内燃機関の排気浄化装置
【課題】排気系に燃料を供給することによって排気浄化ユニットに排気成分除去動作を行わせるに際し、排気系での未燃燃料の発生量を抑制しながらも十分な排気成分除去を可能にする内燃機関の排気浄化装置を提供する。
【解決手段】触媒床温及び排気ガス流量から、排気中に白煙を発生させないための白煙限界A/F値を求める。この白煙限界A/F値から、筒内噴射量及び燃料添加弁からの添加燃料量の和である総燃料量を求め、この総燃料量から筒内噴射量を減算することによりA/F制限添加量を求める。エンジン回転数及び筒内噴射量から求められた必要添加量と上記A/F制限添加量とを比較し、そのうち少ない方の量を所定時間毎に積算していき、その積算値が所定の基準添加量に達した時点で燃料添加弁12からの燃料添加を許可する。
【解決手段】触媒床温及び排気ガス流量から、排気中に白煙を発生させないための白煙限界A/F値を求める。この白煙限界A/F値から、筒内噴射量及び燃料添加弁からの添加燃料量の和である総燃料量を求め、この総燃料量から筒内噴射量を減算することによりA/F制限添加量を求める。エンジン回転数及び筒内噴射量から求められた必要添加量と上記A/F制限添加量とを比較し、そのうち少ない方の量を所定時間毎に積算していき、その積算値が所定の基準添加量に達した時点で燃料添加弁12からの燃料添加を許可する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用ディーゼルエンジン等の内燃機関に搭載される排気浄化装置に係る。特に、本発明は、排気系に備えられた排気浄化ユニット(フィルタや触媒)に対して昇温用の燃料を供給する際における燃料供給量の適正化を図るための改良に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等に搭載されるディーゼルエンジン(以下、単に「エンジン」という場合もある)を駆動した際に排出される排気ガス中には、そのまま大気中に排出することが好ましくない物質が含まれている。特に、カーボンを主成分とする粒子状物質(以下、PM(Paticulate Matter)という)は大気汚染の原因になる。
【0003】
上記PMが大気中に排出されることを阻止する装置として、ディーゼルエンジンの排気通路に配設されるパティキュレートフィルタ(以下、単に「フィルタ」と呼ぶ)が知られている。つまり、排気通路を通過する排気ガス中に含まれるPMをこのフィルタによって捕集することで排気ガスの浄化を図っている。
【0004】
このフィルタとしては、例えばDPF(Diesel Particulate Filter)や、DPNR(Diesel Particulate−NOx Reduction system)触媒が知られている。
【0005】
ところで、この種のフィルタを用いてPMの捕集を行う場合、捕集したPMの堆積量が増大するとフィルタの詰まりが生じてしまう。このフィルタの詰まりが生じた状況では、フィルタを通過する排気ガスの圧力損失が著しく増大し、それに伴うエンジンの排気背圧増大によってエンジン出力の低下や燃料消費率の悪化を招いてしまうことになる。
【0006】
このような課題を解消するため、従来より、フィルタに捕集されたPMの捕集量(堆積量)がある程度の量に達した際には、排気温度を上昇させる等の手法によりフィルタ温度を高温化することで、堆積しているPMを酸化(燃焼)させて除去するフィルタ再生動作を行うようにしている(例えば下記の特許文献1及び特許文献2を参照)。
【0007】
このフィルタ再生動作の具体例としては、排気系に燃料添加弁を設けて燃料(添加剤)を供給するものや、インジェクタからの主燃料噴射(メイン噴射)後に少量の燃料を副次的に噴射(ポスト噴射)するものが挙げられる。このような排気系への燃料供給により、フィルタ上流側(排気ガス流れの上流側)に配設された酸化触媒(CCO)での反応温度が上昇し、これによって排気温度が上昇することにより、フィルタに堆積したPMを酸化(燃焼)させることができる。
【0008】
また、排気ガス中に含まれる大気汚染物質としては上記PMの他にNOxも挙げられる。このNOxに対しては、例えばNOx吸蔵還元触媒によって吸蔵することで大気中への放出を防止している。
【0009】
このNOx吸蔵還元触媒は、排気空燃比(A/F)がリーンである場合、つまり周囲の雰囲気が高酸素濃度状態である場合には排気ガス中のNOxを吸蔵する。一方、排気空燃比がリッチになった場合、詳しくは、周囲の雰囲気が低酸素濃度状態となり、かつ、排気ガス中に炭化水素(HC)や一酸化炭素(CO)などの未燃燃料成分を含む状態になった場合に、NOx吸蔵還元触媒は、吸蔵しているNOxを放出および還元する。具体的には、酸素濃度の低下によってNOx吸蔵還元触媒に吸蔵されているNOxが放出され、放出されたNOxが排気ガス中に含まれる未燃燃料成分との反応によって還元浄化されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−291824号公報
【特許文献2】特開2007−321614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところが、上述の如くフィルタ再生動作を行うに際し、排気系に対して燃料が過剰供給される状況になると、その燃料のうちの一部では反応(酸化反応)が行われることなく大気中に排出される場合がある。このような状況では、排気ガス中における未燃燃料(特にHC成分)の増大に伴い白煙の排出量の増大を招いてしまい、排気エミッションが悪化してしまうことになる。上記特許文献1では、筒内噴射量と燃料添加量との合計から求められる空燃比が理論空燃比よりもリッチにならないように燃料添加量を制限するものとなっている。
【0012】
しかしながら、条件によっては、上記筒内噴射量と燃料添加量との合計から求められる空燃比を理論空燃比に維持したり、または、理論空燃比よりもリーンに調整したとしても、未燃燃料の増大に伴って白煙の排出量の増大を招いてしまうことがある。具体的には、例えばフィルタ上流側に配設された触媒の温度が低い状況や排気ガス流量が多い状況である。
【0013】
その理由は、触媒床温が低い状況では、この触媒内部における燃料の酸化反応が不十分となり、未燃燃料の残存量が多くなってしまうためである。また、排気ガス流量が多い状況では、触媒内部を通過する排気ガスの流速が高いため、この触媒内部での燃料の酸化反応時間が十分に確保できず、この場合にも未燃燃料の残存量が多くなってしまうためである。
【0014】
尚、触媒の小型化や、触媒に担持される貴金属材料の減量化を図った場合には上記不具合の発生はいっそう顕著になる。
【0015】
また、このような不具合は、上記NOx吸蔵還元触媒に対してNOx還元用の燃料を供給する場合においても同様に発生する可能性がある。
