説明

光学機器及び当該光学機器における異物除去方法

【課題】 特別な動力源を必要とせずに、シャッタに付着した異物を取り除くことが可能な光学機器を提供する。
【解決手段】 被写体の光学像を電気信号に変換する光電変換素子への光の入射を制御するフォーカルプレンシャッタが、光電変換素子への光の入射を遮っている状態を保ったまま、フォーカルプレンシャッタを複数回繰り返し振動駆動して、そのシャッタに付着している異物を振るい落とす。すなわち、フォーカルプレンシャッタのオーバーチャージを利用することで、付着する異物を振動除去することを実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラ等の光学機器において、フォーカルプレンシャッタに付着した塵埃を除去する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、レンズ交換式デジタル一眼レフカメラの撮影レンズの焦点面近傍に塵埃が存在すると、その塵埃の影が固体撮像素子に写り込んでしまうという問題があった。このような塵埃は、レンズ交換時に外部から侵入したり、カメラ内部でのシャッタやミラーの動作に伴い、その構造部材である樹脂等の微細な磨耗紛に起因すると考えられてきた。このような塵埃が、固体撮像素子の保護用のカバーガラスとカバーガラスの前面に配設されている赤外線カットフィルタや光学ローパスフィルタ等の光学フィルタの間に入り込んでしまった場合には、その塵埃を除去するためにカメラを分解しなければならなかった。このため、固体撮像素子のカバーガラスと光学フィルタとの間に塵埃が入り込まないように密閉構造にするような対処法がとられてきた。
【0003】
しかしながら、光学フィルタの固体撮像素子と反対側の表面に塵埃が付着し、それが焦点面の近傍である場合には、その塵埃が影となって固体撮像素子に写り込んでしまうという問題が依然として残っていた。この光学フィルタの固体撮像素子と反対側(レンズユニット側)の面に塵埃が付着するメカニズムは、以下のように考えられる。
【0004】
通常、光学フィルタの前面には、フォーカルプレンシャッタが展開した状態(閉じた状態)で配置されている。このため、上述の原因で発生した塵埃が直接光学フィルタに付着しない構造になっている。即ち、上記原因で生じた塵埃は、展開状態にあるシャッタ羽根上に一旦付着した後、シャッタの開閉動作によって飛び散り、開放状態になったシャッタを通して光学フィルタに付着すると考えられる。
【0005】
この問題に鑑みて、塵埃が光学フィルタに付着しにくいシャッタ構造である、二重遮光方式シャッタ(特許文献1)が提案されている。これは、シャッタ羽根の走行速度を上げるためにシャッタ羽根を軽量化したもので、シャッタ羽根を薄型化したことによる遮光性の問題を回避するため、撮影待機状態時に2つの羽根群を展開状態として遮光性を高めるように構成している。このような構成によれば、レリーズ動作によって、塵埃が付着したシャッタ羽根群を先に動作させて塵埃が飛散したとしても、光学フィルタ側にあるもう一つのシャッタ羽根群は展開状態にある。このため飛散した塵埃が光学フィルタに向かっても、その展開状態にあるシャッタ羽根群に遮られて光学フィルタに到達できないため、塵埃がフィルタに付着するのを防止できる。また、最初のシャッタ羽根群の動作の後に、塵埃の付着が少ない光学フィルタ側のシャッタ羽群を動作させるため、上記従来の構成のフォーカルプレンシャッタに比べて、光学フィルタに付着する塵埃を大幅に抑制することができる。
【0006】
また、光学機器の内部で行われる動作として、シャッタ速度を上昇させるためのシャッタオーバーチャージ(特許文献2)が知られている。
【特許文献1】特願平8−211445号公報
【特許文献2】特許第3576703号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された二重遮光方式のシャッタを用いた場合、最初に動作するシャッタ羽根群による塵埃の飛散が完全に収まる前にもう一方のシャッタ羽根群の動作が開始されると、光学フィルタへの塵埃の付着を完全に防止することができない。また撮影待機状態では、遮光のために常に2つの羽根群を展開状態にしなければならないという特殊な動作をとる必要があるため、レリーズボタンが押下されてから撮影を開始するまでのタイムラグが長くなるという問題点があった。
【0008】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解決することにある。
【0009】
本願発明の特徴は、特別な動力源を必要とせずに、シャッタに付着した異物を取り除くことができる点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明の一態様に係る光学機器は以下のような構成を備える。即ち、
被写体の光学像を電気信号に変換する光電変換素子と、
前記光電変換素子への光の入射を制御するフォーカルプレンシャッタと、
前記フォーカルプレンシャッタを駆動する駆動手段と、
前記フォーカルプレンシャッタが前記光電変換素子への光の入射を遮っている状態を保ったまま、前記駆動手段により前記フォーカルプレンシャッタを複数回繰り返し振動駆動する振動制御手段と、
を有することを特徴とする。
【0011】
上記目的を達成するために本発明の一態様に係る光学機器における異物除去方法は以下のような工程を備える。即ち、
被写体の光学像を電気信号に変換する光電変換素子と、前記光電変換素子への光の入射を制御するフォーカルプレンシャッタと、前記フォーカルプレンシャッタを駆動する駆動手段とを具備する光学機器における異物除去方法であって、
前記フォーカルプレンシャッタが前記光電変換素子への光の入射を遮っている状態を保ったまま前記フォーカルプレンシャッタを複数回繰り返し振動駆動する振動工程
を有することを特徴とする。
【0012】
尚、この課題を解決するための手段は、本願発明の特徴の全てを列挙しているものではなく、特許請求の範囲に記載された他の請求項及びそれら特徴群の組み合わせも発明になり得る。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、フォーカルプレンシャッタに付着した異物が光学素子に付着するのを防止することができる。また、フォーカルプレンシャッタに付着した異物を除去するための動力源を別途設ける必要がないため、安価に、また大型化せずに構成できる。また、一度フォーカルプレンシャッタから飛散させた塵埃を、光学フィルタへ付着させてしまうことを低減する事が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施の形態を詳しく説明する。尚、以下の実施の形態は特許請求の範囲に係る本発明を限定するものでなく、また本実施の形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。
【0015】
本実施の形態では、レンズ交換式デジタル一眼レフカメラ(以下、単にカメラと称する)について説明する。尚、以下に説明する実施の形態は、本発明の実現手段としての一例であり、本発明が適用される装置の構成や各種条件によって適宜修正又は変更されるべきものであり、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0016】
また本発明は、後述する実施形態である各装置の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記憶した記憶媒体(又は記録媒体)をシステム或は装置に供給し、そのシステム或は装置のコンピュータ(又はCPU或はMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行することによっても達成されることは言うまでもない。
【0017】
図1は、本実施の形態に係るカメラ500の構造を説明する概略断面図で、使用者が被写体の構図などを確認するために交換レンズ501から入射した被写体像をファインダ502で確認するための撮像待機状態を示している。
【0018】
図2は、本実施の形態に係るカメラ500の構造を説明する概略断面図で、撮像中の構造を示している。尚、図1及び図2において、共通する部分は同じ記号で示している。
【0019】
