説明

個人注文型のインソール

【課題】個人注文型のインソールを提供する。
【解決手段】合繊生地製の上層20aと発泡層製の中層20bと混合樹脂層製の下層20cとを有する個人注文型のインソールにおいて、前記個人注文型のインソールは、温度に応じて色が変わる熱感応フィルムシート30がインソール下層20cの側面の底面に取り付けられ、且つ、前記下層20cは変形温度にて圧力をかけると変形が起こり、冷却後に変形されたままで固まるような特性を有する熱可塑性の混合樹脂層製のものであることを特徴とする。これにより、個人注文型のインソールの下層の側面の底面に熱感応フィルムシートを取り付けることにより、個人注文型のインソールの適正な変形温度である71℃の温度にて熱感応フィルムシートの色表示部が銀色から黒色に変わることから、だれでも個人注文型のインソールの適正な変形温度を容易に識別することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個人注文型のインソールに係り、さらに詳しくは、個人注文型のインソールの下層の底面に熱感応フィルムシートを取り付けることにより、だれでも個人注文型のインソールの適正な変形温度を容易に判断することができ、インソールに足の形状を合わせ易くしたことを特徴とする個人注文型のインソールに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、履物の靴底は、アウトソール、ミッドソール及びインソールにより構成される。そして、履物用のインソールの場合には、各個人ごとに足の形状が異なるにも拘わらず、平面状の画一な構造のものしか出回っておらず、新たな履物を履く場合には、足の裏が履物や履物の内部に敷かれているインソールに合わず、不便を感じることが極めて頻繁であった。
【0003】
このため、上述の如き問題点を解消するための方案が提案されている(例えば、下記の特許文献1参照)。すなわち、下記の特許文献1における図1に示すように、インソール20は、薄い上皮21と厚い圧着フォーム23とのラミネート体により構成され、前記インソール20を電子レンジにより加熱した後、足24を当てて、力を矢印の方向に加えた後、冷却させて個人注文型のインソールを製造する方法が知られている。そして、上述の如き問題点を解消するための別の方案も提案されている(例えば、下記の特許文献2参照)。すなわち、下記の特許文献2における図2に示すように、各個人の足の形状及び特性に合う個人注文型のインソールにおいて、糸織りの織物製の織り層11と、前記織り層11の一面に設けられた開放粒子状の発泡体製の発泡層12と、前記発泡層12の上に積層される不織布層13と、前記不織布層13の下に発泡層12を支える熱可塑性樹脂製のホットメルト層14と、が順次に積層されてなる個人注文型のインソールが知られている。しかしながら、前記の如き個人注文型のインソールは、各個人の足の形状をインソールに合わせるためにドライ機またはオーブンに入れて加熱を行う場合、適正な変形温度を知ることができず、成形作業を繰り返し行うことを余儀なくされるという不都合があった。
【特許文献1】アメリカ特許US6、346、210B1(2002年2月12日公告)
【特許文献2】大韓民国登録特許第10−2004−0470905号(2005年1月31日登録)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の如き問題点を改善するためになされたものであり、その目的は、個人注文型のインソールの下層の側面の底面に熱感応フィルムシートを取り付けることにより、個人注文型のインソールの適正な変形温度である71℃の温度にて熱感応フィルムシートの色表示部が銀色から黒色に変わることから、だれでも個人注文型のインソールの適正な変形温度を容易に識別できるようにしたことを特徴とする個人注文型のインソールを提供することにある。
【0005】
そして、本発明の他の目的は、上層は織物生地製であり、中層は発泡層製であり、そして下層は混合樹脂層製であり、この下層には低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)及びエチレンビニルアセテート(EVA)を主成分とする熱可塑性混合樹脂を用いることにより、71℃の温度にて変形可能であり、常温下での冷却中に変形されたままで固まることを特徴とする個人注文型のインソールを提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、合繊生地製の上層20aと発泡層製の中層20bと混合樹脂層製の下層20cとを有する個人注文型のインソールにおいて、前記個人注文型のインソールは、温度に応じて色が変わる熱感応フィルムシート30がインソール下層20cの側面の底面に取り付けられ、且つ、前記下層20cは変形温度にて圧力をかけると変形が起こり、冷却後に変形されたままで固まるような特性を有する熱可塑性の混合樹脂層製のものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
