説明

作業車の画像処理装置

【課題】 列状に並んだ物体を撮影し、列状に並んだ物体に沿って線分を設定する作業車の画像処理装置において、外乱の影響をできるだけ小さくする。
【解決手段】 撮影データから物体A1,A2の色相を備えた画素を抽出する抽出手段と撮影データにエッジ処理を施して画素を抽出するエッジ処理手段とを備え、抽出手段及びエッジ処理手段の両方の処理を受けて抽出された画素を物体A1,A2に対応する画素として設定、又は、抽出手段及びエッジ処理手段の一方の処理を受けて抽出された画素を物体A1,A2に対応する画素として設定する画素設定手段を備える。物体A1,A2に対応する画素に沿って線分を設定する線分設定手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の色相を備えた物体が列状に並んだ状態において、列状に並んだ物体を撮影し、列状に並んだ物体に沿って線分を設定する作業車の画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
作業車の一例である乗用型田植機において、走行しながら植付作業を行う場合、前回の植付行程で植え付けられた苗(所定の色相を備えた物体に相当)が、機体の横側に列状に並んでいる。
この場合、田面を撮影して撮影データを得る撮影手段を備えて、撮影データから苗の色相を備えた画素を抽出し、この画素を田面に植え付けられた苗に対応する画素として抽出して、ハフ変換等に基づいて田面に植え付けられた苗に対応する画素に沿って線分を設定し、設定された線分に沿って機体が自動的に走行するように構成したものがある(特許文献1参照)
【0003】
【特許文献1】特開平6−14611号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
所定の色相を備えた物体が列状に並んだ状態において、列状に並んだ物体を撮影する場合、特に自然の中に存在する物体を撮影する際には、多くの外乱(例えば物体が存在する面(地面や田面等)に物体の色相に近い色相を備えた樹木や建物が映ったり、物体が存在する面(地面や田面等)に太陽光が反射したりする等)も一緒に撮影されてしまう。
【0005】
これにより、例えば物体が存在する面(地面や田面等)に物体の色相に近い色相を備えた樹木や建物が映り、物体に加えて樹木や建物も一緒に撮影されてしまうと、樹木や建物も物体と判断されてしまうことがあるので、物体に対応する画素が撮影データに広い範囲に亘って多数存在するような状態となり、線分を適切に設定することができない状態になることがある。逆に例えば物体が存在する面(地面や田面等)に太陽光が反射すると、太陽光により物体の色相が消されたような状態となることがあるので、物体に対応する画素が撮影データに殆ど存在しない状態となり、線分を適切に設定することができない状態になることがある。
【0006】
本発明は、列状に並んだ物体を撮影し、列状に並んだ物体に沿って線分を設定する作業車の画像処理装置において、外乱の影響をできるだけ小さくすることができるように構成することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[I]
(構成)
本発明の第1特徴は作業車の画像処理装置において次のように構成することにある。
所定の色相を備えた物体が列状に並んだ状態において、列状に並んだ物体を撮影して撮影データを得る撮影手段を備える。撮影データから物体の色相を備えた画素を抽出する抽出手段と、撮影データにエッジ処理を施して画素を抽出するエッジ処理手段とを備える。抽出手段及びエッジ処理手段の両方の処理を受けて抽出された画素を物体に対応する画素として設定、又は、抽出手段及びエッジ処理手段の一方の処理を受けて抽出された画素を物体に対応する画素として設定する画素設定手段を備える。物体に対応する画素に沿って線分を設定する線分設定手段を備える。
【0008】
(作用)
例えば物体が存在する面(地面や田面等)に物体の色相に近い色相を備えた樹木や建物が映り、物体に加えて樹木や建物も一緒に撮影されてしまうと、抽出手段により撮影データから、物体の色相を備えた画素が抽出されるのに加えて、物体の色相に近い色相を備えた樹木や建物の画素も抽出される。
【0009】
これにより、本発明の第1特徴によると、エッジ処理手段により撮影手段の撮影データにエッジ処理を施すことによって、撮影データから色相や明るさに変化のある画素を抽出すればよい。一般に物体の色相に近い色相を備えた樹木や建物は比較的広い範囲に亘って映るのに対して、色相や明るさの変化がないので、エッジ処理を施すことにより、物体の色相に近い色相を備えた樹木や建物の画素を除去することができる。逆に物体の表面や輪郭部分は一般に色相や明るさの変化があるので、エッジ処理を施すことにより、物体の色相を備えた画素を抽出することができる。
