交互偏光光で原子時計を動かすための方法およびシステム
本発明は、交互偏光の光で原子を励起することによって、原子時計および磁力計において使用されるコヒーレントポピュレーショントラッピング(CPT)共振の強度を増加するための方法および装置を提供する。原子の配置において原子の超微細周波数で方向が交替する光子スピンベクトルによって特徴付けられるそのような光での励起は、プッシュプルポンピングと称される。本発明のシステムの一実施形態において、適当な共振周波数で強度変調された交互回転偏光D1レーザ光線でアルカリ金属蒸気が励起され、それによって、アルカリ金属蒸気の平均透過率の増加として観察されることができるCPT共振を発生させる。これらの共振は、光学的に引き起こされる原子の共振エネルギー副準位への集中に起因して実質的に強められる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光励起された原子時計または磁力計の技術分野に関し、特に、プッシュプルポンピング(push−pull pumping)と称される交互偏光(alternating polarization)の光を用いる0−0コヒーレントポピュレーショントラッピング(CPT)共振を調べることによって動作する原子時計または磁力計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のガス電池(gas−cell)原子時計は、光励起されたアルカリ金属の蒸気を利用する。原子時計は、極めて正確な周波数測定を要求する様々なシステムにおいて利用される。たとえば、原子時計は、GPS(グローバル位置決定システム)衛星ならびに他のナビゲーションおよび測位システムのみならず、携帯電話システム、無線通信、科学実験、および軍事用途において使用される。ある種の原子共鳴は磁場に対して高感度であるため、原子時計の設計に類似する設計はまた磁力計として利用される。
【0003】
原子時計の一形式において、ルビジウムまたはセシウム蒸気といった活性媒体を含むセルは、光およびマイクロ波出力(power)の両方が照射される。セルは、大気圧の何分の1かの圧力でアルカリ金属および不活性バッファガス(たとえば、N2、任意の希ガス、またはそれらの混合体)の数滴の液滴を含む。光源からの光は、アルカリ金属蒸気の原子を基底状態から光学的に励起された状態に励起し、そこから原子は蛍光を放出することによって、または、N2といったバッファガス分子との衝突を抑制することによって、基底状態に戻ってくる。光の波長および偏光が選択されて、ある基底状態の副準位が選択的に減少させられ、他の副準位が副準位間の原子の通常のほぼ均一な分布に比べて過密となることを保証する。これらの副準位間での共鳴遷移(または共振)は、マイクロ波によって調べられることができる。また、参照することにより本願に含まれるW.E.ベルとA.L.ブルーム,Phys.Rev.Lett.6,280(1961)で最初にベルとブルームによって指摘されたように、ボーアの共振周波数で光を調節すること(コヒーレントポピュレーショントラッピング(Coherent Population Trapping)またはCPTとして現在知られている方法)によって同一の共振を発生させることは可能である。共振によって導かれるアルカリ金属原子の基底状態の変化は、蒸気の透明度の変化を引き起こし、したがって、異なる量の光が蒸気を通過して、励起ビームの透過率を測定する光検出器またはビームから散乱する蛍光を測定する光検出器に入る。マイクロ波によって生成される印加磁場が原子のボーア周波数のうちの一つと等しい周波数で振動するとき、基底状態の副準位の個体数(populations)は不安定となって、蒸気の透明度は変化する。マイクロ波の代わりに変調光(CPT)による励起が使用される場合、光変調周波数またはその高調波のうちの一つが原子のボーア周波数のうちの一つと一致するとき、基底状態の副準位の密着した(coherent)重畳状態が引き起こされる。時計または磁力計をアルカリ金属原子のボーア周波数に固定するために、蒸気の透明度における変化は使用される。
【0004】
ガス電池原子時計のボーア周波数は、アルカリ金属原子の電子スピンSおよび核スピンIが互いに対してかつ外部磁場に対してすりこぎ運動をする(precess)周波数νである。基底状態のために、すりこぎ運動(precession)は磁気相互作用に起因する。おおよその時計周波数は、87Rbに対してν=6.835GHzであり、133Csに対してν=9.193GHzである。通常、方位量子数(azimuthal quantum number)m=0かつ全角運動量量子数(total angular momentum quantum number)F=I+1/2である上位のエネルギー準位と、同様に方位量子数m=0であるけれども全角運動量量子数F=I−1/2である下位のエネルギー準位との間での遷移である“0−0”共振を時計は使用している。
【0005】
通常、CPT共振を発生させるために、(図1Aに示される)原子の共鳴線D1またはD2に近い波長を有する周波数変調(FM)または位相変調(PM)された光ポンピング光(optical−pumping light)が使用される。光は、図1Bに示される0−0共振周波数ν0の半分に近いマイクロ波周波数νに調節される。振幅変調および搬送周波数(carrier frequency)が選択されて、CPT信号のために側波帯スペクトルを最適化する。蒸気の時間平均透明度は、ν=ν0/2のとき増加する。このCPT共振の半値全幅は、1kHz未満であることができる。0−0CPT共振の振幅はあまり大きくなく、1%未満を単位として時間平均透過率が増加することをたびたび意味する。0−0共振の周波数ν0は、磁場への非常に弱い二次依存を有し、したがって、時計を安定させるために磁場のある程度の制御が必要とされる。
【0006】
図1Aにおいて、原子エネルギー準位および光学遷移が光励起原子時計のために示される。87Rbについて説明されるアルカリ金属原子の基底状態は、フェルミ接触相互作用によって、量子数S=1/2の電子スピンと量子数I=3/2の核スピンとの間で超微細副準位に分割される。87Rbの基底状態副準位の広範な図表が図1Bに示される。超微細分割は、全角運動量量子数F=I+S=2の副準位のエネルギーをF=I−S=1のそれから分離する。同じFただし異なる方位量子数mを有する副準位エネルギーは、磁場によって互いに相対的にシフトされる。一定の回転偏光(circular polarization)のD1共鳴光でアルカリ金属原子を励起することは、回転偏光のベクトルの方向(右または左)に応じて、基底状態の個体数分布(population distribution)を最大または最小mの端部状態(end states)の方に至らせる。スピン交換衝突が支配的なスピン緩和機構である、すなわち、高バッファガス圧力の高密度蒸気に対して、図1Bの縦棒によって説明されるものと同様のスピン温度個体数分布が形成される。より低いバッファガス圧力とより遅いスピン交換率に対して、分布は定性的に類似しているけれども詳細において異なる。図1Bに図示されるように、端部状態の個体数の増加は、周波数νmおよびνzでの非常に大きなマイクロ波およびゼーマン端部共鳴信号をもたらす。しかしながら、端部状態の個体数の増加は0−0共振の初期および最終状態の原子をほとんど残さないので、ν0での0−0共鳴信号は非常に小さい。
【0007】
周波数変調光によって励起されて調べられた0−0共振は、D.E.ニコノフその他、Quantum Opt.6,245(1994)に記載のとおり、数百トール(torr)を上回るバッファガス圧力で実際的に使用するには、小さくなり過ぎることが分かっている。2つの同調回路のQs(品質係数)の減少がFMラジオまたはテレビジョン受信機の位相シフト識別器の性能を悪化させることとほぼ同じように、かつ類似の理由によって、光吸収線の広がりは、周波数変調光で生成されるCPT信号を悪化させる。また、端部状態への個体数の集中および0−0共振の抑制は、一定の回転偏光の非変調光で励起(pumping)がなされるときに生じ、それは、マイクロ波によって、または、0−0周波数の半分であるν0/2で周波数変調された円偏光(circularly polarized light)で共振が発生されるかどうかとは無関係である。
【0008】
従来のCPT原子時計システムは、一定の偏光の変調光を使用している。一定の回転偏光の光がν0/2で周波数変調される代わりに周波数ν0で強度変調される場合、バッファガス圧力の増加にともなって0−0CPT共振のより少ない悪化が生じることが分かっている。
【0009】
87Rbに対する強度変調された右円偏光(RCP)によって生成される個体数分布およびCPT共振のモデリング演算が図2A−Cに示される。RCP D1励起光の強度変調パターンは図2Aに示される。基底状態の副準位間の原子の個体数の分布が図2Bに示される。円偏光は、最大方位スピン量子数mの端部状態に向かって、かつ共振に関与するm=0状態から離れる向きに原子を励起する。図2Cは、極性を与えられていない原子(unpolarized atom)に対する横断面図(crosssection)σ0に対して正規化された、原子の時間平均吸収横断面図
【0010】
【数1】
【0011】
(以下、σbarと称する。σbarはσの上に−)における計算されたCPT共振を示す。ω0=2πν0の共振周波数からの変調周波数ωの離調ω−ω0は、S−減衰率Γsdに正規化される。バッファガス圧力は、FMまたはPM CPTを著しく悪化させるのに十分な高さであると仮定される。完全に極性を与えられていない原子の吸収横断面図σ0を単位にしてプロットされる時間平均横断面図σbarにおける小さな減少として、強度変調光を伴うCPT共振がかろうじて見えることが示される。図2A−Cのモデリング演算のために、平均光ポンピング率Γopが使用されたが、それはガスにおけるスピンのS−減衰率Γsdの3倍、すなわち、Γop=3Γsdであった。アルカリ金属原子の障壁(walls)への拡散に起因する小さい付加的なスピン損失がΓd=0.01Γsdの割合で発生すると仮定された。RCP光の瞬間的なポンピング率は、p=2でR=Γop(2pp!)2[2(2p)!]−1cos2pπν0tの時間依存を有すると仮定された。類似の時間依存を伴う任意の強度変調形式は、比較されうる結果を生じさせる。
【0012】
非常に高いバッファガス圧力で一定の回転偏光のパルス光を伴うCPT信号は、低圧で周波数変調光を伴うCPT信号とほぼ同じ振幅を有する。両方の場合において、図2Bに示されるように、小さな信号振幅は端部状態への大部分の原子の集積に起因する。光励起に起因する0−0CPT信号の抑制は、J.バニエ、M.W.リバイン、D.ヤンセン、およびM.デレーニー,Phys.Rev.A67,065801(2003)において議論されている。
【0013】
アルカリ金属蒸気における0−0コヒーレントポピュラリティトラッピング(CPT)共振の強度を増加するための方法およびシステムを提供することが望ましい。
【発明の開示】
【0014】
政府援助による研究の声明
本研究は、空軍局科学研究F49620−01−1−0297によって支援された。したがって、政府は本発明において特定の権利を有する。
【0015】
出願書類の相互参照
本出願は、2004年2月18日に出願された暫定的な米国仮出願第60/545359号に関し、優先権を主張するものであり、その開示は参照することにより全体として本書に含まれる。
【0016】
発明の概要
本発明は、原子の配置において(at the location of the atoms)外部印加磁場の方向に沿って向いていることと逆らって向いていることとを超微細共振周波数で交互に繰り返すまたは交互に繰り返す要素を有する光子スピンにより特徴付けられるD1光で励起することによって、0−0コヒーレントポピュレーショントラッピング(CPT)共振の強度を増加させる方法および装置を提供する。本方法は、プッシュプルポンピングと称される。一実施形態は、0−0超微細共振周波数で、右円偏光(RCP)と左円偏光(LCP)の状態、より一般的には、右楕円偏光(REP)と左楕円偏光(LEP)の状態を交互に繰り返すD1光を伴うポンピングを含む。別の実施形態は、原子の超微細周波数によってビームの光周波数が各々異なる一定の互いに直交する直線偏光の2以上のビームを結合することによって生成される光を伴うポンピングを含む。さらに別の実施形態において、交互偏光(alternating polarization)の光は、一定の回転偏光の2つの逆伝搬ビームによって生成される。原子の配置で2つのビームによって生成される局所的な光子スピンベクトルが超微細周波数でその方向が交替するように、両方のビームは原子の超微細周波数で振幅または周波数変調される。本発明のシステムの一実施形態において、アルカリ金属蒸気は、(適当な共振周波数で)強度変調された交互回転偏光のD1レーザ光で励起され、その結果、コヒーレントポピュレーショントラッピング(CPT)共振を提供し、それは、アルカリ金属蒸気の平均透過率(transmission)における増加として観察されることができる。あるいは、変調周期の半分T=1/(2ν0)だけRCP光に対して強度変調LCP光がシフトされる(または遅らされる)ように、交互偏光のポンピング光は、RCP光およびLCP光の散在されるビームによって生成されることができる。
【0017】
図面の簡単な説明
本発明は、以下の図面を参照することによりさらに十分に説明される。
【0018】
図1Aは、87Rbのようなアルカリ金属原子の基底状態および最初の2つの光励起された状態の概略図である。
【0019】
図1Bは、基底状態副準位および一定の回転偏光の変調光での光ポンピングによって生成される副準位個体数の概略図である。
【0020】
図2Aは、右円偏光された(RCP)D1ポンピング光の光変調パターンの概略図である。
【0021】
図2Bは、図2Aの光変調パターンに対する基底状態副準位間の原子個体数分布の概略図である。
【0022】
図2Cは、図2Aの光変調パターンに対する完全に極性を与えられていない原子の吸収横断面図σ0を単位にしてプロットされる時間平均吸収横断面図σbarにおいて演算されたCPT共振の概略図である。
【0023】
図3は、本発明の内容に基づいて原子時計または磁力計を動かす方法のフローチャートである。
