作業補助アーム
【課題】別途にセンサを必要とせず、任意の案内面上に拘束することができる作業補助アームを得る。
【解決手段】3軸の変位量に基づきその作業座標が決定されるアームを設け、3軸をそれぞれ対応した3つの変速機を介して差動機構で結合し、3つの変速機の変速比を、指示された案内面以外へのアーム手先の移動を拘束するよう制御装置41によって制御するようにした作業補助アームであって、3軸の回転角度を検出する回転角度検出器40と、ユーザにより指示された仮想的な案内面を入力する面指示手段42とを設け、制御装置41は、検出された回転角度、及び指示された仮想的な案内面に基づき、現在のアーム手先の位置を含み、かつ前記案内面とは平行ではない補正用案内面を計算する補正用案内面計算手段301を含み、補正用案内面計算手段301により計算された補正用案内面に沿って、前記アーム手先が動くように3つの変速機の変速比を求める。
【解決手段】3軸の変位量に基づきその作業座標が決定されるアームを設け、3軸をそれぞれ対応した3つの変速機を介して差動機構で結合し、3つの変速機の変速比を、指示された案内面以外へのアーム手先の移動を拘束するよう制御装置41によって制御するようにした作業補助アームであって、3軸の回転角度を検出する回転角度検出器40と、ユーザにより指示された仮想的な案内面を入力する面指示手段42とを設け、制御装置41は、検出された回転角度、及び指示された仮想的な案内面に基づき、現在のアーム手先の位置を含み、かつ前記案内面とは平行ではない補正用案内面を計算する補正用案内面計算手段301を含み、補正用案内面計算手段301により計算された補正用案内面に沿って、前記アーム手先が動くように3つの変速機の変速比を求める。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、現在のアーム手先位置を含みかつ指定される案内面とは平行でないような補正用案内面を別途計算して、この補正用案内面に沿って操作することで、アームの手先が指定された案内面から外れても復帰することができる作業補助アームに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の作業補助アームにおいては、受動的に動作するもので、ロボットのN個ある関節間をN−1個の無段変速機で結合し、各無段変速機に対して適当な変速比を与えることで、人間がロボットを手で動かしたとき、ロボットが作業座標の所望の1次元の軌道に拘束されるように動作する(例えば、特許文献1参照)。ここで、この無段変速機は速度の比のみを結合し、変位に対しては拘束を与えない。即ち、速比を変化させても変位の関係は変化しない無段変速機である。
【0003】
また、従来の別の作業補助アームにおいては、受動的に動作するもので、アームの関節にそれぞれ無段変速機を結合し、無段変速機の入力軸同士を差動機構により結合し、各無段変速機に対して適当な変速比を与えることで、人間がアームを手で動かしたとき、アームが所望の2次元の案内面に拘束されるように動作する(例えば、特許文献2参照)。ここで、この無段変速機は速度の比のみを結合し、変位に対しては拘束を与えない。即ち、速比を変化させても変位の関係は変化しない無段変速機である。
【0004】
【特許文献1】米国特許第5952796号明細書
【特許文献2】特開2005−169536号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような従来の作業補助アームでは、ロボットは1次元の軌道にのみ拘束され、それより次元の大きい拘束、例えば平面に拘束されることは構造上できないという問題点があった。見かけ上、当初指示した1次元の拘束から外れて動作することは可能だが、これは操作者の手の動きをロボット上の力センサなどのセンサで検知して、その動きの方向に新しい1次元の軌道を設けただけであり、このためにはセンサが必須になるという問題点があった。
【0006】
また、上述したような従来の別の作業補助アームでは、現在アームの手先が置かれた点、すなわち初期値を含む案内面に沿ってしか動作することができないという問題点があった。言い換えれば、初期値から外れた案内面を指定してその案内面に沿って動作することができないという問題点があった。また、アームの手先がなんらかの原因で案内面から外れると案内面に復帰できないという問題があった。
【0007】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、別途にセンサ等を必要とせず、任意の案内面上に拘束することができる作業補助アームを得るものである。
【0008】
また、この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、初期値から外れた案内面をも指定でき、アームの手先がその案内面に沿って動作することができ、なんらかの原因でアームの手先が案内面から外れても復帰することができる作業補助アームを得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る作業補助アームは、複数の軸の変位量に基づいてその作業座標が決定されるアームを設け、前記複数の軸をそれぞれ対応した複数の変速機を介して差動機構で結合し、前記複数の変速機の変速比を、指示された案内面以外へのアーム手先の移動を拘束するよう制御装置によって制御するようにした作業補助アームであって、前記アームの複数の軸の回転角度を検出する回転角度検出器と、ユーザにより指示された仮想的な案内面を入力する面指示手段とを設け、前記制御装置は、前記回転角度検出器により検出された回転角度、及び前記面指示手段により指示された仮想的な案内面に基づいて、現在のアーム手先の位置を含み、かつ前記指示された案内面とは平行ではない補正用案内面を計算する補正用案内面計算手段を含み、前記補正用案内面計算手段により計算された補正用案内面に沿って、前記アーム手先が動くように前記複数の変速機の変速比を求めるものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係る作業補助アームは、別途にセンサ等を必要とせず、任意の案内面上に拘束することができ、さらに、初期値から外れた案内面をも指定でき、アームの手先がその案内面に沿って動作することができ、なんらかの原因でアームの手先が案内面から外れても復帰することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
実施の形態1.
この発明の実施の形態1に係る作業補助アームについて図1から図5までを参照しながら説明する。図1は、この発明の実施の形態1に係る作業補助アームの全体の構成を示す斜視図である。また、図2は、この発明の実施の形態1に係る作業補助アームの駆動部分をアームの正面から見た構成を示す図である。なお、以降では、各図中、同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0012】
図1において、この発明の実施の形態1に係る作業補助アームは、平行リンク式の垂直多関節型ロボットアームと同様であって、第1軸1と、第2軸2と、第3軸3と、変速機(無段変速機)4a、4b、4cと、入力軸5a、5b、5c(図2参照)と、出力軸6a、6b、6c(図2参照)と、傘歯車7と、傘歯車8と、差動傘歯車9と、差動傘歯車10と、差動傘歯車11と、差動傘歯車軸12(図2参照)と、キャリア13と、減速機14a、14b、14cと、出力軸15a、15b、15c(図2参照)と、枠体16と、ベース17と、第1アーム18と、第2アーム19と、下節20と、後節21と、軸22、23、24と、ブレーキ25(図2参照)と、アーム手先26と、回転角度検出器40a、40b、40cと、制御装置41と、面指示手段42とが設けられている。
【0013】
なお、入力軸5a、5b、5c、出力軸6a、6b、6c、差動傘歯車軸12、出力軸15a、15b、15c、ブレーキ25については、図2に示されている。
【0014】
作業補助アームは、図1に示すように、ベース17に枠体16が第1軸1回りに回転又は回動自在に取り付けられている。枠体16の片側側面に第1アーム18の下端が第2軸2回りに回動自在に取り付けられており、また、枠体16の反対側側面に下節20の一端が第3軸3回りに回動自在に取り付けられている。第2軸2と第3軸3は同軸であり、これらは第1軸1と直交している。
【0015】
第1アーム18上端には軸24が取り付けられ、この軸24には第2アーム19の略中央部分が回動自在に取り付けられている。なお、軸24による第2アーム19の支持位置は、作業補助アーム各部の構成等に応じて中央部以外の部分であってもよい。一方、下節20の他端には軸22が取り付けられ、この軸22には後節21の下端が回動自在に取り付けられている。後節21の上端には軸23が取り付けられ、この軸23には第2アーム19の後端が回動自在に取り付けられている。第1アーム18と後節21、並びに下節20と第2アーム19はそれぞれ平行であって、これらは平行リンクをなしている。第2アーム19の先端のアーム手先26には作業に応じて手首(図示していない)やツール(図示していない)が取り付けられるようになっている。
【0016】
ベース17に対する枠体16の第1軸1回りの回転又は回動角度、枠体16に対する第1アーム18の第2軸2回りの回動角度、枠体16に対する第3軸3回りの下節20の回動角度は、それぞれ回転角度検出器40a、40b、40cにより検出される。なお、枠体16に対する第3軸3回りの下節20の回動角度は第2アーム19の枠体16に対する回動角度に等しい。また、第1アーム18、第2アーム19、下節20、後節21、軸22、23、24で、第1軸1〜第3軸3の変位量に基づいてその作業座標が決定されるアームを構成している。
【0017】
また、回転角度検出器40a、40b、40cは、第1軸1〜第3軸3のそれぞれの変位量として回転角度を検出し、例えば、ローターリーエンコーダ等を用いて構成されている。パソコンなどの制御装置41は、面指示手段42から与えられた自由度の情報と、回転角度検出器40a、40b、40cで検出された変位量に基づいて、アーム手先26の作業座標が、要求された自由度以外に対しては拘束され、残りの自由度に関しては受動的に動作可能となるよう、変速機4a、4b、4cの変速比を制御し、パソコンなどで構成されている。また、面指示手段42は、ユーザが所望する自由度を入力するためのハードウエアとソフトウエアからなる機能部であり、ディスプレイ、マウス、キーボードなどを使用して必要な情報を入力する。
【0018】