【0016】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、排気系に燃料を供給することによって排気浄化ユニット(フィルタや触媒)に排気成分除去動作(上記PMの酸化処理やNOxの還元処理等)を行わせるに際し、排気系からの未燃燃料の排出を抑制しながらも、十分な排気成分除去機能を発揮させることが可能な内燃機関の排気浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
−課題の解決原理−
上記の目的を達成するために講じられた本発明の解決原理は、触媒床温及び排気ガス流量に基づいて、白煙を発生させないための排気限界空燃比を求め、これに基づいて、排気系に供給する排気成分除去動作用の燃料(PMの酸化処理やNOxの還元処理のための燃料)として、未燃燃料の排出を抑制可能となる燃料量を求め、この燃料量を上限として排気系に排気成分除去動作用の燃料を供給するようにしている。
【0018】
−解決手段−
具体的に、本発明は、排気系に設けられ、排気成分の吸蔵または捕集により排気の浄化を行なう排気浄化ユニットと、この排気浄化ユニットに吸蔵または捕集された排気成分の除去動作の開始条件が成立した際、排気系に昇温用燃料を供給する燃料供給手段とが備えられ、この燃料供給手段からの昇温用燃料の供給により排気浄化ユニットを昇温して上記吸蔵または捕集された排気成分を排気浄化ユニットから除去する排気成分除去動作が実行可能とされた内燃機関の排気浄化装置を前提とする。この内燃機関の排気浄化装置に対し、温度認識手段、流量認識手段、及び、制限供給量算出手段を備えさせている。上記温度認識手段は、上記排気成分除去動作期間中において上記排気浄化ユニットの温度を検知または推定する。また、上記流量認識手段は、上記排気成分除去動作期間中において上記排気浄化ユニットに導入されるガス流量を検知または推定する。そして、上記制限供給量算出手段は、上記温度認識手段によって検知または推定された排気浄化ユニットの温度と、上記流量認識手段によって検知または推定された排気浄化ユニットでのガス流量とに基づいて排気限界空燃比を求め、この排気限界空燃比に基づいて燃焼室内及び上記排気系へ導入可能な単位時間当たりの許容燃料量を求め、この許容燃料量と、燃焼室内での燃焼に寄与する燃料量とから、上記燃料供給手段から供給される昇温用燃料の単位時間当たりの供給量の上限値として制限供給量を求める。
【0019】
この特定事項により、排気浄化ユニットに吸蔵または捕集された排気成分量が所定量に達するなどして排気成分の除去動作の開始条件が成立した際には、燃料供給手段からの昇温用燃料の供給により排気浄化ユニットを昇温して上記吸蔵または捕集された排気成分を除去する排気成分除去動作が開始される。そして、この排気成分除去動作が開始されると、排気浄化ユニットの温度と排気浄化ユニットでのガス流量とに基づいて排気限界空燃比が求められ、この排気限界空燃比に基づいて燃焼室内及び上記排気系へ導入可能な単位時間当たりの許容燃料量が求められ、燃焼室内での燃焼に寄与する燃料量を、この許容燃料量から減算するなどして、上記燃料供給手段から供給される昇温用燃料の単位時間当たりの供給量の上限値として制限供給量を求める。これにより、排気成分除去動作では、燃料供給手段から供給される昇温用燃料の単位時間当たりの供給量は上記制限供給量以下に抑えられることになる。ここでいう「昇温用燃料の供給量を制限供給量以下に抑える。」とは、燃料供給手段からの燃料供給動作1回の当たりにおける昇温用燃料量を所定量以下に抑えること、及び、所定期間中における燃料供給手段からの昇温用燃料量を所定量以下に抑えることの両方を含む概念である。このようにして燃料供給手段から供給される昇温用燃料の単位時間当たりの供給量が上記制限供給量以下に抑えられることにより、燃料供給手段から供給された昇温用燃料の略全量が排気系内で酸化反応することになり、未燃燃料が大気中に排出されることなしに排気成分除去動作が十分に行われ、上記吸蔵または捕集された排気成分の除去機能を十分に発揮させることが可能になる。
【0020】
上記昇温用燃料の単位時間当たりの供給量の上限値としての制限供給量を求める具体的な動作としては、上記温度認識手段によって検知または推定された排気浄化ユニットの温度が低いほど、また、上記流量認識手段によって検知または推定された排気浄化ユニットでのガス流量が多いほど、上記排気限界空燃比をリーン側の値として求め、上記燃焼室内及び上記排気系へ導入可能な単位時間当たりの許容燃料量を少ない値として求めて、上記燃料供給手段から供給される昇温用燃料の単位時間当たりの供給量の上限値である制限供給量を少ない量として求める構成としている。
【0021】
つまり、排気浄化ユニットの温度が低い状況では、この排気浄化ユニット及びその周辺部での燃料の反応が不十分となり、未燃燃料の残存量が多くなってしまう可能性がある。また、排気浄化ユニットでのガス流量が多い状況では、排気浄化ユニットを通過する排気ガスの流速が高いため、この排気浄化ユニットでの燃料の反応時間が十分に確保できず、この場合にも未燃燃料の残存量が多くなってしまう可能性がある。このため、排気浄化ユニットの温度が低いほど、また、排気浄化ユニットでのガス流量が多いほど、上記燃焼室内及び上記排気系へ導入可能な単位時間当たりの許容燃料量を少ない値として求める。その結果、上記燃料供給手段から供給される昇温用燃料の単位時間当たりの供給量の上限値である制限供給量は少ない量として求められることになる。即ち、排気浄化ユニットの温度が低い状況や、排気浄化ユニットでのガス流量が多い状況といった未燃燃料の排出が懸念される状況であるほど、燃料供給手段から排気系に供給される昇温用燃料の量を少なく設定し、白煙の排出を確実に阻止できるようにしている。
【0022】
上記燃料供給手段からの昇温用燃料の供給タイミングを設定するための具体構成としては以下のものが挙げられる。
【0023】
先ず、上記排気成分除去動作期間中において上記昇温用燃料の制限供給量を上記単位時間毎に算出し、この制限供給量をこの単位時間毎に積算していくことで実行待機燃料供給量を求め、この実行待機燃料供給量が所定の基準供給量に達した場合に、上記燃料供給手段から基準供給量の昇温用燃料の供給を許可する燃料供給許可手段を設けた構成である。
【0024】
この場合、排気浄化ユニットの温度が低い場合や、排気浄化ユニットでのガス流量が多い場合には、単位時間毎に算出される制限供給量としては比較的少ない値となる。このため、実行待機燃料供給量が所定の基準供給量に達するまでの期間を長く要することになり、燃料供給手段から昇温用燃料を供給するインターバル(昇温用燃料の供給を停止している期間)が長く設定されることになる。その結果、昇温用燃料の単位時間(所定期間)当たりの供給量が少なくなり、白煙の排出を確実に阻止できる。
