説明

二次電池の異常検出回路、及び電池電源装置

【課題】電流や電圧の変動が生じた場合であっても、異常を誤判定するおそれを低減することができる二次電池の異常検出回路、電池電源装置を提供する。
【解決手段】温度検出部72と、電流検出部52と、電圧検出部71と、電流検出部52及び電圧検出部71により検出された値の単位時間当たりの変化量を電流変化量dI/dt及び電圧変化量dV1/dtとして算出する第1変化量算出部501と、温度検出部72によって検出された温度の単位時間当たりの変化量を温度変化量dT/dtとして算出する第2変化量算出部502と、電流変化量dI/dt及び電圧変化量dV1/dtに基づいて、二次電池Bの異常の有無を予備的に判定する予備判定部503と、予備判定部503によって異常が有ると判定された後、温度変化量dT/dtに基づいて、二次電池Bの異常の有無を最終的に判定する最終判定部504とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の異常を検出する異常検出回路、及びこれを用いた電池電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯型パーソナルコンピュータやデジタルカメラ、ビデオカメラ、携帯電話機等の電子機器、電気自動車やハイブリッドカー等の車両、ハイブリッドエレベータ、太陽電池や発電装置と二次電池とを組み合わされた電源システム、無停電源装置等の電池搭載装置、システム等、種々の装置、システムにおいて、二次電池が広く用いられている。
【0003】
このような二次電池に異常が生じると、二次電池の劣化を招いたり、二次電池が発熱したりするおそれがある。そのため、二次電池に流れる電流や、電圧の変化に基づいて、二次電池の異常を判定する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−8067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、二次電池に流れる電流や二次電池の端子電圧は、負荷の変動によって瞬時的に変動する。そのため、特許文献1に記載の技術のように、二次電池に流れる電流や、電圧の変化に基づいて、二次電池の異常を判定しようとすると、このような瞬時的な電流、電圧の変化によって、誤判定してしまうおそれがあった。
【0006】
本発明の目的は、電流や電圧の変動が生じた場合であっても、異常を誤判定するおそれを低減することができる二次電池の異常検出回路、及びこれを用いた電池電源装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る二次電池の異常検出回路は、二次電池の温度を検出する温度検出部と、前記二次電池に流れる電流、及び前記二次電池の両端電圧のうち少なくとも一方の値を検出する検出部と、前記検出部により検出された値の単位時間当たりの変化量を第1変化量として算出する第1変化量算出部と、前記温度検出部によって検出された温度の単位時間当たりの変化量を、第2変化量として算出する第2変化量算出部と、前記第1変化量に基づいて、前記二次電池の異常の有無を予備的に判定する予備判定部と、前記予備判定部によって前記予備的に異常が有ると判定された後、前記第2変化量に基づいて、前記二次電池の異常の有無を重ねて判定する本判定部とを備える。
【0008】
この構成によれば、検出部によって、二次電池に流れる電流、二次電池の両端電圧のいずれか、あるいはその両方の値が検出される。そして、第1変化量算出部によって、検出部により検出された値の単位時間当たりの変化量が第1変化量として算出される。また、温度検出部によって二次電池の温度が検出され、その温度の単位時間当たりの変化量が、第2変化量算出部によって第2変化量として算出される。
【0009】
ここで、二次電池に内部短絡が生じると、二次電池に流れる電流や二次電池の両端電圧が瞬時に変化し、第1変化量が増大する。そこで、まず先に予備判定部が、第1変化量に基づいて二次電池の異常の有無を予備的に判定することで、異常の発生を速やかに判断することが可能となる。そして、予備判定部によって予備的に異常が有ると判定された後、本判定部によって、第2変化量に基づいて二次電池の異常の有無が重ねて判定されるので、例えば負荷電流が変動したりノイズの影響を受けたりすることによって、二次電池に流れる電流や二次電池の電圧に変動が生じた場合であっても、異常を誤判定するおそれを最終的に低減することができる。
【0010】
その一方、二次電池が内部短絡しても、短絡電流による発熱が生じて温度が上昇するまでに時間がかかるから、二次電池の異常が第2変化量に反映されるのに時間がかかる。そこで、まず先に予備判定部が、異常が瞬時に反映される第1変化量に基づき予備的に異常の有無を判定し、その後に本判定部が第2変化量に基づいて二次電池の異常の有無を重ねて判定することで、先に第2変化量に基づき異常判定を行う場合よりも、異常が発生してから最終的に異常の有無を判定するまでの時間を短縮することが容易となる。
【0011】
また、前記検出部は、少なくとも前記二次電池の両端電圧を検出し、前記第1変化量算出部は、少なくとも、前記両端電圧の単位時間当たりの変化量を前記第1変化量である電圧変化量として算出し、前記予備判定部は、少なくとも、前記電圧変化量が、電圧が低下する方向の変化量であり且つ予め設定された基準値を超えたとき、前記二次電池に異常が有ると予備的に判定し、前記本判定部は、前記予備判定部によって前記予備的に異常が有ると判定され、かつ前記第2変化量が予め設定された基準値を超えたとき、前記二次電池に異常が生じたと重ねて判定することが好ましい。
【0012】
この構成によれば、検出部によって二次電池の両端電圧が検出され、第1変化量算出部によって、両端電圧の単位時間当たりの変化量が電圧変化量として算出される。ここで、二次電池に内部短絡が生じると、その両端電圧が急激に低下すると共に、その電圧低下より少し遅れて二次電池の温度が上昇する。そこで、予備判定部は、電圧変化量が、電圧が低下する方向の変化量であり且つ予め設定された基準値を超えたとき、二次電池に異常が有ると予備的に判定することができる。そして、予備判定部によって予備的に異常が有ると判定され、かつ第2変化量が基準値を超えたとき、本判定部が、二次電池に異常が生じたと重ねて判定することで、異常を誤判定するおそれを最終的に低減しつつ、異常が発生してから最終的に異常の有無を判定するまでの時間を短縮することが容易となる。
【0013】
また、前記検出部は、少なくとも、前記二次電池に流れる電流の電流値を検出し、前記第1変化量算出部は、少なくとも、前記電流値の単位時間当たりの変化量を前記第1変化量である電流変化量として算出し、前記予備判定部は、少なくとも、前記電流変化量が、増加する方向の変化量であり且つ予め設定された基準値を超えたとき、前記二次電池に異常が有ると予備的に判定し、前記本判定部は、前記予備判定部によって前記予備的に異常が有ると判定され、かつ前記第2変化量が予め設定された基準値を超えたとき、前記二次電池に異常が生じたと重ねて判定することが好ましい。
【0014】
この構成によれば、検出部によって二次電池に流れる電流の電流値が検出され、第1変化量算出部によって、電流値の単位時間当たりの変化量が電流変化量として算出される。ここで、二次電池に内部短絡が生じると、流れる電流が急激に増加すると共に、その電流増加より少し遅れて二次電池の温度が上昇する。そこで、予備判定部は、電流変化量が、増加する方向の変化量であり且つ予め設定された基準値を超えたとき、二次電池に異常が有ると予備的に判定することができる。そして、予備判定部によって予備的に異常が有ると判定され、かつ第2変化量が基準値を超えたとき、本判定部が、二次電池に異常が生じたと重ねて判定することで、異常を誤判定するおそれを最終的に低減しつつ、異常が発生してから最終的に異常の有無を判定するまでの時間を短縮することが容易となる。
【0015】
また、前記二次電池は複数、直列接続されており、前記温度検出部は、前記各二次電池の温度をそれぞれ検出し、前記検出部は、前記複数の二次電池に流れる電流、及び前記複数の二次電池の両端電圧のうち少なくとも一方の値を検出し、前記第2変化量算出部は、前記温度検出部によって検出された各二次電池の温度に基づいて、前記第2変化量を、前記各二次電池に対応してそれぞれ算出し、前記予備判定部は、前記第1変化量に基づいて、前記複数の二次電池の少なくとも一つにおける異常の有無を予備的に判定し、前記本判定部は、前記予備判定部によって前記予備的に異常が有ると判定された後、前記複数の第2変化量に基づいて、前記複数の二次電池における異常の有無を重ねて判定することが好ましい。
【0016】
この構成によれば、二次電池が複数直列接続されている場合においても、異常を誤判定するおそれを最終的に低減しつつ、異常が発生してから最終的に異常の有無を判定するまでの時間を短縮することが容易となる。
【0017】
また、前記検出部は、少なくとも、前記各二次電池の両端電圧をそれぞれ検出し、前記第1変化量算出部は、少なくとも、前記各両端電圧の単位時間当たりの変化量を、それぞれ各二次電池に対応する前記第1変化量である電圧変化量として算出し、前記予備判定部は、少なくとも、前記各電圧変化量のうちいずれかが、電圧が低下する方向の変化量であり且つ予め設定された基準値を超えたとき、前記複数の二次電池のうち少なくとも一つに異常が有ると予備的に判定することが好ましい。
【0018】