このように本発明の第1特徴によると、例えば物体が存在する面(地面や田面等)に物体の色相に近い色相を備えた樹木や建物が映る場合には、抽出手段及びエッジ処理手段の両方の処理を受けて抽出された画素を、物体に対応する画素として設定することにより、物体の色相に近い色相を備えた樹木や建物の画素を除去しながら、列状に並んだ物体に沿って線分を適切に設定することができる。
【0010】
例えば物体が存在する面(地面や田面等)に太陽光が反射して、太陽光により物体の色相が消されたような状態になると、抽出手段により撮影データから物体の色相を備えた画素を抽出したとしても、抽出された画素の数は非常に少ないものになる。
前述のように、物体の表面や輪郭部分は一般に色相や明るさの変化があるので、太陽光により物体の色相が消されたような状態になっていても、エッジ処理を施すことにより、物体の色相を備えた画素を抽出することができる。
【0011】
これにより、本発明の第1特徴によると、エッジ処理手段により撮影データにエッジ処理を施すことによって、撮影データから色相や明るさに変化のある画素を抽出することにより、物体の色相を備えた画素ではあるが太陽光により抽出手段により抽出されなかった画素が、エッジ処理を施すことによって抽出される。従って、抽出手段により抽出された画素とエッジ処理手段により抽出された画素とにより、物体の色相を備えた画素を多く抽出することができる。
このように本発明の第1特徴によると、例えば物体が存在する面(地面や田面等)に太陽光が反射して、太陽光により物体の色相が消されたような状態になる場合には、抽出手段及びエッジ処理手段の一方の処理を受けて抽出された画素を、物体に対応する画素として設定することにより、物体に対応する画素を多く抽出することができて、列状に並んだ物体に沿って線分を適切に設定することができる。
【0012】
(発明の効果)
本発明の第1特徴によると、列状に並んだ物体を撮影し、列状に並んだ物体に沿って線分を設定する作業車の画像処理装置において、例えば物体が存在する面(地面や田面等)に物体の色相に近い色相を備えた樹木や建物が映った場合や、例えば物体が存在する面(地面や田面等)に太陽光が反射した場合に、物体に対応する画素を適切に抽出し、列状に並んだ物体に沿って線分を適切に設定することができるようになって、画像処理機能を高めることができた。
【0013】
[II]
(構成)
本発明の第2特徴は、本発明の第1特徴の作業車の画像処理装置において次のように構成することにある。
撮影データを複数の領域に分割する分割処理手段を備える。領域の各々において画素設定手段により物体に対応する画素を設定する。
【0014】
(作用)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
前項[I]に記載のように、物体が存在する面(地面や田面等)に物体の色相に近い色相を備えた樹木や建物が映る状態や、物体が存在する面(地面や田面等)に太陽光が反射する状態は、撮影データの全ての範囲に亘って発生するものではなく、撮影データにおいて前述の状態が発生した部分や発生していない部分がある。
【0015】
本発明の第2特徴によると、撮影データを複数の領域に分割することにより、領域の各々において、物体が存在する面(地面や田面等)に物体の色相に近い色相を備えた樹木や建物が映る状態が発生しているのか、物体が存在する面(地面や田面等)に太陽光が反射する状態が発生しているのかを判断することができる。これにより領域の各々において、抽出手段及びエッジ処理手段の両方の処理を受けて抽出された画素を物体に対応する画素として設定したり、抽出手段及びエッジ処理手段の一方の処理を受けて抽出された画素を物体に対応する画素として設定したりして、物体に対応する画素を適切に設定することができる。
【0016】
(発明の効果)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第2特徴によると、撮影データを複数の領域に分割し、領域の各々において物体に対応する画素を適切に設定することができるようになって、画像処理機能を高めることができた。
【0017】
[III]
(構成)
本発明の第3特徴は、本発明の第1又は第2特徴の作業車の画像処理装置において次のように構成することにある。
撮影データのゲインを変更自在なゲイン変更手段を備える。
【0018】
(作用)
