説明

乗用型田植機

【課題】植付部のローリングバランスが良い乗用型田植機を提供することを目的とする。
【解決手段】植付部15の幅方向に延設された植付部フレーム23の両端には、苗載せ台を支持する支持ステー30,30が立設されており、支持ステー30,30間には連動軸57が回動自在に支持されている。連動軸57には整地ロータ昇降用アクチュエータ54が取付けられたモータ・ポテンショベースが遊嵌されている。植付部フレーム23の中央部には、ローリング支軸31が取付けられており、昇降リンクが取付けられるリンクホルダ32がローリング支軸31に回動自在に嵌合している。リンクホルダ32の一方には植付部のローリングを制御するためのローリング制御用アクチュエータ42が取付けられており、整地ロータ昇降用アクチュエータ54はリンクホルダ32を挟んでローリング制御用アクチュエータ42とは反対側に配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場を走行しつつ苗を植え付ける乗用型田植機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、乗用型田植機は、走行機体の後方に昇降装置を介して植付部がローリングかつ昇降自在に取付けられている。従来、このような乗用型田植機において、植付部のローリングを制御するローリング制御装置を有すると共に、これら植付部と走行機体との間に、圃場を均平する整地装置を設けたものが案出されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−267614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなローリング制御装置及び整地装置を備えた乗用田植え機において、ローリング制御装置のアクチュエータと、整地装置を昇降させる昇降アクチュエータとが、植付部の幅方向において同一側に配置されると、植付部のローリングバランスが悪くなるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、リンクホルダを挟んで、これら昇降アクチュエータ及びローリング制御装置のアクチュエータを左右に分配して配設することによって、上記課題を解決した乗用型田植機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、圃場を走行する走行機体(5)と、該走行機体(5)の後方に昇降装置(13)を介して連結された植付部(15)と、これら走行機体(5)と植付部(15)との間に配置された整地装置(17)と、を備え、機体前後方向に延びたローリング支軸(31)に、前記昇降装置(13)が連結するリンクホルダ(32)を回動自在に取付けたことによって、前記植付部(15)をローリング自在に支持した乗用型田植機(1)において、
前記植付部(15)のローリングを制御するローリング制御装置(33)と、
前記整地装置(17)を昇降させる昇降アクチュエータ(54)と、を備え、
該昇降アクチュエータ(54)と、前記ローリング制御装置(33)のアクチュエータ(42)とを、前記リンクホルダ(32)を挟んで、機体前後方向と直交する前記植付部(15)の幅方向で反対側に位置するように配置した、
ことを特徴とする乗用型田植機(1)にある。
【0007】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これは、発明の理解を容易にするための便宜的なものであり、特許請求の範囲の構成に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明によると、整地装置を昇降させる昇降アクチュエータと、植付部のローリング制御装置のアクチュエータとを、リンクホルダを挟んで左右に分配して配置したことによって、植付部のローリングバランスが向上した。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る乗用型田植機の側面図。
【図2】本発明の実施形態に係る乗用型田植機の植付部の要部拡大側面図。
【図3】本発明の実施形態に係る乗用型田植機の植付部の正面図。
【図4】本発明の実施形態に係る乗用型田植機の植付部の後面図。
【図5】本発明の実施形態に係る乗用型田植機の植付部の斜視図。
【図6】本発明の実施形態に係る乗用型田植機の植付部の斜視図。