上記の構成を有する本発明は、個人注文型のインソールの下層の側面の底面に熱感応フィルムシートを取り付けることにより、個人注文型のインソールの適正な変形温度である71℃の温度にて熱感応フィルムシートの色表示部が銀色から黒色に変わることから、だれでも個人注文型のインソールの適正な変形温度を容易に識別することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
上記の構成を有する本発明は、図3、図4及び図5に示すように、合繊生地製の上層20aと発泡層製の中層20bと混合樹脂層製の下層20cとを有する個人注文型のインソールにおいて、前記個人注文型のインソールは、温度に応じて色が変わる熱感応フィルムシート30がインソールの下層20cの側面の底面に取り付けられ、且つ、前記下層20cは、変形温度にて圧力を加えると変形が起こり、冷却後に変形されたままで固まるような特性を有する熱可塑性混合樹脂層製のものであることを特徴とする。
【0009】
本発明において、上層20aは通常の合繊織物生地製にし、且つ、中層20bは発泡層製のものにして、インソールに加わる衝撃を吸収する役割を果たすようにし、ここで、発泡層は、エチレンビニルアセテート(EVA)発泡体であることが好ましい。
【0010】
また、本発明による個人注文型のインソールは、下層20cにおいてインソールが変形され、前記個人注文型のインソールを71℃まで昇温させた後、インソールの上面に足の裏を当てて荷重を加えると、個人注文型のインソールの下層20cを構成している熱可塑性の混合樹脂層が圧力を受けて足の裏の形状に成形され、さらに、常温下において前記インソールの温度が冷却されると、足の裏の形状に形成されたインソールが固まってその形状をそのまま維持する。このとき、個人注文型のインソールの適正な変形温度の識別は、インソール下層20cの側面の底面に取り付けられた熱感応フィルムシートの色表示部L1の変化により行われ、71℃の温度にて熱感応フィルムシート30の色表示部L1の色が銀色から黒色に変わる。また、個人注文型のインソールの適正な変形温度は、熱感応フィルムシートの色表示部L1が変わるタイミングを基準として、インソールの上面に足の裏を載せた後、荷重をかけると、個人注文型のインソールが足の裏の形状に成形された状態で冷却されながら固まる。このとき、成形されたインソールが不便な場合には、前記方法により再成形可能であることが特徴である。
【0011】
本発明において用いられる「熱感応フィルムシート」とは、温度の変化に応じて色が変わるフィルムシートであって、温度が変わる場合、分子同士が互いに分解及び結合を繰り返すような性質を用いて熱感応フィルムシートを一定の温度下に一定の時間だけ放置すると、フィルムの色が変わる。これを応用した製品としては、薄膜状のフィルム温度計があり、この温度計を額に15〜20秒ほど載せておくと、温度の変化に応じて色が変わる。すなわち、薄膜の色が赤色であれば体温が36〜37.5℃、緑色であれば体温が37.6〜38℃、青色であれば体温が38℃以上などのように温度の変化に応じてフィルムの色が変わるフィルムシートである。
【0012】
このため、前記個人注文型のインソールは、熱感応フィルムシート30に感応される温度である71℃に合わせるためには、オーブンの温度を90℃まで上げる必要があり、オーブンの内部においてインソールが71℃程度まで加熱されると、このとき、熱感応フィルムシートの色表示部L1の色が銀色から黒色に変わるため、インソールが変形可能な適正な温度をユーザーが容易に目視可能になる。
【0013】
本発明において、個人注文型のインソールの適正な変形温度とは、熱感応フィルムシートの温度が変わる時点である71℃を意味し、このとき、インソール20の本体の実際の温度は、前記変形温度とはやや異なる場合があるが、本発明においては、個人注文型のインソールの適正な変形温度は、熱感応フィルムシート30において変色される時点を基準とする。
【0014】
本発明において、インソール20の適正な変形温度が前記温度の範囲よりも高い場合には、インソールの表面が熱くて足を当てることができないため、成形作業に難点がある恐れがあり、前記温度の範囲よりも低い場合には、インソールの下層20cの熱可塑性混合樹脂が十分に加熱できずに熱変形温度に達しないため、個人注文型のインソールが成形されない恐れがある。
