説明

不均一触媒を用いるアセチレン及びカルボン酸からのビニルエステルの製造

不均一触媒条件下でカルボン酸とアセチレンを反応させることによってビニルエステルを選択的に製造する方法を開示し、特許請求する。本発明の好ましい態様においては、担持白金触媒の存在下、約100〜180℃の温度において安息香酸とアセチレンを反応させることによって定量的な収率の安息香酸ビニルが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この正規出願は、2009年5月7日出願の同じ標題の米国特許出願12/387,749の出願日の利益を主張する。ここに米国特許出願12/387,749の優先権を主張し、その開示事項は参照として本明細書中に包含する。
【0002】
本発明は、概してカルボン酸及びアセチレンからビニルエステルを製造する方法に関する。具体的には、本発明は、アセチレンと種々のカルボン酸との反応からビニルエステルを製造するのに好適な一連の不均一触媒系に関する。好ましい態様においては、本発明は不均一触媒を用いる安息香酸ビニル(VB)、2−エチルヘキサン酸ビニル(V2EH)、及び種々の他のネオカルボン酸のビニルエステルの形成に関する。
【背景技術】
【0003】
例えば安息香酸ビニルのようなカルボン酸ビニルを形成するための経済的に実行可能なプロセスに対する必要性が長い間感じられている。例えば安息香酸ビニルのようなカルボン酸ビニルは、例えば塗料、接着剤、及び種々の他の被覆配合物、並びにセメントモルタル添加剤などの種々の用途における用途が見出されている。
【0004】
カルボン酸とアセチレンとの反応からカルボン酸ビニルを形成することができることが当該技術において公知である。亜鉛、カドミウム、及び水銀のような卑金属、並びにレニウム、ルテニウム、パラジウム等のような貴金属の触媒などの種々の触媒が提案されている。実際、カルボン酸亜鉛で触媒するプロセスが、10個の炭素原子を含む高分岐構造の合成飽和モノカルボン酸であるVERSATIC(登録商標)酸10のビニルエステルであるVEOVA(登録商標)モノマー10を製造するためにHexion Specialty Chemicalsによって商業化されている。より詳しくは、カルボン酸とアセチレンとの反応からビニルエステルを形成するために用いられるカルボン酸亜鉛触媒が開示されているTannerらの米国特許6,891,052を参照されたい。
【0005】
同様に、カルボン酸をアセチレンと反応させて対応するビニルエステルを形成する種々の他のプロセスが、文献において報告されている。Borsboomらの米国特許3,607,915、及びTransition-Metal-Catalyzed Addition of Heteroatom-Hydrogen Bonds to Akynes, Alonsoら, Chem. Rev., 2004, 104 (6), 3079-3160を参照されたい。特に、Borsboomらは、概して上述したようなカルボン酸のアセチレンとの亜鉛触媒反応を含む他の方法を開示している。一方、Alonsoらは、アセチレンとカルボン酸との反応の触媒的付加化学に関する最新技術の分析を与えている。また、Reppeの米国特許2,066,075、I.G. Farbenindustrie AGのドイツ国特許DE740678、Fischerらの米国特許2,339,066及び2,342,463、General Aniline and Film Corporationの英国特許GB641,438A、Bellerらの米国特許2,472,086、Staeger Reinhardのスイス国特許CH324667、Fernholzらの米国特許3,062,863、Hargraveらの米国特許3,125,593、Engelらの米国特許3,285,941、Shell Internationale Researchのドイツ国特許DE1237557、Hubnerらの米国特許3,646,077、及びWieseらの米国特許6,500,979も参照されたい。
【0006】
また、種々の第VIII族金属コンプレックス触媒がカルボン酸とアセチレンとの反応によるビニルエステルの形成において有効であることも、文献において報告されている。例えば、Sternらの米国特許3,479,392、及びHeiderらの米国特許5,395,960を参照されたい。Sternら及びHeiderらはいずれも、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、又は白金をベースとする触媒の存在下における芳香族カルボン酸のビニル化を開示している。Sternらは、具体的にはアセチレン又はアセチレン系化合物以外の反応物質から置換オレフィンを製造する方法に集中しており、Heiderらは、触媒的ビニル化反応のために好適な分岐脂肪族カルボン酸しか開示しておらず、2−エチルヘキサン酸、4−tert−ブチル安息香酸、スベリン酸、及びコハク酸モノメチルなどの例が与えられている。しかしながら、Heiderらは例として触媒としてルテニウム金属の使用しか開示しておらず、約25〜100のルテニウムに対するカルボン酸の非常に低いモル比を用いている。即ち、Heiderらの条件は、製造されるビニルエステル1モルあたり大量の触媒を必要とする。更に、Heiderらにおいては、7〜17時間のより長い反応時間を用いており、これによってこれらの条件は工業運転のためには不適当である。
【0007】
また、ビニル化技術においては、パラジウムを共触媒としてカドミウム又は亜鉛触媒と共に用いることも公知である。例えば、Farbwerke Hoechst Aktiengesellschaftのドイツ国特許DE1161878、及びShell Internationale Researchの英国特許GB1,130,245を参照されたい。いずれの特許も、亜鉛又はカドミウム触媒及びパラジウム共触媒の存在下での安息香酸及びアセチレンのビニル化を開示している。しかしながら、教示されているパラジウム化合物は遊離パラジウム金属又は塩化パラジウムであり、これらのプロセスは通常は120℃より高い温度において運転される。
【0008】
Lincolnらの米国特許5,430,179は、安息香酸などのカルボン酸をアセチレンなどのアルキンにルテニウム触媒的付加することによって、安息香酸ビニルのようなビニルエステルを合成するための均一プロセスを開示している。Lincolnらは、トルエン又は鉱油のような随意の溶媒、及び約40〜約200℃の温度範囲を含む反応条件を開示している。Lincolnらは更に、液相反応媒体の重量を基準として約50,000ppm〜約0.5ppmのルテニウムの範囲の濃度のルテニウムドデカカルボニルを含む群から選択されるルテニウム触媒を、場合によってはトリフェニルホスフィン、トリス(メトキシフェニル)ホスフィン、又はトリス(p−フルオロメチルフェニル)ホスフィンのようなリガンドと組み合わせて用いることを開示している。しかしながら、Lincolnらは、ここに開示する反応条件下でのピバル酸とアセチレンとの反応からピバル酸ビニルを形成する1つの例しか開示していない。
【0009】
BASF AktiengesellschaftのWO2007/060176A1は、レニウムをベースとする化合物などの金属化合物の群から選択される触媒の存在下でカルボン酸をアルキン化合物と反応させることによってカルボン酸ビニルを製造する方法を提供する。BASFは、具体的にはジレニウムデカカルボニルの存在下で安息香酸とアセチレンを反応させることを開示している。実施例1を参照されたい。この実施例は、388のレニウム原子に対するカルボキシル基のモル比を教示しており、反応は、トルエン溶媒中、140℃において6時間の反応時間にわたって行う。報告されている収率は99%である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許6,891,052
【特許文献2】米国特許3,607,915
【特許文献3】米国特許2,066,075
【特許文献4】ドイツ国特許DE740678
【特許文献5】米国特許2,339,066
【特許文献6】米国特許2,342,463
【特許文献7】英国特許GB641,438A
【特許文献8】米国特許2,472,086
【特許文献9】スイス国特許CH324667
【特許文献10】米国特許3,062,863
【特許文献11】米国特許3,125,593
【特許文献12】米国特許3,285,941
【特許文献13】ドイツ国特許DE1237557
【特許文献14】米国特許3,646,077
【特許文献15】米国特許6,500,979
【特許文献16】米国特許3,479,392
【特許文献17】米国特許5,395,960
【特許文献18】ドイツ国特許DE1161878
【特許文献19】英国特許GB1,130,245
【特許文献20】米国特許5,430,179
【特許文献21】WO2007/060176A1
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Transition-Metal-Catalyzed Addition of Heteroatom-Hydrogen Bonds to Akynes, Alonsoら, Chem. Rev., 2004, 104 (6), 3079-3160
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、ここで、既存のプロセスのいずれも、特に不均一触媒条件下において、ビニル化反応によって安息香酸ビニル(VB)又は2−エチルヘキサン酸ビニル(V2EH)を製造するためには好適ではないことが分かった。更に、従来の亜鉛触媒は、工業的な拡大規模の運転のためには許容できない反応速度及び収率を与えた。更に、VB又はV2EHのようなビニルエステルを製造するための工業的規模の連続運転、半バッチ運転、又はバッチ運転のために容易に用いることができる不均一触媒プロセスは存在しない。而して、不均一担持金属触媒を用いる温和な反応条件下でVB又はV2EHをそれらのそれぞれのカルボン酸から形成する経済的に実行可能な触媒的に活性な反応を開発することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0013】
ここで予期しなかったことに、安息香酸のようなカルボン酸とアセチレンとの反応から安息香酸ビニルを、高い選択率及び収率で、工業的規模で製造することができることが見出された。より詳しくは、本発明は、場合によっては好適な有機溶媒中に溶解しているカルボン酸を、担持金属触媒の存在下、好適な反応温度及び圧力において、場合によっては1種類以上のリガンド又は添加剤又はこれらの混合物の存在下でアセチレンと反応させることを含む、ビニルエステルをそれらの対応するカルボン酸及びアセチレンから選択的に形成するための不均一方法を提供する。
【0014】
本発明方法において用いる触媒は担持金属触媒である。本発明方法において好適な担持金属の例としては、限定なしに、イリジウム、パラジウム、白金、レニウム、ロジウム、及びルテニウムが挙げられる。
【0015】
任意の公知の触媒担体を用いて本発明方法の金属を担持させることができる。代表的な触媒担体としては、限定なしに、炭素、黒鉛、シリカ、チタニア、アルミナ、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、シリカ−アルミナ、シリカアルミネート、ジルコニア、炭酸バリウム、硫酸バリウムなどが挙げられる。
【0016】
ここで、幾つかのリガンド及び添加剤を用いることによって本発明の幾つかの触媒の触媒活性が向上することが見出された。かかる形態を以下に詳細に記載する。しかしながら、幾つかのリガンド及び添加剤の存在下での本発明の幾つかの触媒の他の組合せは、減少した活性を示すことも注意すべきであり、これも以下の詳細な説明から明らかとなる。カルボン酸及びアセチレンによるビニル化反応を起こすことができる種々のリガンド及び添加剤を、本発明方法において用いることができる。
【0017】
また、触媒、並びに場合によっては1種類又は複数のリガンド及び1種類又は複数の添加剤を好適に選択し、それらを好適な量で用いることによって、少なくとも50%のカルボン酸の転化率が得られ、ビニルエステルへの選択率を少なくとも50%にすることができることも見出された。更に、本発明を好適に実施することによって、少なくとも80で約2000以下の相対活性を達成することができる。
【0018】
本発明の他の形態及び有利性を、下記の詳細な説明及び特許請求の範囲において記載する。
下記において添付の図面を参照して本発明を詳細に記載する。図面において同じ数字は同様の構成要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明方法にしたがってカルボン酸及びアセチレンからビニルエステルを製造するために好適な装置の概要図である。
【図2】図2は、本発明にしたがってカルボン酸及びアセチレンからビニルエステルを製造するための1つの好適な工業規模のシステムを示すプロセスフロー図である。
【図3】図3は、本発明方法による種々の触媒金属を用いて達成される安息香酸ビニルへの相対選択率を示す。
【図4】図4は、本発明方法による種々の触媒金属を用いて達成される相対活性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
下記において、幾つかの態様及び複数の例を参照して本発明を詳細に記載する。かかる議論は例示のみの目的である。特許請求の範囲に示す本発明の精神及び範囲内での特定の例に対する修正は、当業者に容易に明らかであろう。ここで用いる用語は、直ぐ下に示す代表的な定義に合致するその通常の意味で与える。
【0021】
ここで用いる不均一触媒とは、触媒反応中に反応物質と異なる相中に存在する触媒を指す。反応を起こさせるためには、1以上の反応物質を触媒表面に拡散させて、その上に吸着させなければならない。反応後は、生成物を表面から脱着させて分散除去させなければならない。これに対して、ここで用いる均一触媒とは、反応物質と同じ相中に存在する触媒を指す。
【0022】
モルパーセント(モル%)などの用語は、他に示さない限りにおいてモルパーセントを指す。重量パーセント(重量%又は%)などの用語は、他に示さない限りにおいて重量パーセントを指す。
【0023】
「転化率」は、反応中に消費される反応物質の割合を指し、供給流中のカルボン酸の量を基準とする質量パーセントとして表す。カルボン酸(CA)の転化率は、ガスクロマトグラフィー(GC)のデータから下式:
【0024】
【化1】