この構成によれば、二次電池が複数直列接続されており、各二次電池の両端電圧の単位時間当たりの変化量である電圧変化量が、第1変化量として用いられる。そして、予備判定部は、各電圧変化量のうちいずれかが、電圧が低下する方向の変化量であり且つ基準値を超えたとき、前記複数の二次電池のうち少なくとも一つに異常が有ると予備的に判定することができる。
【0019】
また、前記検出部は、少なくとも、前記複数の二次電池に流れる電流の電流値を検出し、前記第1変化量算出部は、少なくとも、前記電流値の単位時間当たりの変化量を前記第1変化量である電流変化量として算出し、前記予備判定部は、少なくとも、前記電流変化量が、増加する方向の変化量であり且つ予め設定された基準値を超えたとき、前記複数の二次電池のうち少なくとも一つに異常が有ると予備的に判定することが好ましい。
【0020】
この構成によれば、二次電池が複数直列接続されており、その複数の二次電池の直列回路に流れる電流の単位時間当たりの変化量である電流変化量が、第1変化量として用いられる。そして、予備判定部は、その電流変化量が、増加する方向の変化量であり且つ予め設定された基準値を超えたとき、複数の二次電池のうち少なくとも一つに異常が有ると予備的に判定することができる。
【0021】
また、前記本判定部は、前記予備判定部によって前記予備的に異常が有ると判定され、かつ前記複数の第2変化量のうち最大値と最小値との差が、予め設定された基準値を超えたとき、前記複数の二次電池のうち少なくとも一つに異常が有ると重ねて判定することが好ましい。
【0022】
二次電池の温度は、内部短絡が生じていなくても、正常な充放電に応じて上昇する場合がある。そのため、各第2変化量には、二次電池の内部短絡による温度上昇のみならず、このような正常な二次電池の充放電による温度上昇も含まれている。また、複数の第2変化量のうちの最大値は、内部短絡が生じた二次電池の温度上昇を示していると考えられる。さらに複数の第2変化量のうちの最小値は、内部短絡が生じていない二次電池の温度上昇、すなわち正常な二次電池の充放電による温度上昇を示していると考えられる。そうすると、複数の第2変化量のうち最大値と最小値との差は、二次電池の温度上昇から正常な二次電池の充放電による温度上昇を除いたものに相当する。そこで、本判定部は、複数の第2変化量のうち最大値と最小値との差が基準値を超えたとき、複数の二次電池のうち少なくとも一つに異常が有ると判定することで、最終的な異常の有無の判定精度が向上する。
【0023】
また、前記本判定部は、前記予備判定部によって前記予備的に異常が有ると判定され、かつ前記複数の第2変化量の最大値と平均値との差が、予め設定されたた基を超えたとき、前記複数の二次電池の少なくとも一つに異常が有ると重ねて判定することが好ましい。
【0024】
複数の二次電池には、その配置のされ方によって、周囲からの熱の煽りを受けやすい二次電池と、放熱されやすい二次電池とが生じる場合がある。そのため、正常時においても各二次電池に対応する第2変化量相互間にばらつきが生じるおそれがある。そのため、上述のように複数の第2変化量の最大値と最小値との差に基づいて、最終的な異常の有無を判定すると、判定精度が低下するおそれがある。そこで、複数の第2変化量の最大値と平均値との差に基づいて、異常の有無を判定することで、第2変化量相互間のばらつきの影響が低減される結果、最終的な異常の有無の判定精度が向上する。
【0025】
また、前記検出部は、少なくとも前記各二次電池の両端電圧をそれぞれ検出し、前記第1変化量算出部は、少なくとも前記各両端電圧の単位時間当たりの変化量を、それぞれ各二次電池に対応する前記第1変化量である電圧変化量として算出し、前記予備判定部は、前記各電圧変化量のうちいずれかが、電圧が低下する方向の変化量であり且つ予め設定された基準値を超えたとき、当該いずれかの電圧変化量と対応する二次電池に異常が有ると予備的に判定し、前記本判定部は、前記予備判定部によって前記いずれかの二次電池に異常が有ると予備的に判定され、かつ前記複数の第2変化量に基づく平均値と、当該異常が有ると予備的に判定された二次電池に対応する第2変化量との差が、予め設定された基準値を超えたとき、前記予備的に異常が有ると判定された二次電池に異常が有ると重ねて判定することが好ましい。
【0026】
複数の二次電池のうち一つで内部短絡が生じると、内部短絡が生じた二次電池の両端電圧が低下する。そこで、この構成によれば、検出部によって、各二次電池の両端電圧がそれぞれ検出される。そして、第1変化量算出部によって、各両端電圧の単位時間当たりの変化量が、それぞれ各二次電池に対応する電圧変化量として算出される。そして、予備判定部は、各電圧変化量のうちいずれかが、電圧が低下する方向の変化量であり且つ予め設定された基準値を超えたとき、当該いずれかの電圧変化量と対応する二次電池に異常が有ると予備的に判定するから、異常が生じた二次電池を予備的に特定することができる。さらに、本判定部は、予備判定部による異常判定後、複数の第2変化量に基づく平均値と、当該異常が有ると予備的に判定された二次電池に対応する第2変化量との差が基準値を超えたとき、予備的に異常が有ると判定された二次電池に異常が有ると重ねて判定するから、異常が生じた二次電池を最終的に特定することができる。
【0027】
また、前記本判定部は、前記平均値として、前記複数の第2変化量のうち、前記予備的に異常が有ると判定された二次電池に対応する第2変化量を除く残余の第2変化量の平均値を用いることが好ましい。
【0028】
予備的に異常が有ると判定された二次電池に対応する第2変化量は、内部短絡により生じた異常な温度上昇である可能性が高い。そのため、もし仮に全ての第2変化量を平均すると、その平均値に異常な温度上昇の成分が含まれる結果、当該平均値を用いた異常判定の精度が低下する。そこで、この構成によれば、本判定部は、複数の第2変化量のうち、予備的に異常が有ると判定された二次電池に対応する第2変化量を除く残余の第2変化量の平均値を用いて、異常の有無を判定するので、異常判定の判定精度が向上する。
【0029】
また、前記検出部は、前記複数の二次電池に流れる電流の電流値と、前記各二次電池の各両端電圧とを検出し、前記第1変化量算出部は、前記電流値の単位時間当たりの変化量を前記第1変化量である電流変化量として算出すると共に、前記各両端電圧の単位時間当たりの変化量を、それぞれ各二次電池に対応する前記第1変化量である電圧変化量として算出し、前記予備判定部は、前記電流変化量に基づいて、前記複数の二次電池の少なくとも一つにおける異常の有無を予備的に判定した後、前記各電圧変化量に基づいて、前記複数の二次電池の少なくとも一つにおける異常の有無を予備的に判定することが好ましい。
【0030】
前記複数の二次電池は直列接続されているから、各二次電池を流れる電流は、いずれも等しい。そうすると、二次電池のうち一つでも内部短絡を生じると、検出部で検出される電流値が急激に増加する。従って、予備判定部は、電流変化量に基づく予備判定を1回実行するだけで、複数の二次電池の少なくとも一つにおける異常の有無を予備的に判定することができるので、短時間で複数の二次電池における異常の発生を予備判定することができる。一方、各二次電池の両端電圧は互いに独立しているから、各電圧変化量は、互いに異なる値となる。そのため、複数の二次電池における異常の発生を予備判定するためには、二次電池の個数と同じ回数、電圧変化量に基づく予備判定を繰り返さなければならない。
【0031】
そこで、この構成によれば、予備判定部は、先に電流変化量に基づいて複数の二次電池における異常の有無を予備的に判定した後、各電圧変化量に基づいて複数の二次電池の少なくとも一つにおける異常の有無を予備的に判定することで、異常を最初に検出するまでの時間を短縮することができる。また、予備判定部が、電流変化量に基づく予備判定と各電圧変化量に基づく予備判定とを行うことで、予備判定の精度を向上することができる。
【0032】
また、前記本判定部は、前記予備判定部によって異常が有ると判定されたときから、前記二次電池に内部短絡が生じてから前記温度検出部によって前記温度の上昇が検出されるまでの時間として予め設定された待機時間の経過後に、前記重ねての判定を実行することが好ましい。
【0033】
上述したように、二次電池が内部短絡しても、短絡電流による発熱が生じて温度が上昇するまでに時間がかかり、二次電池の異常が第2変化量に反映されるのに時間がかかる。そこで、この構成によれば、本判定部は、予備判定部によって異常が有ると判定されたときから、二次電池に内部短絡が生じてから温度検出部によって温度の上昇が検出されるまでの時間として予め設定された待機時間の経過後、すなわち第2変化量に内部短絡に応じた温度上昇が反映された後に判定を実行するので、最終的な判定の判定精度が向上する。
【0034】
また、前記本判定部によって、異常が生じたと判定されたとき、前記第2変化量に基づいて、前記二次電池の充放電を制御する充放電制御部をさらに備えることが好ましい。
【0035】
二次電池で内部短絡が生じると、内部短絡の程度に応じて温度上昇の程度も異なる。そこで、この構成によれば、本判定部によって、異常が生じたと判定されたとき、充放電制御部によって、第2変化量に基づいて、すなわち内部短絡の程度に応じて、二次電池の充放電が制御されるので、異常が生じた二次電池の劣化が進むおそれを低減したり、安全性が低下するおそれを低減したりすることが可能となる。
【0036】
また、本発明に係る電池電源装置は、上述の二次電池の異常検出回路と、前記二次電池とを備える。
【0037】
この構成によれば、二次電池を備えた電池電源装置において、二次電池の異常を誤判定するおそれを最終的に低減しつつ、異常が発生してから最終的に異常の有無を判定するまでの時間を短縮することが容易となる。
