説明

作業車用の電源供給装置

【課題】作業車に装備される発電機にて発電される電力を有効利用して、長期間にわたって作業車の不使用状態が続いた後においても、各部の作動を良好に行わせることが可能となる作業車用の電源供給装置を提供する。
【解決手段】車体に備えられたエンジン4にて駆動される発電機61と、その発電機61により出力された電力を直流に変換する整流回路63とで構成された電源部DGから、電力供給路64を通してソレノイド34に電力をそのまま供給し、電力供給路64におけるソレノイド34の上流側箇所より分岐する分岐電力供給路70からレギュレータ回路83,85を介して制御手段28に電力を供給するように構成され、分岐電力供給路70から制御手段28に至る経路中に制御手段用の電圧安定化回路86が備えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源部より供給される電力を電力供給路を通してソレノイドに供給するように構成され、前記電源部より供給される電力により前記ソレノイドの作動を制御する制御手段が備えられた作業車用の電源供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の作業車用の電源供給装置の一例としての乗用型田植機に装備される薬剤散布装置に電力を供給するものにおいて、従来では、次のように構成されたものがあった。
すなわち、薬剤散布装置は、収納部に収納されている薬剤をソレノイドによって駆動される繰出し機構によって繰出しながら、電動モータによって回転駆動される拡散用羽根により拡散させて放出させるように構成され、作業車に搭載されているバッテリーにより、ソレノイドや電動モータ及びそれらの作動を制御する制御手段等に電力が供給されるように構成されていた(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−151559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来構成では、作業車に搭載されているバッテリーから供給される電力により、ソレノイドや制御手段が駆動されるものであるから、バッテリーが充分に充電されていればそれらの各装置の作動に支障は生じないが、作業車が長期間使用されない状態で放置されていた後に、作業を実行するような場合には、バッテリーが放電して充分な電力が得られない状態となり、上記各装置の作動が良好に行えないおそれがあった。特に、乗用型田植機のように、1年のうちの短期間の間だけ作業を行い、その後、約1年間作業を行わないような作業車であれば、特に上述したような問題が発生するものであった。
【0005】
本発明の目的は、作業車に装備される発電機にて発電される電力を有効利用して、長期間にわたって作業車の不使用状態が続いた後においても、各部の作動を良好に行わせることが可能となる作業車用の電源供給装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る作業車用の電源供給装置は、電源部より供給される電力を電力供給路を通してソレノイドに供給するように構成され、前記電源部より供給される電力により前記ソレノイドの作動を制御する制御手段が備えられたものであって、その第1特徴構成は、
前記電源部が、車体に備えられたエンジンにて駆動される発電機と、その発電機により出力された電力を直流に変換する整流回路とで構成され、この電源部から前記電力供給路を通して前記ソレノイドに電力をそのまま供給するように構成され、
前記電力供給路における前記ソレノイドの上流側箇所から分岐する状態で分岐電力供給路が設けられ、この分岐電力供給路からレギュレータ回路を介して前記制御手段に電力を供給するように構成され、
前記分岐電力供給路から前記制御手段に至る経路中に、接地部との間で接続された平滑用コンデンサと、この平滑用コンデンサの充電電力が前記電源部に逆流することを防止する逆流防止用ダイオードとを有する制御手段用の電圧安定化回路が備えられている点にある。
【0007】
第1特徴構成によれば、作業車の車体に搭載されているエンジンが作動すると、そのエンジンの動力により発電機が駆動され、その発電機により出力された電力が整流回路にて直流に変換されて、その直流に変換された電力が電力供給路を通してソレノイドにそのまま供給されることになる。つまり、エンジンが作動すると、そのエンジンの動力によって発電が行われるので、作業車が長期間にわたって不使用状態が続いている場合であっても、その後において作業を開始する際に、適切にソレノイドに対する駆動用電力を供給することができる。
【0008】
ソレノイドは、内装されるバネによる復帰付勢力に抗してスプールを移動させるのに必要な電圧が供給されると作動するが、そのときに必要な電圧を大きく越える電圧が一時的に印加されることがあっても、スプールが移動位置で保持されるだけであり他の作動に支障が生じるおそれはない。これに対して例えばマイクロコンピュータや電子回路等からなる制御手段は、定格電圧を大きく越える電圧が印加されると、不具合が発生してその後良好な作動が行えないものとなるおそれがある。
【0009】
そこで、電力供給路におけるソレノイドの上流側箇所から分岐する状態で分岐電力供給路が設けられ、この分岐電力供給路からレギュレータ回路を介して制御手段に電力が供給されるように構成されている。つまり、制御手段に対しては、分岐電力供給路からレギュレータ回路を介して電力を供給するようにしているから、制御手段に対して過大な電圧が印加されて不具合が発生することを回避でき、良好な作動を維持させることが可能となる。
【0010】