【0025】
(式中、投入CA質量=反応器中に装填(計量投入)されるカルボン酸の質量であり、排出CA質量(GC)=GCデータに基づく反応後のカルボン酸の質量である)
を用いて計算する。
【0026】
「選択率」は、消費されたカルボン酸に対して製造されるビニルエステルの量を指し、転化したカルボン酸を基準とするモル%として表す。例えば、転化率が50モル%であり、転化したカルボン酸の50モル%がビニルエステルに転化している場合には、本発明者らはビニルエステル選択率を50%と言う。ビニルエステル(VE)への選択率は、ガスクロマトグラフィー(GC)のデータから次式:
【0027】
【化2】

【0028】
を用いて計算する。
「収率」は、反応器中に装填されるカルボン酸に対して製造されるビニルエステルの量を指し、反応器中に装填されるカルボン酸を基準とするモル%として表す。ビニルエステル(VE)の収率は、ガスクロマトグラフィー(GC)のデータから次式:
【0029】
【化3】

【0030】
を用いて計算する。上式において、投入CAモル量=反応器中に装填(計量投入)されるカルボン酸のモル数であり、排出CAモル量(GC)=GCデータに基づく反応後のカルボン酸のモル数であり、排出VEモル量(GC)=GCデータに基づく反応後のビニルエステルのモル数である。
【0031】
触媒活性は、以下の式を用いてターンオーバー数(TON)によって求める。TONは、触媒中に含まれるそれぞれの金属原子によって生産される所望の生成物の平均量を指す。
【0032】
【化4】

【0033】
式中、触媒モル量=反応器中に装填(計量投入)される触媒のモル数であり、N金属原子=触媒1モル中の金属原子のモル量である。
例えば、安息香酸ビニルの製造中に用いられる炭素上5重量%装填量の白金に関して計算されるターンオーバー数は、分子として1運転あたりの安息香酸ビニルのグラム量を安息香酸ビニルの分子量(148.15g/モル)で割った値、分母として白金lgに0.05をかけた装填量を白金の分子量(195.084g/モル)で割った値を用いて計算することによって求める。
【0034】
下記の条件下で求められるターンオーバー数に関し、このターンオーバー数をここでは相対活性と呼ぶ。触媒又は系の相対活性を求めるための条件には、4時間のバッチ運転時間、約385:1のカルボン酸:触媒金属の充填モル比、及び120℃の温度が含まれる。リガンドを用いる場合には、リガンドは1:1のリガンド:触媒金属のモル比で利用できる。
【0035】
反応は、次の化学反応式:
【0036】
【化5】

【0037】
(式中、Rは、第1級、第2級、又は第3級アルキル基などのアルキル基;シクロアルキル基;又はフェニルのようなアリール基;である)
にしたがって進行する。而して、Rがフェニルである場合には、下記の化学反応式にしたがって、用いる酸は安息香酸(BA)であり、形成される生成物は安息香酸ビニル(VB)である。
【0038】
【化6】

【0039】
同様に、Rが2−エチルペンチルである場合には、下記の化学反応式にしたがって、用いる酸は2−エチルヘキサン酸(2EHA)であり、形成される生成物は2−エチルヘキサン酸ビニル(V2EH)である。
【0040】
【化7】

【0041】
ここで予期しなかったことに、ビニルエステルを対応するカルボン酸とアセチレンとの反応から、高い選択率及び収率で、工業的規模で製造することができることが見出された。より詳しくは、本発明は、場合によっては好適な有機溶媒中に溶解しているカルボン酸を、担持金属触媒の存在下、好適な反応温度及び圧力において、場合によっては1種類以上のリガンド又は添加剤又はこれらの混合物の存在下でアセチレンと反応させることを含む、ビニルエステルをその対応するカルボン酸及びアセチレンから選択的に形成するための不均一方法を提供する。かかる溶媒としては、例えば、アセトニトリル、安息香酸ブチル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、メシチレン、鉱油、及びトルエンを挙げることができる。
【0042】
当該技術において公知の種々のカルボン酸を本発明方法において用いて、対応するビニルエステルを形成することができる。本発明の実施のために好適なカルボン酸の例は、脂肪族又は芳香族のモノカルボン酸、ジカルボン酸、及びポリカルボン酸である。脂肪族モノカルボン酸の例としては、以下のもの:酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、2−メチルプロピオン酸、2−メチル酪酸、3−メチル酪酸、2−メチルペンタン酸、2−エチルヘキサン酸、2−プロピルヘプタン酸;ピバル酸、並びにネオデカン酸、ネオトリデカン酸、及びネオノナン酸のような他のネオ酸;ステアリン酸、及び脂肪酸が挙げられる。芳香族モノ及びジカルボン酸の例としては、以下のもの:安息香酸、テレフタル酸、イソフタル酸、及びフタル酸が挙げられる。他の芳香族カルボン酸としては、例えばo−、m−、又はp−トルイル酸、o−、m−、又はp−クロロ安息香酸などのような置換安息香酸が挙げられる。脂肪族ジ及びポリカルボン酸の例としては、アジピン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、及びポリアクリル酸が挙げられる。本発明方法において好適な種々の他のカルボン酸としては、クロトン酸、アクリル酸、メタクリル酸、サリチル酸、桂皮酸、及びシクロヘキサン酸が挙げられる。
【0043】
好ましくは、本発明方法において用いることができる酸としては、安息香酸、並びに例えば2−エチルヘキサン酸、2−メチルヘキサン酸、2−エチルヘプタン酸などのような種々の分岐脂肪族カルボン酸が挙げられる。
【0044】
本発明において好適な他の特定の種類のカルボン酸はネオ酸である。ネオ酸は高分岐の脂肪族カルボン酸である。一般に、ネオ酸は、テトラ置換α−炭素を含むトリアルキル酢酸である。置換α−炭素上のアルキル基によって立体効果が生じ、即ちネオ酸の反応する能力が妨げられる。メチル置換α−炭素のネオ酸は、立体障害が最も少ないネオ酸である。ネオ酸の反応性は、主としてネオ酸の分子量及び構造によって定まる。一般に、α−炭素上のアルキル基の分子量がより大きいと、立体効果がより大きくなり、ネオ酸の反応性がより小さくなる。本発明において好適なネオ酸は、式I:
【0045】
【化8】

