説明

光学式エンコーダ

【課題】検出ヘッド内部の迷光等の影響を受けず、かつ信頼性を確保して小型化・薄型化を図ること。
【解決手段】光源4とスケール9との間の光路上に配置される第1の光透過部50と、スケール9と光検出器6との間の光路上に配置される第2の光透過部70と、第1の光透過部50と第2の光透過部70とを繋ぐ接続透過部200とを有する光透過部材5を備え、第1の光透過部50の表面と第2の光透過部70の表面との間に介在し、エンコーダ信号の検出に寄与しない迷光を低減する迷光低減機能要素を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被変位検出体の変位を検出する光学式変位センサ等に用いられる光学式エンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エンコーダの小型化・薄型化が進んできている。このエンコーダの普及品では、一辺が例えば10mm〜20mmに形成された検出ヘッドのサイズに対して数mm角のサイズのものも市場に出始めてきている。こうした小型化の流れの中でエンコーダは、パッケージングにおいても小型化を意識した形状・形態となっていくと考えられる。例えば、従来の金属やセラミクスを用いたパッケージは、より厚みを薄くし、さらに従来のパッケージを樹脂モールド等のパッケージング技術を用いたもので置き換えるようになっていくと考えられる。
【0003】
検出ヘッドのサイズが小さくなると、当該検出ヘッド内部に設けられている発光部と受光部との間隔も狭くなる。そのため、検出ヘッド内部での迷光などによって、発光部から出射されて検出ヘッド内部を経由して受光部へ入る光の検出光量に占める割合が大きくなる可能性が高くなる。
【0004】
エンコーダにおける検出ヘッド上部は、素子保護の為にガラス板で覆ったり、透明樹脂で封止したりすることが多い。このような場合、光源から出た光は、検出ヘッド上部の内面で反射して受光部へ入る可能性がある。特に、検出ヘッドを小さくするために検出ヘッドの厚みを薄くすると、当該検出ヘッド内面での反射角が大きくなる。このため、検出ヘッド内面での反射角が全反射角を超えると、受光部へ入る光量が急激に増える。
又、検出ヘッド内部を多重反射するなどした光についても、小型化により従来よりも多くの光量が受光部へ入り易くなる。
【0005】
これらの検出ヘッド内部の反射光等の迷光は、位置検出信号(エンコーダ信号)を生成する際のノイズ成分となる。迷光によるノイズ成分は、位置検出信号のSN比を極端に劣化させる原因となりうる。位置検出信号の振幅等の出力レベルを保つために所定の信号増幅を行うと、大きなノイズ成分の影響で位置検出信号のレベルが飽和してしまう可能性がある。
もし、ノイズ成分による位置検出信号の飽和を避けようとすると、ノイズ成分を除去する処理を余分に追加する必要が生じたり、ノイズ成分除去処理に起因する信号劣化の対策をしなければならなくなる可能性も出てくる。
【0006】
このような小型化・薄型化を意識した光学式エンコーダの従来技術の一例としては、例えば特許文献1に開示されている光学式エンコーダが挙げられる。この特許文献1は、図16に示すように発光素子としてのLED402と光電変換素子アレイとしての受光素子アレイ403、404とをヘッド側に有する反射型の光学式エンコーダを開示する。この光学式エンコーダは、アブソリュートパターン100及びインクリメンタルパターン101と対向するようにセンサ光学部114を設け、LED402の光を各インクリメンタルパターン100、101で反射して受光素子アレイ403、404により受光する。この光学式エンコーダは、LED402と受光素子アレイ403、404が透明光学部材に覆われ、この透明光学部材がそのままパッケージング部材となっている。
【0007】
このような特許文献1では、以下のような条件が加えられている。即ち、発光部から受光面の一番遠いところまでの距離をD、発光面と受光面から透明光学部材表面までの距離をG、透明光学部材表面内部で反射率が10%となる角度をθとすると、以下の式が成り立つように厚みGを設定する。
G≧D/(2・tanθ)
検出ヘッドに発光素子と受光素子とを透明部材によりモールドするなどして小型化を図った際に、保護部材である透明光学部材の厚みを薄くすると、発光素子から出射された光は、透明光学部材内面で反射し、この反射光が受光部に入る。このため、位置検出信号(エンコーダ信号)を生成する際のノイズ成分となり、位置検出信号のSN比が劣化してしまう。しかるに、特許文献1は、透明光学部材の厚みを一定値以上に厚くして透明光学部材への内部からの反射率を10%以下となるようにしている。
このように特許文献1に開示されている光学式エンコーダは、透明光学部材の厚みを大きく取ることで、透明光学部材内部での反射光の問題を回避しようとしている。
【特許文献1】特開2005−156549号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
光学式エンコーダの小型化・薄型化に合わせて検出ヘッドのサイズが小さくなると、検出ヘッド内部の発光部と受光部の間隔が狭くなる。このため、検出ヘッド内部での迷光などによって、発光部から出射されてヘッド内部を経由して受光部に入射する光の検出光量に占める割合が大きくなる可能性が高くなる。
【0009】
光学式エンコーダの検出ヘッド上部は、素子保護の為にガラス板で覆ったり、透明樹脂で封止したりすることが多い。このような場合、光源から出射された光は、検出ヘッド上部の内面で反射して受光部へ入射する可能性がある。特に、検出ヘッドを小さくするために当該検出ヘッドの厚みを薄くすると、検出ヘッド内面での反射角が大きくなり、この反射角が全反射角を超えると、受光部に入射する光量が急激に増える。
又、検出ヘッド内部を多重反射するなどした光についても、小型化により従来よりも多くの光量が受光部へ入り易くなる。
【0010】
これら検出ヘッド内部の反射光等の迷光は、位置検出信号を生成する際のノイズ成分となる。迷光によるノイズ成分は、位置検出信号のSN比を極端に劣化させる原因と成り得る。位置検出信号の振幅等の出力レベルを保つために所定の信号増幅を行うと、大きなノイズ成分の影響で位置検出信号のレベルが飽和してしまう可能性がある。
もし、ノイズ成分による信号飽和を避けようとすると、ノイズ成分を除去する処理を余分に追加する必要が生じたり、ノイズ成分除去処理に起因する信号劣化の対策をしなければならなくなる可能性も出てくる。
【0011】
特許文献1に開示されている光学式エンコーダでは、透明光学部材の厚みを厚く取ることで、光学ヘッド内部の反射光の問題を回避しようとしている。しかしながら、検出ヘッドのサイズに対する樹脂の厚みの比を一定以上にするため、薄型化を満足しない可能性がある。また、透明光学部材の厚みを厚く取ることで、検出系のワーキングディスタンスを大きく取る必要が生じ、設計の自由度が損なわれる可能性がでてくる。
【0012】
さらに、検出ヘッドのパッケージングにモールド樹脂を採用した場合、モールド樹脂では温度変化による熱膨張・収縮や硬度の大きな変化がある。このため、樹脂厚を大きくすることで例えば図17に示すようにワイヤ配線506の断線や、樹脂クラックG1、ガラス割れG2等の発生などの問題が生じやすくなる。なお、500は基板、501は受光素子、502はLED光源、503はガラス部材、504は電極、505は樹脂、506はワイヤ配線、507はスケール、508は第1格子、509は第2格子、510は第3格子である。
【0013】
ワイヤ配線506の断線や、樹脂クラックG1、ガラス割れG2等が発生するため、検出ヘッドのパッケージングにモールド樹脂を採用した場合、信頼性を確保することが困難になったり、設計・製造上の対策にコストがかかったりするようになる可能性が出てくる。
【0014】