【0024】
図4Aは、交互偏光のD1ポンピング光の要素である強度変調された右回転偏光(RCP)および左回転偏光(LCP)の光変調パターンの概略図である。
【0025】
図4Bは、個体数分布の概略図である。
【0026】
図4Cは、交互偏光での2波ポンピングを使用することによって低バッファガス圧力でのCPT共振の増大の演算である。
【0027】
図5は、低バッファガス圧力での交互偏光の光での2波プッシュプルポンピングを受けている核スピンI=1/2を伴う仮想原子のエネルギー準位図である。
【0028】
図6Aは、交互偏光のD1ポンピング光の要素である強度変調された右回転偏光(RCP)および左回転偏光(LCP)の(p=2でR=Γop(2pp!)2[2(2p)!]−1cos2pπν0tによって与えられる)光変調パターンの概略図である。
【0029】
図6Bは、図6Aの光変調パターンに対する高ガス圧力での基底状態副準位間の原子個体数分布の概略図である。
【0030】
図6Cは、図5Aの光変調パターンに対する完全に極性を与えられていない原子の吸収横断面図σ0を単位にしてプロットされる時間平均吸収横断面図σbarにおいて演算された高ガス圧力でのCPT共振の概略図である。
【0031】
図7Aは、変調周期よりもずっと短い光パルスを有する交互偏光のD1ポンピング光の要素である強度変調された右円偏光(RCP)および左円偏光(LCP)の光変調パターンの概略図である。
【0032】
図7Bは、図7Aの光変調パターンに対する高ガス圧力での基底状態副準位間の原子個体数分布の概略図である。
【0033】
図7Cは、図7Aの光変調パターンに対する完全に極性を与えられていない原子の吸収横断面図σ0を単位にしてプロットされる時間平均吸収横断面図σbarにおいて演算された高ガス圧力での促進されたCPT共振の概略図である。
【0034】
図8は、原子時計または磁力計を動かすためのシステムの一つの可能な実施形態の概略図である。
【0035】
図9は、図8のシステムで生成される交互偏光の光によって励起される0−0CPT共振の測定された信号増大のプロットである。
【0036】
詳細な説明
添付の図面において一例が説明される本発明の好ましい実施形態について、これからより詳細に言及される。可能な限り、同じ参照番号が図面および説明の全体にわたって使用されて同じまたは類似の部分を参照する。
【0037】
図3は、本発明の内容に基づいて原子時計または磁力計10を動かす方法のフローチャートである。ブロック11において、電子−核超微細相互作用によって基底状態が分割された原子が気相または原子ビーム(atomic beam)状態で生成される。原子蒸気は、窒素もしくは任意の希ガスまたはそれらの混合体といった1種または複数種のバッファガスと混合されることができる。原子の配置での量子化方向を定義するために弱い外部磁場が必要とされる。アルカリ金属原子の基底状態の副準位にラベルを付けるために量子数Fおよびmが使用される。ここで、Fは、原子の電子と核を合わせた全スピンの量子数であり、mは、磁場の方向に沿った全スピンの見積もりである方位量子数である。Fの可能な値は、F=I+1/2=aまたはF=I−1/2=bであり、mの可能な値は、m=F,F−1,F−2,…−Fである。
【0038】
ブロック12において、アルカリ金属蒸気におけるコヒーレントポピュレーショントラッピング(CPT)0−0共振を発生させるために、基底状態のアルカリ金属原子は交互偏光の光で光励起される。交互偏光の光は、原子の配置において原子の超微細周波数でその方向が交替するスピンを有する光子を提供する。原子の配置において、その電場ベクトルまたはいくつかの構成成分が磁場方向に対して垂直な平面における時計回り回転と反時計回り回転を原子の超微細周波数で交互に繰り返す光場として、本発明の範囲内で交互偏光の光は定義される。一実施形態において、原子と相互作用する光の偏光は、磁気右円偏光(mRCP)から磁気左円偏光(mLCP)に交替する。mRCP光は、吸収された光子が原子の方位角運動量を(ディラック定数(エイチバー)を単位にして)1だけ増やすことができるように、平均光子スピンを磁場の方向に沿って向かわせる光として定義される。mLCPは、吸収された光子が原子の方位角運動量を(ディラック定数を単位にして)1だけ減らすことができるように、平均光子スピンを磁場の方向に逆行性に向かわせる光として定義される。磁場方向に逆行性に伝播している光ビームのために、mRCPおよびmLCPの定義は、一般的に使用されるRCPおよびLCPの定義とそれぞれ等しい。しかしながら、磁場方向に沿って伝播している光ビームのために、mRCPはLCPと等しく、mLCPはRCPと等しい。一実施形態において、0−0共振の周波数と等しい繰返し周波数で右偏光(RCP)光を強度または周波数変調することによって、そして、それをRCP光に対して繰返し周期の半整数倍(half−integer multiple)だけシフトまたは遅れさせた同様に変調された左円偏光(LCP)光と合成することによって、ブロック12は実行される。あるいは、交互偏光の光は、ビームの光周波数が原子の超微細周波数だけ互いに異なる相互に垂直な直線偏光の2つのビームを合成することによって生成される。あるいは、交互偏光の光は、光伝搬に対して垂直な平面における時計回り回転と反時計回り回転を原子の超微細周波数で交互に繰り返す電場ベクトルを原子の配置で生成する2つの逆伝搬ビームによって生成される。あるいは、交互偏光の光は、各スペクトル線が直線偏光されていて近接線の偏光が相互に直交する原子の超微細周波数だけ周波数の間隔が等しくあけられるスペクトル線の系によって生成される。あるいは、交互偏光の光は、原子の超微細周期の半整数倍だけ右円偏光に対してシフトまたは遅らされた左円偏光の正弦波強度包絡線(envelope)と合成された右円偏光の正弦波強度包絡線を生成することによって生成される。
【0039】
ブロック14において、アルカリ金属蒸気を通り抜ける光の透過率の検出が測定される。たとえば、受光素子が使用されることができて、アルカリ金属蒸気およびバッファガスを含んでいるガラスセルを通り抜ける光の透過率を測定する。あるいは、アルカリ金属蒸気の蛍光が測定される。あるいは、原子ビームにおけるアルカリ金属原子の原子状態が、標準方法を使用して分析される。方法10は、ガス電池原子時計、原子ビーム時計、原子泉時計、および磁力計の性能を向上させるために使用されることができる。
【0040】
図4A−Cは、低ガス圧力で交互偏光の強度変調光で励起された87Rbに対する個体数の分布および0−0CPT共振の詳細なモデリング演算を例示する。ここで、低ガス圧力は、基底状態の超微細分割よりずっと小さい光学的プレッシャーブロードニング(optical pressure broadening)によって定義される。強度変調RCP光およびLCP光の光変調パターンは、図4Aに示される。低圧管理体制(regime)において、アルカリ金属原子は、2つのコヒーレント光周波数と相互に作用することのみできる。それゆえに、0−0CPT共振を強化するために、正弦関数的な交互回転偏光を有するポンピング光を使用することは十分なことである。それは、2波プッシュプルポンピングと称されることができる。光ポンピング率が全ての緩和率を占める高光出力の範囲において、低圧管理体制における2波プッシュプルポンピングが、100%の原子をm=0状態、0−0共振の初期および最終状態に集中させることができることを演算は示す。
【0041】
図5は、核スピンI=1/2を有する仮想原子のエネルギー準位図を使用することによって2波プッシュプルポンピングを説明する。2波プッシュプルポンピングは、2つのΛ(ラムダ)−ポンピングスキームと等しい。2つのΛ遷移は反対の回転偏光を有するけれども、それらの間には超微細周期の半分に等しい時間遅れが存在する。信号のコントラストを最適化するために、超微細周波数によって分離された2つの基底状態の多重線を励起状態に結合する等しい強度の2つのポンピング波が使用されるべきである。仮に2波の強度が異なれば、原子はm=0の状態に依然として供給されることができるけれども、2つのm=0の状態の相対的な個体数は異なる。この場合、ポンピング光は、右楕円偏光と左楕円偏光の状態を交互に繰り返す。
【0042】
図6A−Cは、高ガス圧力で交互回転偏光の強度変調光で励起される87Rbに対する個体数の分布および0−0CPT共振の詳細なモデリング演算を例示する。ここで、高ガス圧力は、基底状態の超微細分割よりずっと大きい光学的プレッシャーブロードニングによって定義される。強度変調RCP光およびLCP光の光変調パターンは、図6Aに示される。時間平均された光出力が図2A−Cと同じであるように設定される。光子の時間平均されたスピンはゼロであるので、どちらの端部状態へも原子を送り出す傾向はなく、それどころか、図6Bに示されるように、0−0遷移の初期および最終状態に原子が蓄積する傾向がある。一定の回転偏光および図2Cに示されるものと同じ平均強度の光でのポンピングと比較して、CPT信号は図6Cで約40倍に強められる。光の変調周波数が共振から外れる場合、(図2A−Cに示される)一定の回転偏光を伴う0−0CPTと比較して、(交互回転偏光を伴う)本発明の方法10では光の透過率が小さい。光ポンピングがない場合、時間平均された光子吸収横断面図σbarは、極性が与えられていない原子の横断面図σ0に等しい。共振での時間平均横断面図の減少は、図2A−Cに示される一定の回転偏光を伴うCPTに対するよりも図6A−Cに示される交互回転偏光を伴うCPTに対して約10から約100倍大きい。
【0043】
代わりの実施形態において、ブロック12は、変調周期T=1/ν0の半分よりも小さいパルス幅を有するRCP光およびLCP光の光パルスで励起することによって実行される。短パルスポンピングの効果を得るために、短パルスの周期的な列(periodic train)の光周波数側波帯の大部分を原子が吸収することができるように、バッファガスによる光学線の広がり(optical line broadening)は十分大きくなければならないことが分かっている。
【0044】
本実施形態において、アルカリ金属蒸気のセルは、0−0超微細周波数ν0よりもずっと大きい光吸収線幅を生じさせるのに十分な非常に高いガス圧力を有する。
【0045】
図7A−Cは、変調周期の半分よりもずっと短いけれども、図6Aおよび2Aに示されるものと同じ平均光強度を有する光パルスでのポンピングを示す。光学線は、変調光の側波帯の全てを原子が吸収することができるように、十分に圧力により広げられている(pressure−broadened)と仮定される。また、0−0遷移の初期および最終状態におけるより高い個体数の集中は、スピン交換線幅の広がりの適度な抑制を引き起こし、それによって、図7Bおよび7Cに示されるように、高いアルカリ金属蒸気の密度でのいくらか狭いCPT共鳴信号を提供する。図7Cに示されるCPT信号は、一定の回転偏光および図2Cに示されるものと同じ平均強度の光でのポンピングと比較して、約120倍に強められる。理論上は、γop/π>>ν0のように、光吸収の非常に広い線幅γopを引き起こすのにバッファガス圧力が十分高い場合、我々は、T0が超微細周期1/ν0である
【0046】
【数2】
【0047】
に最適化された光パルスの一時的な幅を計算することができる。γop/π〜ν0の超微細分割周波数に相当する光学線の拡大を引き起こすバッファガス圧力で、原子時計または磁力計の性能を最適化する変調波形の形状を計算することが可能である。
【0048】
図4A−Cのモデリング演算は、図2A−Cにおいて使用されるΓop=3ΓsdおよびΓd=0.01Γsdと同じポンピングおよび緩和条件を伴う低圧力管理体制のCPT信号を示す。RCP光の瞬間的なポンピング率は、p=1でR=Γop(2pp!)2[2(2p)!]−1cos2pπν0tの時間依存を有すると仮定された。LCP光の瞬間的なポンピング速度Lは、遅れることなく変調周期Tの半分だけシフトされたことを除いては、RCP光のそれと同一、すなわち、L(t)=R(t−T/2)であった。
【0049】
図6A−Cおよび7A−Cのモデリング演算は、図2A−Cにおいて使用されるΓop=3ΓsdおよびΓd=0.01Γsdと同じポンピングおよび緩和条件を伴う高圧力管理体制のCPT信号を示す。RCP光の瞬間的なポンピング率は、図6A−Cに対してはp=2であり図7A−Cに対してはp=17であるR=Γop(2pp!)2[2(2p)!]−1cos2pπν0tの時間依存を有すると仮定された。LCP光の瞬間的なポンピング率Lは、遅れることなく変調周期Tの半分だけシフトされたことを除いては、RCP光のそれと同一、すなわち、L(t)=R(t−T/2)であった。
【0050】
一の特定の実施形態において、交互回転偏光の光は、右円偏光(RCP)光と左回転偏光(LCP)光の合流ビーム(merged beams)によって提供される。LCP光の強度ピークがRCP光のそれに変調周期の半分1/2ν0の差で続くように、各ビームは0−0超微細周波数ν0で強度変調される。あるいは、LCP光の周波数の最大値(frequency maxima)がRCP光のそれに変調周期の半分1/2ν0の差で続くように、各ビームは0−0超微細周波数の半分ν0/2で周波数変調される。1または複数の搬送周波数は調整されて、光のコヒーレント側波帯が、0−0共振の上側および下側の副準位の両方から励起状態の同じ1または複数のゼーマン多重線を発生させることができることを保証する。本実施形態は、光吸収線の0−0分割がよく分解されて残る十分低いガス圧力を伴う原子ビーム、原子泉、またはガス電池に対して有用である。
【0051】
図8は、本発明の内容に基づいて原子時計20を動かすためのシステムの概略図である。システム20は、光変調ユニット22およびCPT信号検出ユニット24を備える。光変調ユニット22において、87RbのD1線に調整されたダイオードレーザシステム25によってほぼ単色光23が生成されて、偏波保持(PM)光ファイバ26に放たれる。PMファイバ26は、強度変調器27の入力に結合する。たとえば、強度変調器27は、市販用のマッハツェンダ変調器であることができる。強度変調器27において、光23は、デジタルマイクロ波シンセサイザ28からのマイクロ波信号によって振幅変調される。
【0052】
強度変調器27からの出力は、PM光ファイバ29に連結し、出力カプラ30によって平行にされて平行ビームになる。
