説明

二軸ヒンジ

【課題】 本発明による二軸ヒンジでは、各軸に回動規制カムを備え、両カムの間にスライダを配設することにより、途中の回動角度までは一方のヒンジが回動し、その最終角度において一旦回動角度が半固定され、さらに力を加えることにより今度は他方のヒンジが回動することにより180度以上まで回動できるヒンジを提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明による二軸型ヒンジモジュールは、ヒンジ基体と、周面が円周部とその両端にそれぞれ形成された直線部とからなる回動規制カムを備えヒンジ基体に回動可能に連結された2軸の回動部材と、前記2軸上の前記回動規制カムのいずれかに常に接触し前記ヒンジ基体表面に沿って摺動自在に配置されたスライダとからなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話やノートブック型パソコン等の携帯機器に用いられる小型二軸ヒンジに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機等の携帯機器においては、最近折り畳み型が主流である。この折り畳み式携帯電話においては、送話部2と受話部1とを回動可能に連結するためヒンジ装置が用いられている。ヒンジ装置には1軸型と2軸型がある。1軸型では、構造が単純になるという利点はあるが回動範囲が160度から170度に制限されるという欠点も有する。これに対して二軸型は、構造は若干複雑になるが送話部及び受話部がそれぞれの軸の周りに回動するため、開閉動作が全体の開閉角度の半分ですむという利点がある。
【0003】
最も基本的な二軸ヒンジ装置としては、特許文献1に開示されているものがある。この技術においては、二軸それぞれに平歯車を配置してこれらを噛み合わせることにより、それぞれの軸に接続された取り付けフレームを駆動することが開示されている。この技術は最も単純で製造も容易であるが、平行に配置された2軸を連動して駆動するためには、半径が軸間距離の2分の1よりも大きな歯車を使用する必要がある。しかし、このことはヒンジ部が例えば携帯電話等の本体の厚さよりも大きくなってしまい、外観を損なうだけでなく小型化に反するという問題点がある。
【0004】
また、回動動作をふらつきなくスムーズに行えることを目的として、特許文献2のヒンジ装置が提案されている。この技術では、第一回動部と第二回動部との間に連動リンク部を架設して、両回動部が連動して同時に回動できるよう構成した二軸ヒンジであり、第一回動部に取り付けられた第一部材と第二回動部に取り付けられた第二部材とを180度以上回動できることを特徴としている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−207465号公報
【特許文献2】特開2008−75747号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のような歯車によるヒンジにおいても、また連動リンクによるヒンジにおいても、ヒンジに取り付ける第一部材と第二部材とを回動途中の角度で半固定することは困難であった。本発明による二軸ヒンジでは、各軸に回動規制カムを備え、両カムの間にスライダを配設することにより、途中の回動角度までは一方のヒンジが回動し、その最終角度において一旦回動角度が半固定され、さらに力を加えることにより今度は他方のヒンジが回動することにより180度以上まで回動できるヒンジを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明による二軸型ヒンジモジュールは、ヒンジ基体と、周面が円周部とその両端にそれぞれ形成された直線部とからなる回動規制カムを備えヒンジ基体に回動可能に連結された2軸の回動部材と、前記2軸上の前記回動規制カムのいずれかに常に接触し前記ヒンジ基体表面に沿って摺動自在に配置されたスライダとからなることを特徴とする。
【0008】
前記カムの中心から前記それぞれの直線部までの距離が異なることが望ましく、前記カム上の前記直線部のいずれかは、前記円周部の接線上に形成されていることが好適である。
【0009】
また、前記回動規制カムの外周上に回動ロック爪部が形成されていることが好ましい。
【0010】
前記2軸上の前記回動規制カムがそれぞれ同一形状とすることが好適である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の二軸ヒンジでは、円周部と2つの直線分を有するカムを2個用い、これらのカムの間にスライダを摺動可能に配置することにより、2軸のヒンジを逐次的に駆動することが可能となり、回動途中で被接続部材を半固定停止させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【実施例】
【0012】
