ワーク位置決め装置およびワーク位置決め方法
【課題】形状の異なる複数のワーク毎に専用の受け駒を設定することなく、複数種のワークに対して位置決め支持できるようにする。
【解決手段】左右一対のアーム8の先端に設けた位置決め治具100は、X方向に延びる第1の位置決めアーム101と、Y方向に延びる第2の位置決めアーム103と、これら位置決めアーム101,103の交差部から上方に延びる位置決めピン105とを備える。第1,第2の位置決めアーム101,103の上面を第1の位置決め面とし、第1および第2の位置決めアーム101および103が互いに交差する部位近傍の側面を第2および第3の位置決め面とし、位置決めピン105を第4の位置決め部とする。
【解決手段】左右一対のアーム8の先端に設けた位置決め治具100は、X方向に延びる第1の位置決めアーム101と、Y方向に延びる第2の位置決めアーム103と、これら位置決めアーム101,103の交差部から上方に延びる位置決めピン105とを備える。第1,第2の位置決めアーム101,103の上面を第1の位置決め面とし、第1および第2の位置決めアーム101および103が互いに交差する部位近傍の側面を第2および第3の位置決め面とし、位置決めピン105を第4の位置決め部とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを位置決めするワーク位置決め装置およびワーク位置決め方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車の組立ラインには、車種毎に大きさや形状の異なる複数種類のワークが供給されることから、その複数種類のワークを位置決め支持して前記組立ライン上の組立工程や溶接工程などへ順次搬送させるワーク位置決め装置が使用されている。
【0003】
このようなワーク位置決め装置には、例えば車種毎で大きさや形状の異なるワークを位置決めする必要があることから、多車種対応型のワーク位置決め装置が求められる(例えば、下記特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載のワーク位置決め装置は、多種類のワークに対応した専用の受け駒を複数環状に配置したレボルバーユニットを設け、レボルバーユニットにおける必要とする受け駒を、シリンダで出没動作させることで、多種類のワークの位置決め支持を行うようにしている。
【特許文献1】特開2000−190157号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来のワーク位置決め装置にあっては、多種類のワーク毎に専用の受け駒を多数設定するために、大きな設置スペースが必要となり、対応できるワークの種類が限定されるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、多種類のワーク毎に専用の受け駒を設定することなく、多種類のワークに対して位置決め支持できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ワークが当接して位置決めを行う第1の位置決め部と、この第1の位置決め部に対する前記ワークの当接方向に垂直な面と平行な方向からワークが当接して位置決めし、かつ、この当接方向を含む面に対して垂直な面が互いに交差する第2,第3の各位置決め部とをそれぞれ有する位置決め治具を備えることを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、位置決め治具における第1の位置決め部および第2,第3の位置決め部からなる各位置決め部を、ワークの形状や大きさによって使い分けることで、多種類のワーク対し、それぞれ専用の受け駒を設定することなく位置決めすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係わるワーク位置決め装置1の斜視図である。このワーク位置決め装置1は、可動アームとなる左右一対のアーム8を備え、この各アーム8の先端に位置決め治具100をそれぞれ設けており、後述する図11および図12に示すように、例えば自動車の車体パネル材で構成されるエンジンコンプリート4とリアメンバー5を位置決め支持する。
【0011】
アーム8は、位置決めするワークの形状や大きさに合わせて第1の昇降駆動用モータ22により、一対の位置決め治具100が互いに接近離反する方向に下部側を支点として回動可能(図18の矢印D方向)であるとともに、第2の昇降駆動用モータ31により、図1中で上下方向(Z方向)に移動可能である。さらに、アーム8は、第2の昇降駆動用モータ31を設置しているテーブル10とともに図1中でY方向へ移動可能である。このようなアーム8の駆動機構については後述する。
【0012】
アーム8の先端には、位置決め治具支持部材12を介して前述した位置決め治具100を設けており、図2(a)に位置決め治具100の平面図を、図2(b)に同側面図をそれぞれ示す。位置決め治具100は、上記したY方向およびZ方向にそれぞれに直交するX方向に延びる第1の位置決めアーム101と、第1の位置決めアーム101の長手方向適宜位置の両側からからY方向に延びる第2の位置決めアーム103と、これら各位置決めアーム101,103の交差部から上方(Z方向)に延びる突起部としての位置決めピン105とをそれぞれ備えている。位置決めピン105は、第4の位置決め部を構成しており、その先端は球面としている。
【0013】
第1の位置決めアーム101の位置決めピン105を境にして位置決め治具支持部材12側を第1アーム基部107とし、これと反対側を第1アーム先端部109とする。また、第2の位置決めアーム103の位置決めピン105を境にして図2(a)中で下部側を第2アーム一方部111とし、同上部側を第2アーム他方部113とする。
【0014】
上記した第1,第2の各位置決めアーム101,103は、いずれも四角柱形状を呈し、鉛直方向上面が互いに同一平面を形成しており、この同一平面が第1の位置決め部としての第1の位置決め面100aを構成している。この第1の位置決め面100aに、上方からワークが当接して、Z方向の位置決めがなされる。
【0015】
また、第1の位置決めアーム101の第1アーム基部107と、第2の位置決めアーム103の第2アーム一方部111とが交差する部分の内側の側面107aおよび側面111aは、それぞれ第2の位置決め部としての第2の位置決め面および第3の位置決め部としての第3の位置決め面を構成している。
【0016】
同様にして、第1の位置決めアーム101の第1アーム基部107と、第2の位置決めアーム103の第2アーム他方部113とが交差する部分の内側の側面107bおよび側面113aは、それぞれ第2の位置決め部としての第2の位置決め面および第3の位置決め部としての第3の位置決め面を構成している。
【0017】
また、第1の位置決めアーム101の第1アーム先端部109と、第2の位置決めアーム103の第2アーム一方部111とが交差する部分の内側の側面109aおよび側面111bは、それぞれ第2の位置決め部としての第2の位置決め面および第3の位置決め部としての第3の位置決め面を構成している。
【0018】
さらに、第1の位置決めアーム101の第1アーム先端部109と、第2の位置決めアーム103の第2アーム他方部113とが交差する部分の内側の側面109bおよび側面113bは、それぞれ第2の位置決め部としての第2の位置決め面および第3の位置決め部としての第3の位置決め面を構成している。
【0019】
上記図2に示したような位置決め治具100によるワークに対する位置決め例を図3に示す。図3(a)は、ワークWの下方に突出する凸部の底面Waを、第1アーム先端部109の上面に位置する第1の位置決め面100aに当接させるとともに、同側面Wbを、位置決めピン105の側部に当接させて、ワークWに対し前記図1に示したZ方向およびX方向の位置決めを実施している。
【0020】
図3(b)は、ワークWの上記した凸部の底面Waを、図3(a)と同様に、第1アーム先端部109の上面に位置する第1の位置決め面100aに当接させるとともに、底面Waに形成した位置決め孔Wcに位置決めピン105を挿入して、ワークWに対し前記図1に示したZ方向,X方向およびY方向の位置決めを実施している。
【0021】
図3(c)は、ワークWの上記した凸部の側面Wbを、第1アーム先端部109の先端面に当接させるとともに、ワークWの一般面Wdの下面に位置決めピン105の先端を当接させて、ワークWに対し前記図1に示したZ方向およびX方向の位置決めを実施している。
【0022】
図3(d)は、ワークWの上記した凸部の底面Waに下方に向けて突出するボルトBを設け、このボルトBの側面を、例えば第1アーム先端部109と第2アーム一方部111との交差する部位のそれぞれの側面109a,111bに当接させるとともに、ワークWの底面Waに位置決めピン105の先端を当接させて、ワークWに対し前記図1に示したZ方向,X方向およびY方向の位置決めを実施している。
【0023】
図4は、前記図1に示した左右一対の位置決め治具100を、図4中で上下方向に2組使用して、ワークWに対して位置決めを実施している状態を平面図として示す。
【0024】
図4(a)は、前記した図3(a)の位置決め方法を利用しており、各位置決め治具100の位置決めピン105の側部を、ワークWの角部内側の互いに直交する2つの側面(一方の側面は図3(a)の側面Wbに相当)に当接させた状態で、ワークWを各位置決め治具100の第1の位置決め面100aに載せた状態としている。
【0025】
具体的には、図4(a)中で左上の位置決め治具100は、第1アーム先端部109および第2アーム他方部113上にワークWを載せ、同左下の位置決め治具100は、第1アーム先端部109および第2アーム一方部111上にワークWを載せている。また、図4(a)中で右上の位置決め治具100および同右下の位置決め治具100は、上記した左上の位置決め治具100および左下の位置決め治具100に対してそれぞれ左右対称の動作を行う。
【0026】
これにより、ワークWは、図4(a)中でX方向、Y方向および図4(a)中で紙面に直交するZ方向の3方向の位置決めがなされる。
【0027】
図4(b)は、図中で上部の左右一対の位置決め治具100を、前記した図3(b)の位置決め方法に利用した例を示しており、位置決めピン105をワークWの位置決め孔に挿入し、かつワークWを第1の位置決め面100aに載せた状態としている。一方、図中で下部の左右一対の位置決め治具100は、前記した図3(a)の位置決め方法に利用した例を示しており、ワークWを第1アーム先端部109上の第1の位置決め面100aに載せた状態とすると同時に、位置決めピン105の一側部をワークWの側面に当接させている。
【0028】
これにより、ワークWは、上部の左右一対の位置決め治具100により、図4(b)中でX方向、Y方向および紙面に直交するZ方向の3方向の位置決めがなされ、また下部の左右一対の位置決め治具100により、X方向およびZ方向の位置決めがなされる。
【0029】
図4(c)は、図中で上部および下部の各一対の位置決め治具100を、前記した図3(d)の位置決め方法に利用した例を示している。
【0030】
このうち、図4(c)中で上部の一対の位置決め治具100は、ワークWの下面に図中で紙面裏側に向けて突出したボルトBの側部を、第1アーム先端部109の側面109bと第2アーム他方部113の側面113bに当接させるとともに、位置決めピン105の先端をワークWの底面(図3(d)の底面Waに相当)に当接させ、これにより、ワークWは、図4(c)中でX方向、Y方向および紙面に直交するZ方向の3方向の位置決めがなされる。
【0031】