【0025】
また、上記排気成分除去動作期間中における上記排気浄化ユニットの目標温度に対する実際の排気浄化ユニットの温度の偏差に基づいて求められた単位時間当たりの必要燃料供給量、及び、上記昇温用燃料の制限供給量を上記単位時間毎に算出し、これら必要燃料供給量及び制限供給量のうち少ない方の量を上記単位時間毎に積算していくことで実行待機燃料供給量を求め、この実行待機燃料供給量が所定の基準供給量に達した場合に、上記燃料供給手段から基準供給量の昇温用燃料の供給を許可する燃料供給許可手段を設ける構成としてもよい。
【0026】
この場合、例えば、触媒床温が高い場合や、排気ガス流量が少ない場合であって、昇温用燃料の制限供給量が比較的大きな値として求められ、上記必要燃料供給量で昇温用燃料の供給を行っても白煙(未燃燃料の排出)が発生しない状況では、この必要燃料供給量が上記単位時間毎に実行待機燃料供給量に対して積算されていくことになる。これに対し、例えば、触媒床温が低い場合や、排気ガス流量が多い場合であって、昇温用燃料の制限供給量が比較的小さな値として求められ、上記必要燃料供給量で昇温用燃料の供給を行った場合には白煙が発生する状況では、上記制限供給量が上記単位時間毎に実行待機燃料供給量に対して積算されていくことになる。このため、白煙が発生しない範囲で昇温用燃料の単位時間当たりの供給量を最大限に確保することができ、排気成分除去動作を高い効率で実施することが可能となる。
【0027】
また、より具体的に、上記基準供給量の昇温用燃料を上記燃料供給手段から供給するタイミングとしては、上記燃料供給許可手段によって燃料供給手段からの昇温用燃料の供給が許可された後、所定の昇温用燃料の供給タイミングに達した時点で、上記基準供給量の昇温用燃料を上記燃料供給手段から供給する燃料供給実行手段を設けている。
【0028】
この所定の昇温用燃料の供給タイミングとしては、例えば、特定気筒の排気行程が挙げられる。つまり、この特定気筒の排気行程に同期させて昇温用燃料を燃料供給手段から供給するものである。これは、燃料供給手段を排気系へ燃料添加を行う燃料添加弁とした場合に有効な構成である。つまり、この燃料添加弁を特定気筒の排気側に(例えば排気ポートに対向して)配設した場合、この特定気筒の排気行程に同期させて燃料添加弁から燃料添加を行うことで、添加燃料が排気ポートや排気マニホールドの壁面に付着することなく良好に拡散されて排気浄化ユニットに向かって流れることになる。
【0029】
上記燃料供給手段からの昇温用燃料の供給タイミングを設定するための他の構成として以下のものが挙げられる。
【0030】
上記排気成分除去動作期間中における上記排気浄化ユニットの目標温度に対する実際の排気浄化ユニットの温度の偏差に基づいて求められた単位時間当たりの必要燃料供給量、及び、上記昇温用燃料の制限供給量を上記単位時間毎に算出し、これら必要燃料供給量及び制限供給量のうち少ない方の量を上記単位時間毎に積算していくことで実行待機燃料供給量を求め、所定の昇温用燃料の供給タイミングにおいて、その時点での実行待機燃料供給量の昇温用燃料を上記燃料供給手段から供給する燃料供給実行手段を設けた構成である。
【0031】
この場合、一定間隔(例えば一定の時間間隔または一定のクランク回転角度間隔)で昇温用燃料を供給する場合に、それぞれの供給量を適正化することにより、白煙の排出防止と排気成分除去動作との両立を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0032】
本発明では、触媒床温及び排気ガス流量に基づいて、排気系に供給する排気成分除去動作用の燃料として、未燃燃料の排出を抑制可能となる燃料量を求め、この燃料量を上限として排気系に排気成分除去動作用の燃料を供給するようにしている。このため、未燃燃料が大気中に排出されることなしに排気成分除去動作を良好に行うことができ、排気浄化ユニットに吸蔵または捕集された排気成分の除去機能を十分に発揮させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施形態に係るディーゼルエンジン及びその制御系統の概略構成図である。
【図2】ECU等の制御系の構成を示すブロック図である。
【図3】PM発生量pmeを求めるマップを示す図である。
【図4】PM燃焼量pmcを求めるマップを示す図である。
【図5】第1実施形態における燃料添加動作の手順の前半を示すフローチャート図である。
【図6】第1実施形態における燃料添加動作の手順の後半を示すフローチャート図である。
【図7】白煙限界A/F値を求めるマップを示す図である。
【図8】第1実施形態における実行待機燃料添加量の推移及び燃料添加タイミングを示すタイミングチャート図である。
【図9】第2実施形態における燃料添加動作の手順の前半を示すフローチャート図である。
【図10】第2実施形態における燃料添加動作の手順の後半を示すフローチャート図である。
【図11】第2実施形態における実行待機燃料添加量の推移及び燃料添加タイミングを示すタイミングチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、自動車に搭載されたコモンレール式筒内直噴型多気筒(例えば直列4気筒)ディーゼルエンジン(圧縮自着火式内燃機関)に本発明を適用した場合について説明する。
【0035】
−エンジンの構成−
先ず、本実施形態に係るディーゼルエンジンの概略構成を、図1を参照して説明する。
【0036】
本実施形態に係るディーゼルエンジン1(以下、「エンジン1」という)は、各気筒の燃焼室1aに、その燃焼室1a内での燃焼に供される燃料を噴射するインジェクタ(燃料噴射弁)2がそれぞれ配置されている。各気筒のインジェクタ2はコモンレール11に接続されている。コモンレール11にはサプライポンプ10が接続されている。
【0037】
サプライポンプ10は、燃料タンクから燃料を汲み上げ、この汲み上げた燃料を高圧にした後に燃料通路10aを介してコモンレール11に供給する。コモンレール11は、サプライポンプ10から供給された高圧燃料を所定圧力に保持(蓄圧)する蓄圧室としての機能を有し、この蓄圧した燃料を各インジェクタ2に分配する。インジェクタ2は、所定電圧が印加されたときに開弁して、燃焼室1a内に燃料を噴射供給する電磁駆動式の開閉弁である。インジェクタ2の開閉(燃料噴射量・噴射時期)はECU(Electronic Control Unit)100によってデューティ制御される。
【0038】