【図7】本発明の実施形態に係る乗用型田植機の植付部及び整地ロータの要部拡大側面図。
【図8】本発明の実施形態に係るモータ・ポテンショベース周りの取付構造を示す要部拡大図。
【図9】本発明の実施形態に係るモータ・ポテンショベース周りの取付構造を示す要部拡大図。
【図10】本発明の実施形態に係るモータ・ポテンショベース周りの取付構造を示す要部拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面に沿って説明する。なお、説明中の方向は運転座席に着座した作業者を中心として考えるものとする。
【0011】
[乗用型田植機の概略構成]
図1に示すように乗用型田植機1は、前輪2及び後輪3によって支持された走行機体5を有しており、該走行機体5の前方にはボンネット6に覆われたエンジンが配設されている。走行機体5の中央部には、ステアリングハンドル7及び運転座席9からなる運転操作部10が設けられていると共に、その後方には、昇降リンク11と、該昇降リンク11を昇降させる油圧シリンダ12と、を備えた昇降装置13が設けられている。
【0012】
上記昇降装置13には、圃場に苗を植付ける植付部15が連結されており、該植付部15の下方には圃場面に追従して揺動する複数のフロート16・・・が並設されている。また、植付部15及び走行機体5の間には圃場を均平する整地ロータ(整地装置)17が設けられており、フロート16の前方において圃場を均平している。
【0013】
[植付部の構成]
次に植付部15の構成について説明をする。図1乃至図5に示すように、植付部15は、苗を載置する苗載せ台19と、該苗載せ台19から苗を掻きとって圃場に植付ける植付装置20と、を有しており、植付装置20は、機体前後方向と直交する植付部15の幅方向に延設された角筒形状の植付部フレーム23に所定間隔を有して固設された複数のプランタケース25・・・と、各プランタケース25の後部に回転自在に取付けられたロータリケース26と、該ロータリケース26に回転自在に取付けられたプランタアーム27と、プランタアーム27の先端に設けられたフォーク29と、から構成されている。
【0014】
上記植付部フレーム23には、苗載せ台19を支持する2つの支持ステー30,30が両端部において立設されていると共に、その中央部には機体前後方向に延びたローリング支軸31が取付けられている。植付部15は、該ローリング支軸31に回動自在に嵌合する(支持される)リンクホルダ32に、上記昇降装置13のアッパーリンク11a及びロアリンク11bが連結することによって、走行機体5に対してローリングかつ昇降自在に支持されている。
【0015】
なお、図2に示すように、上記プランタケース25は、L字状のブラケット25aを介して植付部フレーム23に固設されており、上記植付部フレーム23の端部に位置するプランタケース25は、機体前後方向において支持ステー30と対向するように配設されている。また、上記植付け部フレーム23は、その内周に機体前後方向に亘る上下二枚の補強板部23a,23aが、長手方向に連続して形成されており、これら補強板部23aは、植付部フレーム23の強度メンバーであると共に、ブラケット25a及び支持ステー30を取付ける前後通しボルトの案内部となっている。
【0016】
更に、植付部フレーム23は、その内周において、上方側の角部及び下面の中央部に、ネジ穴形成用のリブ23b,23c,23dが設けられており、それぞれ所要の位置にボルト締結用のネジ穴(図示せず)が形成されている。植付部フレーム23の上部後方側の角部に設けられたリブ23bの前面には、フレーム本体の上面と上方側の補強板部23aとを接続するように上下方向に延びた中間壁部23eが該リブ23bと一体に形成されており、補強板部23aを補強していると共に植付部フレーム23の強度及び捩れ剛性を向上させている。
【0017】
植付部フレーム23の前面に取付けられた支持ステー30と、植付部フレーム23の後面に取付けられたL字状のブラケット25aとは、上記補強板部間を案内された前後通しボルトによって友締めされると共に、リブ23c,23dのネジ穴にボルトによって締結されることによって植付部フレーム23に固設されている。
【0018】