図2において、減速機14aは、枠体16(図1参照)の底部に取り付けられ、減速機14aの減速機出力軸15aはベース17(図1参照)に接続されている。変速機4aの変速機入力軸5aは傘歯車7に、変速機出力軸6aは減速機14aにそれぞれ接続されている。変速機入力軸5a、変速機4a、変速機出力軸6a、減速機14a、減速機出力軸15aは、第1軸1と同軸である。
【0019】
また、図2において、減速機14bは、枠体16(図1参照)の側面に取り付けられ、減速機14bの減速機出力軸15bは第1アーム18(図1参照)の下端に接続されている。変速機4bの変速機入力軸5bは差動傘歯車10に、変速機出力軸6bはブレーキ25及び減速機14bにそれぞれ接続されている。変速機入力軸5b、変速機4b、変速機出力軸6b、ブレーキ25、減速機14b、減速機出力軸15bは、第2軸2と同軸である。
【0020】
さらに、図2において、減速機14cは、枠体16(図1参照)の側面に取り付けられ、減速機14cの減速機出力軸15cは下節20(図1参照)の一端に接続されている。変速機4cの変速機入力軸5cは差動傘歯車11に、変速機出力軸6cはブレーキ25及び減速機14cにそれぞれ接続されている。変速機入力軸5c、変速機4c、変速機出力軸6c、ブレーキ25、減速機14c、減速機出力軸15cは、第3軸3と同軸である。
【0021】
図3は、この発明の実施の形態1に係る作業補助アームの要部の構成を示すブロック図である。
【0022】
図3において、この発明の実施の形態1に係る作業補助アームは、変速機(無段変速機)4と、ブレーキ25と、回転角度検出器40と、制御装置41と、面指示手段42とが設けられている。また、制御装置41には、補正用案内面計算手段301が設けられている。
【0023】
なお、ブロックD1は、回転角度検出器40により検出された第1軸1、第2軸2、第3軸3の各軸の角度Θ=(θ1,θ2,θ3)を示し、ブロックD2は、補正用法線方向ベクトルに基づく(式24)を展開して変速比を計算することを示し、ブロックD3は、計算された変速機の変速比を示す。
【0024】
図4は、この発明の実施の形態1に係る作業補助アームの補正用案内面計算手段の構成を示す図である。
【0025】
図4において、補正用案内面計算手段301は、前処理フロー302と、補正用案内面計算フローA303とからなる。
【0026】
また、前処理フロー302は、回転角度検出器40により検出されたアームの各軸の回転角度を作業座標に変換する正変換手段305を含む。
【0027】
さらに、補正用案内面計算フローA303は、案内面外の点pを与えたとき、pに最も近い案内面上の点(垂線の足)qを求める、つまり任意の点から案内面に下ろした垂線の足の座標を計算する垂線の足計算手段306と、案内面外の点pcを通る適当なベクトルと案内面との交点qcを計算し、交点qcが複数あるときには点pcに近い方を選ぶ交点計算手段307と、速度ベクトルdと誤差ベクトルeから接平面投影速度ベクトル(チルダd)を計算する接平面投影速度ベクトル計算手段308と、上記各手段の出力に基づき、つまり(式20)から補正用法線方向ベクトルを計算する補正用法線方向ベクトル計算手段A(第1の補正用法線方向ベクトル計算手段)309とを含む。
【0028】
つぎに、この実施の形態1に係る作業補助アームの動作について図面を参照しながら説明する。図5は、この発明の実施の形態1に係る作業補助アームの補正用案内面計算手段の動作(補正用案内面作成方法)を説明するための図である。
【0029】
図3に示すように、回転角度検出器40により検出されたアームの各軸の回転角度と、面指示手段42により指示された仮想的な案内面の情報は、制御装置41に送られ、所定の演算が行われ、この演算の結果として変速比が得られ、変速機4の変速比が制御される。また、制御装置41は、非常停止ボタン(図示していない)が押されたときなどはブレーキ25を動作させるよう構成されている。
【0030】
ユーザは、作業補助アームが動作すべき仮想的な案内面101を面指示手段42により指示する。例えば、案内面101が平面である場合、案内面101に立てた法線方向ベクトル
【0031】
【数1】
【0032】
と、案内面上のひとつの点の座標
【0033】
【数2】
【0034】
とを指定すれば、ひとつの平面を指定することができる。この場合、面指示手段42は、これらの値を制御装置41に伝える。
【0035】
また、例えば、案内面101が水平面の座標xとyの関数で、
【0036】
【数3】
【0037】
と表されるような曲面の場合、この曲面のx方向、y方向それぞれの接線方向ベクトルを、
【0038】
【数4】
【0039】
とすれば、接線方向ベクトルは、
【0040】
【数5】
【0041】
となる。(式4)、(式5)のベクトルで張られる平面は、図5に示すように、案内面101の曲面の接平面314となる。(式4)、(式5)のベクトルを用いて案内面101の曲面の法線方向ベクトルnを次のように表すことができる。
【0042】
【数6】
【0043】
ここで、×はベクトルの外積を表す。また、(式6)などの分母の二重線はベクトルの大きさ(長さ)を表す。この場合、面指示手段42は、(式3)とアーム手先位置の座標をもとに(式4)、(式5)、(式6)を用いて法線方向ベクトルを演算して制御装置41に伝える。
【0044】
以下では補正用案内面計算手段301におけるひとつの演算の手順について図4と図5を用いて説明する。この実施の形態1の演算の手順を補正用案内面計算フローA303と呼ぶ。図5でアーム手先26の進行方向は、左から右としている。
【0045】
まず、補正用案内面計算フローA303の演算の手順の概要を説明する。アーム手先位置が本来の案内面101上にないとき、前回の速度ベクトルを本来の案内面101に投影したベクトルと、誤差ベクトルを用いて、幾何学的に補正した補正用案内面312の補正用法線方向ベクトル313を求める。このときの補正用法線方向ベクトル313は、前回の速度ベクトルが次回も維持されると仮定し、前回の速度ベクトルを本来の案内面101に投影したベクトルと、今回の誤差ベクトル316と、次回に予想される誤差である離隔ベクトル317の合ベクトルを考え、これを含むような補正用案内面312に設定する。
【0046】
次に、補正用案内面計算フローA303の演算の手順の詳細を説明する。まず、垂線の足計算手段306と交点計算手段307について説明する。
【0047】
垂線の足計算手段306では以下の演算が行われる。案内面外の点p=(px,py,pz)を与えたとき、pに最も近い案内面上の点q=(qx,qy,qz)を求める。点qは垂線の足である。このとき、ベクトルq−pは、点qにおいて案内面に垂直なので次の式が成り立つ。
【0048】
【数7】
【0049】
ここで、●はベクトルの内積を表す。また、点qは案内面上の点なので(式3)を用いて次の式が成り立つ。
【0050】
【数8】
【0051】
(式7)、(式8)、(式9)を連立させれば、与えられた点pに対する点qを得ることができる。この関数を垂線の足計算手段306と呼び、次のように定義する。
【0052】
【数9】
【0053】
また、交点計算手段307では以下の演算が行われる。案内面外の点p=(px,py,pz)を通る適当なベクトルv=(vx,vy,vz)と案内面との交点q=(qx,qy,qz)を求める。kを適当な係数とすれば次の式が成り立つ。
【0054】
【数10】
【0055】
また、qは案内面上の点なので(式9)が成り立つ。(式9)と(式11)を連立させれば、与えられた点pと与えられたベクトルvに対する点qと係数kを得ることができる。点qが複数あるときには点pに近い方を選ぶ。この関数を交点計算手段307と呼び、係数kは必要ないので次のように定義する。
【0056】
【数11】
【0057】
続いて、補正用案内面計算フローA303の演算の手順の詳細を説明する。回転角度検出器40により検出されたアームの各軸の回転角度は、正変換手段305により作業座標に変換される。以下座標は作業座標で表現する。
【0058】
前回のi−1回目、今回のi回目の案内面101外の点の座標を、図5に示すように、それぞれpi−1、piとする。これらの点から案内面101に下ろした垂線の座標をそれぞれqi−1、qiとする。垂線の足計算手段306により、(式10)で定義した関数を用いれば、
【0059】
【数12】
【0060】
などとなる。点piが案内面101に対してもつ誤差ベクトル316をeiとする。このとき次の式のようになる。
【0061】
【数13】
【0062】
前回の速度ベクトルをdi−1とする。
【0063】
【数14】
【0064】
速度ベクトルdi−1を点qiにおける案内面101の接平面314に投影すれば、接平面投影速度ベクトル315(チルダdi−1)は、誤差ベクトル316を用いて次の式のようになる。(なお、チルダdは、dの上に〜があることを表す。)
【0065】
【数15】
【0066】
ここで、速度ベクトルdi−1と誤差ベクトル316(ei)から接平面投影速度ベクトル315(チルダdi−1)を得る計算を接平面投影速度ベクトル計算手段308と呼ぶ。
【0067】
点qiからチルダdi−1進んだ点を、図5に示すように、pci+1とする。
【0068】
【数16】
【0069】
点pci+1から誤差ベクトル316(ei)方向に直線を伸ばし、交点計算手段307により、(式12)で定義した関数を用いて案内面101と交差した点を求め、qci+1とする。
【0070】
【数17】
【0071】
交点qci+1と点pci+1の間の誤差を離隔ベクトル317と呼び、eci+1とおく。
【0072】
【数18】
【0073】
以上を用いて補正用法線方向ベクトル計算手段A309により、次回の補正用法線方向ベクトル313(ハットni+1)を次の式のように定める。(なお、ハットnは、nの上に^があることを表す。)
【0074】
【数19】
【0075】
ここで、前回の速度ベクトルdi−1と、今回の補正用法線方向ベクトルniの外積をaiとおいた。
【0076】
【数20】
【0077】
以上のようにして補正用案内面計算フローA303の演算により補正用法線方向ベクトル313(ハットn)が得られた。この補正用法線方向ベクトル313(ハットn)を用いて各変速機4a、4b、4cの変速比を以下のようにして求める。
【0078】
関節の角速度ベクトルΩと、直交座標系から見たアーム手先26の速度ベクトルvの間には、次の関係が成り立つ。
【0079】
【数21】
【0080】
ここで、J[Θ]は、ヤコビ行列であり、回転角度検出器40により検出された第1軸1、第2軸2、第3軸3の各軸の角度Θ=(θ1,θ2,θ3)の関数である。また、v=(vx,vy,vz)は、x、y、z方向のアーム手先26の速度であり、Ω=(ω1,ω2,ω3)は、第1軸1、第2軸2、第3軸3の角速度である。
【0081】