交換レンズユニット501は、被写体からの反射光を捉えて固体撮像部23に結像させるための複数のレンズ(501a,501bなど)を有している。マウント部503は、この交換レンズユニット501をカメラ本体に装着する。主ミラー(クイックリターンミラー)505は、ミラーボックス504と呼ばれる空間内で交換レンズユニット501と撮像部50の光軸上に配置されている。図1に示す撮影待機時では、被写体像を使用者が確認できるように、入射した光束をファインダ502内部に導くために図1上方に反射させている。フォーカルプレンシャッタ10は、レンズユニット501から入射した光束を所望する時間、撮像部50に照射させるシャッタ羽根群11a〜11dから構成される先幕11と同様の構成を有する後幕12を有している。ファインダ502は、フォーカシングスクリーン506、プリズム507及び接眼レンズ508を有している。フォーカシングスクリーン506は、主ミラー505により上側に反射された光束を結像する。プリズム507は、このフォーカシングスクリーン506に結像した像を正立実像にするために内部で像を反射させる。接眼レンズ508は、プリズム507から射出された像を適正な倍率で使用者が確認できるようにしている。
【0020】
次に撮像部50の構成を説明する。光学素子21は、赤外フィルタやローパスフィルタ等を含む。保持部材22は、この光学素子21を固体撮像部23に対して保持している。カバー部材23aは、固体撮像素子23bを保護するためのカバーである。シール部材24は、固体撮像部23のカバー部材23aと光学素子21との間を密封している。接続端子23cは、固体撮像部23の電気的接続端子で、この端子23cとカメラ500の動作を制御する制御回路を構成する電気素子が搭載されている基板25とが接続されている。保持板26は、固体撮像部23と一体化して固体撮像部23をカメラ500のシャーシ(不図示)にビス(不図示)によって固定されている。
【0021】
撮像前は図1に示すように、光軸上に設置された主ミラー505により光束を上部に垂直に反射させ、被写体像をフォーカシングスクリーン506で結像し、プリズム507により像を正立実像に合わせた後、接眼レンズ508を介して確認ができる。
【0022】
一方、撮像中は図2に示すように、交換レンズユニット501から入射した光束を撮像部50に入射させるために主ミラー505を跳ね上げて光軸上から回避させる。これにより、交換レンズユニット501から入射した光束はフォーカルプレンシャッタ10の先幕11と後幕12で形成する開口部を通過し、撮像部50に入射する。
【0023】
図3は、本実施の形態に係るカメラ500におけるフォーカルプレンシャッタ10と撮像部50の構成図で、前述の図面と共通する部分は同じ記号で示し、それらの説明を省略する。
【0024】
図3において、フォーカルプレンシャッタ10は、シャッタ羽根群11a〜11dを具備する先幕11、同じく複数のシャッタ羽根を具備する後幕12、先幕11及び後幕12の駆動スペースを分割している中間板13を有している。更に、後幕12の押え板であるとともに、撮像のためにその略中央部に開口14aが設けてある押え板14、先幕11の押え板であるとともに、撮像のためにその略中央部に開口15aが設けられているカバー板15を有している。尚、先幕11を構成するシャッタ羽根群11a〜11d及び後幕12のシャッタ羽根は、それぞれ複数の駆動レバー(不図示)によって一体的に開閉動作を行うようになっている。また開閉動作時の摩擦負荷や摩擦帯電を防止するために、導電性の材料で形成されている。また、その表面に摺動性を向上させたり帯電を防止したりする表面処理がされている。
【0025】
上述した構成において、図1に示す撮影待機状態からレリーズ釦が押されると、まず第1の羽根群11a〜11dが重畳し、次いで先幕11の走行開始から所定時間が経過した後に第2の羽根群である後幕12が展開する。これにより、所定時間の間、開口部14a及び開口部15aが開口して露光動作が行われる。撮影完了後は、次の撮影に備えて、チャージ源により先幕11は展開状態に、後幕12は重畳状態に戻る。
【0026】
撮像部50において、固体撮像素子23bは有限間隔で画素を配列しているため、その間隔以上に空間周波数の高い光は単一の画素にしか入らない。これにより本来とは異なる色として認識される偽色や色モアレが生じる。また固体撮像部23bの表面で入射した光が反射することにより赤外光のゴーストやかぶりといった問題が生じる。これらを防止するため、固体撮像部23の前面には、ローパスフィルタや赤外カットフィルタなどが積層された光学素子21が配置されている。また固体撮像部23と光学素子21はシール部材24で密閉されている。
【0027】
ところで、このデジタルカメラ500はフィルムカメラとは異なり撮像部10で撮像する。このため、撮像部10の最表面にある光学素子21に塵埃が付着すると、その付着した塵埃の箇所は固体撮像素子23bに光が届かなくなり、撮影した画像に影として写りこみ続けるということが問題となっている。
【0028】
この塵埃が発生する原因としては、以下の要因が考えられる。
1.このカメラ500のようにフォーカルプレンシャッタ10を有するカメラでは、フォーカルプレンシャッタ10の先幕11及び後幕12がシャッタ動作時に擦れることによってシャッタ羽根群の塗装が剥がれる。こうして剥がれた塗装が塵埃としてカメラ内部に残留してしまうことがある。
2.カメラ500等のレンズ交換式のカメラでは、交換レンズユニット501が非装着時にカメラのマウント503を保護するマウントキャップ(不図示)が装着される。この際マウントキャップとマウント503が擦れることによりマウントキャップが削れ、マウントキャップの削れ片が塵埃として発生してしまうことがある。
3.交換レンズユニット501の交換時、外部からカメラ内部へ塵埃が侵入することがある。
【0029】
図4は、こうして発生した塵埃が光学素子21に付着する状況を説明する図である。
【0030】
光学素子21は、撮影する瞬間以外では、展開状態の先幕11に覆われている。よって、上述の原因(2)或は(3)で発生した塵埃(図4中41で示す)は、展開状態の先幕11や主ミラー505上等のミラーボックス504内に存在する。ここで、主ミラー505上や展開状態の先幕11上以外に付着した塵埃41が直接光学素子21に付着するとは考えにくく、光学素子21に付着する塵埃41は、一旦、先幕11に付着する成分が多いと考えられる。
【0031】
その状態からカメラ500のレリーズ釦が押されて撮影動作が開始されると、先幕11が徐々に重畳されて開放される。一方、重畳状態にあった後幕12は、一定の光量を撮像部50に通過させるように先幕11と共に光軸に垂直な方向にスリットを形成しながら徐々に展開状態となる。このとき、先幕11に付着していた塵埃41にはその場に残ろうとする慣性力(C)、シャッタ羽根群11a〜11dが重畳されることによるこそぎ落としによる駆動力(B)、及びシャッタ羽根の撓みにより発生した振動による駆動力(A)が働く。これらにより先幕11から分離された塵埃41は、その大部分がレンズユニット501側への初速を持つ。一方、慣性力により空間に浮遊した塵埃41の一部が先幕11がなくなった負圧により光学素子21側への初速を持つ。この内、先幕11から飛散した塵埃41の大部分である、レンズユニット501方向への初速を持った塵埃41の中で速度の遅いものは、先幕11とスリットを形成しながら走行してきた後幕12により、レンズユニット501方向への移動が遮断される。そして、後幕12の撓みにより光学素子21側へ弾き飛ばされて光学素子21に付着する。
【0032】
以上のようなプロセスで塵埃41が光学素子21に付着するものと考えられる。このことから、撮影待機状態において、展開状態にある先幕11に塵埃41を付着させないことが、光学素子21に塵埃41を付着させない重要な要件であることがわかる。
【0033】
本実施の形態はこの点に注目してなされたもので、先幕11に付着した塵埃41を、撮影動作の開始前に先幕11(シャッタ羽根)から強制的に落下させることにより、未然に塵埃41が光学素子21へ付着するのを防止したものである。この動作を実現するため、実施の形態1では、オーバーチャージが可能なシャッタを用いることを特徴としている。シャッタのオーバーチャージ動作は本来、ストロボ同調速度を高速化するとともに、最高シャッタ速度の高速化を目指して幕速の向上を図ることを目的とするもので、シャッタ羽根を駆動する駆動バネのチャージ力を増すものである。このように、このオーバーチャージ動作は、駆動バネを通常のチャージ量よりも余分にチャージするための動作である。よって通常のチャージに加えて余分にチャージする動作であるので、シャッタ羽根自体は閉状態を保っており、写真撮影の露光には直接関与しない動作であり、独立の動作をとることができる。
【0034】