本発明の目的は、検出ヘッド内部の迷光等の影響を受けず、かつ信頼性を確保して小型化・薄型化を図ることができる光学式エンコーダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の主要な局面に係る光学式エンコーダは、被変位検出体としての一方の部材に取り付けられたスケールと、一方の部材に対して相対移動する他方の部材に取り付けられ、かつスケールに対向して配置された検出ヘッドとを有し、エンコーダ信号を発生する光学式エンコーダにおいて、スケールは、相対移動する方向に所定の光学パタンが設けられ、検出ヘッドは、スケールに所定の光を照射する発光部と、発光部からスケールに照射され、光学パタンを経た光を受光する受光面を有し、当該受光面上に形成される光分布を検出する光検出部と、発光部とスケールとの間の光路上に配置される第1の光透過部分と、スケールと光検出部との間の光路上に配置される第2の光透過部分と、第1の光透過部分と第2の光透過部分とを繋ぐ接続透過部分とを有する光透過部材と、第1の光透過部分の表面と第2の光透過部分の表面との間に介在し、エンコーダ信号の検出に寄与しない迷光を低減する迷光低減機能要素とを備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、検出ヘッド内部の迷光等の影響を受けず、かつ信頼性を確保して小型化・薄型化を図ることができる光学式エンコーダを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の第1の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1Aは光学式エンコーダの概略構成図を示し、図1Bは同エンコーダにおけるスケールの移動方向の断面構成図を示す。この光学式エンコーダ1は、反射型である。なお、以下の実施の形態及びその各変形例では、反射型のエンコーダの例について説明するが、これに限られるものでない。
【0018】
光学式エンコーダ1は、センサヘッド2と、このセンサヘッド2に対向して配置されたスケール9とから構成される。センサヘッド2は、配線基板3を備え、この配線基板3上に光源4と光検出器6と光透過部材5と樹脂材8とを配置している。光検出器6は、受光素子アレイから成る受光領域61を内部に有する。なお、スケール9は、図1Aにおいてy方向の長さが図1Bに示すスケール9のy方向の長さに比較して短くなっているが、これは図1Aにおいてセンサヘッド2側の構成を分かり易くするためである。
【0019】
光源4は、面実装用のチップタイプのモールドLEDであり、その上面は平坦に形成されている。
光源4の出射面と光検出器6の受光素子アレイの受光面とは、図中Z方向に高さ位置がほぼ揃っている。これら光源4の出射面と光検出器6の受光素子アレイの受光面とには、光透過部材5が配線基板3にほぼ平行に光透過性接着剤により貼り付けられている。
光透過部材5における光源4の出射面に対向する部分が第1の光透過部50であり、光検出器6における受光素子アレイに対向する部分が第2の光透過部70である。第1の光透過部50と第2の光透過部70とは、光透過性の部材から成る接続透過部200を介して接続されている。この接続透過部200は、第1の光透過部50及び第2の光透過部70と同一部材から成る。
【0020】
光透過部材5は、ガラスの平行平板から加工して切り出した部材を用いており、上面と下面が平坦な研磨面に形成されている。
光透過部材5における第1の光透過部50と第2の光透過部70とは、それぞれ直方体の形状に形成されている。又、接続透過部200は、第1の光透過部50及び第2の光透過部70よりも図中X方向に細い幅に形成されている。
【0021】
光検出器6における受光素子アレイの受光面は、光源4の出射面よりも僅かにZ方向に高い位置に設けられている。光透過部材5は、光検出器6の受光素子アレイの面に合わせて配線基板3に平行に貼り付け、かつ光透過部材5と光源4の出射面との隙間に光透過性接着剤が埋められている。
このように光源4の出射面と光検出器6の受光素子アレイの受光面との若干の段差によって、配線基板3に平行に光透過部材5を貼り付けたときにできる隙間は、光透過性接着剤を用いて埋めても良いし、ほぼ平行度が保てて光学的に問題無ければ、隙間が無いように段差の分だけ傾斜させて光透過部材5を貼り付けてもよい。
【0022】
光透過部材5における第1の光透過部50の光源4に対向する面には、第1格子601が形成されている。この第1格子601は、x方向にピッチp1を有する光学パタンである。なお、第1格子601に必要な領域以外の部分には遮光パタンを形成してもよい。
【0023】
光透過部材5の側面に特に光学的な処理を施していなくても良いが、本実施の形態は、第1の光透過部50と第2の光透過部70との両方の部分の側面に迷光低減機能要素を設ける。この迷光低減機能要素は、例えば光を遮断又は減衰させたり、透過光を散乱させたり、光検出器6側へとは異なる特定の方向へ光を逸らす等の機能を有する。迷光低減機能を具体的に実現する処理としては、例えば、遮光膜形成、回折格子パタン形成、磨りガラス処理、ARコート処理等が挙げられる。
【0024】
光透過部材5は、スケール9に対向する上面と、光源4と接する底面部分と、光検出器6と接する底面部分とを除いてその他の部分がセンサヘッド保護用の樹脂材8により囲まれている。なお、光透過部材5、樹脂材8及び光透過性の接着剤の材質の熱的特性は、光検出器6を構成するSi系半導体材料に近い特性を有することが望ましい。また、図1Bにおいて、光透過部材5の第1の光透過部50が光源4から光検出器6へ若干はみ出して取り付けられているが、光透過性の樹脂材8を形成する際にクラック等が発生しないように、はみ出し量が抑えられている。接続部200の断面も同様にクラック等が発生しないように断面積を小さく抑えている。
スケール9は、センサヘッド2と相対的に変位する光学パタンである第2格子91を有する。この第2格子91は、スケール9とセンサヘッド2とが相対的に移動する方向に所定のピッチp2の光学パタンに形成されている。
【0025】
次に光学系の配置について説明する。
光透過部材5上の第1格子601からスケール9上の第2格子91までの光学的距離をz1、スケール9上の第2格子91から光検出器6の受光面までの光学距離をz2、光源4の発光波長をλとすると、
1/z1+1/z2=λ/(np2) …(1)
を満足する自然数nが存在するように、光源4とスケール9と光検出器6とを配置する。これにより、スケール9の回折拡大イメージパタンが光検出器6の受光素子上に転写されたイメージを現すことができる。そして、所定の位置に光検出器6を配置すれば、スケール9の変位量を検出可能であることが知られている。
【0026】
但し、上記式(1)において、第1格子601と第2格子91との間のi(自然数)番目の物質、又は空間の屈折率ni、厚みtiとし、第2格子91と光検出器6の受光面との間のj(自然数)番目の物質、又は空間の屈折率nj、厚みtjとし、第1格子601と第2格子91との間の光学距離をz1=Σti/ni、第2格子91と光検出器6の受光面との間の光学距離をz2=Σtj/njと定義する。
【0027】
本光学式エンコーダの構成では、小型化のためにn=1を満たすz1とz2とを採用している。上記式(1)を満たすz1とz2の組み合わせにおいて、値の最も小さいものとしている。さらに、上記式(1)において、z1=z2を満たす配置構成を取っている。このとき、拡大倍率は2倍となり、p1=p3=2p2となる。
【0028】
次に、光検出器6の構成について説明する。
第2図は光検出器6上に形成されている受光素子アレイから成る受光領域61の拡大図を示す。光検出器6は、矩形状の4つのフォトダイオードPD1、PD2、PD3、PD4を組み合わせて1組とし、この組み合わせを複数組配置して成る。これら複数組のフォトダイオードPD1、PD2、PD3、PD4の出力は、4つ置きの各PD出力を共通結合して4つの電気信号の出力を得るようになっている。4つの電気信号は、4つの電極パッドA1、B1、A2、B2から出力される。接続された4つ置きのPDのピッチは、p3であり、隣り合うPDとはp3/4だけずれて配置されている。
【0029】
次に、光学的な配置について説明する。
図3において、光源4の光出射部から出射された光は、光透過部材5内を伝播し、当該光透過部材5と外界(一般に空気)との界面上の点Cから出射される。この外界との界面上の点Cにおいて、外界の媒質の屈折率をn1、光透過部材5の屈折率をn2、樹脂材8の屈折率をn3、外界に伝播する屈折光の屈折角度θ1、界面の法線となす角度をθ2、n3=n2、とする。
【0030】
このとき、スネルの法則により、以下の式が成り立つ。なお、一般的な説明を行っているが、本実施の形態では、外界の媒質を空気と想定しており、n1=1である。
n1・sinθ1=n2・sinθ2 …(2)
光透過部材5は、光透過樹脂又はガラスなど光検出器6や図示しない信号処理回路等を構成するSi半導体と熱的特性が同じか又は近い材質で構成されており、n2>n1である。光ビームが光透過部材5の表面で全反射する臨界角度θcとすると、次の式が成り立つ。
