説明

作業車両の送受信システムおよび方法

【課題】 排気ガス後処理装置が車体から取り外された場合に、そのことを遠隔の地で確実に認識できるようにする。作業車両に排気ガス後処理装置の盗難防止システムを導入するにあたり、既存の作業車両の送受信システムの装置を利用して、コストを低減する。
【解決手段】 作業車両1の車体2には、第1のGPSセンサ21が設けられており、自己の車体2の位置が検出される。排気ガス後処理装置10には、第2のGPSセンサ22が設けられており、排気ガス後処理装置10の位置が検出される。サーバ26では、受信手段25で受信された車体位置情報DT1および排気ガス後処理装置位置情報DT2に基づき、同一の車両1における車体2と排気ガス後処理装置10が同じ時刻τに所定レベルΔP0以上離間して位置しているか否かが判断される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に設けられた排気ガス後処理装置の盗難を防止するための作業車両の送受信システムおよび方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
(従来の実施技術)
近年のエンジンの排気ガス規制の強化に伴い、油圧ショベルなどの作業車両のエンジンの排気管内には、排気ガス後処理装置が設けられている。
【0003】
図4は、油圧ショベル1の運転室の後方のエンジンルームを示した図である。排気ガス後処理装置10は、排気管4の途中に設けられている。排気ガス後処理装置10は、排気ガスが通過する排気ガス後処理装置用配管11と、排気ガス後処理装置用配管11内に収容された酸化触媒12と、酸化触媒12の排気ガス下流側で排気ガス後処理装置用配管11内に収容されたディーゼル パティキュレート フィルタ13とからなる。ディーゼル パティキュレート フィルタ13には、酸化触媒13aが設けられている。ディーゼル パティキュレート フィルタ13では、エンジン3の排気ガス中の粒子状物質(PM:パーティキュレートマター)が捕集され、大気へのPMの拡散が抑制される。
【0004】
排気ガス後処理装置用配管11は、排気管4の一部をなしている。排気ガス後処理装置用配管11は、前方フランジ11a、後方フランジ11bを有しており、前方フランジ11aが前方排気管4Fのフランジ4aに、後方フランジ11bが後方排気管4Rのフランジ4bにそれぞれボルトによって締結されている。排気ガス後処理装置用配管11はマウント11cを有しており、マウント11cがエンジン3に締結されることによってエンジン3に固定されている。排気ガス後処理装置10は、車体2に設けられたカバー5内に収容されている。
【0005】
酸化触媒12およびディーゼル パティキュレート フィルタ13の酸化触媒13aは、白金などの高価な貴金属で構成されている。このため高価な貴金属を狙って排気ガス後処理装置10が盗難されるおそれがある。排気ガス後処理装置用配管11はボルト止めで排気管4F、4Rおよびエンジン3に固定されているため、車体2から容易に取り外すことが可能である。
【0006】
下記特許文献1には、排気ガス後処理装置の盗難防止を目的とする発明が記載されている。
【0007】
この特許文献1には、一般のトラックなどの車両を対象として、トラックの車体と排気ガス後処理装置用配管とを電気信号線で接続して、この電気信号線が断線された場合にブザーなどの警報を発するという発明が記載されている。
【0008】
また、下記特許文献2には、業車両の分野において、作業車両の車体内にGPS(グローバル ポジショニング システム)センサを配設し、GPSセンサで検出された車体位置を所定の時期にサーバに送信し、端末からサーバにアクセスすることにより作業車両の車体の位置を遠隔から認識できるようにして作業車両を管理するという作業車両の送受信システムに関する発明が記載されている。
【特許文献1】特開2007−138837号公報
【特許文献2】特開2006−104933号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1によれば、確かに、トラックなどの車両の近くに車両を管理する人間がいれば、警報ブザーが鳴ったことをもって盗難が行われていることを認識することができる。
【0010】