本実施の形態では、この点に着目し、この動力を、先幕11に付着した塵埃41を落とすため駆動源とし、この動力をシャッタ羽根に衝撃力として与え、振動させることによって、先幕(シャッタ羽根)に付着した塵埃41を落下させるようにしている。
【0035】
以下、本実施の形態に係るオーバーチャージ可能なシャッタの構造を図5〜図11を参照して説明する。
【0036】
図5は、本実施の形態に係るシャッタ装置全体の構成を示す斜視図である。図6は、チャージ完了状態を示す機構要部平面図、図7は第1のシャッタ羽根である先幕11及び第2のシャッタ羽根である後幕12が露光終了している状態(チャージ開始前の状態)を示す機構要部平面図である。
【0037】
図8は、チャージが完了したオーバーチャージ状態を示す機構要部平面図である。図9は、先駆動レバー113がオーバーチャージ位置からチャージ完了位置に移行し、先サブレバー118がオーバーチャージ位置にある状態を示す機構要部平面図である。図10は先駆動レバー113、先サブレバー118がチャージ完了位置にある状態を示す機構要部平面図である。そして図11は、チャージ完了状態のシャッタ装置の駆動部を中心にした上面図である。ここで図10及び図11に示すように各部材は、シャッタ地板138上に設置されている。
【0038】
各図において101は、カメラ本体の動力伝達部材160によって駆動されるチャージレバーである。このチャージレバー101は、軸102を中心に回動可能に保持されているとともに、バネ(不図示)によって反時計回り方向の付勢力が与えられており、ストッパ(不図示)によって図6に示す位置と図8に示す位置との間で回動するように設置されている。又後述する先サブチャージレバー108と一体的に回動するための連結穴101aを有している。104はチャージレバー101と後述のチャージカムレバー105に対して、回動可能に軸支された連結レバーで、チャージレバー101の回動に連動して後述のチャージカムレバー105を回動させる。チャージカムレバー105は、軸106に回動可能に保持されている。このレバー105の一方の端部のカム部105aは、後述する先駆動レバー113をチャージする際に、先駆動レバー113のローラ117と当接して後述の先羽根(先幕)駆動バネ115をチャージする。またチャージカムレバー105の他方の端部のカム部105bは、後述する後駆動レバー126をチャージする際に、後駆動レバー126のローラ130と当接して後述の後羽根(後幕)駆動バネ128をチャージする。また、このチャージカムレバー105には、後述する後サブチャージレバー109と当接する連結ローラ107が回動可能に軸支されている。
【0039】
先サブチャージレバー108は、チャージレバー101と同じ軸102を中心に回動する。先サブチャージレバー108は、後述の先羽根補助バネ119をチャージするための後述の先サブレバー118をチャージするカム部108aと、チャージレバー101と一体的に回動するための連結部108bが設けられており、チャージレバー101の連結穴101aと結合している。後サブチャージレバー109は、軸110に回動可能に保持されるとともにバネ111によって時計回り方向の付勢力が与えられ、常に連結ローラ107に当接する。また後サブチャージレバー109には、後述する後サブレバー131に当接可能な後サブチャージレバーローラ112が軸支されている。この後サブチャージレバーローラ112が後サブレバー131に当接して、後サブレバー131を移動させることで後述の後羽根補助バネ132がチャージされる。
【0040】
先駆動レバー113は、軸114を中心に回動可能に保持されている。このレバー113には、チャージカムレバー105のカム部105aと当接可能な先駆動レバーローラ117が設けられ、また後述する先緊定レバー123に係止される被係止部113aが形成されている。このレバー113には、第1のバネである先羽根駆動バネ115によって時計回り方向の付勢力が与えられている。図6では、先駆動レバー113が後述の先緊定レバー123に係止された状態で、先幕11がシャッタのアパチャー枠を覆った状態を表している。
【0041】
先サブレバー118は、先駆動レバー113と同軸上に回動可能に支持され、第2のバネである先羽根補助バネ119によって時計回り方向の付勢力が与えられている。図6では、先駆動レバー113の当接部113cと先サブレバー118の当接部118aとが当接して、先駆動レバー113にも先羽根補助バネ119のバネ力が加わっている。ストッパ部118bは、先駆動レバー113の回動とともに一体的に回動する先サブレバー118に設けられている。このストッパ部118bは、先ストッパ軸120に設けられたゴム又は軟質プラスチック等を成形した弾性部材で作られた先ストッパ121に当接して先サブレバー118の時計回り方向の回動を止める。先サブレバーローラ122は、先サブレバー118に軸支されており、先サブチャージレバー108のカム部108aに当接して先サブレバー118に力を伝える。先緊定レバー123は、軸124を中心に回動可能に支持された緊定部材で、バネ125によって反時計回り方向の付勢力が与えられている。この先緊定レバー123は、図6の状態では不図示のストッパによって、これ以上反時計回り方向に回動できないようになっている。123aは、先駆動レバー113の被係止部113aと当接して先駆動レバー113を時計回り方向に回動しないように係止する係止部である。後駆動レバー126は、軸127を中心に回動可能に支持されている。このレバー126には、チャージカムレバー105のカム部105bと当接する後駆動レバーローラ130が設けられている。またこのレバー126には、後述する後緊定レバー135に係止される被係止部126a(図7)が形成されており、更に後羽根駆動バネ128によって時計回り方向の付勢力が与えられている。図6は、後駆動レバー126は後述の後緊定レバー135に係止された状態を示し、ここでは後幕12がシャッタのアパチャー枠を開放した状態を表している。
【0042】
後サブレバー131は、後駆動レバー126と同軸上に回動可能に支持され、後羽根補助バネ132によって時計回り方向の付勢力が与えられている。図6では、後駆動レバー126に植設された後羽根駆動ピン129と後サブレバー131の当接部131aとが当接しているので、後駆動レバー126にも後羽根補助バネ132のバネ力が加わえられている。ストッパ部131bは、後駆動レバー126の回動とともに一体的に回動する後サブレバー131に設けられており、後ストッパ軸133に設けられたゴム又は軟質プラスチック等を成形した弾性部材で作られた後ストッパ134に当接する。チャージカム部131cは後サブレバー131に設けられており、後サブチャージレバー109に軸支されている後サブチャージレバーローラ112に当接する。そして後サブチャージレバー109の反時計回り方向の回動運動によって後サブレバー131がチャージされる。後緊定レバー135は、軸136を中心に回動可能に支持されており、バネ137によって反時計回り方向の付勢力が与えられている。図6の状態では不図示のストッパによって、これ以上反時計回り方向に回動できないようになっている。係止部135aは、後駆動レバー126の被係止部126aと当接し、後駆動レバー126を時計回り方向に回動しないように係止している。
【0043】
また図5において、141は回転軸に先緊定レバー123と当接する先羽根用ハンマ146が取り付けられている着磁された先羽根用ロータである。142はベース部材144に配設された先羽根用ステータ、143はステータ142の一部に巻回される先羽根用コイルである。147は、先羽根用ロータ141及び先羽根用ハンマ146を所定方向に付勢する戻しバネである。以上説明した電磁駆動部は、先幕11の走行を開始させるものである。また不図示の後羽根用ロータ、後羽根用ステータ148、後羽根用コイル149、戻しバネ151及び後緊定レバー135と当接する後羽根用ハンマ150も同様に作用して後幕12の走行を開始させる。プリント基板152は、先羽根用コイル143及び後羽根用コイル149と接続し、カメラ本体からそれぞれのコイルを通電駆動する回路を有している。
【0044】
いまレリーズ動作によって、カメラ本体から先羽根用コイル143に通電されると、先羽根用ステータ142に磁界が発生し、先羽根用ロータ141は戻しバネ147の付勢力に抗して回動する。この先羽根用ロータ141の回動によって先羽根用ハンマ146が先緊定レバー123と当接して移動させる。これにより、先駆動レバー113は緊定を外され、先幕11は先羽根駆動バネ115及び先羽根補助バネ119のバネ力によって走行を開始する。またカメラ本体から先羽根用コイル143への通電が断たれると、先羽根用ロータ141及び先羽根用ハンマ146は戻しバネ147の付勢力によって所定位置に戻される。
