4に巻かれる。ワイヤ6はその後、例えば受け取りスプールあるいは回収器のような適当な装置(図示されない)に回収される。
【0028】
1つあるいは2つの切断される部材10、あるいはより多くの部材10、例えば硬質材料でできたインゴットが、切断ヘッドの内側の支持台20の上に取り付けられる。
【0029】
支持台20はコラム8とモーター9によって鉛直Z方向にシフトできるので、切断される部材10はワイヤレイヤ7に対して押し付けられる。
【0030】
ワイヤガイドシリンダ3、4の周辺部には、ワイヤレイヤ7の隣接するワイヤ間の間隔を画定する溝が掘り込まれており、つまりそれは切断されるスライス物の厚みに相当する。これらのスライス物は切断スロットによって互いに分離される。
【0031】
図示されている実施形態において、ワイヤ6はワイヤガイドシリンダ3、4によって連続あるいは往復動作するように延伸され、また誘導され、引っ張られる。このワイヤ6は0.08〜0.3mm、特に0.1〜0.2mmの間の直径を有するばね鋼でできているのが好ましく、それは硬質材料や、特に半導体、太陽電池とその据付、あるいはセラミックス産業用のより特定の化合物、例えばシリコン、セラミックス、III−V族及びII−VI族の元素の化合物、GGG(ガドリニウム−ガリウム−ガーネット)、サファイヤ等のブロックを切断して、少なくとも約0.08〜0.1mm、多くとも8〜15mm、例えば10mmあるいは12mmの厚みを有するスライス物にするためである。研磨剤は市販の製品であり、ダイヤモンド、炭化ケイ素、アルミナ等がワイヤに固定されているか、あるいは砥粒のための運搬剤として役立つ液体内に浮遊する遊離砥粒を使用することができる。
【0032】
切断される各々の部材10は、接着剤やセメントや他の接着剤によって、支持台20上に取り付けられている取付台15の接着面152(図2参照)に接着される。
【0033】
ここで図2を参照しながら、取付台15が支持台20上に取り付けられる方法を記述する。これは図示されている例における架台18であるインゴットホルダーによって実現される。このために、架台18は支持台20のスライドレール(図示されず)と協調できる側面溝22を含んでおり、これによって前記架台18は前記支持台20上に取り付けることができる。図2の右側に図示されるように、架台18は留めねじ16を受け入れるために設計された少なくとも2つの貫通穴24を有している。別形において、ねじ16は留め溝26内に取り付けられる円錐形の頭部を有することができ、ナットが前記ねじに穴24を通してねじ込まれている。都合がよければ、図13を参照しながら記述されている従来技術の架台118に類似した架台18が使用されてもよい。
【0034】
接着面152と相対するその面154には、取付板15が架台18によって支持台20上に取り付けられるときに、取付板15がY及びZ方向に垂直に向かう方向に互いに平行に伸びる留め溝26を有している。これらの留め溝26は、図2の左側に図示されているように、台形の輪郭形状を有しているのが好ましい。その代わりとしては、図3に図示されるように、溝26は長方形の輪郭形状を有している。
【0035】
図2の右側に図示されているように、前記留め溝26はスキッド40と協調するように設計されている。スキッド40は留め溝26の形状に相補的な台形の輪郭形状を有しているのが好ましい。輪郭形状が台形のとき、あり溝アセンブリが実現する。スキッド40は前記留め溝26の中へスライドさせながら差し込まれ、架台18と取付板15を一緒に保持するために、留めねじ16を受け入れるねじ穴42を架台18に向き合うと思われる面に有している。スキッド40は再利用可能である。
【0036】
留め溝26は取付板15内に押し出しプロセスを含むその製造中に実現されることが望ましい。このため、取付板15は押し出し成型可能な材料でできている。
【0037】
本発明によると、取付板15はセラミック材料のような硬脆材料でできている。特に、前記セラミック材料はシリカ系セラミックが可能である。更に特に、それはせっ器が可能である。
【0038】
そのような材料は、特に有利である。この材料でできている取付板15は、実際に従来技術のガラス製仮板の特性と似た安定性のある特性を有しており、切断される部材の切断後に得られるスライス物がそりを起こさないことを保証している。
【0039】
更に、ガラスとは反対にこの材料は、押し出しプロセスによる取付板15の製造中に台形のような複雑な輪郭形状を有する留め溝26を作ることができる利点を有している。
【0040】
それに加えて、セラミック材料でできた取付板15は、例えば熱可塑性材料や熱硬化性材料や複合材料のような人工材料でできた従来技術の仮板と比較して低価格である利点を有している。更に、セラミック材料は前記人工材料よりもはるかによい安定性のある特性を提供する。したがって、それは対費用効果をふまえて製造でき、より経済的であり、それゆえエンドユーザーによりよい所有コストを提供する利点を示す。
【0041】
本発明による取付板15を使用すると、切断される部材10を支持台20に固定し、再びそれを取り外すのが容易となる。従来技術の仮板とアセンブリ板の両方の代わりに、1つの取付板15が使用される。仮板をアセンブリ板から取り外し、アセンブリ板の取付面を清浄する作業が削除される。
【0042】
図4は取付板15の第3実施形態を示しており、図2の留め溝26よりも大きな1つの留め溝260を含んでいる点で図2の第1実施形態と異なり、それら全てによってカバーされる領域と実質的に同一の領域をカバーすることができる。前記1つの留め溝260は、留めねじ16を受け入れるねじ穴42を備えた単一スキッド400と協調するように設計されている。図4において、留め溝260とスキッド400は、あり溝アセンブリを実現することができるように、相補的な台形形状を有している。
【0043】
取付板15は、留め溝26によってこの板が汎用的に使用できるように設計される。スキッド40は様々な種類の架台18に簡単に適用できる。スキッド40は取付板15の溝26内に容易に挿入され、その後留めねじ16によって取付板15は架台18に固定される。