しかし、油圧ショベルなどの作業車両は、人里離れた地で稼動する機会が多く、車両の近くに車両を管理する人間が居ないことが多い。このため警報ブザーで盗難発生を知らせるという上記特許文献1の発明は、作業車両に適用することができない。
【0011】
一方、上記特許文献2によれば、作業車両の車体の現在位置が端末に送られるため、作業車両が盗難されたことを遠隔の場所で知ることができる。
【0012】
しかし、GPSセンサが取り付けられた車体は盗難されず、車体から排気ガス後処理装置用配管が盗難された場合には、そのことを遠隔地にある端末で認識することができない。
【0013】
また、作業車両に排気ガス後処理装置の盗難システムを導入するにあたり、既存の作業車両の送受信システムの装置を利用して、コストを低減したいとの要請がある。
【0014】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、排気ガス後処理装置が車体から取り外された場合に、そのことを遠隔の地で確実に認識できるようにすることを第1の解決課題とするものである。
【0015】
本発明は、上記第1の解決課題に加えて、作業車両に排気ガス後処理装置の盗難防止システムを導入するにあたり、既存の作業車両の送受信システムの装置を利用して、コストを低減することを第2の解決課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
第1発明は、
作業車両の車体に設けられ、自己の車体の位置を検出する第1のGPSセンサと、作業車両の車体に設けられ、第1のGPSセンサの検出信号を収集し自己の車体の検出位置情報に自己の車両を特定するID情報と車体位置の検出時の時刻情報とが対応付けられた車体位置情報を生成する第1のコントローラと、作業車両の車体に設けられ、車体位置情報を送信する第1の送信手段と、第1の送信手段から送信された車体位置情報を受信する受信手段と、受信手段で受信された車体位置情報に基づき処理を行うサーバとが備えられた作業車両の送受信システムにおいて、
作業車両のエンジンの排気管に設けられた排気ガス後処理装置と、
排気ガス後処理装置に設けられ、該排気ガス後処理装置の位置を検出する第2のGPSセンサと、
排気ガス後処理装置に設けられ、第2のGPSセンサの検出信号を収集し排気ガス後処理装置の検出位置情報に自己の車両を特定するID情報と排気ガス後処理装置の位置検出時の時刻とが対応付けられた排気ガス後処理装置位置情報を生成する第2のコントローラと、 排気ガス後処理装置に設けられ、排気ガス後処理装置位置情報を送信する第2の送信手段と、
第1の送信手段から送信された車体位置情報および第2の送信手段から送信された排気ガス後処理装置位置情報を受信する受信手段と、
受信手段で受信された車体位置情報および排気ガス後処理装置位置情報に基づき、同一の車両における車体と排気ガス後処理装置が所定レベル以上離間して位置しているか否かを判断する判断処理を行うサーバと
が備えられたことを特徴とする。
【0017】
第2発明は、第1発明において、
排気ガス後処理装置に設けられ、該排気ガス後処理装置の内部状態を検出する内部状態検出センサと、
排気ガス後処理装置に設けられ、内部状態検出センサを収容する筐体と
が備えられ、
前記筐体内に、第2のGPSセンサと第2のコントローラと第2の送信手段が収容されていること
を特徴とする。
【0018】
第3発明は、第1発明において、
前記判断処理を行わない旨の指示がされている場合には、サーバは前記判断処理を行わないこと
を特徴とする。
【0019】
第4発明は、作業車両の車体で、自己の車体の位置を検出し、この自己の車体の検出位置情報に自己の車両を特定するID情報と車体位置の検出時の時刻情報とが対応付けられた車体位置情報を生成するとともに、
作業車両のエンジンの排気管に設けられた排気ガス後処理装置で、この排気ガス後処理装置の位置を検出し、この排気ガス後処理装置の検出位置情報に自己の車両を特定するID情報と排気ガス後処理装置の位置検出時の時刻とが対応付けられた排気ガス後処理装置位置情報を生成するステップと、
車体位置情報を作業車両の外部のサーバに向けて送信するとともに、 排気ガス後処理装置位置情報を前記サーバに向けて送信するステップと、
サーバで、受信された車体位置情報および排気ガス後処理装置位置情報に基づき、同一の車両における車体と排気ガス後処理装置が所定レベル以上離間して位置しているか否かを判断する判断処理を行うステップと