【0045】
この先幕11の走行開始から所定時間が経過した後、後羽根用コイル149に通電される。これにより後羽根用ロータ(不図示)が回動して、後羽根用ハンマ150が後緊定レバー135と当接して移動させる。これにより後駆動レバー126は緊定を外され、後幕12は後羽根駆動バネ128及び後羽根補助バネ132のバネ力によって走行を開始する。このように複数の電磁駆動部によって、シャッタ装置のレリーズ動作は、先幕11と後幕12とで独立に行われる。
【0046】
上述した構成において、図6に示す撮影可能な待機状態において、上述のそれぞれの電磁駆動部のコイル143,149にそれぞれ適正なタイミングでカメラ本体から通電して各ハンマ146,150を回動させる。これにより先緊定レバー123と後緊定レバー135を時計回り方向に回動させて、先駆動レバー113及び後駆動レバー126の係止を順次解除する。こうして、先ず先駆動レバー113と先サブレバー118とが一体的に先羽根駆動バネ115及び先羽根補助バネ119の付勢力によって、先羽根駆動ピン116を介して先幕11を閉鎖位置から開放位置に移行させる。その途中で、先サブレバー118のストッパ部118bは先ストッパ121に当接する。これにより消音するとともに、その衝撃が和らげられて最終的に先ストッパ軸120に当接して正確に先羽根補助バネ119の作動範囲を決定する。これにより先駆動レバー113に対して作用する先羽根補助バネ119の付勢力を無くし、先駆動レバー113は先羽根駆動バネ115のみで開放位置を決定するストッパ(不図示)の位置まで駆動される。尚、消音と衝撃を和らげる先ストッパ121は、先サブレバー118を直接先ストッパ軸120に当接させるようにして、省略しても機能上は問題ない。
【0047】
続いて後駆動レバー126が後サブレバー131と一体的に後羽根駆動バネ128及び後羽根補助バネ132の付勢力によって後羽根駆動ピン129を介して後幕12を開放位置から閉鎖位置に移行させる。その途中で後サブレバー131のストッパ部131bは後ストッパ134に当接し、消音されるとともに衝撃が和らげられて最終的に後ストッパ軸133に当接する。これにより正確に後羽根補助バネ132の作動範囲を決定し、後駆動レバー126に対して作用する後羽根補助バネ132の付勢力を無くし、後駆動レバー126は後羽根駆動バネ128のみで閉鎖位置を決定するストッパ(不図示)の位置まで駆動される。こうして露光動作(撮影動作)が終了して図7の状態になる。尚、消音と衝撃を和らげる後ストッパ134は、後サブレバー131を直接後ストッパ軸133に当接させるようにして、省略しても機能上は全く問題ない。
【0048】
図7(撮影終了直後)の状態から撮影可能状態にするために、チャージレバー101を時計回り方向に回動させる。これに伴って連結レバー104を介してチャージカムレバー105も時計回り方向に回動する。このチャージカムレバー105の時計回り方向の回動によって、カム部105aは先駆動レバーローラ117に当接し、先駆動レバー113を反時計回り方向に回動させる。こうして第1のバネ115はチャージを開始し、先幕11は閉鎖位置への移動を開始する。
【0049】
また、チャージレバー101と一体的に結合された先サブチャージレバー108も時計回り方向に回動して、カム部108aが先サブレバーローラ122に当接し、先サブレバー118を反時計回り方向に回動させる。この先サブレバー118の反時計回り方向の回動によって、先羽根補助バネ119はチャージを開始する。また、これとほぼ同時に、連結ローラ107に当接している後サブチャージレバー109を反時計回り方向に回動させる。これにより後サブチャージレバー109に設けられた後サブチャージレバーローラ112はチャージカム131cに当接して、後サブチャージレバー131は反時計回り方向の回動を始める。これにより後羽根補助バネ132はチャージを開始する。即ち、先羽根駆動バネ115、先羽根補助バネ119、及び後羽根補助バネ132はほぼ同時にチャージを開始する。
【0050】
更に、チャージレバー101を時計回り方向に回動させると、チャージカムレバー105のカム部105bが、後駆動レバー126に設けられた後駆動レバーローラ130に当接して後駆動レバー126を反時計回り方向に回動させる。この後駆動レバー126の回動によって、後羽根駆動バネ128はチャージを開始する。
【0051】
尚、本実施の形態では、チャージ動作中の不正露光を防ぐための先幕11と、後幕12が常に重り合う部分を持ちながら先幕11、後幕12を撮影準備位置に復帰させる構成にしている。従って、先駆動レバー113の回動開始に対して、後駆動レバー126は遅れて回動を開始する構成になっている。その結果、後羽根駆動バネ128のチャージは、先羽根駆動バネ115、先羽根補助バネ119及び後羽根補助バネ132のチャージ開始よりも遅れて開始される。
【0052】
次に更にチャージレバー101を回動させると、先駆動レバー113の被係止部113aが先緊定レバー123の係止部123aに係止される。また更にチャージレバー101を回動させると、後駆動レバー126の被係止部126aが後緊定レバー135の係止部135aに係止される。
【0053】
図8はチャージレバー101がストッパー(不図示)に当接し、先駆動レバーローラ117、後駆動レバーローラ130がそれぞれチャージカムレバー105のカムトップ105a',105b'に達するオーバーチャージの状態を示している。この状態では、先駆動レバー113の被係止部113aが、先緊定レバー123の係止部123aを乗り越え、後駆動レバー126の被係止部126aが後緊定レバー135の係止部135aを乗り越えている。つまり図8は、先駆動レバー113、先サブレバー118、後駆動レバー126、後サブレバー131がそれぞれ図6に示したチャージ完了位置(露光開始位置)よりも、更にチャージ方向に移動しているオーバーチャージ状態を示している。また、この時、先サブレバー118は、先駆動レバー113の当接部113cとの間の距離1Sに位置しており、先サブレバー131は、後羽根駆動ピン129との間に距離1Aをおいて位置している。
【0054】
図9及び図10は、図8の状態からカメラ本体の動力伝達部材160に伝達される動力が解除され、チャージレバー101が先羽根補助バネ119と後羽根補助バネ132との付勢力によって図6に示した初期位置の方向に押し戻される様子を説明する図である。
【0055】
先サブレバー118のチャージに関する先サブチャージレバー108のカム部108aの形状、後サブレバー131のチャージに関する後サブレバー131のチャージカム部の形状により、先羽根補助バネ119と後羽根補助バネ132の付勢力はチャージレバー101を図6に示した初期位置の方向に押し戻すように作用する。
【0056】
図10は、先羽根補助バネ119と後羽根補助バネ132の付勢力によりチャージレバー101が押し戻された状態を示している。図10では、先駆動レバー113に軸支される先駆動レバーローラ117がチャージカムレバー105のカムトップ105a'から外れ、後駆動レバー131に軸支される後駆動レバーローラ130がチャージカムレバー105のカムトップ105b'から外れている。このとき先駆動レバー113は、先羽根駆動バネ115の付勢力により先緊定レバー123に係止される位置であるチャージ完了位置(露光開始位置)に移動する。また後駆動レバー126は、後羽根駆動バネ128の付勢力により後緊定レバー135に係止される位置であるチャージ完了位置(露光開始位置)に移動する。
【0057】
また、先サブレバー118は間隔lSだけオーバーチャージされた状態になり、後サブレバー131は当接部131aが後駆動レバー126に植設された後羽根駆動ピン129と当接する位置であるチャージ完了位置(露光開始位置)に移動する。
【0058】
図10では、図9の状態から先サブレバー118が、前述の間隔lSだけ移動し、先駆動レバー113の当接部113cに当接することでチャージ完了位置(露光開始位置)に係止されている。つまり、先サブレバー118が間隔lSだけ移動する際の先羽根補助バネ119の付勢力を利用して、先駆動レバーローラ117及び後駆動レバーローラ130が共にチャージカムレバー105のカムトップ105a'及び105b'から外れる。
【0059】