【0044】
本発明による取付板15の別の実施形態を、図5及び6を参照しながらここに記述する。本実施形態によると、取付板15は取付板15のバルク内に実現された少なくとも1つのチャネル30を備えている。前記チャネル30は押し出しプロセスによって取付板15が製造されるときに作られるのが好ましい。
【0045】
図5に図示される例において、取付板は円形断面をもつ6つのチャネル30を備えている。しかしながら、これらは異なる数存在していたり、例えば正方形や卵形などの異なる断面形状を有していることも可能である。チャネル30は取付板15の面152、154に実質的に平行な方向に伸びており、ワイヤ切断装置1の支持台20上に取付板15が取り付けられるとき、ワイヤレイヤ7のワイヤに垂直になるように揃えられている。チャネル30は、架台18上の取付板15を留めるために設計された面154よりも接着面152に近く、前記接着面152と前記チャネル30の間の距離は標識32によって記されているのが好ましい。この距離32は接着面152とこの接着面から最も離れたチャネル30の周縁部との間の最短距離として画定される。全てのチャネル30は前記接着面から同一距離にあるのが望ましい。
【0046】
チャネル30によってワイヤ切断プロセスの1ステップとしてスライス物を直接洗浄及び/又はすすぐことができる。前記洗浄及び/又はすすぎステップは、ワイヤ切断装置外で完了される、後に行われる伝統的な洗浄によって補うことができる。それらは洗浄液及び/又はすすぎ液の循環を認めるために適用され、それらは従来技術から知られている製品であってもよい。すすぎ液は単なる水も可能である。
【0047】
研磨剤:油、グリコール、...として使用される製品の性質によって、すすぎ液によってスライス物をすすぐ単一作業を実行することで十分な場合もあれば、洗浄液によるスライス物の第1洗浄とすすぎ液によるそれらの第2のすすぎといった2段階の連続作業を実行する場合もある。
【0048】
図6は本発明によるワイヤ切断プロセスの実際の切断作業後における図5の取付板15を示している。切断される部材10を貫通して、切断スロットから分離した薄いスライス物が生成された後、ワイヤレイヤ7のワイヤは取付板15の中へ貫入する。支持台20とワイヤレイヤ7の相対運動は、切断ワイヤが洗浄あるいはすすぎ液が循環するチャネル30へ到達し前記チャネル30の中へ貫入するように調整される。切断ワイヤはチャネル30に開口35を作り、前記開口35は切断されたばかりの部材10へ向いている。
【0049】
図6は取付板15を切断スロットに沿った横断面で示しており、切断ワイヤがギャップ領域33を通ってチャネル30へ下りていくことによって加工痕の付いた取付板15を表わしている。このように、チャネル30を循環する洗浄あるいはすすぎ液は開口35を通して切断スロットの中へ流れ出ることができる。こうして洗浄あるいはすすぎ液は、切断作業が適切に行われた直後に、切断される部材10から得られたスライス物の間のギャップ中へと流れ出る。そのとき前記スライス物は依然としてラグ上に互いに平行に保持されている。したがって、切断プロセスによって得られたスライス物は、研磨剤の毛細管効果のもとで互いにくっつく時間がない。
【0050】
チャネル30は、冷却液を取付板15内に循環させるために、切断プロセスの前のステージでも使用することができる。ワイヤレイヤのワイヤが決められた切断深さに到達するや否や、切断される部材の前記決められた切断深さを超えて残っている部分を冷却する冷却液がチャネル30内に循環される。冷却液の循環は取付板15を介して熱流動を増加させ、これによって取付板15と切断される部材10の間の温度勾配を減少させる。そして、切断される部材10の熱応力が減少し、そのため前記切断される部材10における変形及び欠陥の発生リスクを抑える。前記決められた切断深さは、切断される部材10の性質及び/又は切断作業に使用される研磨剤に依存する。いくつかの場合において、冷却剤の循環は、切断作業の開始時に始めることが可能である。他の場合においては、それは若干遅く開始することが可能である。
【0051】
チャネル30は、まだ架台18上にくっついているスライス物の洗浄/すすぎの後、スライス物を取付板15から取り外すのを容易にするために、切断プロセスの更なるステージで使用することも可能である。例えば温かい液体、暖気、あるいは蒸気のような加熱流体は、取付板15のチャネル30内を循環し、取付板15の温度を上昇させ、特に取付板15とスライス物が掛かっているラグの間の界面の温度を上昇させる。これは次に、取付板15の接着面152の温度を上昇させ、接着剤の接着効果の弱化を助ける。また、接着剤の接着効果の弱化のために、加熱流体の代わりに酸を使用することもできる。ウェハの取り外し作業の間、取り外されたスライス物は受け取り器11内に収集される(図1参照)。
【0052】
図7、8、9、10、11及び12は、図5のA−A断面における取付板15を示しており、前記取付板15内に4つのチャネル30を配置した6つの実施例を示している。
【0053】
図7において、チャネル30は平行であり、それらの一端においてそれらに垂直に伸びるマニフォルド34と連通しており、実質的にそれらと同一平面内にある。図8において、チャネル30は平行であり、それらのそれぞれの端においてそれらに垂直に伸びるマニフォルド34と連通しており、実質的にそれらと同一平面内にある。それぞれのマニフォルド34は所望の流体を供給する供給管36に接続されている。
【0054】
図9において、チャネル30は平行で、取付板15の1つの側面に開放している。それらの一端において、それらは所望の流体を供給するためのマニフォルド38と連通している。図10において、チャネル30は平行で、取付板15の反対の側面に開放している。それらのそれぞれの端において、それらは所望の流体を供給するためのマニフォルド38と連通している。それぞれのマニフォルド38は1つの入口と4つの出口39を有しており、それぞれのチャネル30のそれぞれの終端はこれらの出口39の1つを介して所望の流体を供給する。