【0046】
(式中、R、R、及びRのそれぞれは、1〜10個の炭素を有するアルキル基であり、R+R+R中の合計炭素数は3〜30である)
によって表すことができる。ネオ酸の例としては、限定なしにネオペンタン酸、ネオヘプタン酸、ネオデカン酸等が挙げられる。
【0047】
幾つかのネオ酸は、例えばExxonMobil Chemical Companyから商業的に入手できる。商業的に入手できるネオ酸の具体例としては、上記に列記したもの、及びExxonMobil Chemical Companyからのneo 910及びneo 913のような特許ネオ酸が挙げられる。
【0048】
本発明方法はアセチレンとカルボン酸との反応からビニルエステルを製造することを意図しているが、かかるビニル化反応を起こすことができる種々の他の公知の第1級アルキンを本発明方法において用いることもできる。一般に、本発明方法の付加反応を妨げない非置換アルキン及びモノ置換アルキンを用いることができる。代表的な置換基としては、アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、アセトキシ、カルボキシ、及びハロ基が挙げられる。アルキンは通常は2〜10個の炭素原子を有し、好適なアルキンとしては、アセチレン、メチルアセチレン、フェニルアセチレン、1−ブチン、1−ペンチン、1−ヘキシン、1−ヘプチン、1−オクチン、1−ノニン、1−デシンなどのような置換又は非置換の第1級アルキンが挙げられる。本発明の実施において有用なより好適なアルキンとしては、アセチレン及びメチルアセチレンが挙げられる。
【0049】
本発明方法において用いる触媒は担持金属触媒である。本発明方法において好適な担持金属の例としては、限定なしに、イリジウム、パラジウム、白金、レニウム、ロジウム、及びルテニウムが挙げられる。
【0050】
任意の公知の触媒担体を用いて本発明方法の金属を担持させることができる。代表的な触媒担体としては、限定なしに、炭素、活性炭、黒鉛、シリカ、チタニア、アルミナ、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、シリカ−アルミナ、シリカアルミネート、ジルコニア、炭酸バリウム、硫酸バリウムなどが挙げられる。
【0051】
本発明方法は、当該技術において公知の任意の通常の反応器を用いて、バッチ、半バッチ、又は連続条件下で実施することができる。反応器は、固定床、流動床、又は移動床を用いることができる。例えば、アセチレン散布システム、温和な機械撹拌、及びキャンドルフィルター濾過(触媒粒子を反応器の内部に保持する)を用いる連続撹拌タンク反応器(CSTR)を、商業的なオプションとすることができる。或いは、カルボン酸及びアセチレンを頂部から並流で導入するトリクルベッドを用いることができる。他の固定床反応器のタイプは、アセチレンを底部から導入し、触媒を反応塔の内部に堆積させ、液体カルボン酸を頂部から導入するバブルカラムである。これらの例は限定することを意図するものではない。例えば、それぞれのトレーを触媒で被覆する最新の反応蒸留システムを用いることもできる。
【0052】
当業者であれば、それによって任意の変数、例えば反応器生産性(STY)又は転化率が適当になる反応器処理量を最適にするのに必要な反応器の寸法を選択するであろう。選択される不均一触媒粒子の寸法及び形状は、用いる反応器のタイプによって定まる。而して、触媒は、ペレット、粉末、鞍型、球体等の形状であってよい。
【0053】
本発明によれば、カルボン酸とアセチレンとの反応は、単一の反応区域を含むバッチ反応器、並びに反応物質供給流を固定床又は流動触媒床に通す連続反応器などの、上記で議論したもののような種々の構成の装置内で行うことができる。本発明方法はまた、撹拌タンク反応器等を用いる半連続プロセスのような当該技術において公知の任意の他の技術を用いて行うこともできる。例えば、所望の場合には、単一の反応区域内において触媒を層状の固定床にすることができる。断熱反応器を用いることができ、或いは熱伝達媒体を備えたシェルアンドチューブ反応器を用いることができる。固定床には、ここで更に記載する複数の触媒、リガンド、及び添加剤を含む異なる触媒粒子の混合物を含ませることができる。固定床にはまた、反応物質のための混合区域を構成する粒子状材料の層を含ませることもできる。所望の場合にはカルボン酸の溶液、アセチレン、及び場合によっては不活性キャリアガスを含む反応混合物を、混合区域への加圧下の流れとして床に供給する。或いは、カルボン酸それ自体を、アセチレン及び場合によっては窒素のような不活性キャリアガスと共に供給することができる。流れは、次に(差圧を用いて)反応区域又は層に供給する。反応区域は好適な担持金属触媒を含む触媒組成物を含み、ここで安息香酸のようなカルボン酸をアセチレンと反応させる。反応器のタイプ、処理量の要求などに応じて、任意の好適な粒径を用いることができる。
【0054】
当業者に公知の担持触媒上の種々の金属装填レベルを本発明方法において用いることができるが、用いる担持金属触媒は好適な触媒担体上に約0.1重量%〜約20重量%の金属を含むことが好ましい。以下に更に記載するように、本発明方法において好適な担持金属触媒は、場合によっては同じ触媒担体上の第2及び/又は第3の担持金属などのリガンド及び/又は他の添加剤を含むことができることも有利である可能性がある。以下の金属を限定なしに第2及び/又は第3の金属として好適な金属として言及することができる:パラジウム、カドミウム、亜鉛、及びこれらの混合物。通常は、ここで記載する担持触媒金属のみを本発明方法において用いることができることが好ましい。しかしながら、他のリガンド及び/又は添加剤を、更なる触媒向上剤又は促進剤として反応供給流に加えることができる。
【0055】
上述したように、当該技術において公知の種々の触媒担体を用いて本発明の触媒を担持させることができる。好ましい担体は、炭素、活性炭、黒鉛、炭酸カルシウム、チタニア、アルミナ、アルミナ−シリカ、及び硫酸バリウムである。より好ましくは、炭素、活性炭、アルミナ、チタニア、又はジルコニアを担体として用いる。本発明において好適な種々の担持金属触媒が商業的に入手でき、触媒の活性化を行うか又は行わずに用いることができることを注意すべきである。
【0056】
本発明の一態様においては、好ましい触媒担体は炭素である。触媒担体として好適な当該技術において公知の種々の形態の炭素を、本発明方法において用いることができる。本発明において好適な炭素担体には、非活性化及び活性化形態が含まれる。炭素担体の活性化は、当該技術において公知の任意の方法を用いて行うことができる。例えば、特定の炭素触媒を活性化する方法を開示している米国特許5,064,801を参照されたい。他のタイプの炭素担体は、黒鉛化炭素、特に英国特許2,136,704に記載されている高表面積黒鉛化炭素である。炭素は、好ましくは粒子状形態、例えばペレットである。炭素粒子の寸法は、任意の与えられた反応器において許容しうる差圧(最小ペレット寸法を与える)、及びペレット内の反応物質の拡散制約(最大ペレット寸法を与える)によって定まる。
【0057】
本発明方法において好適な炭素触媒担体は、好ましくは多孔質炭素触媒担体である。好ましい粒径と共に、炭素は、好ましい表面積特性を満足するために多孔質であることが必要である。
【0058】
炭素触媒担体などの触媒担体は、それらのBET、基底面表面積、及び端面表面積によって特徴づけることができる、BET表面積は、Brunauer、Emmett、及びTellerのJ. Am. Chem. Soc. 60, 309 (1938)の方法を用いて窒素吸着によって求められる表面積である。基底面表面積は、Proc. Roy. Soc. A314, p.473〜498(特にp. 489を参照)に記載されている方法によってn−ヘプタンからのn−ドトリアコンタンの炭素上の吸着熱から求められる表面積である。端面表面積は、上述のProc. Roy. Soc.の論文(特にp. 495を参照)に開示されているn−ヘプタンからのn−ブタノールの炭素上の吸着熱から求められる表面積である。
【0059】
本発明において用いるために好ましい炭素触媒担体は、少なくとも100m/g、より好ましくは少なくとも200m/g、最も好ましくは少なくとも300m/gのBET表面積を有する。BET表面積は、好ましくは1000m/g以下、より好ましくは750m/g以下である。
【0060】
好ましい炭素担体は、炭素含有出発材料を熱処理することによって製造することができる。出発材料は、例えば英国特許1,168,785に開示されているようにして製造される親油性黒鉛、或いはカーボンブラックであってよい。
【0061】
上述したように、触媒担体上の金属の装填レベルは、一般に約0.1重量%〜約20重量%の範囲である。上述したように、担体上に装填される第2又は第3の成分の量は、本発明においてはあまり重要ではなく、約0.1重量%〜約10重量%の範囲で変化させることができる。好ましくは、本発明の担持金属触媒は他の装填物を含まない。担体の重量を基準として約0.3重量%〜約6重量%の金属装填量が特に好ましい。而して、例えば炭素、活性炭、黒鉛、アルミナ、ジルコニア、又はチタニア上に担持されている0.5〜10重量%の白金が特に好ましい触媒である。より好ましくは、白金の装填レベルは約0.5重量%〜約5重量%である。白金金属を担持させるのに好適な他の担体としては、限定なしに以下のもの:硫酸バリウム、炭酸カルシウム、及びシリカが挙げられる。
【0062】
同様に、炭素上に担持されている約1〜3重量%のレニウムを含む触媒も好ましい触媒である。他の好適な触媒としては、炭素上に担持されている約1〜6重量%のロジウムを含む触媒、シリカ上に担持されている約1〜3重量%のルテニウムを含む触媒、炭素上に担持されている約1〜6重量%のパラジウムを含む触媒、第2の金属として約1〜4重量%の白金を含んでいてもよい炭素上に担持されている約1〜6重量%のパラジウムを含む触媒、炭素上に担持されている約1〜6重量%のイリジウムを含む触媒、炭酸カルシウム上に担持されている約1〜6重量%のイリジウムを含む触媒、及び担持金属触媒として酸化イリジウム(IV)それ自体が挙げられる。
【0063】
上述したように、本発明において有用な担持金属触媒の多くは商業的に入手できる。しかしながら、担持金属触媒はまた、例えば金属含侵法のような当該技術において公知の任意の方法を用いて容易に製造することもできる。金属含侵は、当該技術において公知の任意の方法を用いて行うことができる。通常は、含侵の前に、担体を120℃において乾燥し、約0.2〜0.4mmの範囲の寸法分布を有する粒子に成形する。場合によっては、担体をプレスし、粉砕し、所望の寸法分布に篩別することができる。担体材料を所望の寸法分布に成形する任意の公知の方法を用いることができる。
【0064】
例えばα−アルミナのような低い表面積を有する担体に関しては、所望の金属装填量が得られるように、完全な湿潤又は過剰の液体含浸が得られるまで金属溶液を過剰に加える。
【0065】
上述したように、本発明方法において用いる担持金属触媒は2元金属触媒であってよい。2元金属触媒は一般に2工程で含浸させる。まず第2の金属、次に「主」金属を加える。それぞれの含浸工程の後に乾燥及びカ焼を行う。2元金属触媒はまた、共含浸によって製造することもできる。3元金属含有触媒の場合には、第2又は第3の金属の添加で開始する逐次含浸を用いることができる。第2の含浸工程には、2つの主金属を共含浸させることを含ませることができる。例えば、炭素上のPd/Ptは、まず硝酸白金を含浸させ、次に酢酸パラジウムを含浸させることによって製造することができる。ここでも、それぞれの含浸の後に乾燥及びカ焼を行う。殆どの場合において、含浸は金属硝酸塩溶液を用いて行うことができる。しかしながら、カ焼によって金属イオンを放出する種々の他の可溶性塩を用いることもできる。含浸のために好適な他の金属塩の例としては、金属水酸化物、金属酸化物、金属酢酸塩、アンモニウム金属酸化物、例えば7モリブデン酸アンモニウム6水和物、金属酸、例えば過レニウム酸溶液、金属シュウ酸塩などが挙げられる。
【0066】
ここで、幾つかのリガンド及び添加剤を用いると本発明の担持金属触媒の触媒活性が向上することが見出された。カルボン酸及びアセチレンによるビニル化反応を起こすことができる種々のリガンド及び添加剤を、本発明方法において用いることができる。リガンドの例としては、限定なしに以下のもの:トリフェニルホスフィン、1,2−ジフェニルホスフィノベンゼン(1,2−DPPB)、o−ビピリジル、(±)−2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフタレン、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン、ジフェニル−2−ピリジルホスフィン、オキシジ−2,1−フェニレンビス(ジフェニルホスフィン)、トリス(p−トリフルオロメチルフェニル)ホスフィン[P(p−CF]、トリス(1−ナフチル)ホスフィン、トリス(2,4,6−トリメトキシフェニル)ホスフィン、及びトリス(4−メトキシフェニル)ホスフィンが挙げられる。
【0067】
添加剤の例としては、アルミニウムアセチルアセトナート、塩化アルミニウム、カドミウムアセチルアセトナート、塩化セリウム、塩化鉄、酢酸カリウム、酢酸リチウム、臭化リチウム、塩化リチウム、安息香酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、テトラフルオロホウ酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、トリフルオロ酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、パラベンゾキノン、酢酸パラジウム、パラジウムアセチルアセトナート、塩化パラジウム、酢酸ビニル、トリルテニウムドデカカルボニル(Ru(CO)12)、臭化亜鉛、塩化亜鉛、無水安息香酸、トリ(n−ブチル)アミン又はトリブチルアミン、テトラ(n−ブチル)アンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムアセタート、リン酸ナトリウム、及びテトラブチルアンモニウムアセタートが挙げられる。
【0068】
本発明の一形態においては、本発明方法は一般に撹拌タンク反応器を用いるバッチ運転で行う。担持金属触媒を好適な溶媒中でスラリー化する。このスラリーに、カルボン酸及び任意の望ましいリガンド及び/又は添加剤の溶液を加える。反応器を窒素のような不活性雰囲気下で望ましい温度に加熱し、アセチレンを一定時間の間反応器中に供給する。通常は、上記で既に議論したように、反応時間は触媒に応じて変化させることができ、約1時間〜4時間の範囲であってよい。
【0069】
本発明の他の形態においては、反応はまた連続プロセスで行うこともできる。この形態においては、安息香酸のような反応物質を好適には溶液として、及びアセチレンを、担持金属触媒を充填した反応器中に供給する。上記したように、カルボン酸は、好適な溶媒中に溶解している溶液として、或いは例えば2−エチルヘキサン酸のように液体形態である場合には生の状態で反応器中に供給することができる。窒素のような不活性ガスをキャリアガスとして用いて、カルボン酸とアセチレンの両方をここで議論する望ましい反応温度で供給することができる。
【0070】
接触又は滞留時間も、カルボン酸及びアセチレンの量、触媒の量及びタイプ、並びに用いる反応器、温度、及び圧力のような変数によって広範囲に変化させることができる。通常の接触時間は、固定床以外の触媒系を用いる場合には1秒以下乃至数時間超の範囲であり、好ましい接触時間は、少なくとも気相反応に関しては約0.5〜100秒の間である。
【0071】
通常は、本発明のこの形態においては、触媒は、例えば、通常は蒸気形態又は溶液としての反応物質が触媒の上又は触媒を通して通過する細長いパイプ又はチューブの形状の固定床反応器内で用いる。所望の場合には、流動床又は沸騰床反応器のような他の反応器を用いることができる。幾つかの場合においては、担持金属触媒を不活性材料と組み合わせて用いて、圧力損失、流動性、熱平衡、又は触媒床における他のプロセスパラメーター、例えば反応物質化合物と触媒粒子との接触時間を調節することが有利である。
【0072】
以下の実施例から明らかなように、本発明を実施することによって高い転化率及びビニルエステルへの選択率を得ることができる。即ち、触媒及び場合によっては1種類又は複数のリガンド及び1種類又は複数の添加剤を好適に選択することによって、カルボン酸のビニルエステルへの、例えば安息香酸の安息香酸ビニルへの高い転化率を達成することができることがここで見出された。より詳しくは、所望の量の触媒を場合によって1種類又は複数のリガンド及び1種類又は複数の添加剤と組み合わせて用いることによって、少なくとも50%のカルボン酸の転化率が得られることが観察された。更に、ビニルエステルへの選択率は少なくとも50%であることが分かった。更に、本発明を好適に実施することによって、少なくとも80で約2000以下の相対活性を達成することができる。
【0073】