一方図4(c)中で下部の一対の位置決め治具100は、ワークWの下面に図中で紙面裏側に向けて突出したボルトBを、第1アーム先端部109の側面109aと第2アーム一方部111の側面111bに当接させるとともに、位置決めピン105の先端をワークWの底面(図3(d)の底面Waに相当)に当接させ、これにより、ワークWは、図4(c)中でX方向、Y方向および紙面に直交するZ方向の3方向の位置決めがなされる。
【0032】
もちろん、上記した位置決め治具100によって位置決めするワークWは、図4に示す形状や大きさに限ることはなく、各種形状や大きさのワークに対し、位置決め治具100を用い、図3に示したような各種の方法を利用して位置決め支持することができる。
【0033】
上記したような本実施形態による位置決め治具100を使用し、ワークWのZ方向の位置決めを行う第1の位置決め面100aと、同Y方向の位置決めを行う第2の位置決め面となる側面107a,107b,109a,109bと、同X方向の位置決めを行う第3の位置決め面となる側面111a,113a,111b,113bと、第4の位置決め部となる位置決めピン105とを、ワークWの形状や大きさによって適宜使い分けることで、多種類のワークに対し、それぞれ専用の受け駒を設定することなく、また大きな設置スペースを必要とすることなく、位置決めすることができる。
【0034】
なお、上記した位置決め具100を利用してワークWの位置決めを行う際には、第1の位置決め面100aと、第2の位置決め面となる側面107a,107b,109a,109bと、第3の位置決め面となる側面111a,113a,111b,113bと、第4の位置決め部となる位置決めピン105の4つの位置決め部のうちの少なくとも2つの位置決め部を、ワークWの対応する部位に当接させて位置決めし、かつ左右一対の位置決め治具100相互間、あるいは複数のワーク位置決め装置1相互間で、使用する位置決め部を適宜変化させることで、ワークWに対してX,Y,Zの3方向の位置決めを行うことができる。
【0035】
また、専用の受け駒を多数設ける必要がないことから、ワークWに対し溶接作業を行うような場合に、ワークWの溶接打点部に溶接ガンが入り込むスペースを確保することができる。
【0036】
さらに、自動車の車体パネル材を位置決めするような場合に、車種追加毎に、専用の受け駒を追加して位置決め装置自体を見直すような不具合も防止することができ、従来車種に対応する受け駒を再製作するといったことも不要であり、車種追加の構想、設計、製作、組み付け、修正、確認工数を大幅に低減することができる。
【0037】
なお、前記図2に示した形状の位置決め治具100の他、図5に示すようなL形状の位置決め治具200を用いることもできる。図6(a)は、位置決め治具200の平面図、図6(b)は、同側面図である。
【0038】
図5,図6に示した位置決め治具200は、前記したX方向に延びる第1の位置決めアーム201と、第1の位置決めアーム201の先端からY方向の一方側に延びる第2の位置決めアーム203と、第1の位置決めアーム201と第2の位置決めアーム203との交差部の上面からZ方向上方に延びる突起部としての位置決めピン205とを、それぞれ備えている。
【0039】
第1,第2の各位置決めアーム201,203は、図2のものと同様に四角柱形状を呈し、その各Z方向上面が、互いに同一平面を形成しており、この同一平面が第1の位置決め部としての第1の位置決め面200aを構成している。この第1の位置決め面200aに上方からワークの一部位が当接して位置決めされる。
【0040】
また、第1の位置決めアーム201と第2の位置決めアーム203とが交差するそれぞれの内側の側面201aおよび側面203aは、第2の位置決め部としての第2の位置決め面および第3の位置決め部としての第3の位置決め面を構成している。
【0041】
なお、上記図5の形状に代えて、第2の位置決めアーム203を、第1の位置決めアーム201に対して図5とは逆の方向に屈曲するL字形状としてもよく、また第2の位置決めアーム203を、第1の位置決めアーム201の先端から左右両方に突出させてT字形状としてもよく、その他、ワークに対する前記した第1〜第4の各位置決め部を備える構成であれば、上記の形状に限定されるものではない。
【0042】
また、図7(a),(b)に示すように、図1の位置決め治具100における位置決めピン105近傍の第1アーム基部107の上面に溝115を設け、パネル状のワークWの縁部Fを挿入して位置決めするようにしてもよい。この溝115は、図5,図6に示した位置決め治具200における位置決めピン205近傍の第1の位置決めアーム201上に設けてもよい。
【0043】
上記図5,6に示した位置決め治具200あるいはその他の上記した形状の位置決め治具を、前記図1におけるアーム8の先端に設けることで、図3,図4に示したような各パターンの位置決め作業を行うことができる。この際、位置決め治具は、左右一対のアーム8に同一形状のものを設置する必要はなく、異なる形状のものを適宜設けるようにしてもよく、また、後述する図11,図12に示すように、本ワーク位置決め装置1をワーク搬送方向に複数設置する際、これら各ワーク位置決め装置1相互間で、異なる形状の位置決め治具を用いてもよい。
【0044】
図8(a)は、図2の位置決め治具100に対し、前記図3(a)での使用例の変形例を示す位置決め治具300である。図8(b)は図8(a)のワークWを省略した状態のA矢視図である。この位置決め治具300は、第1アーム先端部109の位置決めピン105に近接する位置に、位置決め部材として環状の薄板からなる板ばね117を取り付けている。
【0045】
この環状の板ばね117にアーム部となる第1アーム先端部109を遊嵌状に挿入し、板ばね117の図8(a)中で右側の一側部を位置決めピン105に接触させた状態で、板ばね117の下部を第1アーム先端部109の下面にボルト119で固定する。これにより、板ばね117の上部と第1アーム先端部109との間に、板ばね117が弾性変形する際の変形空間121を設ける。
【0046】
図8(a)の構成で、図3(a)と同様にしてワークWの位置決めを行う際には、ワークWの下方に突出する凸部の底面Waを、第1アーム先端部109の上面に位置する第1の位置決め面100aに当接させた状態で、同側面Wbを、板ばね117の位置決めピン105と反対側の側部に当接させる。
【0047】
これにより、図3(a)のワークWに対してその側面Wbの位置が、図3(a)中で左右方向(X方向)に異なるワークに対して位置決め作業を行うことができる。
【0048】
また、図8の位置決め治具300を利用して、図9(a)に示すように、図3(a)と同等の位置決め作業を行うこともできる。図9(b)は図9(a)のB矢視図である。
【0049】
すなわち、ワークWを板ばね117の上から第1アーム先端部109上に載置して板ばね117を押し潰すように弾性変形させる。この際、第1アーム先端部109上には、板ばね117の上部が入り込む凹部123を形成してあり、この凹部123に板ばね117が入り込むことで、ワークWの底面Waが第1アーム先端部109の上面、すなわち第1の位置決め面100aに当接することになる。
【0050】
図10は、図8の例に対し、板ばね117(117a,117b,117c)を位置決めピン105から離れる方向に複数並べて配置した位置決め治具400を示している。例えば、図10(a)のように、位置決めピン105から最も離れた位置にある板ばね117aを、図9と同様にして押し潰して弾性変形させ、ワークWの底面Waを第1の位置決め面100aに当接させる。この際、ワークWの側面Wbは中央位置にある板ばね117bの側部に当接する。図10(b)は図10(a)のC矢視図である。
【0051】
このように、板ばね117を複数設けることで、側面Wbの位置が各種異なるワークWに対して位置決めすることができる。
【0052】
図11は、位置決めピン105に隣接する環状の板ばね117fの内側に、板ばね117fより環状部分の直径が小さく、かつ図11(a)中で左右方向の長さが長い環状の板ばね117eを配置し、さらに板ばね117eの内側に、板ばね117eより環状部分の直径が小さく、かつ図11(a)中で左右方向の長さが長い環状の板ばね117dを配置した位置決め治具500を示している。これら各板ばね117e、117dは、位置決めピン105と反対側の端部が前記板ばね117fの同端部から突出する第2の環状の板ばねを構成している。図11(b)は図11(a)のE矢視図である。
【0053】
そして、ボルト119aで3つの板ばね117f,117e,117dを同時に固定し、またボルト119bで2つの板ばね117e,117dを同時に固定し、さらに、ボルト119cで板ばね117dのみを固定している。
【0054】
図11(a),(b)で示す状態は、2つの板ばね117e,117dを同時に押し潰して弾性変形させており、2つの板ばね117e,117dが凹部125に入り込み、ワークWの底面Waが、第1アーム先端部109の上面、すなわち第1の位置決め面100aに当接している。
【0055】
また、ワークWの側面Wbを位置決めピン105の側部に当接させる場合には、3つの板ばね117f,117e,117dを同時押し潰すので、上記した凹部125は、これら3つの板ばね117f,117e,117dが入り込む深さとなるように、前記図10の凹部123に比べて深く形成してある。
【0056】
上記した図11の例では、図10の例と異なり、単に複数の板ばねを並べただけではなく、板ばね117fの内側に位置する板ばね117eや117dの図11(a)中で左右方向の長さ(幅)を適宜設定することで、板ばね117eについては板ばね117fからの左方向への突出量を微少に設定でき、また板ばね117dについては板ばね117eからの左方向への突出量を微少に設定できる。
【0057】
これにより、ワークWの側面Wbの図11(a)中で左右方向の位置が僅かに異なるワークWに対しての位置決めが行える。このような側面Wbの位置が僅かに異なるワークWを、図10の例で実施しようとすると、各板ばね117b,117aの幅寸法(図10(a)中で左右方向の幅)をより小さいものとする必要があるので、板ばねの製造が困難なのものとなるが、上記した図11の例では、このような問題が発生することなく、対応することができる。
【0058】
上記したような位置決め治具100(200,300,400,500)を備えたワーク位置決め装置1は、図12および図13に示すように、自動車の車体組立ライン上に平行に配置(敷設)された一対の搬送用レール2、2に沿ってスライド自在とされるベースプレート3上に配置される。図2では、搬送用レール2、2は図示を省略してある。
【0059】
ここでは、4台のワーク位置決め装置1を各ベースプレート3上に配置させ、それらワーク位置決め装置1のそれぞれを、自動車一台分となるエンジンコンプリート4とリアメンバー5(ワーク)を位置決め支持することのできる適正な位置となるように搬送用レール2、2に沿って移動させ、当該ワーク位置決め装置1でこれらエンジンコンプリート4とリアメンバー5とを位置決め支持させる。そして、これらワーク位置決め装置1を、前記組立ラインに設けられた組立工程や溶接工程などの各工程へと順次搬送させるようにする。具体的には、隣接する工程間で前工程から後工程へワークを支持して搬送させる。
【0060】
前記ワーク位置決め装置1を載せた4台のベースプレート3は、前記一対の搬送用レール2、2間に配置(敷設)された連結棒6で連結されて一つの装置ユニットを構成し、図示を省略する駆動制御部で駆動制御されることにより、それらが一体となって搬送用レール2、2に沿って、ワークに対して各種加工を行う各ワーク加工工程間を往復動自在とされる。連結棒6は、例えば断面略矩形状の中空パイプとされ、ボルト・ナットなどの締結手段で各ベースプレート3の下面に固定される。