以下、実施例に基づいて本発明を説明する。図1は本発明の実施例に使用した回動規制カム10の正面図を示す。このカムの主要部は、円周部12及びこの円周部12の接線上に形成した第1直線部13、並びに円周部12よりも半径の小さい弦である第2直線部14からなる。カム10の背面側(図1の奥側)には円周部12、第1直線部13及び第2直線部14よりも半径の大きな円形のフランジ部11が形成してある。図1の左下側には、フランジ部11よりも半径の小さな円周である小径部17を設けることにより、ロック爪15及び16を形成してある。また、このカム10の中心部には両側に直線部を有する軸穴18が形成してある。
【0013】
次に、本発明による二軸ヒンジ実施例の全体の構成について説明する。図2にこの実施例の組立図を示した。ヒンジ基体30の前面には中央部に摺動可能にスライダ20が配置される。また、ヒンジ基体30には図5に示したように2つの軸穴32が形成されており、ヒンジ軸40A、40Bが挿通される。これらヒンジ軸40A、40Bの各々には大径部41が形成されており、これらのヒンジ軸40A、40Bそれぞれをヒンジ基体30に挿通する際にヒンジ基体30と大径部41との間に回動規制カム10A、10Bをそれぞれ配置する。これらのカム10A、10Bはフランジ部11がヒンジ軸40A、40B上の大径部41側に来るように配置する。
【0014】
一方、ヒンジ基体の背面側(図2の右上側)には、ヒンジ軸40A、40Bの各々にクリック機構を設ける。このクリック機構は、ヒンジ軸と連動しないよう固定されたクリックカム50、ヒンジ軸に固定されたクリックフォロワ60、クリックフォロワ60をクリックカム50に対して付勢するスプリング70及びワッシャ80とからなる。ヒンジ軸が回動した際には、クリックカム50に形成された凹部にクリックフォロワ60上の凸部が嵌合することにより、取り付けフレーム91および92を所定の角度で規制することができる。
【0015】
上記実施例の組立て後の状態を図3に示す。スライダ20は、ヒンジ基体30と回動規制カム10A、10Bのフランジ部11との間に配置され、図3の左右方向のみに摺動可能になされている。
【0016】
スライダの配置について詳しく説明すると、図4に示したように長方形板状スライダ20の片側には突起22が2箇所に設けられている。一方、ヒンジ基体30には図5に示したように、スライダ20の突起22に対応する箇所にスライダ保持穴33が形成されており、突起22と嵌合することによりスライダ20をヒンジ基体30に接触保持する。また、スライダ保持穴33は図5の左右方向に長く形成してあるため、スライダ20は図5の左右方向に摺動可能となる。図4におけるスライダの背面(突起のない方の表面)は、上述したように回動規制カム10A、10Bのフランジ部11により押さえられるため、スライダ20がヒンジ基体30から離脱することはない。スライダ20の対角隅2箇所のみに面取り部21が形成されているのは、スライダ20を装着する際に裏表を間違えないためである。
【0017】
図2におけるヒンジ軸40A、40Bの大径部41手前側には取付けフレーム91、92がそれぞれ挿通され、最終的に各ヒンジ軸を両側から加締めることにより部品全部を一体化する。
【0018】
次に、上記実施例の動作について説明する。図6(a)に取付けフレーム91、92が閉じた状態(全閉状態)を示す。この際の回動規制カム10Aの状態を(b)に、10Bの状態を(c)に、さらにスライダ20の状態を(d)にそれぞれ示す。回動規制カム10A、10Bはこの図の角度からはフランジ部11が邪魔となってカム部(12、13、14)が見えない状態のため、(b)と(c)は透視図である。回動規制カム10Aは第1直線部13が下側に来ており、スライダ20と接している。また、回動規制カム10Bは第2直線部14が上側に来ており、やはりスライダ20と接している。この状態では、回動規制カム10Aの第1直線部13は円周部12の接線上にあるため、ヒンジ軸40Aを時計回りに回転すると、スライダ20との接点はスムーズに円周部12に移行するため、ヒンジ軸40Aが回動できる。一方、回動規制カム10Bは第2直線部14においてスライダ20と接しており、第2直線部14は円周部12よりカムの中心側にあるため、このカムは回動が規制され、ヒンジ軸40Bは回動できない。従って、全閉状態から取付けフレーム91、92を開こうとすると、ヒンジ軸40Aのみが回動動作を行う。
【0019】
図7(a)は、取付けフレーム91、92が90度開いた状態を示す。この際の回動規制カム10Aの状態を(b)に、10Bの状態を(c)に、さらにスライダ20の状態を(d)にそれぞれ示す。この状態では回動規制カム10Aはロック爪15がヒンジ基体のストッパーに当接しそれ以上の回動が制限される。このとき回動規制カム10Aは第2直線部14においてスライダ20と対向することになるが、カム中心から第2直線部14までの距離は円周部12までの距離よりも短いため、回動規制カム10Aとスライダ20との間に間隙が生ずる。従って、取付けフレーム91をさらに開こうとすると、その力によりスライダが上方へ摺動して回動規制カム10Aの第2直線部14に接する一方、回動規制カム10Bの第2直線部14との間には間隙が生ずる。これにより、今度は回動規制カム10Bが回動可能となりヒンジ軸40Bが回動を開始する。