θc=sin−1(n1/n2) …(3)
光源4の出射部内の任意の1点と光検出器6の受光素子アレイから成る受光領域61内の任意の1点を取り、各点の位置を変化させた場合、光源4の出射部内の1点から光検出器6の受光領域61内の1点までの距離のスケールに平行な成分が取りうる最大値をD、最小値をdとする。
光源4から光透過部材5の光が出射する表面までの厚さをG、光透過部材5の表面からスケール9の第2格子91までの距離をG0、光透過部材5の表面から光検出器6までの厚さをG’とする。
このとき、本実施の形態は、次式を満足する構成となっている。
(G+G’)<D/tanθc …(4)
上記式(4)を満たすDは、光透過部材5が広い領域に形成されていた場合、点F近傍において光源4から入射した光が全反射し、その反射光が光検出器6に直接入射するような光透過部材5の厚みである。
従来のように光透過部材5と光検出器6との間が連結された場合には、センサ内部の反射光が直接光検出器6の受光領域61に入射し、図4Aに示すように変位信号に占めるDC成分が上昇する。
【0031】
上記式(4)は、G=G’でない場合を想定している。
【0032】
G=Gである場合、即ち、第5図に示す場合には、上記式(4)は、以下のように置き換えられる。
G<(D/2)/tanθc …(5)
樹脂材8は、センサヘッド2内の部材の保護を主たる目的としたものである。この樹脂材8は、例えば光に対して透明なクリアモールド樹脂を用いている。従って、樹脂材8は、センサヘッド2内の部材の保護の観点からすると、当該センサヘッド2内部の電気配線部や電極の周囲のみを保護するようにしてもよい。又、樹脂材8は、場合によって全て除去してしまっても構わない。
【0033】
樹脂材8は、光検出器6の電極32及び電極ボンディングワイヤ33を埋め込んでいる。本構成において、電極ボンディングワイヤ33は、樹脂材8により埋め込まれる部材のうちで光透過部材5と樹脂材8とを除くと最も高い位置まで配置される部材であり、この最も高くにある部材が完全に樹脂材8で埋め込まれている。
本実施の形態においては、センサヘッド2内の光源4側に第1格子601を配置し、かつ光源4と受光領域61を内部に有する光検出器6とを別体で配置する等しているが、光源4等の発光部と光検出器6等の受光部とを有する反射型のセンサヘッド2を構成するのであれば、どのような光学式エンコーダでも上記式(2)〜式(7)を適用することが可能であり、本実施の形態を含めた本発明の迷光防止の作用や効果を奏することができる。
【0034】
樹脂材8は、光透過性の樹脂を用いているが、光透過性であれば色や素材を限定するものではない。また、樹脂材8は、受光素子アレイから成る受光領域61を覆わず、光検出に影響を与えないのであれば、光透過性でなくてもよい。また、樹脂材8は、複数の素材を組み合わせたり、複数層にしても構わない。
光透過部材5の側面は、光透過部材5の側面から出て光検出器6の受光素子アレイへ到達する光を遮断、又は低減するような形状や、表面の微視的な形状である表面状態や側面形状と配置の組合せを併用してもよい。具体的に光透過部材5の側面は、光を発散させるような表面状態・表面形状としたり、光検出器6の受光素子アレイから成る受光領域61から光を逸らすような表面形状と配置の組合せとしたりしてもよい。
【0035】
光透過部材5の接続透過部200は、光透過部材5の内部における第1の光透過部50から第2の光透過部70に向かって伝達する光の光量を低減するよう幅を狭く形成している。さらに、接続透過部200は、光の伝達を低減するために、幅を狭くする方向を図1A、図1Bに示すZ方向に変えたり、又は湾曲部を持たせる等の形状に工夫を施す。又、光透過部材5は、光を遮断したり、減衰するために、第1の光透過部50や第2の光透過部70と別素材により形成したり、不純物を入れる等、伝達光量を減衰する材料を用いてもよい。光透過部材5は、当該光量低減のための方法を組み合わせても良い。
【0036】
光透過部材5の形状の具体例について図6A〜図6Dを参照して説明する。
図6Aは上記図1A及び図1Bに示す光透過部材5をスケール9側、すなわちZ方向の上方から見た図を示し、図6B乃至図6Dは光透過部材5の変形例を示す。図6Aに示す光透過部材5は、第1の光透過部50と第2の光透過部70との間を1つの接続透過部200により接続している。この接続透過部200は、例えば板状で、かつX方向における第1の光透過部50と第2の光透過部70との間の中間位置(中央部)に設けられ、X方向に狭く形成されている。
【0037】
図6Bに示す光透過部材5は、第1の光透過部50と第2の光透過部70と間の外周側の2カ所にそれぞれ第1の接続透過部200aと第2の接続透過部200bとを接続している。これら第1と第2の接続透過部200a、200bは、それぞれ角度90°の各屈曲部200c、200dが設けられている。
このような光透過部材5であれば、X方向における第1の光透過部50と第2の光透過部70との間の中間位置(中央部)における光の内部伝達を避け、かつ角度90°の各屈曲部200c、200dを設けることで光が内部伝達しにくくなり、さらに接続透過部200を2カ所に設けることで光透過部材5の強度を向上させることができる。
【0038】
一方、図6C及び図6DはX方向から見た光透過部材5の形状を示す。光透過部材5は、図6Cに示すように接続透過部200のZ方向の厚みを第1の光透過部50及び第2の光透過部70の厚みよりも薄く形成する。このような光透過部材5であれば、X方向における第1の光透過部50と第2の光透過部70との間の中間位置(中央部)の上部に内部伝達する光を無くすことができる。
【0039】
光透過部材5は、図6Dに示すように第1の光透過部50と第2の光透過部70との間のZ方向における上部と下部との2カ所にそれぞれ上部接続透過部200e、下部接続透過部200fを設ける。このような光透過部材5であれば、上部で光路が屈曲しているので、多重反射無しに上部を内部伝達する光が無く、かつZ方向の上部と下部とに上部接続透過部200e、下部接続透過部200fを2カ所に設けることで、光透過部材5の強度を向上させることができる。
【0040】
本実施の形態では、上記式(4)を満足するようにセンサヘッド2の厚みを薄くしているが、必ずしも薄くなくても構わない。なお、センサヘッド2の厚みの薄型化は、迷光防止による副次的な効果である。
光学式エンコーダ1は、原理的に上記式(1)を満足するタイプである。センサヘッド2に光源4等の発光部と光検出器6とを有する構成で有れば、センサヘッド2内の迷光防止機能は、必ずしもエンコーダの検出原理には限定されない。例えば、光干渉を用いない、反射強度のみを検出するタイプや特定の次数の回折光のみを用いたタイプでもよい。
【0041】
次に、上記の如く構成された光学式エンコーダ1の動作について説明する。
光学式エンコーダ1は、上記式(1)の条件を満たすような位置に光検出器6を配置されているので、発光部である光源4から出射された光がスケール9上の第2格子91により反射又は回折され、この第2格子91のパタンの拡大された明暗像が受光素子アレイから成る受光領域61上に形成される。この受光素子アレイから成る受光領域61上の拡大像パタンは、センサヘッド2とスケール9との相対移動に応じて移動し、この移動を光検出部6で検出する。
【0042】
上記式(1)において、z1=z2を満たす配置構成であることから受光素子アレイから成る受光領域61上には、スケール9のピッチの2倍のピッチを持つ明暗の回折パタンが形成される。スケール9がセンサヘッド2に対して相対移動すると、図2に示す4つの電極パッドA1、B1、A2、B2から出力される電気信号は、互いに1/4周期だけ位相が異なる擬似正弦波信号となる。
【0043】
センサヘッド2から出力される検出信号について図4A及び図4Bを参照して説明する。
図4A及び図4Bは、縦軸を電圧とし、横軸を位置としている。光学式エンコーダ1のセンサヘッド2とスケール9とが一定の速度で相対的に移動している場合、横軸は時間と見なしても良い。
図4Aは、互いに1/4周期だけ位相が異なる4つの信号の内、互いに180°位相差の逆相となる2組の信号の差をとって得た擬似正弦波信号であるA相信号とB相信号を表す。同図に示す例では、迷光による検出信号の飽和の影響は出ていない。