ついで、植付部15のローリング制御装置33について説明をする。図3及び図5に示すように、上記リンクホルダ32と植付部15との間には、ローリング支軸31に回転自在に支持された中間部材35が介在しており、該中間部材35の上端部には、植付部15の左右方向に延びたアーム36が取付けられている。該アーム36の左右端には、それぞれ第1及び第2ローリングスプリング37,39の一端が取付けられており、これら第1及び第2ローリングスプリング37,39の他端は、植付部フレーム23に取付けられている。
【0019】
また、中間部材35には、傾斜センサ41が取付けられていると共に、リンクホルダ32には、該傾斜センサ41に基づいて駆動するローリング制御用アクチュエータ(アクチュエータ)42が取付けられている。ローリング制御用アクチュエータ42の出力ギヤ(不図示)は、中間ギヤ43と噛合していると共に、該中間ギヤ43は、中間部材35のアーム36に設けられた円弧状のラック(不図示)と噛合している。
【0020】
ローリング制御装置33は、上記第1及び第2スプリング37,39の基準となる中間部材35の姿勢を、ローリング制御用アクチュエータ42、中間ギヤ43及びアーム36に設けられた円弧状のラック(不図示)からなるモータユニット40によって、圃場面に対して常に水平にすることにより、第1及び第2ローリングスプリング37,39の付勢力を効果的に働かせ、走行機体5の傾きの影響を受けることなく植付部15を圃場面に対して水平にする様に構成されている。
【0021】
[植付け深さ設定機構及び植付け深さ保持機構の構成]
次に、植付部15の植付け深さを設定する植付け深さ設定機構44について説明をする。図2乃至図5に示すように、上記プランタケース25の下部には、植付部フレーム23に対して平行に延びた回動軸45が回転自在に支持されており、該回動軸45には、圃場面に向って機体後方側に延設された複数のリンク46・・・が並設されている。各リンク46の先端部は、フロート16の後方側に設けられた取付部47に、連結ピン49によって取付けられており、フロート16は該連結ピン49を揺動支点として上下に揺動するように構成されている。
【0022】
また、上記回動軸45には、該回動軸45を回動させる植付け深さ設定レバー50が取付けられており、植付け深さ設定レバー50は、その中途部に設けられた突起部50aが植付部フレーム23に設けられたレバーホルダ51の孔部に嵌合することによって、5段階にその位置を調節することができるように構成されている。
【0023】
植付け深さ設定機構44は、上記植付け深さ設定レバー50を、深植付側イもしくは浅植付側ロに移動させることによって、回動軸45を介してリンク46を回動させ、フロート16のプランタケース25(植付部15)に対する上下方向(高さ)位置を調節することにより、植付装置20の植付け深さを設定するように構成されている。
【0024】
ついで、植付け深さ保持機構53について説明する。植付け深さ保持機構53は、図1及び図2に示すように、フロート16の揺動を検出するフロート揺動角検出ポテンショメータ(検出装置)55と、該フロート揺動角検出ポテンショメータ55の検出信号に基づいて昇降装置13を作動させる制御部(不図示)と、から構成されており、フロート揺動角検出ポテンショメータ55は、検出リンク56を介して、上記複数のフロート16・・・の内の少なくとも1つの検知フロート16aの先端と連結している。
【0025】
上記フロート揺動角検出ポテンショメータ55は、通信ケーブル60によって機体側に設けられた制御部に接続されており、該通信ケーブル60によってフロート揺動角検出ポテンショメータ55が電気的に検出した検知フロート16aの揺動が検出信号として制御部に通信される。植付け深さ保持機構53は、制御部が検出信号に基づいて油圧シリンダ12のコントロールバルブ48を制御することによって、植付部15を昇降させ、植付装置20(植付部15)の植付け深さを設定された深さに保持している。
【0026】
[整地ロータの構成]
次に整地ロータ17の構成について説明をする。図6及び図7に示すように、整地ロータ17は、フロート16の機体前方において、2つのステー(連結部材)62,62によって垂下されており、ステー62は、その中間部から植付部15に向って延設され、上記支持ステー30に回動自在に支持された第1連結アーム63と、その上部から植付部15に向って延設され、支持ステー間に架設された連動軸(軸部材)57に一体に連結した第2連結アーム(連結部材)65と、によって回動自在支持されている。これらステー62及び第2連結アーム65により、連動軸57と整地ロータ17とを連結する連結部材を構成している。
