説明

両面研磨装置

【課題】研磨加工時にワークに加わる上定盤による押圧力を、構成が簡単でエネルギー消費の少ない減圧機構によって精密かつ安定的に微調整できるようにする。
【解決手段】ワークWの研磨時に上定盤3に該上定盤3の荷重と逆向きの荷重を作用させる減圧機構44を有し、前記上定盤3の荷重と前記逆向き荷重との差を研磨時の押圧力とする両面研磨装置において、前記減圧機構44は、上定盤3と軸線が一致する位置に上下動可能に配設された静圧力伝達軸45と、前記上定盤3と該静圧力伝達軸45とを相互に連結する自動調芯軸受49と、静止する液体47の液位差により静圧力を発生させ、この静圧力を前記静圧力伝達軸45に前記上定盤3による荷重と逆向きの荷重として作用させる静圧力発生装置48とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨加工時にワークに加わる上定盤による押圧力を微調整することができる両面研磨装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ワークの両面を研磨加工する両面研磨装置は、一般に、同心状に配設された円環状の上定盤及び下定盤と、該下定盤の中心に配設された太陽歯車と、該下定盤の外周を取り囲むように配設された内歯歯車と、前記下定盤上に配設されて前記太陽歯車と内歯歯車とに噛合するキャリアとを有していて、該キャリアに保持させたワークを前記上定盤と下定盤とで挟み、前記太陽歯車と内歯歯車とを回転させることにより前記キャリアを自転させると共に太陽歯車の回りを公転させながら、前記上定盤と下定盤とを相対的に回転させて前記ワークの両面を研磨するように構成されている。
【0003】
研磨時に前記ワークには、上定盤により押圧力(加工荷重)が加えられる。その場合、上定盤の重量(荷重)は、付属する部材の重量を含めると非常に大きいため、ワークの加工条件に応じて上定盤の重量を調整する必要があり、特に、薄い水晶基板のように破損し易いワークを研磨する場合には、精密に微調整された小さな押圧力をワーク全体に均等に加えながら研磨する必要がある。このため、一般に、上定盤の荷重と逆向きの荷重(逆向き荷重)を発生させる減圧発生機構を設け、この減圧発生機構からの逆向き荷重を前記上定盤に作用させることにより、該上定盤の荷重と前記逆向き荷重との差を研磨時の押圧力とするようにしている。
【0004】
特許文献1−特許文献4には、色々な構成の減圧発生機構を備えた研磨装置が開示されている。
特許文献1に記載された研磨装置の減圧発生機構は、錘で逆向き荷重を発生させて上定盤の重量に対向させるものであるが、構造によっては該上定盤の重量と同程度の重量の錘を設けなければならないため、研磨装置の総重量が非常に大きくなって装置も大がかりになり、逆向き荷重を調整するために錘を移動させたり増減させたりする機構が必要になるなど、構造も複雑である。
【0005】
また、特許文献2及び特許文献3に記載された研磨装置の減圧発生機構は、エアバッグを使用し、該エアバッグ内の空気圧を調整することによって上定盤の押圧力を調整するものである。しかし、このようにエアバッグを使用するものにおいては、該エアバッグに対して圧縮空気を給排するためにエアポンプや電磁弁等が必要であり、該エアポンプや電磁弁の駆動時には常に電力を必要とするため、構造が複雑でエネルギーの消費量も大きいという問題がある。さらに、前記電磁弁のオン・オフによってエアバッグに対して圧縮空気が急激に供給されたり急激に排出されたりするため、該エアバッグの内部における圧力の増減が大きく、上定盤に不安定な逆向き荷重が加わることによって押圧力が不安定になり、これがワークの破損につながり易い。
【0006】
さらに、特許文献4に記載された研磨装置の減圧発生機構は、上定盤と同心状に配置した上定盤昇降軸で該上定盤の重量を支持し、該上定盤昇降軸を2つの流体圧シリンダと2組の流体発生装置(ポンプ)及び流体制御弁とで昇降させることにより、前記上定盤の押圧力を調整するようにしている。しかし、この研磨装置においても、減圧発生機構の構造が複雑で電力等のエネルギーの消費量が大きいという問題があるばかりでなく、前記流体制御弁をオン・オフさせて流体圧シリンダ内に圧力流体を供給する際に圧力変動が生じ易いため、上定盤に不安定な逆向き荷重が作用し、これがワークの破損につながり易いという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−83328号公報
【特許文献2】特開平10−264012号公報
【特許文献3】特開2000−6005号公報
【特許文献4】特開2001−322062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の技術的課題は、研磨加工時にワークに加わる上定盤による押圧力を、構成が簡単でエネルギー消費の少ない減圧機構によって精密かつ安定的に微調整できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため本発明は、ワークを挟んで研磨する駆動回転自在の上定盤及び下定盤と、前記上定盤を昇降させる上定盤昇降機構と、ワークの研磨時に前記上定盤の荷重と逆向きの荷重を該上定盤に作用させる減圧機構とを有し、前記上定盤の荷重と該減圧機構による荷重との差を研磨時の押圧力とする両面研磨装置において、前記減圧機構は、上定盤と軸線が一致する位置に上下動可能に配設された静圧力伝達軸と、前記上定盤と該静圧力伝達軸とを相互に連結する自動調芯軸受と、静止する液体の液位差により静圧力を発生させ、この静圧力を前記静圧力伝達軸に前記上定盤による荷重と逆向きの荷重として作用させる静圧力発生装置とを有することを特徴とするものである。