本実施の形態におけるシャッタの露光動作は、先幕11を先羽根駆動バネ115と先羽根補助バネ119とで駆動するとともに、後幕12を後羽根駆動バネ128と後羽根補助バネ132とで駆動する。そして先羽根補助バネ119と後羽根補助バネ132の付勢力を、それぞれの幕(羽根)の駆動初期だけ作用するように構成している。幕(羽根)の移動スタート時に強いバネ力(先羽根駆動バネ115+先羽根補助バネ119、後羽根駆動バネ128+後羽根補助バネ132)を使って幕(羽根)を短時間で所望の幕速に到達させることができる。更に、所定の幕速になった後は慣性力が働くため、大きな加速力を必要とせずに比較的弱いバネ力(先羽根駆動バネ115、後羽根駆動バネ128)でも幕速を維持することができる。
【0060】
次に、上記構成のオーバーチャージ可能なシャッタを用いることによって、シャッタ羽根に付着した塵埃が光学フィルタに付着するのを未然に防止する本実施の形態に係る機構について説明する。上述の説明及び図8〜図11に示すように、シャッタのオーバーチャージ動作は、基本的にシャッタの先幕11と後幕12の開閉動作を伴わない動作であることが分かる。また、このオーバーチャージ動作は、先幕のチャージカムレバー105を反時計回り方向に微小量回動させる動作であり、この微小回動動作によって、チャージカムレバー105によって動作する先幕11を僅かに振動させることができる。
【0061】
本実施の形態は、この先幕11の振動によって、シャッタの先幕11に付着した塵埃を先幕11から引き剥がすと共に、このシャッタのオーバーチャージ動作から一定時間、シャッタの開閉動作を禁止している。これにより先幕11から落下して浮遊している塵埃が光学素子21に付着するのを防止するように構成したものである。
【0062】
次に、上記構成のカメラ500を動作させるための電気的な構成を説明する。
【0063】
図12は、本実施の形態に係るカメラ500のカメラシステムの電気的構成を示すブロック図である。ここで前述の図で説明した部材と同じ部材については同一符号を付している。まず、物体像の撮像、記録に関する部分から説明する。
【0064】
このカメラシステムは、撮像系、画像処理系、記録/再生系及び制御系を有する。撮像系は、撮影光学系511及び固体撮像部23を有する。画像処理系は、A/D変換器530、RGB画像処理回路531及びYC処理回路532を有する。また記録再生系は、記録処理回路533及び再生処理回路534を有する。更に制御系は、カメラシステム制御回路(制御手段)535、操作検出回路536、撮像駆動回路537を有する。538は、外部のコンピュータ等に接続され、データの送受信を行うために規格化された接続端子である。上述した電気回路は、不図示の電池からの電力供給を受けて駆動する。
【0065】
撮像系は、物体からの光を、撮影光学系511を介して固体撮像部23の撮像面に結像させる光学処理系である。この撮影光学系511に設けられた絞り512の駆動を制御するとともに、必要に応じてフォーカルプレンシャッタ10の駆動をシャッタ制御回路545を介して行うことによって、適切な光量の物体光を固体撮像部23で受光させることができる。
【0066】
固体撮像部23から読み出された信号は、A/D変換器530を介して画像処理系に供給される。この画像処理系での画像処理によって画像データが生成される。A/D変換器530は、固体撮像部23の各画素から読み出された信号の振幅に応じて、例えば固体撮像部23の出力信号を10ビットのデジタル信号に変換して出力する信号変換回路であり、以降の画像処理はデジタル処理にて実行される。RGB画像処理回路531は、A/D変換器530の出力信号を処理する信号処理回路であり、ホワイトバランス回路、ガンマ補正回路、補間演算による高解像度化を行う補間演算回路を有する。YC処理回路532は、輝度信号Y及び色差信号(R−Y),(B−Y)を生成する信号処理回路である。このYC処理回路532は、高域輝度信号YHを生成する高域輝度信号発生回路、低域輝度信号YLを生成する低域輝度信号発生回路及び、色差信号(R−Y),(B−Y)を生成する色差信号発生回路を有している。輝度信号Yは、高域輝度信号YHと低域輝度信号YLを合成することによって形成される。
【0067】
記録再生系は、メモリ(不図示)への画像信号の出力と、ディスプレイユニット517への画像信号の出力とを行う処理系である。記録処理回路533はメモリへの画像信号の書き込み処理及び読み出し処理を行い、再生処理回路534はメモリから読み出した画像信号を再生して、ディスプレイユニット517に出力する。また記録処理回路533は、静止画データ及び動画データを表わすYC信号を所定の圧縮形式で圧縮するとともに、圧縮されたデータを伸張させる圧縮伸張回路を内部に有する。圧縮伸張回路は、信号処理のためのフレームメモリ等を有しており、このフレームメモリに画像処理系からのYC信号をフレーム毎に蓄積し、複数のブロックのうち各ブロックから蓄積された信号を読み出して圧縮符号化する。この圧縮符号化は、例えば、ブロック毎の画像信号を2次元直交変換、正規化及びハフマン符号化することにより行われる。
【0068】
再生処理回路534は、輝度信号Y及び色差信号(R−Y),(B−Y)をマトリクス変換して、例えばRGB信号に変換する回路である。再生処理回路534によって変換された信号はディスプレイユニット517に出力され、可視画像として表示(再生)される。再生処理回路534及びディスプレイユニット517は、Bluetooth等の無線通信を介して接続されていてもよい。このように構成すれば、このカメラ500で撮像された画像を離れたところからモニタすることができる。
【0069】
一方、制御系における操作検出回路536は、メインスイッチ、レリーズボタン、モード切り換えスイッチ(いずれも不図示)等の操作を検出して、この検出結果をカメラシステム制御回路535に出力する。カメラシステム制御回路535は、マイクロコンピュータ等のCPU1200、CPU1200により実行されるプログラムやデータを記憶しているROM1201、そしてワークエリアとして使用され各種データを一時的に記憶するRAM1202を有している。タイマ1203は、CPU1200により指示された時間の経過を測定し、その指示された時間が経過すると割り込み等によりCPU1200に通知する。また、このカメラシステム制御回路535は、操作検出回路536からの検出信号を受けることで、その検出結果に応じた動作を行う。また、カメラシステム制御回路535は、撮像動作を行う際のタイミング信号を生成して、撮像駆動回路537に出力する。撮像駆動回路537は、カメラシステム制御回路535からの制御信号を受けることで固体撮像部23を駆動させるための駆動信号を生成する。情報表示回路542は、カメラシステム制御回路535からの制御信号を受けて光学ファインダ502の情報表示ユニットの駆動を制御する。この制御系は、カメラ500に設けられた各種スイッチの操作に応じて撮像系、画像処理系及び記録再生系での駆動を制御する。例えば、レリーズボタン(不図示)の操作によってSW2がオンとなった場合、制御系(カメラシステム制御回路535)は、固体撮像部23の駆動、RGB画像処理回路531の動作、記録処理回路533の圧縮処理等を制御する。更に、制御系は、情報表示回路542を介して光学ファインダ内の情報表示ユニットの駆動を制御することによって、光学ファインダ502での表示(表示セグメントの状態)を変更する。
【0070】
次に、撮影レンズで構成される撮影光学系511の焦点調節動作に関して説明する。
【0071】
カメラシステム制御回路535はAF制御回路540に接続されている。またレンズユニット501をカメラ500に装着することで、カメラシステム制御回路535は、マウント接点513a,514aを介してレンズユニット501のレンズシステム制御回路541と接続される。そしてAF制御回路540及びレンズシステム制御回路541と、カメラシステム制御回路535とは、特定の処理の際に必要となるデータを相互に通信する。
【0072】
焦点検出ユニット567は、撮影画面内の所定位置に設けられた焦点検出領域での検出信号をAF制御回路540に出力する。AF制御回路540は、この焦点検出ユニット567からの出力信号に基づいて焦点検出信号を生成し、撮影光学系511の焦点調節状態(デフォーカス量)を検出する。そしてAF制御回路540は、その検出したデフォーカス量を撮影光学系511の一部の要素であるフォーカスレンズの駆動量に変換し、フォーカスレンズの駆動量に関する情報を、カメラシステム制御回路535を介してレンズシステム制御回路541に送信する。ここで、移動する物体に対して焦点調節を行う場合、AF制御回路540は、レリーズボタン(不図示)が全押し操作されてから実際の撮像制御が開始されるまでのタイムラグを勘案して、フォーカスレンズの適切な停止位置を予測する。そして、その予測した停止位置へのフォーカスレンズの駆動量に関する情報をレンズシステム制御回路541に送信する。