本発明の第3特徴によると、本発明の第1又は第2特徴と同様に前項[I][II]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
例えば物体が存在する面(地面や田面等)に太陽光が反射すると、太陽光の反射具合によって、物体が存在していない部分でも、物体の色相に近い色相を備え且つ色相や明るさの変化が生じている部分が発生することがあり、このような部分が物体に対応する画素として設定されてしまうことがある。
【0019】
本発明の第3特徴によると、前述のように物体の色相に近い色相を備え且つ色相や明るさの変化が生じている部分が発生した場合、撮影データのゲインを大きくしてやり、前述の部分の画素のデータを、上限値(8ビットであれば、255ビットとなる)まで大きくして、上限値で揃えてしまうことができる(上限値の一定値で変化の無い状態とすることができる)。
このように、物体の色相に近い色相を備え且つ色相や明るさの変化が生じている部分の画素のデータを、上限値で揃えてしまえば(上限値の一定値で変化の無い状態とすることができれば)、エッジ処理を施すことにより、物体の色相に近い色相を備え且つ色相や明るさの変化が生じている部分の画素を除去することができる。
【0020】
(発明の効果)
本発明の第3特徴によると、本発明の第1又は第2特徴と同様に前項[I][II]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第3特徴によると、物体の色相に近い色相を備え且つ色相や明るさの変化が生じている部分が発生した場合、このような部分の画素を除去することができるようになって、画像処理機能を高めることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1及び図2に示すように、右及び左の前輪1、右及び左の後輪2を備えた機体の後部に、リンク機構3及びリンク機構3を昇降駆動する油圧シリンダ4が備えられ、リンク機構3の後部に6条植型式の苗植付装置5が支持されて、作業車の一例である乗用型田植機が構成されている。苗植付装置5に右及び左の支持フレーム6が固定されて右及び左の横外方に延出されており、右及び左の支持フレーム6にCCD型式のカメラ7(撮影手段に相当)が固定されている。
【0022】
図1及び図2に示すように、前回の植付行程において、田面に植え付けられた苗A1,A2(物体に相当)が、機体の右又は左の横側に列状に並んでいる。田面に植え付けられた苗A1(機体の直ぐ隣の列)の上方付近に、右及び左のカメラ7が位置しており、右及び左のカメラ7が斜め前方下方に向けられている。これにより、右及び左の一方のカメラ7は、右及び左の一方の前輪1の直前から前方の所定の範囲を撮影して、田面に植え付けられた苗A1(機体の直ぐ隣の列)及び田面に植え付けられた苗A2(機体の隣の隣の列)を撮影するのであり、右及び左の他方のカメラ7は苗を撮影しない。右及び左の一方の前輪1の直前から前方の所定の範囲は、樹木の映り込みや朝日及び夕日の映り込みが少なく、右及び左の前輪1による波の影響が少ない。
【0023】
右(左)のカメラ7で撮影した撮影データ(画像)が以下の説明のように処理されて、田面に植え付けられた苗A1(機体の直ぐ隣の列)に相当する線分L1、及び田面に植え付けられた苗A2(機体の隣の隣の列)に相当する線分L2が設定されるのであり、田面に植え付けられた苗A1(機体の直ぐ隣の列)に相当する線分L1に沿って機体が走行するように、右及び左の前輪1が自動的に操向操作される。
【0024】
次に、右(左)のカメラ7で撮影した撮影データ(画像)の処理について、図15及び図3〜図14に基づいて説明する。
図3及び図4に示すように、撮影データ(画像)において(ステップS1)、色相の赤成分、緑成分及び青成分のうち、赤成分の濃度よりも緑成分の濃度が大で、青成分の濃度よりも赤成分の濃度が大である画素(図3に示す範囲D1に属する画素)が抽出され、この画素のうち彩度Sが設定値S0よりも大の画素G0が抽出される(ステップS2)(抽出手段に相当)。この場合、設定値S0は大小に任意に変更可能である。
【0025】
画素G0の抽出とは別に、撮影データ(画像)に対してエッジ処理が施される(ステップS3)(エッジ処理手段に相当)。これにより、撮影データ(画像)において、色相(赤成分、緑成分及び青成分)や明るさの変化の大きい画素が「1」と設定され、色相(赤成分、緑成分及び青成分)や明るさの変化の小さい画素が「0」として設定されて、2値化処理が行われる。
【0026】