この反応のプロセスは、ビニルエステルを形成するカルボン酸とアセチレンの所期の反応を起こして、カルボン酸の高い転化率においてビニルエステルへの高い選択率を与えることができるような任意の反応温度を用いて行うことができる。通常は、バッチ運転でのかかる反応は、約100℃〜約180℃の温度範囲において行う。例えば、反応温度は、幾つかの触媒条件下においては約110℃〜約170℃の範囲であってよい。反応温度はまた、幾つかの他の触媒条件下においては約120℃〜約160℃の範囲であってもよい。幾つかの場合においては、反応温度は約130℃〜約150℃の範囲である。幾つかの他の場合においては、反応温度は約135℃〜約145℃の範囲である。しかしながら、上記に記載したもののような連続運転においては、更に高い反応温度を用いることができる。
【0074】
反応はまた、例えば大気圧以下、大気圧、又は大気圧以上の条件のような、高い転化率でカルボン酸からビニルエステルが選択的に形成されるような任意の圧力条件において行うことができる。一般に、反応は約1絶対気圧〜2絶対気圧の範囲の圧力において行うことが好ましい。より詳しくは、反応は、大気圧条件において、例えば窒素、ヘリウム、又はアルゴンの雰囲気中のような不活性雰囲気中で行う。
【0075】
一般に、用いるアセチレン系化合物の量は、転化させるカルボキシル基に対して等モル量又は僅かにモル過剰である。而して、用いるカルボン酸がモノカルボン酸である場合には、アセチレン:酸のモル比は、一般に約1:1〜100:1、好ましくは約1.2:1〜30:1、より好ましくは約1.5:1〜約10:1である。したがって、二塩基酸及び/又は他の多塩基酸を用いる場合には、アセチレン系化合物は比例してより多い量で用いる。
【0076】
本発明の一形態においては、本発明方法は少量の触媒を用いて行うことができる。即ち、多量の安息香酸(BA)のようなカルボン酸を、少量の触媒材料の存在下で安息香酸ビニル(VB)のようなビニルエステルに転化させることができる。一般に、反応混合物は、約4000:1〜約100:1のカルボン酸(CA):金属のモル比の所望の担持金属触媒及びカルボン酸の混合物を含む。より通常的には、CA/金属のモル比は約1000:1である。しかしながら、所望の転化率及びVBのようなビニルエステルへの選択率をもたらす任意の他のCA/金属のモル比を、本発明方法において用いることができる。
【0077】
本発明の他の形態においては、この触媒は本発明方法において非常に高い相対活性(金属原子あたりのビニルエステルのモル量)を示す。通常は、相対活性は約80〜約2000の範囲であり、好ましくは相対活性は、約100〜約1500、より好ましくは約100〜約1000の範囲である。
【0078】
本発明の更なる形態においては、本発明方法を好適に実施することによって、例えば安息香酸ビニルのようなビニルエステルへの非常に高い選択率を得ることができる。通常は、消費されるカルボン酸を基準とするビニルエステルへの選択率は、少なくとも60%にすることができる。より具体的には、消費されるカルボン酸を基準とするビニルエステルへの選択率は、少なくとも80%にすることができる。更により具体的には、消費されるカルボン酸を基準とするビニルエステルへの選択率は、少なくとも99%である。
【0079】
上記で既に議論したように、担持金属触媒系の構成及び反応器のタイプによって、本発明方法は、最良の触媒活性、相対活性、及びVB又はV2EHのようなビニルエステルへの選択率が得られるように、所望の時間行うことができる。通常は、反応はバッチモードで約1時間〜約5時間の範囲の時間行う。より通常的には、反応はバッチモードで約4時間行う。しかしながら、本発明方法は、当該技術において公知の任意のプロセス技術を用いて半連続又は連続的に行うことができる。
【0080】
而して、本発明の一態様においては、金属が白金であり、触媒担体が炭素、活性炭、黒鉛、チタニア、アルミナ、ジルコニア、アルミナ−シリカ、硫酸バリウム、及び炭酸カルシウムである担持金属触媒が提供される。本発明のこの形態においては、白金の装填量は、約0.5重量%〜約10重量%、好ましくは約0.5重量%〜約6重量%である。本発明のこの形態においては、ここで記載する幾つかのリガンドを用いることによって、VBのようなビニルエステルへの選択率か又はBAのようなカルボン酸の転化率のいずれか又は両方の増加によって観察されるように、白金の触媒活性を向上させることができることがここで見出された。1,2−DPPB又はトリフェニルホスフィンのようなリガンドは、概して、以下に更に議論するように、反応温度によって白金の触媒活性に対してプラスか又はマイナスの効果を示すことが観察された。同様に、幾つかの添加剤を加えると担持白金触媒に対してプラスの効果を与えることができることも観察された。かかる添加剤の例としては、安息香酸ナトリウム、無水安息香酸、テトラブチルアンモニウムアセタート、トリブチルアミンなどが挙げられる。一般に、添加剤はBAのようなカルボン酸の転化速度を増加させる。
【0081】
ここで、一般に、アルミナ、炭素、活性炭、ジルコニア、及びチタニアが、白金のための好適な触媒担体であることが見出された。以下の担持白金触媒が特に好ましい。
炭素上に担持されている0.5%白金;
炭素上に担持されている1%白金;
活性炭上に担持されている3%白金;
活性炭上に担持されている5%白金;
アルミナ上に担持されている0.5%白金;
アルミナ上に担持されている5%白金;
ジルコニア上に担持されている0.9%白金;及び
チタニア上に担持されている5%白金。
【0082】
上記に列記した担持白金触媒は全て商業的に入手できるか、及び/又は当業者に公知の任意の文献の手順にしたがって製造することができる。
通常は、担持白金金属触媒の活性は、温度を約120℃〜約170℃に上昇させると増加する。相対活性は、通常は温度を上昇させることによって増加し、最大相対活性は、通常はバッチモード運転では約160℃において観察される。しかしながら、固定床反応器を用いる連続運転においては、更に高い温度において更に高い相対活性が観察される可能性がある。上述したように、幾つかのリガンドを用いると、特に種々の反応温度において転化率又は選択率に対してプラス又はマイナスの効果が与えられる可能性がある。ここで、トリフェニルホスフィン又は1,2−DPPBのようなリガンドを用いると、種々の反応温度によって担持白金触媒に対して異なる効果が示されることが観察された。いずれのリガンドも概して担持白金金属触媒に関する活性を低下させるが、相対活性及び転化率の値はトリフェニルホスフィンの存在下では温度を上昇させると増加し、一方、これらの値は1,2−DPPBの存在下では温度全域にわたって均一に低下する。
【0083】
殆どの担持白金触媒に関して、温度を上昇させると、一般に安息香酸のようなカルボン酸の転化率が増加し、安息香酸ビニルのようなビニルエステルへの選択率が減少する。しかしながら、上述したように、バッチモードで最適の転化率及び安息香酸ビニルへの選択率を得るためには、約160℃の温度が好ましい。
【0084】
通常は、担持白金触媒において用いる反応時間は約1時間〜約4時間である。好ましくは、反応時間は約2〜約4時間である。
一般に、相対活性はカルボン酸(CA)/金属のモル比がより高いと増加する。例えば、CA/金属のモル比は、約300〜4000、より好ましくは約380〜約3000、更により好ましくは約1200〜約2500の範囲であってよい。アルミナ上に担持されている0.5%白金、ジルコニア上に担持されている0.9%白金、又は炭素上に担持されている0.5%〜1%白金を用いて、600以下又はそれ以上の相対活性を達成することができる。より詳しくは、ここで、約1450のBA/白金原子のモル比においては約700の相対活性を達成することができ、約2300のBA/白金原子のモル比においては約700〜800の相対活性を達成することができることが観察された。
【0085】
一般に、用いる触媒担体のタイプは転化率及びビニルエステルへの選択率に影響を与える。ここで、炭素、ジルコニア、又はチタニアがより高い相対活性を示すことが観察された。チタニアは最も高い転化率を示し、一方、炭素は最も高い選択率を示す。
【0086】
一般に、担持白金触媒は、使用前に窒素雰囲気中100℃において16時間乾燥する。試験した触媒は、100℃において16時間再び乾燥した後に再使用することができる。触媒はまた、空気中、50℃〜100℃の温度範囲において、例えば約16時間のような十分な長さの時間乾燥することもできる。しかしながら、担持白金触媒は、窒素のような不活性雰囲気中で乾燥することが好ましい。
【0087】
本発明の他の態様においては、金属がレニウムであり、触媒担体が炭素である担持金属触媒が更に提供される。本発明のこの形態においては、レニウムの装填量は1重量%〜約6重量%であり、好ましくはレニウムの装填量は約2重量%〜約4重量%である。本発明のこの形態においても、幾つかのリガンド及び/又は添加剤を担持レニウム触媒と組み合わせて用いることができる。担持レニウム触媒の具体例は炭素上2重量%レニウムであり、これは商業的に入手できる。
【0088】
本発明の他の態様においては、金属がロジウムであり、触媒担体が炭素である担持金属触媒が更に提供される。本発明のこの形態においては、ロジウムの装填量は、1重量%〜約10重量%、好ましくは約2重量%〜約6重量%である。本発明のこの形態においても、幾つかのリガンド及び/又は添加剤を担持ロジウム触媒と組み合わせて用いることができる。担持ロジウム触媒の具体例は炭素上5重量%ロジウムであり、これは商業的に入手できる。
【0089】
ここで、トリフェニルホスフィンを炭素上5重量%ロジウムと共に用いると、転化率及びVBのようなビニルエステルへの選択率にプラスの効果を有することが観察された。
本発明の他の態様においては、金属がルテニウムであり、触媒担体がシリカである担持金属触媒が更に提供される。本発明のこの形態においては、ルテニウムの装填量は、1重量%〜約10重量%、好ましくは約2重量%〜約6重量%である。本発明のこの形態においても、幾つかのリガンド及び/又は添加剤を担持ルテニウム触媒と組み合わせて用いることができる。担持ルテニウム触媒の具体例はシリカ上1.85重量%ルテニウムであり、これは商業的に入手できる。
【0090】
ここで、トリフェニルホスフィンのようなリガンドを用いると、シリカ上担持ルテニウムの活性にプラスの効果を有することが観察された。担持ルテニウム触媒と共に用いることができる反応温度は、BAのVBへの転化のようなカルボン酸のビニルエステルへの転化のためには、バッチ運転で一般に約150℃〜約170℃である。所望の場合には、ここで記載する任意の溶媒をルテニウム触媒と共に用いることができる。好適な溶媒の例は安息香酸ブチルである。
【0091】
本発明の他の態様においては、金属がパラジウムであり、触媒担体が炭素である担持金属触媒が更に提供される。この触媒は、白金である第2の金属を更に含む。本発明のこの形態においては、パラジウムの装填量は、1重量%〜約10重量%、好ましくは約2重量%〜約6重量%である。本発明のこの形態においても、幾つかのリガンド及び/又は添加剤を担持パラジウム触媒と組み合わせて用いることができる。担持パラジウム触媒の具体例は、白金を更に含む炭素上3重量%パラジウムである。この触媒は商業的に入手できる。
【0092】
担持パラジウム触媒と共に用いることができる反応温度は、例えばBAのVBへの転化のようなカルボン酸のビニルエステルへの転化のためには、バッチ運転で一般に約150℃〜約170℃である。ここでも、所望の場合にはここで記載する任意の溶媒をパラジウム触媒と共に用いることができる。好適な溶媒の例は安息香酸ブチルである。
【0093】
本発明の他の態様においては、金属がイリジウムであり、触媒担体が炭素又は炭酸カルシウムのいずれかである担持金属触媒が更に提供される。本発明のこの形態においては、イリジウムの装填量は、1重量%〜約10重量%、好ましくは約2重量%〜約6重量%である。本発明のこの形態においても、幾つかのリガンド及び/又は添加剤を担持イリジウム触媒と組み合わせて用いることができる。担持イリジウム触媒の具体例は、炭素上5重量%イリジウム、又は炭酸カルシウム上5重量%イリジウムであり、いずれも商業的に入手できる。更に、本発明方法においては、不均一担持イリジウム金属触媒として酸化イリジウム(IV)をそれ自体で用いることができる。
【0094】
図1は、本発明の触媒系を用いてカルボン酸とアセチレンとを反応させることによってビニルエステルを製造するための実験室スケールのシステム10を示す。図1のシステム10は、撹拌反応器20及び回収器30を含む。反応器20及び回収器30には、それぞれ凝縮器40、50が備えられており、これらのためにバブラーのような通常の圧力調節手段(図示せず)が与えられている。簡単に言うと、250mLの三ツ口ガラスフラスコのような所望の寸法の好適な反応器20を用いる。まず、反応器20に、所望のカルボン酸、好適な溶媒、及び所定量の触媒、並びに必要な場合にはリガンド及び添加剤を充填する。次に、反応器20を窒素でパージし、所望の反応温度に加熱する。次に、ライン24を通してアセチレンを反応混合物中に所望の速度でバブリングし、更なるカルボン酸を必要な場合には溶媒と共にライン22を通して充填することができる。反応が進行するにつれて、ライン26を通してビニルエステル生成物を取り出し、分別し、回収フラスコ30内に回収する。凝縮器40、50は、非凝縮性ガスを放出しながら最適量の生成物及び溶媒を回収するように働く。凝縮器40、50の温度は、当業者に公知の通常の手段によって調節する。反応物質の添加順序は本発明方法においては重要ではない。
【0095】
図2は、工業運転のための好適な種々のスケールアップした反応器システムの1つを示す。図2のシステム100は、反応器110、回収タンク120、及びここでは単一のポット130によって示される一連のノックアウトポットを含む。反応器110の底部を通して反応器110に触媒を充填し、ライン114を通してカルボン酸及び場合によっては溶媒を充填する。窒素雰囲気下において、ライン116を通してアセチレンを反応媒体を通してバブリングする。反応器を所定の温度に加熱し、温度を反応時間の間にわたって保持する。ライン118を通してビニルエステル生成物を反応器から取り出し、生成物回収タンク120内に回収する。反応器110及び回収タンク120からの気体状物質は、ライン24を通してノックアウトポット130に送る。1つ又は複数のノックアウトポット130は、生成物及び溶媒蒸気を凝縮し、圧力を調節し、及び非凝縮性ガスを希釈するように働く。
【実施例】
【0096】
以下の実施例は本発明を更に例示するために示すものであり、特許請求の範囲に示される発明の精神及び範囲を限定するように解釈すべきではない。これらの実施例は、例示の目的のみで与えるものであり、当業者に公知のそれらの種々の修正を容易に行うことができる。
【0097】
実施例1〜12は、安息香酸の安息香酸ビニルへの転化を示す。実施例1及び3〜12によって達成される安息香酸ビニルへの選択率及びTONを、それぞれ図3及び4に要約して示す。具体的には、実施例1は担持白金金属触媒をバッチモードで用いる本発明方法を示す。
【0098】
実施例2は、担持白金触媒を連続運転で用いる本発明方法を示す。
実施例3〜8は、リガンド及び/又は添加剤を用いるか又は用いない種々の担持白金触媒の触媒活性を示す。
【0099】
実施例9は、リガンド及び/又は添加剤を用いるか又は用いない種々の担持レニウム金属触媒の触媒活性を示す。
実施例10は、リガンド及び/又は添加剤を用いるか又は用いない種々の担持ロジウム金属触媒の触媒活性を示す。
【0100】
実施例11〜12は、リガンド及び/又は添加剤を用いるか又は用いない種々の担持イリジウム金属触媒の触媒活性を示す。
実施例13〜16は、安息香酸を安息香酸ビニルへ転化させるためのスケールアップした手順を示す。実施例17〜18は、2−エチルヘキサン酸の2−エチルヘキサン酸ビニルへの転化を示す。
【0101】
最後に、比較例1は、対照反応条件下での安息香酸ビニルの製造に関する種々の他の担持金属触媒の触媒活性を示す。
上述したように、担持金属触媒の殆どは商業的に入手でき、そのまま用いることができる。触媒は、窒素雰囲気中、約50〜100℃において約16時間乾燥することによって活性化することができる。以下の実施例は、例示の目的のみのために、本発明方法において用いる種々の金属担持触媒を製造するための手順を記載する。
【0102】
実施例A
炭素上1重量%白金の製造:
約0.2mmの均一な粒径分布の粉末化して篩別した炭素(99g)を、オーブン内において、窒素雰囲気下、120℃で一晩乾燥し、次に室温に冷却した。これに、蒸留水(16mL)中の硝酸白金(Chempur(登録商標))(1.64g)の溶液を加えた。得られたスラリーを、オーブン内で110℃に徐々に加熱(>2時間、10℃/分)して乾燥した。次に、含浸した触媒混合物を500℃においてカ焼した(6時間、1℃/分)。含侵した触媒を、最後にオーブン内において、窒素の不活性雰囲気中、100℃で16時間乾燥した。
【0103】
表1に、ここで記載する安息香酸ビニル(VB)を選択的に製造する本発明方法において用いることができる種々の担持金属触媒及びリガンドを要約する。これらの触媒系を用いて達成することができるVBへの選択率及びTONも示す。以下の実施例は、より詳細な結果を与える。同等の選択率及びTONが2−エチルヘキサン酸ビニル(V2EH)及び/又はネオカルボン酸ビニルのような他のビニルエステルに関して達成されることを注目すべきである。
【0104】
【表1】