【発明の効果】
【0038】
このような構成の二次電池の異常検出回路、及びこれを用いた電池電源装置は、電流や電圧の変動が生じた場合であっても、異常を誤判定するおそれを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施形態に係る二次電池の異常検出回路を備えた、電池パック及び電池搭載機器の構成の一例を示すブロック図である。
【図2】図1に示す異常検出回路の動作の一例を示すフローチャートである。
【図3】図1に示す異常検出回路の動作の一例を示すフローチャートである。
【図4】図1に示す異常検出回路の動作の一例を示すフローチャートである。
【図5】図3、図4に示すフローチャートの変形例を示すフローチャートである。
【図6】図3、図4に示すフローチャートの変形例を示すフローチャートである。
【図7】図4に示すフローチャートの変形例を示すフローチャートである。
【図8】図4に示すフローチャートの変形例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る二次電池の異常検出回路5を備えた、電池パック2及び電池搭載機器1の構成の一例を示すブロック図である。図1に示す電池搭載機器1は、電池パック2と、機器本体3とが組み合わされて構成されている。この場合、電池搭載機器1、及び電池パック2が、電池電源装置の一例に相当している。
【0041】
電池搭載機器1は、例えば、携帯型パーソナルコンピュータやデジタルカメラ、携帯電話機等の電子機器、電気自動車やハイブリッドカー等の車両、等の電気機器として構成された、二次電池を電源として用いるシステムである。そして、機器本体3は、例えばこれら電気機器の本体部分であり、負荷回路34は、これら電気機器において、電池パック2からの電力供給により動作する負荷回路である。
【0042】
電池パック2は、組電池4、異常検出回路5、電流検出抵抗6、電圧検出部71、温度検出部72、スイッチング素子Q1,Q2、及び接続端子11,12,13を備えている。また、異常検出回路5は、制御部50、電流検出部52、及び通信部54を備えている。電流検出部52、及び電圧検出部71は、それぞれ検出部の一例に相当している。
【0043】
組電池4は、複数、例えばn個の二次電池B1〜Bnが、直列に接続されて構成されている。
【0044】
以下、二次電池B1〜Bnを総称して二次電池Bと表記し、二次電池Bの番号を電池番号i(iは1〜nの整数)で表し、電池番号iの二次電池Bを二次電池Biと表記する。
【0045】
二次電池Bは、例えば単セルであってもよく、例えば複数のセルが直列接続された組電池であってもよく、例えば複数のセルが並列接続された組電池であってもよく、直列と並列とが組み合わされて複数のセルが接続された組電池であってもよい。また、電池パック2は、組電池4の代わりに、二次電池Bを一つ備えていてもよい。
【0046】
二次電池Bとしては、例えばリチウムイオン二次電池が用いられる。なお、二次電池Bは、リチウムイオン二次電池に限られず、例えばニッケル水素二次電池やニッケルカドミウム二次電池等、種々の二次電池を用いることができる。
【0047】
しかしながら、ニッケル水素二次電池やニッケルカドミウム二次電池等の水溶液系二次電池の場合には、異常が発生しなくても、充電中に満充電になると温度が急激に上昇し、異常による温度上昇か、正常に満充電になったことによる温度上昇かを判別することが難しい。従って、異常判定の精度を向上させる観点からは、水溶液系二次電池よりもリチウムイオン二次電池の方がより適している。
【0048】
なお、電池搭載機器1は、必ずしも電池パック2と機器本体3とに分離可能に構成されるものに限られず、電池搭載機器1全体で一つの異常検出回路5が構成されていてもよい。また、異常検出回路5を、電池パック2と機器本体3とで分担して備えるようにしてもよい。また、組電池4は、電池パックにされている必要はない。また、例えば異常検出回路5が、車載用のECU(Electric Control Unit)として構成されていてもよい。
【0049】
機器本体3は、接続端子31,32,33、負荷回路34、充電部35、通信部36、制御部37、及び表示部38を備えている。充電部35は、給電用の接続端子31,32に接続され、通信部36は、接続端子33に接続されている。
【0050】
また、電池パック2が、機器本体3に取り付けられると、電池パック2の接続端子11,12,13と、機器本体3の接続端子31,32,33とが、それぞれ接続されるようになっている。
【0051】
通信部54,36は、接続端子13,33を介して互いにデータ送受信可能に構成された通信インターフェイス回路である。
【0052】
充電部35は、制御部37からの制御信号に応じた電流、電圧を、接続端子31,32を介して電池パック2へ供給する電源回路である。充電部35は、例えば商用電源電圧から電池パック2の充電電流を生成する電源回路であってもよく、例えば太陽光、風力、あるいは水力といった自然エネルギーに基づき発電する発電装置や、内燃機関等の動力によって発電する発電装置等であってもよい。
【0053】
表示部38は、例えば液晶表示器やLED(Light Emitting Diode)が用いられる。なお、例えば機器本体3が、携帯型パーソナルコンピュータやデジタルカメラ等の電子機器である場合、当該電子機器が備える液晶表示器等の表示装置を表示部38として用いてもよい。
【0054】
制御部37は、例えばマイクロコンピュータを用いて構成された制御回路である。そして、制御部37は、例えば電池パック2における制御部50から通信部54によって送信された要求指示が、通信部36によって受信されると、制御部37は、通信部36によって受信された要求指示に応じて充電部35を制御することにより、電池パック2から送信された要求指示に応じた電流や電圧を、充電部35から接続端子11,12へ出力させて、組電池4を充電させる。
【0055】
また、制御部37は、制御部50から、組電池4に対して許容可能な最大の充電電力値である充電可能電力値と組電池4に対して許容可能な最大の放電電力値である放電可能電力値とを、許容電力値として通信部36を介して受信する。そして、制御部37は、充電部35から出力される充電電力が、充電可能電力値を超えないように、充電部35の出力電圧及び電流を制限する。
【0056】
また、制御部37は、例えば負荷回路34がパーソナルコンピュータにおけるマイクロコンピュータであった場合には、例えば当該マイクロコンピュータの動作周波数を低下させたり省電力モードに切り換えたりすることで、負荷回路34の消費電力が放電可能電力量を超えないように、制御する。あるいは負荷回路34が電気自動車における駆動モータであった場合には、制御部37は、駆動モータの回転数を制限することによって、負荷回路34の消費電力が放電可能電力量を超えないように、制御する。
【0057】
また、制御部37は、制御部50から、組電池4で生じた異常内容を示す情報を、通信部36を介して受信すると、表示部38によって、当該異常内容を表示させる。
【0058】
電池パック2では、接続端子11は、スイッチング素子Q2とスイッチング素子Q1とを介して組電池4の正極に接続されている。スイッチング素子Q1,Q2としては、例えばpチャネルのFET(Field Effect Transistor)が用いられる。
【0059】
スイッチング素子Q1,Q2は、それぞれ寄生ダイオードを有している。そして、スイッチング素子Q2の寄生ダイオードは、組電池4の放電電流の流れる方向(組電池4の正極から接続端子11へ向かう方向)が、順方向になる向きに配置されている。これにより、スイッチング素子Q2は、オフすると組電池4の充電方向(接続端子11から組電池4の正極へ向かう方向)の電流のみを遮断するようになっている。
【0060】
また、スイッチング素子Q1の寄生ダイオードは、組電池4の充電電流の流れる方向が、順方向になる向きに配置されている。これにより、スイッチング素子Q1は、オフすると組電池4の放電方向の電流のみを遮断するようになっている。スイッチング素子Q1,Q2は、通常、オンされており、異常時にオフされて組電池4を保護するようになっている。
【0061】
また、接続端子12は、電流検出抵抗6を介して組電池4の負極に接続されている。そして、接続端子11からスイッチング素子Q2、スイッチング素子Q1、組電池4、及び電流検出抵抗6を介して接続端子12に至る電流経路が構成されている。
【0062】
なお、接続端子11,12,13,31,32,33は、電池パック2と機器本体3とを電気的に接続するものであればよく、例えば電極やコネクタ、端子台等であってもよく、ランドやパッド等の配線パターンであってもよい。
【0063】
電流検出抵抗6は、電流検出用の、いわゆるシャント抵抗であり、組電池4の充電電流および放電電流を電圧値に変換する。なお、電流検出抵抗6の代わりに、例えば電流変成器やホール素子等の電流検出素子を用いてもよい。
【0064】
温度検出部72は、例えばサーミスタや熱電対等の複数の感熱素子とアナログデジタルコンバータとを用いて構成されている。そして、各感熱素子が、二次電池B1〜Bnにそれぞれ密着して配設され、あるいは二次電池B1〜Bnの近傍にそれぞれ配設されている。これにより、各感熱素子によって、二次電池B1〜Bnの温度を示す電圧信号が出力され、この電圧信号がアナログデジタルコンバータによってデジタル値に変換されて、二次電池B1〜Bnの温度値T1〜Tnを示す信号として制御部50へ出力される。
【0065】