【0053】
交互回転偏光を得るために、光線31は分割されて2つの異なる経路に沿って送り出される。各経路の光は、適当な光学素子を用いることによって、RCPまたはLCPのどちらかに独立して偏光される。一実施形態において、1つの経路のサブビームは、直線偏光を垂直から水平に変えるλ/4位相遅延板32を2回通過する。ミラー33の可調変位は、2つのサブビームのうちの1つに超微細周期の半分の遅れを導入する。たとえば、87Rbに対して、0−0共振周波数はν00=6.84GHzかつマイクロ波の波長はλ00=4.39cmであり、したがって、λ/4=1.1cmのミラー33の変位は、一のビームの強度ピークを他のピークに対して超微細周期の半分だけシフトさせる。現在、直線偏光の直交状態にある出力ビームは合成されて、励起光線が右回転偏光と左回転偏光の状態を交互に繰り返すことを保証するために導入される第2λ/4板34を通過される。一般的に、一の光路は他よりも(n+1/2)Λだけ長くなることができ、ここでΛ=c/ν0はマイクロ波の波長であって、n=0,±1,…は整数である。時計周期の半分の遅れは、直線偏光器およびミラーを用いることによって経路間で導入されることができる。交互回転偏光39の単一ビームとして現れるように、ビームは再結合される。
【0054】
交互回転偏光の変調されたビーム39は、87Rb蒸気およびバッファガスを含んでいるCPT信号検出ユニット24のセル40に送られる。セル40は、活性媒体を含む。たとえば、セル40は、セシウム(Cs)またはルビジウム(Rb)蒸気と1または複数のバッファガスを含むことができる。セル40は、オーブン42によって加熱される。セル40内部の磁場は、一つ以上のコイル対44によって制御されることができる。たとえば、3つのコイル対44の組が、磁場を制御するために使用されることができる。セル40を通る光の透過率は、光検出器46によって測定される。アルカリ蒸気の共振周波数を通って変調周波数がゆっくりと捜索される(swept)とき、CPT信号は観察される。
【0055】
図9は、図8の装置で生成される交互回転偏光の光によって励起された0−0CPT共振50の測定と、同様に、従来の一定の回転偏光を有する同じ平均強度の強度変調光によって励起された0−0CPT共振52の測定を示す。
【0056】
(超微細周波数の半分である周波数νmod=ν0/2での)変調出力の強度、マッハツェンダ変調器27の2つのアームの静電電圧バイアス、およびレーザ搬送周波数は、CPT信号を最大にするために調整された。セル40は、1大気圧の室温圧力で、同位体濃縮された87Rbおよび窒素バッファガスを含んでいた。変調周波数νmodは、共振の5kHz下方から5kHz上方まで捜索された。蒸気の平均透明度は共振で増加し、その増加は、一定の回転偏光52の光に対するよりも交互回転偏光50の光に対する方が42.5倍大きかった。
【0057】
2cmの光路を伴うセルから75℃で得られる信号は、変調周波数が共振から十分に外れるときの透過率である“ベースライン”を引いたセルの時間平均透過率である。信号は蒸気の透過率に比例するので、それは、図2A−C、4A−C、6A−C、および7A−Cにプロットされる時間平均吸収横断面図と反対の符号を有する。共振“コントラスト”は、ベースラインに対する信号の比率として定義される。実験的に観察された0−0共振振幅は、図8のシステム20で生成される交互回転偏光の光で原子が励起された場合、一定の回転偏光の強度変調光で励起された場合よりも42.5倍大きい。共振は、ほとんど同じ平均出力の光によって生成された。
【0058】
上記の実施形態は、本発明の原理の用途を示すことができる多くの可能な具体的な実施形態のほんのわずかを例証するものであることは理解されることである。本発明の精神および範囲から逸脱することなく、これらの原理にしたがって、当業者によって多数のかつ多様な他の処理が容易に考案されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1A】87Rbのようなアルカリ金属原子の基底状態および最初の2つの光励起された状態の概略図である。
【図1B】基底状態副準位および一定の回転偏光の変調光での光ポンピングによって生成される副準位個体数の概略図である。
【図2A】右円偏光された(RCP)D1ポンピング光の光変調パターンの概略図である。
【図2B】図2Aの光変調パターンに対する基底状態副準位間の原子個体数分布の概略図である。
【図2C】図2Aの光変調パターンに対する完全に極性を与えられていない原子の吸収横断面図σ0を単位にしてプロットされる時間平均吸収横断面図σbarにおいて演算されたCPT共振の概略図である。
【図3】本発明の内容に基づいて原子時計または磁力計を動かす方法のフローチャートである。
【図4A】交互偏光のD1ポンピング光の要素である強度変調された右回転偏光(RCP)および左回転偏光(LCP)の光変調パターンの概略図である。
【図4B】個体数分布の概略図である。
【図4C】交互偏光での2波ポンピングを使用することによって低バッファガス圧力でのCPT共振の増大の演算である。
【図5】低バッファガス圧力での交互偏光の光での2波プッシュプルポンピングを受けている核スピンI=1/2を伴う仮想原子のエネルギー準位図である。
【図6A】交互偏光のD1ポンピング光の要素である強度変調された右回転偏光(RCP)および左回転偏光(LCP)の(p=2でR=Γop(2pp!)2[2(2p)!]−1cos2pπν0tによって与えられる)光変調パターンの概略図である。
【図6B】図6Aの光変調パターンに対する高ガス圧力での基底状態副準位間の原子個体数分布の概略図である。
【図6C】図5Aの光変調パターンに対する完全に極性を与えられていない原子の吸収横断面図σ0を単位にしてプロットされる時間平均吸収横断面図σbarにおいて演算された高ガス圧力でのCPT共振の概略図である。
【図7A】変調周期よりもずっと短い光パルスを有する交互偏光のD1ポンピング光の要素である強度変調された右円偏光(RCP)および左円偏光(LCP)の光変調パターンの概略図である。
【図7B】図7Aの光変調パターンに対する高ガス圧力での基底状態副準位間の原子個体数分布の概略図である。
【図7C】図7Aの光変調パターンに対する完全に極性を与えられていない原子の吸収横断面図σ0を単位にしてプロットされる時間平均吸収横断面図σbarにおいて演算された高ガス圧力での促進されたCPT共振の概略図である。
【図8】原子時計または磁力計を動かすためのシステムの一つの可能な実施形態の概略図である。
【図9】図8のシステムで生成される交互偏光の光によって励起される0−0CPT共振の測定された信号増大のプロットである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光励起された原子時計または磁力計の技術分野に関し、特に、プッシュプルポンピング(push−pull pumping)と称される交互偏光(alternating polarization)の光を用いる0−0コヒーレントポピュレーショントラッピング(CPT)共振を調べることによって動作する原子時計または磁力計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のガス電池(gas−cell)原子時計は、光励起されたアルカリ金属の蒸気を利用する。原子時計は、極めて正確な周波数測定を要求する様々なシステムにおいて利用される。たとえば、原子時計は、GPS(グローバル位置決定システム)衛星ならびに他のナビゲーションおよび測位システムのみならず、携帯電話システム、無線通信、科学実験、および軍事用途において使用される。ある種の原子共鳴は磁場に対して高感度であるため、原子時計の設計に類似する設計はまた磁力計として利用される。
【0003】
原子時計の一形式において、ルビジウムまたはセシウム蒸気といった活性媒体を含むセルは、光およびマイクロ波出力(power)の両方が照射される。セルは、大気圧の何分の1かの圧力でアルカリ金属および不活性バッファガス(たとえば、N2、任意の希ガス、またはそれらの混合体)の数滴の液滴を含む。光源からの光は、アルカリ金属蒸気の原子を基底状態から光学的に励起された状態に励起し、そこから原子は蛍光を放出することによって、または、N2といったバッファガス分子との衝突を抑制することによって、基底状態に戻ってくる。光の波長および偏光が選択されて、ある基底状態の副準位が選択的に減少させられ、他の副準位が副準位間の原子の通常のほぼ均一な分布に比べて過密となることを保証する。これらの副準位間での共鳴遷移(または共振)は、マイクロ波によって調べられることができる。また、参照することにより本願に含まれるW.E.ベルとA.L.ブルーム,Phys.Rev.Lett.6,280(1961)で最初にベルとブルームによって指摘されたように、ボーアの共振周波数で光を調節すること(コヒーレントポピュレーショントラッピング(Coherent Population Trapping)またはCPTとして現在知られている方法)によって同一の共振を発生させることは可能である。共振によって導かれるアルカリ金属原子の基底状態の変化は、蒸気の透明度の変化を引き起こし、したがって、異なる量の光が蒸気を通過して、励起ビームの透過率を測定する光検出器またはビームから散乱する蛍光を測定する光検出器に入る。マイクロ波によって生成される印加磁場が原子のボーア周波数のうちの一つと等しい周波数で振動するとき、基底状態の副準位の個体数(populations)は不安定となって、蒸気の透明度は変化する。マイクロ波の代わりに変調光(CPT)による励起が使用される場合、光変調周波数またはその高調波のうちの一つが原子のボーア周波数のうちの一つと一致するとき、基底状態の副準位の密着した(coherent)重畳状態が引き起こされる。時計または磁力計をアルカリ金属原子のボーア周波数に固定するために、蒸気の透明度における変化は使用される。
【0004】
ガス電池原子時計のボーア周波数は、アルカリ金属原子の電子スピンSおよび核スピンIが互いに対してかつ外部磁場に対してすりこぎ運動をする(precess)周波数νである。基底状態のために、すりこぎ運動(precession)は磁気相互作用に起因する。おおよその時計周波数は、87Rbに対してν=6.835GHzであり、133Csに対してν=9.193GHzである。通常、方位量子数(azimuthal quantum number)m=0かつ全角運動量量子数(total angular momentum quantum number)F=I+1/2である上位のエネルギー準位と、同様に方位量子数m=0であるけれども全角運動量量子数F=I−1/2である下位のエネルギー準位との間での遷移である“0−0”共振を時計は使用している。
【0005】
通常、CPT共振を発生させるために、(図1Aに示される)原子の共鳴線D1またはD2に近い波長を有する周波数変調(FM)または位相変調(PM)された光ポンピング光(optical−pumping light)が使用される。光は、図1Bに示される0−0共振周波数ν0の半分に近いマイクロ波周波数νに調節される。振幅変調および搬送周波数(carrier frequency)が選択されて、CPT信号のために側波帯スペクトルを最適化する。蒸気の時間平均透明度は、ν=ν0/2のとき増加する。このCPT共振の半値全幅は、1kHz未満であることができる。0−0CPT共振の振幅はあまり大きくなく、1%未満を単位として時間平均透過率が増加することをたびたび意味する。0−0共振の周波数ν0は、磁場への非常に弱い二次依存を有し、したがって、時計を安定させるために磁場のある程度の制御が必要とされる。
【0006】
図1Aにおいて、原子エネルギー準位および光学遷移が光励起原子時計のために示される。87Rbについて説明されるアルカリ金属原子の基底状態は、フェルミ接触相互作用によって、量子数S=1/2の電子スピンと量子数I=3/2の核スピンとの間で超微細副準位に分割される。87Rbの基底状態副準位の広範な図表が図1Bに示される。超微細分割は、全角運動量量子数F=I+S=2の副準位のエネルギーをF=I−S=1のそれから分離する。同じFただし異なる方位量子数mを有する副準位エネルギーは、磁場によって互いに相対的にシフトされる。一定の回転偏光(circular polarization)のD1共鳴光でアルカリ金属原子を励起することは、回転偏光のベクトルの方向(右または左)に応じて、基底状態の個体数分布(population distribution)を最大または最小mの端部状態(end states)の方に至らせる。スピン交換衝突が支配的なスピン緩和機構である、すなわち、高バッファガス圧力の高密度蒸気に対して、図1Bの縦棒によって説明されるものと同様のスピン温度個体数分布が形成される。より低いバッファガス圧力とより遅いスピン交換率に対して、分布は定性的に類似しているけれども詳細において異なる。図1Bに図示されるように、端部状態の個体数の増加は、周波数νmおよびνzでの非常に大きなマイクロ波およびゼーマン端部共鳴信号をもたらす。しかしながら、端部状態の個体数の増加は0−0共振の初期および最終状態の原子をほとんど残さないので、ν0での0−0共鳴信号は非常に小さい。
【0007】
周波数変調光によって励起されて調べられた0−0共振は、D.E.ニコノフその他、Quantum Opt.6,245(1994)に記載のとおり、数百トール(torr)を上回るバッファガス圧力で実際的に使用するには、小さくなり過ぎることが分かっている。2つの同調回路のQs(品質係数)の減少がFMラジオまたはテレビジョン受信機の位相シフト識別器の性能を悪化させることとほぼ同じように、かつ類似の理由によって、光吸収線の広がりは、周波数変調光で生成されるCPT信号を悪化させる。また、端部状態への個体数の集中および0−0共振の抑制は、一定の回転偏光の非変調光で励起(pumping)がなされるときに生じ、それは、マイクロ波によって、または、0−0周波数の半分であるν0/2で周波数変調された円偏光(circularly polarized light)で共振が発生されるかどうかとは無関係である。
【0008】