【0061】
なお、前記搬送用レール2、2の下には、この搬送用レール2、2を支えるためのレール受け台7、7がフロア上に固定されている。
【0062】
ワーク位置決め装置1は、図1,図14および図15に示すように、エンジンコンプリート4またはリアメンバー5を位置決めして支持するワーク位置決め治具100と、この位置決め治具100を先端部に取り付けた前述の2組のアーム8、8と、このアーム8、8の基端部8aを中心として該アーム8、8を閉じた状態と開いた状態に開閉自在とし、該アーム8、8の先端部に取り付けた前記位置決め治具100をエンジンコンプリート4及びリアメンバー5の被係合部と係合可能な位置までアーム8、8を外側に開いた係合位置と該係合位置からアーム8、8を内側に閉じた非係合位置にそれぞれ配置させるアーム開閉手段と、前記位置決め治具100、アーム8、8及びアーム開閉手段とからなるワーク位置決め機構部9全体を、前記エンジンコンプリート4またはリアメンバー5に対して接近離反させる昇降手段と、前記ワーク位置決め機構部9及び前記昇降手段を載せたテーブル10を、前記エンジンコンプリート4またはリアメンバー5を位置決め支持する位置へと移動させる移動手段とを備えている。
【0063】
アーム8、8は、図16示すように、ワーク搬送方向(Y方向)から見て平面視くの字形状とされた2組のアーム8、8からなる。各組のアーム8、8は、それぞれ第1アーム8A及び第2アーム8Bの2本で構成されている。第1アーム8A及び第2アーム8Bは、後述するワーク位置決め機構部9を構成する部品の一つであるアーム取付プレート13(図17を参照)に対して可動自在に取り付けられている。
【0064】
すなわち、第1アーム8Aは、アーム取付プレート13に固定された支持軸14にその基端部8aを回転自在に取り付けることにより、該支持軸14を中心として可動自在とされる。第2アーム8Bは、前記アーム取付プレート13と連結されるアーム支持プレート15との間に固定されたシャフト16にその基端部8aを回転自在に取り付けることにより、該シャフト16を中心として可動自在とされる。
【0065】
また、この第1アーム8A及び第2アーム8Bの先端部8bは、何れも位置決め治具支持部材12に所定間隔を置いて取り付けられた支持軸17に対して回動自在とされている。したがって、この2本の第1アーム8Aと第2アーム8Bからなるアーム8は、いわゆる平行リンク機構とされ、その先端部8bに取り付けた位置決め治具支持部材12を常に水平状態を保った状態に支持すると共に、その位置決め治具支持部材12に固定された位置決め治具100における位置決めピン105の先端を常に上方に向けた状態を保つ。
【0066】
アーム開閉手段は、図16及び図17に示すように、第1アーム8Aの先端部8bと基端部8aの中途位置に一端18aを連結させたリンク部材18と、このリンク部材18の他端18bを連結させた昇降部材19と、該昇降部材19を上下動させてこの昇降部材19に連結させたリンク部材18を回動させることにより、該リンク部材18に連結された前記第1アーム8Aを開閉自在とする昇降部材駆動機構部とからなる。
【0067】
リンク部材18は、第1アーム8Aの基端部8a寄りの位置に固定された支持軸20にその一端18aを回動自在に取り付けることにより、該支持軸20を中心として可動自在とされる。また、このリンク部材18は、昇降部材19に固定された支持軸21の先端にその他端18bを回動自在に取り付けることにより、該支持軸21を中心として可動自在とされる。
【0068】
昇降部材駆動機構部は、昇降部材19を上下動させるための第1の昇降駆動用モータ22と、この第1の昇降駆動用モータ22の動力を伝達する一対の第1のプーリー23、23と、これら第1のプーリー23、23間に掛けられた第1の駆動ベルト24と、一方の第1のプーリー23に基端部を固定させて回転する第1のボールねじ25と、昇降部材19を一面に固定し、該第1のボールねじ25に沿って上下動する第1のナット部材26とから構成される。
【0069】
第1の昇降駆動用モータ22は、昇降テーブル27に固定され、一対の第1のプーリー23、23間に掛けられた第1の駆動ベルト24を介して回転力を伝達し、その一方の第1のプーリー23に固定された第1のボールねじ25を正逆方向に回転させることにより、この第1のボールねじ25に螺合する第1のナット部材26を上下動させて、該第1のナット部材26に固定した昇降部材19を昇降動させる。かかる第1の昇降駆動用モータ22は、例えばステッピングモータなどから構成され、駆動制御部に指示されることによって前記昇降部材19を所望の位置に高精度に昇降動可能とする。
【0070】
第1のプーリー23、23及び第1の駆動ベルト24は、昇降テーブル27の内部に回転自在に配置されている。第1のボールねじ25及び第1のナット部材26は、昇降テーブル27に垂直に固定された四角柱形状をなす第1のガイド支柱28の中に設けられている。第1のナット部材26は、その殆どの部位がこの第1のガイド支柱28で覆われるが、昇降部材19を取り付ける側の一面は外側へ突出している。この第1のナット部材26には、第1のボールねじ25と螺合するねじ部(図示は省略する)が形成されており、該第1のボールねじ25が回転することで、第1のナット部材26がこの第1のボールねじ25に送られて下端位置から上端位置の間を昇降動するようになっている。
【0071】
このように構成されたアーム開閉手段では、エンジンコンプリート4及びリアメンバー5を位置決め支持する前の待機状態(図15及び図18に示す状態)では、2組のアームが交差して各アーム8、8の先端部に取り付けた位置決め治具100を該アーム8、8の内側の位置に配置させた状態とされる。つまり、位置決め治具100は、外側に配置された第2アーム8Bの先端部8bの内側に位置し、ワーク位置決め装置1の両側に配置された各工程で使用される治具29、30などと接触しないように待避した位置に設けられる。
【0072】
この待機状態から駆動制御部より指令を受けて第1の昇降駆動用モータ22が駆動し、第1のプーリー23、23及び第1の駆動ベルト24を介して第1のボールねじ25が回転させられると、この第1のボールねじ25に螺合する第1のナット部材26が上方位置へと送られる(上昇させられる)。このとき、第1のナット部材26に固定された昇降部材19も一緒に上昇するが、その昇降部材19の上昇に伴って、この昇降部材19に固定された支持軸21に回動自在に取り付けられるリンク部材18が、該支持軸21に取り付けられた他端18bを中心として図18中矢印Dで示す方向へ回動して行き、その一端18aに連結した第1アーム8Aを外側へ開くように回動させて行く。かかる第1アーム8Aが外側へ開くように回動すると、この第1アーム8Aの先端部8bに固定された位置決め治具支持部材12に連結される第2アーム8Bもこれに連動して外側へ一緒に回動する。
【0073】
そして、2組のアーム8、8は、図16及び図20に示すように、右側と左側にそれぞれ外側へ大きく羽ばたくようにして開き、各アーム8、8の先端部8bに取り付けた位置決め治具100を、該アーム8、8の先端部8bからさらに外側に配置させるようになる。これらアーム8、8が回動する一連の状態では、平行リンク機構を構成する第1アーム8Aと第2アーム8Bにより、位置決め治具支持部材12は、常に位置決め治具100を真上に保持した水平状態を保ちながら移動する。そのため、このアーム8、8の開き角度に拘わらず、どの状態でもエンジンコンプリート4及びリアメンバー5を位置決め支持することのできる状態とされ、大きさや形状の異なるワークに対してもこの1つ位置決め治具100だけで位置決め支持することができる。
【0074】
昇降手段は、図1及び図14に示すように、前記した位置決め治具100、アーム8、8及びアーム開閉手段とからなるワーク位置決め機構部9全体を、前記エンジンコンプリート4またはリアメンバー5に対して接近離反させるためのものであり、前記ワーク位置決め機構部9を上下動させるための第2の昇降駆動用モータ31と、この第2の昇降駆動用モータ31の動力を伝達する一対の第2のプーリー33、33と、これら第2のプーリー33、33間に掛けられた第2の駆動ベルト34と、一方の第2のプーリー33に基端部を固定させて回転する第2のボールねじ35と、前記したアーム取付プレート13を一面に固定し、該第2のボールねじ35に沿って上下動する第2のナット部材36とから構成される。
【0075】
第2の昇降駆動用モータ31は、前記したテーブル10上に固定されている。この第2の昇降駆動用モータ31は、一対の第2のプーリー33、33間に掛けられた第2の駆動ベルト34を介して回転力を伝達し、その一方の第2のプーリー33に固定された第2のボールねじ35を正逆方向に回転させることにより、この第2のボールねじ35に螺合する第2のナット部材36を上下動させて、該第2のナット部材36に固定したワーク位置決め機構部9全体を昇降動させる。この第2の昇降駆動用モータ31は、第1の昇降駆動用モータ22と同様、ステッピングモータからなり、駆動制御部に指示されることによって前記ワーク位置決め機構部9を所望の位置に高精度に昇降動可能とする。
【0076】
第2のプーリー33、33及び第2の駆動ベルト34は、テーブル10に垂直に固定された四角柱形状をなす第2のガイド支柱38の下端に設けられたケース39内に配置されている。この第2のガイド支柱38の中には、前記第2のボールねじ35と前記第2のナット部材36とが配置されている。第2のナット部材36には、第2のボールねじ35と螺合するねじ部(図示は省略する)が形成されており、該第2のボールねじ35が回転することで、第2のナット部材36がこの第2のボールねじ35に送られて下端位置から上端位置の間を昇降動するようになっている。
【0077】
このように構成された昇降手段では、第2の昇降駆動用モータ31が駆動し、第2のプーリー33、33及び第2の駆動ベルト34を介して第2のボールねじ35が回転させられると、この第2のボールねじ35に螺合する第2のナット部材36が上下方向に送られる(昇降動させられる)。したがって、この第2のナット部材36に前記アーム取付プレート13を固定させたワーク位置決め機構部9は、図18に示す下端まで下降させた待機位置と図17に示す所定位置まで上昇させた係合位置との間を昇降動することになる。
【0078】
移動手段は、前記ワーク位置決め機構部9及び前記昇降手段を載せたテーブル10を、前記エンジンコンプリート4またはリアメンバー5を位置決め支持するワーク支持位置へと移動させるためのもので、テーブル10をスライド自在とする一対の移動用レール37、37と、ラックギア40が形成されたラックレール41と、テーブル10に固定されたテーブル移動用モータ42と、このテーブル移動用モータ42に取り付けられ、ラックギア40と歯合して前記テーブル10を移動させるピニオンギア43とからなる。
【0079】
移動用レール37、37は、4個のベースプレート3を橋渡しするように連続して設けられ、該ベースプレート3上に固定されたレール基盤44の上に固定されている。ラックレール41は、一方の移動用レール37に近接して設けられ、前記レール基盤3上に固定されている。このラックレール41には、その長手方向に沿ってラックギア40が形成されている。テーブル移動用モータ42は、前記テーブル10に固定され、そのテーブル10の下面に突き出たピニオンギア43を前記ラックギア40に歯合させて回転させることで、前記テーブル10を移動用レール37、37に沿って往復動自在とする。なお、テーブル移動用モータ42は、制御部で制御可能なステッピングモータからなる。
【0080】