【0105】
生成物のガスクロマトグラフィー(GC)分析:
以下の手順は、安息香酸(BA)の安息香酸ビニル(VB)への転化に関して用いることができる具体的なGC法を示す。同様の方法を他のビニルエステルのために容易に構成することができる。
【0106】
生成物の分析は、DB-FFAP 0.25μmカラム(30m×0.25mm)を用いるGCによって行った。バックフラッシュカラムCP-Sil 5(1m×0.25mm)を取り付けて、高沸点溶媒が主カラム上で分析されるのを抑止した。GC試料は、概して次のようにして調製した。反応物質及び1種類又は複数の生成物を含む最終反応混合物(約1mL)を、正確な量のドデカン(内部標準試料)を含むトルエン(4mL)で希釈した。反応物質及び1種類又は複数の生成物を溶解するために、混合物全体を室温において5分間又は30分間のいずれかの間撹拌した。0.04mLの最終試料をトルエンで更に希釈して、GC分析のために適当な濃度範囲を確保した。幾つかの場合においては、反応混合物を5mLのトルエンで希釈し、室温において1時間撹拌して反応物質及び1種類又は複数の生成物を溶解した。
【0107】
安息香酸及び安息香酸ビニルのピークは他のピークから良好に分離された。ドデカンを外部標準試料として用い、これはクロマトグラフにおいて他のピークから良好に分離された。較正混合物の組を分析することによって、GCを安息香酸及び安息香酸ビニルに関して較正した。GC法は、25ppmの安息香酸及び5ppmの安息香酸ビニルを検出するのに十分な感度を有していた。このGC法においては次の温度プロファイルを用いた:50℃で保持時間1分間;20℃/分で160℃に昇温;保持時間0分間;40℃/分で250℃に昇温;保持時間2.25分間;合計運転時間=11分間。
【0108】
実施例1
適当な導入口及び撹拌装置を取り付けた好適な反応容器に、100mgの安息香酸及び500ppmのパラベンゾキノンを充填した。反応器を窒素で2〜3回パージし、窒素の一定流を保持した。この混合物に、900mgの安息香酸ブチルを撹拌しながら加え、必要な場合には混合物を僅かに加熱して安息香酸を溶解した。この溶液に、チタニア上に担持されている5%白金50mgを撹拌しながら加え、混合物全体を180℃に加熱した。白金触媒は、使用前に空気中50℃において16時間乾燥した。この時点で、アセチレンを反応器中に一定流で供給してアセチレン圧を1.7barに保持した。反応混合物を更に4時間撹拌した。この時点で、反応混合物の試料を取り出し、上記に記載のようにしてGCによって分析した。GC分析から、反応混合物中に65mgの安息香酸ビニルが形成され(収率54%)、TONは280であったことが観察された。
【0109】
実施例2
用いた触媒は、商業的に入手できるチタニア上5重量%白金であった。触媒は、使用前に窒素中100℃において16時間乾燥した。
【0110】
30mmの内径を有し、制御された温度に昇温することができるステンレススチール製の管状反応器内に、チタニア上5重量%白金50mLを配置した。充填後の触媒床の長さは約70mmであった。
【0111】
供給液は、900gのトルエン中の100gの安息香酸の溶液を実質的に含んでいた。反応供給液を気化させ、アセチレン及びキャリアガスとして窒素と共に、約2500hr−1の合計気体空間速度(GHSV)を用い、約200℃の温度及び22barの圧力で反応器に充填した。流出流の内容物の分析のために、蒸気流出流の一部をガスクロマトグラフに通した。
【0112】
実施例3
以下の条件を用いて幾つかの実験で実施例1を実質的に繰り返した。反応温度を適当な温度に保持した。以下の温度:120℃、140℃、160℃、170℃、及び180℃:のそれぞれにおいて少なくとも1つの実験を運転した。溶媒として安息香酸ブチルを用いた。用いた安息香酸の量は100mgであり、これを500ppmのパラベンゾキノンと組み合わせて用い、触媒の重量は同様に全ての場合において50mgの0.5%白金を基準として同等の金属装填レベルを与えるように保持した。全ての触媒を、使用前に空気中50℃において16時間乾燥した。TON及びVBの収率の観察結果を表2に示す。
【0113】
【表2】