電圧検出部71は、例えばアナログデジタルコンバータを用いて構成されている。そして、電圧検出部71は、二次電池B1〜Bnの両端電圧(端子間電圧)を、電圧値V1〜Vnとしてそれぞれ検出し、電圧値V1〜Vnを示す信号を制御部50へ出力する。
【0066】
電流検出部52は、例えばアナログデジタルコンバータを用いて構成されている。そして、電流検出部52は、電流検出抵抗6の両端間の電圧Vrを検出し、その電圧Vrを示す信号を、二次電池Bに流れる電流値Iを示す情報として制御部50へ出力する。また、電流検出部52は、電流値Iを示す情報(電圧Vr)について、例えば二次電池Bを充電する方向をプラスの値で、二次電池Bを放電する方向をマイナスの値で表すようになっている。
【0067】
制御部50では、この電圧Vrを電流検出抵抗6の抵抗値Rで除算することにより、二次電池Bに流れる電流値Iを取得する。電流値Iは、例えば二次電池Bを充電する方向をプラスの値で、二次電池Bを放電する方向をマイナスの値で表している。以下、電流検出部52が電流値Iを検出するものとして記載する。
【0068】
制御部50は、例えば所定の演算処理を実行するCPU(Central Processing Unit)と、所定の制御プログラムが記憶されたROM(Read Only Memory)と、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)と、タイマ回路と、これらの周辺回路等とを備えて構成されている。
【0069】
そして、制御部50は、ROMに記憶された制御プログラムを実行することにより、第1変化量算出部501、第2変化量算出部502、予備判定部503、最終判定部504(本判定部)、及び充放電制御部505として機能する。
【0070】
また、ROMには、例えば充電可能電力値Pinと放電可能電力値Poutとが予め記憶されている。充電可能電力値Pin及び放電可能電力値Poutは、組電池4を、特性劣化を招くことなく安全に充放電できる充電電力、及び放電電力を、例えば実験的に求めて得られた電力値である。
【0071】
第1変化量算出部501は、電圧検出部71により検出された電圧値V1〜Vnの、単位時間当たりの変化量を、それぞれ電圧変化量dV1/dt〜dVn/dtとして算出する。電圧変化量dV1/dt〜dVn/dtは、プラスの値で電圧値V1〜Vnが増加することを示し、マイナスの値で電圧値V1〜Vnが減少することを示している。
【0072】
また、第1変化量算出部501は、電流検出部52により検出された電流値Iの、単位時間当たりの変化量を、電流変化量dI/dtとして算出する。電流変化量dI/dtは、プラスの値で電流値Iが増加することを示し、マイナスの値で電流値Iが減少することを示している。
【0073】
電圧変化量dV1/dt〜dVn/dt及び電流変化量dI/dtは、第1変化量に相当している。
【0074】
以下、電圧値V1〜Vnを総称して電圧値Vと称し、電圧変化量dV1/dt〜dVn/dtを総称して電圧変化量dV/dtと称する。また、二次電池Biに対応する電圧値Vを電圧値Vi、二次電池Biに対応する電圧変化量dV/dtを電圧変化量dVi/dtと表記する。
【0075】
例えば、あるタイミングt1において検出された電圧値VをV(t1)、電流値IをI(t1)とし、タイミングt1から所定の時間tdが経過したタイミングt2において検出された電圧値VをV(t2)、電流値IをI(t2)とすると、電圧変化量dV/dt、電流変化量dI/dtは、下記の式(1),(2)によって求められる。
【0076】
電圧変化量dV/dt={V(t2)−V(t1)}/td ・・・(1)
電流変化量dI/dt={I(t2)−I(t1)}/td ・・・(2)
第2変化量算出部502は、温度検出部72によって検出された温度値T1〜Tnの、単位時間当たりの変化量を、それぞれ温度変化量dT1/dt〜dTn/dtとして算出する。温度変化量dT1/dt〜dTn/dtは、プラスの値で温度値T1〜Tnが増加することを示し、マイナスの値で温度値T1〜Tnが減少することを示している。
【0077】
温度変化量dT1/dt〜dTn/dtは、第2変化量に相当している。
【0078】
以下、温度値T1〜Tnを総称して温度値Tと称し、温度変化量dT1/dt〜dTn/dtを総称して温度変化量dT/dtと称する。また、二次電池Biに対応する温度値Tを温度値Ti、二次電池Biに対応する温度変化量dT/dtを温度変化量dTi/dtと表記する。
【0079】
例えば、あるタイミングt1において検出された温度値Tを温度値T(t1)とし、タイミングt1から所定の時間tdが経過したタイミングt2において検出された温度値Tを温度値T(t2)とすると、温度変化量dT/dtは、下記の式(3)によって求められる。
【0080】
温度変化量dT/dt={T(t2)−T(t1)}/td ・・・(3)
予備判定部503は、二次電池Biに対応する電圧変化量dVi/dtが、マイナスの値、すなわち電圧が低下する方向の変化量であり、且つその絶対値が予め設定された電圧基準値Vrefを超えたとき、二次電池Biに異常が有ると予備的に判定する。
【0081】
二次電池Bは、内部短絡を生じると、電圧値Vが急激に低下する。そこで、電圧変化量dVi/dtがマイナスの値であり、且つその絶対値が電圧基準値Vrefを超え、すなわち電圧値Viが急激に低下した場合、予備判定部503は、二次電池Biに内部短絡の異常が生じたと予備的に判定することができる。
【0082】
電圧基準値Vrefとしては、例えば実験的に、二次電池Bに内部短絡を生じさせたときの単位時間当たりの電圧値Vの低下量の絶対値を求め、このようにして求められた値から、ある程度のマージンを減算した値を設定することができる。
【0083】
なお、電圧基準値Vrefとしてマイナスの値を設定し、予備判定部503は、電圧変化量dVi/dtがマイナスの電圧基準値Vrefより小さくなった場合に、電圧変化量dVi/dtがマイナスの値であり且つその絶対値が電圧基準値Vrefを超えたと判定するようにしてもよい。
【0084】
また、予備判定部503は、必ずしも異常がある二次電池を特定する必要はない。予備判定部503は、例えば、電圧変化量dV1/dt〜dVn/dtのうちいずれかが、マイナスの値、すなわち電圧が低下する方向の変化量であり、且つその絶対値が電圧基準値Vrefを超えたとき、二次電池B1〜Bnの少なくとも一部に異常が有ると予備的に判定するようにしてもよい。
【0085】
さらに、予備判定部503は、電流変化量dI/dtがプラスの値、すなわち電流が増加する方向の変化量であり、且つその絶対値が予め設定された電流基準値Irefを超えたときにも、二次電池B1〜Bnの少なくとも一部に異常が有ると予備的に判定する。
【0086】
二次電池Bは、内部短絡を生じると、流れる電流値Iが急激に増加する。二次電池B1〜Bnは直列接続されているから、二次電池B1〜Bnを流れる電流は、いずれも等しく電流値Iである。そうすると、二次電池B1〜Bnのうち、一つでも内部短絡を生じると、組電池4を流れる電流値Iが急激に増加する。
【0087】
そこで、電流変化量dI/dtがプラスの値であり、且つその絶対値が電流基準値Irefを超え、すなわち電流値Iが急激に増加した場合、予備判定部503は、二次電池B1〜Bnの少なくとも一部に内部短絡の異常が生じたと予備的に判定することができる。
【0088】
電流基準値Irefとしては、例えば実験的に、二次電池Bに内部短絡を生じさせたときの単位時間当たりの電流値Iの増加量の絶対値を求め、このようにして求められた値から、ある程度のマージンを減算した値を設定することができる。
【0089】
最終判定部504は、予備判定部503によって二次電池B1〜Bnの少なくとも一部に異常が有ると予備的に判定されたとき、温度変化量dT1/dt〜dTn/dtのうちの最大値を、最大温度変化量dT/dt(max)として取得する。この場合、最大温度変化量dT/dt(max)は、内部短絡が生じた二次電池における温度変化量dT/dtであると考えられる。
【0090】
そして、最終判定部504は、最大温度変化量dT/dt(max)が温度基準値Tref1を超えたとき、二次電池B1〜Bnの少なくとも一つに内部短絡による異常が生じたものと最終的に判定する。
【0091】
また、最終判定部504は、予備判定部503によって二次電池Biに異常が有ると予備的に判定されたとき、温度変化量dTi/dtと温度基準値Tref1とを比較する。そして、最終判定部504は、温度変化量dTi/dtが温度基準値Tref1を超えた場合、二次電池Biに内部短絡による異常が生じたものと最終的に判定する。
【0092】
温度基準値Tref1としては、例えば、二次電池Bが所定の抵抗値を有して短絡する不完全な内部短絡が生じた場合に生じる単位時間当たりの温度上昇を実験的に求め、この温度上昇から測定誤差やばらつきを考慮したマージンを減算した値が設定されている。
【0093】
所定の抵抗値を有して短絡する不完全な内部短絡とは、短絡部が抵抗値を有しているために、まだある程度の時間、二次電池Bの使用を継続することが可能な、程度の軽い内部短絡を意味している。
【0094】
充放電制御部505は、最終判定部504によって、二次電池B1〜Bnの少なくとも一つに異常が生じたと判定されたとき、温度変化量dT/dt(max)が大きいほど、組電池4の充放電電流を、より大きく減少させる方向に制御する。
【0095】
また、充放電制御部505は、最終判定部504によって、二次電池Biに異常が生じたと判定されたとき、温度変化量dTi/dtが大きいほど、組電池4の充放電電流を、より大きく減少させる方向に制御する。
【0096】
