説明

作業車

【課題】直接操作又は遠隔操作で走行可能であり、この直接操作と遠隔操作とを作業状況に応じて正確に切り替えて、走行操作の操作性の向上を図ることができる作業車を提供する。
【解決手段】エンジン5の出力を走行装置に伝達する無段変速装置21と、変速ペダル16により無段変速装置21の変速比を変更する変速アクチュエータ60と、変速アクチュエータ60を遠隔操作可能なリモコン91と、リモコン91を保持可能なリモコンホルダ92と、リモコン91がリモコンホルダ92により保持されているかを検知する着脱センサ93と、着脱センサ93によりリモコン91がリモコンホルダ92に保持されていると検知された場合、変速ペダル16による直接操作を優先する制御を行い、着脱センサ93によりリモコン91がリモコンホルダ92に保持されていないと検知された場合、リモコン91による遠隔操作を優先する制御を行う制御装置80を備える田植機1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リモコン等の遠隔操作装置により遠隔操作が可能な作業車の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リモコン等の遠隔操作装置により遠隔操作が可能な作業車は公知である(例えば、特許文献1、特許文献2に参照。)。特許文献1における作業車(田植機)は、車体に取り付けられた受信装置と、前記受信装置に信号を送信する遠隔操作装置と、前記受信装置で受信した信号に基づいて駆動装置等を作動させる制御装置を具備し、操縦者が作業車に搭乗せずに前記遠隔操作装置により必要な信号を前記受信装置に送信することで操作される。
また、特許文献2における作業車は、無線(有線)操縦装置と、該無線(有線)操縦装置の無線(有線)による遠隔操作で、走行、及び旋回等を行う機体等とを設けたものである。
【0003】
このような遠隔操作が可能な作業車は、トラック等の搬送車への積み降ろし、納屋等への出し入れ、畦越え等を行う際に、操縦者が運転操作部の座席に座った状態ではなく、作業車から降車した状態、又は運転操作部の床部に立った状態で、走行させることができるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−140217号公報
【特許文献2】特開2004−306732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような遠隔操作が可能な作業車は、上述のようにリモコン等の遠隔操作装置を操作することにより走行させることが可能であると同時に、運転操作部の座席に座った状態で変速ペダル等を直接操作することで走行させることも可能である。そして、両走行操作(遠隔操作装置の操作及び変速ペダル等の操作)の制御は作業状況に応じて明確に区別されておらず、作業状況にかかわらず両走行操作を同時に行うことが可能である。そのため、作業状況によっては、遠隔操作装置による操作と、変速ペダル等の操作との間で操作における制御に混乱が生じ、それにより操作性が悪くなるという問題点があった。
【0006】
本発明は、かかる問題を解決すべくなされたものであり、直接操作または遠隔操作で走行可能であり、この直接操作と遠隔操作とを作業状況に応じて正確に切り替えて、走行操作の操作性の向上を図ることができる作業車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、第1の発明に係る作業車は、
エンジンの出力を変速して走行装置に伝達する無段変速装置と、
変速ペダルの操作量に基づいて前記無段変速装置の変速比を変更する変速アクチュエータとを備える作業車であって、
前記変速アクチュエータを遠隔操作可能な遠隔操作装置と、
前記走行機体に複数設けられ、前記遠隔操作装置を保持可能な保持手段と、
前記遠隔操作装置が前記保持手段により保持されているか否かを検知する保持状態検知手段と、
前記保持状態検知手段により前記遠隔操作装置が前記保持手段に保持されていることが検知された場合、前記変速ペダルによる直接操作を前記遠隔操作装置による遠隔操作よりも優先する制御を行い、
前記保持状態検知手段により前記遠隔操作装置が前記保持手段に保持されていないことが検知された場合、前記遠隔操作装置による遠隔操作を前記変速ペダルによる直接操作よりも優先する制御を行う制御装置とを備えるものである。
【0009】
第2の発明に係る作業車は、第1の発明に係る作業車であって、
前記制御装置は、前記保持状態検知手段により前記遠隔操作装置が前記保持手段に保持されていないことが検知された場合、前記変速ペダルによる直接操作を無効とする制御を行うものである。
【0010】
第3の発明に係る作業車は、第1または第2の発明に係る作業車であって、
前記制御装置は、前記保持状態検知手段により前記遠隔操作装置が前記保持手段に保持されていないことが検知された場合、前記変速アクチュエータの作動を制限するものである。
【0011】
第4の発明に係る作業車は、第1から第3のいずれか1つの発明に係る作業車であって、
前記制御装置は、前記保持状態検知手段により前記遠隔操作装置が前記保持手段に保持されていないことが検知された場合、前記遠隔操作装置が非操作状態であれば、前記変速アクチュエータを前記無段変速装置が中立状態となるように作動させるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0013】