【0010】
本発明において、前記静圧力発生装置は、前記静圧力伝達軸に連結された受圧部材と、該受圧部材に静圧力を作用させる容積可変の静圧力作用室と、静止する液体の液位差により前記静圧力を発生させる静圧力発生室と、前記静圧力を調整する静圧力調整装置とを有し、前記静圧力発生室と静圧力作用室とが連通路によって連通されると共に、該静圧力発生室と静圧力作用室と連通路とに前記液体が収容されている。
【0011】
この場合に好ましくは、前記静圧力発生室内の液位は前記静圧力作用室内の液位より上位位置にあることであり、さらに好ましくは、前記受圧部材の受圧面の水平方向断面積は前記静圧力発生室の水平方向断面積より大きいことである。
【0012】
本発明においては、前記静圧力調整装置がリフタからなり、該リフタで前記静圧力発生室又は静圧力作用室を昇降させて前記静圧力発生室内の液体の液位を変化させるように構成されていても、あるいは、前記静圧力調整装置が、前記静圧力発生室又は連通路に直接形成されるかあるいは該静圧力発生室又は連通路から分岐するように形成された容積可変部と、該容積可変部を押圧する押圧部材とを有し、該押圧部材で前記容積可変部を押圧して容積を変化させることにより前記静圧力発生室内の液体の液位を変化させるように構成されていても良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、前記減圧機構が、静止する液体の液位差により発生する静圧力によって逆向き荷重を発生させる方式であるため、圧縮空気をポンプや電磁弁等によりエアシリンダやエアバッグ等に供給して逆向き荷重を発生させる従来方式に比べ、電気エネルギーの消費を極めて少なくすることができるだけでなく、不規則な圧力変動を伴わない静圧力を上定盤に逆向き荷重として安定的に作用させることができ、その結果、安定した押圧力を得ることができる。しかも、前記液位差を変化させることによって前記逆向き荷重即ち押圧力を精密かつ安定的に微調整することができるので、ワークが半導体基板やガラス基板等である場合はもちろんのこと、数十μmといった超極薄の水晶基板であっても、破損させることなく確実に研磨することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る両面研磨装置の第1実施形態を示す縦断面図で、上定盤が非研磨位置に上昇した状態を示すものである。
【図2】図1の伝達軸連結機構の部分を拡大して示す要部拡大図である。
【図3】図1の状態から上定盤が研磨のために下降し、ワークに接触する前の原点位置で停止している状態を示す断面図である。
【図4】図3の状態から上定盤が下降し、ワークに接触して研磨が行われている状態を示す断面図であって、押圧力が小さい場合を示すものである。
【図5】図4より上定盤の押圧力が大きい場合の断面図である。
【図6】本発明に係る両面研磨装置の第2実施形態を示す縦断面図で、上定盤が研磨位置に下降した状態を示すものである。
【図7】本発明に係る両面研磨装置の第3実施形態を示す縦断面図で、上定盤が研磨位置に下降した状態を示すものである。
【図8】本発明に係る両面研磨装置の第4実施形態を示す縦断面図で、上定盤が非研磨位置に上昇した状態を示すものである。
【図9】本発明に係る両面研磨装置の第5実施形態を示す縦断面図で、上定盤が研磨位置に下降した状態を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1−図5は両面研磨装置の第1実施形態を示すもので、この第1実施形態の両面研磨装置1Aは、機体2と、該機体2の内部に鉛直な軸線(加工中心軸線)Lを中心に同心状に配設された円環状の上定盤3及び下定盤4と、該下定盤4の中心に配設された太陽歯車5と、該下定盤4の外周を取り囲むように配設された内歯歯車6と、前記下定盤4上に配設されて前記太陽歯車5と内歯歯車6とに噛合する複数のキャリア7とを有している。
【0016】
前記機体2は、本体ケース2aと、該本体ケース2aから立ち上がった支柱2bと、該支柱2bの上端に支持された上枠2cと、前記本体ケース2aの上部中央に配置された円筒形のシャフトハウジング2dと、前記本体ケース2aの内部において該シャフトハウジング2dの下方に配置されたギアボックス2eとを備えている。
【0017】
前記下定盤4は下定盤受10に固定され、該下定盤受10の中央下部には円筒状の下定盤軸11が取り付けられ、該下定盤軸11は、前記シャフトハウジング2dの内部に収容され、下定盤軸受12で回転自在に支承されている。前記下定盤軸11の下端部には、前記ギアボックス2e内において下定盤ウオームギア13が取り付けられ、該下定盤ウオームギア13が、前記ギアボックス2eの外部に取り付けられた下定盤モータ14で駆動回転されるようになっている。
【0018】