次に、図1に示す異常検出回路5の動作について説明する。図2、図3、図4は、図1に示す異常検出回路5の動作の一例を示すフローチャートである。なお、以下のフローチャートにおいて、同一の動作には同一のステップ番号を付してその説明を省略する。
【0097】
まず、電流検出部52によって、二次電池B1〜Bnに流れる電流の電流値Iが検出される(ステップS1)。次に、二次電池B1〜Bnと対応して、電圧検出部71によって電圧値V1〜Vnが検出され、温度検出部72によって温度値T1〜Tnが検出される(ステップS2)。
【0098】
次に、第1変化量算出部501によって、電流変化量dI/dtが算出される(ステップS3)。さらに、二次電池B1〜Bnと対応して、第1変化量算出部501によって電圧変化量dV1/dt〜dVn/dtが算出され、第2変化量算出部502によって温度変化量dT1/dt〜dTn/dtが算出される(ステップS4)。
【0099】
ステップS1〜S4は、以下の処理と並行して常時実行され、電流値I、電圧値V1〜Vn、温度値T1〜Tn、電流変化量dI/dt、電圧変化量dV1/dt〜dVn/dt、及び温度変化量dT1/dt〜dTn/dtは、常時最新の値に更新されるようになっている。
【0100】
次に、予備判定部503によって、電流変化量dI/dtと電流基準値Irefとが比較される(ステップS5)。そして、電流変化量dI/dtが電流基準値Irefを超えたとき(ステップS5でYES)、予備判定部503は、二次電池B1〜Bnのいずれかに内部短絡が生じたものと予備的に判定し、ステップS21へ移行する。
【0101】
ステップS21において、最終判定部504によって、温度変化量dT1/dt〜dTn/dtのうちの最大値が、最大温度変化量dT/dt(max)として取得される(ステップS21)。
【0102】
そして、最終判定部504によって、最大温度変化量dT/dt(max)と温度基準値Tref1とが比較される(ステップS22)。そして、最大温度変化量dT/dt(max)が温度基準値Tref1を超えていなければ(ステップS22でNO)、最終判定部504によって、二次電池B1〜Bnには内部短絡が生じていないと最終的に判定され、ステップS6へ移行する。
【0103】
一方、最大温度変化量dT/dt(max)が温度基準値Tref1を超えていれば(ステップS22でYES)、最終判定部504によって、二次電池B1〜Bnのいずれかに何らかの内部短絡が生じていると最終的に判定され、さらに最終判定部504は、内部短絡の程度に応じた充放電の制御を行うべくステップS23へ移行する。
【0104】
以上、ステップS1〜S22の処理により、二次電池B1〜Bnには内部短絡は生じていないにもかかわらず、例えば一時的な負荷電流の変動などの影響を受けて予備判定部503により二次電池B1〜Bnのいずれかに内部短絡が生じたものと予備的に判定された場合であっても、最大温度変化量dT/dt(max)が温度基準値Tref1を超えていなければ(ステップS22でNO)、最終判定部504によって、二次電池B1〜Bnには内部短絡が生じていないと最終的に判定されるので、異常を誤判定するおそれを低減することができる。
【0105】
また、電池パック2の環境温度が上昇すると、二次電池B1〜Bnには内部短絡が生じていなくても、最大温度変化量dT/dt(max)が温度基準値Tref1を超えるおそれがある。しかしながら、温度の上昇だけで電流の増加がなかった場合には、ステップS5において予備判定部503により異常が生じていないと判断されるから、異常を誤判定するおそれを低減することができる。
【0106】
次に、ステップS23において、充放電制御部505によって、最大温度変化量dT/dt(max)が予め設定された温度基準値Tref2と比較される(ステップS23)。
【0107】
温度基準値Tref2としては、例えば二次電池Bの使用を即座に停止する必要のある完全な内部短絡が生じた場合に生じる単位時間当たりの温度上昇を実験的に求め、この温度上昇から測定誤差やばらつきを考慮したマージンを減算した値が設定されている。
【0108】
そして、最大温度変化量dT/dt(max)が温度基準値Tref2に満たなければ(ステップS23でYES)、二次電池B1〜Bnのいずれかで生じている内部短絡は不完全な内部短絡であると考えられる。そこで、充放電制御部505は、充電可能電力値Pinに0.5を乗じた値と、放電可能電力値Poutに0.5を乗じた値とを、それぞれ許容電力値である充電可能電力値、放電可能電力値として制御部37へ送信する(ステップS24)。
【0109】
そして、充放電制御部505は、二次電池B1〜Bnの充放電電流を制限中であることを示す電力制限フラグFをオンする(ステップS25)。そして、充放電制御部505は、二次電池B1〜Bnの少なくとも一つで不完全な内部短絡が生じていることを示す情報を制御部37へ送信し(ステップS26)、ステップS6へ移行する。
【0110】
そうすると、制御部37によって、二次電池B1〜Bnの充放電電力が許容電力値以下に制限される結果、正常時よりも二次電池Bの充放電電力が減少されるので、二次電池Bが内部短絡により損傷するおそれが低減される。そして、制御部37によって、二次電池Bの不完全な内部短絡が生じたことを示すメッセージが表示部38に表示される。これによって、ユーザに異常内容を報知することが可能となる。
【0111】
ここで、不完全な内部短絡が生じた場合に、もし仮に、直ちに二次電池Bの充放電を禁止してしまうと、不都合が生じる場合がある。例えば二次電池Bが電気自動車のモータ駆動用電力として用いられている場合、車両が急停止することとなって、安全上好ましくない。また、例えば二次電池Bがパーソナルコンピュータの電源として用いられているときは、編集中のデータが消失してユーザに損害を与えるおそれがある。
【0112】
そこで、二次電池Bが内部短絡を生じた場合であっても、まだある程度の時間、二次電池Bの使用を継続することが可能な、程度の軽い内部短絡である場合には、二次電池Bの充放電電力を減少させた上で二次電池Bの使用を継続することにより、表示部38に表示されたメッセージを見たユーザが車両を路肩に寄せて停車させたり、パーソナルコンピュータのデータを保存してからシャットダウンさせたり、といった操作を行うことが可能となる。
【0113】
一方、ステップS23において、最大温度変化量dT/dt(max)が温度基準値Tref2以上であれば(ステップS23でNO)、二次電池Bで生じている内部短絡は完全な内部短絡であると考えられる。そうすると、二次電池Bの安全を確保するために、速やかに二次電池Bの充放電を禁止する必要がある。そこで、充放電制御部505は、例えば充電可能電力量及び放電可能電力量を0Wとして制御部37へ送信する(ステップS27)。そうすると、制御部37によって、充電部35から出力される充電電力が0にされ、負荷回路34の消費電力が0にされて、二次電池Bの充放電が禁止される(ステップS27)。
【0114】
なお、ステップS27において、充放電制御部505は、制御部37に対して充放電の停止を要求する要求指示を送信してもよく、スイッチング素子Q1,Q2をオフすることで、充放電を禁止するようにしてもよい。
【0115】
次に、充放電制御部505は、二次電池Bの完全な内部短絡を示す情報を、制御部37へ送信する(ステップS28)。そうすると、制御部37によって、二次電池Bの完全な内部短絡が生じたことを示すメッセージが表示部38に表示される。これによって、ユーザに異常内容を報知することが可能となる。
【0116】
図2に戻って、ステップS5において、電流変化量dI/dtが電流基準値Iref以下のとき(ステップS5でNO)、予備判定部503は、電流変化量dI/dtの観点からは、二次電池Bには内部短絡が生じていないと予備的に判定し、ステップS6へ移行する。
【0117】
ステップS6において、予備判定部503によって、電池番号を表す変数iに、1が代入される(ステップS6)。次に、予備判定部503によって、電圧変化量dVi/dtと電圧基準値Vrefとが比較される(ステップS7)。そして、電圧変化量dVi/dtが電圧基準値Vrefを下回ったとき(ステップS7でYES)、予備判定部503は、二次電池Biに内部短絡が生じたものと予備的に判定し、ステップS31へ移行する。
【0118】
ここで、電圧基準値Vrefは、マイナスの値で設定されている。従って、電圧変化量dVi/dtが電圧基準値Vrefを下回ることは、電圧変化量dVi/dtが、電圧が低下する方向の変化量であり、且つその絶対値が電圧基準値Vrefの絶対値を超えることを意味する。
【0119】
ステップS31において、最終判定部504によって、温度変化量dTi/dtと温度基準値Tref1とが比較される(ステップS31)。そして、温度変化量dTi/dtが温度基準値Tref1を超えていなければ(ステップS31でNO)、最終判定部504によって、二次電池Biには内部短絡が生じていないと最終的に判定され、ステップS8へ移行する。
【0120】
一方、温度変化量dTi/dtが温度基準値Tref1を超えていれば(ステップS31でYES)、最終判定部504によって、二次電池Biに何らかの内部短絡が生じていると最終的に判定され、さらに最終判定部504は、内部短絡の程度に応じた充放電の制御を行うべくステップS32へ移行する。
【0121】