第1の発明においては、変速ペダルによる直接操作または遠隔操作装置による遠隔操作で走行可能でありながら、この直接操作と遠隔操作とを作業状況に応じて正確に切り替えることが可能となる。したがって、変速ペダルにより直接操作を行う場合、および遠隔操作装置により遠隔操作を行う場合における操作性の向上を図ることができる。
【0014】
第2の発明においては、遠隔操作装置が保持手段から外された状態では、変速ペダルにより直接操作を行うことができなくなる。したがって、変速ペダルの誤操作を確実に防止することができ、遠隔操作装置による遠隔操作の操作性の向上を図ることができる。
【0015】
第3の発明においては、遠隔操作装置が保持手段から外された状態では、無段変速装置の変速比の変更可能範囲を制限することが可能となる。したがって、最高走行速度を制限することができ、遠隔操作装置による遠隔操作では低速走行とするなどして、その操作性の向上を図ることができる。
【0016】
第4の発明においては、遠隔操作装置が保持手段から外された状態では、遠隔操作装置による遠隔操作を行わなければ、自動的に走行を停止させることが可能となる。したがって、走行を停止させるための操作を別途行わずに済むため、遠隔操作装置による遠隔操作の操作性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態に係る田植機の側面図。
【図2】第1実施形態に係る田植機の平面図。
【図3】走行変速ミッションの概略図。
【図4】運転操作部と走行変速ミッションとの関係を示す概略図。
【図5】図4のV−V視拡大断面図。
【図6】図4のVI−VI視拡大断面図。
【図7】遠隔操作装置の設置部分の構成を示す正面拡大図。
【図8】制御装置の制御構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る作業車を田植機としてその一実施形態について説明する。なお、本発明に係る作業車は、田植機に限定されるものではなく、その他の農用作業車や建築用作業車等であっても構わない。
【0019】
まず、田植機1の全体的な構成について、図1における矢印A方向を前方向として説明する。
【0020】
図1、図2に示すように、田植機1は多条植式の苗植装置2と走行機体3とで構成される。苗植装置2は、走行機体3の後部に上下方向に回転可能に取り付けられ、適宜の上下位置で苗載台2aの苗を複数の苗植付爪2bにより圃場に植え付けることができるように構成される。
【0021】
走行機体3では、車体フレーム4が左右一対の前車輪6と、左右一対の後車輪7とで支持される。車体フレーム4には、エンジン5が搭載されるとともに、走行変速ミッション20が搭載される。エンジン5は車体フレーム4の前部側でボンネット9にて被覆される。そして、エンジン5の出力が走行変速ミッション20により適宜変速されたあと、各車輪6・7に伝達されるように構成される。これにより、走行機体3が走行可能とされる。
【0022】
また、車体フレーム4には運転操作部10が設けられる。運転操作部10には座席12、操縦ハンドル13、変速レバー14、表示パネル15、変速ペダル16、ブレーキペダル17等が備えられる。変速ペダル16およびブレーキペダル17は、前方向への足踏み式のペダルであり、操縦ハンドル13の右側で運転操作部10の床面に左右に並べられて、車体フレーム4に枢着される。
【0023】
図2に示すように、表示パネル15は操縦ハンドル13の近傍に配置される。表示パネル15には、機体状況を表示する表示手段が備えられるとともに、後述する変速アクチュエータ60の動作異常、苗や肥料の切れおよび肥料の詰まり等の問題が発生した場合に、これを操縦者に報知する報知手段が備えられる。
【0024】
この報知手段は、たとえば、図示せぬ表示ランプを表示パネル本体に設け、前述のような不具合が発生した場合に点灯または点滅するようにして構成される。ただし、報知手段は、ブザー等を表示パネル本体に設け、前述のような問題が発生した場合に報知音がなるようにして構成することも可能である。また、報知手段は表示パネルに限らず、別の部材に備えてもよい。
【0025】
次に、変速を行う構成について説明する。
【0026】
図3に示すように、走行変速ミッション20には、油圧式の無段変速装置21が備えられる。無段変速装置21は、エンジン5の出力により駆動される可変式の油圧ポンプ24と、この油圧ポンプ24からの油圧にて駆動される油圧モータ25とを有し、油圧ポンプ24における斜板24aの傾斜角が変更されることによって、変速比を変更して、走行機体3の走行速度を変速させるように構成される。
【0027】
なお、本実施形態においては、油圧式無段変速装置21に遊星歯車機構からなる機械式変速装置30が組み合わされて、油圧・機械式無段変速装置が構成される。
【0028】
また、車体フレーム4の前部には、図4、図6に示すように、変速操作軸63が横方向に延設されて、軸受にて回転自在に軸支される。変速操作軸63には扇形歯車62が固定されて、この扇形歯車62と変速操作軸63とが一体的に回転可能とされる。変速操作軸63には、また、アーム65がその基端部で固定されて、このアーム65と変速操作軸63とが一体的に回転可能とされる。
【0029】
変速操作軸63上の扇形歯車62には、ピニオン61が噛合される。ピニオン61は、電動式モータからなる変速アクチュエータ60により回転可能とされ、その回転により変速操作軸63を扇形歯車62を介して図6における矢印C方向、または図6における矢印D方向へ回転させることができるように構成される。
【0030】
