説明

光接続部品及び光接続部品への被覆付光ファイバの接続方法

【課題】確実に被覆を除去することのできる光接続部品を提供する。
【解決手段】被覆付光ファイバ11と光学部材12とを接続する光接続部品1であって、被覆付光ファイバ11の先端面11aを当接させることにより、被覆付光ファイバ11の先端面11aから被覆14を除去可能な被覆除去部64と、被覆除去部64より前方に設けられ、被覆付光ファイバ11が光学部材12と付き合わされる前方孔部61と、被覆除去部64より後方に設けられた後方孔部63と、後方孔部63内に前後方向に間隔を隔てて設けられて被覆付光ファイバ11の外周面を支持する複数の支持部71を有する保持部70と、を備え、複数の支持部71は被覆除去部64側に移動可能である光接続部品1により上記目的が達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光接続部品に関し、特に被覆除去機能を備えた光接続部品に関する。
【背景技術】
【0002】
被覆付光ファイバを、簡易な接続作業で高精度に位置決めして接続することができる光接続部品が知られている(特許文献1参照)。図13に示すこの光接続部品500は、ガラスファイバの外周に被覆を備えた被覆付光ファイバ511に接続される。光接続部品500は、端部に短尺光ファイバ512を備え、この短尺光ファイバ512に通じるガラスファイバ挿入孔521を有するフェルール520と、ガラスファイバ挿入孔521に挿入された短尺光ファイバ512にガラスファイバを突き合わせた被覆付光ファイバ511を固定する固定部550と、被覆付光ファイバ511の挿入力によりこの被覆付光ファイバ511の端部から被覆を除去する被覆除去部564とを備えている。
【0003】
この光接続部品500の固定部550と被覆除去部564との間には、光ファイバ505を撓ませた状態で収容可能な撓み空間562が形成されている。すなわち、被覆付光ファイバ511を撓み空間562で撓ませた状態で収容するとともに、固定部550において被覆付光ファイバ511を固定することにより、フェルール520のガラスファイバ挿入孔521に挿入されたガラスファイバ505の先端面に、フェルール520に内蔵されている短尺光ファイバ512の接続面に向かう弾性付勢力が付与される。したがって、短尺光ファイバ512と光ファイバ505の接続状態が安定して維持される。
【0004】
このように構成した光接続部品500では、ガラスファイバの外周に被覆を備えた被覆付光ファイバ511を光接続部品500に挿入する際に、被覆除去部564によって被覆付光ファイバ511の端部から被覆が除去され、端部に露出したガラスファイバをガラスファイバ挿入孔521に挿入し、被覆付光ファイバ511を固定部550により固定する。これにより、光接続部品500に挿入する前に被覆除去作業を行う必要がなく、被覆付光ファイバ511を、被覆付光ファイバ511から被覆が除去されたコアファイバの外周を基準として高精度に位置決めして、短尺光ファイバ512に接続することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−292709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の光接続部品500において、被覆付光ファイバ511は被覆付光ファイバ511に取り付けられた被覆把持部570を把持した状態で光接続部品500に挿入される。この時、被覆付光ファイバ511は、その先端が被覆除去部564に当接するまでは無負荷状態で挿入されるが、被覆付光ファイバ511の先端が被覆除去部564に当接すると被覆付光ファイバ511に座屈荷重が加わり、図14のように固定部550の後方と被覆把持部570との間で被覆付光ファイバ511が座屈する虞があった。
【0007】
具体的には、被覆付光ファイバ511を光接続部品500に固定する際は、被覆付光ファイバ511の被覆把持部570を把持して被覆付光ファイバ511の先端を後方から光接続部品500の突き合わせ位置568まで挿入する。このとき、被覆付光ファイバ511の先端が被覆除去部564に当接して被覆が除去され、コアファイバのみが突き合わせ位置568まで挿入される。
【0008】
この被覆除去部564は突き合わせ位置568よりも後方側に設けられているので、図13のように両光ファイバ511,512を突き合わせた時に固定部550の後方付近に位置する被覆把持部570は、被覆除去の開始時には図14のように固定部550の後端よりも更に後方に離れていることになる。
【0009】
つまり、被覆除去時には固定部550と被覆把持部570との間の側方(被覆付光ファイバ511の径方向)には何ら被覆付光ファイバ511の側方への変形を遮る部材がなく、被覆付光ファイバ511は側方に自由に変形できる。したがって、この領域で被覆付光ファイバ511に座屈が生じると、被覆付光ファイバ511の先端面に圧縮応力を作用させることができないので、被覆を除去できない虞がある。
【0010】
そこで本発明の目的は、確実に被覆を除去することのできる光接続部品及び光接続部品への被覆付光ファイバの接続方法を提供することにある。
【0011】
ところで、本発明者らは、被覆付光ファイバの撓みの発生は、被覆付光ファイバの外周面が拘束されていない部分の長さと圧縮荷重の大きさと相関している、すなわち、拘束されていない部分の長さが長いほど小さい圧縮荷重でも撓みが発生する一方、拘束されていない部分の長さが短いほど大きい圧縮荷重でも撓みが発生しにくいとの知見を得た。
【0012】
そこで、本発明者らは、撓む虞のある拘束されていない部分に保持部を設け、拘束されていない部分を分割することによって、拘束されていない部分の長さを実質的に短くすることで光ファイバを撓ませないことができることを見出し、本発明に想到した。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明によれば以下が提供される。
(1) 被覆付光ファイバと光学部材とを接続する光接続部品であって、
前記被覆付光ファイバの先端面を当接させることにより、前記被覆付光ファイバの先端面から被覆を除去可能な被覆除去部と、
前記被覆除去部より前方に設けられ、前記被覆付光ファイバが前記光学部材と付き合わされる前方孔部と、
前記被覆除去部より後方に設けられた後方孔部と、
前記後方孔部内に前後方向に間隔を隔てて設けられて前記被覆付光ファイバの外周面を支持する複数の支持部を有する保持部と、を備え、
複数の前記支持部は前記被覆除去部側に移動可能であることを特徴とする光接続部品。
(2) (1)に記載の光接続部品であって、
複数の前記支持部は前記被覆付光ファイバが挿通可能な支持孔を備え、
前記支持孔の後端には後方に向かって拡径するテーパ部が形成されていることを特徴とする。
(3) (1)または(2)に記載の光接続部品であって、