【0073】
一方、カメラシステム制御回路535が、固体撮像部23の出力信号に基づいて物体の輝度が低く十分な焦点検出精度が得られないと判定すると、閃光発光ユニット(不図示)又は、カメラ500に設けられた白色LEDや蛍光管(いずれも不図示)を駆動して物体を照明する。レンズシステム制御回路541は、カメラシステム制御回路535からフォーカスレンズの駆動量に関する情報を受信すると、レンズユニット501内に配置されたAFモータ547の回転を制御する。これにより、駆動機構を介してフォーカスレンズを駆動量の分だけ光軸L1方向に移動させて、撮影光学系501を合焦状態にできる。またレンズシステム制御回路541は、カメラシステム制御回路535から露出値(絞り値)に関する情報を受信すると、レンズユニット501の絞り駆動アクチュエータ543の駆動を制御することによって、その絞り値に応じた絞り開口径となるように絞り512を動作させる。
【0074】
またシャッタ制御回路545は、カメラシステム制御回路535からのシャッタ速度に関する情報を受信すると、フォーカルプレンシャッタ10の先幕11の電磁駆動部35及び後幕12の電磁駆動部36を制御する。これにより、その指示されたシャッタ速度になるように先幕11及び後幕12を動作させる。また駆動部37を動作させることによって、シャッタ動作を行うための準備動作であるシャッタチャージを行う。更に、本実施の形態の特徴的な動作であるオーバーチャージもこの駆動部37を用いて行わせることができる。このように、フォーカルプレンシャッタ10と絞り512の動作により、適切な光量の被写体光を固体撮像部23の固体撮像素子23bの結像面に入射させることができる。
【0075】
またAF制御回路540において物体にピントが合ったことが検出されると、この情報はカメラシステム制御回路535に送信される。このとき、レリーズボタン(不図示)の全押し操作によってSW2がオン状態になれば、上述したように撮像系、画像処理系及び記録再生系によって撮影動作が行われる。
【0076】
以下、本実施の形態の趣旨であるフォーカルプレンシャッタ10に付着した塵埃を除去する機構を備えたカメラ(光学機器)の動作を図13に示すフローチャートを参照して説明する。
【0077】
図13は、本発明の実施の形態1に係るカメラ500のカメラシステム制御部535による制御処理を説明するフローチャートである。この処理を実行するプログラムはカメラシステム制御部535のROM1201に記憶されており、CPU1200の制御の下に実行される。
【0078】
まずステップS100で、カメラ500の操作部のモード切り換えスイッチが操作されて、クリーニング(CLN)モードが指定されたかどうかを検出する。ここでクリーニングモードが指定されたと判断したらステップS101に進む。一方、クリーニングモードでないと判断した場合には元のステップS100に戻り、再度クリーニングモードが指定されたかどうかを検出する。ステップS101では、クリーニングモードに移行する前に、現時点でカメラ500に設定されているシャッタ速度、絞り値等の撮影条件をカメラシステム制御回路535のRAM1202に記憶してステップS102へ進む。ステップS102では、フォーカルプレンシャッタ10に設けられた検出手段(不図示)を用いて、先幕11の各シャッタ羽根11a〜11dが全て閉じた状態で動作を完了しているかどうかを検出する。もしここで、何らかの原因で先幕11が完全に閉まっていない場合には、駆動部37を駆動させてシャッタ駆動レバー101を動作させる。そして先幕11の各シャッタ羽根11a〜11dが全て閉じ動作を完了したことを検知するとステップS103へ進む。
【0079】
クリーニングモードの状態でシャッタの先幕11が不用意に動作するとシャッタが開放状態となり、光学素子21に塵埃が付着してしまう可能性がある。このため、シャッタ先幕11が不用意な誤動作をしないようにするために、ステップS103では、先幕11の駆動を開始させる先羽根コイルへの通電を禁止する。次にステップS104に進み、カメラシステム制御回路535からフォーカルプレンシャッタ10のオーバーチャージ動作を実行する旨の命令をシャッタ制御回路545に送る。この信号に基づいて、シャッタ制御回路545により駆動部37が駆動される。ここでは既にチャージ状態にあるシャッタに対して駆動レバー160を回動させることによりシャッタオーバーチャージ動作を実行させる。
【0080】
次にステップS105に進み、先のステップS104で回動させた駆動レバー160の動作を先羽根レバー101に伝達する。この動作において、既にシャッタはチャージ状態或はオーバーチャージ完了状態にあるため、シャッタチャージ完了位置とオーバーチャージ位置との間の微小な往復動となる。この状態では、シャッタ羽根のチャージの必要はなく、また事前にオーバーチャージの動作が完了している場合には、オーバーチャージ用のバネのチャージもする必要もない。よって駆動レバー160の力を全てこの微小な往復動作に向けることができ高速な往復動作が可能になる。
【0081】
次にステップS106では、ステップS105で得られた先羽根レバー101の微小往復動を先幕11の振動に変換させる。即ち、ステップS105で微小往復動をさせた先羽根レバー101は、その動力を先幕11に伝達する。しかし、この時点では先幕11は展開してクローズの状態になっているため開閉動作としては作用せず、更にシャッタを閉じようとしてストッパーに当たる力として伝達される。ここで生じた反力が、先羽根レバー101に連動する先羽根11に伝達され、各シャッタ羽根11a〜11dを加振させる。この各シャッタ羽根11a〜11dの振動によって、フォーカルプレンシャッタ10に付着した塵埃を脱落させることができる。
【0082】
次にステップS107に進み、カメラシステム制御回路535が有するタイマ1203で所定時間を計時する。これはステップS106で、先幕11の表面から離れた塵埃がフォーカルプレンシャッタ10の周囲で浮遊している最中に先幕11の開閉動作が行われることにより、その浮遊している塵埃が光学素子21の表面に付着するのを防止するためである。従って、この所定時間は、浮遊している塵埃が完全に落下し周囲に漂流するのが収まることが期待できる時間に予め設定される。具体的には、光学素子21の表面に塵埃が付着した場合に撮影画像に影響があると認められるその塵埃の大きさを基準に、落下するまでの時間を予め計測し、その時間に基づいて設定される。光学素子21の表面に塵埃が付着した場合に撮影画像に影響があるか否かは、光学素子21と固体撮像素子23bの距離や、固体撮像素子23bの1画素の大きさ等によって左右される。従って、この所定時間は、カメラの機種ごとに固有に設定される性質を有する。
【0083】
こうしてステップS107で、先幕11の振動によって塵埃が完全に落下し周囲に漂流するのが収まるのを待ってステップS108に進み、クリーニングモードを解除する。そして次にステップS109で、ディスプレイユニット517にクリーニングモードが解除された(もしくはクリーニング動作が完了した)旨のメッセージを表示する。その後ステップS110で、ステップS101でRAM1202に記憶した撮影条件等を読み出してカメラ500に再設定して、一連のシーケンスを終了する。
【0084】
以上説明したように本実施の形態1によれば、フォーカルプレンシャッタの先幕(先羽根)11に付着した塵埃を、新たな動力を付加すること無く除去可能である光学機器を実現できる。また、複雑なシャッタ動作を必要としないためレリーズタイムラグが必要以上に長くならず、撮影時の操作性への悪影響がない。
【0085】
尚、上記実施の形態1では、シャッタ駆動部37を動作することによって、先羽根駆動レバー101を可動させる構成について説明した。これは先幕11を振動させる新たな構成を、新たな部品の追加なしに実現させたものである。しかし本発明は上記構成に限定されるものではない。即ち、シャッタチャージの動作の一部を先幕11に伝えればよく、先羽根駆動レバー101を介さず、直接、駆動部37の動力を伝えるように構成して先幕11を振動させるようにしても良い。
【0086】