本実施の形態では、テーブル移動用モータ42を駆動してワーク位置決め機構部9及び昇降手段を載せた各テーブル10を、少なくともそれぞれのワーク支持位置まで移動できれば良いが、必要に応じてこれら各テーブル10を一個所の位置に集合させて移動させることもできる。
【0081】
次に、上述のように構成されたワーク位置決め装置1でワーク(エンジンコンプリート4及びリアメンバー5)を位置決め支持し、そのワークを搬送する動作について説明する。
【0082】
先ず、テーブル移動用モータ42を駆動し、ラックギア40と歯合するピニオンギア43を回転させることにより、前記テーブル10を前記移動用レール37、37に沿って移動させる。かかるテーブル10は、その上に設けたワーク位置決め機構部9が、図12及び図13に示す位置にセットされたエンジンコンプリート4及びリアメンバー5の下方位置と対応するワーク支持位置と対応する位置まで移動される。
【0083】
次に、第2の昇降駆動用モータ31を駆動し、図15のアーム8、8が閉じた待機状態から該アーム8、8が閉じた状態を保持したままの状態で、第2のナット36を上昇させることにより、前記ワーク位置決め機構部9を周囲の治具29、30などと干渉しない位置まで上昇させる。
【0084】
次いで、第1の昇降駆動用モータ22を駆動し、第1のナット部材26を上昇させることにより前記したリンク部材18を回動させ、閉じた状態にある2組のアーム8、8をそれぞれ図15中二点鎖線で示すように外側へ開かせる。
【0085】
そして、各アーム8、8の位置決め治具100、100における複数の位置決め部(第1の位置決め面100aや位置決めピン105など)がエンジンコンプリート4及びリアメンバー5の被係合部と適宜係合可能位置となったところで、再び第2の昇降駆動用モータ31を駆動してワーク位置決め機構部9を上昇させ、前記位置決め治具100でエンジンコンプリート4及びリアメンバー5を位置決め支持させる。
【0086】
この位置決め支持は、前述した図3、図4に示したようなワークWの形状や大きさに応じた各種の方法を利用して適宜行うことができる。
【0087】
エンジンコンプリート4及びリアメンバー5をワーク位置決め機構部9で位置決め支持したら、図示しない駆動源を駆動して連結棒6で連結した4台のベースプレート3を前記搬送用レール2、2に沿って移動させ、エンジンコンプリート4及びリアメンバー5を、隣接する次の工程(後工程)へと搬送させる。ワーク搬送後の回送は、前記した動作の逆の動作を行い、アーム8、8を閉じた状態に戻すと共にワーク位置決め機構部9を待機位置として隣接する前の工程(前工程)へと回送させる。
【0088】
本実施の形態のワーク位置決め装置1によれば、エンジンコンプリート4やリアメンバー5などのワークを位置決めして支持する位置決め治具100をアーム8、8の先端部に取り付け、そのアーム8、8を閉じた状態と開いた状態に開閉自在として該位置決め治具100を係合位置と非係合位置にそれぞれ配置させ、また、位置決め治具100をワークに対して接近離反させるようにしたので、車種毎に大きさや形状の異なるワークに対して前記アーム8、8の開き度合いと位置決め治具100の昇降位置とを適宜調整することにより、多車種に応じた複数種類のワークを、専用のワーク受け部やシリンダを使用することなく位置決め支持することができる。
【0089】
また、本実施の形態のワーク位置決め装置1によれば、ワーク搬送終了後に非係合位置でアーム8、8を閉じた状態とし、そのアーム8、8の先端部に取り付けた位置決め治具100をワークより離反させた位置まで下降させて待機しておけば、ワーク受取位置(前工程)まで回送する際に組立ライン上の各工程に配置された治具29、30などと干渉するのを防止できる。
【0090】
また、本実施の形態のワーク位置決め装置1によれば、昇降部材19の上下動に連動させてリンク部材18を回動させることによりアーム8、8を開閉自在とするリンク機構でアーム開閉手段を構成したので、異なる大きさや形状の複数種類のワークに対しても、そのアーム8、8の開き角度を適宜調整することで、簡単にワークを位置決め支持することができる。
【0091】
また、本実施の形態のワーク位置決め装置1によれば、アーム8、8を閉じたときにそれら2組のアーム8、8が交差して各アーム8、8の先端部に取り付けた位置決め治具100をアーム8、8の先端部の内側の位置に配置させたことから、前工程へと回送させる際に、その周囲に配置させた治具29、30などにアーム8、8が接触するのを防止できる。
【0092】
また、本実施の形態のワーク位置決め装置1によれば、各組のアーム8、8を、それぞれ2本のアームにていわゆる平行リンク機構としたので、位置決め治具100を常に水平に保つことができる。そのため、アーム8、8の開き角度の大小に拘わらず位置決め治具100が常に水平であるから、複数種類のワークでも容易に位置決め支持することができる。
【0093】
また、本実施の形態のワーク位置決め装置1によれば、ワーク位置決め機構部9及び昇降手段を載せたテーブル10をワーク支持位置へと移動させる移動手段を、テーブル移動用モータに設けたピニオンギア43とラックギア40とを歯合させることにより前記移動用レール37、37に沿って該テーブル10を移動自在とする構成としたので、従来からある移動手段を使用した低コストの装置とすることができる。さらに、移動用レール37、37をレール基盤44と共に4個のベース3を橋渡しするように連続して設けたので、装置ユニット全体の剛性部材として機能させることができ、他の構成部材の板厚低減など軽量化が可能となる。
【0094】
また、本実施の形態のワーク位置決め装置1によれば、テーブル10を含めた装置全体を配置したベースプレート3の複数個を連結手段で連結してなる装置ユニットを、各ワーク加工工程間を往復動させているので、各ベースプレート3毎に移動させる面倒な制御をする必要が無い。
【0095】
以上、本発明を適用した具体的な実施の形態について説明したが、上述の実施の形態は、本発明の一例に過ぎないからこれら実施の形態に、本発明が限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の一実施形態に係わるワーク位置決め装置の斜視図である。
【図2】(a)は図1のワーク位置決め装置に使用する位置決め治具の平面図、(b)は同側面図である。
【図3】図2の位置決め治具によるワークに対する各種位置決め例を示す説明図である。
【図4】図3の位置決め例をより具体的に示した平面図である。
【図5】位置決め治具の他の例を示す斜視図である。
【図6】(a)は図5の位置決め治具の平面図、(b)は同側面図である。
【図7】(a)は図2の位置決め治具における第1アーム基部の上面に溝を設けた例を示す平面図、(b)は同側面図である。
【図8】(a)は位置決め治具のさらに他の例を示す位置決め時の正面図、(b)は(a)のA矢視図である。
【図9】(a)は図8の位置決め治具による他のワークを位置決めする際の正面図、(b)は(a)のB矢視図である。
【図10】(a)は図8の位置決め治具の変形例を示す位置決め時の正面図、(b)は(a)のC矢視図である。
【図11】(a)は図8の位置決め治具のさらに変形例を示す位置決め時の正面図、(b)は(a)のE矢視図である。
【図12】図1のワーク位置決め装置を複数用いてワークを位置決め支持した状態を示す側面図である。
【図13】図12の平面図である。
【図14】図1のワーク位置決め装置の側面図である。
【図15】図1のワーク位置決め装置の正面図である。
【図16】図1本実施の形態のワーク位置決め装置の要部を示す斜視図である。
【図17】図1のワーク位置決め装置におけるアーム開閉手段の一部を取り出して示す斜視図である。
【図18】アームが閉じた待機状態におけるワーク位置決め装置の正面図である。
【図19】アームが開いた係合状態におけるワーク位置決め装置の正面図である。
【図20】アームが開いた係合状態におけるワーク位置決め装置の平面図である。
【符号の説明】
【0097】
W ワーク
F ワークの縁部
1 ワーク位置決め装置
8 アーム(可動アーム)
100a 第1の位置決め面(第1の位置決め部)
105 位置決めピン(第4の位置決め部)
107a,107b,109a,109b 側面(第2の位置決め面,第2の位置決め部)
111a,111b,113a,113b 側面(第3の位置決め面,第3の位置決め部)
115 ワークの縁部を挿入する溝
117(117a,117b,117c,117f) 環状の板ばね(位置決め部材)
117(117d,117e) 第2の環状の板ばね(位置決め部材)
121 板ばねが弾性変形する際の変形空間
123,125 凹部
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを位置決めするワーク位置決め装置およびワーク位置決め方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車の組立ラインには、車種毎に大きさや形状の異なる複数種類のワークが供給されることから、その複数種類のワークを位置決め支持して前記組立ライン上の組立工程や溶接工程などへ順次搬送させるワーク位置決め装置が使用されている。
【0003】
このようなワーク位置決め装置には、例えば車種毎で大きさや形状の異なるワークを位置決めする必要があることから、多車種対応型のワーク位置決め装置が求められる(例えば、下記特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載のワーク位置決め装置は、多種類のワークに対応した専用の受け駒を複数環状に配置したレボルバーユニットを設け、レボルバーユニットにおける必要とする受け駒を、シリンダで出没動作させることで、多種類のワークの位置決め支持を行うようにしている。
【特許文献1】特開2000−190157号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来のワーク位置決め装置にあっては、多種類のワーク毎に専用の受け駒を多数設定するために、大きな設置スペースが必要となり、対応できるワークの種類が限定されるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、多種類のワーク毎に専用の受け駒を設定することなく、多種類のワークに対して位置決め支持できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ワークが当接して位置決めを行う第1の位置決め部と、この第1の位置決め部に対する前記ワークの当接方向に垂直な面と平行な方向からワークが当接して位置決めし、かつ、この当接方向を含む面に対して垂直な面が互いに交差する第2,第3の各位置決め部とをそれぞれ有する位置決め治具を備えることを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、位置決め治具における第1の位置決め部および第2,第3の位置決め部からなる各位置決め部を、ワークの形状や大きさによって使い分けることで、多種類のワーク対し、それぞれ専用の受け駒を設定することなく位置決めすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係わるワーク位置決め装置1の斜視図である。このワーク位置決め装置1は、可動アームとなる左右一対のアーム8を備え、この各アーム8の先端に位置決め治具100をそれぞれ設けており、後述する図11および図12に示すように、例えば自動車の車体パネル材で構成されるエンジンコンプリート4とリアメンバー5を位置決め支持する。
【0011】