【0020】
図8(a)は取付けフレーム91、92が120度開いた状態を示す。この際の回動規制カム10Aの状態を(b)に、10Bの状態を(c)に、さらにスライダ20の状態を(d)にそれぞれ示す。この状態では、回動規制カム10Aはロック爪15がヒンジ基体のストッパー31に当接しそれ以上の回動が制限されたままであり、なおかつ第2直線部14においてスライダ20と接しているため固定されている。一方、回動規制カム10Bは円周部12においてスライダ20と接しているため、回動がスムーズに行われる。
【0021】
図9(a)は、取付けフレーム91、92が180度開いた状態を示す。この際の回動規制カム10Aの状態を(b)に、10Bの状態を(c)に、さらにスライダ20の状態を(d)にそれぞれ示す。この状態では、回動規制カム10Aは依然として固定されたままであり、回動規制カム10Bはスライダ20との接点が円周部12から第1直線部13に移行し、このときヒンジ基体30のストッパー31が回動規制カム10B上のロック爪16に当接するため、それ以上の回動が制限される。取付けフレーム91、92を閉じる際は、上記の逆の動作となるため、やはり回動規制カム10A、10Bが逐次的に動作することになる。
【0022】
以上説明した実施例は180度までの回動を想定したものであるが、回動規制カム10の第1直線部13と第2直線部14との角度を変更することにより、180度以上の回動に対応することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明による二軸ヒンジでは、円周部と2つの直線分を有するカムを2個用い、これらのカムの間にスライダを摺動可能に配置することにより、2軸のヒンジを逐次的に駆動することが可能となり、回動途中で被接続部材を半固定停止させることができるため、機器の開閉動作の自由度を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明による二軸ヒンジに使用した回動規制カムの正面図である。
【図2】図1に示した回動規制カムを2個使用した二軸ヒンジ実施例の組立図である。
【図3】図2に示した二軸ヒンジ実施例の組立後の平面図である。
【図4】図2に示した二軸ヒンジ実施例に用いたスライダの斜視図である。
【図5】図4に示したスライダとヒンジ基体との連結状態を示す斜視図である。
【図6】図2に示した二軸ヒンジ実施例の全閉状態を示す動作説明図である。
【図7】図2に示した二軸ヒンジ実施例の90度開放状態を示す動作説明図である。
【図8】図2に示した二軸ヒンジ実施例の120度開放状態を示す動作説明図である。
【図9】図2に示した二軸ヒンジ実施例の180度開放状態を示す動作説明図である。
【符号の説明】
【0025】
10、10A、10B 回動規制カム
11 フランジ部
12 円周部
13 第1直線部
14 第2直線部
15 ロック爪
16 ロック爪
17 小径部
18 軸穴
20 スライダ
21 面取り部
22 突起
30 ヒンジ基体
31 ストッパー
32 軸穴
33 スライダ保持穴
40A、40B ヒンジ軸
41 大径部
50 クリックカム
60 クリックフォロワー
70 スプリング
80 ワッシャ
91、92 取付けフレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒンジ基体と、周面が円周部とその両端にそれぞれ形成された直線部とからなる回動規制カムを備えヒンジ基体に回動可能に連結された2軸の回動部材と、前記2軸上の前記回動規制カムのいずれかに常に接触し前記ヒンジ基体表面に沿って摺動自在に配置されたスライダとからなることを特徴とする二軸ヒンジ。
【請求項2】
前記カムの中心から前記それぞれの直線部までの距離が異なることを特徴とする請求項1記載の二軸ヒンジ。
【請求項3】
前記カム上の前記直線部のいずれかが、前記円周部の接線上に形成されていることを特徴とする請求項2記載の二軸ヒンジ。
【請求項4】
前記回動規制カムの外周上に回動ロック爪部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の二軸ヒンジ。
【請求項5】
前記2軸上の前記回動規制カムがそれぞれ同一形状であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の二軸ヒンジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−96570(P2013−96570A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255518(P2011−255518)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(392017222)太陽工業株式会社 (17)
【Fターム(参考)】