法線方向ベクトルnと、アーム手先26の速度ベクトルvの間に、次の式が成り立てば両者は直交する。
【0082】
【数22】
【0083】
この(式23)に、上記の式(式22)を代入すれば、次の式が得られる。
【0084】
【数23】
【0085】
この(式24)を展開して、ω1、ω2、ω3の係数を得れば、各変速機4a、4b、4cの変速比が求められる。
【0086】
ここで、上記の法線方向ベクトルnとして、(式1)又は(式6)で得られるベクトルの代わりに、(式20)で得た補正用法線方向ベクトル313(ハットn)を用いれば、アーム手先26は補正用案内面312に沿って動く。
【0087】
次回の速度ベクトルが前回と同じであれば、アーム手先26は補正用案内面312に沿って動作することで点qci+1の位置で本来の案内面101に復帰する。次回の速度ベクトルが前回と異なっていても、以上のアルゴリズムを毎回繰り返すことで誤差が減少していく。従って、アーム手先位置の初期値から外れた面を案内面として指定したり、案内面101に沿って移動中になんらかの原因でアーム手先位置が案内面から外れたりしたときにも案内面101に戻って来られる効果がある。
【0088】
なお、(式17)で点qiから進んだ点pci+1の座標を求める際、次回の速度ベクトルが前回の速度ベクトルと同じであるとの仮定で前回の接平面投影速度ベクトル315(チルダdi−1)を加えているが、前回の接平面投影速度ベクトル315に適当なゲインを与えたものを加えてもよい。また、前回の接平面投影速度ベクトル315の代わりに適当な速度ベクトルを予測したものを加えるようにしてもよい。
【0089】
また、ユーザが面指示手段42に案内面101を指示するとき、必ずしも面を記述する情報として案内面101に立てた法線方向ベクトルnと面上のひとつの点の座標p=(x0,y0,z0)を指定しなくてもよい。例えば、案内面101が平面であれば、面上の点3点の座標を指示するなどでもよい。
【0090】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2に係る作業補助アームについて図6から図9までを参照しながら説明する。図6は、この発明の実施の形態2に係る作業補助アームの補正用案内面計算手段の構成を示す図である。なお、この発明の実施の形態2に係る作業補助アームの基本的な構成は、上記の実施の形態1と同様である。
【0091】
図6において、補正用案内面計算手段301は、前処理フロー302と、補正用案内面計算フローB304とからなる。
【0092】
また、前処理フロー302は、回転角度検出器40により検出されたアームの各軸の回転角度を作業座標に変換する正変換手段305を含む。
【0093】
さらに、補正用案内面計算フローB304は、案内面外の点pを与えたとき、pに最も近い案内面上の点(垂線の足)qを求める、つまり任意の点から案内面に下ろした垂線の足の座標を計算する垂線の足計算手段306と、案内面外の点pcを通る鉛直方向ベクトルgと案内面との交点qcを計算し、交点qcが複数あるときには点pcに近い方を選ぶ交点計算手段307と、速度ベクトルdと誤差ベクトルeから接平面投影速度ベクトル(チルダd)を計算する接平面投影速度ベクトル計算手段308と、上記各手段の出力に基づき、つまり(式38)から補正用法線方向ベクトルを計算する補正用法線方向ベクトル計算手段B(第2の補正用法線方向ベクトル計算手段)310とを含む。
【0094】
つぎに、この実施の形態2に係る作業補助アームの動作について図面を参照しながら説明する。図7は、この発明の実施の形態2に係る作業補助アームの補正用案内面計算手段の動作(補正用案内面の例)を説明するための図である。また、図8は、この発明の実施の形態2に係る作業補助アームの補正用案内面計算手段の動作(補正用案内面の別の例)を説明するための図である。さらに、図9は、この発明の実施の形態2に係る作業補助アームの補正用案内面計算手段の動作(補正用案内面作成方法)を説明するための図である。
【0095】
この実施の形態2を説明するに当たり、まず、上記の実施の形態1で生じることがある問題点について説明する。図5に示すように、現在のアーム手先26の速度ベクトルの水平方向成分が案内面に近づく方向である場合は、上記の実施の形態1で述べた方法でアーム手先26は補正用案内面312に沿って動作することで、本来の案内面101に復帰することができる。
【0096】
これに対して、現在のアーム手先26の速度ベクトルの水平方向成分が案内面から遠ざかる方向である場合、上記の実施の形態1と同様に前回の速度ベクトルを本来の案内面101に投影したベクトルと、誤差ベクトルを用いて案内面を幾何学的に補正する方法を適用した場合を図7と図8に示す。図中、アーム手先26の進行方向は左から右としている。
【0097】
図7のように、案内面101からの誤差が小さいときは、補正用案内面312は右上あがりになるのでアーム手先26を左から右へ移動させれば、補正用案内面312に沿って動作するので案内面101へ近づき誤差が小さくなる。
【0098】
ところが、図8のように、案内面101からの誤差が大きいときは、補正用案内面312の傾きが鉛直軸を通り越して左上あがりになるので、前回の速度ベクトルの方向と同様にアーム手先26を左から右へ移動させると案内面101からかえって遠ざかってしまう。このため、案内面101からの誤差が大きいときには、誤差を補正するためにもとの速度(図では左から右)とは逆向きの速度(図では右から左)を与えてバックさせなくてはならなくなり、直感的に操作することが難しくなる問題がある。
【0099】
そこで、速度ベクトルの水平方向成分が案内面から遠ざかるときのため、上記の実施の形態1とは別な補正方法を考える。
【0100】
以下では補正用案内面計算フローB304の演算の手順について、図6と図9を用いて説明する。まず、手順の概要を説明する。
【0101】
ここでは、上記の実施の形態1の離隔ベクトル317の代りに、鉛直方向ベクトル318を用いる。このときの補正用法線方向ベクトル313は、前回の速度ベクトルが次回も維持されると仮定し、前回の速度ベクトルを本来の案内面101に投影した接平面投影速度ベクトル315の分を今回の位置から延長し、そこから鉛直方向に伸ばした直線と本来の案内面101との交点までのベクトルを考え、これらの合ベクトルを含むような補正用案内面312に設定する。
【0102】
次に、補正用案内面計算フローB304の演算の手順の詳細を説明する。回転角度検出器40により検出されたアームの各軸の角度は、正変換手段305により作業座標に変換される。以下座標は作業座標で表現する。
【0103】
前回のi−1回目、今回のi回目の案内面外の点の座標を、図9に示すように、それぞれpi−1、piとする。これらの点から案内面101に下ろした垂線の座標をそれぞれqi−1、qiとする。垂線の足計算手段306により、(式10)で定義した関数を用いれば、
【0104】
【数24】
【0105】
などとなる。点piが案内面101に対してもつ誤差ベクトルをeiとする。このとき、次の式のようになる。
【0106】
【数25】
【0107】
前回の速度ベクトルをdi−1とする。
【0108】
【数26】
【0109】
速度ベクトルdi−1を案内面101に投影すれば、接平面投影速度ベクトル315(チルダdi−1)は、誤差ベクトル316を用いて次の式のようになる。
【0110】
【数27】
【0111】
ここで、速度ベクトルdi−1と誤差ベクトル316(ei)から接平面投影速度ベクトル315(チルダdi−1)を得る計算を接平面投影速度ベクトル計算手段308と呼ぶ。
【0112】
点piから接平面投影速度ベクトル315(チルダdi−1)進んだ点をpci+1とする。
【0113】
【数28】
【0114】
この点pci+1から鉛直方向ベクトル318(g)方向に直線を伸ばし、交点計算手段307により、(式12)で定義した関数を用いて案内面101と交差した点求め、qci+1とする。
【0115】
【数29】
【0116】
以上を用いて補正用法線方向ベクトル計算手段B310により、次回の補正用法線方向ベクトル313(ハットni+1)を次の式のように定める。
【0117】
【数30】
【0118】
ここで、前回の速度ベクトルdi−1と、今回の法線方向ベクトルniの外積をaiとおいた。
【0119】
【数31】
【0120】
以上で(式35)、(式36)、(式37)、(式38)が、上記の実施の形態1と異なる。
【0121】
以上のようにして補正用案内面計算フローB304の演算により補正用法線方向ベクトル313(ハットn)が得られた。この補正用法線方向ベクトル313(ハットn)を用いて各変速機4a、4b、4cの変速比は、上記の実施の形態1と同様に求めることができる。
【0122】
ここで、法線方向ベクトルnとして、(式1)又は(式6)で得られるベクトルの代わりに、(式38)で得た補正用法線方向ベクトル313(ハットn)を用いれば、アーム手先26は補正用案内面312に沿って動く。
【0123】
次回の速度ベクトルが前回と同じであれば、アーム手先26は補正用案内面312に沿って動作することで点qci+1の位置で本来の案内面101に復帰する。次回の速度ベクトルが前回と異なっていても、以上のアルゴリズムを毎回繰り返すことで誤差が減少していく。従って、アーム手先位置の初期値から外れた面を案内面として指定したり、案内面101に沿って移動中になんらかの原因でアーム手先位置が案内面から外れたりしたときにも案内面101に戻って来られる効果がある。
【0124】
さらに、現在のアーム手先26の速度ベクトルの水平方向成分が案内面101から遠ざかる方向であり、かつ案内面101からの誤差が大きいときに、前回の速度ベクトルの方向と同じ方向にアーム手先26を移動させると案内面101からかえって遠ざかってしまうことがなくなり、アーム手先26を補正用案内面312に沿って概ね同じ方向へ動作することで本来の案内面101に復帰できるようになる効果がある。
【0125】
なお、(式35)で点piから進んだ点pci+1の座標を求める際、次回の速度ベクトルが前回の速度ベクトルと同じであるとの仮定で前回の接平面投影速度ベクトル315(チルダdi−1)を加えているが、前回の接平面投影速度ベクトル315に適当なゲインを与えたものを加えてもよい。また、前回の接平面投影速度ベクトル315の代わりに適当な速度ベクトルを予測したものを加えるようにしてもよい。
【0126】
また、ユーザが面指示手段42に案内面101を指示するとき、必ずしも面を記述する情報として案内面101に立てた法線方向ベクトルnと面上のひとつの点の座標p=(x0,y0,z0)を指定しなくてもよい。例えば、案内面101が平面であれば面上の点3点の座標を指示するなどでもよい。
【0127】
実施の形態3.