を含む作業車両の送受信方法であることを特徴とする。
【0020】
第1発明では、たとえば図1、図2に示すように、作業車両1の送受信システム20が構成される。
【0021】
すなわち、作業車両1の車体2には、第1のGPSセンサ21が設けられており、自己の車体2の位置が検出される。
【0022】
作業車両1の車体2には、第1のコントローラ121が設けられており、第1のGPSセンサ21の検出信号が収集され自己の車体2の検出位置情報P1に自己の車両1を特定するID情報IDと車体位置の検出時の時刻情報τとが対応付けられた車体位置情報DT1が生成される。
【0023】
作業車両1の車体2には、第1の送信手段23が設けられており、車体位置情報DT1が送信される。
【0024】
作業車両1のエンジン3の排気管4には、排気ガス後処理装置10が設けられている。
【0025】
排気ガス後処理装置10には、第2のGPSセンサ22が設けられており、排気ガス後処理装置10の位置P2が検出される。
【0026】
排気ガス後処理装置10には、第2のコントローラ122が設けられており、第2のGPSセンサ22の検出信号が収集され排気ガス後処理装置10の検出位置情報P2に自己の車両1を特定するID情報IDと排気ガス後処理装置10の位置検出時の時刻τとが対応付けられた排気ガス後処理装置位置情報DT2が生成される。
【0027】
排気ガス後処理装置10には、第2の送信手段24が設けられており、排気ガス後処理装置位置情報DT2が送信される。
【0028】
受信手段25では、第1の送信手段23から送信された車体位置情報DT1および第2の送信手段24から送信された排気ガス後処理装置位置情報DT2が受信される。
【0029】
サーバ26では、受信手段25で受信された車体位置情報DT1および排気ガス後処理装置位置情報DT2に基づき、同一の車両1における車体2と排気ガス後処理装置10が所定レベルΔP0以上離間して位置しているか否かが判断される。
【0030】
よって、作業車両1から遠隔の地にある端末27からサーバ26にアクセスすることにより、同一の車両1における車体2と排気ガス後処理装置10が同じ時刻τに所定レベルΔP0以上離間して位置しているか否かの判断結果を取得することができ、その判断結果から排気ガス後処理装置10が車体2から取り外されているか否かを知ることができる。このように第1発明によれば、排気ガス後処理装置10が車体2から取り外された場合に、そのことを遠隔の地で確実に認識することができる。
【0031】
第2発明では、図2に示すように、排気ガス後処理装置10に、排気ガス後処理装置10の内部状態、たとえば排気ガス温度、ディーゼル パティキュレート フィルタ13の前後差圧を検出する内部状態検出センサ14、15が設けられる。
【0032】
排気ガス後処理装置10には、筐体16が設けられ、筐体16には、内部状態検出センサ14、15が収容されている。ここで、筐体16は、内部状態検出センサ14、15で検出された排気ガス後処理装置10の内部状態の情報をサーバ26に送信するための既存の装置として作業車両1に搭載されている。
【0033】
そして、この既存の筐体16内には、上記内部状態検出センサ14、15に加えて、上記第2のGPSセンサ22と第2のコントローラ122と第2の送信手段24が収容される。
【0034】
よって、第2発明によれば、既存の筐体6内に、盗難防止システムを構成する上記第2のGPSセンサ22と第2のコントローラ122と第2の送信手段24を収容することができたので、作業車両1に排気ガス後処理装置の盗難防止システムを導入するにあたり、既存の作業車両の送受信システムの装置を利用して、コストを低減することができる。
【0035】
第3発明では、上記判断処理を行わない旨の指示がされている場合には、サーバ26は上記判断処理を行われないようになされる(図3のステップ201、203)。
【0036】
たとえばサービスマンが部品交換等のために車体2から排気ガス後処理装置10を取り外そうとするときに上記判断処理を行わない旨の指示がなされる。これによりサーバ26が上記判断処理を行うことにより発生する誤認識、つまりサービスマンによる部品交換にもかかわらず排気ガス後処理装置10が盗難されたとする誤認識を防止することができる。
【0037】