また、前記太陽歯車5は、太陽歯車受17に固定され、該太陽歯車受17の中央下部には円筒状の太陽歯車軸18が取り付けられ、該太陽歯車軸18は、前記下定盤軸11の内部に同心状に収容され、下端部が前記ギアボックス2eの下部において太陽歯車軸受19で回転自在に支承されている。前記太陽歯車軸18には、太陽歯車ウオームギア20が取り付けられ、該太陽歯車ウオームギア20が、前記ギアボックス2eの外部に取り付けられた太陽歯車モータ21で駆動回転されるようになっている。
【0019】
さらに、前記内歯歯車6は、内歯歯車受24に固定され、該内歯歯車受24の中央下部には円筒状の内歯歯車軸25が取り付けられ、該内歯歯車軸25は、前記シャフトハウジング2dの外周を取り囲むように配置され、下端部が内歯歯車軸受26で回転自在に支承されている。前記内歯歯車軸25には、内歯歯車ギア27が取り付けられ、該内歯歯車ギア27が、機体2に取り付けられた内歯歯車モータ28で駆動回転されるようになっている。
【0020】
一方、前記上定盤3は、図2からも分かるように、上定盤吊31の下面に固定され、該上定盤吊31の上面には複数のスタッド32が上方に延出するように固定され、該スタッド32を介して前記上定盤3が、機体2の上部に設置された上定盤昇降機構33によって昇降自在かつ上定盤回転機構34によって駆動回転自在なるように支持されている。
【0021】
前記上定盤昇降機構33は、機体2の上枠2cの上面に固定されたサーボ式の昇降シリンダ35と、該昇降シリンダ35のロッド35aの上端に固定された昇降プレート36と、該昇降プレート36から下向きに延びる円筒形の昇降ロッド37とを有し、該昇降ロッド37が、上枠2cの上面に固定されたロッド受38の内部に上下動自在に支持されている。前記昇降シリンダ35はサーボモータであっても良い。そして、前記昇降ロッド37の内部に、上定盤回転軸39が、前記加工中心軸線Lに沿う方向(上下方向)には該昇降ロッド37と相互に固定関係にあるが、回転方向には該昇降ロッド37と互いに自由な相互関係を有するように保持されている。
【0022】
前記上定盤回転軸39の下端には、円板形をしたドライブプレート40が固定され、該ドライブプレート40に形成された連結孔40a内に、前記スタッド32が、上端を該ドライブプレート40から上方に突出させた状態で上下動自在に嵌合し、該スタッド32を介して上定盤3が駆動、回転されるようになっている。
前記スタッド32の上端には、フランジ状の係止部32aが設けられ、該係止部32aは、上定盤3の昇降時に前記ドライブプレート40の上面に係止して上定盤回転軸39と上定盤3とを相互に連結し、ワークWの研磨時には、該ドライブプレート40の上面から上方に離間して前記上定盤回転軸39に上定盤3の重量が加わらないようにする。
【0023】
前記上定盤回転軸39の上端には上定盤ギア41が固定され、該上定盤ギア41は上定盤モータ42に接続され、該上定盤モータ42で前記上定盤3が駆動回転されるようになっている。従って、前記上定盤回転軸39と上定盤ギア41と上定盤モータ42とは、前記上定盤回転機構34を構成するものである。
また、前記上定盤モータ42は前記昇降プレート36に固定され、該昇降プレート36及び前記上定盤回転軸39と一緒に昇降する。従って、該上定盤回転軸39は、前記上定盤昇降機構33の一部を構成すると同時に前記上定盤回転機構34の一部も構成するものである。
【0024】
前記下定盤モータ14、太陽歯車モータ21、内歯歯車モータ28、上定盤モータ42は、予め設定されたプログラムに従って制御装置(不図示)により制御され、必要な回転方向に必要な回転速度で個別に駆動回転されるようになっている。
【0025】
そして、ワークWを研磨するときは、該ワークWが前記キャリア7のワーク保持孔内に保持されたあと、図4のように、前記上定盤3が下降して該上定盤3の下面の作業面と前記下定盤4の上面の作業面との間に前記ワークWが挟持され、その状態で前記上定盤3と下定盤4と太陽歯車5と内歯歯車6とが回転することにより、前記キャリア7が自転しながら太陽歯車5の回りを公転し、該キャリア7に保持されたワークWの両面が前記上定盤3と下定盤4との作業面で研磨される。その研磨時に、前記上定盤3に形成された供給孔から研磨スラリーが前記作業面に供給される。
【0026】
前記両面研磨装置1Aには、前記ワークWの研磨時に、前記上定盤3に該上定盤3の荷重と逆向きの荷重(以下、「逆向き荷重」と言う。)を作用させる減圧機構44が設けられ、前記上定盤3の荷重と該減圧機構44による逆向き荷重との差をワークWへの押圧力とするように構成されている。
【0027】
前記減圧機構44は、上定盤3と軸線が一致する位置に上下動可能に配設された静圧力伝達軸45と、ワークWの研磨時に前記上定盤3と該静圧力伝達軸45とを相対的に回転自在なるように連結する伝達軸連結機構46と、静止する液体47の液位差Hにより静圧力を発生させて、この静圧力を前記静圧力伝達軸45に前記上定盤3による荷重と逆向きの荷重として作用させる静圧力発生装置48とを有している。
【0028】
前記静圧力伝達軸45は、前記太陽歯車軸18の内部に上下端が該太陽歯車軸18から上方及び下方に延出するように収容されていて、図示しない軸受機構により支持されている。従って該静圧力伝達軸45が配設されている位置は、前記上定盤3より下方である。
該静圧力伝達軸45の上端の接触面45aは水平な平面に形成され、前記伝達軸連結機構46を構成する自動調芯軸受49に接触して前記上定盤3による荷重を支えるようになっている。