前記保持部は、隣り合う前記支持部を連結する係合部と被係合部を有し、
前記係合部が隣り合う前記支持部の前記被係合部と係合することにより、複数の前記支持部間の所定間隔が維持されることを特徴とする。
(4) (1)または(2)に記載の光接続部品であって、
前記保持部は、それぞれ係合部と被係合部を備えた複数の単位ユニットを有し、
隣接する前記単位ユニットの前記係合部と前記被係合部とが係合することにより、複数の前記単位ユニットが互いに連結されていることを特徴とする。
(5) (2)から(4)のいずれか一項に記載の光接続部品であって、
前記保持部は、前記後方孔部の内壁にガイドされるガイド面を備え、
前記ガイド面が前記後方孔部の内壁にガイドされることにより、複数の前記支持部の前記支持孔は互いの中心軸が一致されることを特徴とする。
(6) (1)から(5)のいずれか一項に記載の光接続部品であって、
前記支持部の前後方向における間隔の合計が、前記被覆付光ファイバの被覆除去長さよりも大きいことを特徴とする。
(7) (1)から(6)のいずれか一項に記載の光接続部品であって、
前記後方孔部内に、前後方向に延在して前記被覆付光ファイバの前記外周面を拘束する拘束部が設けられていることを特徴とする。
(8) (7)に記載の光接続部品であって、
前記拘束部は前後方向に移動可能に前記後方孔部内に配置され、
前記保持部は前記拘束部より前方に設けられていることを特徴とする。
(9) (8)に記載の光接続部品であって、前記拘束部は前記後方孔部内に固定され、前記保持部は前記拘束部より後方に設けられていることを特徴とする。
(10) (2)に記載の光接続部品であって、前記保持部は前記後方孔部と一体に設けられており、前記支持部は、前記後方孔部の内壁から径方向に突出する突起部であることを特徴とする。
(11) (1)に記載の光接続部品であって、前記保持部は前後方向に収縮可能な弾性部材で構成されていることを特徴とする。
【0014】
また、上記課題を解決するために、本発明によれば以下が提供される。
(12) 被覆付光ファイバの被覆を除去可能な被覆除去部と、被覆除去部の前後に貫通形成された前方孔部及び後方孔部と、前記後方孔部内に配置され前記被覆付光ファイバの外周面を支持する複数の支持部を有する保持部と、を備えた光接続部品への被覆付光ファイバの接続方法であって、
前記被覆付光ファイバの先端面が前記被覆除去部に当接するまで前記被覆付光ファイバを前記後方孔部へ挿入し、
前記被覆付光ファイバが撓まないように、前後方向に離間した複数箇所を前記支持部で支持しながら、前記被覆付光ファイバの前記先端面を前記被覆除去部に押し当てて被覆の除去を開始し、
前記支持部の間隔を詰めるとともに前記被覆付光ファイバの前記被覆を除去しながら、前記被覆付光ファイバの前記先端面を前記前方孔部中の所定位置に到達させることを特徴とする。
(13) (12)に記載の光接続部品への被覆付光ファイバの接続方法であって、前記被覆付光ファイバを前記後方孔部へ挿入する前に、前記被覆付光ファイバの最外層に設けられた外皮を把持する外皮把持部を前記被覆付光ファイバに取り付け、
前記被覆の除去時に、前記外皮把持部を前記保持部に当接させて前記支持部の間隔を詰めることを特徴とする。
(14) (13)に記載の光接続部品への被覆付光ファイバの接続方法であって、前記保持部は、複数の前記支持部を互いに連結する係合部と被係合部とを有し、
前記係合部と前記被係合部が係合されることにより、複数の前記支持部は前後方向に間隔を開けた状態が維持され、
前記外皮把持部を前記保持部に当接させて押し込むことにより、前記係合部と前記被係合部の係合を解除し、複数の前記支持部前記支持部の間隔を詰めることを特徴とする。
(15) (12)から(14)のいずれか一項に記載の光接続部品への被覆付光ファイバの接続方法であって、
前記支持部の間隔の合計が前記被覆付光ファイバの被覆除去長さよりも大きくなるように、複数の前記把持部を配列することを特徴とする。
(16) (12)から(14)のいずれか一項に記載の光接続部品への被覆付光ファイバの接続方法であって、
前記後方孔部内には、複数の前記保持部より後方に前後方向に延在して前記被覆付光ファイバの外周面を拘束する拘束部が設けられており、
前記被覆の除去時に、前記拘束部を前記保持部に当接させて前記支持部の間隔を詰めることを特徴とする。
(17) (12)から14のいずれか一項に記載の光接続部品への被覆付光ファイバの接続方法であって、
前記後方孔部内の複数の前記保持部より後方に、前後方向に延在して前記被覆付光ファイバの外周面を拘束する拘束部を設け、
前記被覆付光ファイバを前記後方孔部へ挿入する前に、前記被覆付光ファイバの最外層に設けられた外皮を把持する外皮把持部を前記被覆付光ファイバに取り付け、
前記被覆の除去時に、前記被覆付光ファイバと共に前記外皮把持部及び前記拘束部を前方に移動させ、前記拘束部を前記保持部に当接させて前記保持部の間隔を詰めることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る光接続部品および光接続部品への被覆付光ファイバの接続方法によれば、被覆除去時に後方孔部内に位置する被覆付光ファイバの外周面は、前後方向に間隔を隔てて設けられた複数の支持部により支持され、被覆の除去に伴い支持部の間隔が詰められる。つまり、前後方向に沿った複数箇所が支持部により分割されて支持されているため、拘束されていない部分の長さが実質的に短くされているので、被覆除去時に圧縮応力が作用しても被覆付光ファイバが撓むことがない。よって被覆付光ファイバの挿入時に撓まず、確実に被覆を除去することのできる光接続部品および光接続部品への被覆付光ファイバの接続方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態に係る光コネクタを示す断面図である。
【図2】図1に示す光コネクタの被覆付光ファイバの断面図である。
【図3】図1に示す光コネクタの被覆除去部における被覆除去状況を表した拡大断面図である。
【図4】図1に示す光コネクタの被覆付光ファイバの被覆除去前の状態を示す断面図である。
【図5】図1に示す光コネクタの予備撓み付与時の状態を示す断面図である。
【図6】図1に示す光コネクタの圧縮前の保持部を示す図である。
【図7】図1に示す光コネクタの圧縮後の保持部を示す図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る図4と同様の図である。
【図9】本発明の第2実施形態の変形例に係る図4と同様の図である。
【図10】本発明の第3実施形態に係る図4と同様の図である。
【図11】本発明の第4実施形態に係る図4と同様の図である。
【図12】本発明の第4実施形態の変形例に係る図4と同様の図である。
【図13】従来の光コネクタを示す断面図である。