第4発明は、第1発明に対応する方法の発明である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、図面を参照して本発明に係る作業車両の送受信システムの実施の形態について説明する。なお、以下では、作業車両として油圧ショベルを想定して説明する。
【0039】
図1は、実施形態の油圧ショベル1の送受信システムの構成を示している。図2は、実施例の油圧ショベル1の運転室の後方のエンジンルームを示している。
【0040】
図1に示すように、作業車両1の車体2には、第1のGPSセンサ21が設けられており、自己の車体2の位置P1が検出される。
【0041】
作業車両1の車体2内には、第1のコントローラとしてのポンプコントローラ121と、モニタコントローラ31と、エンジンコントローラ32と、通信コントローラ34とがシリアル通信が可能となるように信号線35によってデジーチェーン状に接続されており、車体内ネットワーク39を構成している。信号線35上には所定のプロトコルのフレーム信号、たとえばCAN(private)のフレーム信号が伝送される。フレーム信号が各コントローラ121、31、32、33、34に伝送されるとフレーム信号に記述されたデータに従い各コントローラ121、31、32、33、34に接続されたアクチュエータ(油圧ポンプ、ガバナ、制御弁など)に駆動信号が出力されこれら各アクチュエータが駆動制御されるとともに、各コントローラ121、31、32、33、34に接続された各センサで検出された検出データあるいは機器内部の情報を示すデータが取得されフレーム信号に記述される。
【0042】
ポンプコントローラ121には、第1のGPSセンサ21が接続されている。
【0043】
ポンプコントローラ121には、第1のGPSセンサ21で検出された車体位置のデータP1が収集される。そして、自己の車体2の検出位置情報P1に自己の車両1を特定するID情報IDと車体位置の検出時の時刻情報τとが対応付けられた車体位置情報DT1が生成される。ここで、位置情報P1は、北緯座標位置、東経座標位置を示すデータのことである。時刻情報τとは、GPSの通信衛星から送られてくる時刻の情報のことである。ID情報IDとは、作業車両1の機種、型番、機番などであり、複数の作業車両の中から自己の車体を識別する情報のことである。
【0044】
車体位置情報DT1はフレーム信号に記述され、信号線35を介して通信コントローラ34に送出される。
【0045】
作業車両1の車体2内には、第1の送信手段23が設けられており、通信コントローラ34に接続されている。
【0046】
通信コントローラ34では、フレーム信号に記述された車体位置情報DT1が取り出され、車体位置情報DT1が第1の送信手段23に送出される。
【0047】
作業車両1の車体2から離れた場所には、サーバ26が設けられている。サーバ26には、受信手段25が接続されている。作業車両1の車体2およびサーバ26(受信手段25)から離れた場所には、端末27が設けられている。
【0048】
第1の送信手段23と受信手段25とは、有線または無線の通信線28によって通信自在に接続されている。サーバ26と端末27とは、図示しない送受信手段を介して有線または無線の通信線29、たとえばインターネットによって通信自在に接続されている。
【0049】
サーバ26は、WWW(ワールド ワイド ウエブ)のサービスを提供すべくHTTP(ハイパー テキスト トランスファー プロトコル)サーバとして機能する。サーバ26は、HTML(ハイバー テキスト マークアップ ランゲージ)で記述されたインターネット情報画面を要求元の端末27からのアクセスに応じて要求元の端末27の表示装置に表示する。
【0050】
第1の送信手段23からは車体位置情報DT1が受信手段25に向けて送信される。
【0051】
受信手段25では、第1の送信手段23から送信された車体位置情報DT1が受信される。
【0052】
車体位置情報DT1は、受信手段25からサーバ26に送出される。サーバ26では、受信手段25で受信された車体位置情報DT1に基づき処理が行われる。具体的には、サーバ26では、作業車両1の現在位置P1を作業車両1の機種、型番、機番に対応づけた内容の表示のインターネット情報画面が作成される。よって、端末27からサーバ26にアクセスすることにより、いずれの作業車両1が現在いずれの北緯位置、東経位置に位置しているかを知ることができる。なお、作業車両1の車体2内のポンプコントローラ121、第1のGPSセンサ21等の電子機器は、図示しないバッテリ(たとえば直流24Vの鉛電池)によって駆動される。