ところで、ソレノイドに対する電力供給路にもレギュレータ回路を設けることが考えられるが、レギュレータ回路は、入力される電圧が調整電圧よりも高い場合には、調整電圧以下の低い電圧に調整した状態で出力するものであるから、その電位差分だけ電力損失となるものであり、しかも、上述した如く、ソレノイドは、必要な電圧を大きく越える電圧が一時的に印加されることがあっても作動に特に支障が生じるおそれは少ないので、ソレノイドに対しては、電源部から電力供給路に供給される電力をそのまま供給するようにして、電力損失が少なくなるようにしているのである。つまり、そのことにより、発電機にて発電される電力を電力損失ができるだけ少なくなる状態で有効に利用することができる。
【0011】
さらに、分岐電力供給路から制御手段に至る経路中に、前記平滑用コンデンサと前記逆流防止用ダイオードとを有する制御手段用の電圧安定化回路が備えられているから、例えば、何らかの要因により電源部の出力電圧が大きく低下することがあっても、出力電圧を平滑用コンデンサによって平滑化して変動の少ない状態で保持することができ、制御手段にて安定した動作を行わせることが可能となる。
【0012】
又、逆流防止用ダイオードを備えることから、充電される平滑用コンデンサの端子電圧が電源部の出力電圧より高くなることがあっても、電源部に向けて電流が逆流することが防止できるので、充電される電力を制御手段に無駄なく供給することができる。
【0013】
従って、作業車に装備される発電機にて発電される電力を有効利用して、長期間にわたって作業車の不使用状態が続いた後においても、各部の作動を良好に行わせることが可能となる作業車用の電源供給装置を提供できるに至った。
【0014】
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成に加えて、前記電源部から供給される電力により作業車の作業状況に応じて前記ソレノイドを作動させるための検出信号を出力する検出センサが備えられ、
前記制御手段が、前記検出センサから出力される前記検出信号に基づいて前記ソレノイドの作動を制御するように構成され、
前記分岐電力供給路からレギュレータ回路を介して前記検出センサに電力を供給するように構成され、
前記分岐電力供給路から前記検出センサに至る経路中に、接地部との間で接続された平滑用コンデンサと、この平滑用コンデンサの充電電力が前記電源部に逆流することを防止する逆流防止用ダイオードとを有する検出センサ用の電圧安定化回路が備えられている点にある。
【0015】
第2特徴構成によれば、作業車の作業状況に基づいて検出センサがソレノイドを作動するための検出信号を出力し、制御手段が、検出センサから出力される前記検出信号に基づいてソレノイドの作動を制御することになる。
そして、分岐電力供給路からレギュレータ回路を介して検出センサに電力を供給するように構成されているから、検出センサに対して過大な電圧が印加されて不具合が発生することを回避できる。さらに、分岐電力供給路から検出センサに至る経路中に、前記平滑用コンデンサと前記逆流防止用ダイオードとを有する検出センサ用の電圧安定化回路が備えられているから、何らかの要因により電源部の出力電圧が大きく低下しても、出力電圧を平滑用コンデンサによって平滑化して変動の少ない状態で保持することができ、良好な作動を維持させることが可能となる。
【0016】
又、逆流防止用ダイオードを備えることから、充電される平滑用コンデンサの端子電圧が電源部の出力電圧より高くなることがあっても、電源部に向けて電流が逆流することが防止できるので、充電される電力を検出センサに無駄なく供給することができる。
【0017】
従って、作業車に装備される発電機にて発電される電力を有効利用して、安定した状態で検出センサに対する電力供給を行うことが可能となった。
【0018】
本発明の第3特徴構成は、第1特徴構成又は第2特徴構成に加えて、前記電源部より供給される電力により駆動される電動モータが備えられ、
前記分岐電力供給路から供給される電力をレギュレータ回路にて電圧調整した電力をそのまま前記電動モータに供給するように構成されている点にある。
【0019】
第3特徴構成によれば、分岐電力供給路から供給される電力をレギュレータ回路にて電圧調整した電力を電動モータに供給するようにしているから、電動モータに対して過大な電圧が印加されて不具合が発生することを回避できる。
【0020】
尚、電動モータは、回転駆動している途中で、供給電圧が一時的に低い値になることがあっても、慣性によって回転状態を継続するものであり、何らかの要因により電源部の出力電圧が大きく低下することがあっても作動に支障はないから、電動モータについては、制御手段や検出センサのような電圧安定化回路は設けないようにして、構成の簡素化を図っている。
【0021】
従って、構成の簡素化を図りながらも、電動モータに対して適切に電力供給を行うことができ良好に作動させることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】乗用型田植機の全体側面図である。
【図2】乗用型田植機の全体平面図である。
【図3】薬剤散布装置の背面図である。
【図4】薬剤散布装置の底面図である。
【図5】薬剤散布装置の一部側面図である。
【図6】薬剤散布装置の縦断側面図である。
【図7】繰出し機構の縦断側面図である。
【図8】繰出し機構の横断平面図である。
【図9】繰出し機構の縦断正面図である。
【図10】繰出し機構の分解斜視図である。
【図11】調節操作位置と開作動時間との関係を示す図である。
【図12】薬剤散布装置の制御ブロック図である。
【図13】薬剤散布装置の電源供給状態を示す回路図である。
【図14】繰出し作動のタイミングチャートである。
【図15】ソレノイド駆動電流を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面に基づいて、本発明に係る作業車用の電源供給装置を乗用型田植機に装備した薬剤散布装置に適用した場合について説明する。