図4Bは、互いに1/4周期だけ位相が異なる4つの電極パッドA1、B1、A2、B2から出力される電気信号の1つの波形を表している。同図に示す例では、迷光が大きいためにDC成分が大きくなり、そのため、検出信号が飽和している。
【0044】
電流電圧変換後に検出信号に含まれるDC成分や同相ノイズを除去したり、さらにゲインを掛けるために、センサヘッド2は、互いに1/4周期だけ位相が異なる4つの信号の内、互いに逆相となる2組の信号の差をとり、2つの90°位相差の擬似正弦波信号である、A相信号とB相信号を得る。
【0045】
この擬似正弦波信号をセンサヘッド2内部又は外部において2値化して変位検出する。または、擬似正弦波信号を内挿処理回路で信号処理し、さらに高分解能な変位量を検出できる。
【0046】
図4Bに示すように飽和した信号を用いると、図4Aに示すAB相信号にも飽和の影響が現れ、正弦波からの歪みが大きくなる。特に、DC成分が極めて大きくなり、図4Bに示す信号が常に飽和した状態となると、図4Aに示すAB相信号の振幅が0となってしまう。
【0047】
光透過部材5の側面の形状及び表面形状は、光透過部材5における第1の光透過部50の側面から出射して第2の光透過部70へ到達する光を遮断又は低減するようになっている。これにより、光透過部材5における第1の光透過部50と第2の光透過部70の側面とを通過する光の光量は低減される。この結果として光透過部材5の側面を経由して光検出器6の受光素子アレイ61の方向へ向かう光の光量は、低減される。すなわち、光透過部材5における第1の光透過部50の表面又は第2の光透過部70の表面は、迷光低減機能要素としての形状を備える。
【0048】
具体的に、光源4の光出射部と光検出器6の受光部とは、共通の光透過性部材である光透過部材5に接しているものの、当該光透過部材5における接続透過部200以外では内部を光が伝達出来ない。すなわち、光透過部材5における第1の光透過部50の表面、又は第2の光透過部70の表面、樹脂材8、又は空間が迷光低減機能要素として形成されている。これにより、光透過部材5の側面を経由して光検出器6の受光素子アレイ61の方向へ向かう迷光の光量は、減少する。
又、光透過部材5における接続透過部200は、光透過部材5における第1の光透過部50や第2の光透過部70に比べて図1A、図1BにおけるX方向に細く形成されている。これにより、接続透過部200も迷光低減機能要素となっている。
しかるに、迷光低減機能要素としての光透過部材5における第1の光透過部50の上面内部で反射して光検出器6へ向かう迷光の光量は大幅に減少する。さらに、光透過部材5は、例えば上記図6B乃至図6Dに示すような形状に形成することが可能であり、これら光透過部材5の形状を含めて、光透過部材5における接続透過部200の内部伝達光の光量を低減する対策を実施することで、光透過部材5の上面内部で反射したり、当該光透過部材5の内部を伝達して光検出器6へ向かう迷光の光量は大幅に減少させたりすることができる。
【0049】
又、光源4の光出射部と光検出器6の受光部の高さ位置とが合っているので、光透過部材5における第1の光透過部50の側面から出る光は、基本的に斜め上に向かう。斜め上方向に向かう光は、基本的には直接光検出器6の受光部へ向かない。
又、光透過部材5は、直方体の形状を有したガラスにより形成されており、屈折率は約1.5である。センサヘッド2の周囲は、屈折率1の大気など光透過部材5よりも屈折率の低い物質、又は空間となっている。この場合、第1の光透過部50の側面のような平らな面から屈折率の低い物質又は空間へ出る光は、出射角が入射角よりも大きくなり、発散光となる。そのため、光透過部材5の側面から出て光検出器6の受光領域61へ到達する光の光量は、センサヘッド2のスケール9側に光透過部材5又は他の光透過性部材が一体的に配置されている場合に比べて小さくなる。即ち、エンコーダ信号の検出に寄与しない迷光が光検出器6へ入る量を低減することができる。
【0050】
光透過性の樹脂材8の屈折率を光透過部材5の屈折率よりも小さくとれば、光透過部材5の側面に特に光学的な処理を必ずしも施していなくても上記作用を実現できる。光透過部材5の側面に遮光・散乱等の機能を追加することで、さら迷光低減機能要素の効果を向上させることができる。光透過性の樹脂材8の屈折率が光透過部材5の屈折率に近いか、大きい場合には、光透過部材5の側面に遮光・散乱等の機能を追加することが必要となる。
【0051】
本実施の形態と従来技術とを対比すると、光透過部材がセンサヘッド2のスケール9側の面全体に拡がっており、その表面で反射した光が光検出器6上の受光領域61に直接入射された場合を考えると、従来の光学式エンコーダでは、各相の信号が図4Aに示すようにDC成分レベルが増大し、各相の信号振幅がDC成分の大きさに比べて相対的に小さくなる。そして、従来の光学式エンコーダでは、信号の飽和傾向が強くなり、実際に信号が飽和すると変位量検出に誤動作が生じる。また、従来の光学式エンコーダでは、実際に信号が飽和していなくても、DC成分レベルが大きいために信号増幅に制限が生じることで、検出したい擬似正弦波信号のレベルやそのSN比が低下してしまう可能性がある。
【0052】
これに対して本実施の形態によれば、光源4とスケール9との間の光路上に配置される第1の光透過部50と、スケール9と光検出器6との間の光路上に配置される第2の光透過部70と、第1の光透過部50と第2の光透過部70とを繋ぐ接続透過部200とを有する光透過部材5を備え、第1の光透過部50の表面と第2の光透過部70の表面との間に介在し、エンコーダ信号の検出に寄与しない迷光を低減する迷光低減機能要素を備えた。これにより、光伝達経路を限定している。
【0053】
すなわち、本実施の形態によれば、光透過部材5を光源4と光検出器6とスケール9の間に配置し、かつ光源4と光検出器6にそれぞれ光透過部材5の第1の光透過部50と第2の光透過部70とを面している。これにより、光透過部材5内部での光伝達は、その光伝達経路を狭めた、若しくは光の伝達量を低減する接続透過部200に限定される。すなわち、光源4と光検出器6とには、別体に近い光透過部材5が面することになる。しかるに、光透過部材5のスケール9側の面での反射光が光透過部材5内部で光検出部6へ入ることはない、若しくは低減される。
【0054】
又、センサヘッド2内において光透過部材5の側面から光検出器6の受光領域61へ伝達する光の光量を低減するように光透過部材5の側面が配置されており、途中の部材や空間を経て光検出部6へ入射する光の光量も低減される。すなわち、光透過部材5の側面が迷光低減機能要素になっている。
【0055】
これにより、光透過部材5は、センサヘッド2のスケール9側の面全体に拡がっていて、光透過部材5の表面で反射した光が光検出器6上の受光領域61に直接入射された場合と比較すると、DC成分が低減される。これにより、信号飽和の可能性が低減し、より大きなゲインで信号増幅することが可能となる。その結果、DC成分レベルが低い場合に本来得られるべき、所望の検出信号レベルや問題無いSN比を得ることが可能となる。
【0056】
次に、光透過部材5の側面の形状の効果について説明する。
光透過部材5の表面にエンコーダ信号の発生に寄与しない迷光を少なくとも低減する迷光低減機能要素は、第1の光透過部50の表面と第2の光透過部70の表面とのうちの少なくとも1つの表面であり、当該表面の光学的機能により迷光を低減する。すなわち、光透過部材5の側面は、迷光低減機能要素として、光透過部材5の側面から出て光検出器6上の受光領域61へ到達する光を遮断又は低減するような光透過部材5の側面の形状や表面状態となっている。これにより、光透過部材5の側面を通過する光の光量は低減されたり、光検出器6の受光素子アレイから成る受光領域61の方向へ向かう光の光量が低減される。その結果、光検出器6が検出する信号について高いSN比を得ることが可能となる。
【0057】
次に、光透過部材5の側面の形状と光源4や光検出器6を含めた配置の組合せの効果について説明する。
光透過部材5における第1の光透過部50と第2の光透過部70の側面は、迷光低減機能要素として、光透過部材5の側面から出て光検出器6上の受光領域61へ到達する光を遮断又は低減するような光透過部材5の側面の形状と光源4や光検出器6を含めた配置の組合せになっている。これにより、光透過部材5の側面を通過する光の光量が低減されたり、光検出器6の受光素子アレイ61の方向へ向かう光の光量が低減されたりする。その結果、光検出器6が検出する信号について高いSN比を得ることが可能となる。
【0058】