【0053】
作業車両1の車体2には、エンジン3が設けられている。エンジン3には、排気管4が設けられている。排気管4の途中には、排気ガス後処理装置10が設けられている。
【0054】
図2に示すように、排気ガス後処理装置10は、排気ガスが通過する排気ガス後処理装置用配管11と、排気ガス後処理装置用配管11内に収容された酸化触媒12と、酸化触媒12の排気ガス下流側で排気ガス後処理装置用配管11内に収容されたディーゼル パティキュレート フィルタ13とからなる。ディーゼル パティキュレート フィルタ13には、酸化触媒13aが設けられている。なお、実施例では、排気ガス後処理装置10として酸化触媒12と酸化触媒付きのディーゼル パティキュレート フィルタ13の組み合わせを想定しているが、貴金属を含む構成であればよく、たとえば酸化触媒と酸化触媒なしのディーゼル パティキュレート フィルタとの組み合わせであってもよい。
【0055】
ディーゼル パティキュレート フィルタ13では、エンジン3の排気ガス中の粒子状物質(PM:パーティキュレートマター)が捕集され、大気へのPMの拡散が抑制される。
【0056】
排気ガス後処理装置用配管11は、排気管4の一部をなす。排気ガス後処理装置用配管11は、前方フランジ11a、後方フランジ11bを有しており、前方フランジ11aが前方排気管4Fのフランジ4aに、後方フランジ11bが後方排気管4Rのフランジ4bにそれぞれボルトによって締結されている。排気ガス後処理装置用配管11はマウント11cを有しており、マウント11cがボルトによって締結されることによってエンジン3に固定されている。なお、排気ガス後処理装置用配管11をマウントを介してエンジン3以外の場所、たとえば車体2のフレーム、カバーなどに固定してもよい。なお、排気ガス後処理装置用配管11の固定手段としては、上述したフランジへのボルト締めを含む任意の着脱自在の固定手段を適用することができる。
【0057】
排気ガス後処理装置用配管11は、車体2に設けられたカバー5内に収容されている。酸化触媒12およびディーゼル パティキュレート フィルタ13の酸化触媒13aは、白金などの高価な貴金属で構成されている。
【0058】
排気ガス後処理装置10には、筐体16が設けられている。筐体16は、排気ガス後処理装置10の内部状態の情報をサーバ26に送信するために排気ガス後処理装置10に設けられている。筐体16には、内部状態検出センサ14、15が収容されている。内部状態検出センサ14、15は、たとえば、温度センサ、差圧センサであり、排気ガス温度、ディーゼル パティキュレート フィルタ13の前後差圧が検出される。
【0059】
図1に示すように、エンジンコントローラ32には、信号線36を介して内部状態検出センサ14、15が接続されている。
【0060】
エンジンコントローラ32には、信号線36を介して内部状態検出センサ14、15で検出された排気ガス温度、ディーゼル パティキュレート フィルタ13の前後差圧が収集される。そして、排気ガス温度、ディーゼル パティキュレート フィルタ13の前後差圧に、ID情報IDが対応付けられた内部状態情報DT3が生成される。内部状態情報DT3はフレーム信号に記述され、信号線35を介して通信コントローラ34に送出される。
【0061】
通信コントローラ34では、フレーム信号に記述された内部状態情報DT3が取り出され、内部状態情報DT3が第1の送信手段23に送出される。
【0062】
第1の送信手段23からは内部状態情報DT3が受信手段25に向けて送信される。
【0063】
受信手段25では、第1の送信手段23から送信された内部状態情報DT3が受信される。
【0064】
内部状態情報DT3は、受信手段25からサーバ26に送出される。サーバ26では、受信手段25で受信された内部状態情報DT3に基づき処理が行われる。具体的には、サーバ26では、作業車両1の排気ガス温度、ディーゼル パティキュレート フィルタ13の前後差圧を作業車両1の機種、型番、機番に対応づけた内容の表示のインターネット情報画面が作成される。よって、端末27からサーバ26にアクセスすることにより、いずれの作業車両1が現在いずれの排気温度となっているか、いずれの作業車両1のディーゼル パティキュレート フィルタ13が現在いずれの前後差圧になっているかを知ることができる。