従来のCPT原子時計システムは、一定の偏光の変調光を使用している。一定の回転偏光の光がν0/2で周波数変調される代わりに周波数ν0で強度変調される場合、バッファガス圧力の増加にともなって0−0CPT共振のより少ない悪化が生じることが分かっている。
【0009】
87Rbに対する強度変調された右円偏光(RCP)によって生成される個体数分布およびCPT共振のモデリング演算が図2A−Cに示される。RCP D1励起光の強度変調パターンは図2Aに示される。基底状態の副準位間の原子の個体数の分布が図2Bに示される。円偏光は、最大方位スピン量子数mの端部状態に向かって、かつ共振に関与するm=0状態から離れる向きに原子を励起する。図2Cは、極性を与えられていない原子(unpolarized atom)に対する横断面図(crosssection)σ0に対して正規化された、原子の時間平均吸収横断面図
【0010】
【数1】
【0011】
(以下、σbarと称する。σbarはσの上に−)における計算されたCPT共振を示す。ω0=2πν0の共振周波数からの変調周波数ωの離調ω−ω0は、S−減衰率Γsdに正規化される。バッファガス圧力は、FMまたはPM CPTを著しく悪化させるのに十分な高さであると仮定される。完全に極性を与えられていない原子の吸収横断面図σ0を単位にしてプロットされる時間平均横断面図σbarにおける小さな減少として、強度変調光を伴うCPT共振がかろうじて見えることが示される。図2A−Cのモデリング演算のために、平均光ポンピング率Γopが使用されたが、それはガスにおけるスピンのS−減衰率Γsdの3倍、すなわち、Γop=3Γsdであった。アルカリ金属原子の障壁(walls)への拡散に起因する小さい付加的なスピン損失がΓd=0.01Γsdの割合で発生すると仮定された。RCP光の瞬間的なポンピング率は、p=2でR=Γop(2pp!)2[2(2p)!]−1cos2pπν0tの時間依存を有すると仮定された。類似の時間依存を伴う任意の強度変調形式は、比較されうる結果を生じさせる。
【0012】
非常に高いバッファガス圧力で一定の回転偏光のパルス光を伴うCPT信号は、低圧で周波数変調光を伴うCPT信号とほぼ同じ振幅を有する。両方の場合において、図2Bに示されるように、小さな信号振幅は端部状態への大部分の原子の集積に起因する。光励起に起因する0−0CPT信号の抑制は、J.バニエ、M.W.リバイン、D.ヤンセン、およびM.デレーニー,Phys.Rev.A67,065801(2003)において議論されている。
【0013】
アルカリ金属蒸気における0−0コヒーレントポピュラリティトラッピング(CPT)共振の強度を増加するための方法およびシステムを提供することが望ましい。
【発明の開示】
【0014】
政府援助による研究の声明
本研究は、空軍局科学研究F49620−01−1−0297によって支援された。したがって、政府は本発明において特定の権利を有する。
【0015】
出願書類の相互参照
本出願は、2004年2月18日に出願された暫定的な米国仮出願第60/545359号に関し、優先権を主張するものであり、その開示は参照することにより全体として本書に含まれる。
【0016】
発明の概要
本発明は、原子の配置において(at the location of the atoms)外部印加磁場の方向に沿って向いていることと逆らって向いていることとを超微細共振周波数で交互に繰り返すまたは交互に繰り返す要素を有する光子スピンにより特徴付けられるD1光で励起することによって、0−0コヒーレントポピュレーショントラッピング(CPT)共振の強度を増加させる方法および装置を提供する。本方法は、プッシュプルポンピングと称される。一実施形態は、0−0超微細共振周波数で、右円偏光(RCP)と左円偏光(LCP)の状態、より一般的には、右楕円偏光(REP)と左楕円偏光(LEP)の状態を交互に繰り返すD1光を伴うポンピングを含む。別の実施形態は、原子の超微細周波数によってビームの光周波数が各々異なる一定の互いに直交する直線偏光の2以上のビームを結合することによって生成される光を伴うポンピングを含む。さらに別の実施形態において、交互偏光(alternating polarization)の光は、一定の回転偏光の2つの逆伝搬ビームによって生成される。原子の配置で2つのビームによって生成される局所的な光子スピンベクトルが超微細周波数でその方向が交替するように、両方のビームは原子の超微細周波数で振幅または周波数変調される。本発明のシステムの一実施形態において、アルカリ金属蒸気は、(適当な共振周波数で)強度変調された交互回転偏光のD1レーザ光で励起され、その結果、コヒーレントポピュレーショントラッピング(CPT)共振を提供し、それは、アルカリ金属蒸気の平均透過率(transmission)における増加として観察されることができる。あるいは、変調周期の半分T=1/(2ν0)だけRCP光に対して強度変調LCP光がシフトされる(または遅らされる)ように、交互偏光のポンピング光は、RCP光およびLCP光の散在されるビームによって生成されることができる。
【0017】
図面の簡単な説明
本発明は、以下の図面を参照することによりさらに十分に説明される。
【0018】
図1Aは、87Rbのようなアルカリ金属原子の基底状態および最初の2つの光励起された状態の概略図である。
【0019】
図1Bは、基底状態副準位および一定の回転偏光の変調光での光ポンピングによって生成される副準位個体数の概略図である。
【0020】
図2Aは、右円偏光された(RCP)D1ポンピング光の光変調パターンの概略図である。
【0021】
図2Bは、図2Aの光変調パターンに対する基底状態副準位間の原子個体数分布の概略図である。
【0022】
図2Cは、図2Aの光変調パターンに対する完全に極性を与えられていない原子の吸収横断面図σ0を単位にしてプロットされる時間平均吸収横断面図σbarにおいて演算されたCPT共振の概略図である。
【0023】
図3は、本発明の内容に基づいて原子時計または磁力計を動かす方法のフローチャートである。
【0024】
図4Aは、交互偏光のD1ポンピング光の要素である強度変調された右回転偏光(RCP)および左回転偏光(LCP)の光変調パターンの概略図である。
【0025】
図4Bは、個体数分布の概略図である。
【0026】
図4Cは、交互偏光での2波ポンピングを使用することによって低バッファガス圧力でのCPT共振の増大の演算である。
【0027】
図5は、低バッファガス圧力での交互偏光の光での2波プッシュプルポンピングを受けている核スピンI=1/2を伴う仮想原子のエネルギー準位図である。
【0028】
図6Aは、交互偏光のD1ポンピング光の要素である強度変調された右回転偏光(RCP)および左回転偏光(LCP)の(p=2でR=Γop(2pp!)2[2(2p)!]−1cos2pπν0tによって与えられる)光変調パターンの概略図である。
【0029】
図6Bは、図6Aの光変調パターンに対する高ガス圧力での基底状態副準位間の原子個体数分布の概略図である。
【0030】
図6Cは、図5Aの光変調パターンに対する完全に極性を与えられていない原子の吸収横断面図σ0を単位にしてプロットされる時間平均吸収横断面図σbarにおいて演算された高ガス圧力でのCPT共振の概略図である。
【0031】
図7Aは、変調周期よりもずっと短い光パルスを有する交互偏光のD1ポンピング光の要素である強度変調された右円偏光(RCP)および左円偏光(LCP)の光変調パターンの概略図である。
【0032】
図7Bは、図7Aの光変調パターンに対する高ガス圧力での基底状態副準位間の原子個体数分布の概略図である。
【0033】
図7Cは、図7Aの光変調パターンに対する完全に極性を与えられていない原子の吸収横断面図σ0を単位にしてプロットされる時間平均吸収横断面図σbarにおいて演算された高ガス圧力での促進されたCPT共振の概略図である。
【0034】
図8は、原子時計または磁力計を動かすためのシステムの一つの可能な実施形態の概略図である。
【0035】
図9は、図8のシステムで生成される交互偏光の光によって励起される0−0CPT共振の測定された信号増大のプロットである。
【0036】
詳細な説明
添付の図面において一例が説明される本発明の好ましい実施形態について、これからより詳細に言及される。可能な限り、同じ参照番号が図面および説明の全体にわたって使用されて同じまたは類似の部分を参照する。
【0037】
図3は、本発明の内容に基づいて原子時計または磁力計10を動かす方法のフローチャートである。ブロック11において、電子−核超微細相互作用によって基底状態が分割された原子が気相または原子ビーム(atomic beam)状態で生成される。原子蒸気は、窒素もしくは任意の希ガスまたはそれらの混合体といった1種または複数種のバッファガスと混合されることができる。原子の配置での量子化方向を定義するために弱い外部磁場が必要とされる。アルカリ金属原子の基底状態の副準位にラベルを付けるために量子数Fおよびmが使用される。ここで、Fは、原子の電子と核を合わせた全スピンの量子数であり、mは、磁場の方向に沿った全スピンの見積もりである方位量子数である。Fの可能な値は、F=I+1/2=aまたはF=I−1/2=bであり、mの可能な値は、m=F,F−1,F−2,…−Fである。
【0038】
ブロック12において、アルカリ金属蒸気におけるコヒーレントポピュレーショントラッピング(CPT)0−0共振を発生させるために、基底状態のアルカリ金属原子は交互偏光の光で光励起される。交互偏光の光は、原子の配置において原子の超微細周波数でその方向が交替するスピンを有する光子を提供する。原子の配置において、その電場ベクトルまたはいくつかの構成成分が磁場方向に対して垂直な平面における時計回り回転と反時計回り回転を原子の超微細周波数で交互に繰り返す光場として、本発明の範囲内で交互偏光の光は定義される。一実施形態において、原子と相互作用する光の偏光は、磁気右円偏光(mRCP)から磁気左円偏光(mLCP)に交替する。mRCP光は、吸収された光子が原子の方位角運動量を(ディラック定数(エイチバー)を単位にして)1だけ増やすことができるように、平均光子スピンを磁場の方向に沿って向かわせる光として定義される。mLCPは、吸収された光子が原子の方位角運動量を(ディラック定数を単位にして)1だけ減らすことができるように、平均光子スピンを磁場の方向に逆行性に向かわせる光として定義される。磁場方向に逆行性に伝播している光ビームのために、mRCPおよびmLCPの定義は、一般的に使用されるRCPおよびLCPの定義とそれぞれ等しい。しかしながら、磁場方向に沿って伝播している光ビームのために、mRCPはLCPと等しく、mLCPはRCPと等しい。一実施形態において、0−0共振の周波数と等しい繰返し周波数で右偏光(RCP)光を強度または周波数変調することによって、そして、それをRCP光に対して繰返し周期の半整数倍(half−integer multiple)だけシフトまたは遅れさせた同様に変調された左円偏光(LCP)光と合成することによって、ブロック12は実行される。あるいは、交互偏光の光は、ビームの光周波数が原子の超微細周波数だけ互いに異なる相互に垂直な直線偏光の2つのビームを合成することによって生成される。あるいは、交互偏光の光は、光伝搬に対して垂直な平面における時計回り回転と反時計回り回転を原子の超微細周波数で交互に繰り返す電場ベクトルを原子の配置で生成する2つの逆伝搬ビームによって生成される。あるいは、交互偏光の光は、各スペクトル線が直線偏光されていて近接線の偏光が相互に直交する原子の超微細周波数だけ周波数の間隔が等しくあけられるスペクトル線の系によって生成される。あるいは、交互偏光の光は、原子の超微細周期の半整数倍だけ右円偏光に対してシフトまたは遅らされた左円偏光の正弦波強度包絡線(envelope)と合成された右円偏光の正弦波強度包絡線を生成することによって生成される。
【0039】
ブロック14において、アルカリ金属蒸気を通り抜ける光の透過率の検出が測定される。たとえば、受光素子が使用されることができて、アルカリ金属蒸気およびバッファガスを含んでいるガラスセルを通り抜ける光の透過率を測定する。あるいは、アルカリ金属蒸気の蛍光が測定される。あるいは、原子ビームにおけるアルカリ金属原子の原子状態が、標準方法を使用して分析される。方法10は、ガス電池原子時計、原子ビーム時計、原子泉時計、および磁力計の性能を向上させるために使用されることができる。
【0040】
図4A−Cは、低ガス圧力で交互偏光の強度変調光で励起された87Rbに対する個体数の分布および0−0CPT共振の詳細なモデリング演算を例示する。ここで、低ガス圧力は、基底状態の超微細分割よりずっと小さい光学的プレッシャーブロードニング(optical pressure broadening)によって定義される。強度変調RCP光およびLCP光の光変調パターンは、図4Aに示される。低圧管理体制(regime)において、アルカリ金属原子は、2つのコヒーレント光周波数と相互に作用することのみできる。それゆえに、0−0CPT共振を強化するために、正弦関数的な交互回転偏光を有するポンピング光を使用することは十分なことである。それは、2波プッシュプルポンピングと称されることができる。光ポンピング率が全ての緩和率を占める高光出力の範囲において、低圧管理体制における2波プッシュプルポンピングが、100%の原子をm=0状態、0−0共振の初期および最終状態に集中させることができることを演算は示す。
【0041】
図5は、核スピンI=1/2を有する仮想原子のエネルギー準位図を使用することによって2波プッシュプルポンピングを説明する。2波プッシュプルポンピングは、2つのΛ(ラムダ)−ポンピングスキームと等しい。2つのΛ遷移は反対の回転偏光を有するけれども、それらの間には超微細周期の半分に等しい時間遅れが存在する。信号のコントラストを最適化するために、超微細周波数によって分離された2つの基底状態の多重線を励起状態に結合する等しい強度の2つのポンピング波が使用されるべきである。仮に2波の強度が異なれば、原子はm=0の状態に依然として供給されることができるけれども、2つのm=0の状態の相対的な個体数は異なる。この場合、ポンピング光は、右楕円偏光と左楕円偏光の状態を交互に繰り返す。
【0042】