図1に示すように、乗用型田植機は、操向操作自在な左右一対の前輪1及び左右一対の後輪2を備えた走行機体3の前部側に、エンジン4及びミッションケース5を備え、走行機体3の中央部にステアリングハンドル6等を装備した操縦部7と運転座席8とを備えて構成され、又、走行機体3の左右両側に予備苗のせ台9が配設されている。走行機体3の後方には、リフトシリンダ10の操作によりリンク機構11を介して昇降操作自在に苗植付装置12が連結され、その苗植付装置12の後方に、除草剤等の薬剤を散布する薬剤散布装置13が備えられている。図2に示すように、苗植付装置12は4条植型式に構成されている。ミッションケース5には、変速レバー16を操作することにより変速操作される静油圧式の無段変速装置(図示せず)が備えられている。
【0024】
図1及び図2に示すように、苗植付装置12は、1個のフィードケース14に連結された機体左右方向に延びる支持フレーム(図示せず)に、2個の伝動ケース15が後向きに片持ち状に連結されている。伝動ケース15の後部の左右両側部に植付アーム18がクランク機構17により上下に揺動自在に支持され、植付アーム18に植付爪22が備えられており、苗植付装置12の下部には接地フロート19が支持されている。
又、苗植付装置12には、苗のせ台20が左右に一定ストロークで往復横送り駆動自在に備えられており、苗のせ台20がストロークエンドに達する毎に、載置された苗を所定量だけ下方に送るベルト式の縦送り装置21が苗のせ台20に備えられている。
【0025】
そして、フィードケース14に伝達される動力が伝動ケース15に伝達されて、植付アーム18が駆動される一方、フィードケース14に伝達される動力により苗のせ台20が往復横送り駆動されて、苗のせ台20の下部から上下に揺動運動する植付アーム18が、その先端部に備えられた植付爪22により1株ずつ苗を取り出して田面に植え付けるのであり、苗のせ台20が往復横送りのストロークエンドに達すると、フィードケース14に伝達される動力により縦送り装置21が駆動されて、苗のせ台20に載置された苗が下方に送られる構成となっている。
【0026】
次に、薬剤散布装置13について説明する。
図1〜図3に示すように、左右両側の伝動ケース15に夫々固定されて架設された支持フレーム23Aの中間部から板状の支持部材23Bを固定立設してあり、この支持部材23Bの上部に、苗植付け状態において田面から所定距離上方に位置する状態で薬剤散布装置13が支持される構成となっている。そして、図3及び図6に示すように、薬剤散布装置13は、薬剤を貯留する貯留部としての貯留ホッパー24と、その貯留ホッパー24の下部に位置して貯留される薬剤を繰出す繰出し手段としての繰出し機構25と、繰り出されて供給経路としての案内通路26(図6参照)を通して落下供給される薬剤を拡散させる回転式の拡散手段としての拡散放出機構27と、繰出し機構25の作動を制御するための制御装置28とを備えて構成されている。
図6に示すように、薬剤散布装置13は支持部材23Bに対してバックル機構BKにより容易に着脱可能な状態で位置保持される構成となっている。
【0027】
繰出し機構25及び拡散放出機構27は、ケーシング29に収納される構成となっており、このケーシング29は、合成樹脂材からなり、拡散放出機構27に薬剤を落下供給する案内通路26を構成する筒部30が一体形成されている。図3及び図4に示すように、ケーシング29は、左右両側の分割ケーシング部分29a,29bを合わせ面w同士で接続する左右2つ割り構造となっている。
【0028】
図6及び図8に示すように、繰出し機構25は、薬剤の通過用開口31が形成された金属製の開口形成板32と、通過用開口31を閉塞する閉状態と薬剤の通過用開口31を開放する開状態とにわたりスライド移動自在な金属製のシャッター部材33と、そのシャッター部材33を閉状態と開状態とに切り換えるアクチュエータとしてのソレノイド34とを備えて構成されている。
【0029】
図8〜図10に示すように、開口形成板32とシャッター部材33とが上下に重なる状態で設けられ、シャッター部材33が開口形成板32に形成された通過用開口31を閉じると閉状態となり、薬剤の落下供給が停止され、シャッター部材33が通過用開口31を開放する位置までスライドすると、通過用開口31が開放されて開状態となり、この開状態では、通過用開口31を通して薬剤が下方に落下供給される構成となっている。
この構成では、通過用開口31の下方側では、シャッター部材33だけが存在しており、シャッター部材33の下方には他の部材が存在しないので、薬剤が詰まり難い構成となっている。
【0030】
開口形成板32には、通過用開口31が形成される水平面部分32aの開口側端部に下方に向けて屈曲する下向き屈曲片32bが形成され、それと反対のソレノイド34側端部には上方に向けて屈曲する上向き屈曲片32cが形成されている。又、水平面部分32aの開口側端部とソレノイド34側端部との中間部における幅方向両側部夫々に、シャッター部材33が下方に離間するのを防止するために、シャッター部材33を上下から囲うように略コ字状に屈曲する保持部32dが形成されている。つまり、開口形成板32は、1枚のプレートを屈曲させることにより、下向き屈曲片32b、上向き屈曲片32c、及び、保持部32dが形成されている。
【0031】
この開口形成板32は、下向き屈曲片32bがケーシング29の筒部30の内側に形成された係止凹部35に係合して、シャッター部材33がソレノイド34に近接する方向にスライド移動することによって連なって移動することが規制され、且つ、上向き屈曲片32cがケーシング29の筒部30の外側の端縁部36に係合して、シャッター部材33がソレノイド34から離間する方向にスライド移動することによって連なって移動することが規制される構成となっている。
【0032】