【0029】
本実施形態においては、前記自動調芯軸受49として玉軸受が使用されている。この玉軸受は、図2に示すように、下向きに開放する半球状の凹室49b内に球体49aを収容し、該球体49aと前記凹室49bの室内面との間に多数の小球49cを転動自在に介在させることにより、前記球体49aが全ての方向に360度回転自在であるように構成されたものである。該自動調芯軸受49は、前記上定盤吊31の中央の軸受取付部31aに取り付けられ、上定盤3の昇降によって前記球体49aが前記静圧力伝達軸45の上端の接触面45aに接触したり離間したりすることにより、該上定盤3が前記静圧力伝達軸45に対して相対的に回転自在なるように連結されたり切り離されたりするようになっている。
【0030】
前記静圧力伝達軸45の下端には、荷重センサ52を介して前記静圧力発生装置48が連結されている。該静圧力発生装置48は、前記静圧力伝達軸45の下端に前記荷重センサ52を介して連結されたプレート状の受圧部材53と、該受圧部材53に前記静圧力を作用させる静圧力作用室54と、静止する液体47の液位差Hにより前記静圧力を発生させる静圧力発生室55と、前記静圧力を調整する静圧力調整装置56とを有している。
【0031】
前記静圧力作用室54は、合成ゴムや合成樹脂のような薄くかつ軽量で強度と耐久性と可撓性とを有する液不透過性の素材からなるバッグ57の内部に形成され、該バッグ57は支持台58上に載置され、該バッグ57の上面に前記受圧部材53がその下面の受圧面で均等に圧力を受けるように当接している。
【0032】
また、前記静圧力発生室55は、機体2に上下方向好ましくは鉛直に支持されたパイプなどの中空状部材59の内部に形成されていて、該静圧力発生室55の上部は外気に開放され、下部は可撓性のあるチューブ60内の連通路61を通じて前記静圧力作用室54の下部に連通され、これらの静圧力発生室55と連通路61と静圧力作用室54との内部に油や水等の前記液体47が充填されている。
【0033】
前記静圧力発生室55の水平方向断面形状は、円形や楕円形、矩形、三角形、その他の多角形など、任意の形状とすることができ、また、該静圧力発生室55の水平方向断面積は、高さ方向に一定であっても良いが、例えば円錐状、角錐状、円錐台状、角錐台状、逆円錐状、逆角錐状、逆円錐台状、逆角錐台状などのように、高さ方向に規則的あるいは不規則に変化していても良い。一方、前記静圧力作用室54の水平方向断面形状は、円形、円環形、多角形、多角環形など、任意の形状とすることができる。
【0034】
前記静圧力作用室54及び静圧力発生室55は、静圧力作用室54内の液位より静圧力発生室55内の液位の方が上位になるような位置関係に配置することが必要である。そして、前記受圧部材53の受圧面の水平方向断面積、すなわち前記受圧部材53と前記静圧力作用室54との接触面積を静圧力発生室55の水平方向断面積より大きく設定することで、装置スペースを格別広くとることなく、確実に静圧力を発生させることが可能となる。
【0035】
このように構成することにより、前記静圧力発生室55内の液体47と前記静圧力作用室54内の液体47との液位差Hにより静圧力が発生し、この静圧力が前記静圧力作用室54内の液体47を通じて前記受圧部材53に作用し、該受圧部材53を上方向に押し上げることにより、ワークWの研磨時に静圧力伝達軸45を介して上定盤3に逆向き荷重を作用させるものである。
【0036】
前記静圧力調整装置56は、前記支持台58を昇降させるリフタ64により構成され、このリフタ64で前記静圧力作用室54を昇降させて該静圧力作用室54の容積を変化させることにより、前記静圧力発生室55内の液体47の液位を変化させるものである。
前記リフタ64は、雄ねじからなる昇降軸65を、ボディ66内に設けた不図示の雌ねじ及びウオーム歯車を介してリフタ用モータ67で回転させることにより昇降させるもので、前記昇降軸65が前記支持台58の下面に連結されている。そして、前記リフタ用モータ67を制御装置で制御することにより、前記昇降軸65の昇降制御が精密に行われるように構成されたものである。しかし、前記リフタ64は、前記静圧力作用室54を昇降可能な機構であれば、このような構成のものに限定されない。
【0037】
次に、前記構成を有する両面研磨装置1AでワークWを研磨するときの動作について説明する。この動作は、前記制御装置に予め入力されたプログラムに従って自動的に行われる。
図1はワークWの非研磨時の状態を示している。このとき上定盤3は、昇降シリンダ35のロッド35aの伸長により、昇降プレート36及び昇降ロッド37、上定盤回転軸39、ドライブプレート40、スタッド32、上定盤吊31を介して持ち上げられ、上昇端の位置を占めている。また、前記リフタ64の昇降軸65が上昇端の位置にあるため、前記静圧力伝達軸45も上昇端の位置である原点位置を占めている。
【0038】
このとき、前記静圧力作用室54内の液体47には、前記受圧部材53を介して、該受圧部材53、荷重センサ52、静圧力伝達軸45の重量が荷重として下向きに作用し、これに対して前記受圧部材53には、前記静圧力作用室54と静圧力発生室55とにおける液体47の液位差Hにより発生する静圧力が逆向き荷重として上向きに作用し、これら下向きの荷重と前記逆向き荷重とが互いに釣り合っている。