【0055】
図11において、チャネル30は平行である。それらのそれぞれはその終端の1つでそれに平行に伸びる供給管36と連通しており、実質的にそれと同一平面内にある。図12において、チャネル30は平行である。それらのそれぞれはそのそれぞれの終端でそれに平行に伸びる供給管36と連通しており、実質的にそれと同一平面内にある。
【0056】
本発明に係る一実施形態によると、取付板15はチャネル30を備えないとき15mm以下の厚さを有し、チャネル30を備えるとき18mmの厚さを有する。後者の場合、接着面152とチャネル30との間の距離32は6mm以下が好ましい。別形において、取付板15はより厚く、すなわち20mm以上であることも可能である。
【0057】
本発明は図に示された実施形態及び実施例に制限されること無く、当業者が理解できるであろう別形を網羅していることが理解される。
【0058】
例えば、支持台20とワイヤレイヤ7の間の相対運動はワイヤレイヤ7を動かすことによって、そしてすべての適当な機械的、空圧、そして液圧手段によっても同等に良好に実現できる。
【0059】
同様に、1つの支持台20の代わりに、ワイヤ切断装置1は2以上の支持台を有し、それぞれが予め決められた数のインゴットホルダーを把持することもできる。
【0060】
同様に、取付板15は図7〜12とは異なるチャネル30のネットワークを有することもでき、4つとは異なるが依然として図示されているような傾向を備えた多くのチャネル30を有することが可能である。
【技術分野】
【0001】
本発明はワイヤ切断装置用の取付板に関する。それはそのような取付板を含むワイヤ切断装置にも関しており、その装置は少なくとも1つの切断される部材を切断するように設計されており、少なくとも2つのワイヤガイドシリンダ間に張られた少なくとも1つのワイヤレイヤを含み、前記ワイヤレイヤはワイヤガイドシリンダの表面に備わる溝によってその場所に保持されており、少なくとも1つの支持台に固定される少なくとも1つの切断される部材を圧迫しながら、変位手段は切断される部材と前記ワイヤレイヤの間の相対前進運動を実現するために提供され、前記ワイヤは往復あるいは連続運動により移動するために適応されている。更に、本発明は、このようなワイヤ切断装置によって実行されるワイヤ切断プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤレイヤのワイヤあるいは切断される部材の変位を実行させることを単に引用したタイプのワイヤ切断装置とプロセスは、特に鉄、水晶、そしてシリカを用いた電子部品産業においては既知であり、太陽電池産業でも多結晶・単結晶のシリコン材料、あるいはGaAs、InP、GGG、あるいは再び水晶、人工サファイヤ、そしてセラミック材料のような材料の薄いスライス物を得るために用いられている。例えば半導体技術のような技術においては、このスライス物はウェハと呼ばれている。
【0003】
既知の装置において、切断部は平行に配置した1組の少なくとも2つのシリンダを含んでいる。ワイヤガイドと呼ばれるこれらのシリンダは、レイヤのワイヤ間の間隔、つまりスライス物の厚さを画定するそれらの表面に彫り込まれた溝を有する。
【0004】
切断される部材はインゴットと名付けられている。それはワイヤレイヤに垂直に動作する支持台に固定されている。それが動作する速度は、切り込み速度を画定する。ワイヤの更新とその張力の制御は、切断部の外側に位置するワイヤ管理部と呼ばれる部分で適切に行われる。切断は研磨剤、つまりワイヤに固定された砥粒あるいはスラリーとして提供される遊離砥粒のいずれかによって実現される。ワイヤが運搬剤として振舞うことはめったに無い。切断される部材は、しばしば四辺形、擬似四辺形、あるいは円形ベースを持つ円筒形状となる。
【0005】
例えば、図13に示されるような既知のワイヤ切断装置において、切断される部材110は支持台120に間接的な方法で固定される。切断される部材110は通常、「ビーム:beam」として知られる仮板112に接着され、次にそれは通常、「接着板:gluing plate」として知られるアセンブリ板114に接着される。次にアセンブリ板114はアセンブリねじ116でインゴットホルダー、例えば支持台120のガイドレールに締結した架台118に固定され、そしてこの支持台120に固定される。
【0006】
仮板112は使い捨て部品である。それはガラスや人工材料、例えば熱可塑性材料あるいは熱硬化性材料あるいは複合材料でできており、切断ワイヤは切断される部材110を切断した後にこれを貫通する。
【0007】
ガラス製の仮板は非常に良好な安定性を提供し、得られたスライス物のそりのリスクを排除する。通常、ガラス板は低コストで製造される。しかしながら、それらは穴及び/又は溝及び/又はチャネルなどのキャビティを備えることを必要とするや否や高コスト製品となる。なぜなら、そのようなキャビティはガラス板を機械加工することによってのみ得られ、機械加工は高価なプロセスであるからである。
【0008】
人工材料でできた仮板は、板の様々なデザインが製造オプションによりはるかに容易に実現できると言う利点を有しているが、得られたスライス物のそり変形が起こる欠点を有しているかもしれない。また、熱可塑性材料あるいは熱硬化性材料あるいは複合材料のような人工材料でできた板は、ガラス板よりも単価が高い。
【0009】
アセンブリ板114は、例えば鋼やアルミニウムのような金属材料でできている。それは再利用するように設計されており、仮板112が前工程の間それに接着していたので、それは各切断作業後に表面を洗浄しなければならない。
【0010】