また上記実施の形態1では、フォーカルプレンシャッタ10の先幕11に付着した塵埃を取り除くタイミングを、クリーンモードに設定したときに行うように設定している。しかし必ずしもこのような専用のクリーンモードを持つ必要はなく、任意のタイミングでこのフォーカルプレンシャッタの先幕に付着した塵埃を除去しても良い。例えば、外部から塵埃が挿入しやすい撮影レンズが交換されたタイミングで、シャッタのオーバーチャージ動作を実行してもよい。また、デジタルカメラの電源を投入した時点や、任意の使用時間の経過に応じて、自動的にこのクリーンモードに入るように構成しても良い。このことによって、特殊なクリーンモードを設定しなくても、上記効果を得ることができる。
【0087】
[実施の形態2]
図14は、本発明の実施の形態2に係る、フォーカルプレンシャッタ10に付着した塵埃を除去する機構を備えたカメラ500のカメラシステム制御部535による制御処理を説明するフローチャートである。この処理を実行するプログラムはシステム制御部535のROM1201に記憶されており、CPU1200の制御の下に実行される。尚、この実施の形態2に係るカメラの構成は前述の実施の形態1と同様であり、フォーカルプレンシャッタ10に付着した塵埃を除去するための動作のみが異なっている。このため、共通の構成に関しては、同一の番号を用いて説明する。
【0088】
この実施の形態2の特徴は、シャッタのオーバーチャージ動作を複数回連続して行わせる点にある。これにより、フォーカルプレンシャッタの先幕11に付着した塵埃を、より確実に脱落させることができる。以下、このフローチャートを用いて、本実施の形態2について説明する。尚、図14において、ステップS200〜ステップS203までの動作は前述の図13のステップS100〜S103の処理と同じであるため、その説明を省略する。
【0089】
ステップS204では、カメラシステム制御回路535からフォーカルプレンシャッタ10のオーバーチャージ動作する旨の命令がシャッタ制御回路545に送られる。この信号に基づいて駆動部37を駆動させる。これにより、既にチャージ状態にあるシャッタに対して駆動レバー160を回動させることになり、シャッタオーバーチャージの動作を実行させる。ステップS205では、ステップS204で回動させた駆動レバー160の動作を先羽根レバー101に伝達する。この動作により、既にシャッタはチャージ状態、もしくはオーバーチャージ完了状態にあるため、シャッタチャージ完了位置とオーバーチャージ位置との間の微小な往復動となる。この状態では、シャッタ羽根のチャージの必要はなく、また事前にオーバーチャージの動作が完了している場合には、オーバーチャージ用のバネのチャージもする必要もない。従って、駆動レバー160の力を全てこの微小な往復動作に向けることができ高速な動作が可能になる。
【0090】
次にステップS206に進み、ステップS205で得られた先羽根レバー101の微小往復動を先幕11の振動に変換させる。即ち、ステップS205で微小往復動をさせた先羽根レバー101は、その動力を先幕11に伝達する。ここでは既に先幕11はクローズの状態になっているため開閉動作としては作用せず、更にシャッタを閉じようとしてストッパーに当たる力として伝達される。これにより生じた反力が、先羽根レバー101に連動する先幕11に伝達されて各シャッタ羽根11a〜11dを加振させる。この各シャッタ羽根11a〜11dの振動によって、フォーカルプレンシャッタ10に付着した塵埃を脱落させることができる。
【0091】
次にステップS207では、上記シャッタのオーバーチャージ動作が所定回数繰り返されたかどうかを判断する。この実施の形態2では、フォーカルプレンシャッタ10に付着した塵埃を除去するためのオーバーチャージの動作を所定回数繰り返して実行することができるように構成されている。従って、付着力の強い塵埃に対しても、より確実に先幕11から除去できる点が実施の形態1とは異なる。
【0092】
こうして所定回数のオーバーチャージ動作が完了するとステップS208に進み、カメラシステム制御回路535が有するタイマ1203で所定時間の計時が行われる。これは、ステップS206にてシャッタ羽根11の表面から離れた塵埃がフォーカルプレンシャッタ10の周囲で浮遊している最中に先幕11の開閉動作が行われることによって、その塵埃が光学素子21の表面に付着するのを防止するためである。
【0093】
次にステップS209に進み、ステップS208での先幕11の振動によって塵埃が完全に落下し、塵埃が漂流するのが完全に収まるのを待って、このクリーニングモードを解除する。これと同時にステップS210で、ディスプレイユニット517にクリーニングモードが解除された(もしくはクリーニング動作が完了した)旨のメッセージを表示する。その後、ステップS211に進み、ステップS201でRAM1202に記憶した撮影条件等を読み出してカメラ500に再設定して一連のシーケンスを終了する。
【0094】
以上説明したように本実施の形態2によれば、フォーカルプレンシャッタ10の先幕11に付着した塵埃を、新たな動力を付加すること無く、より確実に除去できる光学機器を実現することができる。
【0095】
また、複雑なシャッタ動作を必要としないためレリーズタイムラグが必要以上に長くならず、撮影時の操作性への悪影響がない。
【0096】
尚、この実施の形態2では、シャッタ駆動部37を駆動することによって、フォーカルプレンシャッタ10の先幕11に付着した塵埃を除去する動作の繰り返し回数を予め定めた回数とした。しかしこの回数は、任意の回数に設定できるようにしてもよい。
【0097】
また前述の実施の形態1と同様に、この実施の形態2においても、先幕11を振動させる新たな構成部品の追加なしに実現させる構成を示しているが、本実施の形態においても、シャッタチャージの動作の一部を、直接、先幕11伝えるように構成してもよい。
【0098】
[実施の形態3]
図15は、本発明の実施の形態3に係るカメラ500のカメラシステム制御部535による制御処理を説明するフローチャートである。この処理を実行するプログラムはシステム制御部535のROM1201に記憶されており、CPU1200の制御の下に実行される。尚、この実施の形態3に係るカメラ500の構成は前述の実施の形態1と同様であり、フォーカルプレンシャッタ10に付着した塵埃を除去する動作のみが異なっている。このため、共通の構成に関しては、同一の番号を用いて説明する。
【0099】
この実施の形態3の特徴は、シャッタのオーバーチャージ動作の後に、主ミラー505を動作させることを特徴としている。この構成を採ることによって、フォーカルプレンシャッタ10の先幕11に付着した塵埃がシャッタのオーバーチャージ動作によって脱落した後、確実に光学素子21から遠ざけて排出することができる点で優れている。以下、このフローチャートを用いて、実施の形態3のデジタル一眼レフカメラの動作について説明する。尚、図15において、ステップS300〜ステップS303までの動作は前述の図13のステップS100〜S103と同じであるため、その説明を省略する。
【0100】
ステップS304では、カメラシステム制御回路535からフォーカルプレンシャッタ10のオーバーチャージ動作する旨の命令がシャッタ制御回路545に送られる。この信号に基づいて駆動部37を駆動させる。これにより、既にチャージ状態にあるシャッタに対して駆動レバー160を回動させることによりシャッタオーバーチャージの動作をさせる。
【0101】
次にステップS305に進み、先のステップS204で回動させた駆動レバー160の動作を、先羽根レバー101に伝達する。このとき、既にシャッタはチャージ状態或はオーバーチャージ完了状態にあるため、シャッタチャージ完了位置とオーバーチャージ位置との間の微小な往復動となる。この状態では、シャッタ羽根のチャージの必要がない。また事前にオーバーチャージの動作が完了している場合には、オーバーチャージ用のバネのチャージもする必要もないため、駆動レバー160の力を全てこの微小な往復動作に向けることができ、高速な動作が可能になる。次にステップS306に進み、ステップS305で得られた先羽根レバー101の微小往復動を先幕11の振動に変換させる。即ち、ステップS305で微小往復動をさせた先羽根レバー101は、その動力を先幕11に伝達する。ここで先幕11は既にクローズの状態になっているため開閉動作としては作用せず、更にシャッタを閉じようとしてストッパに当たる力として伝達される。ここで生じた反力が、先羽根駆動レバー101に連動する先幕11に伝達され、各シャッタ羽根11a〜11dを加振させる。この各シャッタ羽根11a〜11dの振動によって、フォーカルプレンシャッタ10に付着した塵埃を脱落させることができる。
【0102】