【0039】
ここで、前記受圧部材53の受圧面の水平方向断面積(受圧部材53と静圧力作用室54との接触面積)をA、該受圧部材53により静圧力作用室54内の液体47に作用する荷重(図1の状態では静圧力伝達軸45、荷重センサ52、受圧部材53の総重量)をF、液体47の比重をGとすると、F÷A=H×Gなる関係が成り立つ。
【0040】
この状態から、前記下定盤4上に載置されたキャリア7にワークWがセットされ、操作盤のスタートボタンが押されると、前記昇降シリンダ35のロッド35aの短縮により、上定盤3は、前記昇降プレート36及び昇降ロッド37から上定盤回転軸39、ドライブプレート40、スタッド32、上定盤吊31に至るまでの部材(以下、「昇降関連部材」という。)と一体となって高速で下降し、自動調芯軸受49の球体49aが静圧力伝達軸45の上端の接触面45aに接触する直前の第1停止位置に一旦停止する。
【0041】
次に、前記昇降シリンダ35のロッド35aがゆっくり短縮することにより、前記上定盤3は前記昇降関連部材と一体となったまま前記第1停止位置から低速で下降し、図3に示すように、自動調芯軸受49の球体49aが前記静圧力伝達軸45の接触面45aに接触して該上定盤の荷重が前記静圧力伝達軸45に作用するが、該上定盤3は未だワークWに接触しない位置である第2停止位置で停止する。上定盤吊31とスタッド32もその位置で停止する。しかし、その後も前記昇降シリンダ35のロッド35aは若干短縮を続けるため、前記ドライブプレート40はスタッド32に対して下方に変位し、該スタッド32の上端の係止部32aが該ドライブプレート40の上面から離間する。
【0042】
この結果、前記上定盤吊31とスタッド32及び自動調芯軸受49を含めた上定盤3の総重量(以下、「上定盤荷重」という。)は、前記ドライブプレート40に作用していた状態から、全て前記静圧力伝達軸45に下向きに作用するようになる。このため、該静圧力伝達軸45の下端の受圧部材53及びバッグ57を介して静圧力作用室54内の液体47に作用する下向きの荷重は増大し、それと釣り合う逆向き荷重発生のために静圧力発生室55内の液位が上昇し、液位差Hが増大する。
【0043】
次に、図4に示すように、前記リフタ用モータ67の駆動によりリフタ64の昇降軸65が下降し、前記バッグ57の容積即ち静圧力作用室54の容積が拡大し、該静圧力作用室54内に前記静圧力発生室55内の液体47が流入することにより液位差Hが減少し、それに伴って前記受圧部材53に上向きに作用する逆向き荷重が減少する。このとき、依然として前記静圧力伝達軸45に上定盤荷重が作用しているので、減少した逆向き荷重に上定盤荷重が釣り合うために、前記バッグ57の上面が下方に変位して静圧力伝達軸45と上定盤3とが下降し、該上定盤3はワークWの上面に接触(着盤)する。この着盤動作時に、前記昇降軸65の下降速度を調整して前記静圧力作用室54内への液体47の流入速度を調整することにより、前記第2停止位置からの上定盤3の着盤速度を任意に設定することが可能である。
【0044】
また、前記リフタ64の昇降軸65の下降速度が一定であっても、前記中空状部材59の内部に形成された前記静圧力発生室55の水平方向断面積が上下方向に変化している場合には、該昇降軸65の昇降による液体47の移動量(流入量・流出量)は変わらないが、液位毎の断面積が徐々に小さく/大きくなるにつれて静圧力の変化速度が速く/遅くなるため、これを利用して前記静圧力作用室54内への液体47の流入速度を調整することができ、これにより、静圧力の変化速度、即ち上定盤3に作用する逆向き荷重の作用速度(着盤速度・上昇速度)を段階的(曲線的)に制御することが可能である。
【0045】
そして、前述した如く上定盤3がワークWの上面に接触した状態で、前記太陽歯車5、内歯歯車6、上定盤3、下定盤4が回転することにより、前記キャリア7が自転しながら太陽歯車5の回りを公転し、該キャリア7に保持されたワークWの両面が前記上定盤3と下定盤4との作業面で研磨される。このとき、前記上定盤3によりワークWに作用する押圧力は、前記上定盤荷重と前記減圧機構44により発生する逆向き荷重との差である。
【0046】
前記押圧力は、前記リフタ64の昇降軸65の高さを制御することによって研磨中に任意に変更することができる。即ち、前記昇降軸65を下降させると、前述したように、静圧力作用室54の容積が拡大して該静圧力作用室54内に静圧力発生室55内の液体47が流入するため、液位差Hが減少し、それに伴って受圧部材53に上向きに作用する逆向き荷重も減少するから、前記押圧力は大きくなる。
【0047】
それとは逆に前記昇降軸65を上昇させると、静圧力作用室54の容積が縮小して該静圧力作用室54内の液体47が静圧力発生室55内に流出するため、液位差Hが増大し、それに伴って受圧部材53に上向きに作用する逆向き荷重も増大するから、前記押圧力は小さくなる。前記昇降軸65の上昇により押圧力を零にすることも可能である。
図5は、図4に比べ、前記昇降軸65が下降して逆向き荷重が減少することにより、大きい押圧力がワークWに作用している状態を示している。
【0048】