【0114】
実施例4
以下の条件を用いて幾つかの実験で実施例1を実質的に繰り返した。反応温度を適当な温度に保持した。以下の温度:120℃、140℃、160℃、170℃、及び180℃:のそれぞれにおいて少なくとも1つの実験を運転した。溶媒として安息香酸ブチルを用いた。用いた安息香酸の量は230mgであり、これを500ppmのパラベンゾキノンと組み合わせて用い、触媒の重量は同様に全ての場合において50mgの0.5%白金を基準として同等の金属装填レベルを与えるように保持した。全ての触媒を、使用前に空気中50℃において16時間乾燥した。TON及びVBへの収率の観察結果を表3に示す。
【0115】
【表3】

【0116】
実施例5
以下の条件を用いて幾つかの実験で実施例1を実質的に繰り返した。反応温度を適当な温度に保持した。以下の温度:120℃、140℃、160℃、170℃、及び180℃:のそれぞれにおいて少なくとも1つの実験を運転した。溶媒として安息香酸ブチルを用いた。用いた安息香酸の量は360mgであり、これを500ppmのパラベンゾキノンと組み合わせて用い、触媒の重量は同様に全ての場合において50mgの0.5%白金を基準として同等の金属装填レベルを与えるように保持した。全ての触媒を、使用前に空気中50℃において16時間乾燥した。TON、転化率、及びVBへの選択率の観察結果を表4に示す。
【0117】
【表4】