この発明の実施の形態3に係る作業補助アームについて図10から図12までを参照しながら説明する。
【0128】
図10は、この発明の実施の形態3に係る作業補助アームおけるアーム手先の速度ベクトルの向きの場合分けを説明するための図である。また、図11は、この発明の実施の形態3に係る作業補助アームおけるアーム手先の速度ベクトルの水平方向成分が案内面に近づく方向か遠ざかる方向かの判定方法を説明するための図である。さらに、図12は、この発明の実施の形態3に係る作業補助アームの補正用案内面計算手段の構成を示す図である。
【0129】
図12において、補正用案内面計算手段301は、前処理フロー302と、速度ベクトル判定手段311と、補正用案内面計算フローA(第1の補正用案内面計算詳細手段)303と、補正用案内面計算フローB(第2の補正用案内面計算詳細手段)304とからなる。
【0130】
また、前処理フロー302は、回転角度検出器40により検出されたアームの各軸の回転角度を作業座標に変換する正変換手段305を含む。
【0131】
速度ベクトル判定手段311は、現在のアーム手先26の速度ベクトルの水平方向成分が案内面101に近づく方向である場合は、補正用案内面計算フローA303の演算を選択し、現在のアーム手先26の速度ベクトルの水平方向成分が案内面101から遠ざかる方向である場合は、補正用案内面計算フローB304の演算を選択する。
【0132】
この実施の形態3は、補正用案内面計算手段301における演算として、上記の実施の形態1で説明した補正用案内面計算フローA303の方法と、上記の実施の形態2で説明した補正用案内面計算フローB304の方法のどちらを適用するかを判定していずれかを処理するものである。
【0133】
まず、現在のアーム手先位置
【0134】
【数32】
【0135】
が指示された案内面101の面外にあるとき、現在のアーム手先26の速度ベクトル
【0136】
【数33】
【0137】
の水平方向成分(vx,vy,0)が案内面101へ近付く方向である場合と遠ざかる方向である場合に関して、図10に示すように、場合分けを行う。
【0138】
ある点(x0,y0,z0)を通って(式1)で表す法線方向ベクトルに直交する案内面101の接平面314の式は、次のようになる。
【0139】
【数34】
【0140】
(式51)で表す現在のアーム手先位置と、案内面101の上下関係については次のように表現できる。案内面上の点を、
【0141】
【数35】
【0142】
とする。このとき、
【0143】
【数36】
【0144】
として、点(x0,y0,z0)がq近傍であるとすれば、
【0145】
【数37】
【0146】
ならば、現在の手先位置は案内面101より上側、
【0147】
【数38】
【0148】
ならば、現在の手先位置は案内面101より下側となる。
【0149】
次に、(式52)で表す現在のアーム手先26の速度ベクトルと、(式1)で表す案内面101の法線方向ベクトルの水平方向成分については、それぞれのベクトルの水平方向成分同士の内積の符号を用いて、
【0150】
【数39】
【0151】
ならば、それぞれのベクトルの水平方向成分は逆方向、
【0152】
【数40】
【0153】
ならば、それぞれのベクトルの水平方向成分は同じ方向となる。
【0154】
これらの関係の組み合わせにより、現在のアーム手先26の速度ベクトルの水平方向成分が案内面101に近づく方向か、遠ざかる方向かを図11のようにまとめることができる。
【0155】
図12に示す速度ベクトル判定手段311は、図11の場合分けにより、(式57)と(式59)を用いて、現在のアーム手先26の速度ベクトルの水平方向成分が案内面101に近づく方向である場合は、上記の実施の形態1で説明した補正用案内面計算フローA303の演算を選択する。また、現在のアーム手先26の速度ベクトルの水平方向成分が案内面101から遠ざかる方向である場合は、上記の実施の形態2で説明した補正用案内面計算フローB304の演算を選択する。
【0156】
以上の判定と演算により、現在のアーム手先26の速度ベクトルの水平方向成分が案内面101に近づく方向であっても、遠ざかる方向であっても、アーム手先26は補正用案内面312に沿って動作することで本来の案内面101に復帰するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0157】
【図1】この発明の実施の形態1に係る作業補助アームの全体の構成を示す斜視図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る作業補助アームの駆動部分をアームの正面から見た構成を示す図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る作業補助アームの要部の構成を示すブロック図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係る作業補助アームの補正用案内面計算手段の構成を示す図である。
【図5】この発明の実施の形態1に係る作業補助アームの補正用案内面計算手段の動作(補正用案内面作成方法)を説明するための図である。
【図6】この発明の実施の形態2に係る作業補助アームの補正用案内面計算手段の構成を示す図である。
【図7】この発明の実施の形態2に係る作業補助アームの補正用案内面計算手段の動作(補正用案内面の例)を説明するための図である。
【図8】この発明の実施の形態2に係る作業補助アームの補正用案内面計算手段の動作(補正用案内面の別の例)を説明するための図である。
【図9】この発明の実施の形態2に係る作業補助アームの補正用案内面計算手段の動作(補正用案内面作成方法)を説明するための図である。
【図10】この発明の実施の形態3に係る作業補助アームおけるアーム手先の速度ベクトルの向きの場合分けを説明するための図である。
【図11】この発明の実施の形態3に係る作業補助アームおけるアーム手先の速度ベクトルの水平方向成分が案内面に近づく方向か遠ざかる方向かの判定方法を説明するための図である。
【図12】この発明の実施の形態3に係る作業補助アームの補正用案内面計算手段の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0158】
4 変速機、25 ブレーキ、26 アーム手先、40 回転角度検出器、41 制御装置、42 面指示手段、301 補正用案内面計算手段、302 前処理フロー、303 補正用案内面計算フローA、304 補正用案内面計算フローB、305 正変換手段、306 垂線の足計算手段、307 交点計算手段、308 接平面投影速度ベクトル計算手段、309 補正用法線方向ベクトル計算手段A、310 補正用法線方向ベクトル計算手段B、311 速度ベクトル判定手段。
【技術分野】
【0001】
この発明は、現在のアーム手先位置を含みかつ指定される案内面とは平行でないような補正用案内面を別途計算して、この補正用案内面に沿って操作することで、アームの手先が指定された案内面から外れても復帰することができる作業補助アームに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の作業補助アームにおいては、受動的に動作するもので、ロボットのN個ある関節間をN−1個の無段変速機で結合し、各無段変速機に対して適当な変速比を与えることで、人間がロボットを手で動かしたとき、ロボットが作業座標の所望の1次元の軌道に拘束されるように動作する(例えば、特許文献1参照)。ここで、この無段変速機は速度の比のみを結合し、変位に対しては拘束を与えない。即ち、速比を変化させても変位の関係は変化しない無段変速機である。
【0003】
また、従来の別の作業補助アームにおいては、受動的に動作するもので、アームの関節にそれぞれ無段変速機を結合し、無段変速機の入力軸同士を差動機構により結合し、各無段変速機に対して適当な変速比を与えることで、人間がアームを手で動かしたとき、アームが所望の2次元の案内面に拘束されるように動作する(例えば、特許文献2参照)。ここで、この無段変速機は速度の比のみを結合し、変位に対しては拘束を与えない。即ち、速比を変化させても変位の関係は変化しない無段変速機である。
【0004】
【特許文献1】米国特許第5952796号明細書
【特許文献2】特開2005−169536号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような従来の作業補助アームでは、ロボットは1次元の軌道にのみ拘束され、それより次元の大きい拘束、例えば平面に拘束されることは構造上できないという問題点があった。見かけ上、当初指示した1次元の拘束から外れて動作することは可能だが、これは操作者の手の動きをロボット上の力センサなどのセンサで検知して、その動きの方向に新しい1次元の軌道を設けただけであり、このためにはセンサが必須になるという問題点があった。
【0006】
また、上述したような従来の別の作業補助アームでは、現在アームの手先が置かれた点、すなわち初期値を含む案内面に沿ってしか動作することができないという問題点があった。言い換えれば、初期値から外れた案内面を指定してその案内面に沿って動作することができないという問題点があった。また、アームの手先がなんらかの原因で案内面から外れると案内面に復帰できないという問題があった。
【0007】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、別途にセンサ等を必要とせず、任意の案内面上に拘束することができる作業補助アームを得るものである。
【0008】
また、この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、初期値から外れた案内面をも指定でき、アームの手先がその案内面に沿って動作することができ、なんらかの原因でアームの手先が案内面から外れても復帰することができる作業補助アームを得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る作業補助アームは、複数の軸の変位量に基づいてその作業座標が決定されるアームを設け、前記複数の軸をそれぞれ対応した複数の変速機を介して差動機構で結合し、前記複数の変速機の変速比を、指示された案内面以外へのアーム手先の移動を拘束するよう制御装置によって制御するようにした作業補助アームであって、前記アームの複数の軸の回転角度を検出する回転角度検出器と、ユーザにより指示された仮想的な案内面を入力する面指示手段とを設け、前記制御装置は、前記回転角度検出器により検出された回転角度、及び前記面指示手段により指示された仮想的な案内面に基づいて、現在のアーム手先の位置を含み、かつ前記指示された案内面とは平行ではない補正用案内面を計算する補正用案内面計算手段を含み、前記補正用案内面計算手段により計算された補正用案内面に沿って、前記アーム手先が動くように前記複数の変速機の変速比を求めるものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係る作業補助アームは、別途にセンサ等を必要とせず、任意の案内面上に拘束することができ、さらに、初期値から外れた案内面をも指定でき、アームの手先がその案内面に沿って動作することができ、なんらかの原因でアームの手先が案内面から外れても復帰することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
実施の形態1.