前記押圧力は、前記荷重センサ52により測定される上定盤3と静圧力伝達軸45との荷重から求められ、該押圧力が設定した値となるように、前記荷重センサ52からの測定信号に基づいて前記リフタ64が研磨加工中に昇降制御される。例えば、ワークWの厚さが目標厚さに近づくにつれて前記押圧力を小さくしていき、研磨終了時に零にすることもできる。
【0049】
ここで、前記静圧力伝達軸45は、自動調芯軸受49を介して前記上定盤3に非回転状態に接続されることにより、該上定盤3の傾き等の影響を受けにくくなっており、前記荷重センサ52は、この非回転の静圧力伝達軸45の下部に設置されて前記上定盤3の傾き等の影響を全く受けることがないので、前記押圧力を正確かつ高精度に検出することができ、押圧力の制御精度が向上する。
【0050】
また、前記減圧機構44は、静止する液体47の液位差Hにより発生する静圧力によって逆向き荷重を発生させる方式であるため、圧縮空気をポンプや電磁弁等によりエアシリンダやエアバッグ等に供給して逆向き荷重を発生させる従来方式に比べ、電気エネルギーの消費が極めて少ないだけでなく、不規則な圧力変動を伴わない静圧力を上定盤に逆向き荷重として安定的に作用させることができ、その結果、安定した押圧力を得ることができる。しかも、前記液位差Hを変化させることによって前記逆向き荷重即ち押圧力を精密かつ安定的に微調整することができるので、ワークWが半導体基板やガラス基板等である場合はもちろんのこと、数十μmといった超極薄の水晶基板であっても、破損させることなく確実に研磨することができる。
【0051】
研磨が終了すると、前記上定盤3、下定盤4、太陽歯車5、内歯歯車6の回転が停止され、昇降シリンダ35のロッド35aがゆっくり伸長することにより、昇降プレート36及び昇降ロッド37と上定盤回転軸39とドライブプレート40とが低速で上昇する。そして、該ドライブプレート40がスタッド32の係止部32aに係止して上定盤3が僅かに持ち上げられると、その位置から前記昇降シリンダ35のロッド35aが高速で伸長すること
により、前記上定盤3は高速で上昇して図1の上昇端の位置まで持ち上げられる。それと同時に前記減圧機構44も原点位置に復帰する。
そして、研磨されたワークWがキャリア7から取り出され、別のワークWがセットされて新たな研磨が行われる。
【0052】
前記第1実施形態は、以下の各種変形例のように構成することもできる。即ち、図示した例では、前記上定盤昇降機構33において、前記昇降シリンダ35が昇降プレート36を介して前記昇降ロッド37に互いに並列する形に接続されているが、前記昇降シリンダ35と昇降ロッド37とを直列に接続しても良く、該昇降ロッド37と前記上定盤回転軸39とを一つの軸で兼用させても良い。
【0053】
また、前記上定盤回転機構34は、前記昇降プレート36に取り付けた上定盤モータ42により上定盤回転軸39を介して上定盤3を駆動回転させるように構成されているが、通常の両面研磨装置で用いられている周知の回転機構であっても良い。即ち、下定盤4の中心部に前記静圧力伝達軸45を取り囲むように円筒状のドライバを回転自在に配設し、該ドライバを、前記太陽歯車軸18と同心状に延びるドライバ軸を介して機体の適宜位置に取り付けられた上定盤モータに連結し、該ドライバの外周の係止溝に前記上定盤3の内周から回転中心に向けて突出するフックを係合させ、該ドライバを介して前記上定盤3を回転させる回転機構であっても構わない。この場合、前記昇降プレート36や昇降ロッド37、上定盤回転軸39、上定盤ギア41、昇降プレート36上の上定盤モータ42等は省略され、前記昇降シリンダ35が、ロッド35aを下向きにした姿勢で加工中心軸線L上に配置され、該ロッド35aの下端に前記上定盤3が傾動自在かつ回転自在に連結される。
【0054】
さらに、前記伝達軸連結機構46を構成する自動調芯軸受49は、前記静圧力伝達軸45に当接する球体49aを中心に備えた玉軸受で形成されているが、該自動調芯軸受49はこのような構成のものに限定されず、内輪と外輪の間にボールを介在させた自動調芯玉軸受や、内輪と外輪の間にころを介在させた自動調芯ころ軸受であっても良く、あるいはジャイロ型の軸受であっても良い。このような玉軸受やころ軸受あるいはジャイロ型軸受を自動調芯軸受として使用する場合、前記外輪が上定盤3側に取り付けられ、前記内輪に静圧力伝達軸45に対する接触面が形成される。この内輪側の接触面は、該内輪の下面に該内輪の中空部を塞ぐようにプレート等の部材を取り付けることにより形成することができる。また、該内輪の接触面に接触する前記静圧力伝達軸45の接触面45aは、水平な平面又は球面に形成することができる。
【0055】
また、前記静圧力発生装置48における静圧力発生室55は、上端が外気に開放されることなく密閉されていても良い。その場合には、該静圧力発生室55を、前記静圧力作用室54と同様に、合成ゴムや合成樹脂のような薄くかつ軽量で強度と耐久性と可撓性とを有する液不透過性の素材からなるバッグで形成し、その中に、気体が混在しないように液体47のみを封入することが必要である。気体が混在すると、該気体の圧縮率は液体より大きいため、該気体の圧縮によって静圧力が吸収されるからである。
【0056】
図6には、本発明に係る両面研磨装置の第2実施形態が示されている。この第2実施形態の両面研磨装置1Bが前記第1実施形態の両面研磨装置1Aと異なる点は、静圧力調整装置56が、リフタ64で静圧力発生室55を昇降させることによって該静圧力発生室55内の液位を変化させるように構成されている点である。