また、上記サプライポンプ10は、燃料タンクから汲み上げた燃料の一部を、添加燃料通路10bを介して燃料添加弁(燃料供給手段)12に供給する。添加燃料通路10bには、緊急時において添加燃料通路10bを遮断して燃料添加を停止するための遮断弁13が備えられている。また、上記燃料添加弁12は、各気筒のうちの一つの気筒(例えば第1番気筒)の排気ポート1bに対向する位置に配設されており、この排気ポート1bから排出される排気ガスに対して所定量及び所定タイミングで燃料添加を必要に応じて実行するようになっている。この燃料添加弁12からの燃料添加量(供給量)及び添加タイミングについては後述する。
【0039】
エンジン1には吸気通路3及び排気通路4が接続されている。吸気通路3には、上流部(吸入空気流れ方向の上流部)から下流側に向けて順に、エアクリーナ9、エアフローメータ(流量認識手段)33、後述するターボチャージャ6のコンプレッサインペラ63、インタークーラ8、及び、スロットルバルブ5が配置されている。スロットルバルブ5はスロットルモータ51によってスロットル開度が調整される。スロットルバルブ5のスロットル開度はスロットル開度センサ41によって検出される。なお、吸気通路3は、スロットルバルブ5の下流側に配置された吸気マニホールド3aにおいて各気筒に対応して分岐している。
【0040】
排気通路4は、エンジン1の各気筒の燃焼室1aと繋がる排気マニホールド4aによって各気筒毎に分岐した状態から1つに集合するように構成されている。
【0041】
排気通路4には、排気ガス中に含まれるHC(炭化水素)及びCO(一酸化炭素)を酸化して浄化するCCO(酸化触媒コンバータ)21とPM(粒子状物質)を捕集するDPF22とが順に配置され、燃焼室1aでの燃焼により生じた排気ガスが送り込まれる。これらCCO21及びDPF22が本発明でいう排気浄化ユニットに相当する。
【0042】
CCO21の上流側(排気ガス流れの上流側)の排気通路4にはA/Fセンサ36及び第1排気温センサ37が配置されており、この第1排気温センサ37の出力信号によりCCO21に入る排気ガスの温度を検出することができる。また、CCO21とDPF22との間の排気通路4には第2排気温センサ(温度認識手段)38が配置されており、この第2排気温センサ38の出力信号によりDPF22に入る排気ガスの温度(フィルタ温度(床温))を検出することができる。さらにDPF22の上流側圧力と下流側圧力との差圧を検出する差圧センサ39が設けられている。
【0043】
これらA/Fセンサ36、第1排気温センサ37、第2排気温センサ38、及び、差圧センサ39の各出力信号はECU100に入力される。
【0044】
エンジン1にはターボチャージャ6が装備されている。ターボチャージャ6は、ロータシャフト61を介して連結されたタービンホイール62とコンプレッサインペラ63とを備えている。
【0045】
コンプレッサインペラ63は吸気通路3内部に臨んで配置され、タービンホイール62は排気通路4内部に臨んで配置されている。このようなターボチャージャ6は、タービンホイール62が受ける排気流(排気圧)を利用してコンプレッサインペラ63を回転させることにより吸入空気を過給する。本実施形態におけるターボチャージャ6は、可変ノズル式ターボチャージャであって、タービンホイール62側に可変ノズルベーン機構64が設けられており、この可変ノズルベーン機構64の開度を調整することにより、エンジン1の過給圧を調整することができる。なお、ターボチャージャ6での過給によって昇温した吸入空気は、吸気通路3に配置したインタークーラ8によって強制冷却される。
【0046】
また、エンジン1にはEGR装置7が装備されている。EGR装置7は、排気通路4を流れる排気ガスの一部を吸気通路3に還流させて、各気筒の燃焼室1aへ再度供給することにより燃焼温度を低下させ、これによってNOx発生量を低減させる装置である。EGR装置7は、吸気マニホールド3aと排気マニホールド4aとを接続するEGR通路71を備えている。このEGR通路71には、EGRガス流れの上流側から順に、EGR通路71を通過(還流)するEGRガスを冷却するためのEGRクーラ73、及び、EGRバルブ72が設けられており、このEGRバルブ72の開度を調整することによって、排気通路4(排気マニホールド4a)から吸気通路3(吸気マニホールド3a)に導入されるEGRガス量(排気還流量)を調整することができる。
【0047】
−ECU−
ECU100は、図2に示すように、CPU101、ROM102、RAM103及びバックアップRAM104などを備えている。
【0048】
ROM102には、各種制御プログラムや、それら制御プログラムを実行する際に参照されるマップ等が記憶されている。CPU101は、ROM102に記憶された各種制御プログラムやマップに基づいて演算処理を実行する。また、RAM103はCPU101での演算結果や各センサから入力されたデータ等を一時的に記憶するメモリであり、バックアップRAM104はエンジン1の停止時にその保存すべきデータ等を記憶する不揮発性のメモリである。
【0049】
これらCPU101、ROM102、RAM103、及び、バックアップRAM104はバス107を介して互いに接続されるとともに、入力インターフェース105及び出力インターフェース106と接続されている。
【0050】
入力インターフェース105には、エンジン1の出力軸であるクランクシャフトの回転数を検出するエンジン回転数センサ31、エンジン水温(冷却水温)を検出する水温センサ32、エアフローメータ33、吸気マニホールド3aに配置され、吸入空気の温度を検出する吸気温センサ34、吸気マニホールド3aに配置され、吸入空気の圧力を検出する吸気圧センサ35、上記A/Fセンサ36、第1排気温センサ37、第2排気温センサ38、差圧センサ39、コモンレール11内の高圧燃料の圧力を検出するレール圧センサ40、スロットル開度センサ41、アクセル開度センサ42、及び、車速センサ43などが接続されており、これらの各センサからの信号がECU100に入力される。
【0051】
出力インターフェース106には、インジェクタ2、サプライポンプ10、スロットルバルブ5のスロットルモータ51、ターボチャージャ6の可変ノズルベーン機構64、及び、EGRバルブ72などが接続されている。
【0052】
ECU100は、上記した各種センサの出力信号に基づいて、エンジン1のスロットルバルブ5の開度制御、及び、燃料噴射量・噴射時期制御(インジェクタ2の開閉制御)などを含むエンジン1の各種制御を実行する。さらに、ECU100は、下記のNOx還元制御やDPF再生制御を実行する。
【0053】
−NOx還元制御−
ディーゼルエンジン1においては、大部分の運転領域で排気の空燃比はリーン空燃比となっているため、通常の運転状態では、CCO21の周囲雰囲気は高酸素濃度状態となっている。このため、排気ガス中のNOxは、CCO21に吸蔵されるが、周囲雰囲気が低酸素濃度となる状況は非常に少ないため、吸蔵されたNOxが還元されにくく、CCO21のNOx吸蔵能力が飽和しやすい。このため、CCO21のNOx吸蔵能力が低下した場合にはNOxを還元させてCCO21を回復させる必要がある。