【0015】
一方、本発明において用いられる熱可塑性混合樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)及びエチレンビニルアセテート(EVA)を主成分とする熱可塑性混合樹脂を用いることにより、71℃の温度下において熱可塑性混合樹脂層が変形可能であり、常温下において冷却されながら変形されたままで固まることになる。
【0016】
前記熱可塑性混合樹脂の混合比は、低密度ポリエチレン38〜42重量%、線状低密度ポリエチレン32〜34重量%、エチレンビニルアセテート6〜7重量%、発泡剤1.4〜2.0重量%、酸化亜鉛2.0〜2.4重量%及びその他の添加剤としてのステアリン酸塩0.8〜1.2重量%、架橋剤0.8〜1.2重量%、充填剤10〜12重量%、顔料5〜7重量%であることが好ましい。
【0017】
本発明において、熱可塑性混合樹脂は、低密度ポリエチレン38〜42重量%と、線状低密度ポリエチレン32〜34重量%と、エチレンビニルアセテート5〜7重量%とを混合してなることが好ましい。低密度ポリエチレンと線状低密度ポリエチレンとの混合比が前記の混合範囲から逸脱すると、熱可塑性混合樹脂の適正な変形温度が変わるため、個人注文型のインソールの変形時点を定めることが困難になる恐れがある。そして、エチレンビニルアセテートは5〜7重量%を混合することが好ましく、前記の混合範囲内において、低温にて架橋的な結合を行うことにより、機械的な物性の良好なポリエチレンの物性と、低温における機械的な物性は弱いが衝撃強度の良好なエチレンビニルアセテートの物性とが互いに相互補完をするので効果がよい。本発明において、エチレンビニルアセテートを添加する理由は、エチレンビニルアセテートがポリエチレンの物性を補完し、且つ、低密度ポリエチレンや線状低密度ポリエチレンなどの非極性樹脂との馴染み性がよいためである。
【0018】
そして、発泡剤は、熱可塑性混合樹脂を発泡させて耐衝撃性をよくする役割を果たし、1.4〜2.0重量%を添加することが好ましい。発泡剤の添加量が前記添加範囲未満である場合には、前記熱可塑性混合樹脂が十分に発泡できなくなる恐れがあり、前記添加範囲を超える場合には、熱可塑性混合樹脂が過剰に発泡されてしまい、却って機械的な物性が低下する恐れがある。本発明において使用可能な発泡剤は、通常の発泡剤としてのアゾジカーボンアミド系の発泡剤であることが好ましい。しかし、アゾジカーボンアミドは、その分解温度が210℃と比較的に高くて、アゾジカーボンアミド発泡剤の分解温度を低下させるため、分解促進剤(活性剤)を添加することが求められる。アゾジカーボンアミドの分解温度低下用の活性剤として酸化亜鉛を使用し、酸化亜鉛の添加量は、2.0〜2.4重量%であることが好ましい。このように、前記添加量の範囲内において酸化亜鉛を使用すると、アゾジカーボンアミドの余計な分解温度を低下させることができ、しかも、架橋剤も同時に分解させることができる。
【0019】
本発明において、ステアリン酸塩は、発泡体を被覆させるためのものであり、0.8〜1.2重量%を使用することが好ましい。ここで、使用可能なステアリン酸塩は、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム及びステアリン酸アルミニウムよりなる群から選ばれたいずれか一種である。
【0020】
本発明において、架橋剤は、前記低密度ポリエチレンと線状低密度ポリエチレンとを架橋させるためのものであり、0.8〜1.2重量%を添加することが好ましい。前記添加量未満である場合には、前記混合樹脂の架橋が十分に起こらない恐れがあり、前記添加量を超える場合には、架橋密度の増加により発泡体のセル寸法が小さくなって発泡体の反発弾性が下がる恐れがある。本発明において使用可能な架橋剤は、通常の架橋剤としてのジクミルパーオキシド架橋剤である。
【0021】
そして、充填剤は、10〜12重量%の範囲内において、主として合成樹脂の耐老化性、耐熱性、収縮度などを調節するための目的で添加し、本発明において使用可能な充填剤は、通常の炭酸カルシウム、2酸化チタン、クレイから選ばれたいずれか1種である。
【0022】
本発明において使用する顔料は、需要者の要求やユーザーの必要に応じて、選択的に5〜7重量%を添加することが好ましい。
【0023】
また、本発明における熱感応フィルムシートの感応温度は71℃であって、銀色から黒色に変わるが、熱可塑性混合樹脂の混合比の調整により混合樹脂の変形温度が変わる場合には、変わった変形温度において熱感応をする熱感応フィルムシートを使用すればよい。
【0024】
以下、本発明の個人注文型のインソールの成形方法を下記の実施例を挙げて具体的に説明する。
【0025】