【0027】
上記連動軸57には、整地ロータ昇降用アクチュエータ54が取付けられるモータ・ポテンショベース(ベース部材)59が遊嵌されていると共に、該整地ロータ昇降用アクチュエータ54の出力ギヤと噛合するセクタギヤ(回動部材)67が固設されている。また、モータ・ポテンショベース59には、該セクタギヤ67の回動位置を検出する整地ロータ高さ検出ポテンショメータ66が取付けられており、整地ロータ17は、制御部が上記整地ロータ高さ検出ポテンショメータ66からの検出信号に基づいて、運転操作部10の整地ロータ昇降操作ダイヤル68により設定された高さ位置になるように整地ロータ昇降用アクチュエータ54を駆動させることによって、昇降可能に構成されている。これら、整地ロータ昇降用アクチュエータ54、連動軸(軸部材)57、セクタギヤ67、第2連結アーム65により整地装置17の昇降機構を形成している。
【0028】
[連繋部の構成]
次に、植付け深さ設定機構44、植付け深さ保持機構53及び整地ロータ17の連繋部74の構成について説明をする。図4,図6及び図8乃至図10に示すように、上述した連動軸57は、支持ステー30の中間位置で回動自在に支持されていると共に、3分割構成となっており、これら3つの連動軸57L,57R,57Cのうち、中央支持部材58に支持された中央軸57Cに、上記モータ・ポテンショベース59及びセクタギヤ67が遊嵌/固設している。
【0029】
また、モータ・ポテンショベース59は、連動軸57を中心に回動する機体前方へと延びた板状のベース部材であり、該モータ・ポテンショベース59の機体前方側に整地ロータ昇降用アクチュエータ54が取付けられ、該整地ロータ昇降用アクチュエータ54が取付けられた側面とは反対側の側面の機体後方側に、整地ロータ高さ検出ポテンショメータ66及びフロート揺動角検出ポテンショメータ55が取付けられている。
【0030】
これら整地ロータ高さ検出ポテンショメータ66及びフロート揺動角検出ポテンショメータ55は、植付部フレーム23の上方に位置すると共に、植付け深さの設定によって上下したとしても圃場面から一定の高さL位置にあり(図2参照)、圃場から飛散した泥水などが掛からないように配設されている。
【0031】
一方、整地ロータ昇降用アクチュエータ54は、その前方側から保護カバー70によって覆われており、整地ロータ17などから飛散した泥水などが掛からないようになっている。保護カバー70は後面及び下面が開放して構成されており、カバー内に入り込んだ泥水などを容易に排出できるように構成されている。なお、防水性を重視して、保護カバー70を、整地ロータ昇降用アクチュエータ54、ポテンショメータ55,66及びモータ・ポテンショベース59からなるモータ・ポテンショアッシ71全体を覆うように構成してもよい。
【0032】
また、モータ・ポテンショアッシ71(整地ロータ昇降用アクチュエータ54)は、リンクホルダ32を挟んで機体前後方向と直交する植付部15の左右方向(幅方向)において、上述したローリング制御用アクチュエータ42と反対側に位置するように配設されており、これらモータ・ポテンショアッシ71及びローリング制御用アクチュエータ42を植付部15の中央部において左右に振り分けることによって、植付部15の左右バランスを均等にしている。
【0033】
フロート揺動角検出ポテンショメータ55は、その検出軸(不図示)に取付けられ機体前方に延設されたアーム76に、上述した検出リンク56が接続することによって、検知フロート16aの先端と連結しており、該検出リンク56は、植付部フレーム23の前方に配設されている。
【0034】
植付部フレーム23の後方側には、一端がモータ・ポテンショベース59の後部から下方に向って延設されたステー59aに回動自在に取付けられ、他端が回動軸45から上方に向けて延設されたアーム45aに回動自在に取付けられた連繋リンク73が配設されており、該連繋リンク73は、回動軸45側の中途部(プランタケース25の上面位置)で機体後方側に屈曲して、植付部フレーム23に近接した位置を通るように構成されている。モータ・ポテンショベース59は、連繋リンク73によって、回動軸45(植付け深さ設定機構44)の回動に連動して中央軸57Cを中心に回動する。
【0035】