この発明の実施の形態1に係る作業補助アームについて図1から図5までを参照しながら説明する。図1は、この発明の実施の形態1に係る作業補助アームの全体の構成を示す斜視図である。また、図2は、この発明の実施の形態1に係る作業補助アームの駆動部分をアームの正面から見た構成を示す図である。なお、以降では、各図中、同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0012】
図1において、この発明の実施の形態1に係る作業補助アームは、平行リンク式の垂直多関節型ロボットアームと同様であって、第1軸1と、第2軸2と、第3軸3と、変速機(無段変速機)4a、4b、4cと、入力軸5a、5b、5c(図2参照)と、出力軸6a、6b、6c(図2参照)と、傘歯車7と、傘歯車8と、差動傘歯車9と、差動傘歯車10と、差動傘歯車11と、差動傘歯車軸12(図2参照)と、キャリア13と、減速機14a、14b、14cと、出力軸15a、15b、15c(図2参照)と、枠体16と、ベース17と、第1アーム18と、第2アーム19と、下節20と、後節21と、軸22、23、24と、ブレーキ25(図2参照)と、アーム手先26と、回転角度検出器40a、40b、40cと、制御装置41と、面指示手段42とが設けられている。
【0013】
なお、入力軸5a、5b、5c、出力軸6a、6b、6c、差動傘歯車軸12、出力軸15a、15b、15c、ブレーキ25については、図2に示されている。
【0014】
作業補助アームは、図1に示すように、ベース17に枠体16が第1軸1回りに回転又は回動自在に取り付けられている。枠体16の片側側面に第1アーム18の下端が第2軸2回りに回動自在に取り付けられており、また、枠体16の反対側側面に下節20の一端が第3軸3回りに回動自在に取り付けられている。第2軸2と第3軸3は同軸であり、これらは第1軸1と直交している。
【0015】
第1アーム18上端には軸24が取り付けられ、この軸24には第2アーム19の略中央部分が回動自在に取り付けられている。なお、軸24による第2アーム19の支持位置は、作業補助アーム各部の構成等に応じて中央部以外の部分であってもよい。一方、下節20の他端には軸22が取り付けられ、この軸22には後節21の下端が回動自在に取り付けられている。後節21の上端には軸23が取り付けられ、この軸23には第2アーム19の後端が回動自在に取り付けられている。第1アーム18と後節21、並びに下節20と第2アーム19はそれぞれ平行であって、これらは平行リンクをなしている。第2アーム19の先端のアーム手先26には作業に応じて手首(図示していない)やツール(図示していない)が取り付けられるようになっている。
【0016】
ベース17に対する枠体16の第1軸1回りの回転又は回動角度、枠体16に対する第1アーム18の第2軸2回りの回動角度、枠体16に対する第3軸3回りの下節20の回動角度は、それぞれ回転角度検出器40a、40b、40cにより検出される。なお、枠体16に対する第3軸3回りの下節20の回動角度は第2アーム19の枠体16に対する回動角度に等しい。また、第1アーム18、第2アーム19、下節20、後節21、軸22、23、24で、第1軸1〜第3軸3の変位量に基づいてその作業座標が決定されるアームを構成している。
【0017】
また、回転角度検出器40a、40b、40cは、第1軸1〜第3軸3のそれぞれの変位量として回転角度を検出し、例えば、ローターリーエンコーダ等を用いて構成されている。パソコンなどの制御装置41は、面指示手段42から与えられた自由度の情報と、回転角度検出器40a、40b、40cで検出された変位量に基づいて、アーム手先26の作業座標が、要求された自由度以外に対しては拘束され、残りの自由度に関しては受動的に動作可能となるよう、変速機4a、4b、4cの変速比を制御し、パソコンなどで構成されている。また、面指示手段42は、ユーザが所望する自由度を入力するためのハードウエアとソフトウエアからなる機能部であり、ディスプレイ、マウス、キーボードなどを使用して必要な情報を入力する。
【0018】
図2において、減速機14aは、枠体16(図1参照)の底部に取り付けられ、減速機14aの減速機出力軸15aはベース17(図1参照)に接続されている。変速機4aの変速機入力軸5aは傘歯車7に、変速機出力軸6aは減速機14aにそれぞれ接続されている。変速機入力軸5a、変速機4a、変速機出力軸6a、減速機14a、減速機出力軸15aは、第1軸1と同軸である。
【0019】
また、図2において、減速機14bは、枠体16(図1参照)の側面に取り付けられ、減速機14bの減速機出力軸15bは第1アーム18(図1参照)の下端に接続されている。変速機4bの変速機入力軸5bは差動傘歯車10に、変速機出力軸6bはブレーキ25及び減速機14bにそれぞれ接続されている。変速機入力軸5b、変速機4b、変速機出力軸6b、ブレーキ25、減速機14b、減速機出力軸15bは、第2軸2と同軸である。
【0020】
さらに、図2において、減速機14cは、枠体16(図1参照)の側面に取り付けられ、減速機14cの減速機出力軸15cは下節20(図1参照)の一端に接続されている。変速機4cの変速機入力軸5cは差動傘歯車11に、変速機出力軸6cはブレーキ25及び減速機14cにそれぞれ接続されている。変速機入力軸5c、変速機4c、変速機出力軸6c、ブレーキ25、減速機14c、減速機出力軸15cは、第3軸3と同軸である。
【0021】
図3は、この発明の実施の形態1に係る作業補助アームの要部の構成を示すブロック図である。
【0022】
図3において、この発明の実施の形態1に係る作業補助アームは、変速機(無段変速機)4と、ブレーキ25と、回転角度検出器40と、制御装置41と、面指示手段42とが設けられている。また、制御装置41には、補正用案内面計算手段301が設けられている。
【0023】
なお、ブロックD1は、回転角度検出器40により検出された第1軸1、第2軸2、第3軸3の各軸の角度Θ=(θ1,θ2,θ3)を示し、ブロックD2は、補正用法線方向ベクトルに基づく(式24)を展開して変速比を計算することを示し、ブロックD3は、計算された変速機の変速比を示す。
【0024】
図4は、この発明の実施の形態1に係る作業補助アームの補正用案内面計算手段の構成を示す図である。
【0025】
図4において、補正用案内面計算手段301は、前処理フロー302と、補正用案内面計算フローA303とからなる。
【0026】
また、前処理フロー302は、回転角度検出器40により検出されたアームの各軸の回転角度を作業座標に変換する正変換手段305を含む。
【0027】
さらに、補正用案内面計算フローA303は、案内面外の点pを与えたとき、pに最も近い案内面上の点(垂線の足)qを求める、つまり任意の点から案内面に下ろした垂線の足の座標を計算する垂線の足計算手段306と、案内面外の点pcを通る適当なベクトルと案内面との交点qcを計算し、交点qcが複数あるときには点pcに近い方を選ぶ交点計算手段307と、速度ベクトルdと誤差ベクトルeから接平面投影速度ベクトル(チルダd)を計算する接平面投影速度ベクトル計算手段308と、上記各手段の出力に基づき、つまり(式20)から補正用法線方向ベクトルを計算する補正用法線方向ベクトル計算手段A(第1の補正用法線方向ベクトル計算手段)309とを含む。
【0028】
つぎに、この実施の形態1に係る作業補助アームの動作について図面を参照しながら説明する。図5は、この発明の実施の形態1に係る作業補助アームの補正用案内面計算手段の動作(補正用案内面作成方法)を説明するための図である。
【0029】
図3に示すように、回転角度検出器40により検出されたアームの各軸の回転角度と、面指示手段42により指示された仮想的な案内面の情報は、制御装置41に送られ、所定の演算が行われ、この演算の結果として変速比が得られ、変速機4の変速比が制御される。また、制御装置41は、非常停止ボタン(図示していない)が押されたときなどはブレーキ25を動作させるよう構成されている。
【0030】
ユーザは、作業補助アームが動作すべき仮想的な案内面101を面指示手段42により指示する。例えば、案内面101が平面である場合、案内面101に立てた法線方向ベクトル
【0031】
【数1】
【0032】
と、案内面上のひとつの点の座標
【0033】
【数2】
【0034】
とを指定すれば、ひとつの平面を指定することができる。この場合、面指示手段42は、これらの値を制御装置41に伝える。
【0035】
また、例えば、案内面101が水平面の座標xとyの関数で、
【0036】
【数3】
【0037】
と表されるような曲面の場合、この曲面のx方向、y方向それぞれの接線方向ベクトルを、
【0038】
【数4】
【0039】
とすれば、接線方向ベクトルは、
【0040】
【数5】
【0041】
となる。(式4)、(式5)のベクトルで張られる平面は、図5に示すように、案内面101の曲面の接平面314となる。(式4)、(式5)のベクトルを用いて案内面101の曲面の法線方向ベクトルnを次のように表すことができる。
【0042】
【数6】
【0043】
ここで、×はベクトルの外積を表す。また、(式6)などの分母の二重線はベクトルの大きさ(長さ)を表す。この場合、面指示手段42は、(式3)とアーム手先位置の座標をもとに(式4)、(式5)、(式6)を用いて法線方向ベクトルを演算して制御装置41に伝える。
【0044】
以下では補正用案内面計算手段301におけるひとつの演算の手順について図4と図5を用いて説明する。この実施の形態1の演算の手順を補正用案内面計算フローA303と呼ぶ。図5でアーム手先26の進行方向は、左から右としている。
【0045】
まず、補正用案内面計算フローA303の演算の手順の概要を説明する。アーム手先位置が本来の案内面101上にないとき、前回の速度ベクトルを本来の案内面101に投影したベクトルと、誤差ベクトルを用いて、幾何学的に補正した補正用案内面312の補正用法線方向ベクトル313を求める。このときの補正用法線方向ベクトル313は、前回の速度ベクトルが次回も維持されると仮定し、前回の速度ベクトルを本来の案内面101に投影したベクトルと、今回の誤差ベクトル316と、次回に予想される誤差である離隔ベクトル317の合ベクトルを考え、これを含むような補正用案内面312に設定する。
【0046】
次に、補正用案内面計算フローA303の演算の手順の詳細を説明する。まず、垂線の足計算手段306と交点計算手段307について説明する。
【0047】
垂線の足計算手段306では以下の演算が行われる。案内面外の点p=(px,py,pz)を与えたとき、pに最も近い案内面上の点q=(qx,qy,qz)を求める。点qは垂線の足である。このとき、ベクトルq−pは、点qにおいて案内面に垂直なので次の式が成り立つ。