通常の切断プロセスにおいて、切断される部材は切断作業が終了するとワイヤ切断装置から取り外される。それは切断面あるいは切断ギャップによって互いに分離した1組の平行なスライス物として現れる。そしてそれらのベースには、これらのスライス物はガラスあるいは人工材料の仮板の一部であるラグに取り付けられており、その中にワイヤレイヤのワイヤが部分的に貫通している。
【0011】
スラリーのような研磨剤の存在により、スライス物は毛細管効果によって互いにくっつく傾向にあり、この効果は切断プロセスがすでに実行されている間に開始するが、一旦切断プロセスが完了すると強調され、スライス物は依然としてラグにくっついたままとなる。
【0012】
その後、インゴットホルダー、接着板、ビーム、そしてラグに取り付けられたスライス物の中で切断された部材から成る全保持セットが切断装置から取り除かれる。これは、スライス物がワイヤ切断領域の外で行われる清浄作業に託されることを意味している。まず、依然として保持セットに取り付けられているスライス物は、更なる洗浄あるいはすすぎ作業の前に洗浄バスあるいはすすぎバスの中に浸漬される。スライス物の洗浄、すすぎ、そして分離ステップは、切断装置の外で行われる。
【0013】
本発明の1つの目的は、上述の欠点を克服するための取付板、ワイヤ切断装置、及びワイヤ切断プロセスを提供することである。
【発明の開示】
【0014】
第1態様によると、本発明はセラミック材料の押し出し成型によって得られ、その面の1つに少なくとも1つの溝を含むワイヤ切断装置用取付板に関する。
【0015】
取付板の特定の構成によると、それはその相対する2つの側面の間に延びる少なくとも1つのチャネルを含んでいる。
【0016】
取付板の更なる構成は添付の請求項2、4、及び5に規定されている。
【0017】
第2態様によると、本発明は、少なくとも1つの切断される部材を切断するように設計されており、少なくとも2つのワイヤガイドシリンダ間に張られた少なくとも1つのワイヤレイヤを含み、前記ワイヤレイヤはワイヤガイドシリンダの表面に備わる溝によってその場所に保持されており、少なくとも1つの支持台に固定される少なくとも1つの切断される部材を圧迫しながら、変位手段は切断される部材と前記ワイヤレイヤの間の相対前進運動を実現するために提供され、前記ワイヤは往復あるいは連続運動により移動するために適応されており、更に前記支持台は前記切断される部材を前記支持台のガイドレールと協調する架台に固定するための固定手段を含んでおり、前記固定手段は前記切断される部材が接着される本発明の第1態様に係る取付板と前記取付板を前記架台に直接留める留め手段を含んでいるワイヤ切断装置に関する。
【0018】
前記支持台は、切断装置の切断ヘッド内のクランプ台に取り付けられている板である。
【0019】
このような装置は、従来技術における2つの隣接する板、つまりアセンブリ板と仮板の代わりに、切断される部材を支持台に固定するために1つの取付板を含むのが有利である。切断ワイヤが切断される部材を切断した後でそれを切断するので、この取付板は再利用できない。従来の2つの板の代わりに1つの取付板のみを使用することによって、仮板をアセンブリ板から取り外す作業が削除され、時間とコストの削減につながる。
【0020】
ワイヤ切断装置の特定の構成によると、取付板は少なくとも1つの流体供給手段と接続されている少なくとも1つのチャネルを含んでいる。
【0021】
ワイヤ切断装置の更なる構成は添付の請求項7〜11に見出される。
【0022】
第3態様によると、本発明は、少なくとも1つのワイヤレイヤが少なくとも2つのワイヤガイドシリンダ間に張られ、前記ワイヤレイヤはワイヤガイドシリンダの表面に備わる溝によってその場所に保持されており、少なくとも1つの支持台に固定される少なくとも1つの切断される部材を圧迫しながら、前記ワイヤは往復あるいは連続運動により移動するために適応されており、切断は前記切断される部材と前記ワイヤレイヤの間で進む相対運動によって実現することによって、少なくとも1つの部材を切断するワイヤ切断プロセスに関する。また、ワイヤ切断プロセスは、本発明の第2態様に係るワイヤ切断装置によって実行され、前記装置は少なくとも1つのチャネルを備える取付板を有し、ワイヤレイヤのワイヤは切断スロットによって分離されるスライス物が生成される間、切断される部材を通り抜ける。
【0023】
取付板のチャネルは、切断プロセスの異なるステップにおいて異なる目的のために使用することができる。それは、洗浄液あるいはすすぎ液を取付板内で循環させるために使用することができる。それはまた、冷却剤あるいは加熱剤を取付板内で循環させるために使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明は、添付の図面を参照しながら、これらに限定されることがない例として与えられる取付板及びワイヤ切断装置における以下に挙げる特定の実施形態の詳細な記述を読むことによってより良く理解される。
【0025】
【図1】本発明によるワイヤ切断装置の正面図である。
【図2】架台上で、切断ワイヤに平行でワイヤレイヤに垂直な断面内に留められた取付板の第1実施形態を示す図である。
【図3】図2と類似した、取付板の第2実施形態の部分図である。
【図4】図2と類似した、取付板の第3実施形態を示す図である。
【図5】切断作業前の図2の取付板を、切断ワイヤに平行でワイヤレイヤに垂直な断面で示す図である。
【図6】切断作業後の図5の取付板を、切断スロットに沿った横断面で示す図である。
【図7】取付板の第4実施形態の第1実施例を、図5のA−A断面で示す図である。
【図8】〜
【図12】図7に類似した、取付板の第4実施形態のそれぞれ第2、第3、第4、第5、第6実施例を示す図である。
【図13】上述した、切断される部材が仮板とアセンブリ板を介して支持板に固定される従来技術による方法を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1を参照すると、ワイヤ切断装置1はフレーム2とワイヤガイドシリンダ3、4を含んでおり、この2つはフレーム2上にそれらの軸が平行となるように取り付けられており、その装置は2より多いシリンダ、例えば4つのシリンダを有することが理解される。