以下、光透過部材5の側面から出て光検出器6上の受光領域61へ到達する光の光量が十分低減される光透過部材5の側面の形状と配置の組み合わせについて具体的に示す。
光透過部材5は、直方体の形状を有している。光源4の光出射部と光検出器6の受光部とが共通の光透過性部材である光透過部材5に接しているものの、接続透過部200以外では内部を光が伝達出来ない。又は、接続透過部200は、光透過部材5における第1の光透過部50及び第2の光透過部70に比べ、図1A、図1Bに示すようにX方向に細く形成されている。すなわち、光源4と光検出器6とには、別体に近い光透過部材5が面することになる。これにより、光透過部材5の上面内部で反射して光検出器6の受光部へ向かう迷光の光量は減少する。さらに、光透過部材5における接続透過部200の内部伝達光の光量を低減する対策を実施することで、光透過部材5の上面内部で反射したり、内部を伝達して光検出器6の受光部へ向かう迷光の光量を大幅に減少させたりすることができる。
【0059】
又、光源4の光出射部と光検出器6の受光部とのZ方向の高さ位置が合っているので、光透過部材5の上面を経ずに側面から出る光は基本的には斜め上に向かう。これにより、光透過部材5の側面から出る光は、基本的には直接光検出器6の受光部へは向かわない。
【0060】
光透過部材5はガラスで形成されており、その屈折率は約1.5である。センサヘッド2の周囲は、屈折率1の大気などの光透過部材5よりも屈折率の低い物質又は空間となっている。この場合、平らな面から出る光は、出射角が入射角よりも大きくなり発散光となる。これにより、光透過部材5の側面から出て光検出器6上の受光領域61へ到達する光の光量は、センサヘッド2のスケール9側が光透過部材5で一体的に覆われている場合に比べて小さくなる。
以上の事から光透過部材5の側面から出て光検出器6上の受光領域61の側面へ向かう光を低減する作用やそれに伴う効果を有する。
【0061】
光透過部材5の表面に形成される迷光低減機能要素は、スケール9等の被変位検出体の変位検出に全く寄与しない部分にのみ配置又は形成される。しかるに、光学式エンコーダ1の信号検出に用いられる光は、光透過部材5の上下の面を通過する。少なくとも光透過部材5の上下の面を通らない光は、エンコーダが本来検出すべき信号とはならないよう設計・配置されている。
一方、光透過部材5の側面及び接続透過部200は、センサヘッド2内において光透過部材5側面から光検出器6上の受光領域61へ伝達する光の光量を低減するように配置されている。これにより、迷光低減機構要素は、光透過部材5の上下の面を通過する光を低減させることはない。従って、迷光によるDC成分のみを低減するようになっている。この事から検出すべき信号は、維持したまま、SN比の改善が可能となる。
【0062】
第1と第2の光透過部50、70の各表面は、エンコーダ信号の検出に関与する光が経由する部分を含む1つ以上の面と、当該面以外のエンコーダ信号の検出に関与しない1つ以上の面とから成り、第1と第2の光透過部50、70における少なくとも一方のエンコーダ信号の検出に関与しない表面に迷光低減機能要素を配置又は形成する。すなわち、光透過部材5における第1の光透過部50と第2の光透過部70とは、上下の面と直方体型の側面から形成されている。第1の光透過部50と第2の光透過部70との上下の面を通過する光がエンコーダの信号検出に用いられ、迷光低減機構要素がこれら上下以外の第1の光透過部50と第2の光透過部70との側面に配置・形成されている。このように信号検出用の面と迷光低減に用いる面とが分離されているので、迷光低減機構要素の配置・形成位置が明確となる。これにより、迷光低減機構要素の配置・形成が容易となると共に、検査時等における確認が容易となる。
【0063】
又、光透過部材5は、光源4とスケール9との間に配置されている。これにより、光透過部材5は、第1格子601の機能と迷光低減機構要素の機能とを1部材で兼用できる。部材点数が削減されることにより、省スペース、構成の単純化、コスト削減などの効果を奏することができる。又、センサヘッド2全体として実装精度が向上することにより性能向上ができ、さらに実装精度を緩めることができたりするといったメリットが生まれる可能性がある。
【0064】
センサヘッド2内において、第1の光透過部50と第2の光透過部70とを除いて少なくとも発光部として光源4と光検出部6と配線部材とは、迷光低減機能要素により覆われて当該迷光低減機能要素からはみ出さない。すなわち、センサヘッド2内において、第1の光透過部50及び第2の光透過部70以外の部材は全て樹脂材8に覆われ、光源4と光検出器6と配線とが樹脂材8からはみ出さないように実装されている。これにより、迷光低減機能要素である樹脂材8が保護部材として機能し、封止による信頼性向上が図られる。
【0065】
接続透過部200は、光伝達抑制機能を有する。すなわち、光透過部材5における第1の光透過部50と第2の光透過部70とを接続する接続透過部200は、光伝達抑制機能を有している。光伝達抑制機能は、具体的には、接続透過部200の断面が光透過部材5における第1の光透過部50と第2の光透過部70の断面よりも小さいことや、光が減衰する材料を用いたり、曲げを有する形状こと等によって実現される。そのため、光源4から光検出器6上の受光領域61へ到達する光を低減、又は遮断する作用を持つ。この結果、DC成分レベルが低い場合に本来得られるべき、所望の検出信号レベルを得ることが可能になり、SN比を改善することができる。
【0066】
光透過部材5全体に同一部材を用いることで製造が容易となる利点がある。さらに接続透過部200の断面が光透過部材5における第1の光透過部50と第2の光透過部70の断面よりも小さいことによって、断面が大きいままの場合に比べて光透過性の樹脂8を形成する際の応力を低減することが出来、製造が容易となる利点がある。また、複数の接続透過部200を設けることで光透過部材5全体の機械的強度を上げることができる。
光透過部材5は、実装前に予め形状が決まっている。すなわち、部材を実装してから形状や表面状態を加工すると、一連の実装工程との兼ね合いで、加工方法や加工出来る形状や形状精度に制約が出来やすい。
一方、光透過部材5は、ガラスの平行平板から切り出し、必要に応じて表面の処理を施して形成される。これにより、光源4及び光検出器6上への実装前に予め形状が決まっている。しかるに、光透過部材5は、事前に必要十分な加工によって、所望の形状や形状精度としておくことが可能である。特に、光透過部材5の上面と下面とが平行平板ガラスの研磨面となっており、樹脂だけを用いた場合や光路上に樹脂が介在する場合と比べて表面の光学特性が良好であり、高精度な信号検出が可能となる。
【0067】
光透過部材5は、実装時に塑性変形しない材料から成る、又は実装時に溶融しない材料から成る。すなわち、光透過部材5は、ガラスにより形成されており、実装時に塑性変形が起こらない。この光透過部材5は、特に樹脂封止する際に必要な200℃前後の温度では溶融は起こらない。これにより、光透過部材5は、事前に加工した形状や表面状態を維持することが可能となる。
【0068】
光透過部材5は、実装時に位置調整可能である、又は実装時にハンドリング可能である。すなわち、光透過部材5は、ガラスにより形成されており、上下の面が平行平板の一部になっている。これにより、光透過部材5は、平行平板に形成された上下の面や側面を保持して実装時にハンドリングすることが可能である。しかるに、光透過部材5は、所望の位置に配置して実装することが可能となり、かつセンサヘッド2内での位置調整も実装時に可能となる。従って、光透過部材5の高精度な位置決めと形状や形状精度の組合せとにより理想的な設計に近い信号検出効率や迷光低減効果が期待出来る。
【0069】