【0057】
即ち、前記リフタ64は、ワイヤやチェーン等からなる牽引部材70と、機体2に回転自在に支持されて該牽引部材70が巻き掛けられたプーリやギア等の巻取部材71とで構成されていて、前記牽引部材70の先端は静圧力発生室55を形成する中空状部材59の上端に連結され、前記巻取部材71が不図示の駆動手段で駆動回転されるようになっている。そして、該巻取部材71を正逆に回転させて前記牽引部材70を巻き取ったり繰り出したりして前記静圧力発生室55を昇降させることにより、前記静圧力発生室55内の液体47の液位が上昇又は下降して静圧力作用室54内の静圧力が上昇又は下降するようにしたものである。
静圧力作用室54を形成するバッグ57は、機体2に固定された支持台72上に載置されている。
【0058】
しかし、この第2実施形態における前記リフタ64は、前記静圧力発生室55を昇降させることができるものであれば、このような構成のものに限定されない。
【0059】
この第2実施形態の前記以外の構成及び作用や変形例等は、実質的に前記第1実施形態の場合と同じであるから、主要な同一構成部分に該第1実施形態と同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0060】
図7には、本発明に係る両面研磨装置の第3実施形態が示されている。この第3実施形態の両面研磨装置1Cが前記第1実施形態の両面研磨装置1Aと異なる点は、静圧力調整装置56が、静圧力発生室55と静圧力作用室54とを結ぶ連通路61の断面積を変化させることによって前記静圧力発生室55内の液位を変化させるように構成されている点である。
【0061】
このため該第3実施形態においては、連通路61を形成するチューブ60の一部に、押圧により弾性変形して容積が変化する容積可変部62が形成され、該容積可変部62の両側に一対の押圧部材73a,73bが配設され、一方の第1押圧部材73aは機体2に固定され、他方の第2押圧部材73bは押圧装置74に連結されている。そして、該押圧装置74で前記第2押圧部材73bを前進させて前記容積可変部62を押圧し、それを変形させて断面積即ち容積を縮小させることにより、前記静圧力発生室55内の液位が上昇して静圧力作用室54内の静圧力が上昇するようになっている。
前記静圧力作用室54を形成するバッグ57は、機体2に固定された支持台72上に載置されている。
【0062】
なお、本第3実施形態では、前記容積可変部62が連通路61を形成するチューブ60に直接形成されているが、該容積可変部62は、チューブ60以外の場所に、前記静圧力作用室54以外のエリアを押圧するように形成することもできる。例えば、前記静圧力発生室55を形成する中空状部材59の液体47が収容されている部分に該容積可変部62を直接形成したり、該中空状部材59又は前記チューブ60から中空体(図9の「中空体77」を参照)を前記静圧力発生室55又は連通路61に連通するように分岐させ、この中空体に前記容積可変部62を形成することもできる。
【0063】
この第3実施形態の前記以外の構成及び作用や変形例等は、実質的に前記第1実施形態の場合と同じであるから、主要な同一構成部分に該第1実施形態と同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0064】
図8には、本発明に係る両面研磨装置の第4実施形態が示されている。この第4実施形態の両面研磨装置1Dが前記第1実施形態の両面研磨装置1Aと異なる点は、静圧力作用室54がケーシング76の内部に形成され、受圧部材53がピストンで形成されている点である。
【0065】
即ち、前記ケーシング76の内部に、前記受圧部材即ちピストン53が不図示のシール部材を介して上下方向に摺動自在なるように収容され、該ピストン53の下面と前記ケーシング76の内底面及び内側面との間に前記静圧力作用室54が区画、形成されている。そして、該ケーシング76の外底面の中央位置にリフタ64の昇降軸65が連結されている。
【0066】
この第4実施形態の前記以外の構成及び作用や変形例等は、実質的に前記第1実施形態
の場合と同じであるから、主要な同一構成部分に該第1実施形態と同じ符号を付し、その
説明は省略する。
【0067】
図9には、本発明に係る両面研磨装置の第5実施形態が示されている。この第5実施形態の両面研磨装置1Eが図7に示す第3実施形態の両面研磨装置1Cと相違する主要な相違点は、減圧機構44を構成する静圧力発生装置48の静圧力作用室54及び受圧部材53が機体2の上定盤3より上方の位置に設置され、また、上定盤回転軸39が静圧力伝達軸45を兼ねていて、該上定盤回転軸39を介して上定盤3に前記静圧力発生装置48からの静圧力が伝達されるようになっている点である。従って、前記静圧力伝達軸45も上定盤3の上方に配置されていることになる。
【0068】
以下、この第5実施形態の前記第3実施形態との相違点について簡単に説明する。前記機体2の上枠2c上には、円環状をしたバッグ57が載置され、該バッグ57の内部に前記静圧力作用室54が形成され、該バッグ57の上に円環状をした前記受圧部材53が載置され、該受圧部材53の上に昇降シリンダ35が取り付けられ、該昇降シリンダ35のロッド35aが荷重センサ52を介して昇降プレート36に連結されている。
【0069】