アーム8は、位置決めするワークの形状や大きさに合わせて第1の昇降駆動用モータ22により、一対の位置決め治具100が互いに接近離反する方向に下部側を支点として回動可能(図18の矢印D方向)であるとともに、第2の昇降駆動用モータ31により、図1中で上下方向(Z方向)に移動可能である。さらに、アーム8は、第2の昇降駆動用モータ31を設置しているテーブル10とともに図1中でY方向へ移動可能である。このようなアーム8の駆動機構については後述する。
【0012】
アーム8の先端には、位置決め治具支持部材12を介して前述した位置決め治具100を設けており、図2(a)に位置決め治具100の平面図を、図2(b)に同側面図をそれぞれ示す。位置決め治具100は、上記したY方向およびZ方向にそれぞれに直交するX方向に延びる第1の位置決めアーム101と、第1の位置決めアーム101の長手方向適宜位置の両側からからY方向に延びる第2の位置決めアーム103と、これら各位置決めアーム101,103の交差部から上方(Z方向)に延びる突起部としての位置決めピン105とをそれぞれ備えている。位置決めピン105は、第4の位置決め部を構成しており、その先端は球面としている。
【0013】
第1の位置決めアーム101の位置決めピン105を境にして位置決め治具支持部材12側を第1アーム基部107とし、これと反対側を第1アーム先端部109とする。また、第2の位置決めアーム103の位置決めピン105を境にして図2(a)中で下部側を第2アーム一方部111とし、同上部側を第2アーム他方部113とする。
【0014】
上記した第1,第2の各位置決めアーム101,103は、いずれも四角柱形状を呈し、鉛直方向上面が互いに同一平面を形成しており、この同一平面が第1の位置決め部としての第1の位置決め面100aを構成している。この第1の位置決め面100aに、上方からワークが当接して、Z方向の位置決めがなされる。
【0015】
また、第1の位置決めアーム101の第1アーム基部107と、第2の位置決めアーム103の第2アーム一方部111とが交差する部分の内側の側面107aおよび側面111aは、それぞれ第2の位置決め部としての第2の位置決め面および第3の位置決め部としての第3の位置決め面を構成している。
【0016】
同様にして、第1の位置決めアーム101の第1アーム基部107と、第2の位置決めアーム103の第2アーム他方部113とが交差する部分の内側の側面107bおよび側面113aは、それぞれ第2の位置決め部としての第2の位置決め面および第3の位置決め部としての第3の位置決め面を構成している。
【0017】
また、第1の位置決めアーム101の第1アーム先端部109と、第2の位置決めアーム103の第2アーム一方部111とが交差する部分の内側の側面109aおよび側面111bは、それぞれ第2の位置決め部としての第2の位置決め面および第3の位置決め部としての第3の位置決め面を構成している。
【0018】
さらに、第1の位置決めアーム101の第1アーム先端部109と、第2の位置決めアーム103の第2アーム他方部113とが交差する部分の内側の側面109bおよび側面113bは、それぞれ第2の位置決め部としての第2の位置決め面および第3の位置決め部としての第3の位置決め面を構成している。
【0019】
上記図2に示したような位置決め治具100によるワークに対する位置決め例を図3に示す。図3(a)は、ワークWの下方に突出する凸部の底面Waを、第1アーム先端部109の上面に位置する第1の位置決め面100aに当接させるとともに、同側面Wbを、位置決めピン105の側部に当接させて、ワークWに対し前記図1に示したZ方向およびX方向の位置決めを実施している。
【0020】
図3(b)は、ワークWの上記した凸部の底面Waを、図3(a)と同様に、第1アーム先端部109の上面に位置する第1の位置決め面100aに当接させるとともに、底面Waに形成した位置決め孔Wcに位置決めピン105を挿入して、ワークWに対し前記図1に示したZ方向,X方向およびY方向の位置決めを実施している。
【0021】
図3(c)は、ワークWの上記した凸部の側面Wbを、第1アーム先端部109の先端面に当接させるとともに、ワークWの一般面Wdの下面に位置決めピン105の先端を当接させて、ワークWに対し前記図1に示したZ方向およびX方向の位置決めを実施している。
【0022】
図3(d)は、ワークWの上記した凸部の底面Waに下方に向けて突出するボルトBを設け、このボルトBの側面を、例えば第1アーム先端部109と第2アーム一方部111との交差する部位のそれぞれの側面109a,111bに当接させるとともに、ワークWの底面Waに位置決めピン105の先端を当接させて、ワークWに対し前記図1に示したZ方向,X方向およびY方向の位置決めを実施している。
【0023】
図4は、前記図1に示した左右一対の位置決め治具100を、図4中で上下方向に2組使用して、ワークWに対して位置決めを実施している状態を平面図として示す。
【0024】
図4(a)は、前記した図3(a)の位置決め方法を利用しており、各位置決め治具100の位置決めピン105の側部を、ワークWの角部内側の互いに直交する2つの側面(一方の側面は図3(a)の側面Wbに相当)に当接させた状態で、ワークWを各位置決め治具100の第1の位置決め面100aに載せた状態としている。
【0025】
具体的には、図4(a)中で左上の位置決め治具100は、第1アーム先端部109および第2アーム他方部113上にワークWを載せ、同左下の位置決め治具100は、第1アーム先端部109および第2アーム一方部111上にワークWを載せている。また、図4(a)中で右上の位置決め治具100および同右下の位置決め治具100は、上記した左上の位置決め治具100および左下の位置決め治具100に対してそれぞれ左右対称の動作を行う。
【0026】
これにより、ワークWは、図4(a)中でX方向、Y方向および図4(a)中で紙面に直交するZ方向の3方向の位置決めがなされる。
【0027】
図4(b)は、図中で上部の左右一対の位置決め治具100を、前記した図3(b)の位置決め方法に利用した例を示しており、位置決めピン105をワークWの位置決め孔に挿入し、かつワークWを第1の位置決め面100aに載せた状態としている。一方、図中で下部の左右一対の位置決め治具100は、前記した図3(a)の位置決め方法に利用した例を示しており、ワークWを第1アーム先端部109上の第1の位置決め面100aに載せた状態とすると同時に、位置決めピン105の一側部をワークWの側面に当接させている。
【0028】
これにより、ワークWは、上部の左右一対の位置決め治具100により、図4(b)中でX方向、Y方向および紙面に直交するZ方向の3方向の位置決めがなされ、また下部の左右一対の位置決め治具100により、X方向およびZ方向の位置決めがなされる。
【0029】
図4(c)は、図中で上部および下部の各一対の位置決め治具100を、前記した図3(d)の位置決め方法に利用した例を示している。
【0030】
このうち、図4(c)中で上部の一対の位置決め治具100は、ワークWの下面に図中で紙面裏側に向けて突出したボルトBの側部を、第1アーム先端部109の側面109bと第2アーム他方部113の側面113bに当接させるとともに、位置決めピン105の先端をワークWの底面(図3(d)の底面Waに相当)に当接させ、これにより、ワークWは、図4(c)中でX方向、Y方向および紙面に直交するZ方向の3方向の位置決めがなされる。
【0031】
一方図4(c)中で下部の一対の位置決め治具100は、ワークWの下面に図中で紙面裏側に向けて突出したボルトBを、第1アーム先端部109の側面109aと第2アーム一方部111の側面111bに当接させるとともに、位置決めピン105の先端をワークWの底面(図3(d)の底面Waに相当)に当接させ、これにより、ワークWは、図4(c)中でX方向、Y方向および紙面に直交するZ方向の3方向の位置決めがなされる。
【0032】
もちろん、上記した位置決め治具100によって位置決めするワークWは、図4に示す形状や大きさに限ることはなく、各種形状や大きさのワークに対し、位置決め治具100を用い、図3に示したような各種の方法を利用して位置決め支持することができる。
【0033】
上記したような本実施形態による位置決め治具100を使用し、ワークWのZ方向の位置決めを行う第1の位置決め面100aと、同Y方向の位置決めを行う第2の位置決め面となる側面107a,107b,109a,109bと、同X方向の位置決めを行う第3の位置決め面となる側面111a,113a,111b,113bと、第4の位置決め部となる位置決めピン105とを、ワークWの形状や大きさによって適宜使い分けることで、多種類のワークに対し、それぞれ専用の受け駒を設定することなく、また大きな設置スペースを必要とすることなく、位置決めすることができる。
【0034】
なお、上記した位置決め具100を利用してワークWの位置決めを行う際には、第1の位置決め面100aと、第2の位置決め面となる側面107a,107b,109a,109bと、第3の位置決め面となる側面111a,113a,111b,113bと、第4の位置決め部となる位置決めピン105の4つの位置決め部のうちの少なくとも2つの位置決め部を、ワークWの対応する部位に当接させて位置決めし、かつ左右一対の位置決め治具100相互間、あるいは複数のワーク位置決め装置1相互間で、使用する位置決め部を適宜変化させることで、ワークWに対してX,Y,Zの3方向の位置決めを行うことができる。
【0035】
また、専用の受け駒を多数設ける必要がないことから、ワークWに対し溶接作業を行うような場合に、ワークWの溶接打点部に溶接ガンが入り込むスペースを確保することができる。
【0036】
さらに、自動車の車体パネル材を位置決めするような場合に、車種追加毎に、専用の受け駒を追加して位置決め装置自体を見直すような不具合も防止することができ、従来車種に対応する受け駒を再製作するといったことも不要であり、車種追加の構想、設計、製作、組み付け、修正、確認工数を大幅に低減することができる。
【0037】
なお、前記図2に示した形状の位置決め治具100の他、図5に示すようなL形状の位置決め治具200を用いることもできる。図6(a)は、位置決め治具200の平面図、図6(b)は、同側面図である。
【0038】
図5,図6に示した位置決め治具200は、前記したX方向に延びる第1の位置決めアーム201と、第1の位置決めアーム201の先端からY方向の一方側に延びる第2の位置決めアーム203と、第1の位置決めアーム201と第2の位置決めアーム203との交差部の上面からZ方向上方に延びる突起部としての位置決めピン205とを、それぞれ備えている。
【0039】
第1,第2の各位置決めアーム201,203は、図2のものと同様に四角柱形状を呈し、その各Z方向上面が、互いに同一平面を形成しており、この同一平面が第1の位置決め部としての第1の位置決め面200aを構成している。この第1の位置決め面200aに上方からワークの一部位が当接して位置決めされる。
【0040】
また、第1の位置決めアーム201と第2の位置決めアーム203とが交差するそれぞれの内側の側面201aおよび側面203aは、第2の位置決め部としての第2の位置決め面および第3の位置決め部としての第3の位置決め面を構成している。
【0041】
なお、上記図5の形状に代えて、第2の位置決めアーム203を、第1の位置決めアーム201に対して図5とは逆の方向に屈曲するL字形状としてもよく、また第2の位置決めアーム203を、第1の位置決めアーム201の先端から左右両方に突出させてT字形状としてもよく、その他、ワークに対する前記した第1〜第4の各位置決め部を備える構成であれば、上記の形状に限定されるものではない。
【0042】
また、図7(a),(b)に示すように、図1の位置決め治具100における位置決めピン105近傍の第1アーム基部107の上面に溝115を設け、パネル状のワークWの縁部Fを挿入して位置決めするようにしてもよい。この溝115は、図5,図6に示した位置決め治具200における位置決めピン205近傍の第1の位置決めアーム201上に設けてもよい。