【0027】
ワイヤ6は図示されない供給スプールから取り外され、そして切断部に平行ワイヤの少なくとも1つのレイヤ7を形成するために、ワイヤガイドシリンダ3、4に巻かれる。ワイヤ6はその後、例えば受け取りスプールあるいは回収器のような適当な装置(図示されない)に回収される。
【0028】
1つあるいは2つの切断される部材10、あるいはより多くの部材10、例えば硬質材料でできたインゴットが、切断ヘッドの内側の支持台20の上に取り付けられる。
【0029】
支持台20はコラム8とモーター9によって鉛直Z方向にシフトできるので、切断される部材10はワイヤレイヤ7に対して押し付けられる。
【0030】
ワイヤガイドシリンダ3、4の周辺部には、ワイヤレイヤ7の隣接するワイヤ間の間隔を画定する溝が掘り込まれており、つまりそれは切断されるスライス物の厚みに相当する。これらのスライス物は切断スロットによって互いに分離される。
【0031】
図示されている実施形態において、ワイヤ6はワイヤガイドシリンダ3、4によって連続あるいは往復動作するように延伸され、また誘導され、引っ張られる。このワイヤ6は0.08〜0.3mm、特に0.1〜0.2mmの間の直径を有するばね鋼でできているのが好ましく、それは硬質材料や、特に半導体、太陽電池とその据付、あるいはセラミックス産業用のより特定の化合物、例えばシリコン、セラミックス、III−V族及びII−VI族の元素の化合物、GGG(ガドリニウム−ガリウム−ガーネット)、サファイヤ等のブロックを切断して、少なくとも約0.08〜0.1mm、多くとも8〜15mm、例えば10mmあるいは12mmの厚みを有するスライス物にするためである。研磨剤は市販の製品であり、ダイヤモンド、炭化ケイ素、アルミナ等がワイヤに固定されているか、あるいは砥粒のための運搬剤として役立つ液体内に浮遊する遊離砥粒を使用することができる。
【0032】
切断される各々の部材10は、接着剤やセメントや他の接着剤によって、支持台20上に取り付けられている取付台15の接着面152(図2参照)に接着される。
【0033】
ここで図2を参照しながら、取付台15が支持台20上に取り付けられる方法を記述する。これは図示されている例における架台18であるインゴットホルダーによって実現される。このために、架台18は支持台20のスライドレール(図示されず)と協調できる側面溝22を含んでおり、これによって前記架台18は前記支持台20上に取り付けることができる。図2の右側に図示されるように、架台18は留めねじ16を受け入れるために設計された少なくとも2つの貫通穴24を有している。別形において、ねじ16は留め溝26内に取り付けられる円錐形の頭部を有することができ、ナットが前記ねじに穴24を通してねじ込まれている。都合がよければ、図13を参照しながら記述されている従来技術の架台118に類似した架台18が使用されてもよい。
【0034】
接着面152と相対するその面154には、取付板15が架台18によって支持台20上に取り付けられるときに、取付板15がY及びZ方向に垂直に向かう方向に互いに平行に伸びる留め溝26を有している。これらの留め溝26は、図2の左側に図示されているように、台形の輪郭形状を有しているのが好ましい。その代わりとしては、図3に図示されるように、溝26は長方形の輪郭形状を有している。
【0035】
図2の右側に図示されているように、前記留め溝26はスキッド40と協調するように設計されている。スキッド40は留め溝26の形状に相補的な台形の輪郭形状を有しているのが好ましい。輪郭形状が台形のとき、あり溝アセンブリが実現する。スキッド40は前記留め溝26の中へスライドさせながら差し込まれ、架台18と取付板15を一緒に保持するために、留めねじ16を受け入れるねじ穴42を架台18に向き合うと思われる面に有している。スキッド40は再利用可能である。
【0036】
留め溝26は取付板15内に押し出しプロセスを含むその製造中に実現されることが望ましい。このため、取付板15は押し出し成型可能な材料でできている。
【0037】
本発明によると、取付板15はセラミック材料のような硬脆材料でできている。特に、前記セラミック材料はシリカ系セラミックが可能である。更に特に、それはせっ器が可能である。
【0038】
そのような材料は、特に有利である。この材料でできている取付板15は、実際に従来技術のガラス製仮板の特性と似た安定性のある特性を有しており、切断される部材の切断後に得られるスライス物がそりを起こさないことを保証している。
【0039】
更に、ガラスとは反対にこの材料は、押し出しプロセスによる取付板15の製造中に台形のような複雑な輪郭形状を有する留め溝26を作ることができる利点を有している。
【0040】
それに加えて、セラミック材料でできた取付板15は、例えば熱可塑性材料や熱硬化性材料や複合材料のような人工材料でできた従来技術の仮板と比較して低価格である利点を有している。更に、セラミック材料は前記人工材料よりもはるかによい安定性のある特性を提供する。したがって、それは対費用効果をふまえて製造でき、より経済的であり、それゆえエンドユーザーによりよい所有コストを提供する利点を示す。
【0041】
本発明による取付板15を使用すると、切断される部材10を支持台20に固定し、再びそれを取り外すのが容易となる。従来技術の仮板とアセンブリ板の両方の代わりに、1つの取付板15が使用される。仮板をアセンブリ板から取り外し、アセンブリ板の取付面を清浄する作業が削除される。
【0042】
図4は取付板15の第3実施形態を示しており、図2の留め溝26よりも大きな1つの留め溝260を含んでいる点で図2の第1実施形態と異なり、それら全てによってカバーされる領域と実質的に同一の領域をカバーすることができる。前記1つの留め溝260は、留めねじ16を受け入れるねじ穴42を備えた単一スキッド400と協調するように設計されている。図4において、留め溝260とスキッド400は、あり溝アセンブリを実現することができるように、相補的な台形形状を有している。