フロート揺動角検出ポテンショメータ55は、モータ・ポテンショベース59が回動軸45を中心に回動し、植付け深さ設定機構44によって設定された植付け深さに応じて位置変更することによって、アーム76と検出リンク56との取付部の高さ位置(取付け高さ)を調節し、検知フロート16aの先端とアーム76との相対的な位置関係を一定にすると共に、検出基準位置が植付け深さによって変化しないように構成されている。
【0036】
上述したように検出リンク56を植付部フレーム23の前方に配設すると共に、連繋リンク73を植付部フレーム23の後方に配設し、該フロート揺動角検出ポテンショメータ55を中心として植付部フレーム23を跨いだ門型のリンク構成にすることによって、コンパクトな構成で植付け深さ保持機構53を植付け深さ設定機構44に連繋させている。
【0037】
一方、モータ・ポテンショベース59は、ローリング制御用アクチュエータ42が連動軸57に固設されたセクタギヤ67と噛合しているため、上述した連繋リンク73によってモータ・ポテンショベース59全体が回動すると、これらセクタギヤ67及びローリング制御用アクチュエータ42の出力軸の噛合によって、連動軸57がモータ・ポテンショベース59と一体となって回動するように構成されている。連動軸57には、上述した整地ロータ17の第2連結アーム65が一体に取付けられているため、植付け深さに応じて、整地ロータ17の圃場面からの高さも、これら連繋機構(連繋リンク機構)73,59,67,57,65,62によって機械的に連動して調整される。
【0038】
なお、フロート揺動角検出ポテンショメータ55は、モータ・ポテンショベース59が連動軸57を中心に回動することによって位置変更しているが、例えば支持ステー30にスライド機構を設け、スライドにより上下動して、検出リンク56との取付部の高さ位置を変更してもよい。また、連動軸57をスライドさせることによって、整地ロータ17も同様に昇降するように構成してもよい。
【0039】
更に、検出リンク56は、モータ・ポテンショベース59の前後方向(長手方向)長さの範囲内で、機体前方に延設されたアーム76にその一端を取付け、植付部フレーム23に近接してその前方を通るように構成されているが、これらモータ・ポテンショベース59及びアーム76をより短くし、検出リンク56を屈曲して形成することによって、更に植付部フレーム23に近接して配置することもできる。
【0040】
また、検出装置としてのフロート揺動角検出ポテンショメータ55、整地ロータ高さ検出ポテンショメータ66の代わりに、回転角センサ、作動トランス、リニアエンコーダなどの電装部品からなるセンサを使用してもよい。更に、ローリング制御用アクチュエータ42及び整地ロータ昇降用アクチュエータ54は、電動モータによって構成されているが、油圧アクチュエータなどの他の駆動装置にしても良い。
【0041】
また、本実施形態においては、整地ロータ昇降用アクチュエータ54の作動もしくは位置変更に応じて連動軸57を回動させる回動部材としてセクタギヤ67を使用したが、必ずしも扇形でなくてもよく、平歯車などの他のギヤ部材でも良い。また、例えば整地ロータ昇降用アクチュエータ54と連動軸57を連結するアーム部材やリンク機構を回動部材としても良い。
【0042】
更に、整地装置は、整地ロータ17に限らず、板型の整地装置など、圃場を均平するものであればどのような整地装置を用いてもよい。
【0043】
[作用]
次に本発明の実施形態に係る乗用型田植機の作用について説明をする。作業者は、走行機体5の運転操作部10に乗込むと、植付け深さに合わせて、整地ロータ昇降操作ダイヤル68によって整地ロータ17の高さ位置を調節する。該整地ロータ昇降操作ダイヤル68が操作されると、ローリング制御用アクチュエータ42が作動し、セクタギヤ67を介して連動軸57が回動する。
【0044】
連動軸57が回動すると、該連動軸57に一体に取付けられた第2連結アーム65も回動し、ステー62を介して整地ロータ17が設定された高さ位置になるまで昇降する。なお、この時、モータ・ポテンショベース59は、連繋リンク73によって支持されているため、連動軸57を中心として回転してしまうことはない。
【0045】
作業者は、整地ロータ17の設定が済むと、走行機体5によって圃場を走行しつつ、植付部15により苗を植付ける。一定の面積、苗を植付けると、作業者は苗の植付け深さが適切かどうかをチェックし、植付け深さが浅い場合には、植付け深さ設定レバー50を深植付側イに移動させ、植付け深さが深い場合には、植付け深さ設定レバー50を浅植付側ロに移動させる。