【0065】
図1に示すように、排気ガス後処理装置10には、第2のGPSセンサ22が設けられている。第2のGPSセンサ22では、排気ガス後処理装置10の位置P2が検出される。
【0066】
排気ガス後処理装置10には、第2のコントローラ122が設けられている。第2のコントローラ122には、第2のGPSセンサ22が接続されている。
【0067】
排気ガス後処理装置10には、第2の送信手段24が設けられている。第2の送信手段24は、第2のコントローラ122に接続されている。
【0068】
図2に示すように、筐体16内には、内部状態検出センサ14、15に加えて、第2のGPSセンサ22と第2のコントローラ122と第2の送信手段24が収容されている。筐体16の内部電子機器が排気ガス後処理装置用配管11の内部で発生する熱の影響を受けにくくするために、排気ガス後処理装置用配管11の外側に別体のものとして筐体16が設けられているとともに、排気ガス後処理装置用配管11の内側には断熱材19が配置されている。なお、筐体16内の第2のGPSセンサ22、第2のコントローラ122等の電子機器は、車体2内のバッテリとは別に筐体16内に設けられた図示しないバッテリによって駆動される。よって、筐体16(排気ガス後処理装置用配管11)が車体2から取り外されたとしても、筐体16(排気ガス後処理装置用配管11)単独で筐体16内部の各機器を作動させることができる。
【0069】
第2のコントローラ122には、第2のGPSセンサ22で検出された排気ガス後処理装置10の位置のデータP2が収集される。そして、排気ガス後処理装置10の位置情報P2に自己の車両1を特定するID情報IDと排気ガス後処理装置10の位置検出時の時刻情報τとが対応付けられた排気ガス後処理装置位置情報DT2が生成される。
【0070】
排気ガス後処理装置位置情報DT2は第2の通信手段24に送出される。
【0071】
図1に示すように、第2の送信手段24からは排気ガス後処理装置位置情報DT2が受信手段25に向けて送信される。
【0072】
受信手段25では、第2の送信手段24から送信された排気ガス後処理装置位置情報DT2が受信される。
【0073】
排気ガス後処理装置位置情報DT2は、受信手段25からサーバ26に送出される。
【0074】
サーバ26では、受信手段25で受信された車体位置情報DT1および排気ガス後処理装置位置情報DT2に基づき、同一の車両1における車体2と排気ガス後処理装置10が同じ時刻τに所定レベルΔP0以上離間して位置しているか否かが判断される。
【0075】
具体的には、下記(1)式、
|P1−P2|≧ΔP0 …(1)
に示すように、車体位置P1と排気ガス後処理装置10の位置P2の同期が取られ、同時刻におけるこれら位置P1、P2の差の絶対値|P1−P2|が求められる。そして、この差の絶対値|P1−P2|が所定レベルΔP0以上であるか否かが判断される。この場合、ノイズの影響を取り除くために、上記(1)式の演算に用いられるP1、P2の値は、現在から過去30秒間の位置検出値の平均値を用いることが望ましい。時刻情報τは、GPSの通信衛星から送られてくる、各位置データP1、P2に共通の時計の時刻情報であるため、時刻情報τを同時刻に合わせることにより、各位置データP1、P2を同期させることができる。
【0076】
サーバ26では、上記(1)式の判断処理の結果、つまり同一の作業車両1における車体2と排気ガス後処理装置10が同じ時刻τに所定レベルΔP0以上離間して位置しているか否かの判断結果を示す「盗難防止表示画面」が作成される。
【0077】
端末27からサーバ26にアクセスすることにより、この「盗難防止表示画面」が端末27の表示装置に表示される。これにより、同一の作業車両1における車体2と排気ガス後処理装置10が同じ時刻τに所定レベルΔP0以上離間して位置しているか否かの判断結果を取得することができ、その判断結果から排気ガス後処理装置10が車体2から取り外されているか否かを知ることができる。このように本実施例によれば、排気ガス後処理装置10が車体2から取り外された場合に、そのことを遠隔の地で確実に認識することができる。なお、本実施例では、第1のGPSセンサ21における車体位置データP1の検出時刻および第2のGPSセンサ22における排気ガス後処理装置10の位置データP2の検出時刻が同じ時刻であるとしているが、盗難がされたか否かを確実に検出することができるのであれば、必ずしも同時刻のデータでなくてもよく多少の時刻のずれがあってもよい。たとえば、第1のGPSセンサ21で車体位置データP1を検出した時刻から、車体2から排気ガス後処理装置10を取り外すのに要する時間が経過した時刻に第2のGPSセンサ22で排気ガス後処理装置位置データP2を検出する実施も可能である。