以上、ステップS6〜S31の処理により、二次電池Biには内部短絡は生じていないにもかかわらず、一時的な負荷電流の変動などの影響を受けて予備判定部503により二次電池Biに内部短絡が生じたものと予備的に判定された場合であっても、温度変化量dTi/dtが温度基準値Tref1を超えていなければ(ステップS31でNO)、最終判定部504によって、二次電池Biには内部短絡が生じていないと最終的に判定されるので、異常を誤判定するおそれを低減することができる。
【0122】
また、電池パック2の環境温度が上昇すると、二次電池Biには内部短絡が生じていなくても、温度変化量dTi/dtが温度基準値Tref1を超えるおそれがある。しかしながら、温度の上昇だけで電圧の低下がなかった場合には、ステップS7において予備判定部503により異常が生じていないと判断されるから、異常を誤判定するおそれを低減することができる。
【0123】
次に、ステップS32において、充放電制御部505によって、温度変化量dTi/dtが温度基準値Tref2と比較される(ステップS32)。そして、温度変化量dTi/dtが温度基準値Tref2に満たなければ(ステップS32でYES)、二次電池Biで生じている内部短絡は不完全な内部短絡であると考えられる。
【0124】
そこで、図3に示すステップS24,S25と同様の処理の後、充放電制御部505は、二次電池Biで不完全な内部短絡が生じていることを示す情報を制御部37へ送信し(ステップS33)、ステップS8へ移行する。
【0125】
そして、制御部37によって、二次電池Biの不完全な内部短絡が生じたことを示すメッセージが表示部38に表示される。これによって、ユーザに異常が生じた二次電池を特定する情報、及びその異常内容を報知することが可能となる。
【0126】
一方、ステップS32において、温度変化量dTi/dtが温度基準値Tref2以上であれば(ステップS32でNO)、二次電池Biで生じている内部短絡は完全な内部短絡であると考えられる。そこで、図3に示すステップS27と同様の処理の後、充放電制御部505は、二次電池Biの完全な内部短絡を示す情報を、制御部37へ送信する(ステップS34)。そうすると、制御部37によって、二次電池Biの完全な内部短絡が生じたことを示すメッセージが表示部38に表示される。これによって、ユーザに異常が生じた二次電池を特定する情報、及びその異常内容を報知することが可能となる。
【0127】
図2に戻って、ステップS8において、予備判定部503によって、電池番号iに1が加算されて(ステップS8)、電池番号iと電池数nとが比較される(ステップS9)。
【0128】
そして、電池番号iが電池数nを超えていなければ(ステップS9でNO)、次の二次電池について予備判定を行うべくステップS7へ移行する一方、電池番号iが電池数nを超えていれば(ステップS9でYES)、二次電池B1〜Bnについて予備判定が終了したことになるから予備判定部503はステップS10へ移行する。
【0129】
次に、充放電制御部505によって、電力制限フラグFがオンか否かが確認される(ステップS10)。そして、電力制限フラグFがオンしていなければ(ステップS10でNO)、二次電池B1〜Bnは正常と考えられる。そこで、充放電制御部505は、充電可能電力値Pin、及び放電可能電力値Poutを、許容電力値として制御部37へ送信し(ステップS11)、ステップS1以降の処理を繰り返す。
【0130】
そうすると、制御部37によって、充電部35により出力される充電電力が充電可能電力値Pin以下の範囲で許容され、負荷回路34の消費電力が放電可能電力値Pout以下の範囲で許容される。
【0131】
一方、電力制限フラグFがオンしていれば(ステップS10でYES)、二次電池B1〜Bnのいずれかにおいて不完全な内部短絡が検出されて、二次電池B1〜Bnの充放電電流が制限されている状態にあるから、電流制限を維持したままステップS1へ移行する。
【0132】
ここで、図5に示すフローチャートにおいて、予備判定部503は、電流変化量dI/dtに基づいて、二次電池B1〜Bnの少なくとも一つにおける異常の有無を予備的に判定(ステップS5)した後、電圧変化量dV1/dt〜dVn/dtに基づいて、二次電池B1〜Bnの少なくとも一つにおける異常の有無を予備的に判定(ステップS7)している。
【0133】
電流値Iは、直列接続された二次電池B1〜Bnに流れるから、二次電池B1〜Bnのうち一つでも内部短絡が生じると、電流値Iが増加して電流変化量dI/dtが増大する。従って、電流変化量dI/dtに基づく予備判定は、ステップS5において、電流変化量dI/dtと電流基準値Irefとを1回比較するだけで、二次電池B1〜Bnの内部短絡を判定することができるので、短時間で二次電池B1〜Bnの内部短絡の有無を検出することができる。
【0134】
一方、電圧値V1〜Vnは、互いに独立しているから、電圧変化量dV1/dt〜dVn/dtは、互いに異なる値となる。そのため、ステップS6〜S9に示すように、例えば二次電池Bnの内部短絡を検出するためにはn回、ステップS6〜S9の処理を繰り返さなければならない。従って、電圧変化量dV1/dt〜dVn/dtに基づく予備判定は、電流変化量dI/dtに基づく予備判定よりも時間がかかる。
【0135】
従って、図5に示すフローチャートで示すように電流変化量dI/dtに基づく予備判定を先に行った方が、電圧変化量dV1/dt〜dVn/dtに基づく予備判定を先に行うよりも、内部短絡が生じてから異常を検出するまでの時間を短縮することができる。
【0136】
図5〜図8は、図3、図4に示す最終判定部504の動作の変形例を示すフローチャートである。まず、図5に示すフローチャートについて説明する。
【0137】
ステップS5において、電流変化量dI/dtが電流基準値Irefを超えたとき(ステップS5でYES)、及び、ステップS7において、電圧変化量dVi/dtが電圧基準値Vrefを下回ったとき(ステップS7でYES)、予備判定部503は、図5に示すステップS41へ移行するようにしてもよい。
【0138】
ステップS41において、最終判定部504によって、温度変化量dT1/dt〜dTn/dtのうちの最大値から、温度変化量dT1/dt〜dTn/dtのうちの最小値を減算して得られた差分値が、差分温度変化量dT/dt(dif)として算出される(ステップS41)。
【0139】
そして、最終判定部504によって、差分温度変化量dT/dt(dif)と温度基準値Tref1とが比較される(ステップS42)。そして、差分温度変化量dT/dt(dif)が温度基準値Tref1を超えていなければ(ステップS42でNO)、最終判定部504によって、二次電池B1〜Bnには内部短絡が生じていないと最終的に判定される。そして、ステップS5からステップS41へ移行してきたときはステップS6へ、ステップS7からステップS41へ移行してきたときはステップS10へ移行する。
【0140】
一方、差分温度変化量dT/dt(dif)が温度基準値Tref1を超えていれば(ステップS42でYES)、最終判定部504によって、二次電池B1〜Bnのいずれかに何らかの内部短絡が生じていると最終的に判定され、さらに最終判定部504は、内部短絡の程度に応じた充放電の制御を行うべくステップS43へ移行する。
【0141】
ステップS43において、充放電制御部505によって、差分温度変化量dT/dt(dif)が温度基準値Tref2と比較される(ステップS43)。そして、差分温度変化量dT/dt(dif)が温度基準値Tref2に満たなければ(ステップS43でYES)、充放電制御部505はステップS24へ移行する。また、差分温度変化量dT/dt(dif)が温度基準値Tref2以上であれば(ステップS43でNO)、充放電制御部505はステップS27へ移行する。ステップS24〜S28についてはその説明を省略する。
【0142】
以上、ステップS41〜S43の処理によれば、ステップS21〜S23やステップS31〜S32の処理と同様、異常を誤判定するおそれを低減することができる。さらに、二次電池Bの温度は、内部短絡が生じていなくても、上昇する場合がある。
【0143】
例えば、二次電池B1〜Bnが、電気自動車やハイブリッドカー等の駆動用電源として用いられている場合、街乗り走行時のように、車両が整備された路面を走行する場合には、モータ駆動による放電と回生による充電とが切り替わる頻度が低く、二次電池B1〜Bnの充放電は少ない。
【0144】
一方、悪路走行時のように、車両が悪路を走行する場合には、モータ駆動による放電と回生による充電とが切り替わる頻度が高く、二次電池B1〜Bnが頻繁に充放電される結果、二次電池B1〜Bnの温度が上昇する。
【0145】
第2変化量算出部502によって算出される温度変化量dT/dtには、二次電池Bの内部短絡による温度上昇のみならず、このような正常な二次電池B1〜Bnの充放電による温度上昇も含まれている。そのため、最終判定部504は、温度変化量dT/dt(max)や温度変化量dTi/dtを、温度基準値Tref1,Tref2と比較すると、正常な温度上昇の影響によって、誤って内部短絡が生じていると判定してしまったり、内部短絡の程度の判定を誤ったりするおそれがある。
【0146】
一方、ステップS42,S43の処理によれば、差分温度変化量dT/dt(dif)からは、正常な二次電池B1〜Bnの充放電による温度上昇が除かれるから、内部短絡の有無の判定精度、及び内部短絡の程度の判定精度が向上する。
【0147】
次に、図6に示すフローチャートについて説明する。ステップS5において、電流変化量dI/dtが電流基準値Irefを超えたとき(ステップS5でYES)、及び、ステップS7において、電圧変化量dVi/dtが電圧基準値Vrefを下回ったとき(ステップS7でYES)、予備判定部503は、図6に示すステップS51へ移行するようにしてもよい。