一方、変速操作軸63上のアーム65の先端部には、前後方向に延設された変速ロッド杆67の前端部が枢着される。変速ロッド杆67の後端部には長溝孔67aが前後方向に所定長さをもって形成される。この長溝孔67aに無段変速装置21の変速アーム47の先端部に設けられたピン47aが摺動自在に嵌入されて、変速ロッド杆67の後端部と変速アーム47の先端部とが係合される。変速アーム47はその基部で油圧ポンプ24の斜板24aにトラニオン軸を介して連動連結される。
【0031】
こうして、無段変速装置21は、変速操作軸63が回転されず、変速ロッド杆67が後方に移動されないとき、または、変速操作軸63が回転されて、変速ロッド杆67が後方に移動されても、その移動量が長溝孔67aの所定長さを超えないとき、変速アーム47およびトラニオン軸によって、油圧ポンプ24の斜板24aを傾転させずに中立位置とし、各車輪6・7へ向けて出力を伝達しない中立状態となるように構成される。
【0032】
無段変速装置21は、変速ロッド杆67が殆ど後方へ移動されていない状態で、変速操作軸63が図6における矢印C方向へ回転されて、変速ロッド杆67が後方へ移動され、その後方への移動量が長溝孔67aの所定長さを超えたとき、その時点から、変速アーム47およびトラニオン軸によって、油圧ポンプ24の斜板24aを変速ロッド杆67の後方への移動量に基づいて傾転させて、変速比を増速側に変更し、走行速度を無段に増速させるように構成される。
【0033】
無段変速装置21は、変速ロッド杆67が長溝孔67aの所定長さを超えて後方へ移動されている状態で、変速操作軸63が図6における矢印D方向へ回転されて、変速ロッド杆67が前方へ移動されたとき、変速ロッド杆67の後方への移動量が長溝孔67aの所定長さを超えている間は、変速アーム47およびトラニオン軸によって、油圧ポンプ24の斜板24aを変速ロッド杆67の前方への移動量に基づいて傾転させて、変速比を減速側に変更し、走行速度を無段に減速させるように構成される。
【0034】
変速操作軸63には、無段変速装置21における油圧ポンプ24の斜板24aの傾転角(変速アクチュエータ60の回転角)を検知するための第二検出手段66が設けられる。第二検出手段66は、ポテンショメータ等の角センサからなり、変速操作軸63の回転角を検出することができるように構成される。
【0035】
また、車体フレーム4の前部には、変速ペダル軸51が横方向に延設されて、軸受にて回転自在に軸支される。変速ペダル軸51には変速ペダル16が連動機構50を介して連動連結される。
【0036】
変速ペダル16は、ばね手段にて付勢され、運転操作部10の床面で起立した状態となる初期位置に保持される。この変速ペダル16に対しては、操縦者が初期位置にある変速ペダル16を足にて前方向へ踏み込む踏込操作、操縦者が踏み込まれた状態の変速ペダル16から足を外す踏込解除操作が行われる。
【0037】
変速ペダル16は、踏込操作が行われると、初期位置からばね手段に抗して前方向へ回転されて、変速ペダル軸51を図5における矢印E方向へ回転させる一方、踏込解除操作が行われると、ばね手段にて元の初期位置に戻されて、変速ペダル軸51を図5における矢印F方向へ回転させるように構成される。
【0038】
変速ペダル軸51には、変速ペダル16の踏込操作量を検知するための第一検出手段55が設けられる。第一検出手段55は、ポテンショメータ等の角センサからなり、変速ペダル軸51の回転角を検出することができるように構成される。
【0039】
また、走行変速ミッション20には、油圧式無段変速装置21から各車輪6・7への出力を伝達または遮断可能とするためのクラッチ機構22が備えられるとともに、各車輪6・7に制動力を付与するブレーキ機構23が備えられる。
【0040】
走行変速ミッション20には、ブレーキ機構23に対する回転式の操作軸45が設けられる。操作軸45には作動部材46が固定されて、この作動部材46と操作軸45とが一体的に回転可能とされる。作動部材46はブレーキ機構23に連動連結されるだけでなく、ワイヤー等を介してクラッチ機構22とも連動連結される。
【0041】
ブレーキ機構23には、走行機体3に備えられたブレーキ入切部材75も連動連結される。
【0042】
そして、作動部材46は、操作軸45とともに回転して所定回転位置にあるとき、ブレーキ機構23を作動状態にすると同時にクラッチ機構22を切状態にする停止状態となる一方、別の所定回転位置にあるとき、ブレーキ機構23を非作動状態にすると同時にクラッチ機構22を入状態にする走行状態となるように構成される。作動部材46はばね手段により走行状態となるように付勢される。
【0043】
このようにクラッチ機構22およびブレーキ機構23の両方に対する作動部材46には、受け片46aが一体的に設けられる。受け片46aには、変速ロッド杆67が前後方向に摺動自在に挿通される。変速ロッド杆67の受け片46aよりも後方に位置する部分には、ストッパー片67bが設けられて、このストッパー片67bと受け片46aとが当接可能とされる。
【0044】
変速操作軸63が回転されず、変速ロッド杆67が後方に移動されないとき、つまり変速ペダル16が初期位置に保持され、その踏込操作が行われないとき、作動部材46は、ばね手段に抗するように、ストッパー片67bに当接されて回転を規制されて、ブレーキ機構23を作動状態にすると同時にクラッチ機構22を切状態にする停止状態に保持される。
【0045】
変速操作軸63が回転され、変速ロッド杆67が後方に移動されたとき、つまり変速ペダル16の踏込操作が行われたとき、作動部材46は、ストッパー片67bの後方への移動にともなってばね手段により回転されて、ブレーキ機構23を非作動状態にすると同時にクラッチ機構22を入状態にする走行状態に変更される。