【0078】
また、実施例によれば、既存の筐体6内に、盗難防止のシステムを構成する上記第2のGPSセンサ22と第2のコントローラ122と第2の送信手段24を収容することができたので、作業車両1に排気ガス後処理装置の盗難防止システムを導入するにあたり、既存の作業車両の送受信システムの装置を利用して、コストを低減することができる。
【0079】
上記(1)式に示される判断処理を行わない旨の指示がされている場合には、サーバ26で上記(1)式の判断処理を行わせないようにしてもよい。たとえばサービスマンが部品交換等のために車体2から排気ガス後処理装置10を取り外そうとするときに上記判断処理を行わない旨の指示がなされる。図1にしめすように、車体2には、設定解除キー37が「隠しスイッチ」として一般ユーザが容易に操作できない場所に設けられている。サービスマンが設定解除キー37をオン操作することにより、上記(1)式に示される判断処理を行わない旨の指示がなされる。設定解除キー37がオン操作されているか否かを示す情報は、作業車両1からサーバ26に送信される。
【0080】
図3は、サーバ26で行われる処理手順を示している。
【0081】
まず、設定解除キー37がオン操作されているか否かが判断される(ステップ201)。
【0082】
設定解除キー37がオン操作されていない場合には、上記(1)式の判断処理が行われ、盗難防止画面が作成される(ステップ202)。
【0083】
設定解除キー37がオン操作されている場合には、上記(1)式の判断処理は行われず、盗難防止画面は作成されない(ステップ203)。
【0084】
以上のように本実施例によれば、たとえばサービスマンが部品交換等のために車体2から排気ガス後処理装置10を取り外そうとするときにサーバ26で上記判断処理を行わない旨の指示がなされるようにしたので、上記判断処理が行われることにより発生する誤認識、つまりサービスマンによる部品交換にもかかわらず排気ガス後処理装置10が盗難されたとする誤認識を防止することができる。
【0085】
上記(1)式の演算処理を行うタイミング、頻度としては、つぎのことが考えられる。
【0086】
1)エンジン3の稼働有無にかかわらず、所定の間隔で、あるいは定時刻毎に車体位置情報DT1および排気ガス後処理置位置情報DT2を作業車両1からサーバ26に送信し、所定の間隔で、あるいは定時刻毎に上記(1)式の演算を行う。
【0087】
2)エンジン3の始動時に車体位置情報DT1および排気ガス後処理置位置情報DT2を作業車両1からサーバ26に送信し、エンジン3の始動時に上記(1)式の演算を行う。
【0088】
3)端末27からサーバ26を介して作業車両1に要求があったときに、車体位置情報DT1および排気ガス後処理置位置情報DT2を作業車両1からサーバ26に送信し、上記(1)式の演算を行う。
【0089】
なお、上記3)に示すように端末27からサーバ26を介して作業車両1に要求をする場合には、作業車両1側に要求内容を示す信号を受信して処理を行う手段を設けることが必要となる。
【0090】
また、上記1)、2)、3)のいずれの場合もエンジンキースイッチがオフされている時にも信号の送受信、演算処理等が行われるようにバッテリから各電子機器に電源が供給されるように構成しておくことが望ましい。
【0091】
なお、上記実施形態では、作業車両として油圧ショベルを想定して説明したが、これは一例であり、他の作業車両に当然に適用することができる。
【0092】
また、実施例では、排気ガス後処理置10として、前段の酸化触媒12と後段のディーゼル パティキュレート フィルタ13とで構成される装置を想定して説明したが、これは一例であり、前段の酸化触媒12がなくディーゼル パティキュレート フィルタ13で構成されたもの、またNOx吸蔵還元触媒で構成されたものに本発明を適用する実施も当然に可能である。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】図1は、実施例の作業車両の送受信システムの構成図である。