前記上定盤回転軸39即ち静圧力伝達軸45は、前記受圧部材53及びバッグ57の中心を遊挿状態に貫通すると共に、ドライブプレート40の中心を該ドライブプレート40に固定された状態で貫通し、下端が前記上定盤3に、自動調芯軸受49を介して360度全ての方向に傾動自在であるように連結されている。また、前記ドライブプレート40とスタッド32とは、軸線が傾斜する方向には相互に自由度を持っているが、回転方向には相互に固定関係にあるように連結されている。
【0070】
前記静圧力作用室54は連通路61によって静圧力発生室55に連通され、該静圧力発生室55の下端にパイプなどの中空体77が分岐状態に接続され、該中空体77の下端部に容積が変更可能な容積可変部62が形成され、さらに、該容積可変部62を両側から押圧する一対の押圧部材73a,73bと、一方の押圧部材73bを押圧する押圧装置74とが配設されている。
【0071】
この第5実施形態においては、受圧部材53上の前記昇降シリンダ35により昇降プレート36、昇降ロッド37、静圧力伝達軸45を介して前記上定盤3が昇降され、また、前記昇降プレート36に取り付けられた上定盤モータ42により、前記静圧力伝達軸45を介して前記上定盤3が駆動回転される。
そして、ワークWの研磨時に、前記上定盤3が、前記昇降シリンダ35により静圧力伝達軸45を介してワークWに接触する直前の位置まで下降させられたあと、該昇降シリンダ35のエア回路が開放されることにより静圧力の作用でワークWに接触し、前記静圧力伝達軸45を介して駆動回転されることにより該ワークWの加工が行われる。研磨中の該上定盤3による押圧力の調整は、前記押圧装置74を操作することにより第3実施形態の場合と同様にして行われる。
【0072】
前記第5実施形態の前記以外の構成及び作用や変形例等は、実質的に前記第3実施形態の場合と同じであるから、主要な同一構成部分に該第3実施形態と同じ符号を付し、その説明は省略する。
【符号の説明】
【0073】
1A,1B,1C,1D,1E 両面研磨装置
3 上定盤
4 下定盤
33 上定盤昇降機構
44 減圧機構
45 静圧力伝達軸
47 液体
48 静圧力発生装置
49 自動調芯軸受
53 受圧部材
54 静圧力作用室
55 静圧力発生室
56 静圧力調整装置
61 連通路
62 容積可変部
64 リフタ
73a,73b 押圧部材
W ワーク
H 液位差
L 軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを挟んで研磨する駆動回転自在の上定盤及び下定盤と、前記上定盤を昇降させる上定盤昇降機構と、ワークの研磨時に前記上定盤の荷重と逆向きの荷重を該上定盤に作用させる減圧機構とを有し、前記上定盤の荷重と該減圧機構による荷重との差を研磨時の押圧力とする両面研磨装置において、
前記減圧機構は、上定盤と軸線が一致する位置に上下動可能に配設された静圧力伝達軸と、前記上定盤と該静圧力伝達軸とを相互に連結する自動調芯軸受と、静止する液体の液位差により静圧力を発生させ、この静圧力を前記静圧力伝達軸に前記上定盤による荷重と逆向きの荷重として作用させる静圧力発生装置とを有する、
ことを特徴とする両面研磨装置。
【請求項2】
前記静圧力発生装置は、前記静圧力伝達軸に連結された受圧部材と、該受圧部材に静圧力を作用させる容積可変の静圧力作用室と、静止する液体の液位差により前記静圧力を発生させる静圧力発生室と、前記静圧力を調整する静圧力調整装置とを有し、前記静圧力発生室と静圧力作用室とが連通路によって連通されると共に、該静圧力発生室と静圧力作用室と連通路とに前記液体が収容されていることを特徴とする請求項1に記載の両面研磨装置。
【請求項3】
前記静圧力発生室内の液位は前記静圧力作用室内の液位より上位位置にあることを特徴とする請求項2に記載の両面研磨装置。
【請求項4】
前記受圧部材の受圧面の水平方向断面積は前記静圧力発生室の水平方向断面積より大きいことを特徴とする請求項3に記載の両面研磨装置。
【請求項5】
前記静圧力調整装置はリフタからなり、該リフタで前記静圧力発生室又は静圧力作用室を昇降させて前記静圧力発生室内の液体の液位を変化させることを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載の両面研磨装置。
【請求項6】
前記静圧力調整装置は、前記静圧力発生室又は連通路に直接形成されるかあるいは該静圧力発生室又は連通路から分岐するように形成された容積可変部と、該容積可変部を押圧する押圧部材とを有し、該押圧部材で前記容積可変部を押圧して容積を変化させることにより前記静圧力発生室内の液体の液位を変化させることを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載の両面研磨装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−192486(P2012−192486A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58038(P2011−58038)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000107745)スピードファム株式会社 (62)
【Fターム(参考)】