図4に示すように、撮影データ(画像)の上下方向(撮影データ(画像)の上側が機体の前側で、撮影データ(画像)の下側が機体の後側)と交差する分割線E1により、撮影データ(画像)が4個の領域B11,B12,B13,B14に分割される(ステップS4)(分割処理手段に相当)。この場合に、分割線E1により撮影データ(画像)を4個の領域B11〜B14に分割するのではなく、分割線E1による撮影データ(画像)の分割数を4個から多くしたり少なくしたりすることは、任意に変更可能であり、分割線E1を撮影データ(画像)の上下方向(撮影データ(画像)の上側が機体の前側で、撮影データ(画像)の下側が機体の後側)に設定して、領域B11〜B14を設定することもできる。
【0027】
図4に示すように、領域B11〜B14の各々において、画素G0の数Kがカウントされる(ステップS6)。
例えば図4の領域B11,B12のように、田面に苗A1,A2の色相に近い色相を備えた樹木や建物が映り、右(左)のカメラ7により苗A1,A2に加えて樹木や建物も一緒に撮影されてしまうと、苗A1,A2の色相に近い色相を備えた樹木や建物の画素C1が画素G0と一緒に多数抽出されて、画素C1が画素G0としてカウントされてしまい、画素G0(画素C1)の数Kが第2設定値K2よりも多くなることがある(ステップS6,S7)。
【0028】
一般に苗A1,A2の色相に近い色相を備えた樹木や建物は比較的広い範囲に亘って映るのに対して、色相や明るさの変化がないので、エッジ処理を施すことにより、苗A1,A2の色相に近い色相を備えた樹木や建物の画素C1は「0」として設定される。逆に苗A1,A2の画素G0は、色相(赤成分、緑成分及び青成分)や明るさの変化が大きいので、「1」として設定される。
これにより、画素G0(画素C1)の数Kが第2設定値K2よりも多い場合(ステップS6,S7)、画素G0且つエッジ処理で「1」が設定された画素が、苗A1,A2に対応する画素G01として設定される(ステップS8)(画素G0が残されて、画素C1が除去される)(図5の領域B11,B12参照)(画素設定手段に相当)。
【0029】
例えば図4の領域B14のように、田面に太陽光が反射して、太陽光により苗A1,A2が消されたような状態になると、画素G0の数Kが第1設定値K1よりも少なくなることがある(ステップS6,S7)。苗A1,A2の表面や輪郭部分は一般に色相や明るさの変化があるので、太陽光により苗A1,A2の色相が消されたような状態になっていても、エッジ処理を施すことにより、苗A1,A2の色相を備えた画素(画素G0に相当する画素)が「1」として設定され、これ以外の画素が「0」として設定される。
【0030】
これにより、画素G0の数Kが第1設定値K1よりも少ない場合(ステップS6,S7)、画素G0又はエッジ処理で「1」が設定された画素が、苗A1,A2に対応する画素G01として設定される(ステップS9)(画素G0が苗A1,A2に対応する画素G01として設定され、エッジ処理で「1」が設定された画素が、苗A1,A2に対応する画素G01として設定される)(図5の領域B14参照)(画素設定手段に相当)。
【0031】
例えば図4の領域B13のように、画素G0の数Kが第1及び第2設定値K1,K2の間にあると(ステップS6,S7)、エッジ処理で「1」が設定された画素は考慮されずに、画素G0が苗A1,A2に対応する画素G01として設定される(図5の領域B13参照)(ステップS10)。
【0032】
例えば田面に太陽光が反射すると、太陽光の反射具合によって、苗A1,A2が存在していない部分でも、苗A1,A2の色相に近い色相を備え且つ色相や明るさの変化が生じている部分が発生することがあり、このような部分が苗A1,A2に対応する画素して設定されてしまうことがある。
この場合に、撮影データ(画像)のゲインが変更可能に構成されており(ゲイン変更手段に相当)、撮影データ(画像)のゲインを大きくしてやることにより、前述の部分の画素のデータを、上限値(8ビットであれば、255ビットとなる)まで大きくして、上限値で揃える(上限値の一定値で変化の無い状態とすることができる)。このように、苗A1,A2の色相に近い色相を備え且つ色相や明るさの変化が生じている部分の画素のデータを、上限値で揃えてしまえば(上限値の一定値で変化の無い状態とすることができれば)、エッジ処理を施すことにより(ステップS3)、苗A1,A2の色相に近い色相を備え且つ色相や明るさの変化が生じている部分の画素が、「0」として設定されて、ステップS8,S9で除去される。
【0033】