【0043】
上記図5,6に示した位置決め治具200あるいはその他の上記した形状の位置決め治具を、前記図1におけるアーム8の先端に設けることで、図3,図4に示したような各パターンの位置決め作業を行うことができる。この際、位置決め治具は、左右一対のアーム8に同一形状のものを設置する必要はなく、異なる形状のものを適宜設けるようにしてもよく、また、後述する図11,図12に示すように、本ワーク位置決め装置1をワーク搬送方向に複数設置する際、これら各ワーク位置決め装置1相互間で、異なる形状の位置決め治具を用いてもよい。
【0044】
図8(a)は、図2の位置決め治具100に対し、前記図3(a)での使用例の変形例を示す位置決め治具300である。図8(b)は図8(a)のワークWを省略した状態のA矢視図である。この位置決め治具300は、第1アーム先端部109の位置決めピン105に近接する位置に、位置決め部材として環状の薄板からなる板ばね117を取り付けている。
【0045】
この環状の板ばね117にアーム部となる第1アーム先端部109を遊嵌状に挿入し、板ばね117の図8(a)中で右側の一側部を位置決めピン105に接触させた状態で、板ばね117の下部を第1アーム先端部109の下面にボルト119で固定する。これにより、板ばね117の上部と第1アーム先端部109との間に、板ばね117が弾性変形する際の変形空間121を設ける。
【0046】
図8(a)の構成で、図3(a)と同様にしてワークWの位置決めを行う際には、ワークWの下方に突出する凸部の底面Waを、第1アーム先端部109の上面に位置する第1の位置決め面100aに当接させた状態で、同側面Wbを、板ばね117の位置決めピン105と反対側の側部に当接させる。
【0047】
これにより、図3(a)のワークWに対してその側面Wbの位置が、図3(a)中で左右方向(X方向)に異なるワークに対して位置決め作業を行うことができる。
【0048】
また、図8の位置決め治具300を利用して、図9(a)に示すように、図3(a)と同等の位置決め作業を行うこともできる。図9(b)は図9(a)のB矢視図である。
【0049】
すなわち、ワークWを板ばね117の上から第1アーム先端部109上に載置して板ばね117を押し潰すように弾性変形させる。この際、第1アーム先端部109上には、板ばね117の上部が入り込む凹部123を形成してあり、この凹部123に板ばね117が入り込むことで、ワークWの底面Waが第1アーム先端部109の上面、すなわち第1の位置決め面100aに当接することになる。
【0050】
図10は、図8の例に対し、板ばね117(117a,117b,117c)を位置決めピン105から離れる方向に複数並べて配置した位置決め治具400を示している。例えば、図10(a)のように、位置決めピン105から最も離れた位置にある板ばね117aを、図9と同様にして押し潰して弾性変形させ、ワークWの底面Waを第1の位置決め面100aに当接させる。この際、ワークWの側面Wbは中央位置にある板ばね117bの側部に当接する。図10(b)は図10(a)のC矢視図である。
【0051】
このように、板ばね117を複数設けることで、側面Wbの位置が各種異なるワークWに対して位置決めすることができる。
【0052】
図11は、位置決めピン105に隣接する環状の板ばね117fの内側に、板ばね117fより環状部分の直径が小さく、かつ図11(a)中で左右方向の長さが長い環状の板ばね117eを配置し、さらに板ばね117eの内側に、板ばね117eより環状部分の直径が小さく、かつ図11(a)中で左右方向の長さが長い環状の板ばね117dを配置した位置決め治具500を示している。これら各板ばね117e、117dは、位置決めピン105と反対側の端部が前記板ばね117fの同端部から突出する第2の環状の板ばねを構成している。図11(b)は図11(a)のE矢視図である。
【0053】
そして、ボルト119aで3つの板ばね117f,117e,117dを同時に固定し、またボルト119bで2つの板ばね117e,117dを同時に固定し、さらに、ボルト119cで板ばね117dのみを固定している。
【0054】
図11(a),(b)で示す状態は、2つの板ばね117e,117dを同時に押し潰して弾性変形させており、2つの板ばね117e,117dが凹部125に入り込み、ワークWの底面Waが、第1アーム先端部109の上面、すなわち第1の位置決め面100aに当接している。
【0055】
また、ワークWの側面Wbを位置決めピン105の側部に当接させる場合には、3つの板ばね117f,117e,117dを同時押し潰すので、上記した凹部125は、これら3つの板ばね117f,117e,117dが入り込む深さとなるように、前記図10の凹部123に比べて深く形成してある。
【0056】
上記した図11の例では、図10の例と異なり、単に複数の板ばねを並べただけではなく、板ばね117fの内側に位置する板ばね117eや117dの図11(a)中で左右方向の長さ(幅)を適宜設定することで、板ばね117eについては板ばね117fからの左方向への突出量を微少に設定でき、また板ばね117dについては板ばね117eからの左方向への突出量を微少に設定できる。
【0057】
これにより、ワークWの側面Wbの図11(a)中で左右方向の位置が僅かに異なるワークWに対しての位置決めが行える。このような側面Wbの位置が僅かに異なるワークWを、図10の例で実施しようとすると、各板ばね117b,117aの幅寸法(図10(a)中で左右方向の幅)をより小さいものとする必要があるので、板ばねの製造が困難なのものとなるが、上記した図11の例では、このような問題が発生することなく、対応することができる。
【0058】
上記したような位置決め治具100(200,300,400,500)を備えたワーク位置決め装置1は、図12および図13に示すように、自動車の車体組立ライン上に平行に配置(敷設)された一対の搬送用レール2、2に沿ってスライド自在とされるベースプレート3上に配置される。図2では、搬送用レール2、2は図示を省略してある。
【0059】
ここでは、4台のワーク位置決め装置1を各ベースプレート3上に配置させ、それらワーク位置決め装置1のそれぞれを、自動車一台分となるエンジンコンプリート4とリアメンバー5(ワーク)を位置決め支持することのできる適正な位置となるように搬送用レール2、2に沿って移動させ、当該ワーク位置決め装置1でこれらエンジンコンプリート4とリアメンバー5とを位置決め支持させる。そして、これらワーク位置決め装置1を、前記組立ラインに設けられた組立工程や溶接工程などの各工程へと順次搬送させるようにする。具体的には、隣接する工程間で前工程から後工程へワークを支持して搬送させる。
【0060】
前記ワーク位置決め装置1を載せた4台のベースプレート3は、前記一対の搬送用レール2、2間に配置(敷設)された連結棒6で連結されて一つの装置ユニットを構成し、図示を省略する駆動制御部で駆動制御されることにより、それらが一体となって搬送用レール2、2に沿って、ワークに対して各種加工を行う各ワーク加工工程間を往復動自在とされる。連結棒6は、例えば断面略矩形状の中空パイプとされ、ボルト・ナットなどの締結手段で各ベースプレート3の下面に固定される。
【0061】
なお、前記搬送用レール2、2の下には、この搬送用レール2、2を支えるためのレール受け台7、7がフロア上に固定されている。
【0062】
ワーク位置決め装置1は、図1,図14および図15に示すように、エンジンコンプリート4またはリアメンバー5を位置決めして支持するワーク位置決め治具100と、この位置決め治具100を先端部に取り付けた前述の2組のアーム8、8と、このアーム8、8の基端部8aを中心として該アーム8、8を閉じた状態と開いた状態に開閉自在とし、該アーム8、8の先端部に取り付けた前記位置決め治具100をエンジンコンプリート4及びリアメンバー5の被係合部と係合可能な位置までアーム8、8を外側に開いた係合位置と該係合位置からアーム8、8を内側に閉じた非係合位置にそれぞれ配置させるアーム開閉手段と、前記位置決め治具100、アーム8、8及びアーム開閉手段とからなるワーク位置決め機構部9全体を、前記エンジンコンプリート4またはリアメンバー5に対して接近離反させる昇降手段と、前記ワーク位置決め機構部9及び前記昇降手段を載せたテーブル10を、前記エンジンコンプリート4またはリアメンバー5を位置決め支持する位置へと移動させる移動手段とを備えている。
【0063】
アーム8、8は、図16示すように、ワーク搬送方向(Y方向)から見て平面視くの字形状とされた2組のアーム8、8からなる。各組のアーム8、8は、それぞれ第1アーム8A及び第2アーム8Bの2本で構成されている。第1アーム8A及び第2アーム8Bは、後述するワーク位置決め機構部9を構成する部品の一つであるアーム取付プレート13(図17を参照)に対して可動自在に取り付けられている。
【0064】
すなわち、第1アーム8Aは、アーム取付プレート13に固定された支持軸14にその基端部8aを回転自在に取り付けることにより、該支持軸14を中心として可動自在とされる。第2アーム8Bは、前記アーム取付プレート13と連結されるアーム支持プレート15との間に固定されたシャフト16にその基端部8aを回転自在に取り付けることにより、該シャフト16を中心として可動自在とされる。
【0065】
また、この第1アーム8A及び第2アーム8Bの先端部8bは、何れも位置決め治具支持部材12に所定間隔を置いて取り付けられた支持軸17に対して回動自在とされている。したがって、この2本の第1アーム8Aと第2アーム8Bからなるアーム8は、いわゆる平行リンク機構とされ、その先端部8bに取り付けた位置決め治具支持部材12を常に水平状態を保った状態に支持すると共に、その位置決め治具支持部材12に固定された位置決め治具100における位置決めピン105の先端を常に上方に向けた状態を保つ。
【0066】
アーム開閉手段は、図16及び図17に示すように、第1アーム8Aの先端部8bと基端部8aの中途位置に一端18aを連結させたリンク部材18と、このリンク部材18の他端18bを連結させた昇降部材19と、該昇降部材19を上下動させてこの昇降部材19に連結させたリンク部材18を回動させることにより、該リンク部材18に連結された前記第1アーム8Aを開閉自在とする昇降部材駆動機構部とからなる。
【0067】
リンク部材18は、第1アーム8Aの基端部8a寄りの位置に固定された支持軸20にその一端18aを回動自在に取り付けることにより、該支持軸20を中心として可動自在とされる。また、このリンク部材18は、昇降部材19に固定された支持軸21の先端にその他端18bを回動自在に取り付けることにより、該支持軸21を中心として可動自在とされる。
【0068】
昇降部材駆動機構部は、昇降部材19を上下動させるための第1の昇降駆動用モータ22と、この第1の昇降駆動用モータ22の動力を伝達する一対の第1のプーリー23、23と、これら第1のプーリー23、23間に掛けられた第1の駆動ベルト24と、一方の第1のプーリー23に基端部を固定させて回転する第1のボールねじ25と、昇降部材19を一面に固定し、該第1のボールねじ25に沿って上下動する第1のナット部材26とから構成される。
【0069】
第1の昇降駆動用モータ22は、昇降テーブル27に固定され、一対の第1のプーリー23、23間に掛けられた第1の駆動ベルト24を介して回転力を伝達し、その一方の第1のプーリー23に固定された第1のボールねじ25を正逆方向に回転させることにより、この第1のボールねじ25に螺合する第1のナット部材26を上下動させて、該第1のナット部材26に固定した昇降部材19を昇降動させる。かかる第1の昇降駆動用モータ22は、例えばステッピングモータなどから構成され、駆動制御部に指示されることによって前記昇降部材19を所望の位置に高精度に昇降動可能とする。