本実施形態では、発光部4と光検出部5のスケール9側の面が、光透過部材5で、光透過部材5の第1の光透過部分50のスケール側の面と同じ高さで検出ヘッド2全体にかつ一体的に埋設されていると仮定した場合に、発光部4から光透過部材5の表面を経て光検出部6へ至る光の経路について、光透過部材5から外界への界面での反射角が全反射臨界角よりも大きくなる光の経路が存在する構成となっている。また、式4と式5を満足する構成でもある。従って、光透過部材5が無ければ、全反射光した光が光検出部6に入射し、検出信号レベル飽和やSN比劣化といった問題が生じうる。発光部4は光検出器6に近接した光源であり、この全反射光が発生させるエンコーダ信号のDC成分は他の迷光に比べて特に大きなものとなりうる。光透過部材5による迷光低減効果により、DC成分が抑えられ、エンコーダ信号が安定して検出されるようになることで、検出ヘッドの薄型化・小型化が可能となる。なお、光透過部材5の代わりに光透過性の樹脂材8で、光透過部材5のスケール側の面と同じ高さで検出ヘッド2全体にかつ一体的に埋設されていると仮定した場合にも、光透過部材5の屈折率n2の代わりに光透過性の樹脂材8の屈折率n3を式3に代入することで、式4と式5を満足するような薄型の構成でも信号検出が可能となる。そのため、同様に検出ヘッドの薄型化・小型化の効果が期待出来る。 上記第1の実施の形態の特有の効果として以下の点が挙げられる。
光透過部材5は、光源4のスケールに対向する面に直接積層されている。これにより、信号検出と迷光低減を行いつつ、センサヘッド2を特に厚み方向にコンパクトにまとめることが可能となる。光源4に面実装用のチップタイプのモールドLEDを用いることで、LED上面にワイヤ配線をする必要がなく、第1格子51を有する光透過基板3を実装することが容易となる。
【0070】
さらに、モールドLEDは、封止されているので、ベアLED等に比べると汎用性・信頼性が高い。これにより、取扱いも容易でエンコーダの実装が容易となるメリットがある。
光検出器6に受光素子アレイを用いているが、受光素子アレイでは、検出エリア内の信号効率が高く、所定の検出信号を得るのにコンパクトな構成が可能となる。
【0071】
光源4側の第1の光透過部50に迷光低減機能要素を持つ光透過部材5を配置するので、当該光透過部材5の迷光低減機能要素により光検出器6上の受光領域61へ伝達する迷光のみならず、センサヘッド2から外部へなどの少なくとも特定の方向へ漏れる迷光を低減することが可能となる。
又、光検出器6側の第2の光透過部70に迷光低減機能要素を持つ光透過部材5を配置するので、当該光透過部材5の迷光低減機能要素により光検出器6上の受光領域61へ伝達する迷光のみならず、外部から光検出器6上の受光領域61へなどの少なくとも特定の方向からの迷光を低減することが可能となる。
【0072】
次に、上記第1の実施の形態の第1の変形例について図7を参照して説明する。
この第1の変形例は、上記第1の実施の形態において、光透過性の樹脂材8の形成方法を変えたものである。実装の手順は、以下の通りである。配線基板3上に光源4と、光検出器6と、光源4上の光透過部材5と、配線等とを実装する。この後、配線基板3上の部材を光透過性の樹脂材8により埋め込む。埋め込みにはモールディング等の製法を用いる。
製造方法以外の構成・作用・効果は、上記第1の実施の形態と同様である。
このような加工方法を取ることで、光透過性の樹脂材8による埋め込みの際に、光透過部材5上部に光透過性の樹脂材8がかからないよう配慮する必要が無くなり、実装が容易となる。
【0073】
次に、上記第1の実施の形態の第2の変形例について図8を参照して説明する。
この第2の変形例は、上記第1の実施の形態において、上記第1の変形例と同様に光透過性の樹脂材8の形成方法を変えたものである。
実装の手順は、以下の通りである。配線基板3上に、光源4と、光検出器6と、光源4上の光透過部材5と、配線等とを実装する。その後に、配線基板3上の部材を光透過性の樹脂材8により埋め込む。埋め込みにはモールド等の製法を用いる。
その後、樹脂材8の上面を研磨し、当該樹脂材8と光透過部材5との各上面が揃うようにする。
【0074】
光透過部材5の上面の高さは、埋め込み前に揃えておいて樹脂材8のみ研磨してもよいし、研磨時に光透過部材5と樹脂材8の高さを一緒に研磨によって揃えても良い。又、研磨の際、樹脂材8のみを研磨して、光透過部材5の表面は加工されないようにしても良い。
又、加工により樹脂材8と光透過部材5との各上面の高さを揃えたり、その高さを調整したりすることが出来るようになり、製造時の汎用性が向上する。
製造方法以外の構成・作用・効果は、上記第1の実施の形態と同様である。
【0075】
このような加工方法を取ることで、光透過性の樹脂材8による埋め込みの際に、光透過部材5上部に光透過性の樹脂材8がかからないよう配慮する必要が無くなり、実装が容易となる。
さらに、センサヘッド2から樹脂材8に比べて形状精度の高い光透過部材5が表面に出てくる分、エンコーダとしての光学性能が上記第1の変形例に比べて向上する。又、迷光の観点でも、光透過部材5における第1の光透過部50上部から樹脂材8を伝達して第2の光透過部70へ至る光の経路が無くなるので、迷光低減効果も上記第1の変形例に比べて向上する。
【0076】
次に、上記第1の実施の形態の第3の変形例について図9A、図9Bを参照して説明する。図9Aは光学式エンコーダの概略構成図を示し、図9Bは同エンコーダにおけるスケールの移動方向の断面構成図を示す。
この第3の変形例は、主に、上記第1の実施の形態において、光透過部材5を円筒状に形成し、樹脂材8を光遮光部材8aに置き換え、かつ当該光遮光部材8aは、光検出器6上の受光領域61には掛からないように構成した。
光透過部材5は、円筒形状の形成されている。光透過部材5の側面には、特に光学的な処理を施していない。
光遮光部材8aは、迷光低減効果を有するので、光透過部材5の側面には、当該光透過部材5の側面から出射される全ての方向へ向かう光を低減する構成・作用やそれに伴う効果は必ずしも必要ない。上記変更点以外の構成・作用・効果は、上記第1の実施の形態と同様である。
【0077】
第3の変形例においては、光透過部材5の側面から出射して光検出器6上の受光領域61へ到達する光を遮断するように光遮光部材8aを光透過部材5の側面の大半を埋め尽くすように配置している。
光遮光部材8aが光検出器6上の受光領域61に掛からないようにするには、一旦、受光領域61に他の部材をあてがい、光遮光部材8aをつけた後にこの他部材を外しても良いし、光遮光部材8aを全面に付けた後に、取り除いたり、押し退けたりしてもよい。
【0078】
又、光遮光部材8aが完全には不透明でなくて光がある程度透過する場合、若しくは埋め込んだ光遮光部材8aから上に出た光透過部材5の側面を通して光検出器6へ到達する光の経路が存在しうる場合、光透過部材5の側面から出射して光検出器6上の受光領域61へ到達する光を遮断又は低減するような光透過部材5の側面の形状や表面の微視的な形状である表面状態や側面形状と配置の組合せを併用してもよい。具体的には、光を発散させるような表面状態・表面形状としたり、光検出器6の受光素子アレイから成る受光領域61から光を逸らすような表面形状と配置の組合せとしたりしてもよい。
【0079】
迷光低減機能要素は、第1と第2の光透過部50、70との間に配置される部材であり、当該部材の光学的機能により迷光を低減し、光学式エンコーダ格子を有する第1格子(格子部材)501を光源4の発光部のスケール9側に配置すると共に、第1格子601のスケール9側の面に第2の光透過部70を配置する。すなわち、図9A及び図9Bに示すように光遮光部材8aは、光透過部材5の側面から出射される光を遮断するので、光透過部材5の表面での内部反射光を含めて、光源4から出てセンサヘッド2内部を伝達する迷光は光検出器6で検出されにくくなる。
【0080】
従って、上記2つの理由により、光検出器6が検出する信号について高いS/N比を確保できる。さらに、光源4から出射される光の内、光透過部材5のサイド領域を介して外部へ出射する漏れ光も低減することができる。
【0081】
第3の変形例では、光透過部材5の側面に特別な光学的な処理を施していないが、光透過部材5の形状に伝達する光の低減機能を持たせてもよいし、これらの表面に光散乱効果や特定の方向に光を誘導させるようにしてもよい。
【0082】
なお、光透過部材5は、変形例の1つとして上記図6B乃至図6D以外にも、例えば図10に示すような形状に形成してもよい。この光透過部材5は、第1と第2の光透過部50、70との間を接続する接続透過部200を、第1と第2の光透過部50、70との間の中央部から端部側に設け、かつ角度90°の各屈曲部200−1、200−2を設けた。これにより、第1と第2の光透過部50、70との間の中央部の光の内部伝達を避け、かつ角度90°の各屈曲部200−1、200−2を設けることで、光がより内部伝達しにくくなる。これにより、接続透過部200の厚さを大きめに形成することにより光透過部材5の強度を向上させることが可能である。
【0083】
次に、上記第1の実施の形態の第4の変形例について図11を参照して説明する。