【0118】
実施例6
以下の条件を用いて幾つかの実験で実施例1を実質的に繰り返した。3つの異なる反応温度:120℃、140℃、及び160℃:を用いた。溶媒として安息香酸ブチルを用いた。用いた安息香酸の量は360mgであり、これを500ppmのパラベンゾキノンと組み合わせて用い、約385のBA/金属のモル比を保持するように適当な量の担持白金触媒を加えた。全ての触媒を、使用前に窒素中100℃において16時間乾燥した。また、表5に示すように種々のリガンドもそれぞれの担持白金触媒と共に用いた。TON、転化率、及びVBへの選択率も表5に示す。
【0119】
【表5】

【0120】
実施例7
以下の条件を用いて幾つかの実験で実施例1を実質的に繰り返した。反応温度は全ての実験に関して140℃に保持した。溶媒として安息香酸ブチルを用いた。用いた安息香酸の量は360mgであり、これを500ppmのパラベンゾキノンと組み合わせて用いた。385、1155、及び3850の3つの異なるレベルのBA/金属のモル比を達成するのに適当な量の担持白金金属触媒を用いた。全ての触媒を、使用前に窒素中100℃において16時間乾燥した。また、これらの変化するBA/金属のモル比と共に表7に示すように、種々のリガンドもそれぞれの担持白金金属触媒と共に用いた。TON、転化率、及びVBへの選択率も表6に示す。
【0121】
【表6】

【0122】
実施例8
以下の条件を用いて幾つかの実験で実施例1を実質的に繰り返した。2つの異なる反応温度:140℃及び160℃:を用いた。選択された温度を反応中にわたって保持した。溶媒として安息香酸ブチルを用いた。用いた安息香酸の量は100mgであり、これを500ppmのパラベンゾキノン、及び50mgの炭素上0.5%白金と同等の一貫した金属装填レベルを保持するのに必要な適当量の担持白金触媒と組み合わせて用いた。全ての触媒を、使用前に窒素中100℃において16時間乾燥した。また、表7に示すように、小数の担持白金触媒と共に種々のリガンド及び添加剤も用いた。転化率及びVBへの選択率も表7に示す。
【0123】
【表7】

【0124】
実施例9
以下の条件を用いた他は実施例1を実質的に繰り返した。触媒の量は炭素上に担持されている2重量%レニウム50mgであり、反応は140℃又は160℃において行った。溶媒として安息香酸ブチルを用いた。用いた安息香酸の量は100mgであり、これを500ppmのパラベンゾキノンと組み合わせて用いた。140℃においては安息香酸の転化率は4%であり、VBへの選択率は3%であり、160℃においては安息香酸の転化率は3%であり、VBへの選択率は8%であった。溶媒として鉱油を用いて、140℃において更なる運転を行った。安息香酸の転化率は2%であり、VBへの選択率は2%であった。最後に、硫化レニウム(VII)を用い、120℃において溶媒として安息香酸ブチルを用いて実験を行った。安息香酸の転化率は8%であり、VBへの選択率は1%未満であった。
【0125】
実施例10
以下の条件を用いた他は2つの実験で実施例1を実質的に繰り返した。用いた触媒の量は炭素上に担持されている5重量%ロジウム50mgであり、トリフェニルホスフィンを用いるか又は用いないで、反応は160℃において行った。溶媒として安息香酸ブチルを用いた。用いた安息香酸の量は360mgであり、これを500ppmのパラベンゾキノンと組み合わせて用いた。安息香酸の転化率及びVBへの選択率を表8に示す。
【0126】
【表8】

【0127】
実施例11
以下の条件を用いて幾つかの実験で実施例1を実質的に繰り返した。全ての実験において、反応温度は160℃に保持した。溶媒として安息香酸ブチルを用いた。用いた安息香酸の量は、100mg、200mg、及び360mgであり、これを500ppmのパラベンゾキノンと組み合わせて用いた。炭酸カルシウム又は炭素のいずれかの上に担持されている5重量%イリジウム金属50mg(100又は200mgの安息香酸を用いる場合)又は29.44mg(360mgの安息香酸を用いる場合)を用いた。これによって、反応器中に100、200、及び360mgの安息香酸を充填する場合に関して、それぞれ67、126、及び385のBA/金属のモル比が得られた。これらの実験において得られたTON、転化率、及びVBへの選択率を表9に示す。
【0128】
【表9】

【0129】
実施例12
触媒担体上に担持されているイリジウム50mgを用い、反応を160℃において行った他は、3つの実験で実施例1を実質的に繰り返した。溶媒として安息香酸ブチルを用いた。用いた安息香酸の量は100mgであり、これを500ppmのパラベンゾキノンと組み合わせて用いた。安息香酸の転化率及びVBへの選択率を表10に示す。
【0130】
【表10】