【0046】
また、車体フレーム4の前部には、ブレーキ軸70が横方向に延設されて、軸受にて回転自在に軸支される。ブレーキ軸70にはブレーキペダル17が連動連結される。
【0047】
ブレーキペダル17は、ばね手段にて付勢され、運転操作部10の床面上で起立した状態となる初期位置に保持される。このブレーキペダル17に対しては、操縦者が初期位置にあるブレーキペダル17を足にて前方向へ踏み込む踏込操作、操縦者が踏み込まれた状態のブレーキペダル17から足を外す踏込解除操作が行われる。
【0048】
ブレーキペダル17は、踏込操作が行われると、初期位置からばね手段に抗して前方向へ回転されて、ブレーキ軸70を図5における矢印M方向へ回転させる一方、踏込解除操作が行われると、ばね手段により後方向へ回転されて元の初期位置に戻され、ブレーキ軸70を図5における矢印M方向と逆方向へ回転させるように構成される。
【0049】
ブレーキ軸70には、アーム71がその基端部で固定される。アーム71の先端部には、前後方向に延設されたブレーキロッド杆72の前端部が枢着される。ブレーキロッド杆72の後端部は作動部材46の係止片46bに前後方向に摺動自在に挿通される。
【0050】
係止片46bは作動部材46に一体に設けられる。ブレーキロッド杆72の係止片46bよりも後方へ位置する部分には、ストッパー72aが設けられて、このストッパー72aと係止片46bとが当接可能とされる。
【0051】
ブレーキ軸70が回転されず、ブレーキロッド杆72が前方に移動されないとき、つまりブレーキペダル17が初期位置に保持され、その踏込操作が行われないとき、作動部材46の、ブレーキ機構23を作動状態にすると同時にクラッチ機構22を切状態にする停止状態から、ブレーキ機構23を非作動状態にすると同時にクラッチ機構22を入状態にする走行状態への自由な作動が許容される。
【0052】
ブレーキ軸70が回転され、ブレーキロッド杆72が前方に移動されたとき、つまりブレーキペダル17の踏込操作が行われたとき、作動部材46は、ブレーキ機構23を非作動状態にすると同時にクラッチ機構22を入状態にする走行状態であれば、ばね手段に抗して回転されて、変速ロッド杆67の移動位置にかかわらず、つまり変速ペダル16の踏込操作よりも優先して、強制的に停止状態に変更される。
【0053】
また、走行機体3には、制御装置80が備えられる。この制御装置80には、第一検出手段55、第二検出手段66、電動式モータからなる変速アクチュエータ60、およびブレーキ入切部材75が接続される。
【0054】
制御装置80は、第一検出手段55に基づいて変速ペダル16の踏込操作量を検知し、その検知結果に基づいて無段変速装置21における油圧ポンプ24の斜板24aの傾転角があらかじめ設定された設定角となるように、変速アクチュエータ60を回転駆動させるように構成される。制御装置80は、また、第二検出手段66に基づいて油圧ポンプ24の斜板24aの傾転角を検知するように構成される。
【0055】
このような構成において、変速ペダル16の踏込操作が行われないときには、変速操作軸63が回転されず、変速ロッド杆67が後方に移動されない。そのため、走行変速ミッション20における無段変速装置21の変速アーム47が回転せず、無段変速装置21の油圧ポンプ24の斜板24aが中立位置となる。つまり、無段変速装置21が各車輪6・7へ向けて出力を伝達しない中立状態となる。
【0056】
しかも、変速ペダル16の踏込操作が行われないときには、作動部材46が停止状態となって、ブレーキ機構23が作動状態となると同時に、クラッチ機構22が切状態となる。これにより、無段変速装置21(油圧・機械式無段変速装置)から各車輪6・7への出力が遮断されることとなる。したがって、走行機体3は走行せずに停止状態となる。
【0057】
走行機体3が停止状態である場合に、変速ペダル16の踏込操作が行われると、まず、変速ペダル軸51が図5における矢印E方向に回転し、第一検出手段55がこの回転よる変速ペダル軸51の回転角を検出する。制御装置80は、この第一検出手段55の検出値を取得し、これに基づいて変速ペダル16の踏込操作量を検知する。
【0058】
そして、変速アクチュエータ60が、制御装置80により変速ペダル16の踏込操作量に基づいて一方向に回転駆動する。この変速アクチュエータ60の回転駆動にともなって変速操作軸63が図6における矢印C方向に回転し、変速ロッド杆67が図6における矢印G方向へ移動し始める。
【0059】
変速ロッド杆67の後方への移動量が、その後端側の長溝孔67aの所定長さを超えると、ストッパー片67bが後方へ移動する。その結果、ストッパー片67bにてばね手段による回転を規制されていた作動部材46が回転し、走行状態となって、ブレーキ機構23が非作動状態になると同時に、クラッチ機構22が入状態になる。これにより無段変速装置21から各車輪6・7へ出力が伝達可能となる。
【0060】
このときには、変速アーム47が後方に回転し、無段変速装置21における油圧ポンプ24の斜板24aが、その傾転角が変速ペダル16の踏込操作量に応じた設定角となるように、トラニオン軸を介して傾転する。これにより、無段変速装置21がその変速比を増速側に変更し、変速した出力を各車輪6・7へ伝達する。したがって、走行機体3は走行を始める。
【0061】
つづいて、変速ペダル16の踏込操作量が大きくなるに従って変速ロッド杆67がさらに後方へ移動すると、無段変速装置21における油圧ポンプ24の斜板24aがより大きな設定角となるように傾転する。この際、制御装置80は斜板24aの傾転角を第二検出手段66の検出値に基づいて随時検知する。これにより、無段変速装置21が変速比を増速側により大きく変更し、変速した出力を各車輪6・7へ伝達する。したがって、走行機体3の走行速度が増速する。