【図14】従来の光コネクタの被覆付光ファイバの座屈状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1実施形態>
以下、本発明の実施形態に係る光接続部品を図面を参照して説明する。
図1は光接続部品である光コネクタの実施形態の例を示す断面図である。光コネクタ1は、被覆付光ファイバ11と、短尺光ファイバ12とを互いに突き合わせて光接続する部品である。
【0018】
光コネクタ1は、コネクタ本体(本体)60と、コネクタ本体60の前方に設けられたフェルール20と、コネクタ本体60内に収容された保持部70とを備えている。なお、ここでいう前方、後方とは光コネクタ1の接続方向の前方、後方であり、例えば前方とは短尺光ファイバ12が位置する図1中の左側であり、後方とは被覆付光ファイバ11が位置する図1中の右側を意味する。
【0019】
短尺光ファイバ12は、フェルール20及びコネクタ本体60の前方に挿通されている。一方、被覆付光ファイバ11はコネクタ本体60の後方に挿入されている。被覆付光ファイバ11と短尺光ファイバ12は、コネクタ本体60の中に設定された突き合わせ位置にて突き合わされて両者が光接続されている。
【0020】
フェルール20は、先端面円周縁が面取りされた円柱状に形成され、短尺光ファイバ12が固定される固定孔部21がその内部に同軸状に形成されている。このフェルール20には、光通信に用いられる一般のジルコニア製フェルールを用いることができる。フェルール20は、ジルコニア製であることにより、耐候性や機械強度に優れる。
【0021】
短尺光ファイバ12は、その端面が研磨され図示しない接着剤によってフェルール20内部の固定孔部21に固定されている。短尺光ファイバ12はフェルール20の後部から所定長導出され、短尺光ファイバ12の導出部分はコネクタ本体60の前方側に形成された後述する前方孔部61に挿入されている。
【0022】
被覆付光ファイバ11の外皮18には外皮把持部50が取り付けられている。外皮把持部50の外周面は、作業者が取り扱いやすいように大径に設定された略円筒形状に形成されている。この外皮把持部50は、その先端面から被覆付光ファイバ11の先端が延出するように被覆付光ファイバ11に取り付けられている。
【0023】
コネクタ本体60の前端面には、フェルール20を保持するフェルール保持凹部31が形成されている。このフェルール保持凹部31に短尺光ファイバ12を収容したフェルール20が固定されることで、光コネクタ1の相手側コネクタとの接続部に、一般的に光通信で使われている市販の汎用ジルコニアフェルールが流用可能とされている。
【0024】
更にコネクタ本体60の内部前方には、フェルール20の固定孔部21と連通する前方孔部61が設けられている。この前方孔部61内に短尺光ファイバ12と被覆付光ファイバ11とが突き合わされる突き合わせ位置が設定されており、フェルール20から所定長導出された短尺光ファイバ12の後端部が突き合わせ位置まで延出されている。
【0025】
コネクタ本体60の内部後方には後方孔部63が設けられており、前方孔部61と後方孔部63との間には撓み空間62が画成されている。なお、後方孔部63には、後方より順に、外皮把持部50を格納する外皮把持部格納凹部63a、保持部70を格納する保持部格納凹部63b、被覆付光ファイバ11が挿通される挿通空間63cが形成されている。
【0026】
外皮把持部格納凹部63aは外皮把持部50と略等しい径を有し、保持部格納凹部63bは保持部70と略等しい径を有し、挿通空間63cは被覆付光ファイバ11の被覆14と略等しい径を有しており、各部材の位置が規制されて格納されている。なお、保持部70は複数の支持部71を含み、それぞれ前後方向に所定の間隔を隔てて設けられている。
【0027】
光コネクタ1の後方から挿入された被覆付光ファイバ11は、後方孔部63、撓み空間62、前方孔部61を連通し、短尺光ファイバ12と突き合わせ位置にて突き合わされている。この時、被覆付光ファイバ11は図1に示すように、撓み空間62で撓んだ状態で挿入されているので、被覆付光ファイバ11に弾性復元力が作用してその先端は短尺光ファイバ12側に押圧されている。したがって短尺光ファイバ12とコアファイバ13の接続状態が安定して維持されている。なお、この突き合わせ位置には、屈折率整合グリス68が塗布されていることが好ましい。
【0028】
また、本実施形態では突き合わせ位置と撓み空間62との間に被覆除去部64が形成されている。この被覆除去部64は、被覆付光ファイバ11の光コネクタ1への挿入時に負荷される挿入力によって、被覆付光ファイバ11の先端から被覆14を除去するものである。また、被覆除去部64の周囲は除去された被覆14を収容できる除去被覆収容空間67が形成されている。
【0029】
<被覆除去メカニズム>
被覆付光ファイバ11の光コネクタ1への接続手順を説明する前に、被覆14の除去メカニズムについて説明する。図2は被覆付光ファイバの断面図である。
【0030】
被覆付光ファイバ11は、例えば、中心に外径d3=125μmのコアファイバ13を有し、その外周を覆うように外径d1=250μmの被覆14が設けられている。コアファイバ13は、コアと1層以上のクラッドを有するガラスファイバであり、シングルモードファイバやマルチモードファイバ等、如何なる屈折率分布を有するガラスファイバも適用可能である。
【0031】
被覆14は、その最内層に設けられてコアファイバ13に接する外径d2の第1被覆層であるゼリー体等からなるプライマリ15と、プライマリ15の外側を覆う第2被覆層であるセカンダリ(外被)16とを有しているが、これに限らず、1層或いは2層以上の構成であっても良い。セカンダリ16の最外層には着色層17が設けられていても良い。
【0032】
被覆14を構成する樹脂は、ウレタンアクリレート等の紫外線硬化型樹脂であり、添加物により適宜弾性率等の物性が設定されている。例えば、コアファイバ13に接するプライマリ15は、セカンダリ16より低い弾性率(すなわち軟質)とされている。
【0033】
プライマリ15の密着度は、セカンダリ16よりも、コアファイバ13に対する方が小さく設定(コアファイバ<セカンダリ)されている。つまり、被覆14は、コアファイバ13から剥離し易くなっている。また、被覆付光ファイバ11を構成する各部材のヤング率は、荷重支持体のコアファイバ13が最も大きく、次いでセカンダリ16、プライマリ15の順で小さくなるように設定されている(プライマリ<セカンダリ<コアファイバ)。したがって、被覆付光ファイバ11は、切断端面を加圧することにより、プライマリ15を介して被覆14が剥離・破壊される。
【0034】
図3は被覆除去部64における被覆除去状況を表した拡大断面図である。