【0131】
実施例13
図2に示す種類の好適な反応容器に適当な導入口及び撹拌装置を取り付け、50.08gの安息香酸及び2gのメチルヒドロキノンを充填した。反応器を窒素で2〜3回パージし、窒素の一定流を保持した。この混合物に、133gの安息香酸ブチルを撹拌しながら加え、必要な場合には混合物を僅かに加熱して安息香酸を溶解した。この溶液に、炭素上に担持されている5%白金1gを撹拌しながら加え、混合物全体を180℃に加熱した。この時点で、アセチレンを反応器中に一定流で100mL/分の速度で供給した。反応混合物を更に4時間撹拌した。この時点で、反応混合物の試料を取り出し、上記に記載のようにしてGCによって分析した。GC分析から、反応混合物中に25.37gの安息香酸ビニルが形成されたことが観察された(収率42%)。21gの未反応の安息香酸が回収された。BAの転化率=59%;VBへの選択率=71%;であり、TONは670であった。
【0132】
実施例14
図2に示す種類の好適な反応容器に適当な導入口及び撹拌装置を取り付け、18.05gの安息香酸及び2gのメチルヒドロキノンを充填した。反応器を窒素で2〜3回パージし、窒素の一定流を保持した。この混合物に、159gの安息香酸ブチルを撹拌しながら加え、必要な場合には混合物を僅かに加熱して安息香酸を溶解した。この溶液に、アルミナ上に担持されている2%白金2.67gを撹拌しながら加え、混合物全体を200℃に加熱した。この時点で、アセチレンを反応器中に一定流で100mL/分の速度で供給した。反応混合物を更に4時間撹拌した。この時点で、反応混合物の試料を取り出し、上記に記載のようにしてGCによって分析した。GC分析から、反応混合物中に5.37gの安息香酸ビニルが形成されたことが観察された(収率25%)。12.93gの未反応の安息香酸が回収された。BAの転化率=28%;VBへの選択率=87%;であり、TONは130であった。
【0133】
実施例15
図2に示す種類の好適な反応容器に適当な導入口及び撹拌装置を取り付け、18.14gの安息香酸及び2gのメチルヒドロキノンを充填した。反応器を窒素で2〜3回パージし、窒素の一定流を保持した。この混合物に、172gの安息香酸ブチルを撹拌しながら加え、必要な場合には混合物を僅かに加熱して安息香酸を溶解した。この溶液に、炭素上に担持されている2%白金1.65gを撹拌しながら加え、混合物全体を180℃に加熱した。この時点で、アセチレンを反応器中に一定流で100mL/分の速度で供給した。反応混合物を更に2時間撹拌した。この時点で、反応混合物の試料を取り出し、上記に記載のようにしてGCによって分析した。GC分析から、反応混合物中に4.7gの安息香酸ビニルが形成されたことが観察された(収率21%)。13.6gの未反応の安息香酸が回収された。BAの転化率=25%;VBへの選択率=85%;であり、TONは190であった。
【0134】
実施例16
図2に示す種類の好適な反応容器に適当な導入口及び撹拌装置を取り付け、10.06gの安息香酸及び2gのメチルヒドロキノンを充填した。反応器を窒素で2〜3回パージし、窒素の一定流を保持した。この混合物に、172gの安息香酸ブチルを撹拌しながら加え、必要な場合には混合物を僅かに加熱して安息香酸を溶解した。この溶液に、炭素上に担持されている2%白金1.65gを撹拌しながら加え、混合物全体を200℃に加熱した。次に、アセチレンを反応器中に一定流で100mL/分の速度で供給した。反応混合物を更に2時間撹拌した。この時点で、反応混合物の試料を取り出し、上記に記載のようにしてGCによって分析した。GC分析から、反応混合物中に13.4gの安息香酸ビニルが形成されたことが観察された(収率32%)。BAの転化率=51%;VBへの選択率=92%;であり、TONは370であった。
【0135】
実施例17
図1に示す種類の好適な反応容器に適当な導入口及び撹拌装置を取り付け、49.74gの2−エチルヘキサン酸、136.3gの安息香酸ブチル、及び2gのメチルヒドロキノンを充填した。反応器を窒素で2〜3回パージし、窒素の一定流を保持した。この混合物に、炭素上に担持されている5%白金0.99gを撹拌しながら加え、混合物全体を180℃に加熱した。次に、アセチレンを反応器中に一定流で100mL/分の速度で供給した。反応混合物を更に4時間撹拌した。この時点で、反応混合物の試料を取り出し、上記に記載のようにしてGCによって分析した。GC分析から、反応混合物中に9.9gの2−エチルヘキサン酸ビニルが形成されたことが観察された(収率17%)。33gの未反応の2−エチルヘキサン酸が回収された。V2EHへの選択率=42%であり、TONは240であった。
【0136】
実施例18
図1に示す種類の好適な反応容器に適当な導入口及び撹拌装置を取り付け、40.34gの2−エチルヘキサン酸、136.3gの安息香酸ブチル、及び2gのメチルヒドロキノンを充填した。反応器を窒素で2〜3回パージし、窒素の一定流を保持した。この混合物に、炭素上に担持されている5%白金0.99gを撹拌しながら加え、混合物全体を200℃に加熱した。この時点で、アセチレンを反応器中に一定流で100mL/分の速度で供給した。反応混合物を更に4時間撹拌した。この時点で、反応混合物の試料を取り出し、上記に記載のようにしてGCによって分析した。GC分析から、反応混合物中に19.4gの2−エチルヘキサン酸ビニルが形成されたことが観察された(収率41%)。2−EHAの転化率=33%;V2EHへの選択率=58%;であり、TONは450であった。
【0137】
比較例1
触媒担体に担持されている種々の1種類以上の金属を用いた他は、幾つかの実験で実施例1を実質的に繰り返した。試験した金属は、炭素上に担持されている単一の金属として、アルミニウム、ビスマス、セリウム、コバルト、クロム、鉄、モリブデン、ニッケル、鉛、アンチモン、スカンジウム、スズ、バナジウム、タングステン、及びジルコニウムであった。また、炭素上に担持されているランタン、セリウム、コバルト、及び銅の複数の金属の組合せを含む触媒も、この比較研究に含ませた。試験した他の触媒は、炭素上に担持されているイットリウム、バリウム、及び銅の組合せを含んでいた。反応は、以下のように、用いた触媒のタイプによって50℃〜180℃の範囲の温度で行った。
【0138】
50℃及び10mgのCo、Cr、Mo、Ni、及びW担持触媒;
80℃及び10mgのCo、Cr、Mo、Ni,及びW担持触媒;
120℃及び50mgのCo、Cr、Mo、Ni、及びW担持触媒;
160℃及び50mgのLaCeCoCu、Ni、及びYBaCu担持触媒;
180℃及び50mgのAl、Bi、Ce、Co、Cr、Fe、Mo、Ni、Pb、Sb、Sc、Sn、V、及びZr担持触媒。
【0139】
全ての実験において、溶媒として安息香酸ブチルを用いた。全ての実験において、用いた安息香酸の量は100mgであり、これを500ppmのパラベンゾキノン及び10又は50mgの上記の触媒と組み合わせて用いた。結果は、TONはこの群の触媒の殆どに関して0.1より低く、いずれのTONも20を超えなかったことを示した。
【0140】
本発明を幾つかの態様に関して記載したが、本発明の精神及び範囲内のこれらの態様の修正は当業者に容易に明らかになるであろう。本発明は特許請求の範囲において規定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
場合によっては好適な有機溶媒中に溶解しているカルボン酸を、担持金属触媒の存在下、好適な反応温度及び圧力において、場合によっては1種類以上のリガンド又は添加剤又はこれらの混合物の存在下でアセチレンと反応させることを含み、ここで、担持金属が、イリジウム、パラジウム、白金、レニウム、ロジウム、及びルテニウムからなる群から選択され、触媒及び場合によっては1種類又は複数のリガンド及び1種類又は複数の添加剤を、ビニルエステルへの選択率が少なくとも50%になるように選択し、そのようになる量で用いる、カルボン酸からビニルエステルを選択的に形成するための不均一方法。
【請求項2】
少なくとも50%のカルボン酸転化率、及び少なくとも80の相対活性を示すことを更に特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
カルボン酸が、安息香酸、2−エチルヘキサン酸、ネオペンタン酸、ネオヘプタン酸、及びネオデカン酸からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
触媒担体が、炭素、活性炭、黒鉛、シリカ、チタニア、アルミナ、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、シリカ−アルミナ、シリカアルミネート、ジルコニア、炭酸バリウム、及び硫酸バリウムからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
担持金属触媒が、約0.1重量%〜約20重量%の装填レベルで触媒担体上に存在している、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
初期反応混合物が、約4000:1〜約300:1の酸:金属のモル比の担持金属触媒及びカルボン酸の混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
反応温度が約25℃〜約250℃の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
反応混合物の圧力が約1絶対気圧〜2絶対気圧である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
溶媒が、アセトニトリル、ベンゾニトリル、安息香酸ブチル、鉱油、ジエチレングリコールジブチルエーテル、及びトルエンからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
リガンドが、トリフェニルホスフィン、1,2−ジフェニルホスフィノベンゼン(1,2−DPPB)、o−ビピリジル、4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン、(±)−2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフタレン、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、ジフェニル−2−ピリジルホスフィン、オキシジ−2,1−フェニレンビス(ジフェニルホスフィン)、トリス(p−トリフルオロメチルフェニル)ホスフィン[P(p−CF]、トリス(1−ナフチル)ホスフィン、トリス(2,4,6−トリメトキシフェニル)ホスフィン、及びトリス(4−メトキシフェニル)ホスフィンからなる群から選択され;添加剤が、アルミニウムアセチルアセトナート、塩化アルミニウム、カドミウムアセチルアセトナート、塩化セリウム、塩化鉄、酢酸カリウム、酢酸リチウム、臭化リチウム、塩化リチウム、安息香酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、テトラフルオロホウ酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、トリフルオロ酢酸ナトリウム、パラベンゾキノン、酢酸パラジウム、パラジウムアセチルアセトナート、塩化パラジウム、トリルテニウムドデカカルボニル(Ru(CO)12)、臭化亜鉛、塩化亜鉛、無水安息香酸、トリ(n−ブチル)アミン、テトラ(n−ブチル)アンモニウムクロリド、リン酸ナトリウム、及びtert−ブチルアンモニウムアセタートからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
場合によっては好適な有機溶媒中に溶解しているカルボン酸を、担持白金金属触媒の存在下、好適な反応温度及び圧力において、場合によっては1種類以上のリガンド又はこれらの添加剤の存在下でアセチレンと反応させることを含み、ここで、触媒及び場合によっては1種類又は複数のリガンド及び1種類又は複数の添加剤を、相対活性が少なくとも100になるように選択し、そのようになる量で用いる、カルボン酸からビニルエステルを選択的に形成するための不均一方法。
【請求項12】
カルボン酸が安息香酸である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
カルボン酸が2−エチルヘキサン酸である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
触媒担体が、炭素、活性炭、アルミナ、又はチタニアである、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
金属の装填レベルが約0.1重量%〜約10重量%である、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
カルボン酸及び触媒を、約3000:1〜約380:1の酸:金属のモル比で供給する、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
反応温度が約50℃〜約180℃の範囲である、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
安息香酸を、好適な有機溶媒中で、好適な反応温度及び圧力において、担持白金触媒の存在下、及び場合によってはリガンドとしてトリフェニルホスフィン、及び場合によっては、安息香酸ナトリウム、無水安息香酸、テトラブチルアンモニウムアセタート、及びトリブチルアミンからなる群から選択される添加剤の存在下でアセチレンと反応させることを含み、ここで、触媒の白金装填量が約0.5重量%〜約10重量%であり、担体が、炭素、活性炭、チタニア、アルミナ、又はジルコニアから選択され、安息香酸を、約300:1〜約4000:1の安息香酸:白金金属のモル比で供給する、安息香酸から安息香酸ビニルを選択的に形成するための不均一方法。
【請求項19】
触媒担体が、炭素、活性炭、又はチタニアである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
反応温度が約100℃〜約180℃の範囲である、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
2−エチルヘキサン酸を、場合によっては好適な有機溶媒中で、好適な反応温度及び圧力において、担持白金触媒の存在下、及び場合によってはリガンドとしてトリフェニルホスフィンの存在下、場合によっては、安息香酸ナトリウム、無水安息香酸、テトラブチルアンモニウムアセタート、及びトリブチルアミンからなる群から選択される添加剤の存在下でアセチレンと反応させることを含み、ここで、触媒の白金装填量が約0.5重量%〜約10重量%であり、担体が、炭素、活性炭、チタニア、アルミナ、又はジルコニアから選択され、2−エチルヘキサン酸を、約300:1〜約4000:1の2−エチルヘキサン酸:白金金属のモル比で供給する、2−エチルヘキサン酸から2−エチルヘキサン酸ビニルを選択的に形成するための不均一方法。
【請求項22】
反応温度が約140℃〜約200℃の範囲である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
担体が炭素又は活性炭であり、白金が約0.5重量%〜約6重量%の装填レベルで存在する、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
担体が炭素であり、リガンドがトリフェニルホスフィンである、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
担持白金触媒が炭素上に担持されている0.5重量%の白金である、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
担持白金触媒が炭素上に担持されている1重量%の白金である、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
担持白金触媒が炭素上に担持されている3重量%の白金である、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
担持白金触媒がパラジウムと白金の組合せであり、担体が炭素であり、パラジウム及び白金が約1重量%〜約5重量%の装填レベルで存在する、請求項21に記載の方法。
【請求項29】
担持白金触媒が炭素上の1重量%白金であり、反応温度が約160℃である、請求項21に記載の方法。
【請求項30】
安息香酸を、好適な有機溶媒中で、約100℃〜約180℃の範囲の温度において、炭素上1%白金、活性炭上3%白金、チタニア上5%白金、又はアルミナ上0.5%白金から選択される担持白金触媒の存在下、及び場合によってはリガンドとしてトリフェニルホスフィン、及び場合によっては、安息香酸ナトリウム、無水安息香酸、テトラブチルアンモニウムアセタート、及びトリブチルアミンからなる群から選択される添加剤の存在下でアセチレンと反応させることを含む、安息香酸から安息香酸ビニルを選択的に形成するための不均一方法。
【請求項31】
反応温度が約110℃〜約170℃の範囲である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
反応温度が約120℃〜約160℃の範囲である、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
担持金属触媒がチタニア上5重量%白金である、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
消費されたカルボン酸を基準とするビニルエステルへの選択率が少なくとも60%である、請求項30に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−526109(P2012−526109A)
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−509785(P2012−509785)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際出願番号】PCT/US2010/001275
【国際公開番号】WO2010/129029
【国際公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(500175107)セラニーズ・インターナショナル・コーポレーション (77)
【Fターム(参考)】