【0062】
このような状態で、変速ペダル16の踏込解除操作を行うと、変速ペダル軸51が図5における矢印F方向に回転し、第一検出手段55がこの回転よる変速ペダル軸51の回転角を検出する。制御装置80は、第一検出手段55の検出値を取得して、これに基づいて変速ペダル16の踏込操作量を検知する。
【0063】
そして、変速アクチュエータ60が、制御装置80により変速ペダル16の踏込操作量に基づいて前記とは逆方向に回転駆動する。変速アクチュエータ60の回転駆動にともなって変速操作軸63が図6における矢印D方向に回転し、変速ロッド杆67が図6における矢印H方向へ移動する。
【0064】
変速ロッド杆67の前方への移動にともなって、変速アーム47が前方に回転し、無段変速装置21における油圧ポンプ24の斜板24aが、その傾転角が変速ペダル16の踏込操作量に応じた設定角となるように、トラニオン軸を介して傾転する。これにより、無段変速装置21がその変速比を減速側に変更し、変速した出力を各車輪6・7へ伝達する。したがって、走行機体3の速度が減速する。
【0065】
変速ペダル16が元の初期位置まで戻った時点で、変速アーム47も元の位置に戻り、無段変速装置21の油圧ポンプ24の斜板24aが中立位置となる。また、作動部材46が変速ロッド杆67のストッパー片67bにより停止状態に保持されて、ブレーキ機構23が作動状態となると同時に、クラッチ機構22が切状態となる。したがって、走行機体3の走行が停止する。
【0066】
次に、エンジン5の回転数を変更する構成について説明する。
【0067】
図6に示すように、扇形歯車62にカム溝62aが円周方向に延びるように形成される。ここで、カム溝62aは、その始端部を扇形歯車62の中心である変速操作軸63と所定距離をとって配置する一方、終端部を始端部よりも変速操作軸63に近づけて配置して、始端部から終端部に向かうに従って変速操作軸63に近づくように傾斜状に形成される。
【0068】
このカム溝62aには、車体フレーム4に回転自在に軸支され横軸63bから延出される第一アーム63cの先端部が摺動自在に係合される。そして、横軸63bに固着された第二アーム63dが、エンジン5におけるアクセルレバー5aと、ワイヤー5b等を介して連動連結される。
【0069】
この構成において、扇形歯車62が図6における矢印C方向へ回転する、つまり走行速度が増速するのに応じて、カム溝62aに沿って第一アーム63cが移動し、これにともなう第二アーム63dの回転によりアクセルレバー5aがその戻しばね手段5cに抗して図6における矢印J方向に回転する。したがって、エンジン5における回転数が、アイドル回転から走行速度の増速に比例して自動的に増速する。
【0070】
一方、扇形歯車62が図6における矢印D方向へ回転する、つまり走行速度が減速するのに応じて、カム溝62aに沿って第一アーム63cが移動し、これにともなう第二アーム63dの回転によりアクセルレバー5aがその戻しばね手段5cにて前記とは逆の図6における矢印K方向に戻り回転する。したがって、エンジン5における回転数が、走行速度の減速に比例して自動的に減速し、走行が停止したときにアイドル回転になる。
【0071】
このように、本実施形態において、田植機1は、エンジン5の回転数を走行変速ミッション20における変速動作に応じて自動的に変更するように構成される。なお、田植機1は、アクセルレバー5aを手動で回動操作することによって、エンジン5の回転数を任意に変更することができるようにも構成される。
【0072】
以下に、田植機1における遠隔操作システムについて説明する。
【0073】
図1、図2、及び図7に示すように、遠隔操作システムは、田植機1を運転操作部10における直接操作だけでなく、遠隔操作で走行可能とするものであり、遠隔操作装置としてのリモコン91と、保持手段としてのリモコンホルダ92と、保持状態検知手段としての着脱センサ93と、受信機94(図8)とで構成される。リモコン91はリモコンホルダ92に着脱可能に装着されて保持され、その状態で操作可能とされるとともに、リモコンホルダ92から外されて走行機体3から離間した状態で操作可能とされる。
【0074】
リモコン91は、本体部91aと、図示せぬ送信部と、走行用スイッチ91bとを有し、本体部91aに送信部および走行用スイッチ91bを適宜に配置して構成される。送信部は走行機体3側の受信機94と無線または優先で接続される。走行用スイッチ91bは押し操作可能とされ、押し操作された場合にオン信号を、押し操作されない場合にオフ信号を、送信部を介して受信機94に送信するものとされる。
【0075】
リモコンホルダ92は、ホルダ本体部92aと、リモコン着脱部92bとを有し、ホルダ本体部92aにリモコン91を着脱可能に保持する凹状のリモコン着脱部92bを配置して構成される。リモコンホルダ92は、本実施形態においては、走行機体3の運転操作部10における操縦ハンドル13近傍と、車体フレーム4の前部におけるエンジン5を被覆するボンネット9または予備苗を載置する予備苗載台8近傍との二箇所に設置される。
【0076】
ここで、予備苗載台8は、図1、図2に示すように、車体フレーム4の前部に設けられ、運転操作部10のすぐ前でボンネット9の左右両側に配置される。各予備苗載台8には、支持フレーム8bと、複数の載置台8aとが備えられる。支持フレーム8bは側面視略逆U字状に形成され、車体フレーム4から上方へ向けて立設される。各載置台8aは平板状に形成され、支持フレーム8bに上下方向に適宜の間隔をとって取り付けられる。そして、これらの載置台8aに予備の苗が載置可能とされるとともに、左右の少なくとも一方の支持フレーム8bの前側上部にリモコンホルダ92が設置可能とされる。