【0043】
取付板15は、留め溝26によってこの板が汎用的に使用できるように設計される。スキッド40は様々な種類の架台18に簡単に適用できる。スキッド40は取付板15の溝26内に容易に挿入され、その後留めねじ16によって取付板15は架台18に固定される。
【0044】
本発明による取付板15の別の実施形態を、図5及び6を参照しながらここに記述する。本実施形態によると、取付板15は取付板15のバルク内に実現された少なくとも1つのチャネル30を備えている。前記チャネル30は押し出しプロセスによって取付板15が製造されるときに作られるのが好ましい。
【0045】
図5に図示される例において、取付板は円形断面をもつ6つのチャネル30を備えている。しかしながら、これらは異なる数存在していたり、例えば正方形や卵形などの異なる断面形状を有していることも可能である。チャネル30は取付板15の面152、154に実質的に平行な方向に伸びており、ワイヤ切断装置1の支持台20上に取付板15が取り付けられるとき、ワイヤレイヤ7のワイヤに垂直になるように揃えられている。チャネル30は、架台18上の取付板15を留めるために設計された面154よりも接着面152に近く、前記接着面152と前記チャネル30の間の距離は標識32によって記されているのが好ましい。この距離32は接着面152とこの接着面から最も離れたチャネル30の周縁部との間の最短距離として画定される。全てのチャネル30は前記接着面から同一距離にあるのが望ましい。
【0046】
チャネル30によってワイヤ切断プロセスの1ステップとしてスライス物を直接洗浄及び/又はすすぐことができる。前記洗浄及び/又はすすぎステップは、ワイヤ切断装置外で完了される、後に行われる伝統的な洗浄によって補うことができる。それらは洗浄液及び/又はすすぎ液の循環を認めるために適用され、それらは従来技術から知られている製品であってもよい。すすぎ液は単なる水も可能である。
【0047】
研磨剤:油、グリコール、...として使用される製品の性質によって、すすぎ液によってスライス物をすすぐ単一作業を実行することで十分な場合もあれば、洗浄液によるスライス物の第1洗浄とすすぎ液によるそれらの第2のすすぎといった2段階の連続作業を実行する場合もある。
【0048】
図6は本発明によるワイヤ切断プロセスの実際の切断作業後における図5の取付板15を示している。切断される部材10を貫通して、切断スロットから分離した薄いスライス物が生成された後、ワイヤレイヤ7のワイヤは取付板15の中へ貫入する。支持台20とワイヤレイヤ7の相対運動は、切断ワイヤが洗浄あるいはすすぎ液が循環するチャネル30へ到達し前記チャネル30の中へ貫入するように調整される。切断ワイヤはチャネル30に開口35を作り、前記開口35は切断されたばかりの部材10へ向いている。
【0049】
図6は取付板15を切断スロットに沿った横断面で示しており、切断ワイヤがギャップ領域33を通ってチャネル30へ下りていくことによって加工痕の付いた取付板15を表わしている。このように、チャネル30を循環する洗浄あるいはすすぎ液は開口35を通して切断スロットの中へ流れ出ることができる。こうして洗浄あるいはすすぎ液は、切断作業が適切に行われた直後に、切断される部材10から得られたスライス物の間のギャップ中へと流れ出る。そのとき前記スライス物は依然としてラグ上に互いに平行に保持されている。したがって、切断プロセスによって得られたスライス物は、研磨剤の毛細管効果のもとで互いにくっつく時間がない。
【0050】
チャネル30は、冷却液を取付板15内に循環させるために、切断プロセスの前のステージでも使用することができる。ワイヤレイヤのワイヤが決められた切断深さに到達するや否や、切断される部材の前記決められた切断深さを超えて残っている部分を冷却する冷却液がチャネル30内に循環される。冷却液の循環は取付板15を介して熱流動を増加させ、これによって取付板15と切断される部材10の間の温度勾配を減少させる。そして、切断される部材10の熱応力が減少し、そのため前記切断される部材10における変形及び欠陥の発生リスクを抑える。前記決められた切断深さは、切断される部材10の性質及び/又は切断作業に使用される研磨剤に依存する。いくつかの場合において、冷却剤の循環は、切断作業の開始時に始めることが可能である。他の場合においては、それは若干遅く開始することが可能である。
【0051】
チャネル30は、まだ架台18上にくっついているスライス物の洗浄/すすぎの後、スライス物を取付板15から取り外すのを容易にするために、切断プロセスの更なるステージで使用することも可能である。例えば温かい液体、暖気、あるいは蒸気のような加熱流体は、取付板15のチャネル30内を循環し、取付板15の温度を上昇させ、特に取付板15とスライス物が掛かっているラグの間の界面の温度を上昇させる。これは次に、取付板15の接着面152の温度を上昇させ、接着剤の接着効果の弱化を助ける。また、接着剤の接着効果の弱化のために、加熱流体の代わりに酸を使用することもできる。ウェハの取り外し作業の間、取り外されたスライス物は受け取り器11内に収集される(図1参照)。
【0052】
図7、8、9、10、11及び12は、図5のA−A断面における取付板15を示しており、前記取付板15内に4つのチャネル30を配置した6つの実施例を示している。
【0053】
図7において、チャネル30は平行であり、それらの一端においてそれらに垂直に伸びるマニフォルド34と連通しており、実質的にそれらと同一平面内にある。図8において、チャネル30は平行であり、それらのそれぞれの端においてそれらに垂直に伸びるマニフォルド34と連通しており、実質的にそれらと同一平面内にある。それぞれのマニフォルド34は所望の流体を供給する供給管36に接続されている。
【0054】