【0046】
植付け深さ設定レバー50が深植付側イに移動すると、回動軸45及びリンク46が機体後方側に回動し、フロート16がプランタケース25側へと移動して、植付部15の植付け深さが深くなる。また、植付け深さ設定レバー50が浅植付側ロに移動すると、回動軸45及びリンク46が機体前方側に回動し、フロート16がプランタケース25側とは離れる方向に移動して、植付部15の植付け深さが浅くなる。
【0047】
回動軸45は、連繋リンク73を介してモータ・ポテンショベース59と連結しているため、植付け深さ設定機構44によって回動すると、モータ・ポテンショベース59が連動軸57を中心として上下に回動し、それにより、フロート揺動角検出ポテンショメータ55のアーム76も検知フロート16aの高さ位置が変化した分だけ上下に回動する。
【0048】
また、モータ・ポテンショベース59が回動すると、整地ロータ昇降用アクチュエータ54とセクタギヤ67との噛合によって、連動軸57も一体となって回動する。連動軸57には第2連結アーム65が固設されているため、該連動軸57が回動すると、第2連結アーム65及びステー62を介して整地ロータ17が植付け深さに連動して機械的に昇降する。
【0049】
作業者は、植付け深さの設定が完了すると植付部15を下降させ、再度、走行機体5によって圃場を走行しつつ苗を植付ける。植付部15の検知フロート16aが、圃場の凹凸を検知して連結ピン49を揺動支点として上下に揺動すると、検出リンク56を介してフロート揺動角検出ポテンショメータ55によってその上下変位が検出される。制御部は、該フロート揺動角検出ポテンショメータ55の検出信号に基づき、昇降装置13のコントロールバルブ48を制御し、植付部15を昇降させて植付け深さ設定機構44により設定された植付け深さを保持する。
【0050】
また、圃場が傾斜しており植付部15がローリングすると、制御部は、傾斜センサ41により中間部材35が圃場面に対して傾いたことを検知し、モータユニット40を作動させてその姿勢を圃場面に対して水平にする。植付部15は、中間部材35のアーム36と、植付部フレーム23とを結ぶ第1及び第2ローリングスプリング37,39の付勢力によって、その姿勢が圃場面に対して水平になる。
【0051】
この時、植付部フレーム23と共に、フロート揺動角検出ポテンショメータ55及び検知フロート16aも一緒にローリングするため、フロート揺動角検出ポテンショメータ55は、例え、走行機体5と植付部15との位置が捩れていても、検知フロート16aとの位置関係が捩じれずに、水平時と同様の感知性能で検知フロート16aの揺動を検出する。
【0052】
上記のように乗用型田植機1を構成したことによって、電装部品であるフロート揺動角検出ポテンショメータ55及び整地ロータ高さ検出ポテンショメータ66を植付部フレーム23の上方かつ、圃場面から所定の高さL位置に配設したことによって、整地ロータ17などから飛散した泥水が電装部品に掛かることを防止し、これら飛散した泥土が原因で検出装置が故障することを防止することができる。
【0053】
また、フロート揺動角検出ポテンショメータ55のアーム76と、検知フロート16aの先端とを連結する検出リンク56を、植付部フレーム23の前方に配置し、植付け深さ設定機構44に連動してモータ・ポテンショベース59を回動させる連繋リンク73を植付部フレーム23の後方に配置し、これら検出リンク56及び連繋リンク73を植付部フレーム23の前後に振り分けて配設したことによって、コンパクトな構成で植付け深さ設定機構44に連動してフロート揺動角検出ポテンショメータ55を位置変更し、植付け深さの変更によってフロート揺動角検出ポテンショメータ55の検出基準位置が変化することを防止することができる。
【0054】
更に、これら連繋リンク73、モータ・ポテンショベース59、整地ロータ昇降用アクチュエータ54の出力軸、セクタギヤ67、連動軸57、第2連結アーム65及びステー62によって、植付け深さ設定機構44に連動して整地ロータ17の高さ位置を変更する連繋機構を構成し、機械的なリンク機構により植付け深さに応じて整地ロータ17の高さ位置を自動的に調整することができる。そのため、整地ロータ昇降用アクチュエータ54により植付け深さに応じて整地ロータ17の高さ位置を調節するものに比して、例えば、植付け深さ設定レバー50の作動角を検出するポテンショメータなどの部品を削減することができ、コストを低減することができると共に、水田などで使用される乗用型田植機において、電装部品の故障の虞がないため信頼性を向上することができる。