図10に示すように、通過用開口31は、ソレノイド34によるシャッター部材33の移動方向に沿う方向での開口幅L1が移動方向と直交する方向での開口幅L2よりも小になるように横長の長方形状に形成され、開口面積を充分大きくしながらも、ソレノイド34によるシャッター部材33の移動操作量を短くすることができるようにしている。
【0033】
シャッター部材33は、帯板状に形成されて、ソレノイド34のスプール37に対して連結ピン38で枢支連結される構成となっており、開口形成板32の下側に接する状態で備えられ、保持部32dによって開口形成板32から上下に離間することを阻止する構成となっている。又、図7及び図8に示すように、シャッター部材33の開口遮蔽箇所33Aよりもソレノイド34側に寄った箇所に、開口形成板32とシャッター部材33との間に嵌まり込む薬剤を下方に落下させるために上下方向に貫通する掻き出し孔39が形成されている。
【0034】
図6に示すように、ケーシング29における筒部30の横一側箇所には、ソレノイド34を収納するための収納空間としてのソレノイド収納室40が形成されており、反対側箇所には、拡散放出機構27における電動モータ41を収納するための収納空間としてのモータ収納室42が形成されている。ソレノイド収納室40側の筒部30の側壁には、シャッター部材33と開口形成板32とを挿通するためのスリット孔43が形成されている。
図8に示すように、このスリット孔43の上側には、開口形成板32とシャッター部材33とを水平姿勢で保持するための幅広案内部44が形成されており、この幅広案内部44の上面には、通過用開口31に向かうほど下方に傾斜する傾斜面45が全幅にわたって形成されている。又、スリット孔43の上側における幅方向両側部には、開口形成板32の浮き上がりを防止する両側ガイド部46が形成されている。
【0035】
スリット孔43の下部側には、幅方向両側部にシャッター部材33を受止め支持する下側ガイド部47が形成されるとともに、シャッター部材33を開状態に切り換えたときに、掻き出し孔39の下方から排出される薬剤を拡散放出機構27に案内できるように幅広の排出用空間48が形成されている(図7参照)。
【0036】
図7に示すように、シャッター部材33は、ソレノイド34に備えられるコイルバネ49が座金50を介して連結ピン38に作用することにより閉位置(通過用開口31を閉じる位置)に移動付勢され、ソレノイド34に通電することにより、コイルバネ49の付勢力により突出位置にあるスプール37をコイルバネ49の付勢力に抗して電磁吸引力により引退位置に向けて移動操作することにより、シャッター部材33を開位置(通過用開口31を開放する位置)に切り換え操作することができるように構成されている。
【0037】
図6に示すように、拡散放出機構27は、横向き姿勢の受止め面51Aを備えるとともに縦向きの回転軸芯周りで駆動回転される受止め体51と、受止め面51Aに立設された拡散用羽根体52と、受止め体51を縦向きの回転軸芯Y周りで回転駆動する電動モータ41とを備えて構成されている。
【0038】
受止め体51は縦向きの回転軸芯Y周りで回転する状態で板面が横向き姿勢となるように設けられた円板形状になっており、拡散用羽根体52が、周方向に沿って分散配置される状態で且つ受止め体51における回転軸芯Yから径方向外方側に寄った状態で放射状に複数備えられている。
【0039】
尚、受止め体51及び拡散用羽根体52は合成樹脂材にて一体形成される構成となっており、受止め体51の支軸80が電動モータ41の出力軸53を圧入したジョイント53aに外嵌装着されており、支軸80を介してジョイント53aをビスbiにて固定する。又、ジョイント53aの外形(支軸80の装着部)は小判形をしており、支軸80と一体回転する構造となっている。
【0040】
図6に示すように、円板形状の受止め体51は中央部が下向きに突出する形状となっており、受止め体51の上部側の位置する受止め面51Aが回転軸芯Y側ほど下方に位置する中凹み状の傾斜面に形成されている。このように構成することで薬剤を周方向に均す機能をより発揮させ易いようにしている。
【0041】
そして、受止め体51における上方側には上部側を仕切る天井壁部58Aが設けられ、又、受止め体51の外周側には、周方向の一部の領域から薬剤が外方に拡散放出されるのを規制する規制用縦壁58Bが備えられ、且つ、この規制用縦壁58Bの両側部の夫々に、受止め体51における周方向の他の領域から外方に拡散放出される薬剤の拡散放出方向を調整する拡散方向調整板59,60が備えられている。
【0042】
規制用縦壁58Bは、ケーシング29に一体成形される状態で設けられ、受止め体51の外周縁の近傍に、周方向に沿って約半周にわたり受止め体51の外周部を覆うように、所定の上下幅を有する状態で且つ外周縁に沿うように平面視で半円弧状に形成されている。
【0043】
図12に示すように、繰出し機構25におけるソレノイド34の作動及び拡散放出機構27における電動モータ41の作動を制御する制御手段としての制御装置28が備えられている。この制御装置28はマイクロコンピュータを備えて構成され、以下のように、ソレノイド34及び電動モータ41の作動を制御するように構成されている。
【0044】
苗植付装置12における縦送り装置21が送り作動したことを検出する縦送り検出センサ82が備えられ、この縦送り検出センサ82の出力が制御装置28に入力されており、制御装置28は、縦送り検出センサ82にて検出される縦送り装置21の送り作動が設定回数行われたことを検出する毎に、設定時間(後述する開作動時間)が経過する間だけ、シャッター部材33を開状態に切り換え、その後閉状態に戻すようにソレノイド34の作動を制御するように構成されている。
【0045】
