説明

乗用車のランプユニット

【課題】本発明は、仕切り部材を適性位置に配置できるようにするとともに、仕切り部材がランプユニットの意匠部品のデザイン性に影響を与えないようにすることを目的とする。
【解決手段】本発明に係るランプユニット10は、用途が異なる複数の光源14と、光源14以外の部分を覆う板状の意匠部品30と、光源14及び意匠部品30を収納する前方開放型のランプハウジング22と、ランプハウジング22の開放部22hを塞ぐランプレンズ24とを備える乗用車のランプユニットであって、意匠部品30の裏側でランプハウジング22内の空間を仕切り、空間内の空気の対流範囲を制限する仕切り部材40とを有し、仕切り部材40は、意匠部品30とは別部品で、ランプハウジング22の内壁面22uに取付けられる構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用途が異なる複数の光源を備える乗用車のランプユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
これに関連する乗用車のランプユニットが特許文献1に記載されている。
このランプユニット100は、図4の平断面図に示すように、ヘッドランプ102とフォグランプ104とを備えている。そして、ヘッドランプ102とフォグランプ104以外の部分が見栄え向上のため板状の意匠部品105によって覆われている。さらに、ヘッドランプ102、フォグランプ104及び意匠部品105は、前部が開放されたランプハウジング106に収納されており、そのランプハウジング106の開放部がランプレンズ107によって塞がれている。
また、前記意匠部品105の裏側には、ランプハウジング106内の空間を仕切って、その空間内の空気の対流範囲を制限する仕切り部105wが意匠部品105と一体に設けられている。これにより、ヘッドランプ102で温められた空気がフォグランプ104側に流れ込まなくなり、フォグランプ104側でランプレンズ107に曇りが発生し難くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−22604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記したランプユニット100では、意匠部品105と一体に仕切り部105wが設けられているため、意匠部品105のデザイン自由度が低下する。例えば、意匠部品105の所定位置に切れ目を形成したい場合でも、その位置に仕切り部105wが必要なときには前記切れ目を形成することができない。
また、意匠部品105は、一般的に樹脂の射出成形品であるため、仕切り部105wを形成する際に型抜きを考慮する必要がある。このため、意匠部品105に対する仕切り部105wの傾斜角度等にも制約がある。即ち、意匠部品105のデザイン性を優先すると、仕切り部105wが適正位置からずれて、効率的に空気の対流範囲を制限できないことがある。逆に、仕切り部105wを適正位置に配置しようとすると、意匠部品105のデザイン性が低下することがある。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、仕切り部材を適性位置に配置できるようにするとともに、仕切り部材がランプユニットの意匠部品のデザイン性に影響を与えないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。
請求項1の発明は、用途が異なる複数の光源と、前記光源以外の部分を覆う板状の意匠部品と、前記光源及び意匠部品を収納する前方開放型のランプハウジングと、前記ランプハウジングの開放部を塞ぐランプレンズとを備える乗用車のランプユニットであって、前記意匠部品の裏側で前記ランプハウジング内の空間を仕切り、前記空間内の空気の対流範囲を制限する仕切り部材とを有し、前記仕切り部材は、前記意匠部品とは別部品で、前記ランプハウジングの内壁面に取付けられる構成であることを特徴とする。
【0007】
本発明によると、仕切り部材は、意匠部品とは別部品でランプハウジングの内壁面に取付けられる構成である。このため、仕切り部材の配置や、意匠部品に対する仕切り部材の傾斜角度等によって、前記意匠部品の一部の形状を変えるような必要がなくなる。したがって、仕切り部材を適性位置に配置しても、その仕切り部材が意匠部品のデザイン性に影響を与えることがない。
【0008】
請求項2の発明によると、ランプレンズの表面には、帯状の意匠ラインが設けられており、前記意匠部品には、前記意匠ラインに隠れる位置に切れ目が設けられており、前記仕切り部材は、前記意匠部品の切れ目の部分に配置されていることを特徴とする。