【0055】
また、整地ロータ17とモータ・ポテンショベース59との回動支点を同一軸上(連動軸57上)としたことによって、コンパクトな構成で、整地ロータ17と植付け深さ設定機構44とを連動させることができる。更に、モータ・ポテンショベース59に、フロート揺動角検出ポテンショメータ55を取付けたことによって、該モータ・ポテンショベース59を回動させるだけの簡単な構成で整地ロータ17及びフロート揺動角検出ポテンショメータ55の高さ位置を、植付け深さに応じて一度に調節することができる。
【0056】
また、モータ・ポテンショベース59を、整地ロータ昇降用アクチュエータ54、フロート揺動角検出ポテンショメータ55及び整地ロータ高さ検出ポテンショメータ66のベース部材として兼用したことによって、部品点数を削減することが出来ると共に、コンパクトにこれらの構成部品を配設することができる。
【0057】
更に、上記第2連結アーム65の回動支点と、モータ・ポテンショベース59の回動支点を、共に連動軸57としたことによって、連繋機構をシンプルな構成とすることができる。また、連動軸57を3分割構成としたことにより、その中央部(中央軸57C)に容易にモータ・ポテンショアッシ71を組み込むことができ、組立性が向上した。
【0058】
また、中央軸57Cを中央支持部材58によって支持することにより、回動軸57は支持ステー30,30と合わせて3点支持構造となり、第1及び第2連結アーム63,65やモータ・ポテンショベース59の回動支点である回動軸が撓むことを防止することができる。
【0059】
更に、整地ロータ昇降用アクチュエータ54とローリング制御用アクチュエータ42とをリンクホルダ32を挟んで対向した位置に配設したことによって、植付部15のローリング(左右)バランスを良くすることができる。また、整地ロータ昇降用アクチュエータ54の前方から保護カバー70を取付けることによって、整地ロータ昇降用アクチュエータ54に泥水などが掛かることを防止することができる。
【0060】
また、フロート揺動角検出ポテンショメータ55を、連動軸57及び支持ステー30,30を介して植付部フレーム23に取付けることによって、植付部15がローリングしても、フロート揺動角検出ポテンショメータ55は植付部フレーム23と一体にローリングし、検知フロート16aとの位置関係で捩じれが生じないため、ローリングがフロート揺動角検出ポテンショメータ55の感知性能に影響を及ぼすことを防止することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 乗用型田植機
5 走行機体
13 昇降装置
15 植付部
17 整地装置(整地ロータ)
31 ローリング支軸
32 リンクホルダ
33 ローリング制御装置
42 アクチュエータ(ローリング制御用アクチュエータ)
54 昇降アクチュエータ(整地ロータ昇降用アクチュエータ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場を走行する走行機体と、該走行機体の後方に昇降装置を介して連結された植付部と、これら走行機体と植付部との間に配置された整地装置と、を備え、機体前後方向に延びたローリング支軸に、前記昇降装置が連結するリンクホルダを回動自在に取付けたことによって、前記植付部をローリング自在に支持した乗用型田植機において、
前記植付部のローリングを制御するローリング制御装置と、
前記整地装置を昇降させる昇降アクチュエータと、を備え、
該昇降アクチュエータと、前記ローリング制御装置のアクチュエータとを、前記リンクホルダを挟んで、機体前後方向と直交する前記植付部の幅方向で反対側に位置するように配置した、
ことを特徴とする乗用型田植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−252730(P2010−252730A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−108546(P2009−108546)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】