【0054】
そこで、ECU100がNOx還元制御を実行する。具体的には、エンジン運転状態などに基づいて推定されるNOx吸蔵量が所定の限界値に達したときに、上記燃料添加弁12からの燃料添加やインジェクタ2からのポスト噴射を実施してCCO21の上流側の排気通路4に燃料を供給することにより、排気ガスの空燃比(A/F)を制御する。これにより、CCO21の周囲雰囲気を高温化や還元雰囲気にすることで、CCO21に吸蔵されたNOxを還元して放出する。尚、上記NOx吸蔵量の推定手法としては、エンジン回転数とインジェクタ2からの燃料噴射量とに応じたNOx吸蔵量を予め実験等により求めてマップ化しておき、このマップにより求められるNOx吸蔵量を積算するという方法が挙げられる。
【0055】
なお、NOx還元制御及び後述するPM再生制御は、それぞれの実行要求があったときに行われるが、各制御の実行が重なったときには、例えばPM再生制御→NOx還元制御の順で実行される。
【0056】
−DPF再生制御の概略説明−
<PM堆積量推定>
ECU100は、エンジン1の運転状態に基づいてDPF22におけるPM(排気成分)堆積量を推定する。このPM堆積量の推定動作としては、エンジン運転状態に基づく推定動作と、DPF22の前後差圧に基づく推定動作とが挙げられる。以下、それぞれについて説明する。
【0057】
(1)エンジン運転状態に基づくPM堆積量推定動作
この推定動作では、PM発生量pme及びPM燃焼量pmcを用いて推定PM堆積量PMsを算出する。
【0058】
PM発生量pmeは、単位時間当たり(例えば推定処理の1制御周期の間)にエンジン1の全燃焼室1aから排出されるPMの量であって、エンジン回転数センサ31の出力信号から得られるエンジン回転数NE及びインジェクタ2からの燃料噴射量Qv(指令値)に基づいて図3のマップを参照して求める。
【0059】
PM燃焼量pmcは、単位時間当たり(例えば推定処理の1制御周期の間)にDPF22に堆積されているPMが酸化燃焼される量であって、第2排気温センサ38の出力信号から得られる排気ガス温度Theg(フィルタ温度に相当)及びエアフローメータ33の出力信号から得られる吸入空気量Gaに基づいて図4のマップ(PMの酸化速度マップ)を参照して求める。
【0060】
そして、これらPM発生量pme及びPM燃焼量pmcを用いて推定PM堆積量PMsを、演算式[PMs←PMs(前回値)+pme−pmc]に基づいて逐次算出(積算)していく。
【0061】
図3に示すマップは、エンジン回転数NE及び燃料噴射量Qvをパラメータとし、PM発生量pmeを実験・計算等によって求めた値をマップ化したものであって、ECU100のROM102内に記憶されている。なお、図3のマップにおいて、エンジン回転数NE及び燃料噴射量Qvがマップ上の各ポイント間の値になるときには、補間処理にてPM発生量pmeを算出する。
【0062】
図4に示すマップは、排気ガス温度Theg及び吸入空気量Gaをパラメータとし、PM燃焼量pmcを実験・計算等によって求めた値をマップ化したものであって、ECU100のROM102内に記憶されている。なお、図4のマップにおいて、排気ガス温度Theg及び吸入空気量Gaがマップ上の各ポイント間の値になるときには、補間処理にてPM燃焼量pmcを算出する。
【0063】
(2)差圧に基づくPM堆積量推定動作
DPF22においては、PMの堆積が進行するにしたがって、その堆積PMが排気ガスの流れの妨げとなり、排気ガスの流動抵抗が増加する。これに伴ってDPF22の上流側の排気圧力と下流側の排気圧力との差圧ΔPが大きくなる。このDPF22前後の差圧ΔPは、DPF22に堆積したPMの燃焼除去が進行して、DPF22に堆積しているPM堆積量が減少するにしたがって小さくなる。このようにDPF22前後の差圧ΔPとDPF22に堆積しているPM堆積量との間には相関関係があるので、差圧ΔPからDPF22のPM堆積量を推定することができる。
【0064】
このような点を利用し、排気通路4(DPF22)に設けた上記差圧センサ39の出力信号から得られる差圧ΔPに基づいてマップを参照して、DPF22に捕集されたPMの堆積量(推定PM堆積量PMd)を推定する。
【0065】
なお、推定PM堆積量の算出に用いるマップは、上記したDPF22前後の差圧ΔPとPM堆積量との相関関係を考慮して、実験・計算等によって適合した値をマップ化したものであって、ECU100のROM102内に記憶されている。
【0066】
以上のような2タイプのPM堆積量推定動作のうち、一方のみを利用してPM堆積量を推定するようにしてもよいし、両方を利用してPM堆積量を推定するようにしてもよい(例えば、上記2つの推定PM堆積量PMs、PMdのうち一方が所定量を超えた場合に再生開始判定量に達したと判定するもの)。
【0067】
<フィルタ再生(DPF再生)動作>
上述したPM堆積量の推定動作によってPM堆積量が所定量(再生開始判定量)に達した場合(排気成分除去動作の開始条件が成立した場合)、ECU100は、フィルタ再生動作(排気成分除去動作)の開始時期であると判断する。
【0068】
このフィルタ再生動作では、上記燃料添加弁12から間欠的に(所定のインターバルを存して)燃料添加動作(昇温用燃料の供給動作)が行われる。この燃料添加動作によって燃料添加弁12からから供給された燃料は、排気通路4を経てCCO21に達する。CCO21に燃料成分(添加燃料)が到達すると、HCやCO等の成分が排気ガス中や触媒上で酸化反応され、その酸化反応に伴う発熱でCCO21(排気ガス)の温度が上昇し、この温度上昇によってDPF22の温度が上昇する。これにより、DPF22に堆積したPMが燃焼・除去され、DPF22のPM堆積量が減少していく。
【0069】
また、フィルタ再生動作としては、上記燃料添加弁12からの燃料添加によるものに代えて、または、この燃料添加弁12からの燃料添加と並行して上記インジェクタ2からのポスト噴射を実施するものとしてもよい。この場合、インジェクタ2が、本発明でいう燃料供給手段に相当することになる。
【0070】
このようなフィルタ再生動作中において、ECU100は、上述した推定動作によってPM堆積量を推定しており、このPM堆積量が再生完了判定量にまで低下した時点で、DPF22の再生が完全に完了(フィルタ完全再生完了)したと判断してフィルタ再生動作を終了する。
【0071】
−燃料添加動作−
次に、本実施形態の特徴とする動作である燃料添加の具体的な動作についての複数の実施形態を説明する。以下の実施形態では、上記燃料添加弁12からの燃料添加によってフィルタ再生動作を行う場合について説明する。また、ここでいう燃料添加動作は、上記PM堆積量推定動作によってPM堆積量が所定量(再生開始判定量)に達し、DPF22の再生動作が開始された場合におけるその再生期間中での添加燃料供給制御である。