縦送り装置21の送り作動が設定回数行われると、走行機体3が設定距離走行することになるので、上述したような散布動作を実行することで、乗用型田植機が苗植付け作動を実行しながら走行を行っているときに、走行機体3が設定距離走行する毎に、4条分の既植苗が存在する領域(薬剤供給対象領域)に薬剤を散布供給することができ、圃場の単位面積当たりに所望の量の薬剤を供給することができるのである。
【0046】
制御装置28は、圃場の単位面積あたりに設定量の薬剤を供給するようにソレノイド34を作動させるように構成され、又、ポテンショメータ式の散布量調節器68の操作に基づいて、繰出し機構25による薬剤の繰出し量を変更調整自在に構成されている。
そして、薬剤の繰出し量を調節するときの調節操作状態として、散布量調節器68の操作位置が同じであるときの薬剤の繰出し量が互いに異なる2つの調節操作状態のいずれかに切り換え自在に構成され、手動操作式の切換スイッチ69によりその調節操作状態の切り換えを指令することができるように構成されている。
【0047】
図12に示すように、切換スイッチ69及び電源入切スイッチ62は、1つのロータリースイッチRSにて構成され、このロータリースイッチRSは、3位置に切り換え自在であり、中央の「切」位置に操作すると、電源入切スイッチ62が切り状態となり、「A」位置及び「B」位置に操作すると、電源入切スイッチ62が入り状態となり且つ「A」位置又は「B」位置の違いにより上述したような制御装置28の調節操作状態が互いに異なるものに切り換わる構成となっている。
【0048】
図5に示すように、ロータリースイッチRS及び散布量調節器68が、ケーシング29の横一側面の操作パネル面73に並べて備えられる構成となっている。又、この操作パネル面73には、計量用モードを設定するための押し操作式の計量スイッチ74が設けられている。
【0049】
制御装置28における調節操作状態の設定について説明する。
ロータリースイッチRSが「A」位置に操作されると、散布量調節器68の操作位置が最小調節位置から最大調節位置に変化するに伴って、ソレノイド34を開状態に切り換える開作動用の設定時間(薬剤の繰出し量に相当)(以下、開作動時間と称する)が漸次増大する形態で変化する調節操作状態であって且つ散布量調節器68の操作位置が同じであるときの開作動時間が少ない状態となる第1調節操作状態T1が設定される(図12参照)。
【0050】
又、ロータリースイッチRSが「B」位置に操作されると、散布量調節器68の操作位置が最小調節位置から最大調節位置に変化するに伴って開作動時間が漸次増大する形態で変化する調節操作状態であって且つ散布量調節器68の操作位置が同じであるときの開作動時間が第1調節操作状態T1よりも大となる第2調節操作状態T2が設定される(図12参照)。
【0051】
ちなみに、圃場の単位面積当たりに少なめの量を供給する薬剤を使用する場合には、第1調節操作状態T1が使用され、圃場の単位面積当たりに多めの量を供給する薬剤を使用する場合には、第2調節操作状態T2が使用される。
【0052】
そして、電動モータ41の回転数を検出するホール素子等からなる回転センサ72が設けられており、回転センサ72の検出結果を制御装置28にフィードバックして、設定回転数で受止め体51を回転する状態になるように、制御装置28が電動モータ41の駆動状態を制御するように構成されている。
【0053】
この田植機では、走行機体3にバッテリーが搭載されておらず、エンジン4によって駆動される発電機61にて発電された電力が、ソレノイド34、電動モータ41、制御装置28等に供給されるように構成されている。
ちなみに、走行機体3にバッテリーが搭載されていないので、手動操作にてエンジン4を始動させるリコイル式の始動装置(図示せず)を備える構成となっている。
【0054】
以下、電力供給状態について具体的に説明する。
図13に示すように、電源入切スイッチ62を介して供給される発電機61からの交流電力を全波式の整流回路63により整流して直流(脈流)に変換した電力を、ソレノイド34、電動モータ41、制御装置28等に供給するようになっており、発電機61と整流回路63により電源部DGが構成されている。
【0055】
次に、ソレノイド34に対する電力供給について説明する。
図13に示すように、電源部DGから供給される電力、すなわち、発電機61からの交流電力を整流回路63により整流して直流(脈流)に変換した電力を、電力供給路64を通して、そのままソレノイド34に供給するように構成されている。
そして、電力供給路64におけるソレノイド34よりも下流側には、ソレノイド34に通流する電流値を変更調節するために制御装置28によってオンオフ制御されるスイッチングトランジスタ65と、電力供給路64を通してソレノイド34に供給される電流値を検出するための電流検出手段としての電流検出用の抵抗器66とが設けられている。スイッチングトランジスタ65はFET(電界効果トランジスタ)にて構成されている。図13中の符号67は、ソレノイド34の両側端子間で所定電圧以上の逆起電力が発生したときに、短絡状態で通流させてそれを吸収するための逆起電力防止回路である。
【0056】
ソレノイド34は、電源部DGから出力される電源電圧の変動幅の下限値よりも低い定格電圧を備えるように構成されている。説明を加えると、発電機61はエンジン4により駆動されるものであり、エンジン4の回転数は、圃場で作業を行う場合には、駆動負荷の変動に応じて変化するが、作業を行うのに最低限必要とされるエンジン回転数を確保できるようにエンジン4の動力が予め設定されることになる。
そして、設定されるエンジン4の最低回転数で発電機61が発電する場合であっても電源部DGから出力される電源電圧は、ソレノイド34の定格電圧を下回らないように予め定めた特性の発電機61とソレノイド34とが用いられることになる。
【0057】