このように、意匠部品の切れ目の位置に仕切り部材を配置することができるため、意匠部品の設計の自由度が向上する。
【0009】
請求項3の発明によると、仕切り部材は、意匠部品、及びランプハウジングとは異なる材質により構成されていることを特徴とする。
例えば、樹脂製の意匠部品、ランプハウジングに対して、仕切り部材を鉄板等で形成すれば、強度が等しい状態で仕切り部材を薄肉に形成でき、取付けの自由度が向上する。
【0010】
請求項4の発明によると、点灯時間が長い光源が下側に配置され、点灯時間が短い光源が上側に配置されており、前記仕切り部材は前記ランプハウジング内の空間を上下に仕切るように構成されていることを特徴とする。
このため、下側の光源で温められた空気が仕切り部材に遮られて、上側に流れ込まなくなる。このため、暖かい空気が上方で冷やされ、ランプレンズの内側で曇りを発生させるようなことがなくなる。
【0011】
請求項5の発明によると、ランプレンズには、ランプハウジングの内側に突出する突条部が設けられており、その突条部により意匠部品の表側の空間が仕切られて空気の対流範囲が制限されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、仕切り部材を適性位置に配置できるようになる。さらに、仕切り部材がランプユニットの意匠部品のデザイン性に影響を与えることがない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態1に係る乗用車の前部ランプユニット(右側)の全体斜視図である。
【図2】前部ランプユニットの内部(エクステンションの裏側)を表す斜視図(A図)、そのランプユニットの仕切り部材を表す斜視図(B図)である。
【図3】前記ランプユニットの縦断面図(図1のIIIA-IIIA矢視断面図)(A図)、A図のB矢視拡大図(B図)である。
【図4】従来の乗用車のランプユニットを表す平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施形態1]
以下、図1から図3に基づいて本発明の実施形態1に係る乗用車のランプユニットについて説明する。本実施形態は、乗用車のヘッドランプユニットに本発明を適用したものであり、図中の前後左右及び上下は、乗用車の前後左右及び上下に対応している。
【0015】
<ヘッドランプユニット10の概要について>
ヘッドランプユニット10は、左右対称、かつ等しい構造であり、乗用車の前面に取付けられている。以下、代表して右側のヘッドランプユニット10について説明する。
ヘッドランプユニット10は、図1、図2に示すように、上段側にハイビーム用ランプ12と方向指示用ランプ15とが配置されており、下段側にロービーム用ランプ14と車幅ランプ17とが配置されている。即ち、点灯時間が一般的に長時間となるランプが下段側、点灯時間が比較的短いランプが上段側に配置されている。
ヘッドランプユニット10は、図3(A)の縦断面図に示すように、前面が開放されたランプハウジング22と、そのランプハウジング22の前面開放部22hを覆うランプレンズ24とにより密閉容器状に形成されている。そして、前記ランプハウジング22の内部に前述の複数のランプ12,14,15,17と、各ランプ12,14,15,17以外の部分を覆う板状の意匠部品であるエクステンション30が収納されている。
即ち、ハイビーム用ランプ12、方向指示用ランプ15、ロービーム用ランプ14、及び車幅ランプ17が本発明の光源に相当する。
【0016】
<エクステンション30について>
エクステンション30には、表面に銀色にメッキが施されており、各ランプ12,14,15,17の光を前方に反射させられるように構成されている。 エクステンション30は、図1に示すように、ハイビームランプ用凹部32、ロービームランプ用凹部34、方向指示ランプ用凹部35、及び車幅ランプ用凹部37を所定位置に備えており、各凹部32,34,35,37の位置に各ランプ12,14,15,17の光源が通される開孔32h,34h,35h,37hが形成されている。さらに、エクステンション30には、図3(A)に示すように、ランプレンズ24の意匠ライン28の裏側位置に切れ目38が設けられている。
なお、図1では、ランプレンズ24の透明部分は省略されて、意匠ライン28のみが表されている。
【0017】
<ランプレンズ24について>