被覆除去部64は、被覆付光ファイバ11の切断端面(先端面)11aを押し付けることにより、コアファイバ13の先端から被覆14を剥離させて除去するよう働く。前方孔部61の内径dは、コアファイバ13の直径d3よりも大きく、被覆14の外径d1よりも小さく設定されている。また、被覆除去部64は、前方孔部61の外周を後方に突出させた錐形状に形成されている。これにより、被覆付光ファイバ11の切断端面を被覆除去部64に押し付けると、被覆除去部64の前方孔部61の周囲が被覆14の切断端面に当接するとともに、コアファイバ13には当接しないことになる。
【0035】
このような構成により、被覆付光ファイバ11をコネクタ本体60に挿入する際に、被覆付光ファイバ11の先端に挿入方向の圧縮応力を作用させることができ、被覆付光ファイバ11の挿入と同時に被覆14を除去することができる。被覆14が除去されたコアファイバ13の前端は前方孔部61に進入し、図1に示すように短尺光ファイバ12の後端に当接する。すなわち、前方孔部61内で短尺光ファイバ12と被覆除去されたコアファイバ13とが光接続される。
【0036】
光コネクタ1は、このように被覆付光ファイバ11の挿入と同時に被覆14を除去できるので、現場での作業が簡易になる。また、被覆除去部64を錐形状とすることで、被覆除去を容易にするとともに剥がされた被覆14が外側へ移動しやすいようになされている。
【0037】
なお、上述の説明では被覆除去部64をコネクタ本体60に設けた例を示したが、フェルール20の後端に設けてもよいことはもちろんである。
【0038】
<接続手順>
次に、被覆付光ファイバ11を光コネクタ1に接続する手順について図4から図7を参照して説明する。図4は被覆付光ファイバ11の被覆除去前の光コネクタ1の断面図、図5は予備撓み11A形成時の光コネクタ1の断面図、図6は圧縮前の保持部70を示す図、図7は圧縮後の保持部70を示す図である。
【0039】
まず、図4に示すように、コネクタ本体60のフェルール保持凹部31に短尺光ファイバ12が挿入されたフェルール20を固定する。また、短尺光ファイバ12はフェルール20から所定長導出させておき、この余長部分をコネクタ本体60の前方孔部61に挿入する。また、短尺光ファイバ12の挿入先端(後端)には屈折率整合グリス68を塗布しておく。
【0040】
また、被覆付光ファイバ11の外皮18を把持するように、被覆付光ファイバ11に外皮把持部50を取り付ける。このとき、外皮18が除去された部分が所定長だけ外皮把持部50から突出するように、被覆付光ファイバ11に外皮把持部50を取り付ける。
【0041】
外皮把持部50を把持しながら、後方からコネクタ本体60の後方孔部63内に被覆付光ファイバ11を挿入する。後方孔部63内に挿入された被覆付光ファイバ11は、後方孔部63の保持部格納凹部63b内に配置された保持部70及び撓み空間62に挿通され、更にその先端面11aが被覆除去部64に到達するまでコネクタ本体60に挿入される。
【0042】
なお、この被覆付光ファイバ11の挿入時には、撓み空間62内に撓み規制部材85を配置しておく。この撓み規制部材85は撓み空間62を閉塞する部材であり、前後方向に延びる予備たわみ形成用の小孔85aを備えている。
【0043】
被覆付光ファイバ11の先端面11aが被覆除去部64に当接したら、更に被覆付光ファイバ11を強く前方に押し込み、先端面11aから被覆14を除去しながら更に前方に挿入し、更に保持部70の長手方向長さを圧縮させながら被覆付光ファイバ11の挿入を続ける。
【0044】
このとき、前後方向に所定の間隔を隔てて設けられている複数の支持部71は、被覆除去部64側に移動可能であり、被覆除去動作とともにこの間隔が詰められる。そして、被覆付光ファイバ11が撓まないように、その前後方向に沿った複数箇所を支持する。すると、図5に示すように、被覆14が除去された被覆付光ファイバ11のうち、コアファイバ13のみが前方孔部61に挿入されて短尺光ファイバ12と光接続されるとともに、剥がされた被覆14は除去被覆収容空間67に収容される。
【0045】
コアファイバ13の先端が短尺光ファイバ12の後端に当接した後、更に被覆付光ファイバ11を前方に押し込むことで、撓み規制部材85の小孔85aから被覆付光ファイバ11を外側に撓ませ、撓み空間62内に予備撓み11Aを形成する。
【0046】
この後、撓み規制部材85を引き抜き、被覆付光ファイバ11の撓み状態を緩和させて、図1に示すように被覆付光ファイバ11及び短尺光ファイバ12の光コネクタ1への接続が完了する。
【0047】
このように、光コネクタ1への接続状態において被覆付光ファイバ11は適度に撓んでいるため、被覆付光ファイバ11は常に短尺光ファイバ12側へ押圧されており被覆付光ファイバ11及び短尺光ファイバ12間の信号のロスが少なく、かつ、撓み状態が緩和されているので被覆付光ファイバ11の屈曲状態に起因する光信号の伝送ロスがない。したがって光の伝送効率に優れた光コネクタ1を提供することができる。
【0048】
<保持部の構造>
次に、保持部70の構造について図6及び図7を用いて説明する。図6(a)は保持部70の斜視図であり、図6(b)は保持部70の側面図、図6(c)は保持部70の長手方向に沿った断面図である。また、図7の(a)から(c)は保持部70の全長が縮められた状態を示す図6の(a)から(c)に対応する図である。
【0049】
保持部70は、複数(図示の例では3個)の単位ユニット70a,70b,70cから構成されている。各単位ユニット70a〜70cは、支持部71a,71b,71cと、連結部72a,72b,72cと、連結突起(係合部)73a,73b,73cとを備えている。本実施形態では、各単位ユニット70a〜70cは同一プロセスで作成可能なように同一形状に形成されており、保持部70の製造コストが低減されている。
【0050】
なお各単位ユニット70a〜70cは互いに同一形状であるから、以降の説明では、特にどの単位ユニット70a〜70cの部位であるかを区別しない場合には、支持部71a,71b,71c、連結部72a,72b,72cと、連結突起73a,73b,73cを、単に支持部71、連結部72、連結突起73と呼ぶ。また、以下の説明では便宜的に、被覆付光ファイバ11の挿入方向を前方と呼ぶ。
【0051】
単位ユニット70a〜70cは樹脂によりそれぞれ一体成形された部材であり、それぞれの単位ユニット70a〜70cが支持部71、連結部72、連結突起73とを一体的に備えている。
【0052】
支持部71は略円筒形の部材であり、内部に被覆付き光ファイバ11を支持する支持孔77a,77b,77cが前後方向に貫通して形成されている。また、各単位ユニット70a〜70cの支持孔77a〜77cはその中心軸が互いに一致するようにされている。これにより、図6の(c)に示すように単位ユニット70a〜70cが互いに離間された状態でも、被覆付光ファイバ11は支持孔77a〜77cに挿通されやすくされている。
【0053】