制御装置28は、電力供給路64を通してソレノイド34に供給される電流値をパルス幅変調により制御する、言い換えると、一定の周期でスイッチングトランジスタ65をオン状態(導通状態)とオフ状態(遮断状態)とに交互に繰り返すときの周期に対するオン時間の割合を変更するように構成されている。
そして、ソレノイド34のスプール37を移動操作する操作時、すなわち、シャッター部材33を開位置に移動操作するときは、パルス幅変調におけるデューティ比を変更調節可能範囲の最大値である高デューティ比(例えば、100%)に調整し、スプール37の移動操作が終了して移動位置で保持するとき、すなわち、シャッター部材33を開位置にて位置保持するときは、デューティ比を高デューティ比よりも低い低デューティ比に調整するように構成されている。具体的には、低デューティ比は、スプール37を移動位置で保持するのに必要な保持用電流値に相当する値に設定されている。
【0058】
すなわち、ソレノイド34のスプール37をコイルバネ49の付勢力に抗して引退位置に移動操作する操作時には、大きな電磁吸引力を発生させるために大きな電流が流す必要があるので、このときは、パルス幅変調におけるデューティ比を高デューティ比に調整して大電流を流すようにしている。一方、スプール37の移動操作が終了して移動位置で保持するときは、移動操作時のような大きな電磁吸引力は不要であり、小さい電磁吸引力で対応できるから、パルス幅変調におけるデューティ比を低デューティ比に調整して電流量を抑制して無駄な発熱を回避させている。
【0059】
次に、電動モータ41及び制御装置28に対する電力供給について説明する。
図13に示すように、電力供給路64におけるソレノイド34の上流側箇所から分岐する状態で分岐電力供給路70が設けられ、この分岐電力供給路70からレギュレータ回路(83,84,85)を介して電動モータ41及び制御装置28に電力を供給するように構成されている。
【0060】
そして、前記レギュレータ回路として、分岐電力供給路70における上流側に、調整電圧が高い高電圧用レギュレータ回路としての第1レギュレータ回路83が位置し、下流側に調整電圧が低い低電圧用レギュレータ回路(84,85)が位置するように直列に接続される状態で、調整電圧が異なる複数のレギュレータ回路(83,84,85)が設けられている。
又、低電圧用レギュレータ回路として、電動モータ41及び縦送り検出センサ82に電力を供給する第2レギュレータ回路84(第1低電圧レギュレータ回路の一例)と、制御装置28に電力を供給する第3レギュレータ回路85(第2低電圧レギュレータ回路の一例)とが、第1レギュレータ回路83の下流側に並列に接続される状態で設けられている。
【0061】
第2レギュレータ回路84は、入力される電圧が第2調整電圧(例えば、12V)を越えている場合には、第2調整電圧に調整した状態で出力するように構成されている。又、第3レギュレータ回路85は、入力される電圧が第3調整電圧(例えば、5V)を越えている場合には、第3調整電圧に調整した状態で出力するように構成されている。
【0062】
第2レギュレータ回路84の出力は、電動モータ41に供給されるとともに、縦送り検出センサ82に対して検出作動用の電力として供給されるように構成されている。又、第3レギュレータ回路85の出力は制御装置28に供給されるように構成されている。
【0063】
そして、図13に示すように、分岐電力供給路70から制御装置28に至る経路中に、接地部Gとの間で接続された平滑用コンデンサC1と、この平滑用コンデンサC1の充電電力が電源部DGに逆流することを防止する逆流防止用ダイオードDi1とを有する制御手段用の電圧安定化回路86が備えられている。具体的には、制御手段用の電圧安定化回路86は、第3レギュレータ回路85の上流側(入力側)に備えられている。
【0064】
又、分岐電力供給路70から縦送り検出センサ82に至る経路中に、接地部Gとの間で接続された平滑用コンデンサC2と、この平滑用コンデンサC2の充電電力が電源部DGに逆流することを防止する逆流防止用ダイオードDi2とを有する検出センサ用の電圧安定化回路87が備えられている。具体的には、検出センサ用の電圧安定化回路87は、第2レギュレータ回路84の下流側(出力側)に備えられている。
【0065】
つまり、上述したように電源部DGは、発電機61からの交流電力を整流回路63により整流して直流(脈流)に変換した電力を供給するので、一時的に零に近い低電圧になるおそれがある。そこで、上記したような電圧安定化回路86,87を設けることにより、平滑用コンデンサC1,C2にて充電して電圧変動が少なくなるように平滑化させることにより、出力する電圧が零に近い低電圧になって縦送り検出センサ82や制御装置28が誤動作することを回避できるようになっている。又、平滑用コンデンサC1,C2の端子電圧が入力側の電圧よりも高くなることがあっても、電源部DGに向けて電流が逆流することを逆流防止用ダイオードDi1,Di2によって防止できる。
【0066】
図13に示すように、第1レギュレータ回路83は、エミッターフォロワー動作を実行するように接続されたトランジスタ88と、そのトランジスタ88のベース電位を第1調整電圧に維持するためのツェナーダイオード89と、電圧を平滑化させるためのコンデンサ90とを備えて構成されている。そして、トランジスタ88は、出力すべき電流値を考慮して高増幅度(例えば、1000倍程度)に設定されたものが使用されており、この第1レギュレータ回路83の出力インピーダンスが大きくならないように構成されている。又、コンデンサ90は、トランジスタ88の出力側に接続することにより、入力側に設ける場合に比べて、小容量のものでよく且つ耐圧も低いものでよい。
第2レギュレータ回路84及び第3レギュレータ回路85は、市販されている一般的な構成のレギュレータ回路を用いるようにしてあり、それらの具体的な回路構成は、ここでは省略する。
【0067】