図6A−Cは、高ガス圧力で交互回転偏光の強度変調光で励起される87Rbに対する個体数の分布および0−0CPT共振の詳細なモデリング演算を例示する。ここで、高ガス圧力は、基底状態の超微細分割よりずっと大きい光学的プレッシャーブロードニングによって定義される。強度変調RCP光およびLCP光の光変調パターンは、図6Aに示される。時間平均された光出力が図2A−Cと同じであるように設定される。光子の時間平均されたスピンはゼロであるので、どちらの端部状態へも原子を送り出す傾向はなく、それどころか、図6Bに示されるように、0−0遷移の初期および最終状態に原子が蓄積する傾向がある。一定の回転偏光および図2Cに示されるものと同じ平均強度の光でのポンピングと比較して、CPT信号は図6Cで約40倍に強められる。光の変調周波数が共振から外れる場合、(図2A−Cに示される)一定の回転偏光を伴う0−0CPTと比較して、(交互回転偏光を伴う)本発明の方法10では光の透過率が小さい。光ポンピングがない場合、時間平均された光子吸収横断面図σbarは、極性が与えられていない原子の横断面図σ0に等しい。共振での時間平均横断面図の減少は、図2A−Cに示される一定の回転偏光を伴うCPTに対するよりも図6A−Cに示される交互回転偏光を伴うCPTに対して約10から約100倍大きい。
【0043】
代わりの実施形態において、ブロック12は、変調周期T=1/ν0の半分よりも小さいパルス幅を有するRCP光およびLCP光の光パルスで励起することによって実行される。短パルスポンピングの効果を得るために、短パルスの周期的な列(periodic train)の光周波数側波帯の大部分を原子が吸収することができるように、バッファガスによる光学線の広がり(optical line broadening)は十分大きくなければならないことが分かっている。
【0044】
本実施形態において、アルカリ金属蒸気のセルは、0−0超微細周波数ν0よりもずっと大きい光吸収線幅を生じさせるのに十分な非常に高いガス圧力を有する。
【0045】
図7A−Cは、変調周期の半分よりもずっと短いけれども、図6Aおよび2Aに示されるものと同じ平均光強度を有する光パルスでのポンピングを示す。光学線は、変調光の側波帯の全てを原子が吸収することができるように、十分に圧力により広げられている(pressure−broadened)と仮定される。また、0−0遷移の初期および最終状態におけるより高い個体数の集中は、スピン交換線幅の広がりの適度な抑制を引き起こし、それによって、図7Bおよび7Cに示されるように、高いアルカリ金属蒸気の密度でのいくらか狭いCPT共鳴信号を提供する。図7Cに示されるCPT信号は、一定の回転偏光および図2Cに示されるものと同じ平均強度の光でのポンピングと比較して、約120倍に強められる。理論上は、γop/π>>ν0のように、光吸収の非常に広い線幅γopを引き起こすのにバッファガス圧力が十分高い場合、我々は、T0が超微細周期1/ν0である
【0046】
【数2】
【0047】
に最適化された光パルスの一時的な幅を計算することができる。γop/π〜ν0の超微細分割周波数に相当する光学線の拡大を引き起こすバッファガス圧力で、原子時計または磁力計の性能を最適化する変調波形の形状を計算することが可能である。
【0048】
図4A−Cのモデリング演算は、図2A−Cにおいて使用されるΓop=3ΓsdおよびΓd=0.01Γsdと同じポンピングおよび緩和条件を伴う低圧力管理体制のCPT信号を示す。RCP光の瞬間的なポンピング率は、p=1でR=Γop(2pp!)2[2(2p)!]−1cos2pπν0tの時間依存を有すると仮定された。LCP光の瞬間的なポンピング速度Lは、遅れることなく変調周期Tの半分だけシフトされたことを除いては、RCP光のそれと同一、すなわち、L(t)=R(t−T/2)であった。
【0049】
図6A−Cおよび7A−Cのモデリング演算は、図2A−Cにおいて使用されるΓop=3ΓsdおよびΓd=0.01Γsdと同じポンピングおよび緩和条件を伴う高圧力管理体制のCPT信号を示す。RCP光の瞬間的なポンピング率は、図6A−Cに対してはp=2であり図7A−Cに対してはp=17であるR=Γop(2pp!)2[2(2p)!]−1cos2pπν0tの時間依存を有すると仮定された。LCP光の瞬間的なポンピング率Lは、遅れることなく変調周期Tの半分だけシフトされたことを除いては、RCP光のそれと同一、すなわち、L(t)=R(t−T/2)であった。
【0050】
一の特定の実施形態において、交互回転偏光の光は、右円偏光(RCP)光と左回転偏光(LCP)光の合流ビーム(merged beams)によって提供される。LCP光の強度ピークがRCP光のそれに変調周期の半分1/2ν0の差で続くように、各ビームは0−0超微細周波数ν0で強度変調される。あるいは、LCP光の周波数の最大値(frequency maxima)がRCP光のそれに変調周期の半分1/2ν0の差で続くように、各ビームは0−0超微細周波数の半分ν0/2で周波数変調される。1または複数の搬送周波数は調整されて、光のコヒーレント側波帯が、0−0共振の上側および下側の副準位の両方から励起状態の同じ1または複数のゼーマン多重線を発生させることができることを保証する。本実施形態は、光吸収線の0−0分割がよく分解されて残る十分低いガス圧力を伴う原子ビーム、原子泉、またはガス電池に対して有用である。
【0051】
図8は、本発明の内容に基づいて原子時計20を動かすためのシステムの概略図である。システム20は、光変調ユニット22およびCPT信号検出ユニット24を備える。光変調ユニット22において、87RbのD1線に調整されたダイオードレーザシステム25によってほぼ単色光23が生成されて、偏波保持(PM)光ファイバ26に放たれる。PMファイバ26は、強度変調器27の入力に結合する。たとえば、強度変調器27は、市販用のマッハツェンダ変調器であることができる。強度変調器27において、光23は、デジタルマイクロ波シンセサイザ28からのマイクロ波信号によって振幅変調される。
【0052】
強度変調器27からの出力は、PM光ファイバ29に連結し、出力カプラ30によって平行にされて平行ビームになる。
【0053】
交互回転偏光を得るために、光線31は分割されて2つの異なる経路に沿って送り出される。各経路の光は、適当な光学素子を用いることによって、RCPまたはLCPのどちらかに独立して偏光される。一実施形態において、1つの経路のサブビームは、直線偏光を垂直から水平に変えるλ/4位相遅延板32を2回通過する。ミラー33の可調変位は、2つのサブビームのうちの1つに超微細周期の半分の遅れを導入する。たとえば、87Rbに対して、0−0共振周波数はν00=6.84GHzかつマイクロ波の波長はλ00=4.39cmであり、したがって、λ/4=1.1cmのミラー33の変位は、一のビームの強度ピークを他のピークに対して超微細周期の半分だけシフトさせる。現在、直線偏光の直交状態にある出力ビームは合成されて、励起光線が右回転偏光と左回転偏光の状態を交互に繰り返すことを保証するために導入される第2λ/4板34を通過される。一般的に、一の光路は他よりも(n+1/2)Λだけ長くなることができ、ここでΛ=c/ν0はマイクロ波の波長であって、n=0,±1,…は整数である。時計周期の半分の遅れは、直線偏光器およびミラーを用いることによって経路間で導入されることができる。交互回転偏光39の単一ビームとして現れるように、ビームは再結合される。
【0054】
交互回転偏光の変調されたビーム39は、87Rb蒸気およびバッファガスを含んでいるCPT信号検出ユニット24のセル40に送られる。セル40は、活性媒体を含む。たとえば、セル40は、セシウム(Cs)またはルビジウム(Rb)蒸気と1または複数のバッファガスを含むことができる。セル40は、オーブン42によって加熱される。セル40内部の磁場は、一つ以上のコイル対44によって制御されることができる。たとえば、3つのコイル対44の組が、磁場を制御するために使用されることができる。セル40を通る光の透過率は、光検出器46によって測定される。アルカリ蒸気の共振周波数を通って変調周波数がゆっくりと捜索される(swept)とき、CPT信号は観察される。
【0055】
図9は、図8の装置で生成される交互回転偏光の光によって励起された0−0CPT共振50の測定と、同様に、従来の一定の回転偏光を有する同じ平均強度の強度変調光によって励起された0−0CPT共振52の測定を示す。
【0056】
(超微細周波数の半分である周波数νmod=ν0/2での)変調出力の強度、マッハツェンダ変調器27の2つのアームの静電電圧バイアス、およびレーザ搬送周波数は、CPT信号を最大にするために調整された。セル40は、1大気圧の室温圧力で、同位体濃縮された87Rbおよび窒素バッファガスを含んでいた。変調周波数νmodは、共振の5kHz下方から5kHz上方まで捜索された。蒸気の平均透明度は共振で増加し、その増加は、一定の回転偏光52の光に対するよりも交互回転偏光50の光に対する方が42.5倍大きかった。
【0057】
2cmの光路を伴うセルから75℃で得られる信号は、変調周波数が共振から十分に外れるときの透過率である“ベースライン”を引いたセルの時間平均透過率である。信号は蒸気の透過率に比例するので、それは、図2A−C、4A−C、6A−C、および7A−Cにプロットされる時間平均吸収横断面図と反対の符号を有する。共振“コントラスト”は、ベースラインに対する信号の比率として定義される。実験的に観察された0−0共振振幅は、図8のシステム20で生成される交互回転偏光の光で原子が励起された場合、一定の回転偏光の強度変調光で励起された場合よりも42.5倍大きい。共振は、ほとんど同じ平均出力の光によって生成された。
【0058】
上記の実施形態は、本発明の原理の用途を示すことができる多くの可能な具体的な実施形態のほんのわずかを例証するものであることは理解されることである。本発明の精神および範囲から逸脱することなく、これらの原理にしたがって、当業者によって多数のかつ多様な他の処理が容易に考案されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1A】87Rbのようなアルカリ金属原子の基底状態および最初の2つの光励起された状態の概略図である。
【図1B】基底状態副準位および一定の回転偏光の変調光での光ポンピングによって生成される副準位個体数の概略図である。
【図2A】右円偏光された(RCP)D1ポンピング光の光変調パターンの概略図である。
【図2B】図2Aの光変調パターンに対する基底状態副準位間の原子個体数分布の概略図である。
【図2C】図2Aの光変調パターンに対する完全に極性を与えられていない原子の吸収横断面図σ0を単位にしてプロットされる時間平均吸収横断面図σbarにおいて演算されたCPT共振の概略図である。
【図3】本発明の内容に基づいて原子時計または磁力計を動かす方法のフローチャートである。
【図4A】交互偏光のD1ポンピング光の要素である強度変調された右回転偏光(RCP)および左回転偏光(LCP)の光変調パターンの概略図である。
【図4B】個体数分布の概略図である。
【図4C】交互偏光での2波ポンピングを使用することによって低バッファガス圧力でのCPT共振の増大の演算である。
【図5】低バッファガス圧力での交互偏光の光での2波プッシュプルポンピングを受けている核スピンI=1/2を伴う仮想原子のエネルギー準位図である。
【図6A】交互偏光のD1ポンピング光の要素である強度変調された右回転偏光(RCP)および左回転偏光(LCP)の(p=2でR=Γop(2pp!)2[2(2p)!]−1cos2pπν0tによって与えられる)光変調パターンの概略図である。
【図6B】図6Aの光変調パターンに対する高ガス圧力での基底状態副準位間の原子個体数分布の概略図である。
【図6C】図5Aの光変調パターンに対する完全に極性を与えられていない原子の吸収横断面図σ0を単位にしてプロットされる時間平均吸収横断面図σbarにおいて演算された高ガス圧力でのCPT共振の概略図である。
【図7A】変調周期よりもずっと短い光パルスを有する交互偏光のD1ポンピング光の要素である強度変調された右円偏光(RCP)および左円偏光(LCP)の光変調パターンの概略図である。
【図7B】図7Aの光変調パターンに対する高ガス圧力での基底状態副準位間の原子個体数分布の概略図である。
【図7C】図7Aの光変調パターンに対する完全に極性を与えられていない原子の吸収横断面図σ0を単位にしてプロットされる時間平均吸収横断面図σbarにおいて演算された高ガス圧力での促進されたCPT共振の概略図である。
【図8】原子時計または磁力計を動かすためのシステムの一つの可能な実施形態の概略図である。
【図9】図8のシステムで生成される交互偏光の光によって励起される0−0CPT共振の測定された信号増大のプロットである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弱い外部磁場の領域の範囲内で気相または原子ビームの原子を発生させる段階と、原子の配置において原子の超微細周波数で方向が交替する光子スピンによって特徴付けられる交互偏光の光で励起することによって、原子の超微細遷移を発生させる段階と、を含む原子時計を動かすための方法。
【請求項2】
原子と相互に作用している光の偏光は、右回転偏光と左回転偏光の状態を原子の超微細周波数で交互に繰り返す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
交互偏光の光は、原子の超微細周期の半整数倍だけ右円偏光に対してシフトまたは遅らされた同様に変調された左円偏光(LCP)と組み合わされた右円偏光(RCP)の強度または周波数変調によって生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
交互偏光の光は、相互に垂直な直線偏光の2つのビームを組み合わせることによって生成され、前記ビームの光周波数は原子の超微細周波数だけ異なる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
交互偏光の光は、原子の配置で磁場方向に対して垂直な平面において時計回りの回転と反時計回りの回転を原子の超微細周波数で交互に繰り返す電場ベクトルまたはその要素を生成する2つの逆伝搬ビームによって生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