次に図6に示すように、撮影データ(画像)において、撮影データ(画像)の上下方向(撮影データ(画像)の上側が機体の前側で、撮影データ(画像)の下側が機体の後側)と交差する分割線E2により、撮影データ(画像)が10個の領域B2に分割される。この場合に、分割線E2により撮影データ(画像)を10個の領域B2に分割するのではなく、分割線E2による撮影データ(画像)の分割数を10個から多くしたり少なくしたりすることは、任意に変更可能である。
【0034】
領域B2の各々において、苗A1,A2に対応する画素G01に基づいてフィルタリング処理が行われ、図7に示すように、苗A1,A2に対応する画素G01のうち最上位から4個の画素G01が、候補画素G1,G2,G3,G4として選択される(最上位から4個の候補画素G1,G2,G3,G4以外の画素G01が削除される)。図8に示すように、候補画素G1〜G4に基づいて、ハフ変換により候補画素G1〜G4に沿った線分L1,L2,L3,L4,L5が設定される。この場合、最上位から4個ではなく、最上位から3個や5個のように、任意の個数の候補画素を選択するように構成することが可能である。
【0035】
図8に示すように、撮影データ(画像)の上下方向(撮影データ(画像)の上側が機体の前側で、撮影データ(画像)の下側が機体の後側)と交差する分割線E3によって、撮影データ(画像)が4個の領域B31,B32,B33,B34に分割される。線分L1〜L5の各々において、領域B31で線分L1〜L5に属する候補画素G1〜G4の数N1、領域B32で線分L1〜L5に属する候補画素G1〜G4の数N2、領域B33で線分L1〜L5に属する候補画素G1〜G4の数N3、及び領域B34で線分L1〜L5に属する候補画素G1〜G4の数N4が求められる。これにより、図8から図9に示すように、線分L1〜L5の各々において、候補画素G1〜G4の数N1〜N4の合計が設定よりも少ない線分L5が削除(無視)される。
【0036】
線分L1〜L4の各々において、評価値M1が、
M1=N4×(N1+N2+N3)
の式に基づいて求められ、図9から図10に示すように、線分L1〜L4のうち評価値M1が最上位から所定個数の線分L1,L2,L3が選択される(線分L1〜L4のうち評価値M1が最上位から所定個数以外の線分L4が削除される)。
【0037】
図11に示すように、前の時点の撮影データ(画像)において、田面に植え付けられた苗A1(機体の直ぐ隣の列)に相当する線分L11、及び田面に植え付けられた苗A2(機体の隣の隣の列)に相当する線分L12が設定されている場合、線分L11,L12の各々において、撮影データ(画像)の中央からの位置F11,F12及び撮影データ(画像)に対する角度H11,H12が求められる。同様に図10に示す線分L1,L2,L3の各々において、撮影データ(画像)の中央からの位置F1,F2,F3及び撮影データ(画像)に対する角度H1,H2,H3が求められ、線分L1,L2,L3に属する候補画素G1,G2,G3の数(N1+N2+N3+N4)が求められる。
【0038】
これにより、図10及び図11に示すように、線分L1と線分L11,L12とにおいて、
J1=位置偏差(F1−F11)×角度偏差(H1−H11)
J2=位置偏差(F1−F12)×角度偏差(H1−H12)
の式に基づいてJ1,J2が求められるのであり、線分L1の評価値M2が次の式で求められる。
M2=線分L1に属する候補画素G1の数(N1+N2+N3+N4)/(J1及びJ2のうちの小さいもの)
【0039】
同様に図10及び図11に示すように、線分L2と線分L11,L12とにおいて、
J1=位置偏差(F2−F11)×角度偏差(H2−H11)
J2=位置偏差(F2−F12)×角度偏差(H2−H12)
の式に基づいてJ1,J2が求められるのであり、線分L2の評価値M2が次の式で求められる。
M2=線分L2に属する候補画素G2の数(N1+N2+N3+N4)/(J1及びJ2のうちの小さいもの)
【0040】
同様に図10及び図11に示すように、線分L3と線分L11,L12とにおいて、
J1=位置偏差(F3−F11)×角度偏差(H3−H11)
J2=位置偏差(F3−F12)×角度偏差(H3−H12)
の式に基づいてJ1,J2が求められるのであり、線分L3の評価値M2が次の式で求められる。
M2=線分L3に属する候補画素G3の数(N1+N2+N3+N4)/(J1及びJ2のうちの小さいもの)
【0041】
以上のようにして求められた線分L1の評価値M2、線分L2の評価値M2及び線分L3の評価値M2により、線分L1と線分L11とが互いに接近し、線分L2と線分L12とが互いに接近しており、線分L3が線分L11,L12から離れたものであると判断される。これにより、線分L1が線分L11を引き続いたものであり、線分L2が線分L12を引き続いたものであると判断できるのであり、線分L3は線分L11,L12を引く続いたものではないと判断できて、線分L3が削除(無視)される。