図9において、チャネル30は平行で、取付板15の1つの側面に開放している。それらの一端において、それらは所望の流体を供給するためのマニフォルド38と連通している。図10において、チャネル30は平行で、取付板15の反対の側面に開放している。それらのそれぞれの端において、それらは所望の流体を供給するためのマニフォルド38と連通している。それぞれのマニフォルド38は1つの入口と4つの出口39を有しており、それぞれのチャネル30のそれぞれの終端はこれらの出口39の1つを介して所望の流体を供給する。
【0055】
図11において、チャネル30は平行である。それらのそれぞれはその終端の1つでそれに平行に伸びる供給管36と連通しており、実質的にそれと同一平面内にある。図12において、チャネル30は平行である。それらのそれぞれはそのそれぞれの終端でそれに平行に伸びる供給管36と連通しており、実質的にそれと同一平面内にある。
【0056】
本発明に係る一実施形態によると、取付板15はチャネル30を備えないとき15mm以下の厚さを有し、チャネル30を備えるとき18mmの厚さを有する。後者の場合、接着面152とチャネル30との間の距離32は6mm以下が好ましい。別形において、取付板15はより厚く、すなわち20mm以上であることも可能である。
【0057】
本発明は図に示された実施形態及び実施例に制限されること無く、当業者が理解できるであろう別形を網羅していることが理解される。
【0058】
例えば、支持台20とワイヤレイヤ7の間の相対運動はワイヤレイヤ7を動かすことによって、そしてすべての適当な機械的、空圧、そして液圧手段によっても同等に良好に実現できる。
【0059】
同様に、1つの支持台20の代わりに、ワイヤ切断装置1は2以上の支持台を有し、それぞれが予め決められた数のインゴットホルダーを把持することもできる。
【0060】
同様に、取付板15は図7〜12とは異なるチャネル30のネットワークを有することもでき、4つとは異なるが依然として図示されているような傾向を備えた多くのチャネル30を有することが可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークピース接合面を有する板と、前記板内に少なくとも部分的に形成された少なくとも1つの溝を含む、ワイヤ切断装置にワークピースを取り付けるための装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つの溝は台形の輪郭形状を有し、前記板の前記ワークピース接合面とは反対側に配置される請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記板がセラミック材料でできている請求項2記載の装置。
【請求項4】
前記板と前記少なくとも1つの溝はセラミック材料の押し出しによって形成される請求項1記載の装置。
【請求項5】
ワークピース接合面と取付面を有するセラミック板と、前記板内に少なくとも部分的に形成される少なくとも1つのチャネルを含む、ワイヤ切断装置にワークピースを取り付けるための装置。
【請求項6】
前記セラミック板は、前記板の前記ワークピース接合面と反対側に配置される少なくとも1つの溝を有する請求項5記載の装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つのチャネルは前記ワークピース接合面に平行に配置される請求項5記載の装置。
【請求項8】
前記セラミック板はセラミック材料の押し出しによって形成される請求項5記載の装置。
【請求項9】
セラミック板を含むワイヤ切断装置における加工用取付板およびワークピースであって、
前記セラミック板は、
第1面と、
前記セラミック板の前記第1面と反対側に配置される少なくとも1つの溝と、
前記セラミック板に配置され前記第1面に平行である少なくとも1つのチャネルを有する加工用取付板およびワークピース。
【請求項10】
前記第1面に接合されたワークピースをさらに含み、前記ワークピースはシリコン、サファイヤ、セラミックス、及び第III−V族化合物を含むグループから選択される材料で形成されているインゴットを含む請求項9記載の取付板。
【請求項11】
ワイヤ切断装置で使用可能な取付板を形成する方法において、
前記取付板の1つの面に配置される少なくとも1つの溝を有するセラミック取付板を成形することを含む方法。
【請求項12】
前記セラミック取付板の成形は、前記取付板を成形するためにセラミック材料を押し出すことを含み、前記少なくとも1つの溝は台形の輪郭形状を有する請求項11記載の方法。
【請求項13】
ワークピースを前記セラミック取付板の第1面に接合し、前記少なくとも1つの溝は前記第1面と反対側に配置されることをさらに含む請求項11記載の方法。
【請求項14】
前記ワークピースはシリコン、サファイヤ、セラミックス、及び第III−V族化合物を含むグループから選択される材料で形成されているインゴットを含む請求項13記載の方法。
【請求項15】
ワークピースの加工用の装置であって、
支持台と、
前記支持台に結合されているインゴットホルダーを含み、前記インゴットホルダーは取付板を含み、前記取付板はワークピース接合面と前記取付板に少なくとも部分的に形成された少なくとも1つの溝を有し、
前記ワークピースの加工用の装置は、前記取付板内に形成されたチャネルに接続される流体源とをさらに含むワークピースの加工用の装置。
【請求項16】
空間で隔たった関係を有する複数の平行ワイヤと、
少なくとも2つのワイヤガイドシリンダをさらに含み、前記複数の平行ワイヤの各々は前記少なくとも2つのワイヤガイドシリンダの各々の表面上に備わっている溝内に配置される請求項15装置。
【請求項17】
ワークピースを切断する方法であって、
セラミック取付板に接着されたワークピースを、前記ワークピース内に複数のスライス物を形成するために複数のワイヤに対して押し当て、前記セラミック取付板は第1面と、前記セラミック取付板の前記第1面と反対側に配置される少なくとも1つの溝とを含み、前記複数のワイヤが前記ワークピースに対して動き、