第2レギュレータ回路84の出力は、電動モータ41に供給されるが、制御装置28が、設定回転数で受止め体51を回転する状態になるように電動モータ41に供給される電力を調節するように構成されている。
つまり、第2レギュレータ回路84の出力が電動モータ41に供給される供給路中に、パルス幅変調により電動モータ41に供給する電力を調整するスイッチングトランジスタ71と、電動モータ41の回転数を検出するホール素子等からなる回転センサ72とが設けられ、回転センサ72の検出結果が制御装置28にフィードバックされ、設定回転数で受止め体51を回転する状態になるように、制御装置28が、スイッチングトランジスタ71に出力するパルス信号のデューティ比を変更して電動モータ41に供給される電力を調節するように構成されている。
【0068】
このように構成することで、例えば、発電機61による発電状態が変動すること等に起因して電源電圧が変動することがあっても、電動モータ41により、受止め体51を設定回転数で回転することができるように構成されている。
【0069】
ちなみに、受止め体51が回転する設定回転数としては、通常作業モードでは高速の通常作業用回転数が設定され、計量用モードでは通常作業用回転数よりも低速の計量用回転数が設定される。
【0070】
制御装置28や電源用回路部品等を備えた配線基板hがケーシング29に内装されており、図6に示すように、それらの電気部品と走行機体3や苗植付装置との間での電気配線77は、薬剤散布装置側の接続具78Aと走行機体側の接続具78Bとを備えたコネクタ78によって接続分離自在に構成されている。
【0071】
次に、制御装置28の制御動作について説明する。
エンジン4を始動してロータリースイッチRSが「切」位置から「A」位置又は「B」位置に操作されて制御装置28が起動すると、通常作業モードに設定され、受止め体51が通常作業用回転数で回転するように電動モータ41を駆動制御する。そして、乗用型田植機による苗植付け作業を開始すると、縦送り検出センサ82が縦送り装置21の送り作動が行われたことを検出して、その縦送り検出センサ82から検出信号が入力されるが、その検出信号が設定回数(例えば、4回)入力される度に、上述したようにして設定される開作動時間が経過する間だけ、シャッター部材33を開状態に切り換え、その後に閉状態に戻すようにソレノイド34の作動を制御する開作動操作(通常用繰出し作動)を実行する。
【0072】
尚、縦送り検出センサ82は、スイッチ式に構成され、苗のせ台20が横送り移動のストロークエンドに至るに伴ってオフ状態から一時的にオン状態に切り換わったのち、オフ状態に切り換わるように構成されている。そして、制御装置28は、縦送り検出センサ82がオン状態からオフ状態に切り換わるタイミングで、縦送り検出センサ82の入力があったことを判別する入力判定処理を実行するように構成されている。
【0073】
縦送り装置21の送り作動が設定回数行われると、走行機体3が設定距離走行することになるので、上述したような散布動作を実行することで、乗用型田植機が苗植付け作動を実行しながら走行を行っているときに、走行機体3が設定距離走行する毎に、設定条分の既植苗が存在する領域(薬剤供給対象領域)に、ソレノイド34の開作動時間に対応する量の薬剤を散布供給する動作を繰り返し実行することにより、圃場の単位面積当たりに所定量の薬剤を供給することができるのである。このような動作が通常散布動作に対応する。
【0074】
説明を加えると、図14に示すように、制御装置28は、縦送り検出センサ82から検出信号が入力されているか否かの入力判定処理を実行して、縦送り装置21の送り作動が設定回数行われたことを判別すると、直ちにソレノイド34を駆動してシャッター部材33の開作動を実行する。
【0075】
ソレノイド34のスプール37を移動操作する操作時には、スイッチングトランジスタ65に対するパルス幅変調におけるデューティ比Dxを変更調節可能範囲の最大値である高デューティ比(Dx=100%)に調整して、ソレノイド34に駆動電流を供給する。その結果、図15に示すように、電源部DGから供給される電圧がそのままソレノイド34に供給されるから、このときのソレノイド34には大きな駆動電流が流れることになる。
【0076】
図15に示すように、ソレノイド34に通電してスプール37の移動操作を開始してから所定の操作時間が経過したのちは、パルス幅変調におけるデューティ比Dxをスプール37を移動位置で保持するのに必要な保持用電流値Isに相当する値(Ds)に調整する。つまり、電流検出用の抵抗器66の両側端子間の電圧を検出して、その電圧値より抵抗器すなわち、ソレノイド34に実際に流れている電流値を求め、その電流値が保持用電流値Isに対応する電流値となるように、デューティ比Dxを変更調節するのである。その結果、図15に示すように、ソレノイド34に保持用電流値Isが流れることになる。
【0077】
そして、上述したようにして散布量調節器68にて設定されている開作動時間が経過すると、ソレノイド34への通電を停止する。そうすると、スプール37がコイルバネ49の付勢力により初期状態に戻り、シャッター部材33は閉状態に戻る。
【0078】
上述したように、ソレノイド34のスプール37をコイルバネ49の付勢力に抗して引退位置に移動操作する操作時には、大きな電磁吸引力を発生させるために多めの電流が流れるので、一時的に電源電圧が低下して制御装置28に対する電源電圧が低くなるおそれがある。そこで、制御装置28は、縦送り検出センサ82から検出信号が入力されているか否かの判別処理を常に行う必要があるが、ソレノイド34のスプール37を移動操作する操作時には、縦送り検出センサ82の信号の有無を判別する入力判定処理を実行しない(非判定状態となる)ように構成されている。
【0079】