【0148】
ステップS51において、最終判定部504によって、温度変化量dT1/dt〜dTn/dtの平均値が、平均温度変化量dT/dt(ave)として算出される(ステップS51)。
【0149】
次に、最終判定部504によって、温度変化量dT1/dt〜dTn/dtのうちの最大値が、最大温度変化量dT/dt(max)として取得される(ステップS52)。
【0150】
そして、最終判定部504によって、最大温度変化量dT/dt(max)から、平均温度変化量dT/dt(ave)を減算して得られた差分値が、差分温度変化量dT/dt(dif)として算出される(ステップS53)。
【0151】
以下、ステップS42,S43,S24〜S28についてはその説明を省略する。二次電池B1〜Bnには、その配置のされ方によって、周囲からの熱の煽りを受けやすい二次電池と、放熱されやすい二次電池とが生じる場合がある。そのため、正常時においても温度変化量dT1/dt〜dTn/dtにばらつきが生じるおそれがある。
【0152】
そのため、ステップS41に示すように、温度変化量dT1/dt〜dTn/dtの最大値と温度変化量dT1/dt〜dTn/dtの最小値との差分値を、差分温度変化量dT/dt(dif)として算出し、差分温度変化量dT/dt(dif)に基づいてステップS42,S43の判定を行うと、かえって内部短絡の有無の判定精度、及び内部短絡の程度の判定精度が低下してしまう場合がある。
【0153】
そこで、ステップS51〜S53によれは、温度変化量dT1/dt〜dTn/dtの最小値の代わりに、温度変化量dT1/dt〜dTn/dtの平均値である平均温度変化量dT/dt(ave)が用いられるので、正常時において生じる温度変化量dT1/dt〜dTn/dtのばらつきの影響が低減される結果、内部短絡の有無の判定精度、及び内部短絡の程度の判定精度を向上させることができる。
【0154】
次に、図7に示すフローチャートについて説明する。ステップS7において、電圧変化量dVi/dtが電圧基準値Vrefを下回ったとき(ステップS7でYES)、予備判定部503は、図7に示すステップS61へ移行するようにしてもよい。
【0155】
ステップS61において、最終判定部504によって、温度変化量dT1/dt〜dTn/dtの平均値が、平均温度変化量dT/dt(ave)として算出される(ステップS61)。
【0156】
次に、最終判定部504によって、温度変化量dTi/dtから、平均温度変化量dT/dt(ave)を減算して得られた差分値が、差分温度変化量dTi/dt(dif)として算出される(ステップS62)。
【0157】
次に、最終判定部504によって、差分温度変化量dTi/dt(dif)と温度基準値Tref1とが比較される(ステップS63)。そして、差分温度変化量dTi/dt(dif)が温度基準値Tref1を超えていなければ(ステップS63でNO)、最終判定部504によって、二次電池Biには内部短絡が生じていないと最終的に判定され、ステップS8へ移行する。
【0158】
一方、差分温度変化量dTi/dt(dif)が温度基準値Tref1を超えていれば(ステップS63でYES)、最終判定部504によって、二次電池Biに何らかの内部短絡が生じていると最終的に判定され、さらに最終判定部504は、内部短絡の程度に応じた充放電の制御を行うべくステップS64へ移行する。
【0159】
ステップS64において、充放電制御部505によって、差分温度変化量dTi/dt(dif)が温度基準値Tref2と比較される(ステップS64)。そして、差分温度変化量dTi/dt(dif)が温度基準値Tref2に満たなければ(ステップS64でYES)、充放電制御部505はステップS24へ移行する。また、差分温度変化量dT/dt(dif)が温度基準値Tref2以上であれば(ステップS64でNO)、充放電制御部505はステップS27へ移行する。
【0160】
以下、ステップS24,S25,S33,S27,S34についてはその説明を省略する。以上、ステップS61〜S64によれば、ステップS31,S32と同様、異常を誤判定するおそれを低減しつつ、かつ内部短絡が生じた二次電池を特定し、その内部短絡の程度に応じた充放電制御を行うことができる。
【0161】
さらに、正常な充放電によって生じる二次電池B1〜Bnの温度上昇の影響、及び温度変化量dT1/dt〜dTn/dtのばらつきの影響を低減し、内部短絡の有無の判定精度、及び内部短絡の程度の判定精度を向上させることができる。
【0162】
次に、図8に示すフローチャートについて説明する。ステップS7において、電圧変化量dVi/dtが電圧基準値Vrefを下回ったとき(ステップS7でYES)、予備判定部503は、図8に示すステップS71へ移行するようにしてもよい。
【0163】
ステップS71において、最終判定部504によって、温度変化量dT1/dt〜dTn/dtから温度変化量dTi/dtを除いた残余の温度変化量の平均値が、平均温度変化量dT/dt(ave)として算出され、ステップS62へ移行する。ステップS62以降の動作は図7に示すフローチャートと同様であるので、その説明を省略する。
【0164】
ステップS7において、予備判定部503によって、二次電池Biに内部短絡が生じたと予備的に判定されているから、温度変化量dTi/dtは、内部短絡によって生じた異常な温度上昇である可能性が高い。従って、ステップS61に示すように、温度変化量dTi/dtを含んだまま温度変化量dT1/dt〜dTn/dtの平均値を平均温度変化量dT/dt(ave)として算出すると、正常時において生じる温度変化量dT1/dt〜dTn/dtの平均値よりも、平均温度変化量dT/dt(ave)の値が大きくなってしまう。
【0165】
その結果、ステップS62において得られる差分温度変化量dTi/dt(dif)には、正常な二次電池B1〜Bnの充放電による温度上昇のみならず、内部短絡による温度上昇の成分が含まれてしまうこととなる。
【0166】
一方、ステップS71の処理によれば、温度変化量dT1/dt〜dTn/dtから温度変化量dTi/dtを除いた残余の温度変化量の平均値が、平均温度変化量dT/dt(ave)として算出されるから、ステップS62において得られる差分温度変化量dTi/dt(dif)から、内部短絡による温度上昇の成分が排除される。その結果、ステップS61〜S64よりも、ステップS71〜S64の方が、内部短絡の有無の判定精度、及び内部短絡の程度の判定精度が向上する。
【0167】
また、二次電池Biに内部短絡が生じると、電流値Iは瞬時に増大し、電圧値Viは瞬時に低下する。そのため、予備判定部503は、内部短絡の発生後、電流変化量dI/dt又は電圧変化量dVi/dtに基づき極めて短時間で異常発生の予備判定を行うことができる。その一方、二次電池Bに内部短絡が生じても、その後に電流が増大し、この電流の増大により二次電池Bの内部で発熱が生じ、さらに二次電池Bの内部で生じた熱が、熱伝導により二次電池Bの表面まで伝わらなければ温度値Tは上昇しない。
【0168】
そのため、温度変化量dT/dtに基づき異常の判定を行うと、電流変化量dI/dt又は電圧変化量dVi/dtに基づき異常の判定を行う場合と比べて、内部短絡の発生後、異常を判定できるまでの時間が長くなる。そのため、もし仮に、温度変化量dT/dtに基づく異常の判定を行った後に、電流変化量dI/dt又は電圧変化量dVi/dtに基づく異常の判定を行った場合には、内部短絡の発生後、異常を判定できるまでの時間が長くなる。
【0169】
一方、図1に示す異常検出回路5は、内部短絡の発生後、まず先に異常検出に必要な時間が短い電流変化量dI/dt又は電圧変化量dVi/dtに基づく予備判定を行った後に、温度変化量dT/dtに基づく最終判定を行う。そのため、内部短絡の発生後、予備判定(ステップS5,S7)の実行時間中に温度値Tが上昇し、その後に最終判定(ステップS22,S31,S42,S63)が実行される結果、内部短絡の発生後、異常を判定できるまでの時間を、先に温度変化量dT/dtに基づく判定を行った場合と比べて短縮することができる。
【0170】
なお、例えば、二次電池Bに内部短絡が生じてから、温度検出部72によって温度Tの上昇が検出されるまでの時間を、例えば実験的に求め、この時間から予備判定(ステップS5,S7)の実行時間を減算した値を待機時間twとしてROMに記憶しておく。そして、ステップS5の実行後、待機時間twの経過後にステップS22,S42,S63を実行し、ステップS7の実行後、待機時間twの経過後にステップS31,S42,S63を実行するようにしてもよい。
【0171】
これにより、内部短絡に起因する温度上昇が、温度検出部72によって検出された後に、温度変化量dT/dtに基づく最終判定(ステップS22,S31,S42,S63)が実行される確実性が向上する結果、最終判定の判定精度が向上する。
【0172】
また、図2において、ステップS1、S3、S5を実行しない構成としてもよい。あるいは、ステップS2における電圧値Viの検出、ステップS4における電圧変化量dVi/dtの算出、及びステップS6〜S9を実行しない構成としてもよい。
【0173】
また、電池パック2が、二次電池Bを一つしか備えない場合、例えば二次電池B1のみ備える場合、図2において、ステップS8、S9を実行しない構成としてもよい。
【0174】