交互偏光の光は、周波数において原子の超微細周波数だけ等しく間隔があけられたスペクトル線の系によって生成され、各スペクトル線は線形に偏光されており、隣接した線の偏光は相互に直交する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
交互偏光の光は、右円偏光に対して原子の超微細周期の半整数倍だけシフトまたは遅らされた左円偏光の正弦波強度包絡線と結合された右円偏光の正弦波強度包絡線を生成することによって生成され、光と相互に作用している原子は、基底状態超微細分割周波数ν00未満の光学的プレッシャーブロードニングを引き起こしているバッファガスと混ぜ合わされる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
交互偏光の光は、左円偏光のパルスが組み入れられている右円偏光の強度のパルスを生成することによって生成され、前記パルスは超微細変調周期の半分未満またはおよそ半分のパルス幅を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
交互偏光の光は、右円偏光の第1ビームと左円偏光の第2ビームとの合流ビームの形状をしており、前記第1ビームおよび前記第2ビームは、変調周期の半分の差をつけて、左円偏光の強度ピークが右円偏光の強度ピークに続くように、原子の超微細周波数で強度変調される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
交互偏光の光は、右円偏光の第1ビームと左円偏光の第2ビームとの合流ビームの形状をしており、前記第1ビームおよび前記第2ビームは、原子の超微細周期の半分の差をつけて、左円偏光の周波数の最大値が右円偏光の周波数の最大値に続くように、原子の超微細周波数の半分で周波数変調される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
交互偏光の光は、
変調またはパルス光ビームを第1経路と第2経路に分割する段階と、
第1経路の光を右円偏光に偏光させる段階と、
第2経路の光を左円偏光に偏光させる段階と、
第1経路の右円偏光と第2経路の左円偏光との間に超微細周期の半整数倍の遅れを導入する段階と、
第1経路と第2経路を再結合する段階と、によって生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
交互偏光の光は、原子時計の性能を最適化するために形成された1または複数の波形パターンを伴う前記光のソースを調節することによって生成される、または、前記光のソースを調節することによって生成されるビームからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
原子を含む媒体を通り抜ける交互偏光の光の透過率を検出する段階をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
交互偏光の光によって励起される原子の蛍光を検出する段階をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
交互偏光の光で照射される原子ビームのアルカリ金属原子の原子状態を分析する段階をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
原子がルビジウム原子またはセシウム原子である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
弱い外部磁場の領域の範囲内で気相または原子ビームの原子を発生させる手段と、
原子の配置において原子の超微細周波数で方向が交替する光子スピンによって特徴付けられる交互偏光の光で励起することによって、原子の超微細遷移を発生させる手段と、
を含む、原子時計を動かすためのシステム。
【請求項18】
原子と相互に作用している光の偏光は、右回転偏光と左回転偏光の状態を原子の超微細周波数で交互に繰り返す、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
交互偏光の光は、原子の超微細周期の半整数倍だけ右円偏光に対してシフトまたは遅らされた同様に変調された左円偏光(LCP)と組み合わされた右円偏光(RCP)の強度または周波数変調によって生成される、請求項17に記載のシステム。
【請求項20】
交互偏光の光は、相互に垂直な直線偏光の2つのビームを組み合わせることによって生成され、前記ビームの光周波数は原子の超微細周波数だけ異なる、請求項17に記載のシステム。
【請求項21】
交互偏光の光は、原子の配置で磁場方向に対して垂直な平面において時計回りの回転と反時計回りの回転を原子の超微細周波数で交互に繰り返す電場ベクトルまたはその要素を生成する2つの逆伝搬ビームによって生成される、請求項17に記載のシステム。
【請求項22】
交互偏光の光は、周波数において原子の超微細周波数だけ等しく間隔があけられたスペクトル線の系によって生成され、各スペクトル線は線形に偏光されており、隣接した線の偏光は相互に直交する、請求項17に記載のシステム。
【請求項23】
交互偏光の光は、右円偏光に対して原子の超微細周期の半整数倍だけシフトまたは遅らされた左円偏光の正弦波強度包絡線と結合された右円偏光の正弦波強度包絡線を生成する手段によって生成され、光と相互に作用している原子は、基底状態超微細分割周波数ν00未満の光学的プレッシャーブロードニングを引き起こしているバッファガスと混ぜ合わされる、請求項17に記載のシステム。
【請求項24】
交互偏光の光は、左円偏光のパルスが組み入れられている右円偏光の強度のパルスを生成する手段によって生成され、前記パルスは超微細変調周期の半分未満またはおよそ半分のパルス幅を有する、請求項17に記載のシステム。
【請求項25】
交互偏光の光は、右円偏光の第1ビームと左円偏光の第2ビームとの合流ビームの形状をしており、前記第1ビームおよび前記第2ビームは、変調周期の半分の差をつけて、左円偏光の強度ピークが右円偏光の強度ピークに続くように、原子の超微細周波数で強度変調される、請求項17に記載のシステム。
【請求項26】
交互偏光の光は、右円偏光の第1ビームと左円偏光の第2ビームとの合流ビームの形状をしており、前記第1ビームおよび前記第2ビームは、原子の超微細周期の半分の差をつけて、左円偏光の周波数の最大値が右円偏光の周波数の最大値に続くように、原子の超微細周波数の半分で周波数変調される、請求項17に記載のシステム。
【請求項27】
交互偏光の光は、
変調またはパルス光ビームを第1経路と第2経路に分割する手段と、
第1経路の光を右円偏光に偏光させる手段と、
第2経路の光を左円偏光に偏光させる手段と、
第1経路の右円偏光と第2経路の左円偏光との間に超微細周期の半整数倍の遅れを導入する手段と、
第1経路と第2経路を再結合する手段と、によって生成される、請求項17に記載のシステム。
【請求項28】
交互偏光の光は、原子時計の性能を最適化するために形成された1または複数の波形パターンを伴う前記光のソースを調節することによって生成される、または、前記光のソースを調節することによって生成されるビームからなる、請求項17に記載のシステム。
【請求項29】
原子を含む媒体を通り抜ける交互偏光の光の遷移を検出する手段をさらに含む、請求項17に記載のシステム。
【請求項30】
交互偏光の光によって励起される原子の蛍光を検出する手段をさらに含む、請求項17に記載のシステム。
【請求項31】
交互偏光の光で照射される原子ビームのアルカリ金属原子の原子状態を分析する手段をさらに含む、請求項17に記載のシステム。
【請求項32】
原子がルビジウム原子またはセシウム原子である、請求項17に記載のシステム。
【請求項33】
アルカリ金属蒸気のセルと、
前記セルに交互偏光の光を印加して前記蒸気の原子の超微細遷移を発生させる手段と、
を含む、原子時計を動かすためのシステム。
【請求項34】
原子と相互に作用している光の偏光は、右回転偏光と左回転偏光の状態を原子の超微細周波数で交互に繰り返す、請求項33に記載のシステム。
【請求項35】
交互偏光の光は、原子の超微細周期の半整数倍だけ右円偏光に対してシフトまたは遅らされた同様に変調された左円偏光(LCP)と組み合わされた右円偏光(RCP)の強度または周波数変調によって生成される、請求項33に記載のシステム。
【請求項36】
交互偏光の光は、相互に垂直な直線偏光の2つのビームを組み合わせることによって生成され、前記ビームの光周波数は原子の超微細周波数だけ異なる、請求項33に記載のシステム。
【請求項37】
交互偏光の光は、原子の配置で磁場方向に対して垂直な平面において時計回りの回転と反時計回りの回転を原子の超微細周波数で交互に繰り返す電場ベクトルまたはその要素を生成する2つの逆伝搬ビームによって生成される、請求項33に記載のシステム。
【請求項38】
交互偏光の光は、周波数において原子の超微細周波数だけ等しく間隔があけられたスペクトル線の系によって生成され、各スペクトル線は線形に偏光されており、隣接した線の偏光は相互に直交する、請求項33に記載のシステム。
【請求項39】
交互偏光の光は、右円偏光に対して原子の超微細周期の半整数倍だけシフトまたは遅らされた左円偏光の正弦波強度包絡線と結合された右円偏光の正弦波強度包絡線を生成する手段によって生成され、光と相互に作用している原子は、基底状態超微細分割周波数ν00未満の光学的プレッシャーブロードニングを引き起こしているバッファガスと混ぜ合わされる、請求項33に記載のシステム。
【請求項40】
交互偏光の光は、左円偏光のパルスが組み入れられている右円偏光の強度のパルスを生成する手段によって生成され、前記パルスは超微細変調周期の半分未満またはおよそ半分のパルス幅を有する、請求項33に記載のシステム。
【請求項41】
交互偏光の光は、右円偏光の第1ビームと左円偏光の第2ビームとの合流ビームの形状をしており、前記第1ビームおよび前記第2ビームは、変調周期の半分の差をつけて、左円偏光の強度ピークが右円偏光の強度ピークに続くように、原子の超微細周波数で強度変調される、請求項33に記載のシステム。
【請求項42】
交互偏光の光は、右円偏光の第1ビームと左円偏光の第2ビームとの合流ビームの形状をしており、前記第1ビームおよび前記第2ビームは、原子の超微細周期の半分の差をつけて、左円偏光の周波数の最大値が右円偏光の周波数の最大値に続くように、原子の超微細周波数の半分で周波数変調される、請求項33に記載のシステム。
【請求項43】
交互偏光の光は、
変調またはパルス光ビームを第1経路と第2経路に分割する手段と、
第1経路の光を右円偏光に偏光させる手段と、
第2経路の光を左円偏光に偏光させる手段と、
第1経路の右円偏光と第2経路の左円偏光との間に超微細周期の半整数倍の遅れを導入する手段と、
第1経路と第2経路を再結合する手段と、によって生成される、請求項33に記載のシステム。
【請求項44】
原子を含む媒体を通り抜ける交互偏光の光の透過率を検出する手段をさらに含む、請求項33に記載のシステム。
【請求項45】
交互偏光の光によって励起される原子の蛍光を検出する手段をさらに含む、請求項33に記載のシステム。
【請求項46】
交互偏光の光は、原子時計の性能を最適化するために形成された1または複数の波形パターンを伴う前記光のソースを調節することによって生成される、または、前記光のソースを調節することによって生成されるビームからなる、請求項33に記載のシステム。
【請求項47】
原子がルビジウム原子またはセシウム原子である、請求項33に記載のシステム。
【請求項48】
前記セルの内部の磁場を制御する手段をさらに含む、請求項33に記載のシステム。
【請求項49】
前記セルを加熱する手段をさらに含む、請求項33に記載のシステム。
【請求項50】
測定される磁場の領域の範囲内で気相または原子ビームの原子を発生させる段階と、原子の配置において原子の超微細周波数で方向が交替する光子スピンによって特徴付けられる交互回転偏光の光で励起することによって、原子の超微細遷移を発生させる段階と、を含む磁力計を動かすための方法。
【請求項51】
原子と相互に作用している光の偏光は、右回転偏光と左回転偏光の状態を原子の超微細周波数で交互に繰り返す、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
交互偏光の光は、原子の超微細周期の半整数倍だけ右円偏光に対してシフトまたは遅らされた同様に変調された左円偏光(LCP)と組み合わされた右円偏光(RCP)の強度または周波数変調によって生成される、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
交互偏光の光は、相互に垂直な直線偏光の2つのビームを組み合わせることによって生成され、前記ビームの光周波数は原子の超微細周波数だけ異なる、請求項50に記載の方法。
【請求項54】
交互偏光の光は、原子の配置で磁場方向に対して垂直な平面において時計回りの回転と反時計回りの回転を原子の超微細周波数で交互に繰り返す電場ベクトルまたはその要素を生成する2つの逆伝搬ビームによって生成される、請求項50に記載の方法。
【請求項55】
交互偏光の光は、周波数において原子の超微細周波数だけ等しく間隔があけられたスペクトル線の系によって生成され、各スペクトル線は線形に偏光されており、隣接した線の偏光は相互に直交する、請求項50に記載の方法。
【請求項56】
交互偏光の光は、右円偏光に対して原子の超微細周期の半整数倍だけシフトまたは遅らされた左円偏光の正弦波強度包絡線と結合された右円偏光の正弦波強度包絡線を生成することによって生成され、光と相互に作用している原子は、基底状態超微細分割周波数ν00未満の光学的プレッシャーブロードニングを引き起こしているバッファガスと混ぜ合わされる、請求項50に記載の方法。
【請求項57】
交互偏光の光は、左円偏光のパルスが組み入れられている右円偏光の強度のパルスを生成することによって生成され、前記パルスは超微細変調周期の半分未満またはおよそ半分のパルス幅を有する、請求項50に記載の方法。
【請求項58】
交互偏光の光は、右円偏光の第1ビームと左円偏光の第2ビームとの合流ビームの形状をしており、前記第1ビームおよび前記第2ビームは、変調周期の半分の差をつけて、左円偏光の強度ピークが右円偏光の強度ピークに続くように、原子の超微細周波数で強度変調される、請求項50に記載の方法。
【請求項59】