第4の変形例は、上記第1の実施の形態において、光遮光部材8を光透過部材5における第1の光透過部50と第2の光透過部70の間隙にのみ迷光低減機能要素としてのポッティングなどの製造方法で配置している。
光透過部材5の側面で光遮光部材8bに接していない領域や光遮光部材8の周囲は、光透過性の樹脂等で充填してもよい。
光遮光部材8bの配置される部分以外の構成・作用・効果は、上記第1の実施の形態と同様である。
【0084】
このような構成の第4の変形例によれば、光遮光部材8bの配置部分を限定することで光遮光部材8bの使用量を低減することができる。これにより、光遮光部材8bが使われていない光透過部材5の周囲のうち、光遮光部材8bが使われていない部分ついては、そのままにするか、他の部材で封止するなど設計の自由度が高まる。
【0085】
なお、図11に示す第4の変形例においては、光遮光部材8を光透過部材5の間隙を埋めるように樹脂等を成分とする光遮光部材8を配置しているが、光遮光部材8を光透過部材5の中間部に、例えば迷光低減機能要素を有する衝立状の迷光低減部材(迷光低減機能要素)を配置しても構わない。
迷光低減部材は、不透明な部材でもよいし、光源4側の面が光吸収体であったり、反射面であったりしても構わない。迷光低減部材は、透過光を光検出器6の受光素子アレイから成る受光領域61とは異なる方向へ逸らす機能を有していても構わない。
【0086】
迷光低減部材の側面形状は、光検出器6の受光素子アレイから成る受光領域61に光が直接入射させない限り、どのようなものでも構わない。又、迷光低減部材の側面から反射光が発生する場合、側面形状により、迷光低減部材は、例えば四方又は所定の方向に一様に、所謂万遍なく反射光を発散させたり、所定の方向、例えば、光源4などへは行かないようにさせたりしても構わない。
具体的には、上記条件を満たせば、迷光低減部材は、平面状・円筒面状・球面状であったり、Z軸上方から見て波状であったりしても良い。
【0087】
迷光低減部材の作用と効果について説明する。
光透過部材5の中間部に配置した迷光低減部材の光源側の側面に、光源4から出射した光が直接、又は光透過部材5を経て入射する。この入射光は、迷光低減部材の光源側の側面の形状を含めた光学特性と配置により、光検出器6の受光素子アレイから成る受光領域61へ到達しないようになっている。その結果、高いSN比を得ることが可能となる。
【0088】
次に、上記第1の実施の形態の第5の変形例について図12を参照して説明する。
この第5の変形例は、上記第1の実施の形態において光遮光部材110を光透過部材5の側面にのみ配置した。光透過部材5の断面形状は、任意でよく、例えば、四角でも丸でもよい。
光透過部材5の表面のうち、光遮光部材60に接していない領域は、光透過性樹脂等で充填してもよい。光遮光部材110の配置以外の構成・作用・効果は、上記第3の変形例と同様である。
【0089】
このような第5の変形例の構成においては、光遮光部材110の配置部分を特に光透過部材5の外周に限定することで、光遮光部材110の使用量を最低限に留めることができる。これにより、光遮光部材110が使われていない光透過部材5の周囲の部分ついては、そのままにするか、他の部材で封止するなど設計の自由度が高まる。
又、製造も容易である。例えば、光透過部材5をセンサヘッド2に実装する前に、その側面に光遮光部材110を付けておくことが可能である。さらには、長い棒状の光透過部材5の側面に光遮光部材8を付けておき、そこから光透過部材5を切り出していくことも可能である。こうした製法により、量産性が向上させることができる。
【0090】
図13は光遮光部材110が覆う部分についてのバリエーションを示し、同図上部に平面図、同図下部に断面図を示す。この光遮光部材110は、四角形状の光透過部材5に対して覆う部分を当該光透過部材5の第1の光透過部50と第2の光透過部70との向かい合った側面のみとしている。
光源4と光検出器6との間の面を遮光することで、SN比向上の観点から大きな効果が得られる一方、必ずしも光透過部材5の側面全体に光遮光部材8を形成しなくても良いという効果がある。これにより、製造方法によっては工程が容易となる。
【0091】
次に、本発明の第2の実施の形態について図面を参照して説明する。
図14Aは点光源と配線基板3へのワイヤ配線と配線基板3上の電極パッド11を示す。図14Bは上記図14Aにおいて、点光源を線状光源に置き換えたものを示す。図14Cは光学式エンコーダの側面図を示す。
この実施の形態は、上記第1の実施の形態において、光源4をベアチップ光源4aに変え、光透過部材5の第1格子601を除去した。
【0092】
本実施の形態は、いわゆるタルボット干渉を利用した光学式エンコーダであり、図14A及び図14Bに示すように光出射部41のスケール長手方向の幅W1は十分小さい、点光源又は線状光源であり、光透過部材5に第1格子は形成されていない。ベアチップ光源としては、出射光の出射窓を絞った面発光レーザやLEDを用いることができる。
【0093】
ところで、光出射部41のスケール長手方向の幅がスケールピッチに比較して十分小さくない場合、具体的には1/2程度以上の場合、光透過部材5にピンホールや細い1本のスリットを形成すれば、上記第1の実施の形態と同様に機能させることが可能である。
【0094】
光出射部41が所望の形状を有するベアチップ光源4aの光出射面に対応する面には、電極ボンディングワイヤ34の領域を避けて、光透過部材5が光透過性接着剤によりベアチップ光源に貼り付けられている。しかるに、本光学式エンコーダは、光透過性の樹脂材8により電極ボンディングワイヤ34を埋め込み、光透過部材5を取り囲んで充填した構成としている。
光源4は、点状又は線状であり、第1格子の位置や向きを合わせる必要が無く、実装が容易でありながら、良好な信号検出が可能となる。
【0095】
なお、本実施の形態は、上記図6A及び図6Bに示すように光透過部材5を光透過性の樹脂材8で覆うような構造や、研磨等により、光透過部材5と光透過性の樹脂材8の表面が同じ高さになるように配置しても良い。
さらに、本実施の形態は、上記図9A及び図9Bに示すように光透過部材5の周囲に迷光防止手段を設けても良い。
【0096】
次に、上記第2の実施の形態の第1の変形例について図15A及び図15Bを参照して説明する。
図15Aは光検出器6とこの光検出器6上に実装された光透過部材5における第2の光透過部70を示し、図15Bは本光学式エンコーダの側面図を示す。
この第2の変形例は、上記第2の実施の形態において、光検出器6の構造を変更し、光透過部材5における第2の光透過部70に第3格子701を形成追加した。
【0097】
光検出器6は、4つの受光部を有する。光透過部材7の光検出器6側の面には、4つの受光部に対応したピッチp3に形成された第3格子701が形成されている。この第3格子701は、第2の光透過部材70の光検出器6側の面をほぼ4等分する形で4つの格子群から成り、格子群ごとにp3/4だけ位相が異なるよう配置されている。光検出器6の各受光部から検出される信号は、互いに1/4周期だけ位相が異なる4つの擬似正弦波信号が得られる。
光検出器6の構造と第2の光透過部70以外の構成・作用・効果は、上記第2の実施の形態と同様である。
【0098】
このような構成の第1の変形例によれば、光検出器6側のピッチp3を有する第3格子71が第2の光透過部70に形成されている。これにより、受光部の形状は単純な構造であり、製造が容易である。さらに、第3格子71のピッチp3や配置の変更などの設計変更を第2の光透過部70のみの変更で対応可能であり、設計の汎用性が高い構成となっている。
【0099】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1A】本発明に係る光学式エンコーダの第1の実施の形態を示す概略構成図。
【図1B】同光学式エンコーダにおけるスケールの移動方向の断面構成図。
【図2】同光学式エンコーダにおける光検出器上に形成されている受光領域の受光素子アレイを示す拡大図。
【図3】同光学式エンコーダにおける光検出器の光学的な配置について説明するための図。
【図4A】同光学式エンコーダと対比する従来のエンコーダにおける変位信号に占めるDC成分の上昇を示す図。
【図4B】同光学式エンコーダにおける互いに1/4周期だけ位相が異なる4つの電極パッドから出力される電気信号の1つの波形を示す図。