また、支持孔77が被覆付光ファイバ11の外周を面接触で支持することにより、被覆除去時等に被覆付光ファイバ11に外力が加えられた時でも被覆付光ファイバ11が屈曲することを防止する。被覆付光ファイバ11の屈曲を防止するため、十分な硬度を有する樹脂により保持部70を成形することが好ましい。
【0054】
また、図6の(c)に示すように、支持孔77a〜77cの後端には後方に向かって拡径するテーパ部78a〜78cが形成されている。これにより、支持孔77a〜77cに被覆付光ファイバ11を後方から挿入する場合の作業性が高められている。
【0055】
支持部71の後端には、一対の連結突起73が設けられている。この連結突起73は径方向外側に向かって突出する突起であり、後方に突出した周方向に対称な2箇所に形成されている。
【0056】
また、支持部71の外周には、支持部71より大径に形成された連結部72が前方に延出するように設けられている。この連結部72の前方には、単位ユニット70の連結突起73に対応する位置に連結穴(被係合部)74が設けられている。また、この連結穴74は後方に切り欠きが設けられている。また、連結部72の前端76の形状は後端75の形状と一致するように形成されている。
【0057】
また、連結部72の外周面Sは、コネクタ本体60の保持部格納凹部63bの内壁に摺接するガイド面とされている。これにより、保持部70は保持部格納凹部63b内に沿って案内され、前方(被覆除去部64側)へ移動可能とされている。
【0058】
以上のように構成された保持部70は、図6の(a)に示したようにそれぞれの単位ユニット70a〜70cの間隔が開けられて保持部70の全長(前端の単位ユニットから後端の単位ユニットまでの前後方向長さ)が長い状態から、図7の(a)に示したようにそれぞれの単位ユニット70a〜70cの間隔が狭められて保持部70の全長が短い状態へと、圧縮することができる。
【0059】
図6の(b)に示したように、前後方向に並んだ単位ユニット70a〜70cのうち、後方に位置する単位ユニット70の連結穴74が前方に位置する単位ユニット70a〜70cの連結突起73に係合することにより、保持部70の全長が長い状態が維持されている。例えば、図6(b)に示すように、後方に位置する単位ユニット70bの連結穴74bが前方に位置する単位ユニット70aの連結突起73aに係合することにより、単位ユニット70a,70bは所定距離Lだけ離間した状態に維持されている。また、この単位ユニット70a〜70cの離間間隔Lは、連結突起73と連結穴74の相対位置を調節することにより、自在に設定することができる。
【0060】
図6の(b)で示した状態から、前後方向に圧縮するように保持部70に外力を加えると、図7の(b)で示すように保持部70は圧縮される。具体的には、保持部70に前後方向の圧縮力が作用され、連結穴74の後方の切り欠きから連結突起73が離脱し、連結部72は連結突起73を乗り越えて、単位ユニット70a〜70c同士が近接するように移動する。更に、連結部72の前端76が前方に位置する連結部72の後端75に接するまで、単位ユニット70a〜70cは近接移動する。
【0061】
このとき、連結部72の前端76の形状は後端75の形状と一致されているので、単位ユニット70a〜70cは互いに隙間なく密着するまでその間隔が詰められる。これにより、保持部70の全長を短くすることができる。
【0062】
例えば、保持部70に前後方向の圧縮力が作用すると、単位ユニット70aの連結突起73aは、単位ユニット70aの後方に位置する単位ユニット70bの連結穴74bの後方の切り欠きから離脱する。すると、単位ユニット70a,70bは互いに接近するように移動し、単位ユニット70bの連結部72bの前端76bが単位ユニット70aの連結部72aの後端75aに当接し、移動が規制される。このようにして単位ユニット70a,70b間の間隔が詰められ、保持部70全体が圧縮される。
【0063】
<被覆除去時における保持部70の動作>
次に、保持部70の動作を被覆除去動作に合わせて説明する。
上述のように構成される保持部70は、長手方向長さを圧縮可能な状態で、後方孔部63の保持部格納凹部63b内に配置されている。
【0064】
上述したように、保持部70は複数の単位ユニット70a〜70cから構成されており、それぞれ前後方向に所定の間隔Lを隔てて設けられた複数の支持部71を備えている。そして、これらの複数の支持部71は、被覆除去動作とともに互いの間隔を詰めるように被覆除去部64側に移動する。これにより、被覆付光ファイバ11が撓まないように、保持部70は被覆付き光ファイバ11の前後方向に沿った複数箇所を支持する。以下に、被覆除去動作に伴う保持部70の動作を詳細に説明する。
【0065】
まず、各単位ユニット70a〜70cの支持部71間の間隔を開けた状態で、保持部70に被覆付光ファイバ11を挿入する前に、保持部70を後方孔部63の保持部格納凹部63b内に配置しておく。上述したように保持部70は、隣り合う支持部71が連結突起73及び連結穴74の係合により連結されており、この係合によって支持部71間の所定間隔Lが維持されている。このため、所定間隔Lを維持したまま各単位ユニット70a〜70cを保持部格納凹部63b内に容易に配置することができる。
【0066】
次に、被覆付光ファイバ11をコネクタ本体60に挿入する。被覆付光ファイバ11を各単位ユニット70a〜70cの支持孔77に挿通した後、更に挿入すると、外皮把持部50の前端部が保持部70の後端部に当接する。このとき、保持部70の前端部が、保持部格納凹部63bと挿通空間63cとの間に形成される段差部63dに当接するまでは、保持部70に圧縮応力が作用しない。したがって、支持部71間の所定間隔Lが維持されたまま保持部70は保持部格納凹部63b内を前方に移動する。
【0067】
被覆付光ファイバ11を更にコネクタ本体60に挿入すると、被覆付光ファイバ11と共に保持部70も前進し、保持部70の前端面が段差部63dに当接する。更に被覆付光ファイバ11をコネクタ本体60に挿入していくと、被覆付光ファイバ11の先端面11aが被覆除去部64に当接し、被覆14の除去が開始される。
【0068】
被覆付光ファイバ11の被覆除去時には、被覆付光ファイバ11には光軸方向(前後方向)に圧縮応力が作用する。したがって、被覆付光ファイバ11の側方に空間が形成された撓み空間62及び後方孔部63で被覆付光ファイバ11が撓んでしまう虞がある。被覆除去前に被覆付光ファイバ11が撓んでしまうと、被覆付光ファイバ11の先端面11aに大きな圧力をかけることができず、被覆14を除去できないので、被覆除去前に被覆付光ファイバ11が撓むことを防止する必要がある。そこで、撓み空間62内には、上述したように、予め撓み規制部材85が挿入されており、撓み空間62内で被覆付光ファイバ11が撓む虞がない。
【0069】