【0048】
【数7】
【0049】
ここで、●はベクトルの内積を表す。また、点qは案内面上の点なので(式3)を用いて次の式が成り立つ。
【0050】
【数8】
【0051】
(式7)、(式8)、(式9)を連立させれば、与えられた点pに対する点qを得ることができる。この関数を垂線の足計算手段306と呼び、次のように定義する。
【0052】
【数9】
【0053】
また、交点計算手段307では以下の演算が行われる。案内面外の点p=(px,py,pz)を通る適当なベクトルv=(vx,vy,vz)と案内面との交点q=(qx,qy,qz)を求める。kを適当な係数とすれば次の式が成り立つ。
【0054】
【数10】
【0055】
また、qは案内面上の点なので(式9)が成り立つ。(式9)と(式11)を連立させれば、与えられた点pと与えられたベクトルvに対する点qと係数kを得ることができる。点qが複数あるときには点pに近い方を選ぶ。この関数を交点計算手段307と呼び、係数kは必要ないので次のように定義する。
【0056】
【数11】
【0057】
続いて、補正用案内面計算フローA303の演算の手順の詳細を説明する。回転角度検出器40により検出されたアームの各軸の回転角度は、正変換手段305により作業座標に変換される。以下座標は作業座標で表現する。
【0058】
前回のi−1回目、今回のi回目の案内面101外の点の座標を、図5に示すように、それぞれpi−1、piとする。これらの点から案内面101に下ろした垂線の座標をそれぞれqi−1、qiとする。垂線の足計算手段306により、(式10)で定義した関数を用いれば、
【0059】
【数12】
【0060】
などとなる。点piが案内面101に対してもつ誤差ベクトル316をeiとする。このとき次の式のようになる。
【0061】
【数13】
【0062】
前回の速度ベクトルをdi−1とする。
【0063】
【数14】
【0064】
速度ベクトルdi−1を点qiにおける案内面101の接平面314に投影すれば、接平面投影速度ベクトル315(チルダdi−1)は、誤差ベクトル316を用いて次の式のようになる。(なお、チルダdは、dの上に〜があることを表す。)
【0065】
【数15】
【0066】
ここで、速度ベクトルdi−1と誤差ベクトル316(ei)から接平面投影速度ベクトル315(チルダdi−1)を得る計算を接平面投影速度ベクトル計算手段308と呼ぶ。
【0067】
点qiからチルダdi−1進んだ点を、図5に示すように、pci+1とする。
【0068】
【数16】
【0069】
点pci+1から誤差ベクトル316(ei)方向に直線を伸ばし、交点計算手段307により、(式12)で定義した関数を用いて案内面101と交差した点を求め、qci+1とする。
【0070】
【数17】
【0071】
交点qci+1と点pci+1の間の誤差を離隔ベクトル317と呼び、eci+1とおく。
【0072】
【数18】
【0073】
以上を用いて補正用法線方向ベクトル計算手段A309により、次回の補正用法線方向ベクトル313(ハットni+1)を次の式のように定める。(なお、ハットnは、nの上に^があることを表す。)
【0074】
【数19】
【0075】
ここで、前回の速度ベクトルdi−1と、今回の補正用法線方向ベクトルniの外積をaiとおいた。
【0076】
【数20】
【0077】
以上のようにして補正用案内面計算フローA303の演算により補正用法線方向ベクトル313(ハットn)が得られた。この補正用法線方向ベクトル313(ハットn)を用いて各変速機4a、4b、4cの変速比を以下のようにして求める。
【0078】
関節の角速度ベクトルΩと、直交座標系から見たアーム手先26の速度ベクトルvの間には、次の関係が成り立つ。
【0079】
【数21】
【0080】
ここで、J[Θ]は、ヤコビ行列であり、回転角度検出器40により検出された第1軸1、第2軸2、第3軸3の各軸の角度Θ=(θ1,θ2,θ3)の関数である。また、v=(vx,vy,vz)は、x、y、z方向のアーム手先26の速度であり、Ω=(ω1,ω2,ω3)は、第1軸1、第2軸2、第3軸3の角速度である。
【0081】
法線方向ベクトルnと、アーム手先26の速度ベクトルvの間に、次の式が成り立てば両者は直交する。
【0082】
【数22】
【0083】
この(式23)に、上記の式(式22)を代入すれば、次の式が得られる。
【0084】
【数23】
【0085】
この(式24)を展開して、ω1、ω2、ω3の係数を得れば、各変速機4a、4b、4cの変速比が求められる。
【0086】
ここで、上記の法線方向ベクトルnとして、(式1)又は(式6)で得られるベクトルの代わりに、(式20)で得た補正用法線方向ベクトル313(ハットn)を用いれば、アーム手先26は補正用案内面312に沿って動く。
【0087】
次回の速度ベクトルが前回と同じであれば、アーム手先26は補正用案内面312に沿って動作することで点qci+1の位置で本来の案内面101に復帰する。次回の速度ベクトルが前回と異なっていても、以上のアルゴリズムを毎回繰り返すことで誤差が減少していく。従って、アーム手先位置の初期値から外れた面を案内面として指定したり、案内面101に沿って移動中になんらかの原因でアーム手先位置が案内面から外れたりしたときにも案内面101に戻って来られる効果がある。
【0088】
なお、(式17)で点qiから進んだ点pci+1の座標を求める際、次回の速度ベクトルが前回の速度ベクトルと同じであるとの仮定で前回の接平面投影速度ベクトル315(チルダdi−1)を加えているが、前回の接平面投影速度ベクトル315に適当なゲインを与えたものを加えてもよい。また、前回の接平面投影速度ベクトル315の代わりに適当な速度ベクトルを予測したものを加えるようにしてもよい。
【0089】
また、ユーザが面指示手段42に案内面101を指示するとき、必ずしも面を記述する情報として案内面101に立てた法線方向ベクトルnと面上のひとつの点の座標p=(x0,y0,z0)を指定しなくてもよい。例えば、案内面101が平面であれば、面上の点3点の座標を指示するなどでもよい。
【0090】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2に係る作業補助アームについて図6から図9までを参照しながら説明する。図6は、この発明の実施の形態2に係る作業補助アームの補正用案内面計算手段の構成を示す図である。なお、この発明の実施の形態2に係る作業補助アームの基本的な構成は、上記の実施の形態1と同様である。
【0091】
図6において、補正用案内面計算手段301は、前処理フロー302と、補正用案内面計算フローB304とからなる。
【0092】
また、前処理フロー302は、回転角度検出器40により検出されたアームの各軸の回転角度を作業座標に変換する正変換手段305を含む。
【0093】
さらに、補正用案内面計算フローB304は、案内面外の点pを与えたとき、pに最も近い案内面上の点(垂線の足)qを求める、つまり任意の点から案内面に下ろした垂線の足の座標を計算する垂線の足計算手段306と、案内面外の点pcを通る鉛直方向ベクトルgと案内面との交点qcを計算し、交点qcが複数あるときには点pcに近い方を選ぶ交点計算手段307と、速度ベクトルdと誤差ベクトルeから接平面投影速度ベクトル(チルダd)を計算する接平面投影速度ベクトル計算手段308と、上記各手段の出力に基づき、つまり(式38)から補正用法線方向ベクトルを計算する補正用法線方向ベクトル計算手段B(第2の補正用法線方向ベクトル計算手段)310とを含む。
【0094】
つぎに、この実施の形態2に係る作業補助アームの動作について図面を参照しながら説明する。図7は、この発明の実施の形態2に係る作業補助アームの補正用案内面計算手段の動作(補正用案内面の例)を説明するための図である。また、図8は、この発明の実施の形態2に係る作業補助アームの補正用案内面計算手段の動作(補正用案内面の別の例)を説明するための図である。さらに、図9は、この発明の実施の形態2に係る作業補助アームの補正用案内面計算手段の動作(補正用案内面作成方法)を説明するための図である。
【0095】
この実施の形態2を説明するに当たり、まず、上記の実施の形態1で生じることがある問題点について説明する。図5に示すように、現在のアーム手先26の速度ベクトルの水平方向成分が案内面に近づく方向である場合は、上記の実施の形態1で述べた方法でアーム手先26は補正用案内面312に沿って動作することで、本来の案内面101に復帰することができる。
【0096】
これに対して、現在のアーム手先26の速度ベクトルの水平方向成分が案内面から遠ざかる方向である場合、上記の実施の形態1と同様に前回の速度ベクトルを本来の案内面101に投影したベクトルと、誤差ベクトルを用いて案内面を幾何学的に補正する方法を適用した場合を図7と図8に示す。図中、アーム手先26の進行方向は左から右としている。
【0097】
図7のように、案内面101からの誤差が小さいときは、補正用案内面312は右上あがりになるのでアーム手先26を左から右へ移動させれば、補正用案内面312に沿って動作するので案内面101へ近づき誤差が小さくなる。
【0098】
ところが、図8のように、案内面101からの誤差が大きいときは、補正用案内面312の傾きが鉛直軸を通り越して左上あがりになるので、前回の速度ベクトルの方向と同様にアーム手先26を左から右へ移動させると案内面101からかえって遠ざかってしまう。このため、案内面101からの誤差が大きいときには、誤差を補正するためにもとの速度(図では左から右)とは逆向きの速度(図では右から左)を与えてバックさせなくてはならなくなり、直感的に操作することが難しくなる問題がある。
【0099】
そこで、速度ベクトルの水平方向成分が案内面から遠ざかるときのため、上記の実施の形態1とは別な補正方法を考える。
【0100】
以下では補正用案内面計算フローB304の演算の手順について、図6と図9を用いて説明する。まず、手順の概要を説明する。
【0101】
ここでは、上記の実施の形態1の離隔ベクトル317の代りに、鉛直方向ベクトル318を用いる。このときの補正用法線方向ベクトル313は、前回の速度ベクトルが次回も維持されると仮定し、前回の速度ベクトルを本来の案内面101に投影した接平面投影速度ベクトル315の分を今回の位置から延長し、そこから鉛直方向に伸ばした直線と本来の案内面101との交点までのベクトルを考え、これらの合ベクトルを含むような補正用案内面312に設定する。
【0102】