【0077】
なお、リモコンホルダ92の数および設置箇所は限定するものではなく、三つ以上のリモコンホルダ92をそれぞれ走行機体3の任意箇所に設置することも可能である。また、リモコンホルダ92を、本実施形態においては、ホルダ本体部92aを予備苗載台8の支持フレーム8bに固着することによって、走行機体3に設置しているが、ホルダ本体部92aに磁石やフック等の固定部材を設けることによって、この固定部材にて設置箇所を別の扱いやすい箇所に簡易に変更して設置することができるように構成することも可能である。
【0078】
着脱センサ93は、リモコン91がリモコンホルダ92に装着されて保持されているか否かを検知することができるように構成される。着脱センサ93はリモコンホルダ92のリモコン着脱部92bに設けられ、リモコン91がリモコンホルダ92に保持されている場合に着信号を、保持されていない場合に脱信号を制御装置80に送信するものとされる。ただし、着脱センサ93はリモコン91に設けることも可能である。
【0079】
受信機94は、リモコン91の送信部から送信されるオン信号またはオフ信号を受信し、制御装置80に送信することができるように構成される。受信機94は走行機体3の任意位置に設けられる。
【0080】
図8に示すように、制御装置80には、第一検出手段55と、第二検出手段66と、受信機94と、着脱センサ93と、最高速度設定器77と、走行速度検知手段86、エンジン回転数検知手段87とが接続される。制御装置80には、また、変速アクチュエータ60と、表示パネル15と、エンジン回転数制御手段85と、ブレーキ入切部材75とが接続される。
【0081】
最高速度設定器77は、運転操作部10に設けられたダイヤル等からなり、田植機1の最高速度を設定することができるように構成される。走行速度検知手段86は、車軸等の回転数を検出する回転数センサ等からなり、その検出値から田植機1の走行速度を検知することができるように構成される。
【0082】
エンジン回転数検知手段87は、エンジン5の出力軸の回転数を検出する回転数センサ等からなり、その検出値からエンジン5の回転数を検知することができるように構成される。
【0083】
エンジン回転数制御手段85は、本実施形態の田植機1におけるエンジン5がディーゼルエンジンであることから、燃料噴射装置からなり、ソレノイドによりラック位置を変更して燃料噴射量を変更することによって、前述のアクセルレバー5aを用いた機構とは別に、エンジン5のエンジン回転数を調節して制御することができるように構成される。ただし、エンジン回転数制御手段85は、エンジンの種類に応じてそのエンジン回転数を調節して制御することができるものであればよく、特に限定するものではない。
【0084】
ブレーキ入切部材75は、電動式のモータやシリンダ、または電磁バルブで制御される油圧シリンダ等からなり、その作動によりブレーキ機構23を非作動状態と作動状態とを切り替えることができるように構成される。ただし、ブレーキ入切部材75は、作動部材46によるブレーキ機構23の動作と干渉することなく、当該ブレーキ装置23を動作させることができるように設けられる。
【0085】
そして、制御装置80は、次のような制御を行うように構成される。この制御において、制御装置80は、まず着脱センサ93からのオン信号またはオフ信号に基づいて、リモコン91がリモコンホルダ92に装着されて保持されているか否かを検知する。ここで、制御装置80は、複数のリモコンホルダ92のうち、いずれかのリモコンホルダ92に設けられた着脱センサ93から着信号を受信したとき、リモコン91がリモコンホルダ92に装着されて保持されていることを検知する。
【0086】
その結果、リモコン91がリモコンホルダ92に保持されている場合、制御装置80は、変速ペダル16の踏込操作をリモコン91の遠隔操作よりも優先する変速ペダル優先モードに移行する。この変速ペダル優先モードにおいて、制御装置80は、前述のように第一検出手段55に基づく変速ペダル16の踏込操作量に応じて、変速アクチュエータ60を回転駆動させ、無段変速装置21の変速比を変更する。これにより、走行が行われることとなる。
【0087】
同時に、変速ペダル16が初期位置になければ、制御装置80は、変速ペダル16の踏込操作を優先して有効とし、リモコン91における走行用スイッチ91bが押し操作された場合であっても、この操作を無効にする。また、変速ペダル16が初期位置にあれば、リモコン91における走行用スイッチ91bが押し操作された場合、制御装置80は、リモコン91からのオン信号を受信している間、変速アクチュエータ60を回転駆動させ、無段変速装置21の変速比を増速側に変更する。これにより、前進走行が行われることとなる。このように、リモコン91による走行方向は、本実施形態においては、前進方向のみとしているが、前進方向および後進方向とすることも可能である。
【0088】
リモコン91がリモコンホルダ92に保持されていない場合、エンジン回転数検知手段87によりエンジン5が駆動状態であるか否か、第二検出手段66により無段変速装置21が中立状態であるか否かが検知される。ただし、本実施形態においては、作動部材46等からなる機械式連動機構により無段変速装置21が中立状態であれば、ブレーキ機構23が作動状態となるため、ブレーキ機構23が作動状態であるか否かを検知しないが、このような構成ではない場合、ブレーキ機構23が作動状態であるか否かを検知する必要がある。