また、後方孔部63内では、被覆付光ファイバ11のうち撓む虞のある後方孔部63内に位置する領域は、被覆14の除去時に被覆付光ファイバ11の該領域が撓まないように、被覆付光ファイバ11の光軸方向(前後方向)に沿った複数箇所が保持部70の支持部71によって支持されている。
【0070】
一般に、被覆付光ファイバ11のような長尺部材において、長尺部材の撓みの発生は、長尺部材の外周面が拘束されていない部分の長さと圧縮応力の大きさと相関している。すなわち、拘束されていない部分の長さが長いほど小さい圧縮応力でも撓みが発生する一方、拘束されていない部分の長さが短いほど大きい圧縮応力でも撓みが発生しにくい。
【0071】
そこで、本実施形態では、撓む虞のある後方孔部63内に位置する被覆付光ファイバ11に、前後方向に沿った複数箇所を支持する支持部71を備える保持部70を設けている。つまり、撓む虞のある後方孔部63内に位置する被覆付光ファイバ11は、個々の支持部71によって短く分割されて支持され、後方孔部63内に位置する被覆付光ファイバ11の拘束されていない部分の長さが、個々の支持部71の間の間隔とされている。したがって、大きな圧縮応力が作用しても、被覆付光ファイバ11を撓みにくくされている。
【0072】
更に、被覆付光ファイバ11の被覆除去が進む際には、保持部70の前端部と後端部がそれぞれ、外皮把持部50の前端面及び段差部63dに当接されているので、保持部70には前後方向に圧縮力が作用する。保持部70に圧縮力が作用すると、図7(a)〜7(c)に示すように、支持部71の連結突起73が連結部の連結穴74から離脱し、所定間隔Lを開けた状態に維持されていた支持部71は互いに近接可能となる。そこで、単位ユニット70a〜70cの連結部72の前端76および後端75が互いに近接するように移動し、互いの支持部71の間隔が狭められる。このとき、連結突起73が連結部72を乗り越えて移動できるように、連結部72はある程度の弾性を有することが好ましい。
【0073】
このように、被覆14の除去動作とともに支持部71の間隔Lが狭まるので、被覆の除去が進展しても、被覆付光ファイバ11が後方孔部63内で撓む虞がない。したがって、確実に所望の長さまで被覆付光ファイバ11が撓むことなく被覆14を除去することができる。
【0074】
換言すれば、本実施形態において、被覆付光ファイバ11は、前後方向に離間した複数箇所が支持部71で支持されながら被覆付光ファイバ11の先端面11aが被覆除去部64に押し当てられ、被覆14の除去が開始される。さらに、各々の支持部71の間隔を詰めると共に被覆付光ファイバ11の被覆14を除去しながら、被覆付光ファイバ11の先端面11aを前方孔部61中の突き当て位置(屈折率整合グリス68の塗布位置)まで到達させる。これにより、撓むことなく被覆付光ファイバ11を光コネクタ1に接続することができる。
【0075】
また、本実施形態に係る光コネクタ1においては、被覆除去長さは支持部71の間隔Lで設定することができる。この間隔Lは、保持部70の支持部71及び連結部72からなるユニット70a〜70cの個数を増減させることにより、あるいは、連結部72の長さを変えるなどして連結突起73と連結穴74の相対位置を変えることにより、変更することができる。具体的には、支持部71の前後方向における間隔Lの合計が、被覆付光ファイバ11の被覆除去長さよりも大きく設定することにより、撓みを防止しつつ所定長さに亘って被覆14を確実に除去することができる。
【0076】
また本実施形態に係る保持部70は、それぞれの単位ユニット70a〜70cが連結突起73及び連結穴74を備え、この連結突起73及び連結穴74の係合により隣接する単位ユニット70a〜70cが互いに連結されている。このため、単位ユニット70a〜70cの個数を増減させることにより、容易に必要な長さの保持部70を用意することができる。
【0077】
また、この単位ユニット70a〜70cは互いに連結突起73の連結穴74との係合により接続され、保持部70として一体化されている。このため、コネクタ本体60を組み立てる際に、一体化された保持部70を保持部格納凹部63bに挿入するので、組立作業が簡便である。
【0078】
また、本実施形態に係る光コネクタ1においては、保持部70の連結部72の前端76が前方に突出した形状に形成され、連結部72の後端75は前端76に沿った形状に形成されている。これにより、単位ユニット70a〜70cは光軸周りに回転することなく互いに接近する方向に移動する。したがって、保持部70を圧縮する際に被覆付光ファイバ11に捩れるような力が作用した場合でも、保持部70は光軸周りに回転することがない。したがって、確実に被覆付光ファイバ11の先端面11aを短尺光ファイバ12に押し付けることができる。
【0079】
このように、被覆付光ファイバ11の先端に挿入方向の圧縮応力を確実に作用させることができるので、被覆付光ファイバ11の挿入と同時に被覆14を確実に除去することができる。
【0080】
なお上述の実施形態では、各単位ユニット70a〜70cを同一形状とし、各単位ユニット70a〜70cの間隔Lを同一に設定したが、各単位ユニット70a〜70cの形状を異ならせて互いの間隔Lを異ならせても良い。
【0081】
<第2実施形態>
以上の第1実施形態では、コネクタ本体60の後端に保持部70を設け、被覆除去時に外皮把持部50の前端部で保持部70に圧縮力を作用させて、保持部70の支持部71の間隔を詰める例を示したが、本発明はこの例に限られない。
【0082】
図8は本発明の第2実施形態に係る光コネクタ100を示す図4と同様の図である。第2実施形態に係る光コネクタ100は、保持部70の後方に、前後方向に延在して被覆付光ファイバ11の被覆14の外周面Sを拘束する拘束部材80を設けた点が上述の第1実施形態と異なる他は、第1実施形態の光コネクタ1と同様である。
【0083】
拘束部材80は前後方向に延在する略円筒状の部材であり、内周面81の内径は被覆付光ファイバ11と同じか僅かに大きく、被覆付光ファイバ11を挿入可能とされている。拘束部材80内に挿入された被覆付光ファイバ11には、圧縮応力が作用してもその外周が拘束部材80の内周面81で拘束されているため、撓む虞がない。
【0084】
また、拘束部材80の外周面82の外径は後方孔部63の保持部格納凹部63bよりも小さく設定されている。したがって、拘束部材80は、外周面82が保持部格納凹部63bの内壁に案内され、保持部格納凹部63b内を前後方向に移動可能とされている。
【0085】
第2実施形態に係る光コネクタ100では、被覆付光ファイバ11の被覆除去時に、拘束部材80により保持部70を圧縮させて支持部71の間隔を詰めることができる。このように、拘束部材80を用いると、段差部63dと外皮把持部50の前端との間の撓む虞のある被覆付光ファイバ11の全ての領域を保持部70で保護する必要がないので、保持部70を構成するユニット70a〜70cの個数を抑えることができる。