【0070】
第1のプーリー23、23及び第1の駆動ベルト24は、昇降テーブル27の内部に回転自在に配置されている。第1のボールねじ25及び第1のナット部材26は、昇降テーブル27に垂直に固定された四角柱形状をなす第1のガイド支柱28の中に設けられている。第1のナット部材26は、その殆どの部位がこの第1のガイド支柱28で覆われるが、昇降部材19を取り付ける側の一面は外側へ突出している。この第1のナット部材26には、第1のボールねじ25と螺合するねじ部(図示は省略する)が形成されており、該第1のボールねじ25が回転することで、第1のナット部材26がこの第1のボールねじ25に送られて下端位置から上端位置の間を昇降動するようになっている。
【0071】
このように構成されたアーム開閉手段では、エンジンコンプリート4及びリアメンバー5を位置決め支持する前の待機状態(図15及び図18に示す状態)では、2組のアームが交差して各アーム8、8の先端部に取り付けた位置決め治具100を該アーム8、8の内側の位置に配置させた状態とされる。つまり、位置決め治具100は、外側に配置された第2アーム8Bの先端部8bの内側に位置し、ワーク位置決め装置1の両側に配置された各工程で使用される治具29、30などと接触しないように待避した位置に設けられる。
【0072】
この待機状態から駆動制御部より指令を受けて第1の昇降駆動用モータ22が駆動し、第1のプーリー23、23及び第1の駆動ベルト24を介して第1のボールねじ25が回転させられると、この第1のボールねじ25に螺合する第1のナット部材26が上方位置へと送られる(上昇させられる)。このとき、第1のナット部材26に固定された昇降部材19も一緒に上昇するが、その昇降部材19の上昇に伴って、この昇降部材19に固定された支持軸21に回動自在に取り付けられるリンク部材18が、該支持軸21に取り付けられた他端18bを中心として図18中矢印Dで示す方向へ回動して行き、その一端18aに連結した第1アーム8Aを外側へ開くように回動させて行く。かかる第1アーム8Aが外側へ開くように回動すると、この第1アーム8Aの先端部8bに固定された位置決め治具支持部材12に連結される第2アーム8Bもこれに連動して外側へ一緒に回動する。
【0073】
そして、2組のアーム8、8は、図16及び図20に示すように、右側と左側にそれぞれ外側へ大きく羽ばたくようにして開き、各アーム8、8の先端部8bに取り付けた位置決め治具100を、該アーム8、8の先端部8bからさらに外側に配置させるようになる。これらアーム8、8が回動する一連の状態では、平行リンク機構を構成する第1アーム8Aと第2アーム8Bにより、位置決め治具支持部材12は、常に位置決め治具100を真上に保持した水平状態を保ちながら移動する。そのため、このアーム8、8の開き角度に拘わらず、どの状態でもエンジンコンプリート4及びリアメンバー5を位置決め支持することのできる状態とされ、大きさや形状の異なるワークに対してもこの1つ位置決め治具100だけで位置決め支持することができる。
【0074】
昇降手段は、図1及び図14に示すように、前記した位置決め治具100、アーム8、8及びアーム開閉手段とからなるワーク位置決め機構部9全体を、前記エンジンコンプリート4またはリアメンバー5に対して接近離反させるためのものであり、前記ワーク位置決め機構部9を上下動させるための第2の昇降駆動用モータ31と、この第2の昇降駆動用モータ31の動力を伝達する一対の第2のプーリー33、33と、これら第2のプーリー33、33間に掛けられた第2の駆動ベルト34と、一方の第2のプーリー33に基端部を固定させて回転する第2のボールねじ35と、前記したアーム取付プレート13を一面に固定し、該第2のボールねじ35に沿って上下動する第2のナット部材36とから構成される。
【0075】
第2の昇降駆動用モータ31は、前記したテーブル10上に固定されている。この第2の昇降駆動用モータ31は、一対の第2のプーリー33、33間に掛けられた第2の駆動ベルト34を介して回転力を伝達し、その一方の第2のプーリー33に固定された第2のボールねじ35を正逆方向に回転させることにより、この第2のボールねじ35に螺合する第2のナット部材36を上下動させて、該第2のナット部材36に固定したワーク位置決め機構部9全体を昇降動させる。この第2の昇降駆動用モータ31は、第1の昇降駆動用モータ22と同様、ステッピングモータからなり、駆動制御部に指示されることによって前記ワーク位置決め機構部9を所望の位置に高精度に昇降動可能とする。
【0076】
第2のプーリー33、33及び第2の駆動ベルト34は、テーブル10に垂直に固定された四角柱形状をなす第2のガイド支柱38の下端に設けられたケース39内に配置されている。この第2のガイド支柱38の中には、前記第2のボールねじ35と前記第2のナット部材36とが配置されている。第2のナット部材36には、第2のボールねじ35と螺合するねじ部(図示は省略する)が形成されており、該第2のボールねじ35が回転することで、第2のナット部材36がこの第2のボールねじ35に送られて下端位置から上端位置の間を昇降動するようになっている。
【0077】
このように構成された昇降手段では、第2の昇降駆動用モータ31が駆動し、第2のプーリー33、33及び第2の駆動ベルト34を介して第2のボールねじ35が回転させられると、この第2のボールねじ35に螺合する第2のナット部材36が上下方向に送られる(昇降動させられる)。したがって、この第2のナット部材36に前記アーム取付プレート13を固定させたワーク位置決め機構部9は、図18に示す下端まで下降させた待機位置と図17に示す所定位置まで上昇させた係合位置との間を昇降動することになる。
【0078】
移動手段は、前記ワーク位置決め機構部9及び前記昇降手段を載せたテーブル10を、前記エンジンコンプリート4またはリアメンバー5を位置決め支持するワーク支持位置へと移動させるためのもので、テーブル10をスライド自在とする一対の移動用レール37、37と、ラックギア40が形成されたラックレール41と、テーブル10に固定されたテーブル移動用モータ42と、このテーブル移動用モータ42に取り付けられ、ラックギア40と歯合して前記テーブル10を移動させるピニオンギア43とからなる。
【0079】
移動用レール37、37は、4個のベースプレート3を橋渡しするように連続して設けられ、該ベースプレート3上に固定されたレール基盤44の上に固定されている。ラックレール41は、一方の移動用レール37に近接して設けられ、前記レール基盤3上に固定されている。このラックレール41には、その長手方向に沿ってラックギア40が形成されている。テーブル移動用モータ42は、前記テーブル10に固定され、そのテーブル10の下面に突き出たピニオンギア43を前記ラックギア40に歯合させて回転させることで、前記テーブル10を移動用レール37、37に沿って往復動自在とする。なお、テーブル移動用モータ42は、制御部で制御可能なステッピングモータからなる。
【0080】
本実施の形態では、テーブル移動用モータ42を駆動してワーク位置決め機構部9及び昇降手段を載せた各テーブル10を、少なくともそれぞれのワーク支持位置まで移動できれば良いが、必要に応じてこれら各テーブル10を一個所の位置に集合させて移動させることもできる。
【0081】
次に、上述のように構成されたワーク位置決め装置1でワーク(エンジンコンプリート4及びリアメンバー5)を位置決め支持し、そのワークを搬送する動作について説明する。
【0082】
先ず、テーブル移動用モータ42を駆動し、ラックギア40と歯合するピニオンギア43を回転させることにより、前記テーブル10を前記移動用レール37、37に沿って移動させる。かかるテーブル10は、その上に設けたワーク位置決め機構部9が、図12及び図13に示す位置にセットされたエンジンコンプリート4及びリアメンバー5の下方位置と対応するワーク支持位置と対応する位置まで移動される。
【0083】
次に、第2の昇降駆動用モータ31を駆動し、図15のアーム8、8が閉じた待機状態から該アーム8、8が閉じた状態を保持したままの状態で、第2のナット36を上昇させることにより、前記ワーク位置決め機構部9を周囲の治具29、30などと干渉しない位置まで上昇させる。
【0084】
次いで、第1の昇降駆動用モータ22を駆動し、第1のナット部材26を上昇させることにより前記したリンク部材18を回動させ、閉じた状態にある2組のアーム8、8をそれぞれ図15中二点鎖線で示すように外側へ開かせる。
【0085】
そして、各アーム8、8の位置決め治具100、100における複数の位置決め部(第1の位置決め面100aや位置決めピン105など)がエンジンコンプリート4及びリアメンバー5の被係合部と適宜係合可能位置となったところで、再び第2の昇降駆動用モータ31を駆動してワーク位置決め機構部9を上昇させ、前記位置決め治具100でエンジンコンプリート4及びリアメンバー5を位置決め支持させる。
【0086】
この位置決め支持は、前述した図3、図4に示したようなワークWの形状や大きさに応じた各種の方法を利用して適宜行うことができる。
【0087】
エンジンコンプリート4及びリアメンバー5をワーク位置決め機構部9で位置決め支持したら、図示しない駆動源を駆動して連結棒6で連結した4台のベースプレート3を前記搬送用レール2、2に沿って移動させ、エンジンコンプリート4及びリアメンバー5を、隣接する次の工程(後工程)へと搬送させる。ワーク搬送後の回送は、前記した動作の逆の動作を行い、アーム8、8を閉じた状態に戻すと共にワーク位置決め機構部9を待機位置として隣接する前の工程(前工程)へと回送させる。
【0088】
本実施の形態のワーク位置決め装置1によれば、エンジンコンプリート4やリアメンバー5などのワークを位置決めして支持する位置決め治具100をアーム8、8の先端部に取り付け、そのアーム8、8を閉じた状態と開いた状態に開閉自在として該位置決め治具100を係合位置と非係合位置にそれぞれ配置させ、また、位置決め治具100をワークに対して接近離反させるようにしたので、車種毎に大きさや形状の異なるワークに対して前記アーム8、8の開き度合いと位置決め治具100の昇降位置とを適宜調整することにより、多車種に応じた複数種類のワークを、専用のワーク受け部やシリンダを使用することなく位置決め支持することができる。
【0089】
また、本実施の形態のワーク位置決め装置1によれば、ワーク搬送終了後に非係合位置でアーム8、8を閉じた状態とし、そのアーム8、8の先端部に取り付けた位置決め治具100をワークより離反させた位置まで下降させて待機しておけば、ワーク受取位置(前工程)まで回送する際に組立ライン上の各工程に配置された治具29、30などと干渉するのを防止できる。
【0090】
また、本実施の形態のワーク位置決め装置1によれば、昇降部材19の上下動に連動させてリンク部材18を回動させることによりアーム8、8を開閉自在とするリンク機構でアーム開閉手段を構成したので、異なる大きさや形状の複数種類のワークに対しても、そのアーム8、8の開き角度を適宜調整することで、簡単にワークを位置決め支持することができる。
【0091】
また、本実施の形態のワーク位置決め装置1によれば、アーム8、8を閉じたときにそれら2組のアーム8、8が交差して各アーム8、8の先端部に取り付けた位置決め治具100をアーム8、8の先端部の内側の位置に配置させたことから、前工程へと回送させる際に、その周囲に配置させた治具29、30などにアーム8、8が接触するのを防止できる。
【0092】