実施例1及び2
1.個人注文型のインソールの製造
下記表1の配合比に従い、熱可塑性混合樹脂を用いて個人注文型のインソールを製造した。
【0026】
【表1】

(重量%)
【0027】
2.個人注文型のインソールの足成形性の試験
上記の配合比に従い製造した個人注文型のインソールの足成形試験を下記の方法に従い行った。
【0028】
1.オーブンを90℃に合わせて予熱させた後、個人注文型のインソールをオーブンに2分間入れておくと、個人注文型のインソールが71℃に達したときに、熱感応フィルムシートの色表示部の色が銀色から黒色に変わる。このとき、2分後にも熱感応フィルムシートの色表示部の色が変わらなければ、個人注文型のインソールを加熱し続け、熱感応フィルムシートの色が変わるまで20秒置きに確かめる。
【0029】
2.熱感応フィルムシートの色表示部の色が銀色から黒色に変わったとき、加熱された個人注文型のインソールをオーブンから取り出して直ちに履物の内部の底面に敷く。
【0030】
3.足の裏が個人注文型のインソールに完全に接触できるように足のかかとが履物の後側に当接自在に履物の紐を結び、足を肩広さ分広げて2分間立っている。
【0031】
4.2〜3日間個人注文型のインソールを使用してみて、さらなる変形が必要となる場合には、さらに前記の方法に従い個人注文型のインソールを再成形する。
【0032】
3.個人注文型のインソールの足成形試験の結果
前記実施例1及び2の試料に対し、前記の1から3の足成形試験に従い試験を行った結果、実施例1及び2は両方とも熱感応フィルムシートが変色する時点においてインソールが足の形状に成形されていた。このため、本発明による個人注文型のインソールは、インソールの足成形時点を正確に判断することができた。
【0033】
本発明において、熱感応フィルムシートを用いた個人注文型のインソールは必ずしも上記の変形温度でのみ適用されるものではなく、混合樹脂の種類及び配合比に応じて混合樹脂の変形温度が変更される場合には、変更された変形温度において熱感応可能なフィルムシートを使用することができ、このとき、熱感応フィルムシートの種類に応じて変わる色は異なる場合もある。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】従来の個人注文型のインソールの斜視図。
【図2】従来の他の個人注文型のインソールの斜視図。
【図3】本発明による熱感応フィルムシートがインソールの底面に取り付けられた状態を示す個人注文型のインソールの斜視図。
【図4】本発明による熱感応フィルムシートがインソールの底面に取り付けられた状態を示す個人注文型のインソールの底面図。
【図5】本発明による個人注文型のインソールの底面に取り付けられた熱感応フィルムシートの拡大図。
【符号の説明】
【0035】
20 インソール
20a 上層
20b 中層
20c 下層
30 熱感応フィルムシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合繊生地製の上層(20a)と発泡層製の中層(20b)と混合樹脂層製の下層(20c)とを有する個人注文型のインソールにおいて、
前記個人注文型のインソールは、温度に応じて色が変わる熱感応フィルムシート(30)がインソール下層(20c)の側面の底面に取り付けられ、
且つ、前記下層(20c)は変形温度にて圧力をかけると変形が起こり、冷却後に変形されたままで固まるような特性を有する熱可塑性の混合樹脂層製のものであることを特徴とする個人注文型のインソール。
【請求項2】
前記熱感応フィルムシート(30)は、71℃にて変色が起こることを特徴とする請求項1に記載の個人注文型のインソール。
【請求項3】
前記下層は、低密度ポリエチレン38〜42重量%、線状低密度ポリエチレン32〜34重量%、エチレンビニルアセテート6〜7重量%、発泡剤1.4〜2.0重量%、酸化亜鉛2.0〜2.4重量%及びその他の添加剤としてのステアリン酸塩0.8〜1.2重量%、架橋剤0.8〜1.2重量%、充填剤10〜12重量%、顔料5〜7重量%を混合してなることを特徴とする請求項1に記載の個人注文型のインソール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−244854(P2007−244854A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−25257(P2007−25257)
【出願日】平成19年2月5日(2007.2.5)
【出願人】(507038652)ハン シン コリア カンパニー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】