また、充放電制御部505を備えず、図3〜図8において、ステップS23〜S26、S32,S33,S43,S64を実行せず、最終判定(ステップS22,S31,S42,S63)でYESの場合、ステップS27へ移行する構成としてもよい。この場合、最終判定(ステップS22,S31,S42,S63)において、温度基準値Tref1の代わりに温度基準値Tref2を用いるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0175】
本発明に係る二次電池の異常検出回路、及び電池電源装置は、携帯型パーソナルコンピュータやデジタルカメラ、ビデオカメラ、携帯電話機等の電子機器、電気自動車やハイブリッドカー等の車両、ハイブリッドエレベータ、太陽電池や発電装置と二次電池とを組み合わされた電源システム、無停電源装置等の電池電源システムにおいて、好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0176】
1 電池搭載機器
2 電池パック
3 機器本体
4 組電池
5 異常検出回路
6 電流検出抵抗
11,12,13,31,32,33 接続端子
34 負荷回路
35 充電部
36,54 通信部
37,50 制御部
38 表示部
52 電流検出部
71 電圧検出部
72 温度検出部
501 変化量算出部
502 変化量算出部
503 予備判定部
504 最終判定部
505 充放電制御部
B,B1〜Bn 二次電池
F 電力制限フラグ
I 電流値
Iref 電流基準値
Pin 充電可能電力値
Pout 放電可能電力値
Q1,Q2 スイッチング素子
T,T1〜Tn 温度値
Tref1,Tref2 温度基準値
tw 待機時間
V,V1〜Vn 電圧値
Vref 電圧基準値
dI/dt 電流変化量
dT1/dt,dT1/dt〜dTn/dt 温度変化量
dT/dt(dif),dT1/dt(dif)〜dTn/dt(dif) 差分温度変化量
dT/dt(max) 最大温度変化量
dT/dt(ave) 平均温度変化量
dV/dt,dV1/dt〜dVn/dt 電圧変化量
i 電池番号
n 電池数

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池の温度を検出する温度検出部と、
前記二次電池に流れる電流、及び前記二次電池の両端電圧のうち少なくとも一方の値を検出する検出部と、
前記検出部により検出された値の単位時間当たりの変化量を第1変化量として算出する第1変化量算出部と、
前記温度検出部によって検出された温度の単位時間当たりの変化量を、第2変化量として算出する第2変化量算出部と、
前記第1変化量に基づいて、前記二次電池の異常の有無を予備的に判定する予備判定部と、
前記予備判定部によって前記予備的に異常が有ると判定された後、前記第2変化量に基づいて、前記二次電池の異常の有無を重ねて判定する本判定部と
を備える二次電池の異常検出回路。
【請求項2】
前記検出部は、
少なくとも前記二次電池の両端電圧を検出し、
前記第1変化量算出部は、
少なくとも、前記両端電圧の単位時間当たりの変化量を前記第1変化量である電圧変化量として算出し、
前記予備判定部は、
少なくとも、前記電圧変化量が、電圧が低下する方向の変化量であり且つ予め設定された基準値を超えたとき、前記二次電池に異常が有ると予備的に判定し、
前記本判定部は、
前記予備判定部によって前記予備的に異常が有ると判定され、かつ前記第2変化量が予め設定された基準値を超えたとき、前記二次電池に異常が生じたと重ねて判定する請求項1記載の二次電池の異常検出回路。
【請求項3】
前記検出部は、
少なくとも、前記二次電池に流れる電流の電流値を検出し、
前記第1変化量算出部は、
少なくとも、前記電流値の単位時間当たりの変化量を前記第1変化量である電流変化量として算出し、
前記予備判定部は、
少なくとも、前記電流変化量が、増加する方向の変化量であり且つ予め設定された基準値を超えたとき、前記二次電池に異常が有ると予備的に判定し、
前記本判定部は、
前記予備判定部によって前記予備的に異常が有ると判定され、かつ前記第2変化量が予め設定された基準値を超えたとき、前記二次電池に異常が生じたと重ねて判定する請求項1又は2記載の二次電池の異常検出回路。
【請求項4】
前記二次電池は複数、直列接続されており、
前記温度検出部は、前記各二次電池の温度をそれぞれ検出し、
前記検出部は、前記複数の二次電池に流れる電流、及び前記複数の二次電池の両端電圧のうち少なくとも一方の値を検出し、
前記第2変化量算出部は、前記温度検出部によって検出された各二次電池の温度に基づいて、前記第2変化量を、前記各二次電池に対応してそれぞれ算出し、
前記予備判定部は、前記第1変化量に基づいて、前記複数の二次電池の少なくとも一つにおける異常の有無を予備的に判定し、
前記本判定部は、前記予備判定部によって前記予備的に異常が有ると判定された後、前記複数の第2変化量に基づいて、前記複数の二次電池における異常の有無を重ねて判定する請求項1記載の二次電池の異常検出回路。
【請求項5】
前記検出部は、
少なくとも、前記各二次電池の両端電圧をそれぞれ検出し、
前記第1変化量算出部は、
少なくとも、前記各両端電圧の単位時間当たりの変化量を、それぞれ各二次電池に対応する前記第1変化量である電圧変化量として算出し、
前記予備判定部は、
少なくとも、前記各電圧変化量のうちいずれかが、電圧が低下する方向の変化量であり且つ予め設定された基準値を超えたとき、前記複数の二次電池のうち少なくとも一つに異常が有ると予備的に判定する請求項4記載の二次電池の異常検出回路。
【請求項6】
前記検出部は、
少なくとも、前記複数の二次電池に流れる電流の電流値を検出し、
前記第1変化量算出部は、
少なくとも、前記電流値の単位時間当たりの変化量を前記第1変化量である電流変化量として算出し、
前記予備判定部は、
少なくとも、前記電流変化量が、増加する方向の変化量であり且つ予め設定された基準値を超えたとき、前記複数の二次電池のうち少なくとも一つに異常が有ると予備的に判定する請求項4又は5記載の二次電池の異常検出回路。
【請求項7】
前記本判定部は、
前記予備判定部によって前記予備的に異常が有ると判定され、かつ前記複数の第2変化量のうち最大値と最小値との差が、予め設定された基準値を超えたとき、前記複数の二次電池のうち少なくとも一つに異常が有ると重ねて判定する請求項4〜6のいずれか1項に記載の二次電池の異常検出回路。
【請求項8】
前記本判定部は、
前記予備判定部によって前記予備的に異常が有ると判定され、かつ前記複数の第2変化量の最大値と平均値との差が、予め設定された基準値を超えたとき、前記複数の二次電池の少なくとも一つに異常が有ると重ねて判定する請求項4〜6のいずれか1項に記載の二次電池の異常検出回路。
【請求項9】
前記検出部は、
少なくとも前記各二次電池の両端電圧をそれぞれ検出し、
前記第1変化量算出部は、
少なくとも前記各両端電圧の単位時間当たりの変化量を、それぞれ各二次電池に対応する前記第1変化量である電圧変化量として算出し、
前記予備判定部は、
前記各電圧変化量のうちいずれかが、電圧が低下する方向の変化量であり且つ予め設定された基準値を超えたとき、当該いずれかの電圧変化量と対応する二次電池に異常が有ると予備的に判定し、
前記本判定部は、
前記予備判定部によって前記いずれかの二次電池に異常が有ると予備的に判定され、かつ前記複数の第2変化量に基づく平均値と、当該異常が有ると予備的に判定された二次電池に対応する第2変化量との差が、予め設定された基準値を超えたとき、前記予備的に異常が有ると判定された二次電池に異常が有ると重ねて判定する請求項4記載の二次電池の異常検出回路。
【請求項10】
前記本判定部は、
前記平均値として、前記複数の第2変化量のうち、前記予備的に異常が有ると判定された二次電池に対応する第2変化量を除く残余の第2変化量の平均値を用いる請求項9記載の二次電池の異常検出回路。
【請求項11】
前記検出部は、
前記複数の二次電池に流れる電流の電流値と、前記各二次電池の各両端電圧とを検出し、
前記第1変化量算出部は、
前記電流値の単位時間当たりの変化量を前記第1変化量である電流変化量として算出すると共に、前記各両端電圧の単位時間当たりの変化量を、それぞれ各二次電池に対応する前記第1変化量である電圧変化量として算出し、
前記予備判定部は、
前記電流変化量に基づいて、前記複数の二次電池の少なくとも一つにおける異常の有無を予備的に判定した後、前記各電圧変化量に基づいて、前記複数の二次電池の少なくとも一つにおける異常の有無を予備的に判定する請求項4記載の二次電池の異常検出回路。
【請求項12】
前記本判定部は、
前記予備判定部によって異常が有ると判定されたときから、前記二次電池に内部短絡が生じてから前記温度検出部によって前記温度の上昇が検出されるまでの時間として予め設定された待機時間の経過後に、前記重ねての判定を実行する請求項1〜10のいずれか1項に記載の二次電池の異常検出回路。
【請求項13】
前記本判定部によって、異常が生じたと判定されたとき、前記第2変化量に基づいて、前記二次電池の充放電を制御する充放電制御部をさらに備える請求項1〜12のいずれか1項に記載の二次電池の異常検出回路。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の二次電池の異常検出回路と、
前記二次電池と
を備える電池電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−52857(P2012−52857A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194195(P2010−194195)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】