前記ワークピースが前記複数のワイヤに対して押し当てられている間、流体が前記セラミック取付板内に形成された1以上のチャネル内に流れることを含むワークピースを切断する方法。
【請求項18】
前記複数のワイヤが前記少なくとも1つのチャネルを貫通した後、前記取付板内に形成された前記少なくとも1つのチャネルにすすぎ液を流すことをさらに含む請求項17記載の方法。
【請求項1】
ワークピース接合面を有する板と、前記板内に少なくとも部分的に形成された少なくとも1つの溝を含む、ワイヤ切断装置にワークピースを取り付けるための装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つの溝は台形の輪郭形状を有し、前記板の前記ワークピース接合面とは反対側に配置される請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記板がセラミック材料でできている請求項2記載の装置。
【請求項4】
前記板と前記少なくとも1つの溝はセラミック材料の押し出しによって形成される請求項1記載の装置。
【請求項5】
ワークピース接合面と取付面を有するセラミック板と、前記板内に少なくとも部分的に形成される少なくとも1つのチャネルを含む、ワイヤ切断装置にワークピースを取り付けるための装置。
【請求項6】
前記セラミック板は、前記板の前記ワークピース接合面と反対側に配置される少なくとも1つの溝を有する請求項5記載の装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つのチャネルは前記ワークピース接合面に平行に配置される請求項5記載の装置。
【請求項8】
前記セラミック板はセラミック材料の押し出しによって形成される請求項5記載の装置。
【請求項9】
セラミック板を含むワイヤ切断装置における加工用取付板およびワークピースであって、
前記セラミック板は、
第1面と、
前記セラミック板の前記第1面と反対側に配置される少なくとも1つの溝と、
前記セラミック板に配置され前記第1面に平行である少なくとも1つのチャネルを有する加工用取付板およびワークピース。
【請求項10】
前記第1面に接合されたワークピースをさらに含み、前記ワークピースはシリコン、サファイヤ、セラミックス、及び第III−V族化合物を含むグループから選択される材料で形成されているインゴットを含む請求項9記載の取付板。
【請求項11】
ワイヤ切断装置で使用可能な取付板を形成する方法において、
前記取付板の1つの面に配置される少なくとも1つの溝を有するセラミック取付板を成形することを含む方法。
【請求項12】
前記セラミック取付板の成形は、前記取付板を成形するためにセラミック材料を押し出すことを含み、前記少なくとも1つの溝は台形の輪郭形状を有する請求項11記載の方法。
【請求項13】
ワークピースを前記セラミック取付板の第1面に接合し、前記少なくとも1つの溝は前記第1面と反対側に配置されることをさらに含む請求項11記載の方法。
【請求項14】
前記ワークピースはシリコン、サファイヤ、セラミックス、及び第III−V族化合物を含むグループから選択される材料で形成されているインゴットを含む請求項13記載の方法。
【請求項15】
ワークピースの加工用の装置であって、
支持台と、
前記支持台に結合されているインゴットホルダーを含み、前記インゴットホルダーは取付板を含み、前記取付板はワークピース接合面と前記取付板に少なくとも部分的に形成された少なくとも1つの溝を有し、
前記ワークピースの加工用の装置は、前記取付板内に形成されたチャネルに接続される流体源とをさらに含むワークピースの加工用の装置。
【請求項16】
空間で隔たった関係を有する複数の平行ワイヤと、
少なくとも2つのワイヤガイドシリンダをさらに含み、前記複数の平行ワイヤの各々は前記少なくとも2つのワイヤガイドシリンダの各々の表面上に備わっている溝内に配置される請求項15装置。
【請求項17】
ワークピースを切断する方法であって、
セラミック取付板に接着されたワークピースを、前記ワークピース内に複数のスライス物を形成するために複数のワイヤに対して押し当て、前記セラミック取付板は第1面と、前記セラミック取付板の前記第1面と反対側に配置される少なくとも1つの溝とを含み、前記複数のワイヤが前記ワークピースに対して動き、
前記ワークピースが前記複数のワイヤに対して押し当てられている間、流体が前記セラミック取付板内に形成された1以上のチャネル内に流れることを含むワークピースを切断する方法。
【請求項18】
前記複数のワイヤが前記少なくとも1つのチャネルを貫通した後、前記取付板内に形成された前記少なくとも1つのチャネルにすすぎ液を流すことをさらに含む請求項17記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−6144(P2012−6144A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185105(P2011−185105)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【分割の表示】特願2011−505606(P2011−505606)の分割
【原出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(510283395)アプライド マテリアルズ スイツァーランド エス エー (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【分割の表示】特願2011−505606(P2011−505606)の分割
【原出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(510283395)アプライド マテリアルズ スイツァーランド エス エー (2)
【Fターム(参考)】
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