ランプレンズ24は、図3(A)に示すように、ランプハウジング22の上段側を覆うレンズ上部24uと、ランプハウジング22の下段側を覆うレンズ下部24dと、レンズ上部24uとレンズ下部24dとの境界位置で横方向(左右方向)に延びる断面略U字形の溝状部24mとを備えている。そして、ランプレンズ24の溝状部24mの内側上面位置Uにエクステンション30の切れ目38が配置されており、その溝状部24mの内側縦面位置Sに切れ目38の下側に位置するエクステンション30が接合されている。これにより、エクステンション30の表側でランプレンズ24等により形成される空間は、そのランプレンズ24の溝状部24mによって上下に仕切られるようになる。
また、前記ランプレンズ24の表面には、そのランプレンズ24の溝状部24mの開口部分を塞ぐように、不透明な帯状の意匠ライン28が嵌め込まれている。これによって、ランプレンズ24の溝状部24mとエクステンション30の切れ目38は、図1に示すように、意匠ライン28に隠れて、外側から見えなくなる。
【0018】
<仕切り部材40について>
ランプハウジング22の内部空間は、エクステンション30の裏側で、図3(A)に示すように、仕切り部材40によって上下に仕切られている。仕切り部材40は、ロービーム用ランプ14と車幅ランプ17とによって温められた空気が対流によりランプハウジング22の上部空間、即ち、ハイビーム用ランプ12と方向指示用ランプ15の収納空間に入り込むのを防止するための板状部材である。仕切り部材40は、薄い鉄板により、図2(A)(B)に示すように、ランプハウジング22の内部空間を横断して、その内部空間を上下に仕切れる形成に成形されている。即ち、仕切り部材40は、ランプハウジング22の内壁面に沿うハウジング側輪郭43と、エクステンション30の裏面に沿うエクステンション側輪郭45とにより略三角形状に形成されている。そして、仕切り部材40のハウジング側輪郭43及びその近傍にネジ孔が形成された複数のステー46がほぼ等間隔で形成されている。また、仕切り部材40には、エクステンション側輪郭45に沿って浅い溝部45mが形成されており、さらにハウジング側輪郭43の頂部分から前記溝部45mと交差するように段差部43dが形成されている。これにより、仕切り部材40を薄い鉄板で形成しても、所定の強度を確保でき、変形し難くなる。
仕切り部材40は、図3(B)に示すように、各々のステー46がランプハウジング22の内壁面に形成された受け部22uにネジN止めされることで、ランプハウジング22に固定される。なお、図3(B)における符号14xはロービーム用ランプ14用の支持材を表している。また、仕切り部材40がランプハウジング22に固定された状態で、その仕切り部材40のエクステンション側輪郭45とエクステンション30間には若干の隙間が形成されるようになる。なお、前記隙間の寸法は、下で対流する空気が上側に入り込まない寸法(2mm〜5mm以下)に設定されている。
【0019】
<空気の対流について>
次に、ヘッドランプユニット10内の空気の対流について説明する。
ヘッドランプユニット10では、点灯時間が一般的に長時間となるランプが下段側、点灯時間が比較的短いランプが上段側に配置されている。このため、ヘッドランプユニット10の上段側ではランプの熱放出量が少なく比較的低温となり、下段側ではランプの熱放出量が多く比較的高温になる。
例えば、ロービーム用ランプ14と車幅ランプ17とが点灯すると、図3(A)の矢印に示すように、ロービーム用ランプ14等により温められた空気がエクステンション30の表側と裏側とで対流するようになる。即ち、エクステンション30の表側では、ランプレンズ24の溝状部24mの下側で空気が対流するようになる。また、エクステンション30の裏側では、仕切り部材40の下側で空気が対流するようになる。したがって、ロービーム用ランプ14等により温められた空気が比較的低温に保持されたヘッドランプユニット10の上段側の空間に入り込むことがなくなる。このため、ヘッドランプユニット10の上段側で、暖かい空気が冷やされたことによる生じる曇りの発生を防止することができる。
【0020】
<本実施形態に係るヘッドランプユニット10の長所について>
本実施形態に係るヘッドランプユニット10によると、仕切り部材40は、エクステンション30(意匠部品)とは別部品でランプハウジング22の内壁面に取付けられる構成である。このため、仕切り部材40の配置や、エクステンション30に対する仕切り部材40の傾斜角度等によって、エクステンション30の一部の形状を変えるような必要がなくなる。したがって、仕切り部材40を適性位置に配置しても、その仕切り部材40がエクステンション30のデザイン性に影響を与えることがない。