【図5】同光学式エンコーダにおける光透過部材の表面と樹脂材の表面との高さが一致していることを示す図。
【図6A】同光学式エンコーダにおける光透過部材をスケール側から見た図。
【図6B】同光学式エンコーダにおける光透過部材の変形例を示す図。
【図6C】同光学式エンコーダにおける光透過部材の変形例を示す図。
【図6D】同光学式エンコーダにおける光透過部材の変形例を示す図。
【図7】同光学式エンコーダの第1の変形例を示す構成図。
【図8】同光学式エンコーダの第2の変形例を示す構成図。
【図9A】同光学式エンコーダの第3の変形例を示す概略構成図。
【図9B】同光学式エンコーダの第3の変形例におけるスケールの移動方向の断面構成図。
【図10】同光学式エンコーダにおける光透過部材の変形例の1つを示す構成図。
【図11】同光学式エンコーダの第4の変形例を示す構成図。
【図12】同光学式エンコーダの第5の変形例を示す構成図。
【図13】同光学式エンコーダにおける光遮光部材が覆う部分についてのバリエーションを示す図。
【図14A】本発明に係る光学式エンコーダの第2の実施の形態における点光源と配線基板へのワイヤ配線と配線基板上の電極パッドを示す構成図。
【図14B】同光学式エンコーダにおける点光源を線状光源に置き換えた図。
【図14C】同光学式エンコーダを示す側面図。
【図15A】同光学式エンコーダの第1の変形例における光検出器とこの光検出器上に実装された光透過部材を示す構成図。
【図15B】同光学式エンコーダの第1の変形例を示す側面図。
【図16】従来における反射型の光学式エンコーダを示す構成図。
【図17】従来の光学式エンコーダに発生するワイヤ配線の断線や樹脂クラック、ガラス割れ等を示す図。
【符号の説明】
【0101】
1:光学式エンコーダ、2:センサヘッド、9:スケール、3:配線基板、4:光源、6:光検出器、5:光透過部材、8:樹脂材、61:光検出器の受光領域、50:第1の光透過部、70:第2の光透過部、200:接続透過部、601:第1格子、91:第2格子、PD1,PD2,PD3,PD4:フォトダイオード、A1,B1,A2,B2:電極パッド、32:光検出器の電極、3:電極ボンディングワイヤ、200a:第1の接続透過部、200b:第2の接続透過部、200c,200d:屈曲部、200e:上部接続透過部、200f:下部接続透過部、8a:光遮光部材、200−1,200−2:屈曲部、110:光遮光部材、4a:ベアチップ光源、41:光出射部、34:電極ボンディングワイヤ、701:第3格子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被変位検出体としての一方の部材に取り付けられたスケールと、前記一方の部材に対して相対移動する他方の部材に取り付けられ、かつ前記スケールに対向して配置された検出ヘッドとを有し、エンコーダ信号を発生する光学式エンコーダにおいて、
前記スケールは、前記相対移動する方向に所定の光学パタンが設けられ、
前記検出ヘッドは、前記スケールに所定の光を照射する発光部と、
前記発光部から前記スケールに照射され、前記光学パタンを経た前記光を受光する受光面を有し、当該受光面上に形成される光分布を検出する光検出部と、
前記発光部と前記スケールとの間の光路上に配置される第1の光透過部分と、前記スケールと前記光検出部との間の光路上に配置される第2の光透過部分と、前記第1の光透過部分と前記第2の光透過部分とを繋ぐ接続透過部分とを有する光透過部材と、
前記第1の光透過部分の表面と前記第2の光透過部分の表面との間に介在し、前記エンコーダ信号の検出に寄与しない迷光を低減する迷光低減機能要素と、
を備えることを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項2】
前記迷光低減機能要素は、前記第1の光透過部分の表面と前記第2の光透過部分の表面とのうちの少なくとも1つの前記表面であり、当該表面の光学的機能により前記迷光を低減することを特徴とする請求項1項に記載の光学式エンコーダ
【請求項3】
前記迷光低減機能要素は、前記第1と第2の光透過部分との間に配置される部材であり、当該部材の光学的機能により前記迷光を低減し、
光学式エンコーダ格子を有する格子部材を前記発光部の前記スケール側に配置すると共に、前記格子部材の前記スケール側の面に前記第2の光透過部分を配置する、
ことを特徴とする請求項1項に記載の光学式エンコーダ。
【請求項4】
前記迷光低減機能要素は、前記第1と第2の光透過部分との間に配置された部材であり、当該部材の光学的機能と配置との組合せにより前記迷光を低減することを特徴とする請求項1項に記載の光学式エンコーダ。
【請求項5】
前記迷光低減機能要素は、前記被変位検出体の変位検出に全く寄与しない部分のみに配置又は形成されることを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか1項に記載の光学式エンコーダ。
【請求項6】
前記第1と第2の光透過部分の前記各表面は、前記エンコーダ信号の検出に関与する光が経由する部分を含む1つ以上の面と、当該面以外の前記エンコーダ信号の検出に関与しない1つ以上の面とから成り、
前記第1と第2の光透過部分における少なくとも一方の前記エンコーダ信号の検出に関与しない前記表面に前記迷光低減機能要素を配置又は形成する、
ことを特徴とする請求項2項に記載の光学式エンコーダ。
【請求項7】
前記検出ヘッド内において、前記第1の光透過部分と前記第2の光透過部分とを除いて少なくとも前記発光部と前記光検出部と配線部材とは、前記迷光低減機能要素により覆われて当該迷光低減機能要素からはみ出さないことを特徴とする請求項3項に記載の光学式エンコーダ
【請求項8】
前記接続部分は、光伝達抑制機能を有する請求項1に記載の光学式エンコーダ。
【請求項9】
前記光透過部材は、実装前に予め形状が決まっていることを特徴とする請求項1に記載の光学式エンコーダ。
【請求項10】
前記光透過部材は、実装時に塑性変形しない材料から成ることを特徴とする請求項1に記載の光学式エンコーダ。
【請求項11】
前記光透過部材は、実装時に溶融しない材料から成ることを特徴とする請求項1に記載の光学式エンコーダ。
【請求項12】
前記光透過部材は、実装時に位置調整可能であることを特徴とする請求項1に記載の光学式エンコーダ。
【請求項13】
前記光透過部材は、実装時にハンドリング可能であることを特徴とする請求項1に記載の光学式エンコーダ。
【請求項14】
前記発光部と前記光検出部の前記スケール側の面が、前記光透過部材で、前記光透過部材の第1の光透過部分のスケール側の面と同じ高さで前記検出ヘッド全体にかつ一体的に埋設されていると仮定した場合に、前記発光部から前記光透過部材の表面を経て前記光検出部へ至る光の経路について、前記光の経路を通る光の少なくとも一部が前記光透過部材の表面に入射する角度が前記光透過部材から外界への界面での全反射臨界角よりも大きくなる光の経路が存在することを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の光学式エンコーダ。
【請求項15】
前記発光部と前記光検出部の前記スケール側の面はそれぞれ前記光透過部材により全体的かつ一体的に覆われるとともに、前記光透過部材の上面は略平坦であり、
前記発光部から前記第1の光透過部分の表面までの距離をt1、
前記光検出部から前記第2の光透過部分の表面までの距離をt2、
前記発光部上の位置と前記光検出部上の位置との間で最も遠くなる位置間の距離のうち前記スケールの表面に平行な方向の成分をL、
外界の屈折率をn1、
前記光透過部材の屈折率をn2とそれぞれしたとき、
ArcTan[L/(t1+t2)]≧ArcSin(n1/n2)
を満足することを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の光学式エンコーダ。
【請求項16】
接続透過部分の断面が前記第1の光透過部分、および、前記第2の光透過部分の断面よりも小さいことを特徴とする請求項8に記載の光学式エンコーダ。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−223630(P2010−223630A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−68885(P2009−68885)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】