次に、補正用案内面計算フローB304の演算の手順の詳細を説明する。回転角度検出器40により検出されたアームの各軸の角度は、正変換手段305により作業座標に変換される。以下座標は作業座標で表現する。
【0103】
前回のi−1回目、今回のi回目の案内面外の点の座標を、図9に示すように、それぞれpi−1、piとする。これらの点から案内面101に下ろした垂線の座標をそれぞれqi−1、qiとする。垂線の足計算手段306により、(式10)で定義した関数を用いれば、
【0104】
【数24】
【0105】
などとなる。点piが案内面101に対してもつ誤差ベクトルをeiとする。このとき、次の式のようになる。
【0106】
【数25】
【0107】
前回の速度ベクトルをdi−1とする。
【0108】
【数26】
【0109】
速度ベクトルdi−1を案内面101に投影すれば、接平面投影速度ベクトル315(チルダdi−1)は、誤差ベクトル316を用いて次の式のようになる。
【0110】
【数27】
【0111】
ここで、速度ベクトルdi−1と誤差ベクトル316(ei)から接平面投影速度ベクトル315(チルダdi−1)を得る計算を接平面投影速度ベクトル計算手段308と呼ぶ。
【0112】
点piから接平面投影速度ベクトル315(チルダdi−1)進んだ点をpci+1とする。
【0113】
【数28】
【0114】
この点pci+1から鉛直方向ベクトル318(g)方向に直線を伸ばし、交点計算手段307により、(式12)で定義した関数を用いて案内面101と交差した点求め、qci+1とする。
【0115】
【数29】
【0116】
以上を用いて補正用法線方向ベクトル計算手段B310により、次回の補正用法線方向ベクトル313(ハットni+1)を次の式のように定める。
【0117】
【数30】
【0118】
ここで、前回の速度ベクトルdi−1と、今回の法線方向ベクトルniの外積をaiとおいた。
【0119】
【数31】
【0120】
以上で(式35)、(式36)、(式37)、(式38)が、上記の実施の形態1と異なる。
【0121】
以上のようにして補正用案内面計算フローB304の演算により補正用法線方向ベクトル313(ハットn)が得られた。この補正用法線方向ベクトル313(ハットn)を用いて各変速機4a、4b、4cの変速比は、上記の実施の形態1と同様に求めることができる。
【0122】
ここで、法線方向ベクトルnとして、(式1)又は(式6)で得られるベクトルの代わりに、(式38)で得た補正用法線方向ベクトル313(ハットn)を用いれば、アーム手先26は補正用案内面312に沿って動く。
【0123】
次回の速度ベクトルが前回と同じであれば、アーム手先26は補正用案内面312に沿って動作することで点qci+1の位置で本来の案内面101に復帰する。次回の速度ベクトルが前回と異なっていても、以上のアルゴリズムを毎回繰り返すことで誤差が減少していく。従って、アーム手先位置の初期値から外れた面を案内面として指定したり、案内面101に沿って移動中になんらかの原因でアーム手先位置が案内面から外れたりしたときにも案内面101に戻って来られる効果がある。
【0124】
さらに、現在のアーム手先26の速度ベクトルの水平方向成分が案内面101から遠ざかる方向であり、かつ案内面101からの誤差が大きいときに、前回の速度ベクトルの方向と同じ方向にアーム手先26を移動させると案内面101からかえって遠ざかってしまうことがなくなり、アーム手先26を補正用案内面312に沿って概ね同じ方向へ動作することで本来の案内面101に復帰できるようになる効果がある。
【0125】
なお、(式35)で点piから進んだ点pci+1の座標を求める際、次回の速度ベクトルが前回の速度ベクトルと同じであるとの仮定で前回の接平面投影速度ベクトル315(チルダdi−1)を加えているが、前回の接平面投影速度ベクトル315に適当なゲインを与えたものを加えてもよい。また、前回の接平面投影速度ベクトル315の代わりに適当な速度ベクトルを予測したものを加えるようにしてもよい。
【0126】
また、ユーザが面指示手段42に案内面101を指示するとき、必ずしも面を記述する情報として案内面101に立てた法線方向ベクトルnと面上のひとつの点の座標p=(x0,y0,z0)を指定しなくてもよい。例えば、案内面101が平面であれば面上の点3点の座標を指示するなどでもよい。
【0127】
実施の形態3.
この発明の実施の形態3に係る作業補助アームについて図10から図12までを参照しながら説明する。
【0128】
図10は、この発明の実施の形態3に係る作業補助アームおけるアーム手先の速度ベクトルの向きの場合分けを説明するための図である。また、図11は、この発明の実施の形態3に係る作業補助アームおけるアーム手先の速度ベクトルの水平方向成分が案内面に近づく方向か遠ざかる方向かの判定方法を説明するための図である。さらに、図12は、この発明の実施の形態3に係る作業補助アームの補正用案内面計算手段の構成を示す図である。
【0129】
図12において、補正用案内面計算手段301は、前処理フロー302と、速度ベクトル判定手段311と、補正用案内面計算フローA(第1の補正用案内面計算詳細手段)303と、補正用案内面計算フローB(第2の補正用案内面計算詳細手段)304とからなる。
【0130】
また、前処理フロー302は、回転角度検出器40により検出されたアームの各軸の回転角度を作業座標に変換する正変換手段305を含む。
【0131】
速度ベクトル判定手段311は、現在のアーム手先26の速度ベクトルの水平方向成分が案内面101に近づく方向である場合は、補正用案内面計算フローA303の演算を選択し、現在のアーム手先26の速度ベクトルの水平方向成分が案内面101から遠ざかる方向である場合は、補正用案内面計算フローB304の演算を選択する。
【0132】
この実施の形態3は、補正用案内面計算手段301における演算として、上記の実施の形態1で説明した補正用案内面計算フローA303の方法と、上記の実施の形態2で説明した補正用案内面計算フローB304の方法のどちらを適用するかを判定していずれかを処理するものである。
【0133】
まず、現在のアーム手先位置
【0134】
【数32】
【0135】
が指示された案内面101の面外にあるとき、現在のアーム手先26の速度ベクトル
【0136】
【数33】
【0137】
の水平方向成分(vx,vy,0)が案内面101へ近付く方向である場合と遠ざかる方向である場合に関して、図10に示すように、場合分けを行う。
【0138】
ある点(x0,y0,z0)を通って(式1)で表す法線方向ベクトルに直交する案内面101の接平面314の式は、次のようになる。
【0139】
【数34】
【0140】
(式51)で表す現在のアーム手先位置と、案内面101の上下関係については次のように表現できる。案内面上の点を、
【0141】
【数35】
【0142】
とする。このとき、
【0143】
【数36】
【0144】
として、点(x0,y0,z0)がq近傍であるとすれば、
【0145】
【数37】
【0146】
ならば、現在の手先位置は案内面101より上側、
【0147】
【数38】
【0148】
ならば、現在の手先位置は案内面101より下側となる。
【0149】
次に、(式52)で表す現在のアーム手先26の速度ベクトルと、(式1)で表す案内面101の法線方向ベクトルの水平方向成分については、それぞれのベクトルの水平方向成分同士の内積の符号を用いて、
【0150】
【数39】
【0151】
ならば、それぞれのベクトルの水平方向成分は逆方向、
【0152】
【数40】
【0153】
ならば、それぞれのベクトルの水平方向成分は同じ方向となる。
【0154】
これらの関係の組み合わせにより、現在のアーム手先26の速度ベクトルの水平方向成分が案内面101に近づく方向か、遠ざかる方向かを図11のようにまとめることができる。
【0155】
図12に示す速度ベクトル判定手段311は、図11の場合分けにより、(式57)と(式59)を用いて、現在のアーム手先26の速度ベクトルの水平方向成分が案内面101に近づく方向である場合は、上記の実施の形態1で説明した補正用案内面計算フローA303の演算を選択する。また、現在のアーム手先26の速度ベクトルの水平方向成分が案内面101から遠ざかる方向である場合は、上記の実施の形態2で説明した補正用案内面計算フローB304の演算を選択する。
【0156】
以上の判定と演算により、現在のアーム手先26の速度ベクトルの水平方向成分が案内面101に近づく方向であっても、遠ざかる方向であっても、アーム手先26は補正用案内面312に沿って動作することで本来の案内面101に復帰するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0157】
【図1】この発明の実施の形態1に係る作業補助アームの全体の構成を示す斜視図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る作業補助アームの駆動部分をアームの正面から見た構成を示す図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る作業補助アームの要部の構成を示すブロック図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係る作業補助アームの補正用案内面計算手段の構成を示す図である。
【図5】この発明の実施の形態1に係る作業補助アームの補正用案内面計算手段の動作(補正用案内面作成方法)を説明するための図である。
【図6】この発明の実施の形態2に係る作業補助アームの補正用案内面計算手段の構成を示す図である。
【図7】この発明の実施の形態2に係る作業補助アームの補正用案内面計算手段の動作(補正用案内面の例)を説明するための図である。
【図8】この発明の実施の形態2に係る作業補助アームの補正用案内面計算手段の動作(補正用案内面の別の例)を説明するための図である。
【図9】この発明の実施の形態2に係る作業補助アームの補正用案内面計算手段の動作(補正用案内面作成方法)を説明するための図である。
【図10】この発明の実施の形態3に係る作業補助アームおけるアーム手先の速度ベクトルの向きの場合分けを説明するための図である。
【図11】この発明の実施の形態3に係る作業補助アームおけるアーム手先の速度ベクトルの水平方向成分が案内面に近づく方向か遠ざかる方向かの判定方法を説明するための図である。
【図12】この発明の実施の形態3に係る作業補助アームの補正用案内面計算手段の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0158】
