説明

二部材の連結構造

【課題】ロボットの関節に連結されている第2部材のピン支持孔にピンの端部を圧入した後、薄肉円筒部を外径方向に変形させることにより、薄肉円筒部がロボットの関節に連結されている第2部材のピン支持孔に密着する。ロボットの関節に締結されている部材にピン端を溶接することなく確実に固定することができる。
【解決手段】互いに相対回転可能に連結された第2部材と、及び第2部材を挿通するピンとを有する二部材連結構造において、第2部材にはピンの少なくとも一端に形成された拡径部と係合するピン支持孔が形成されていることを特徴とする二部材連結構造体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好適にはロボットアーム、または、ロボットフィンガーの関節に用いる二部材連結構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
これには、従来より、部品の搬送ロボットの専用の設備が用いられ、これら設備には搬送部品の形状に合わせて作製した二部材連結構造体が取り付けられて、部品の吸着、グリップなどを容易にしている。従来の二部材連結構造体は、それぞれ、搬送される部品の形状に合わせて一品一様で製作される。二部材連結構造体の長さや二部材連結構造体の角度を部品に合わせて調整した後、調整部を溶接固定している。しかし、溶接等の固着作業が面倒で、組み立て工程が煩雑となるばかりでなく、溶接で発生する熱によって、二部材連結構造体が変形したり、また、溶接作業中に発生するアウトガスによって人体に悪影響を与えるという課題があった。
【0003】
この部分の改善の先行技術としては、特許文献1:特開2002−28882号、がある。しかしながら、この先行技術には、連結棒と連結部との連結は溶接以外の手段として、ボルトで固定しているので、搬送中にボルトが緩むという問題が有った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−28882号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする問題点は、ロボットの関節に連結される二部材を溶接等で固着する作業が面倒で、組み立て工程が煩雑となるばかりでなく、溶接で発生する熱によって、二部材連結構造体が変形したり、また、溶接作業中に発生するアウトガスによって人体に悪影響を与えるという問題点を解決すると言う点である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に記載されている発明はロボットの関節に連結されている部材を構成する第1部材、及び、第2部材の端部同士を連結するために、前記第2部材端部を支点として前記第1部材を回動させる二部材連結構造体であって、第2部材に穿設されたピン支持孔に薄肉円筒部を外径方向に拡径して密着された二部材連結構造体であることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載されている発明は、前記第1部材が、単列2個の転がり軸受の外輪を保持するハウジングに締結され、前記単列2個の転がり軸受の内輪に内嵌されているスリーブを備えている二部材連結構造体であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、第2部材のピン支持孔にピンの端部を圧入した後、薄肉円筒部を外径方向に変形させることにより、ピンの薄肉円筒部がロボットの関節に締結されている第2部材のピン支持孔に密着する。ロボットの関節に連結されている部材にピン端を溶接することなく確実に固定することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係るロボットの二部材連結構造体を示す図である。
【図2】本発明に係るロボットの二部材連結構造体に使用される転がり軸受ユニットの組立方法を示す図である。
【図3】図2に示す組立方法の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施例1)以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1より、ロボットの二部材連結構造体(1)は、ロボットの関節に連結されている部材(4)を構成する第1部材(4a)及び第2部材(4b)の端部同士を連結するため、前記第2部材(4b)端部を支点として前記第1部材(4a)を回動させる二部材連結構造体(1)であって、第2部材(4b)に穿設されたピン支持孔(4c)に薄肉円筒部(5)を外径方向に拡径して密着させたことを特徴とする。
【0011】
また、前記第1部材は、単列2個の転がり軸受(2)の外輪を保持するハウジング(11)に締結され、前記単列2個の転がり軸受(2)の内輪に内嵌されているスリーブ(6)を備えていることを特徴とする。
【0012】
次に、このような、二部材連結構造体(1)を組み立てる場合の手順について図2を参照して説明する。ロボットの二部材連結構造体(1)を組み立てる場合は、図2(a)に示すような薄肉円筒部(5)をピン(3)の両端部に形成する。次に、図2(b)に示すように、スリーブ(6)、及び、ハウジング(11)、さらに、押さえ部材(12)と、第2部材(4b)との間にシム(7)を挿入し、この状態でピン(3)の両端部を圧入治具(8)で、第2部材(4b)に穿設されたピン支持孔(4c)に圧入する。そして、ピン(3)の両端部を、第2部材(4b)穿設されたピン支持孔(4c)に圧入したならば、図2(c)に示すように、ピン(3)の両端部に形成された薄肉円筒部(5)に拡径治具(9)を押し当て、この拡径治具(9)により薄肉円筒部(5)をその外径方向に変形させる。
【0013】
このように、第2部材(4b)に穿設されたピン支持孔(4c)にピン(3)の両端部を圧入した後、薄肉円筒部(5)を外径方向に変形させることにより、図2(d)に示すように、薄肉円筒部(5)が、第2部材(4b)に穿設されたピン支持孔(4c)に密着する。したがって、上述した本発明の一実施形態では、第2部材(4b)に穿設されたピン支持孔(4c)に圧入されたピン(3)の端部を、第2部材(4b)に固定する際に、ピン(3)の端部を溶接、または、ボルト固定することなく、第2部材(4b)にピン(3)の端部を固定することができる。
【0014】
なお、上述した実施の形態では単列2個の転がり軸受を二部材連結構造体(1)の本発明を適用した場合を例示したが、本発明は深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受、円錐ころ軸受、円筒ころ軸受、ニードル軸受の単列2個の組み合わせ、または、これらのいずれかの単列2個を組み合わせても、本発明を適用できることは勿論である。さらに、上述した実施の形態では薄肉円筒部(5)をピン(3)の両端部に形成したが、ピン(3)の一端部のみに薄肉円筒部(5)を形成してもよい。
【0015】
また、図3に示すように、薄肉円筒部(5)を円周方向に分割する複数の割り(スリット)(10)をピン(3)に設けてピン(3)の端部を第2部材(4b)に固定するようにしてもよい。このように、薄肉円筒部(5)を円周方向に分割する複数の割り(10)をピン(3)に設けることにより、薄肉円筒部(5)が外径方向に変形し易くなるので、ピン(3)の端部を、第2部材(4b)に穿設されたピン支持孔(4c)に圧入する圧入工程と薄肉円筒部(5)を外径方向に変形させる拡径工程とを図2(c)に示すような治具(9)を用いて行なうことができる。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明は、例えばロボットアーム、または、ロボットフィンガーの関節に用いる二部材連結構造体に適用できる。
【符号の説明】
【0017】
1 二部材連結構造体
2 転がり軸受
3 ピン
4 ロボットの関節に連結されている部材
4a 第1部材
4b 第2部材
4c ピン支持孔
5 薄肉円筒部
6 スリーブ
7 シム
8 圧入治具
9 拡径治具
10 複数の割り
11 ハウジング
12 押さえ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットの関節に連結されている部材を構成している第1部材及び第2部材の端部同士を連結するために、前記第2部材端部を支点として前記第1部材を回動させる二部材連結構造体であって、第2部材に穿設されたピン支持孔に薄肉円筒部を外径方向に拡径させたことを特徴とする二部材連結構造体。
【請求項2】
前記第2部材は、単列2個の転がり軸受の外輪を保持するハウジングに締結され、前記単列2個の転がり軸受の内輪に内嵌されているスリーブを備えていることを特徴とする請求項1に記載の二部材連結構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−94725(P2011−94725A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−249875(P2009−249875)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】