【0072】
<第1実施形態>
先ず、第1実施形態について説明する。本実施形態における燃料添加動作の概略について説明すると、先ず、推定されたCCO21の温度(以下、「触媒床温」という)と排気ガス流量から、排気ガス中に白煙を生じさせないための総燃料供給量(未燃燃料が大気中に排出されないための総燃料供給量)を求め、この総燃料供給量から燃焼室1a内に噴射されている燃料量を減算することで、燃料添加弁12から供給可能な添加燃料量(A/F制限添加量)を求める。この動作を一定期間毎に繰り返す。そして、フィルタ再生動作中における燃料添加弁12からの燃料添加タイミングを上記供給可能な添加燃料量に応じて設定する。具体的には、供給可能な添加燃料量が少ない状況では、燃料添加のインターバルを長く設定し、単位期間当たりの添加燃料量を少なく設定するようにしている。
【0073】
次に、本実施形態の燃料添加動作の手順を図5及び図6のフローチャートに沿って説明する。このフローチャートに示される処理は、エンジン1の運転開始後、上記ECU100により所定の周期で繰り返し実行される。
【0074】
先ず、ステップST1において、Soot(PM)発生量とSoot燃焼(酸化)量からDPF22におけるSootの堆積量(上記推定PM堆積量に相当)を算出する。この算出動作は上述したPM堆積量推定動作によって行われる。
【0075】
ステップST2では、上記算出された堆積Soot量が予め設定された再生開始基準値を超えたか否かを判定する。この再生開始基準値とは、上記再生開始判定量に相当し、DPF22に堆積したSoot(PM)によって、通過する排気ガスの圧力損失が所定量以上に達した場合に相当する値として適宜設定されている。
【0076】
この堆積Soot量が再生開始基準値以下であり、ステップST2でNO判定された場合には、フィルタ再生動作は未だ必要ないとしてリターンされ、上記Soot堆積量の算出を継続する。
【0077】
堆積Soot量が再生開始基準値を超え、ステップST2でYES判定された場合にはステップST3に移り、DPF再生用の燃料添加を開始し、上述したDPF再生動作を実行する。つまり、上記燃料添加弁12からの燃料添加動作を開始する。そして、この際の燃料添加タイミングとしては以下の各ステップの動作により設定される。
【0078】
DPF再生動作が開始されると、先ず、ステップST4においてエンジン回転数と燃料噴射量とに基づきベース添加燃料量を算出する。エンジン回転数は、上記エンジン回転数センサ31の出力信号に基づいて算出される。また、燃料噴射量は、エンジン回転数、アクセル操作量、冷却水温度、吸気量、吸気温度等の運転状態に応じて決定(燃料噴射量マップ等によって決定)されたものである。また、上記ベース添加燃料量は、CCO21の温度が予め規制されたベース温度であり、且つ排気ガス流量が予め規制されたベース流量であると仮定した場合に必要とされる添加燃料量(触媒床温を目標触媒床温まで上昇させるために必要とされる添加燃料量)として規定されている。つまり、これらベース温度及びベース流量に対する実際のCCO21の温度(推定される温度)及び実際の排気ガス量の偏差量に応じてベース添加燃料量に対して後述する添加燃料補正量だけ補正されることになる。尚、上記ベース温度及びベース流量は任意の値に設定可能である。
【0079】
また、排気ガス流量と触媒床温とに基づいて上記ベース添加燃料量を求めるようにしてもよい。この場合、排気ガス流量は上記エアフローメータ33の出力信号に基づいて推定される。また、触媒床温は上記第2排気温センサ38により検出される排気ガス温度から推定される。
【0080】
その後、ステップST5に移り、現在の触媒床温(上記第2排気温センサ38により検出される排気ガス温度から推定されたCCO21の温度)が予め設定された目標触媒床温に等しいか否かを判定する。この目標触媒床温は、DPF再生動作に適した温度、つまり、DPF22に堆積されているPMの燃焼を可能にする排気温度を得るためのCCO21の温度(例えば700℃)として設定されている。この値は、これに限定されるものではない。
【0081】
この現在の触媒床温が目標触媒床温と異なっており、ステップST5でNO判定された場合にはステップST6に移り、上記目標触媒床温に対して実際の触媒床温が低いか否かを判定する。つまり、現在の触媒床温では、DPF22に堆積されているPMの燃焼が不可能または不十分な状況(CCO21での反応が不十分であって排気ガス温度がPM燃焼可能な温度まで十分に上昇していない状況)であるか否かを判定する。
【0082】
ステップST7,ST8,ST9は、上記触媒床温を目標触媒床温に近付けるための添加燃料補正量を求めるステップである。
【0083】
つまり、目標触媒床温に対して実際の触媒床温が低く、ステップST6でYES判定された場合には、前回の(前回実行されたルーチンで求められた)添加燃料補正量に対して予め規定された所定の補正量(例えば添加燃料補正量を10%大きくする補正量)だけ加算し、これを新たな添加燃料補正量として求める。
【0084】
一方、目標触媒温度に対して実際の触媒温度が高く、ステップST6でNO判定された場合には、前回の(前回実行されたルーチンで求められた)添加燃料補正量に対して予め規定された所定の補正量(例えば添加燃料補正量を10%小さくする補正量)だけ減算し、これを新たな添加燃料補正量として求める。この場合、新たな添加燃料補正量としては正の値であって上記前回の添加燃料補正量よりも小さな値、または、負の値(後述する必要添加量を少なくするための値)として求められる。上述した各補正量の値はこれに限定されるものではない。
【0085】
また、実際の触媒床温が目標触媒床温に一致しており、ステップST5でYES判定された場合には、ステップST9において、前回の添加燃料補正量を変更することなく、そのまま今回の添加燃料補正量として設定する。
【0086】
ステップST10(図6)では、以上のようにして求められた添加燃料補正量を上記ベース添加燃料量(上記ステップST4で算出されたベース添加燃料量)に対して加算することにより(添加燃料補正量が負の値である場合には減算することにより)、単位時間当たり(本ルーチンの処理期間中)の必要添加量(必要燃料供給量)を算出する。ここで求められた必要添加量は、DPF22に堆積されているPMの燃焼を可能にする温度まで触媒温度を上昇させるのに必要な燃料添加量として求められる。より詳しくは、今回のルーチンにおけるエンジン運転状態(エンジン回転数、燃料噴射量、実際の触媒床温等)に応じて、本ルーチンの期間中に必要となる燃料添加量として上記必要添加量は求められる。