【0089】
その結果、エンジン5が駆動状態でない場合と、無段変速装置21が中立状態でない場合と、ブレーキ機構23が作動状態でない場合との少なくとも一つの状態である場合、制御装置80は、リモコン91の遠隔操作を無効とする。エンジン5が駆動状態であり、無段変速装置21が中立状態であり、さらにはブレーキ機構23が作動状態である場合、制御装置80は、リモコン91の遠隔操作を変速ペダル16の踏込操作よりも優先するリモコン優先モードに移行する。
【0090】
リモコン優先モードにおいて、リモコン91における走行用スイッチ91bが押し操作された場合、制御装置80は、ブレーキ入切部材75を作動させ、ブレーキ機構23を非作動状態とする。そして、リモコン91からのオン信号を受信している間、変速アクチュエータ60を回転駆動させ、無段変速装置21の変速比を増速側に変更する。これにより、前進走行が行われることとなる。走行用スイッチ91bが押し操作されない場合、即ちリモコン91が非操作状態である場合、制御装置80は、リモコン91からのオフ信号を受信して、変速アクチュエータ60を回転駆動させ、無段変速装置21を中立状態となるようにする。これにより、走行が停止することとなる。
【0091】
同時に、走行用スイッチ91bが押し操作されていれば、制御装置80は、この押し操作を優先して有効とし、変速ペダル16が踏込操作された場合であっても、この踏込操作を無効にする。また、走行用スイッチ91bが押し操作されていなければ、変速ペダル16が踏込操作された場合、制御装置80は、変速ペダル16の踏込操作量に基づいて変速アクチュエータ60を回転駆動させ、無段変速装置21の変速比を変更する。これにより、走行が行われることとなる。
【0092】
なお、リモコン91がリモコンホルダ92に保持されていない場合、制御装置80は、変速ペダル16の操作を完全に無効にすることも可能である。リモコン91がリモコンホルダ92に保持されていない場合、制御装置80は、リモコン優先モードに移行している間だけ、変速ペダル16の操作を無効にすることも可能である。
【0093】
また、前述のようにリモコン91の遠隔操作によって、無段変速装置21の変速比を増速側に変更する際、制御装置80は、無段変速装置21における油圧ポンプ24の斜板24aの傾転角があらかじめ設定角になるように、変速アクチュエータ60を作動させる。つづいて、制御装置80は、最高速度設定器77により設定された設定走行速度と走行速度検知手段86に基づく実際の走行速度とを比較し、実際の走行速度が設定走行速度を超えているか否かを判定する。ここでの設定走行速度は走行を即座に停止させることができる程度の低速とする。
【0094】
その結果、実際の走行速度が設定走行速度を超えている場合、制御装置80は、変速アクチュエータ60を無段変速装置21の変速比を減速側に変更するように制御する。つまり、制御装置80は、無段変速装置21の変速比が増速側へ変更されないように、変速アクチュエータ60の作動を制限する。または、制御装置80は、エンジン回転数制御手段85をエンジン回転数が減少するように適宜に制御する。これにより、走行速度の減速が図られる。一方、実際の走行速度が設定走行速度を超えていない場合、制御装置80は、変速アクチュエータ60走行速度が設定速度を最高速度としてこの走行速度を維持するように制御する。または、制御装置80は、エンジン回転数制御手段85を適宜に制御する。これにより、走行速度が設定速度を最高速度としてこれを超えないように制限されながら、前進走行が行われる。
【0095】
以上のように、本発明の一実施形態に係る田植機1(作業車)は、エンジン5の出力を変速して走行装置に伝達する無段変速装置21と、変速ペダル16の操作量に基づいて無段変速装置21の変速比を変更する変速アクチュエータ60とを備える田植機1(作業車)であって、変速アクチュエータ60を遠隔操作可能なリモコン(遠隔操作装置)91と、走行機体3に複数設けられ、リモコン91を保持可能なリモコンホルダ(保持手段)92と、リモコン91がリモコンホルダ92により保持されているか否かを検知する着脱センサ(保持状態検知手段)93と、着脱センサ93によりリモコン91がリモコンホルダ92に保持されていることが検知された場合、変速ペダル16による直接操作をリモコン91による遠隔操作よりも優先する制御を行い、着脱センサ93によりリモコン91がリモコンホルダ92に保持されていないことが検知された場合、リモコン91による遠隔操作を変速ペダル16による直接操作よりも優先する制御を行う制御装置80とを備えるものとされる。
【0096】
これにより、変速ペダル16による直接操作またはリモコン91による遠隔操作で走行可能でありながら、この直接操作と遠隔操作とを作業状況に応じて正確に切り替えることが可能となる。したがって、変速ペダル16により直接操作を行う場合、およびリモコン91により遠隔操作を行う場合における操作性の向上を図ることができる。その結果、作業時、本実施形態においては、田植作業や路上走行時等には変速ペダル16による直接操作を良好に行うことができ、畦越え時や搬送車への積み降ろし時等には田植機1から離れた位置でリモコン91による遠隔操作を良好に行うことができる。
【0097】
本発明の一実施形態に係る田植機1は、また、制御装置は、保持状態検知手段により遠隔操作装置が保持手段に保持されていないことが検知された場合、変速ペダルの操作を無効とする制御を行うものとされる。