4 変速機、25 ブレーキ、26 アーム手先、40 回転角度検出器、41 制御装置、42 面指示手段、301 補正用案内面計算手段、302 前処理フロー、303 補正用案内面計算フローA、304 補正用案内面計算フローB、305 正変換手段、306 垂線の足計算手段、307 交点計算手段、308 接平面投影速度ベクトル計算手段、309 補正用法線方向ベクトル計算手段A、310 補正用法線方向ベクトル計算手段B、311 速度ベクトル判定手段。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の軸の変位量に基づいてその作業座標が決定されるアームを設け、前記複数の軸をそれぞれ対応した複数の変速機を介して差動機構で結合し、前記複数の変速機の変速比を、指示された案内面以外へのアーム手先の移動を拘束するよう制御装置によって制御するようにした作業補助アームであって、
前記アームの複数の軸の回転角度を検出する回転角度検出器と、
ユーザにより指示された仮想的な案内面を入力する面指示手段とを備え、
前記制御装置は、
前記回転角度検出器により検出された回転角度、及び前記面指示手段により指示された仮想的な案内面に基づいて、現在のアーム手先の位置を含み、かつ前記指示された案内面とは平行ではない補正用案内面を計算する補正用案内面計算手段を含み、
前記補正用案内面計算手段により計算された補正用案内面に沿って、前記アーム手先が動くように前記複数の変速機の変速比を求める
ことを特徴とする作業補助アーム。
【請求項2】
前記補正用案内面計算手段は、
前記回転角度検出器により検出されたアームの複数の軸の回転角度を作業座標に変換する正変換手段と、
前記作業座標上の案内面外の第1の点から案内面に下ろした垂線の足である第2の点の座標を計算する垂線の足計算手段と、
前回及び今回の第1の点間の速度ベクトルと第1及び第2の点間の誤差ベクトルから接平面投影速度ベクトルを計算する接平面投影速度ベクトル計算手段と、
前記第2の点から接平面投影速度ベクトルだけ進んだ第3の点を通る離隔ベクトルと案内面と交差する第4の点を計算する交点計算手段と、
前記各手段の出力、並びに前記案内面の法線方向ベクトルに基づき、前記補正用案内面の補正用法線方向ベクトルを計算する第1の補正用法線方向ベクトル計算手段とを含む
ことを特徴とする請求項1記載の作業補助アーム。
【請求項3】
前記補正用案内面計算手段は、
前記回転角度検出器により検出されたアームの複数の軸の回転角度を作業座標に変換する正変換手段と、
前記作業座標上の案内面外の第1の点から案内面に下ろした垂線の足である第2の点の座標を計算する垂線の足計算手段と、
前回及び今回の第1の点間の速度ベクトルと第1及び第2の点間の誤差ベクトルから接平面投影速度ベクトルを計算する接平面投影速度ベクトル計算手段と、
前記第1の点から接平面投影速度ベクトルだけ進んだ第3の点を通る鉛直方向ベクトルと案内面と交差する第4の点を計算する交点計算手段と、
前記各手段の出力、並びに前記案内面の法線方向ベクトルに基づき、前記補正用案内面の補正用法線方向ベクトルを計算する第2の補正用法線方向ベクトル計算手段とを含む
ことを特徴とする請求項1記載の作業補助アーム。
【請求項4】
前記補正用案内面計算手段は、
前記回転角度検出器により検出されたアームの複数の軸の回転角度を作業座標に変換する正変換手段と、
前記作業座標上の、現在のアーム手先の速度ベクトルの水平方向成分が案内面に近づく方向である場合は、第1の補正用案内面計算詳細手段へ進み、現在のアーム手先の速度ベクトルの前記作業座標上の水平方向成分が案内面から遠ざかる方向である場合は、第2の補正用案内面計算詳細手段へ進む速度ベクトル判定手段と、
前記補正用案内面の補正用法線方向ベクトルを計算する第1の補正用案内面計算詳細手段と、
前記補正用案内面の補正用法線方向ベクトルを計算する第2の補正用案内面計算詳細手段とを含み、
前記第1の補正用案内面計算詳細手段は、
前記作業座標上の案内面外の第1の点から案内面に下ろした垂線の足である第2の点の座標を計算する第1の垂線の足計算手段と、
前回及び今回の第1の点間の速度ベクトルと第1及び第2の点間の誤差ベクトルから接平面投影速度ベクトルを計算する第1の接平面投影速度ベクトル計算手段と、
前記第2の点から接平面投影速度ベクトルだけ進んだ第3の点を通る離隔ベクトルと案内面と交差する第4の点を計算する第1の交点計算手段と、
前記各手段の出力、並びに前記案内面の法線方向ベクトルに基づき、前記補正用案内面の補正用法線方向ベクトルを計算する第1の補正用法線方向ベクトル計算手段とを含むとともに、
前記第2の補正用案内面計算詳細手段は、
前記作業座標上の案内面外の第1の点から案内面に下ろした垂線の足である第2の点の座標を計算する第2の垂線の足計算手段と、
前回及び今回の第1の点間の速度ベクトルと第1及び第2の点間の誤差ベクトルから接平面投影速度ベクトルを計算する第2の接平面投影速度ベクトル計算手段と、
前記第1の点から接平面投影速度ベクトルだけ進んだ第3の点を通る鉛直方向ベクトルと案内面と交差する第4の点を計算する第2の交点計算手段と、
前記各手段の出力、並びに前記案内面の法線方向ベクトルに基づき、前記補正用案内面の補正用法線方向ベクトルを計算する第2の補正用法線方向ベクトル計算手段とを含む
ことを特徴とする請求項1記載の作業補助アーム。
【請求項1】
複数の軸の変位量に基づいてその作業座標が決定されるアームを設け、前記複数の軸をそれぞれ対応した複数の変速機を介して差動機構で結合し、前記複数の変速機の変速比を、指示された案内面以外へのアーム手先の移動を拘束するよう制御装置によって制御するようにした作業補助アームであって、
前記アームの複数の軸の回転角度を検出する回転角度検出器と、
ユーザにより指示された仮想的な案内面を入力する面指示手段とを備え、
前記制御装置は、
前記回転角度検出器により検出された回転角度、及び前記面指示手段により指示された仮想的な案内面に基づいて、現在のアーム手先の位置を含み、かつ前記指示された案内面とは平行ではない補正用案内面を計算する補正用案内面計算手段を含み、
前記補正用案内面計算手段により計算された補正用案内面に沿って、前記アーム手先が動くように前記複数の変速機の変速比を求める
ことを特徴とする作業補助アーム。
【請求項2】
前記補正用案内面計算手段は、
前記回転角度検出器により検出されたアームの複数の軸の回転角度を作業座標に変換する正変換手段と、
前記作業座標上の案内面外の第1の点から案内面に下ろした垂線の足である第2の点の座標を計算する垂線の足計算手段と、
前回及び今回の第1の点間の速度ベクトルと第1及び第2の点間の誤差ベクトルから接平面投影速度ベクトルを計算する接平面投影速度ベクトル計算手段と、
前記第2の点から接平面投影速度ベクトルだけ進んだ第3の点を通る離隔ベクトルと案内面と交差する第4の点を計算する交点計算手段と、
前記各手段の出力、並びに前記案内面の法線方向ベクトルに基づき、前記補正用案内面の補正用法線方向ベクトルを計算する第1の補正用法線方向ベクトル計算手段とを含む
ことを特徴とする請求項1記載の作業補助アーム。
【請求項3】
前記補正用案内面計算手段は、
前記回転角度検出器により検出されたアームの複数の軸の回転角度を作業座標に変換する正変換手段と、
前記作業座標上の案内面外の第1の点から案内面に下ろした垂線の足である第2の点の座標を計算する垂線の足計算手段と、
前回及び今回の第1の点間の速度ベクトルと第1及び第2の点間の誤差ベクトルから接平面投影速度ベクトルを計算する接平面投影速度ベクトル計算手段と、
前記第1の点から接平面投影速度ベクトルだけ進んだ第3の点を通る鉛直方向ベクトルと案内面と交差する第4の点を計算する交点計算手段と、
前記各手段の出力、並びに前記案内面の法線方向ベクトルに基づき、前記補正用案内面の補正用法線方向ベクトルを計算する第2の補正用法線方向ベクトル計算手段とを含む
ことを特徴とする請求項1記載の作業補助アーム。
【請求項4】
前記補正用案内面計算手段は、
前記回転角度検出器により検出されたアームの複数の軸の回転角度を作業座標に変換する正変換手段と、
前記作業座標上の、現在のアーム手先の速度ベクトルの水平方向成分が案内面に近づく方向である場合は、第1の補正用案内面計算詳細手段へ進み、現在のアーム手先の速度ベクトルの前記作業座標上の水平方向成分が案内面から遠ざかる方向である場合は、第2の補正用案内面計算詳細手段へ進む速度ベクトル判定手段と、
前記補正用案内面の補正用法線方向ベクトルを計算する第1の補正用案内面計算詳細手段と、
前記補正用案内面の補正用法線方向ベクトルを計算する第2の補正用案内面計算詳細手段とを含み、
前記第1の補正用案内面計算詳細手段は、
前記作業座標上の案内面外の第1の点から案内面に下ろした垂線の足である第2の点の座標を計算する第1の垂線の足計算手段と、
前回及び今回の第1の点間の速度ベクトルと第1及び第2の点間の誤差ベクトルから接平面投影速度ベクトルを計算する第1の接平面投影速度ベクトル計算手段と、
前記第2の点から接平面投影速度ベクトルだけ進んだ第3の点を通る離隔ベクトルと案内面と交差する第4の点を計算する第1の交点計算手段と、
前記各手段の出力、並びに前記案内面の法線方向ベクトルに基づき、前記補正用案内面の補正用法線方向ベクトルを計算する第1の補正用法線方向ベクトル計算手段とを含むとともに、
前記第2の補正用案内面計算詳細手段は、
前記作業座標上の案内面外の第1の点から案内面に下ろした垂線の足である第2の点の座標を計算する第2の垂線の足計算手段と、
前回及び今回の第1の点間の速度ベクトルと第1及び第2の点間の誤差ベクトルから接平面投影速度ベクトルを計算する第2の接平面投影速度ベクトル計算手段と、
前記第1の点から接平面投影速度ベクトルだけ進んだ第3の点を通る鉛直方向ベクトルと案内面と交差する第4の点を計算する第2の交点計算手段と、
前記各手段の出力、並びに前記案内面の法線方向ベクトルに基づき、前記補正用案内面の補正用法線方向ベクトルを計算する第2の補正用法線方向ベクトル計算手段とを含む
ことを特徴とする請求項1記載の作業補助アーム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−238371(P2008−238371A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−85316(P2007−85316)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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