【図2】図2は、実施例の油圧ショベルの運転室の後方のエンジンルームを示した図である。
【図3】図3は、実施例の処理の手順を示すフローチャートである。
【図4】図4は、従来技術を説明するために用いた図で、油圧ショベルの運転室の後方のエンジンルームを示した図である。
【符号の説明】
【0094】
1 作業車両、2 車体、3 エンジン、4 排気管、10 排気ガス後処理装置、21 第1のGPSセンサ、23 第1の送信手段、24 第2の送信手段、25 受信手段、26 サーバ、121 第1のコントローラ、122 第2のコントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業車両の車体に設けられ、自己の車体の位置を検出する第1のGPSセンサと、作業車両の車体に設けられ、第1のGPSセンサの検出信号を収集し自己の車体の検出位置情報に自己の車両を特定するID情報と車体位置の検出時の時刻情報とが対応付けられた車体位置情報を生成する第1のコントローラと、作業車両の車体に設けられ、車体位置情報を送信する第1の送信手段と、第1の送信手段から送信された車体位置情報を受信する受信手段と、受信手段で受信された車体位置情報に基づき処理を行うサーバとが備えられた作業車両の送受信システムにおいて、
作業車両のエンジンの排気管に設けられた排気ガス後処理装置と、
排気ガス後処理装置に設けられ、該排気ガス後処理装置の位置を検出する第2のGPSセンサと、
排気ガス後処理装置に設けられ、第2のGPSセンサの検出信号を収集し排気ガス後処理装置の検出位置情報に自己の車両を特定するID情報と排気ガス後処理装置の位置検出時の時刻とが対応付けられた排気ガス後処理装置位置情報を生成する第2のコントローラと、
排気ガス後処理装置に設けられ、排気ガス後処理装置位置情報を送信する第2の送信手段と、
第1の送信手段から送信された車体位置情報および第2の送信手段から送信された排気ガス後処理装置位置情報を受信する受信手段と、
受信手段で受信された車体位置情報および排気ガス後処理装置位置情報に基づき、同一の車両における車体と排気ガス後処理装置が所定レベル以上離間して位置しているか否かを判断する判断処理を行うサーバと
が備えられたことを特徴とする作業車両の送受信システム。
【請求項2】
排気ガス後処理装置に設けられ、該排気ガス後処理装置の内部状態を検出する内部状態検出センサと、
排気ガス後処理装置に設けられ、内部状態検出センサを収容する筐体と
が備えられ、
前記筐体内に、第2のGPSセンサと第2のコントローラと第2の送信手段が収容されていること
を特徴とする請求項1記載の作業車両の送受信システム。
【請求項3】
前記判断処理を行わない旨の指示がされている場合には、サーバは前記判断処理を行わないこと
【請求項4】
作業車両の車体で、自己の車体の位置を検出し、この自己の車体の検出位置情報に自己の車両を特定するID情報と車体位置の検出時の時刻情報とが対応付けられた車体位置情報を生成するとともに、
作業車両のエンジンの排気管に設けられた排気ガス後処理装置で、この排気ガス後処理装置の位置を検出し、この排気ガス後処理装置の検出位置情報に自己の車両を特定するID情報と排気ガス後処理装置の位置検出時の時刻とが対応付けられた排気ガス後処理装置位置情報を生成するステップと、
車体位置情報を作業車両の外部のサーバに向けて送信するとともに、 排気ガス後処理装置位置情報を前記サーバに向けて送信するステップと、
サーバで、受信された車体位置情報および排気ガス後処理装置位置情報に基づき、同一の車両における車体と排気ガス後処理装置が所定レベル以上離間して位置しているか否かを判断する判断処理を行うステップと
を含むことを特徴とする作業車両の送受信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−167845(P2009−167845A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−4878(P2008−4878)
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】