【0086】
なお、拘束部材80は外皮把持部50と一体的に設けてもよいし、保持部70の後部と一体的に形成してもよい。また、図示するように外皮把持部50や保持部70とは別体で形成してもよい。また、図8に示した例では拘束部材80は保持部70より後方に設けた例を示して説明したが、図9のように拘束部材80を保持部70より前方に設けても良いことはもちろんである。
【0087】
<第3実施形態>
上述の第1,2実施形態では、支持部71同士が連結部72で連結された保持部70を備えた光コネクタ1,100を例に挙げて説明したが、本発明はこの例に限られない。
【0088】
図10に示す本発明の第3実施形態に係る光コネクタ200では、保持部として前後方向に収縮可能な弾性部材であるマイクロスプリング170を採用している。マイクロスプリング170は、円筒状のコイルスプリングであり、その内周面で被覆付光ファイバ11を支持可能とされている。また、マイクロスプリングの外寸法は、被覆付光ファイバ11の被覆14の外周面と保持部格納凹部63bの内周面との間に収まる大きさに設定される。
【0089】
このように、保持部としてマイクロスプリング170を採用した第3実施形態に係る光コネクタ200においても、マイクロスプリング170の内周面が被覆付光ファイバ11の被覆14を支持する支持部として機能し、被覆除去時に被覆付光ファイバ11が撓むことを防止することができる。本実施形態においても、被覆付光ファイバ11の被覆14との接触部位である支持部としてのマイクロスプリング170の内周面は、図10に示すように、所定の断面方向から観察した場合において、複数の点で被覆付光ファイバ11の被覆14を所定間隔を隔てて支持している。さらに、この複数の支持部であるマイクロスプリング170の内周面は被覆除去部側に移動可能とされており、また、被覆付き光ファイバの被覆除去動作とともに前記所定間隔が詰められるよう構成されており、被覆除去時に被覆付き光ファイバがたわまないように前後方向に沿った複数箇所を支持する。本実施形態の光コネクタ200においては、汎用のマイクロスプリングを採用することができるので、低コストで光コネクタ200を提供することができる。
【0090】
<第4実施形態>
上述の第1〜3実施形態では、コネクタ本体60とは別体の保持部70,170を例に挙げて説明したが、本発明はこの例に限られない。
【0091】
図11に示す本発明の第3実施形態に係る光コネクタ300は、保持部270がコネクタ本体60と一体的に形成されている。具体的には、保持部270の支持部は、前後方向の厚みが小さく、後方孔部63内に径方向内側に突出する突起部271として形成されている。なお、突起部271の高さは被覆付光ファイバ11の外周面を支持可能な高さに設定されている。
【0092】
また、複数の突起部271は、被覆付光ファイバ11を挿通可能な支持孔を備え、突起部271における被覆除去部64側と反対側には、当該方向に向かって拡径したテーパ部が形成されているのが好ましい。これにより、互いに間隔を隔てて配置された支持孔に被覆付光ファイバ11を後方から挿入する場合にも、光ファイバが支持孔から外れることなく、作業性がよい。
【0093】
前後方向の厚みが小さく形成されていることにより、被覆付光ファイバ11の被覆除去時に、拘束部材80の先端面により突起部271が押圧されると、突起部271がコネクタ本体60から剥離して離脱する。このように離脱した突起部271が拘束部材80と共に前方に移動することにより、突起部271間の間隔を狭めるように構成することができる。
【0094】
このように突起部271をコネクタ本体60と一体的に形成しても、突起部271は被覆付光ファイバ11の前後方向に沿った複数箇所を支持するので、被覆除去時に被覆付光ファイバ11に圧縮応力が作用しても撓む虞がなく、確実に被覆を除去することができる。
【0095】
なお、図11に示した例では突起部271の前後方向の厚みを小さく形成した光コネクタ300を示したが、図12に示すように、被覆付光ファイバ11の被覆14の光軸方向に沿ってある程度の長さを支持する支持部271aと、支持部271aとコネクタ本体60との接続部に接続強度の弱い脆弱部272aとを備えた保持部270aを備えた光コネクタ300としてもよい。このような構成によれば、被覆付光ファイバ11を安定して支持して確実に撓みを防止するとともに、過大な力を付加することなく脆弱部272aをコネクタ本体60から離脱させることができる。
【0096】
また、本実施形態に係る光コネクタ300においては、被覆除去動作に伴って脆弱部272aがコネクタ本体60から離脱するため、保持部270が圧縮された状態では、保持部270には圧縮力に抗う反力が生じない。したがって、被覆除去後に保持部270は被覆付光ファイバ11を後方に押圧する力が作用しないため、被覆除去後に被覆付光ファイバ11の先端面11aが短尺光ファイバ12に押し付けられた状態を安定的に維持することができる。
【0097】
以上、本発明をその実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態に多様な変更または改良を加えることができることは、当業者にとって明らかである。
【0098】
例えば、上述の例では被覆付光ファイバ11を、光学部材としての短尺光ファイバ12と光接続する態様を例に挙げて説明したが、被覆付光ファイバ11を光学レンズ等の光学部材、あるいは光電変換素子等の光電子部品等と光接続するように構成してもよいことはもちろんである。この場合には、コネクタ本体60の前方に短尺光ファイバ12を保持するフェルール20を設ける必要がなく、コネクタ本体60の先端面に直接光学レンズや光電変換素子等を取り付けることもできる。
【符号の説明】
【0099】
1,100,200,300,300a:光コネクタ、11:被覆付光ファイバ、11a:先端面、12:短尺光ファイバ、13:コアファイバ、14:被覆、18:外皮、20:フェルール、50:外皮把持部、60:コネクタ本体、61:前方孔部、62:撓み空間、63:後方孔部、63a:外皮把持部格納凹部、63b:保持部格納凹部、63c:挿通空間、63d:段差部、64:被覆除去部、67:除去被覆収容空間、68:屈折率整合グリス、70:保持部、70a〜70c:単位ユニット、71(71a〜71c):支持部、72(72a〜72c):連結部、73(73a〜73c):連結突起(係合部)、74(74a〜74c):連結穴(被係合部)、75:後端、76:前端、77:支持孔、78:テーパ部、S:ガイド面(外周面)、85:撓み規制部材、85a:小孔、100:光コネクタ、165:把持部固定凹部、166:保護部格納凹部、167:テーパ部、170:被覆把持部、171:把持部、172:保護部、172a:保護部ファイバ挿入溝、173:蓋部、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆付光ファイバと光学部材とを接続する光接続部品であって、