次にステップS307に進み、先幕11の直前に配置された主ミラー505を上方に回動させる。これはステップS306の先幕11の振動によって脱落した塵埃を光学素子21から遠ざけるために有効な動作である。通常、このような主ミラー505の回動動作によって、先幕11の前側のスペースは瞬間的に負圧になる。この負圧となるスペースに、先幕11から脱落した塵埃をタイミング良く導くことによって、脱落した塵埃を光学素子21から遠ざける方向に移動させることができる。この結果、新たな部材を追加することなく現状の機構を利用して、先幕11から振るい落とされた塵埃を効率良く光学素子21から遠ざけることができる。
【0103】
次にステップ308に進み、主ミラー505を反時計回り方向に回動させ、ファインダ502に光線を導く光路に戻す。これは、先幕11から落下させた塵埃を先幕11から遠ざける方向に移動させた後、再度、先幕11の方向に浮遊してくるのを防止するため、塵埃が逆流しないように所定時間が経過した後に行う。次にステップS309に進み、上記シャッタのオーバーチャージ動作が所定回数繰り返されたかどうかを判断する。
【0104】
このように本実施の形態3では、前述の実施の形態2と同様にフォーカルプレンシャッタ10に付着した塵埃を除去するためのオーバーチャージの動作を所定回数繰り返して作動させるように構成されている。こうして所定回数のオーバーチャージ動作が繰り返されるとステップS310に進む。ステップS310では、ステップS309での先幕11の振動によって塵埃が完全に落下し、主ミラー505で光学素子21から離れた位置に完全に移動するのを待ってクリーニングモードを解除する。次にステップS311で、ディスプレイユニット517にクリーニングモードが解除された(或はクリーニング動作が完了した)旨のメッセージを表示する。その後、ステップS312に進み、ステップS301でRAM1203に記憶した撮影条件等を読み出してカメラ500に再設定して、一連のシーケンスを終了する。
【0105】
以上説明したように本実施の形態3によれば、フォーカルプレンシャッタの先幕11に付着した塵埃を、新たな動力を付加すること無く除去できる光学機器を提供できる。
【0106】
また、複雑なシャッタ動作を必要としないためレリーズタイムラグが必要以上に長くならず、撮影時の操作性への悪影響がない。
【0107】
更に、本実施の形態3では、シャッタ駆動部37を動作することによって、フォーカルプレンシャッタの先幕11に付着した塵埃の多くを除去できると共に、このとき落下した塵埃を光学素子21から離れた位置に移動させることができる。このため、塵埃の再付着が抑制できクリーニング効果を長く持続させることができる。
【0108】
尚、実施の形態3では、先幕11の振動に連動して、毎回主ミラー505を回動するように構成している。しかし、毎回ミラーチャージを行わせることは煩雑であるため、先幕11を振動動作を所定回数繰り返した後に、主ミラー505を回動するように構成しても良い。また実施の形態1の場合と同様に、先幕11の振動により塵埃を落下させる処理を一度だけ実行し、またこれに応じて一度だけ主ミラーを回動させても良い。
【0109】
また実施の形態3では、実施の形態1と同様に、先幕を振動させる新たな構成部品や、塵埃を光学素子21の方向とは異なる方向に移動させる手段を、新たな部品を追加することなく実現する構成を示している。しかし、シャッタチャージの動作の一部を直接先幕11に伝えるような構成部品を追加したり、塵埃を別方向に導くような部分を新たに設けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明の実施の形態に係るカメラの撮影待機状態の構造を説明する概略断面図である。
【図2】本実施の形態に係るカメラの撮影時の構造を説明する概略断面図である。
【図3】本実施の形態に係るカメラにおけるフォーカルプレンシャッタと撮像部の構成図である。
【図4】発生した塵埃が光学素子に付着する状況を説明する図である。
【図5】本実施の形態に係るシャッタ装置全体の構成を示す斜視図である。
【図6】本実施の形態に係るカメラにおいてチャージ完了状態を示す機構要部平面図である。
【図7】本実施の形態に係るカメラにおける先幕及び後幕が露光終了している状態(チャージ開始前の状態)を示す機構要部平面図である。
【図8】本実施の形態に係るカメラにおいて、チャージが完了したオーバーチャージ状態を示す機構要部平面図である。
【図9】本実施の形態に係るカメラにおいて、先駆動レバーがオーバーチャージ位置からチャージ完了位置に移行し、先サブレバーがオーバーチャージ位置にある状態を示す機構要部平面図である。
【図10】本実施の形態に係るカメラにおいて、先駆動レバー、先サブレバーがチャージ完了位置にある状態を示す機構要部平面図である。
【図11】本実施の形態に係るカメラにおいて、チャージ完了状態のシャッタ装置の駆動部を中心にした上面図である。
【図12】本実施の形態に係るカメラのカメラシステムの電気的構成を示すブロック図である。
【図13】本発明の実施の形態1に係るカメラのカメラシステム制御部による制御処理を説明するフローチャートである。
【図14】本発明の実施の形態2に係るカメラのカメラシステム制御部による制御処理を説明するフローチャートである。
【図15】本発明の実施の形態3に係るカメラのカメラシステム制御部による制御処理を説明するフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体の光学像を電気信号に変換する光電変換素子と、
前記光電変換素子への光の入射を制御するフォーカルプレンシャッタと、
前記フォーカルプレンシャッタを駆動する駆動手段と、
前記フォーカルプレンシャッタが前記光電変換素子への光の入射を遮っている状態を保ったまま、前記駆動手段により前記フォーカルプレンシャッタを複数回繰り返し振動駆動する振動制御手段と、

を有することを特徴とする光学機器。
【請求項2】
前記振動制御手段による振動駆動の後、所定時間前記フォーカルプレンシャッタの開閉動作を禁止する禁止手段を更に有することを特徴とする請求項1に記載の光学機器。
【請求項3】
前記光電変換素子へ入射する光の光軸上に設けられたクイックリターンミラーと、
前記クイックリターンミラーを回動駆動するミラー回動手段と、
前記振動制御手段による振動駆動の後、前記ミラー回動手段により前記クイックリターンミラーを回動させる手段とを更に有することを特徴とする請求項1に記載の光学機器。
【請求項4】
前記振動制御手段は、前記フォーカルプレンシャッタを駆動するバネをチャージするように前記駆動手段により駆動することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光学機器。
【請求項5】
被写体の光学像を電気信号に変換する光電変換素子と、前記光電変換素子への光の入射を制御するフォーカルプレンシャッタと、前記フォーカルプレンシャッタを駆動する駆動手段とを具備する光学機器における異物除去方法であって、
前記フォーカルプレンシャッタが前記光電変換素子への光の入射を遮っている状態を保ったまま前記フォーカルプレンシャッタを複数回繰り返し振動駆動する振動工程

を有することを特徴とする光学機器における異物除去方法。
【請求項6】
前記振動工程による振動駆動の後、所定時間前記フォーカルプレンシャッタの開閉動作を禁止する禁止工程を更に有することを特徴とする請求項5に記載の光学機器における異物除去方法。
【請求項7】
前記光電変換素子へ入射する光の光軸上に設けられたクイックリターンミラーを回動駆動するミラー回動工程と、
前記振動工程での振動駆動の後、前記ミラー回動工程により前記クイックリターンミラーを回動させることを特徴とする請求項5に記載の光学機器における異物除去方法。
【請求項8】
前記振動工程では、前記フォーカルプレンシャッタを駆動するバネをチャージするように駆動することを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載の光学機器における異物除去方法。
【請求項9】
請求項5乃至8のいずれか1項に記載の光学機器における異物除去方法をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−286443(P2007−286443A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−115010(P2006−115010)
【出願日】平成18年4月18日(2006.4.18)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】