【0098】
これにより、リモコン91がリモコンホルダ92から外された状態では、変速ペダル16により直接操作を行うことができなくなる。したがって、変速ペダル16の誤操作を確実に防止することができ、リモコン91による遠隔操作の操作性の向上を図ることができる。
【0099】
本発明の一実施形態に係る田植機1は、また、制御装置は、保持状態検知手段により遠隔操作装置が保持手段に保持されていないことが検知された場合、変速アクチュエータ60の作動を制限するものとされる。
これにより、リモコン91がリモコンホルダ92から外された状態では、無段変速装置21の変速比の変更可能範囲を制限することが可能となる。したがって、最高走行速度を制限することができ、リモコン91による遠隔操作では低速走行とするなどして、その操作性の向上を図ることができる。
【0100】
本発明の一実施形態に係る田植機1は、また、制御装置80は、保持状態検知手段により遠隔操作装置が保持手段に保持されていないことが検知された場合、遠隔操作装置が非操作状態であれば、変速アクチュエータ60を無段変速装置21が中立状態となるように作動させるものとされる。
【0101】
これにより、リモコン91がリモコンホルダ92から外された状態では、リモコン91による遠隔操作を行わなければ、自動的に走行を停止させることが可能となる。したがって、走行を停止させるための操作を別途行わずに済むため、リモコン91による遠隔操作の操作性の向上を図ることができる。
【0102】
さらに、本発明の一実施形態に係る田植機1は、複数のリモコンホルダ92が走行機体3の任意箇所に設置されて、いずれのリモコンホルダ92にもリモコン91を着脱可能に装着して保持可能なものとされる。
【0103】
これにより、例えば本実施形態のように、リモコンホルダ92を走行機体3の運転操作部10における操縦ハンドル13近傍に設置している場合には、このリモコンホルダ92にリモコン91を保持させておけば、運転操作部10に搭乗した状態でリモコン91の走行用スイッチ91bを押しつづけることによって、その間は設定速度で前進走行させることが可能となる。したがって、田植機1を納屋等への出し入れを行うとき等で短距離を前進走行させれば済む場合における、運転操作部10での操作性の向上を図ることができる。
【0104】
また、車体フレーム4の前部におけるエンジン5を被覆するボンネット9または予備苗を載置する予備苗載台8近傍に設置している場合には、このリモコンホルダ92にリモコン91を保持させておけば、運転操作部10から降りた状態でリモコン91の走行用スイッチ91bを押しつづけることによって、その間は設定速度で前進走行させることが可能となる。したがって、田植機1を苗継ぎ時等で畦などまで短距離だけ前進走行させれば済む場合における、運転操作部10外での操作性の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0105】
1 田植機(作業車)
3 走行機体
5 エンジン
16 変速ペダル
21 無段変速装置
60 変速アクチュエータ
80 制御装置
91 リモコン(遠隔操作装置)
91b 走行用スイッチ
92 リモコンホルダ(保持手段)
93 着脱センサ(保持状態検知手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの出力を変速して走行装置に伝達する無段変速装置と、
変速ペダルの操作量に基づいて前記無段変速装置の変速比を変更する変速アクチュエータとを備える作業車であって、
前記変速アクチュエータを遠隔操作可能な遠隔操作装置と、
前記走行機体に複数設けられ、前記遠隔操作装置を保持可能な保持手段と、
前記遠隔操作装置が前記保持手段により保持されているか否かを検知する保持状態検知手段と、
前記保持状態検知手段により前記遠隔操作装置が前記保持手段に保持されていることが検知された場合、前記変速ペダルによる直接操作を前記遠隔操作装置による遠隔操作よりも優先する制御を行い、
前記保持状態検知手段により前記遠隔操作装置が前記保持手段に保持されていないことが検知された場合、前記遠隔操作装置による遠隔操作を前記変速ペダルによる直接操作よりも優先する制御を行う制御装置とを備える作業車。
【請求項2】
前記制御装置は、前記保持状態検知手段により前記遠隔操作装置が前記保持手段に保持されていないことが検知された場合、前記変速ペダルによる直接操作を無効とする制御を行う請求項1に記載の作業車。
【請求項3】
前記制御装置は、前記保持状態検知手段により前記遠隔操作装置が前記保持手段に保持されていないことが検知された場合、前記変速アクチュエータの作動を制限する請求項1または請求項2に記載の作業車。
【請求項4】
前記制御装置は、前記保持状態検知手段により前記遠隔操作装置が前記保持手段に保持されていないことが検知された場合、前記遠隔操作装置が非操作状態であれば、前記変速アクチュエータを前記無段変速装置が中立状態となるように作動させる請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の作業車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−202014(P2010−202014A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−48583(P2009−48583)
【出願日】平成21年3月2日(2009.3.2)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】