交互偏光の光は、右円偏光の第1ビームと左円偏光の第2ビームとの合流ビームの形状をしており、前記第1ビームおよび前記第2ビームは、原子の超微細周期の半分の差をつけて、左円偏光の周波数の最大値が右円偏光の周波数の最大値に続くように、原子の超微細周波数の半分で周波数変調される、請求項50に記載の方法。
【請求項60】
交互偏光の光は、
変調またはパルス光ビームを第1経路と第2経路に分割する段階と、
第1経路の光を右円偏光に偏光させる段階と、
第2経路の光を左円偏光に偏光させる段階と、
第1経路の右円偏光と第2経路の左円偏光との間に超微細周期の半整数倍の遅れを導入する段階と、
第1経路と第2経路を再結合する段階と、によって生成される、請求項50に記載の方法。
【請求項61】
交互偏光の光は、磁力計の性能を最適化するために形成された1または複数の波形パターンを伴う前記光のソースを調節することによって生成される、または、前記光のソースを調節することによって生成されるビームからなる、請求項50に記載の方法。
【請求項62】
原子を含む媒体を通り抜ける交互偏光の光の透過率を検出する段階をさらに含む、請求項50に記載の方法。
【請求項63】
交互偏光の光によって励起される原子の蛍光を検出する段階をさらに含む、請求項50に記載の方法。
【請求項64】
交互偏光の光で照射される原子ビームのアルカリ金属原子の原子状態を分析する段階をさらに含む、請求項50に記載の方法。
【請求項65】
原子がルビジウム原子またはセシウム原子である、請求項50に記載の方法。
【請求項66】
弱い外部磁場の領域の範囲内で気相または原子ビームの原子を発生させる手段と、
原子の配置において原子の超微細周波数で方向が交替する光子スピンによって特徴付けられる交互偏光の光で励起することによって、原子の超微細遷移を発生させる手段と、
を含む、磁力計を動かすためのシステム。
【請求項67】
原子と相互に作用している光の偏光は、右回転偏光と左回転偏光の状態を原子の超微細周波数で交互に繰り返す、請求項66に記載のシステム。
【請求項68】
交互偏光の光は、原子の超微細周期の半整数倍だけ右円偏光に対してシフトまたは遅らされた同様に変調された左円偏光(LCP)と組み合わされた右円偏光(RCP)の強度または周波数変調によって生成される、請求項66に記載のシステム。
【請求項69】
交互偏光の光は、相互に垂直な直線偏光の2つのビームを組み合わせることによって生成され、前記ビームの光周波数は原子の超微細周波数だけ異なる、請求項66に記載のシステム。
【請求項70】
交互偏光の光は、原子の配置で磁場方向に対して垂直な平面において時計回りの回転と反時計回りの回転を原子の超微細周波数で交互に繰り返す電場ベクトルまたはその要素を生成する2つの逆伝搬ビームによって生成される、請求項66に記載のシステム。
【請求項71】
交互偏光の光は、周波数において原子の超微細周波数だけ等しく間隔があけられたスペクトル線の系によって生成され、各スペクトル線は線形に偏光されており、隣接した線の偏光は相互に直交する、請求項66に記載のシステム。
【請求項72】
交互偏光の光は、右円偏光に対して原子の超微細周期の半整数倍だけシフトまたは遅らされた左円偏光の正弦波強度包絡線と結合された右円偏光の正弦波強度包絡線を生成する手段によって生成され、光と相互に作用している原子は、基底状態超微細分割周波数ν00未満の光学的プレッシャーブロードニングを引き起こしているバッファガスと混ぜ合わされる、請求項66に記載のシステム。
【請求項73】
交互偏光の光は、左円偏光のパルスが組み入れられている右円偏光の強度のパルスを生成する手段によって生成され、前記パルスは超微細変調周期の半分未満またはおよそ半分のパルス幅を有する、請求項66に記載のシステム。
【請求項74】
交互偏光の光は、右円偏光の第1ビームと左円偏光の第2ビームとの合流ビームの形状をしており、前記第1ビームおよび前記第2ビームは、変調周期の半分の差をつけて、左円偏光の強度ピークが右円偏光の強度ピークに続くように、原子の超微細周波数で強度変調される、請求項66に記載のシステム。
【請求項75】
交互偏光の光は、右円偏光の第1ビームと左円偏光の第2ビームとの合流ビームの形状をしており、前記第1ビームおよび前記第2ビームは、原子の超微細周期の半分の差をつけて、左円偏光の周波数の最大値が右円偏光の周波数の最大値に続くように、原子の超微細周波数の半分で周波数変調される、請求項66に記載のシステム。
【請求項76】
交互偏光の光は、
変調またはパルス光ビームを第1経路と第2経路に分割する手段と、
第1経路の光を右円偏光に偏光させる手段と、
第2経路の光を左円偏光に偏光させる手段と、
第1経路の右円偏光と第2経路の左円偏光との間に超微細周期の半整数倍の遅れを導入する手段と、
第1経路と第2経路を再結合する手段と、によって生成される、請求項66に記載のシステム。
【請求項77】
交互偏光の光は、磁力計の性能を最適化するために形成された1または複数の波形パターンを伴う前記光のソースを調節する手段によって生成される、または、前記光のソースを調節することによって生成されるビームからなる、請求項66に記載のシステム。
【請求項78】
原子を含む媒体を通り抜ける交互偏光の光の透過率を検出する手段をさらに含む、請求項66に記載のシステム。
【請求項79】
交互偏光の光によって励起される原子の蛍光を検出する手段をさらに含む、請求項66に記載のシステム。
【請求項80】
交互偏光の光で照射される原子ビームのアルカリ金属原子の原子状態を分析する手段をさらに含む、請求項66に記載のシステム。
【請求項81】
原子がルビジウム原子またはセシウム原子である、請求項66に記載のシステム。
【請求項1】
弱い外部磁場の領域の範囲内で気相または原子ビームの原子を発生させる段階と、原子の配置において原子の超微細周波数で方向が交替する光子スピンによって特徴付けられる交互偏光の光で励起することによって、原子の超微細遷移を発生させる段階と、を含む原子時計を動かすための方法。
【請求項2】
原子と相互に作用している光の偏光は、右回転偏光と左回転偏光の状態を原子の超微細周波数で交互に繰り返す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
交互偏光の光は、原子の超微細周期の半整数倍だけ右円偏光に対してシフトまたは遅らされた同様に変調された左円偏光(LCP)と組み合わされた右円偏光(RCP)の強度または周波数変調によって生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
交互偏光の光は、相互に垂直な直線偏光の2つのビームを組み合わせることによって生成され、前記ビームの光周波数は原子の超微細周波数だけ異なる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
交互偏光の光は、原子の配置で磁場方向に対して垂直な平面において時計回りの回転と反時計回りの回転を原子の超微細周波数で交互に繰り返す電場ベクトルまたはその要素を生成する2つの逆伝搬ビームによって生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
交互偏光の光は、周波数において原子の超微細周波数だけ等しく間隔があけられたスペクトル線の系によって生成され、各スペクトル線は線形に偏光されており、隣接した線の偏光は相互に直交する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
交互偏光の光は、右円偏光に対して原子の超微細周期の半整数倍だけシフトまたは遅らされた左円偏光の正弦波強度包絡線と結合された右円偏光の正弦波強度包絡線を生成することによって生成され、光と相互に作用している原子は、基底状態超微細分割周波数ν00未満の光学的プレッシャーブロードニングを引き起こしているバッファガスと混ぜ合わされる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
交互偏光の光は、左円偏光のパルスが組み入れられている右円偏光の強度のパルスを生成することによって生成され、前記パルスは超微細変調周期の半分未満またはおよそ半分のパルス幅を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
交互偏光の光は、右円偏光の第1ビームと左円偏光の第2ビームとの合流ビームの形状をしており、前記第1ビームおよび前記第2ビームは、変調周期の半分の差をつけて、左円偏光の強度ピークが右円偏光の強度ピークに続くように、原子の超微細周波数で強度変調される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
交互偏光の光は、右円偏光の第1ビームと左円偏光の第2ビームとの合流ビームの形状をしており、前記第1ビームおよび前記第2ビームは、原子の超微細周期の半分の差をつけて、左円偏光の周波数の最大値が右円偏光の周波数の最大値に続くように、原子の超微細周波数の半分で周波数変調される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
交互偏光の光は、
変調またはパルス光ビームを第1経路と第2経路に分割する段階と、
第1経路の光を右円偏光に偏光させる段階と、
第2経路の光を左円偏光に偏光させる段階と、
第1経路の右円偏光と第2経路の左円偏光との間に超微細周期の半整数倍の遅れを導入する段階と、
第1経路と第2経路を再結合する段階と、によって生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
交互偏光の光は、原子時計の性能を最適化するために形成された1または複数の波形パターンを伴う前記光のソースを調節することによって生成される、または、前記光のソースを調節することによって生成されるビームからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
原子を含む媒体を通り抜ける交互偏光の光の透過率を検出する段階をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
交互偏光の光によって励起される原子の蛍光を検出する段階をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
交互偏光の光で照射される原子ビームのアルカリ金属原子の原子状態を分析する段階をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
原子がルビジウム原子またはセシウム原子である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
弱い外部磁場の領域の範囲内で気相または原子ビームの原子を発生させる手段と、
原子の配置において原子の超微細周波数で方向が交替する光子スピンによって特徴付けられる交互偏光の光で励起することによって、原子の超微細遷移を発生させる手段と、
を含む、原子時計を動かすためのシステム。
【請求項18】
原子と相互に作用している光の偏光は、右回転偏光と左回転偏光の状態を原子の超微細周波数で交互に繰り返す、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
交互偏光の光は、原子の超微細周期の半整数倍だけ右円偏光に対してシフトまたは遅らされた同様に変調された左円偏光(LCP)と組み合わされた右円偏光(RCP)の強度または周波数変調によって生成される、請求項17に記載のシステム。
【請求項20】
交互偏光の光は、相互に垂直な直線偏光の2つのビームを組み合わせることによって生成され、前記ビームの光周波数は原子の超微細周波数だけ異なる、請求項17に記載のシステム。
【請求項21】
交互偏光の光は、原子の配置で磁場方向に対して垂直な平面において時計回りの回転と反時計回りの回転を原子の超微細周波数で交互に繰り返す電場ベクトルまたはその要素を生成する2つの逆伝搬ビームによって生成される、請求項17に記載のシステム。
【請求項22】
交互偏光の光は、周波数において原子の超微細周波数だけ等しく間隔があけられたスペクトル線の系によって生成され、各スペクトル線は線形に偏光されており、隣接した線の偏光は相互に直交する、請求項17に記載のシステム。
【請求項23】
交互偏光の光は、右円偏光に対して原子の超微細周期の半整数倍だけシフトまたは遅らされた左円偏光の正弦波強度包絡線と結合された右円偏光の正弦波強度包絡線を生成する手段によって生成され、光と相互に作用している原子は、基底状態超微細分割周波数ν00未満の光学的プレッシャーブロードニングを引き起こしているバッファガスと混ぜ合わされる、請求項17に記載のシステム。
【請求項24】
交互偏光の光は、左円偏光のパルスが組み入れられている右円偏光の強度のパルスを生成する手段によって生成され、前記パルスは超微細変調周期の半分未満またはおよそ半分のパルス幅を有する、請求項17に記載のシステム。
【請求項25】
交互偏光の光は、右円偏光の第1ビームと左円偏光の第2ビームとの合流ビームの形状をしており、前記第1ビームおよび前記第2ビームは、変調周期の半分の差をつけて、左円偏光の強度ピークが右円偏光の強度ピークに続くように、原子の超微細周波数で強度変調される、請求項17に記載のシステム。
【請求項26】
交互偏光の光は、右円偏光の第1ビームと左円偏光の第2ビームとの合流ビームの形状をしており、前記第1ビームおよび前記第2ビームは、原子の超微細周期の半分の差をつけて、左円偏光の周波数の最大値が右円偏光の周波数の最大値に続くように、原子の超微細周波数の半分で周波数変調される、請求項17に記載のシステム。
【請求項27】
交互偏光の光は、
変調またはパルス光ビームを第1経路と第2経路に分割する手段と、
第1経路の光を右円偏光に偏光させる手段と、
第2経路の光を左円偏光に偏光させる手段と、
第1経路の右円偏光と第2経路の左円偏光との間に超微細周期の半整数倍の遅れを導入する手段と、
第1経路と第2経路を再結合する手段と、によって生成される、請求項17に記載のシステム。
【請求項28】
交互偏光の光は、原子時計の性能を最適化するために形成された1または複数の波形パターンを伴う前記光のソースを調節することによって生成される、または、前記光のソースを調節することによって生成されるビームからなる、請求項17に記載のシステム。