【0087】
その後、ステップST11に移り、触媒床温と排気ガス流量より、単位時間当たり(本ルーチンの期間中における)の白煙限界A/F値(以下、単に「白煙限界A/F値」と呼ぶ:本発明でいう排気限界空燃比)を算出する。上記排気ガス流量は、上記エアフローメータ33の出力信号に基づいて推定される。
【0088】
また、上記白煙限界A/F値は、例えば図7に示す白煙限界A/F値算出マップにより求められる。この白煙限界A/F値算出マップは、触媒床温及び排気ガス流量に基づいて白煙限界A/F値を算出するものであり、触媒床温が低いほど、また、排気ガス流量が多いほど、白煙限界A/F値としては高く(リーン側の値として)求められるものとなっている。
【0089】
また、ここで求められる白煙限界A/F値は、この白煙限界A/F値よりも空燃比(A/F)が低い(リッチ側の値)場合に、排気ガス中に未燃燃料が発生し、白煙の発生が懸念されるものとして得られる。つまり、この白煙の発生を抑制するためには、この白煙限界A/F値よりも空燃比(A/F)を高く(リーン側の値)に設定することが必要であることになる。尚、上記白煙限界A/F値算出マップは、実験またはシミュレーションによって予め作成されて、上記ROM102に格納されている。
【0090】
このようにして白煙限界A/F値を求めた後、ステップST12において、以下の式(1)により単位時間当たりにおけるA/F制限添加量を算出する。
【0091】
A/F制限添加量=(空気量/白煙限界A/F値)−筒内噴射量 …(1)
この式(1)の右辺における第1項(空気量/白煙限界A/F値)は、排気ガスに白煙が発生しない範囲における、筒内噴射量と燃料添加弁12からの燃料添加量との和の最大値である(本発明でいう単位時間当たりの許容燃料量)。従って、この値から筒内噴射量(本発明でいう燃焼に寄与する燃料量)を減算することにより求められる上記A/F制限添加量は、排気ガスに白煙が発生しない範囲において、燃料添加弁12から供給可能な燃料添加量の最大値(本発明でいう単位時間当たりの供給量の上限値として制限供給量)となっている。つまり、燃料添加弁12からの燃料添加量を、このA/F制限添加量以下に設定することで、排気ガスに白煙を発生させないようにすることができる(制限供給量算出手段による制限供給量の算出動作)。
【0092】
ステップST13では、実行待機燃料添加量(実行待機燃料供給量)が算出される。この実行待機燃料添加量は、DPF再生動作が開始された後、間欠的に行われる燃料添加において、現在のエンジン運転状態で必要となる単位時間当たりの(本ルーチンの期間中における)燃料添加量である。そして、この実行待機燃料添加量としては、上記ステップST10で求められた必要添加量及びステップST12で求められたA/F制限添加量のうち少ない方の値を積算していく。
【0093】
つまり、A/F制限添加量が比較的多く(例えば、触媒床温が高い場合や、排気ガス流量が少ない場合)上記必要添加量で燃料添加を行っても白煙が発生しない状況では、この必要添加量が1ルーチン毎に積算されて実行待機燃料添加量が算出されいく。これに対し、A/F制限添加量が比較的少なく(例えば、触媒床温が低い場合や、排気ガス流量が多い場合)上記必要添加量で燃料添加を行った場合に白煙が発生する状況では、上記A/F制限添加量が1ルーチン毎に積算されて実行待機燃料添加量が算出されいく。
【0094】
ステップST14では、このようにして必要添加量またはA/F制限添加量が積算された実行待機燃料添加量が、予め設定された基準添加量(基準供給量)に達したか否かを判定する。この基準添加量は、予め設定された固定値であって、エンジン1の排気量や気筒数等に応じ、実験やシミュレーションによって設定されたものである。
【0095】
実行待機燃料添加量が基準添加量に達しておらず、ステップST14でNO判定された場合には、燃料添加弁12からの燃料添加を実行することなくリターンする。つまり、このステップST14で実行待機燃料添加量が基準添加量に達するまで燃料添加弁12からの燃料添加が許可されないことにより、燃料添加実行タイミングが遅延される(インターバルが長く設定される)ことになる。特に、触媒床温が低い場合や、排気ガス流量が多い場合であって、上記A/F制限添加量が比較的少なく算出されている場合には、実行待機燃料添加量の増加割合が小さいため、上記インターバルが長く設定されることになる。
【0096】
一方、実行待機燃料添加量が基準添加量に達しており、ステップST14でYES判定された場合(本発明でいう燃料供給許可手段による昇温用燃料の供給の許可がなされた場合)には、ステップST15に移り、燃料添加実行タイミング(本発明でいう所定の昇温用燃料の供給タイミング)を迎えたか否かを判定する。この燃料添加実行タイミングとは、例えば上記燃料添加弁12が対向する排気ポート1bの気筒(本実施形態の場合には第1番気筒)の排気行程に設定されている。つまり、この気筒が排気行程を迎えるタイミング、つまり、クランク角度で720°回転する毎に燃料添加実行タイミングを迎えることになる。これは、第1番気筒の排気行程に同期させて燃料添加弁12から燃料添加を行うことで、添加燃料が排気ポート1bや排気マニホールド4aの壁面に付着することなく良好に拡散されてCCO21及びDPF22に向かって流れるようにするためである。
【0097】
燃料添加実行タイミングを迎えておらず(第1番気筒の排気行程にはなく)、ステップST15でNO判定された場合には、ステップST4に戻り上記の動作を繰り返す。つまり、必要添加量の算出及びA/F制限添加量の算出を行い、そのうち少ない方の値を積算することで実行待機燃料添加量を更新していく。
【0098】
燃料添加実行タイミングを迎えたことで(第1番気筒の排気行程となり)ステップST15でYES判定された場合には、ステップST16に移り、上記基準添加量だけ燃料添加弁12からの燃料添加を実行する(燃料供給実行手段による昇温用燃料の供給動作)。
【0099】
このようにして燃料添加を実行した後、上記実行待機燃料添加量から、今回供給された燃料添加量、つまり、基準添加量だけ減算したものを新たな実行待機燃料添加量として設定し、リターンする。
【0100】
このような動作が繰り返されることにより、燃料添加弁12からの燃料添加動作は、上記実行待機燃料添加量が基準添加量に達し且つ燃料添加実行タイミング(第1番気筒の排気行程)を迎えるまで実行されないことになる。そして、触媒床温が低いほど、また、排気ガス流量が多いほど、上記ステップST12で求められるA/F制限添加量は少ない値となるため、このような状況下では、上記実行待機燃料添加量が基準添加量に達するまでの時間(上記ステップST14でYES判定されるまでの時間)が長くなり、その結果、燃料添加動作が実行されるまでのインターバルが長く設定される(燃料添加動作が遅延される)ことになる。以下、このインターバルが異なる状況を、実行待機燃料添加量の推移及び燃料添加タイミングを示す波形図を用いて具体的に説明する。