すなわち、図14に示すように、ソレノイド34のスプール37を引退位置に移動操作する操作時、具体的には、ソレノイド34に駆動電流を供給開始してから判別停止用の設定時間が経過するまでの間、縦送り検出センサ82の信号の有無を判別する入力判定処理を実行しないようにしている。
【0080】
前記判別停止用の設定時間は、デューティ比Dxを高デューティ比(Dx=100%)に調整してソレノイド34に駆動電流を供給するための前記操作時間よりも長い時間が設定されている。
【0081】
次に、計量モードについて説明する。
計量スイッチ74が設定時間(数秒間)以上連続して押し操作(長押し)されると計量用モードに切り換わる。計量用モードに切り換わると、縦送り検出センサ82からの検出信号が入力されなくても、受止め体51が計量用回転数で回転するように電動モータ41を駆動制御するとともに、通常作業モードにおける繰出し量と同等な繰出し量にて薬剤を繰り出すように、設定回数だけソレノイド34の開作動を繰り返し実行する。このような動作が計量用動作に対応しており、このような計量動作は通常動作を実行する前に薬剤の繰出し量を調整するために行われるものである。
【0082】
前記計量用動作について簡単に説明すると、通常作業モードにおいて圃場の単位面積(例えば、10a)当たりに所定量の薬剤を散布すると設定しているような場合には、この所定量の薬剤を繰り出すのに必要とされる予め設定される設定回数だけ繰出し機構25を開状態に切り換える。そして、そのとき、拡散放出機構27の外周を囲うように予め用意した回収容器(図示せず)により放出される薬剤を回収して、薬剤の量を計測することになる。
【0083】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、分岐電力供給路70から供給される電力を第2レギュレータ回路84にて電圧調整した電力をそのまま電動モータ41に供給するように構成したが、分岐電力供給路70から電動モータ41に至る経路中に平滑用コンデンサと逆流防止用ダイオードとを有する電圧安定化回路を設ける構成としてもよい。
【0084】
(2)上記実施形態では、作業車としての乗用型田植機に装備される薬剤散布装置に適用したものを示したが、作業車としてトラクタに装備される薬剤散布装置でもよく、薬剤散布装置に限らず、例えば、ソレノイドにて肥料の繰出しを行い、電動モータにより送風案内するようにした施肥装置等を備えた作業車でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、乗用型田植機やトラクタに薬剤散布装置を備えた作業車や施肥装置等を備えた作業車等に適用できる。
【符号の説明】
【0086】
4 エンジン
28 制御手段
34 ソレノイド
41 電動モータ
61 発電機
63 整流回路
64 電力供給路
70 分岐電力供給路
82 検出センサ
83,84 レギュレータ回路
83,85 レギュレータ回路
86 制御手段用の電圧安定化回路
87 検出センサ用の電圧安定化回路
C1,C2 平滑用コンデンサ
Di1,Di2 逆流防止用ダイオード
DG 電源部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源部より供給される電力を電力供給路を通してソレノイドに供給するように構成され、前記電源部より供給される電力により前記ソレノイドの作動を制御する制御手段が備えられた作業車用の電源供給装置であって、
前記電源部が、車体に備えられたエンジンにて駆動される発電機と、その発電機により出力された電力を直流に変換する整流回路とで構成され、この電源部から前記電力供給路を通して前記ソレノイドに電力をそのまま供給するように構成され、
前記電力供給路における前記ソレノイドの上流側箇所から分岐する状態で分岐電力供給路が設けられ、この分岐電力供給路からレギュレータ回路を介して前記制御手段に電力を供給するように構成され、
前記分岐電力供給路から前記制御手段に至る経路中に、接地部との間で接続された平滑用コンデンサと、この平滑用コンデンサの充電電力が前記電源部に逆流することを防止する逆流防止用ダイオードとを有する制御手段用の電圧安定化回路が備えられている作業車用の電源供給装置。
【請求項2】
前記電源部から供給される電力により作業車の作業状況に応じて前記ソレノイドを作動させるための検出信号を出力する検出センサが備えられ、
前記制御手段が、前記検出センサから出力される前記検出信号に基づいて前記ソレノイドの作動を制御するように構成され、
前記分岐電力供給路からレギュレータ回路を介して前記検出センサに電力を供給するように構成され、
前記分岐電力供給路から前記検出センサに至る経路中に、接地部との間で接続された平滑用コンデンサと、この平滑用コンデンサの充電電力が前記電源部に逆流することを防止する逆流防止用ダイオードとを有する検出センサ用の電圧安定化回路が備えられている請求項1記載の作業車用の電源供給装置。
【請求項3】
前記電源部より供給される電力により駆動される電動モータが備えられ、
前記分岐電力供給路から供給される電力をレギュレータ回路にて電圧調整した電力をそのまま前記電動モータに供給するように構成されている請求項1又は2記載の作業車用の電源供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−71(P2013−71A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135537(P2011−135537)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(592070649)パナソニック デバイスSUNX竜野株式会社 (61)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】