【請求項29】
原子を含む媒体を通り抜ける交互偏光の光の遷移を検出する手段をさらに含む、請求項17に記載のシステム。
【請求項30】
交互偏光の光によって励起される原子の蛍光を検出する手段をさらに含む、請求項17に記載のシステム。
【請求項31】
交互偏光の光で照射される原子ビームのアルカリ金属原子の原子状態を分析する手段をさらに含む、請求項17に記載のシステム。
【請求項32】
原子がルビジウム原子またはセシウム原子である、請求項17に記載のシステム。
【請求項33】
アルカリ金属蒸気のセルと、
前記セルに交互偏光の光を印加して前記蒸気の原子の超微細遷移を発生させる手段と、
を含む、原子時計を動かすためのシステム。
【請求項34】
原子と相互に作用している光の偏光は、右回転偏光と左回転偏光の状態を原子の超微細周波数で交互に繰り返す、請求項33に記載のシステム。
【請求項35】
交互偏光の光は、原子の超微細周期の半整数倍だけ右円偏光に対してシフトまたは遅らされた同様に変調された左円偏光(LCP)と組み合わされた右円偏光(RCP)の強度または周波数変調によって生成される、請求項33に記載のシステム。
【請求項36】
交互偏光の光は、相互に垂直な直線偏光の2つのビームを組み合わせることによって生成され、前記ビームの光周波数は原子の超微細周波数だけ異なる、請求項33に記載のシステム。
【請求項37】
交互偏光の光は、原子の配置で磁場方向に対して垂直な平面において時計回りの回転と反時計回りの回転を原子の超微細周波数で交互に繰り返す電場ベクトルまたはその要素を生成する2つの逆伝搬ビームによって生成される、請求項33に記載のシステム。
【請求項38】
交互偏光の光は、周波数において原子の超微細周波数だけ等しく間隔があけられたスペクトル線の系によって生成され、各スペクトル線は線形に偏光されており、隣接した線の偏光は相互に直交する、請求項33に記載のシステム。
【請求項39】
交互偏光の光は、右円偏光に対して原子の超微細周期の半整数倍だけシフトまたは遅らされた左円偏光の正弦波強度包絡線と結合された右円偏光の正弦波強度包絡線を生成する手段によって生成され、光と相互に作用している原子は、基底状態超微細分割周波数ν00未満の光学的プレッシャーブロードニングを引き起こしているバッファガスと混ぜ合わされる、請求項33に記載のシステム。
【請求項40】
交互偏光の光は、左円偏光のパルスが組み入れられている右円偏光の強度のパルスを生成する手段によって生成され、前記パルスは超微細変調周期の半分未満またはおよそ半分のパルス幅を有する、請求項33に記載のシステム。
【請求項41】
交互偏光の光は、右円偏光の第1ビームと左円偏光の第2ビームとの合流ビームの形状をしており、前記第1ビームおよび前記第2ビームは、変調周期の半分の差をつけて、左円偏光の強度ピークが右円偏光の強度ピークに続くように、原子の超微細周波数で強度変調される、請求項33に記載のシステム。
【請求項42】
交互偏光の光は、右円偏光の第1ビームと左円偏光の第2ビームとの合流ビームの形状をしており、前記第1ビームおよび前記第2ビームは、原子の超微細周期の半分の差をつけて、左円偏光の周波数の最大値が右円偏光の周波数の最大値に続くように、原子の超微細周波数の半分で周波数変調される、請求項33に記載のシステム。
【請求項43】
交互偏光の光は、
変調またはパルス光ビームを第1経路と第2経路に分割する手段と、
第1経路の光を右円偏光に偏光させる手段と、
第2経路の光を左円偏光に偏光させる手段と、
第1経路の右円偏光と第2経路の左円偏光との間に超微細周期の半整数倍の遅れを導入する手段と、
第1経路と第2経路を再結合する手段と、によって生成される、請求項33に記載のシステム。
【請求項44】
原子を含む媒体を通り抜ける交互偏光の光の透過率を検出する手段をさらに含む、請求項33に記載のシステム。
【請求項45】
交互偏光の光によって励起される原子の蛍光を検出する手段をさらに含む、請求項33に記載のシステム。
【請求項46】
交互偏光の光は、原子時計の性能を最適化するために形成された1または複数の波形パターンを伴う前記光のソースを調節することによって生成される、または、前記光のソースを調節することによって生成されるビームからなる、請求項33に記載のシステム。
【請求項47】
原子がルビジウム原子またはセシウム原子である、請求項33に記載のシステム。
【請求項48】
前記セルの内部の磁場を制御する手段をさらに含む、請求項33に記載のシステム。
【請求項49】
前記セルを加熱する手段をさらに含む、請求項33に記載のシステム。
【請求項50】
測定される磁場の領域の範囲内で気相または原子ビームの原子を発生させる段階と、原子の配置において原子の超微細周波数で方向が交替する光子スピンによって特徴付けられる交互回転偏光の光で励起することによって、原子の超微細遷移を発生させる段階と、を含む磁力計を動かすための方法。
【請求項51】
原子と相互に作用している光の偏光は、右回転偏光と左回転偏光の状態を原子の超微細周波数で交互に繰り返す、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
交互偏光の光は、原子の超微細周期の半整数倍だけ右円偏光に対してシフトまたは遅らされた同様に変調された左円偏光(LCP)と組み合わされた右円偏光(RCP)の強度または周波数変調によって生成される、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
交互偏光の光は、相互に垂直な直線偏光の2つのビームを組み合わせることによって生成され、前記ビームの光周波数は原子の超微細周波数だけ異なる、請求項50に記載の方法。
【請求項54】
交互偏光の光は、原子の配置で磁場方向に対して垂直な平面において時計回りの回転と反時計回りの回転を原子の超微細周波数で交互に繰り返す電場ベクトルまたはその要素を生成する2つの逆伝搬ビームによって生成される、請求項50に記載の方法。
【請求項55】
交互偏光の光は、周波数において原子の超微細周波数だけ等しく間隔があけられたスペクトル線の系によって生成され、各スペクトル線は線形に偏光されており、隣接した線の偏光は相互に直交する、請求項50に記載の方法。
【請求項56】
交互偏光の光は、右円偏光に対して原子の超微細周期の半整数倍だけシフトまたは遅らされた左円偏光の正弦波強度包絡線と結合された右円偏光の正弦波強度包絡線を生成することによって生成され、光と相互に作用している原子は、基底状態超微細分割周波数ν00未満の光学的プレッシャーブロードニングを引き起こしているバッファガスと混ぜ合わされる、請求項50に記載の方法。
【請求項57】
交互偏光の光は、左円偏光のパルスが組み入れられている右円偏光の強度のパルスを生成することによって生成され、前記パルスは超微細変調周期の半分未満またはおよそ半分のパルス幅を有する、請求項50に記載の方法。
【請求項58】
交互偏光の光は、右円偏光の第1ビームと左円偏光の第2ビームとの合流ビームの形状をしており、前記第1ビームおよび前記第2ビームは、変調周期の半分の差をつけて、左円偏光の強度ピークが右円偏光の強度ピークに続くように、原子の超微細周波数で強度変調される、請求項50に記載の方法。
【請求項59】
交互偏光の光は、右円偏光の第1ビームと左円偏光の第2ビームとの合流ビームの形状をしており、前記第1ビームおよび前記第2ビームは、原子の超微細周期の半分の差をつけて、左円偏光の周波数の最大値が右円偏光の周波数の最大値に続くように、原子の超微細周波数の半分で周波数変調される、請求項50に記載の方法。
【請求項60】
交互偏光の光は、
変調またはパルス光ビームを第1経路と第2経路に分割する段階と、
第1経路の光を右円偏光に偏光させる段階と、
第2経路の光を左円偏光に偏光させる段階と、
第1経路の右円偏光と第2経路の左円偏光との間に超微細周期の半整数倍の遅れを導入する段階と、
第1経路と第2経路を再結合する段階と、によって生成される、請求項50に記載の方法。
【請求項61】
交互偏光の光は、磁力計の性能を最適化するために形成された1または複数の波形パターンを伴う前記光のソースを調節することによって生成される、または、前記光のソースを調節することによって生成されるビームからなる、請求項50に記載の方法。
【請求項62】
原子を含む媒体を通り抜ける交互偏光の光の透過率を検出する段階をさらに含む、請求項50に記載の方法。
【請求項63】
交互偏光の光によって励起される原子の蛍光を検出する段階をさらに含む、請求項50に記載の方法。
【請求項64】
交互偏光の光で照射される原子ビームのアルカリ金属原子の原子状態を分析する段階をさらに含む、請求項50に記載の方法。
【請求項65】
原子がルビジウム原子またはセシウム原子である、請求項50に記載の方法。
【請求項66】
弱い外部磁場の領域の範囲内で気相または原子ビームの原子を発生させる手段と、
原子の配置において原子の超微細周波数で方向が交替する光子スピンによって特徴付けられる交互偏光の光で励起することによって、原子の超微細遷移を発生させる手段と、
を含む、磁力計を動かすためのシステム。
【請求項67】
原子と相互に作用している光の偏光は、右回転偏光と左回転偏光の状態を原子の超微細周波数で交互に繰り返す、請求項66に記載のシステム。
【請求項68】
交互偏光の光は、原子の超微細周期の半整数倍だけ右円偏光に対してシフトまたは遅らされた同様に変調された左円偏光(LCP)と組み合わされた右円偏光(RCP)の強度または周波数変調によって生成される、請求項66に記載のシステム。
【請求項69】
交互偏光の光は、相互に垂直な直線偏光の2つのビームを組み合わせることによって生成され、前記ビームの光周波数は原子の超微細周波数だけ異なる、請求項66に記載のシステム。
【請求項70】
交互偏光の光は、原子の配置で磁場方向に対して垂直な平面において時計回りの回転と反時計回りの回転を原子の超微細周波数で交互に繰り返す電場ベクトルまたはその要素を生成する2つの逆伝搬ビームによって生成される、請求項66に記載のシステム。
【請求項71】
交互偏光の光は、周波数において原子の超微細周波数だけ等しく間隔があけられたスペクトル線の系によって生成され、各スペクトル線は線形に偏光されており、隣接した線の偏光は相互に直交する、請求項66に記載のシステム。
【請求項72】
交互偏光の光は、右円偏光に対して原子の超微細周期の半整数倍だけシフトまたは遅らされた左円偏光の正弦波強度包絡線と結合された右円偏光の正弦波強度包絡線を生成する手段によって生成され、光と相互に作用している原子は、基底状態超微細分割周波数ν00未満の光学的プレッシャーブロードニングを引き起こしているバッファガスと混ぜ合わされる、請求項66に記載のシステム。
【請求項73】
交互偏光の光は、左円偏光のパルスが組み入れられている右円偏光の強度のパルスを生成する手段によって生成され、前記パルスは超微細変調周期の半分未満またはおよそ半分のパルス幅を有する、請求項66に記載のシステム。
【請求項74】
交互偏光の光は、右円偏光の第1ビームと左円偏光の第2ビームとの合流ビームの形状をしており、前記第1ビームおよび前記第2ビームは、変調周期の半分の差をつけて、左円偏光の強度ピークが右円偏光の強度ピークに続くように、原子の超微細周波数で強度変調される、請求項66に記載のシステム。
【請求項75】
交互偏光の光は、右円偏光の第1ビームと左円偏光の第2ビームとの合流ビームの形状をしており、前記第1ビームおよび前記第2ビームは、原子の超微細周期の半分の差をつけて、左円偏光の周波数の最大値が右円偏光の周波数の最大値に続くように、原子の超微細周波数の半分で周波数変調される、請求項66に記載のシステム。
【請求項76】
交互偏光の光は、
変調またはパルス光ビームを第1経路と第2経路に分割する手段と、
第1経路の光を右円偏光に偏光させる手段と、
第2経路の光を左円偏光に偏光させる手段と、
第1経路の右円偏光と第2経路の左円偏光との間に超微細周期の半整数倍の遅れを導入する手段と、
第1経路と第2経路を再結合する手段と、によって生成される、請求項66に記載のシステム。
【請求項77】
交互偏光の光は、磁力計の性能を最適化するために形成された1または複数の波形パターンを伴う前記光のソースを調節する手段によって生成される、または、前記光のソースを調節することによって生成されるビームからなる、請求項66に記載のシステム。
【請求項78】
原子を含む媒体を通り抜ける交互偏光の光の透過率を検出する手段をさらに含む、請求項66に記載のシステム。
【請求項79】
交互偏光の光によって励起される原子の蛍光を検出する手段をさらに含む、請求項66に記載のシステム。
【請求項80】
交互偏光の光で照射される原子ビームのアルカリ金属原子の原子状態を分析する手段をさらに含む、請求項66に記載のシステム。
【請求項81】
原子がルビジウム原子またはセシウム原子である、請求項66に記載のシステム。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8】
【図9】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8】
【図9】
【公表番号】特表2007−527994(P2007−527994A)
【公表日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−554120(P2006−554120)
【出願日】平成17年2月8日(2005.2.8)
【国際出願番号】PCT/US2005/003835
【国際公開番号】WO2005/081794
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(502405273)プリンストン ユニバーシティ (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月8日(2005.2.8)
【国際出願番号】PCT/US2005/003835
【国際公開番号】WO2005/081794
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(502405273)プリンストン ユニバーシティ (2)
【Fターム(参考)】
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