従って、図12に示すように、田面に植え付けられた苗A1(機体の直ぐ隣の列)に相当する線分L1、及び田面に植え付けられた苗A2(機体の隣の隣の列)に相当する線分L2が設定される(線分設定手段に相当)。
【0042】
例えば図13に示すように、田面に植え付けられた苗A2(機体の隣の隣の列)に相当する線分L2が設定されて、田面に植え付けられた苗A1(機体の直ぐ隣の列)に相当する線分L1が設定されなかった場合に、図14に示すように前の時点の撮影データ(画像)において、田面に植え付けられた苗A1(機体の直ぐ隣の列)に相当する線分L11が設定されていれば、図12に示すように、線分L11が田面に植え付けられた苗A1(機体の直ぐ隣の列)に相当する線分L1として設定される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】乗用型田植機の全体側面図
【図2】乗用型田植機の全体平面図
【図3】田面に植え付けられた苗(機体の直ぐ隣の列)及び田面に植え付けられた苗(機体の隣の隣の列)の画素が判断されて抽出される場合の色成分及び彩度の状態を示す図
【図4】右(左)のカメラで撮影された撮影データ(画像)の状態を示す図
【図5】図4の撮影データ(画像)において、苗に対応する画素が設定された状態を示す図
【図6】図5の撮影データ(画像)において、10個の領域に分割された状態を示す図
【図7】図6の撮影データ(画像)において、最上位から4個の候補画素が選択された状態を示す図
【図8】図7の撮影データ(画像)において、ハフ変換により候補画素に沿った線分が設定された状態を示す図
【図9】図8の撮影データ(画像)において、候補画素が少ない線分が削除された状態を示す図
【図10】図9の撮影データ(画像)において、線分のうち評価値が最上位から所定個数の線分が選択された状態を示す図
【図11】前の時点の撮影データ(画像)において、田面に植え付けられた苗(機体の直ぐ隣の列)に相当する線分、及び田面に植え付けられた苗(機体の隣の隣の列)に相当する線分が設定された状態を示す図
【図12】図10の撮影データ(画像)において、田面に植え付けられた苗(機体の直ぐ隣の列)に相当する線分、及び田面に植え付けられた苗(機体の隣の隣の列)に相当する線分が設定された状態を示す図
【図13】図10の撮影データ(画像)において、田面に植え付けられた苗(機体の隣の隣の列)に相当する線分が設定されて、田面に植え付けられた苗(機体の直ぐ隣の列)に相当する線分が設定されなかった状態を示す図
【図14】前の時点の画像において、田面に植え付けられた苗(機体の直ぐ隣の列)に相当する線分、及び田面に植え付けられた苗(機体の隣の隣の列)に相当する線分が設定された状態を示す図
【図15】図4及び図5での撮影データ(画像)の処理の流れを示す図
【符号の説明】
【0044】
7 撮影手段
A1,A2 物体
B11,B12,B13,B14 領域
G0,G01 画素
L1,L2 線分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の色相を備えた物体が列状に並んだ状態において、列状に並んだ物体を撮影して撮影データを得る撮影手段と、
撮影データから物体の色相を備えた画素を抽出する抽出手段と、撮影データにエッジ処理を施して画素を抽出するエッジ処理手段と、
前記抽出手段及びエッジ処理手段の両方の処理を受けて抽出された画素を物体に対応する画素として設定、又は、前記抽出手段及びエッジ処理手段の一方の処理を受けて抽出された画素を物体に対応する画素として設定する画素設定手段と、
物体に対応する画素に沿って線分を設定する線分設定手段とを備えてある作業車の画像処理装置。
【請求項2】
撮影データを複数の領域に分割する分割処理手段を備え、領域の各々において画素設定手段により物体に対応する画素を設定するように構成してある請求項1に記載の作業車の画像処理装置。
【請求項3】
撮影データのゲインを変更自在なゲイン変更手段を備えてある請求項1又は2に記載の作業車の画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−43919(P2007−43919A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−229648(P2005−229648)
【出願日】平成17年8月8日(2005.8.8)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】