また、ランプレンズ24の表面には、帯状の意匠ライン28が設けられており、エクステンション30には意匠ライン28に隠れる位置に切れ目38が設けられている。そして、仕切り部材40はエクステンション30の切れ目38の部分に配置されている。このように、エクステンション30の切れ目38の位置に仕切り部材40を配置することができるため、エクステンション30の設計の自由度が向上する。
また、仕切り部材40を薄肉の鉄板で形成しているため、取付けの自由度が向上する。
【0021】
<変更例>
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、ランプハウジング22内の空間を仕切り部材40によって上下に仕切る構成のヘッドランプユニット10を例示した。しかし、例えば、ハイビーム用ランプ12とロービーム用ランプ14とを左右に並べて配置する場合等は、ランプハウジング22内の空間を仕切り部材40によって左右に仕切るようにすることも可能である。また、これに合わせて、意匠ライン28を上下に延びる帯状に形成することも可能である。
さらに、ランプレンズ24に溝状部24mを形成し、その溝状部24mの開口を塞ぐように意匠ライン28を嵌め込む例を示したが、前記溝状部24mを省略することも可能である。
また、仕切り部材40をランプハウジング22の内壁面にネジ止めする例を示したが、クリップ等で固定することも可能である。さらに、仕切り部材40を樹脂製にしてランプハウジング22に接着したり、ランプハウジング22と一体成形することも可能である。
【符号の説明】
【0022】
10・・・・ヘッドランプユニット
12・・・・ハイビーム用ランプ(光源)
14・・・・ロービーム用ランプ(光源)
15・・・・方向指示用ランプ(光源)
17・・・・車幅ランプ(光源)
22・・・・ランプハウジング
24・・・・ランプレンズ
24m・・・溝状部(突条部)
28・・・・意匠ライン
30・・・・エクステンション(意匠部品)
38・・・・切れ目
40・・・・仕切り部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
用途が異なる複数の光源と、前記光源以外の部分を覆う板状の意匠部品と、前記光源及び意匠部品を収納する前方開放型のランプハウジングと、前記ランプハウジングの開放部を塞ぐランプレンズとを備える乗用車のランプユニットであって、
前記意匠部品の裏側で前記ランプハウジング内の空間を仕切り、前記空間内の空気の対流範囲を制限する仕切り部材とを有し、
前記仕切り部材は、前記意匠部品とは別部品で、前記ランプハウジングの内壁面に取付けられる構成であることを特徴とする乗用車のランプユニット。
【請求項2】
請求項1に記載された乗用車のランプユニットであって、
前記ランプレンズの表面には、帯状の意匠ラインが設けられており、
前記意匠部品には、前記意匠ラインに隠れる位置に切れ目が設けられており、
前記仕切り部材は、前記意匠部品の切れ目の部分に配置されていることを特徴とする乗用車のランプユニット。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載された乗用車のランプユニットであって、
前記仕切り部材は、前記意匠部品、及び前記ランプハウジングとは異なる材質により構成されていることを特徴とする乗用車のランプユニット。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載された乗用車のランプユニットであって、
点灯時間が長い光源が下側に配置され、点灯時間が短い光源が上側に配置されており、前記仕切り部材は前記ランプハウジング内の空間を上下に仕切るように構成されていることを特徴とする乗用車のランプユニット。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載された乗用車のランプユニットであって、
前記ランプレンズには、前記ランプハウジングの内側に突出する突条部が設けられており、その突条部により前記意匠部品の表側の空間が仕切られて空気の対流範囲が制限されることを特徴とする乗用車のランプユニット。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−222145(P2011−222145A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86788(P2010−86788)
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】