前記被覆付光ファイバの先端面を当接させることにより、前記被覆付光ファイバの先端面から被覆を除去可能な被覆除去部と、
前記被覆除去部より前方に設けられ、前記被覆付光ファイバが前記光学部材と付き合わされる前方孔部と、
前記被覆除去部より後方に設けられた後方孔部と、
前記後方孔部内に前後方向に間隔を隔てて設けられて前記被覆付光ファイバの外周面を支持する複数の支持部を有する保持部と、を備え、
複数の前記支持部は前記被覆除去部側に移動可能であることを特徴とする光接続部品。
【請求項2】
複数の前記支持部は前記被覆付光ファイバが挿通可能な支持孔を備え、
前記支持孔の後端には後方に向かって拡径するテーパ部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光接続部品。
【請求項3】
前記保持部は、隣り合う前記支持部を連結する係合部と被係合部とを有し、
前記係合部が隣り合う前記支持部の前記被係合部と係合することにより、複数の前記支持部間の所定間隔が維持されることを特徴とする請求項1または2に記載の光接続部品。
【請求項4】
前記保持部は、それぞれ係合部と被係合部を備えた複数の単位ユニットを有し、
隣接する前記単位ユニットの前記係合部と前記被係合部とが係合することにより、複数の前記単位ユニットが互いに連結されていることを特徴とする請求項1または2に記載の光接続部品。
【請求項5】
前記保持部は、前記後方孔部の内壁にガイドされるガイド面を備え、
前記ガイド面が前記後方孔部の内壁にガイドされることにより、複数の前記支持部の前記支持孔は互いの中心軸が一致されることを特徴とする請求項2から4のいずれか一項に記載の光接続部品。
【請求項6】
前記支持部の前後方向における間隔の合計が、前記被覆付光ファイバの被覆除去長さよりも大きいことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の光接続部品。
【請求項7】
前記後方孔部内に、前後方向に延在して前記被覆付光ファイバの前記外周面を拘束する拘束部が設けられていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の光接続部品。
【請求項8】
前記拘束部は前後方向に移動可能に前記後方孔部内に配置され、
前記保持部は前記拘束部より前方に設けられていることを特徴とする請求項7に記載の光接続部品。
【請求項9】
前記拘束部は前記後方孔部内に固定され、
前記保持部は前記拘束部より後方に設けられていることを特徴とする請求項8に記載の光接続部品。
【請求項10】
前記保持部は前記後方孔部と一体に設けられており、前記支持部は、前記後方孔部の内壁から径方向に突出する突起部であることを特徴とする請求項2に記載の光接続部品。
【請求項11】
前記保持部は前後方向に収縮可能な弾性部材で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の光接続部品。
【請求項12】
被覆付光ファイバの被覆を除去可能な被覆除去部と、被覆除去部の前後に貫通形成された前方孔部及び後方孔部と、前記後方孔部内に配置され前記被覆付光ファイバの外周面を支持する複数の支持部を有する保持部と、を備えた光接続部品への被覆付光ファイバの接続方法であって、
前記被覆付光ファイバの先端面が前記被覆除去部に当接するまで前記被覆付光ファイバを前記後方孔部へ挿入し、
前記被覆付光ファイバが撓まないように、前後方向に離間した複数箇所を前記支持部で支持しながら、前記被覆付光ファイバの前記先端面を前記被覆除去部に押し当てて被覆の除去を開始し、
前記支持部の間隔を詰めるとともに前記被覆付光ファイバの前記被覆を除去しながら、前記被覆付光ファイバの前記先端面を前記前方孔部中の所定位置に到達させることを特徴とする光接続部品への被覆付光ファイバの接続方法。
【請求項13】
前記被覆付光ファイバを前記後方孔部へ挿入する前に、前記被覆付光ファイバの最外層に設けられた外皮を把持する外皮把持部を前記被覆付光ファイバに取り付け、
前記被覆の除去時に、前記外皮把持部を前記保持部に当接させて前記支持部の間隔を詰めることを特徴とする請求項12に記載の光接続部品への被覆付光ファイバの接続方法。
【請求項14】
前記保持部は、複数の前記支持部を互いに連結する係合部と被係合部とを有し、
前記係合部と前記被係合部が係合されることにより、複数の前記支持部は前後方向に間隔を開けた状態が維持され、
前記外皮把持部を前記保持部に当接させて押し込むことにより、前記係合部と前記被係合部の係合を解除し、複数の前記支持部の間隔を詰めることを特徴とする請求項13に記載の光接続部品への被覆付光ファイバの接続方法。
【請求項15】
前記支持部の間隔の合計が前記被覆付光ファイバの被覆除去長さよりも大きくなるように、複数の前記把持部を配列することを特徴とする請求項12から14のいずれか一項に記載の光接続部品への被覆付光ファイバの接続方法。
【請求項16】
前記後方孔部内には、複数の前記保持部より後方に前後方向に延在して前記被覆付光ファイバの外周面を拘束する拘束部が設けられており、
前記被覆の除去時に、前記拘束部を前記保持部に当接させて前記支持部の間隔を詰めることを特徴とする請求項12から14のいずれか一項に記載の光接続部品への被覆付光ファイバの接続方法。
【請求項17】
前記後方孔部内の複数の前記保持部より後方に、前後方向に延在して前記被覆付光ファイバの外周面を拘束する拘束部を設け、
前記被覆付光ファイバを前記後方孔部へ挿入する前に、前記被覆付光ファイバの最外層に設けられた外皮を把持する外皮把持部を前記被覆付光ファイバに取り付け、
前記被覆の除去時に、前記被覆付光ファイバと共に前記外皮把持部及び前記拘束部を前方に移動させ、前記拘束部を前記保持部に当接させて前記保持部の間隔を詰めることを特徴とする請求項12から14のいずれか一項に記載の光接続部品への被覆付光ファイバの接続方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−68680(P2013−68680A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205357(P2011−205357)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(000231936)日本通信電材株式会社 (98)
【出願人】(000110309)SEIオプティフロンティア株式会社 (80)
【出願人】(000183130)住電オプコム株式会社 (9)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】