また、本実施の形態のワーク位置決め装置1によれば、各組のアーム8、8を、それぞれ2本のアームにていわゆる平行リンク機構としたので、位置決め治具100を常に水平に保つことができる。そのため、アーム8、8の開き角度の大小に拘わらず位置決め治具100が常に水平であるから、複数種類のワークでも容易に位置決め支持することができる。
【0093】
また、本実施の形態のワーク位置決め装置1によれば、ワーク位置決め機構部9及び昇降手段を載せたテーブル10をワーク支持位置へと移動させる移動手段を、テーブル移動用モータに設けたピニオンギア43とラックギア40とを歯合させることにより前記移動用レール37、37に沿って該テーブル10を移動自在とする構成としたので、従来からある移動手段を使用した低コストの装置とすることができる。さらに、移動用レール37、37をレール基盤44と共に4個のベース3を橋渡しするように連続して設けたので、装置ユニット全体の剛性部材として機能させることができ、他の構成部材の板厚低減など軽量化が可能となる。
【0094】
また、本実施の形態のワーク位置決め装置1によれば、テーブル10を含めた装置全体を配置したベースプレート3の複数個を連結手段で連結してなる装置ユニットを、各ワーク加工工程間を往復動させているので、各ベースプレート3毎に移動させる面倒な制御をする必要が無い。
【0095】
以上、本発明を適用した具体的な実施の形態について説明したが、上述の実施の形態は、本発明の一例に過ぎないからこれら実施の形態に、本発明が限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の一実施形態に係わるワーク位置決め装置の斜視図である。
【図2】(a)は図1のワーク位置決め装置に使用する位置決め治具の平面図、(b)は同側面図である。
【図3】図2の位置決め治具によるワークに対する各種位置決め例を示す説明図である。
【図4】図3の位置決め例をより具体的に示した平面図である。
【図5】位置決め治具の他の例を示す斜視図である。
【図6】(a)は図5の位置決め治具の平面図、(b)は同側面図である。
【図7】(a)は図2の位置決め治具における第1アーム基部の上面に溝を設けた例を示す平面図、(b)は同側面図である。
【図8】(a)は位置決め治具のさらに他の例を示す位置決め時の正面図、(b)は(a)のA矢視図である。
【図9】(a)は図8の位置決め治具による他のワークを位置決めする際の正面図、(b)は(a)のB矢視図である。
【図10】(a)は図8の位置決め治具の変形例を示す位置決め時の正面図、(b)は(a)のC矢視図である。
【図11】(a)は図8の位置決め治具のさらに変形例を示す位置決め時の正面図、(b)は(a)のE矢視図である。
【図12】図1のワーク位置決め装置を複数用いてワークを位置決め支持した状態を示す側面図である。
【図13】図12の平面図である。
【図14】図1のワーク位置決め装置の側面図である。
【図15】図1のワーク位置決め装置の正面図である。
【図16】図1本実施の形態のワーク位置決め装置の要部を示す斜視図である。
【図17】図1のワーク位置決め装置におけるアーム開閉手段の一部を取り出して示す斜視図である。
【図18】アームが閉じた待機状態におけるワーク位置決め装置の正面図である。
【図19】アームが開いた係合状態におけるワーク位置決め装置の正面図である。
【図20】アームが開いた係合状態におけるワーク位置決め装置の平面図である。
【符号の説明】
【0097】
W ワーク
F ワークの縁部
1 ワーク位置決め装置
8 アーム(可動アーム)
100a 第1の位置決め面(第1の位置決め部)
105 位置決めピン(第4の位置決め部)
107a,107b,109a,109b 側面(第2の位置決め面,第2の位置決め部)
111a,111b,113a,113b 側面(第3の位置決め面,第3の位置決め部)
115 ワークの縁部を挿入する溝
117(117a,117b,117c,117f) 環状の板ばね(位置決め部材)
117(117d,117e) 第2の環状の板ばね(位置決め部材)
121 板ばねが弾性変形する際の変形空間
123,125 凹部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークが当接して位置決めを行う第1の位置決め部と、この第1の位置決め部に対する前記ワークの当接方向に垂直な面と平行な方向からワークが当接して位置決めし、かつ、この当接方向を含む面に対して垂直な面が互いに交差する第2,第3の各位置決め部とをそれぞれ有する位置決め治具を備えることを特徴とするワーク位置決め装置。
【請求項2】
前記位置決め治具は、前記第1の位置決め部に立設する突起部からなる第4の位置決め部を備えることを特徴とする請求項1に記載のワーク位置決め装置。
【請求項3】
前記第4の位置決め部は、前記第1の位置決め部に対する前記ワークの当接方向と平行な方向に立設する位置決めピンからなることを特徴とする請求項2に記載のワーク位置決め装置。
【請求項4】
前記第1の位置決め部に、前記ワークの縁部を挿入する溝を設けたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のワーク位置決め装置。
【請求項5】
前記第4の位置決め部の側部に隣接する位置の前記第1の位置決め部上に位置決め部材を設け、この位置決め部材は、前記第1の位置決め部上に前記ワークの一部位が当接して位置決めした状態で、側部に前記ワークの他の部位が当接して位置決めするとともに、前記位置決め部材を間に挟んで前記第1の位置決め部と反対側から、ワークを第1の位置決め部に当接させるべく移動させる際に、弾性変形して前記ワークを前記第1の位置決め部に当接させることを特徴とする請求項2または3に記載のワーク位置決め装置。
【請求項6】
前記第1の位置決め部上に、前記位置決め部材が弾性変形する際に入り込む凹部を設けたことを特徴とする請求項5に記載のワーク位置決め装置。
【請求項7】
前記位置決め部材を、前記第4の位置決め部から離れる方向に複数並べて配置したことを特徴とする請求項5または6に記載のワーク位置決め装置。
【請求項8】
前記位置決め部材を環状の板ばねで構成し、前記第1の位置決め部を有するアーム部を、前記環状の板ばねに遊嵌状に挿入し、この板ばねを、前記アーム部における前記第1の位置決め部と反対側の部位に固定し、前記第1の位置決め部と前記板ばねの内周面との間に、この板ばねが弾性変形する際の変形空間を設けたことを特徴とする請求項5ないし7のいずれか1項に記載のワーク位置決め装置。
【請求項9】
前記環状の板ばねの内側に、前記第4の位置決め部と反対側の端部が前記板ばねの同端部から突出する第2の環状の板ばねを、前記アーム部における前記第1の位置決め部と反対側の部位に固定して設けたことを特徴とする請求項8に記載のワーク位置決め装置。
【請求項10】
前記位置決め治具を、前記ワークの幅方向両側を位置決めするよう左右一対設けたことを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載のワーク位置決め装置。
【請求項11】
前記位置決め治具を、前記ワークの形状に合わせて移動可能な可動アームに受けたことを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項に記載のワーク位置決め装置。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれか1項に記載のワーク位置決め装置における前記位置決め部の、少なくとも2箇所の位置決め部を、前記ワークに当接させて位置決めするワーク位置決め方法。
【請求項1】
ワークが当接して位置決めを行う第1の位置決め部と、この第1の位置決め部に対する前記ワークの当接方向に垂直な面と平行な方向からワークが当接して位置決めし、かつ、この当接方向を含む面に対して垂直な面が互いに交差する第2,第3の各位置決め部とをそれぞれ有する位置決め治具を備えることを特徴とするワーク位置決め装置。
【請求項2】
前記位置決め治具は、前記第1の位置決め部に立設する突起部からなる第4の位置決め部を備えることを特徴とする請求項1に記載のワーク位置決め装置。
【請求項3】
前記第4の位置決め部は、前記第1の位置決め部に対する前記ワークの当接方向と平行な方向に立設する位置決めピンからなることを特徴とする請求項2に記載のワーク位置決め装置。
【請求項4】
前記第1の位置決め部に、前記ワークの縁部を挿入する溝を設けたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のワーク位置決め装置。
【請求項5】
前記第4の位置決め部の側部に隣接する位置の前記第1の位置決め部上に位置決め部材を設け、この位置決め部材は、前記第1の位置決め部上に前記ワークの一部位が当接して位置決めした状態で、側部に前記ワークの他の部位が当接して位置決めするとともに、前記位置決め部材を間に挟んで前記第1の位置決め部と反対側から、ワークを第1の位置決め部に当接させるべく移動させる際に、弾性変形して前記ワークを前記第1の位置決め部に当接させることを特徴とする請求項2または3に記載のワーク位置決め装置。
【請求項6】
前記第1の位置決め部上に、前記位置決め部材が弾性変形する際に入り込む凹部を設けたことを特徴とする請求項5に記載のワーク位置決め装置。
【請求項7】
前記位置決め部材を、前記第4の位置決め部から離れる方向に複数並べて配置したことを特徴とする請求項5または6に記載のワーク位置決め装置。
【請求項8】
前記位置決め部材を環状の板ばねで構成し、前記第1の位置決め部を有するアーム部を、前記環状の板ばねに遊嵌状に挿入し、この板ばねを、前記アーム部における前記第1の位置決め部と反対側の部位に固定し、前記第1の位置決め部と前記板ばねの内周面との間に、この板ばねが弾性変形する際の変形空間を設けたことを特徴とする請求項5ないし7のいずれか1項に記載のワーク位置決め装置。
【請求項9】
前記環状の板ばねの内側に、前記第4の位置決め部と反対側の端部が前記板ばねの同端部から突出する第2の環状の板ばねを、前記アーム部における前記第1の位置決め部と反対側の部位に固定して設けたことを特徴とする請求項8に記載のワーク位置決め装置。
【請求項10】
前記位置決め治具を、前記ワークの幅方向両側を位置決めするよう左右一対設けたことを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載のワーク位置決め装置。
【請求項11】
前記位置決め治具を、前記ワークの形状に合わせて移動可能な可動アームに受けたことを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項に記載のワーク位置決め装置。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれか1項に記載のワーク位置決め装置における前記位置決め部の、少なくとも2箇所の位置決め部を、前記ワークに当接させて位置決めするワーク位置決め方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2007−69273(P2007−69273A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−255641(P2005−255641)
【出願日】平成17年9月2日(2005.9.2)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月2日(2005.9.2)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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