【0101】
図8は、本実施形態における上記実行待機燃料添加量(ΣQad)の推移及び燃料添加タイミング(燃料噴射率Qad(単位時間当たりの燃料噴射量)の波形)を示すタイミングチャート図である。
【0102】
図8(a)に示すタイミングチャートでは、実行待機燃料添加量(ΣQad)が基準添加量に達するタイミングと燃料添加実行タイミング(第1番気筒が排気行程となるタイミング)とが一致している場合である。この場合、燃料添加時における実行待機燃料添加量(ΣQad)は上記基準添加量に等しいため、燃料添加弁12からの燃料添加が実行される度に実行待機燃料添加量(ΣQad)は「0」となっている。また、燃料添加タイミングはクランク角度で720°毎に訪れており、この720°毎に基準添加量での燃料添加が実行されている。
【0103】
また、図8(b)及び図8(c)に示すタイミングチャートでは、触媒床温が比較的低く、または排気ガス流量が比較的多いために、上記A/F制限添加量が必要添加量に対して少なく算出された場合の各波形を示している。
【0104】
そして、図8(b)に示すものは、実行待機燃料添加量(ΣQad)が基準添加量に達するタイミングと燃料添加実行タイミング(第1番気筒が排気行程となるタイミング)とが一致している場合である。具体的には、燃料添加実行タイミングを2回迎える度に(クランク角度で1440°回転する度に)実行待機燃料添加量(ΣQad)が基準添加量に達し、燃料添加弁12からの燃料添加が実行されている。この場合、燃料添加弁12からの燃料添加が実行される度に実行待機燃料添加量(ΣQad)は「0」となっている。
【0105】
一方、図8(c)に示すものは、実行待機燃料添加量(ΣQad)が基準添加量に達するタイミングが燃料添加実行タイミングに一致しておらず、実行待機燃料添加量(ΣQad)が基準添加量に達した後(基準添加量を超えた後)、燃料添加実行タイミング(第1番気筒が排気行程となるタイミング)を迎えたタイミングで燃料添加弁12からの燃料添加が実行されている。この場合、燃料添加実行タイミングを迎えた時点では、実行待機燃料添加量(ΣQad)は基準添加量よりも大きくなっているため、燃料添加弁12からの燃料添加が実行されても実行待機燃料添加量(ΣQad)は「0」には戻らず、実行待機燃料添加量が残留することになる。そして、この残留した実行待機燃料添加量に対して、新たに算出された必要添加量またはA/F制限添加量が加算されていくことになる(上記ステップST13)。
【0106】
尚、上記説明では、燃料添加タイミングがクランク角度で720°毎に訪れる場合に、燃料添加動作の実行インターバルを長く設定する(燃料添加動作を遅延させる)際には、クランク角度で1440°毎に燃料添加が行われる場合について説明した。これに限らず、燃料添加タイミングがクランク角度で1440°毎に訪れる場合(通常時においてクランク角度で1440°毎に燃料添加を実行する場合)には、燃料添加動作の実行インターバルを長く設定する(燃料添加動作を遅延させる)際には、クランク角度で2160°間隔や2880°間隔で燃料添加が行われることになる。
【0107】
以上説明したように、本実施形態によれば、触媒床温が比較的低く、または排気ガス流量が比較的多い場合には、燃料添加弁12からの燃料添加のインターバルを長く設定するようにしている。このため、単位期間当たりの燃料添加量を必要最小限だけ減少させることにより、未燃燃料が大気中に排出されることなしにPMを酸化処理するための排気温度を十分に高めることができてDPF22の再生動作を良好に行うことができる。
【0108】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。本実施形態は、燃料添加弁12からの燃料添加動作が上記第1実施形態のものと異なっている。その他、エンジン1の構成及びその制御については第1実施形態のものと同様である。従って、ここでは、第1実施形態との相違点について説明する。
【0109】
本実施形態における燃料添加動作の概略について説明すると、先ず、触媒床温と排気ガス流量から、排気ガス中に白煙を生じさせないための総燃料供給量を求め、この総燃料供給量から燃焼室1a内に噴射されている燃料量を減算することで、燃料添加弁12から供給可能な添加燃料量(A/F制限添加量)を求める。この動作を一定期間毎に繰り返し、上記第1実施形態の場合と同様にして実行待機燃料添加量を積算していく。そして、所定タイミングで訪れる燃料添加タイミング(例えば、第1番気筒が排気行程となるタイミング)において、その時点での求められている上記実行待機燃料添加量で燃料添加弁12からの燃料添加を実行するようにしている。
【0110】
次に、本実施形態の燃料添加動作の手順を図9及び図10のフローチャートに沿って説明する。このフローチャートに示される処理は、上記ECU100により所定の周期で繰り返し実行される。
【0111】
図9及び図10に示すフローチャートにおけるステップST21〜ステップST33の動作は上述した第1実施形態における図5及び図6で示したフローチャートにおけるステップST1〜ステップST13の動作と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0112】
ステップST33において実行待機燃料添加量が算出された後、ステップST34に移り、燃料添加実行タイミングを迎えたか否かを判定する。この燃料添加実行タイミングとは、上記第1実施形態の場合と同様に、例えば上記燃料添加弁12が配置されている第1番気筒の排気行程に設定されている。つまり、クランク角度で720°回転する毎に燃料添加実行タイミングを迎えることになる。
【0113】
燃料添加実行タイミングを迎えておらず、ステップST34でNO判定された場合には、ステップST24に戻る。つまり、必要添加量の算出及びA/F制限添加量の算出を行い、そのうち少ない方の値を積算することで実行待機燃料添加量を更新していく。
【0114】
燃料添加実行タイミングを迎えたことでステップST34でYES判定された場合には、ステップST35に移り、この燃料添加実行タイミングを迎えた時点での実行待機燃料添加量だけ燃料添加弁12からの燃料添加を実行し、リターンする。
【0115】
このような動作が繰り返されることにより、燃料添加弁12から供給される燃料添加量は、上記A/F制限添加量によって制限された量(A/F制限添加量が積算されることで得られる実行待機燃料添加量)として規定されることになる。そして、このA/F制限添加量は、触媒床温が低いほど、また、排気ガス流量が多いほど、少ない値となるため、未燃燃料の残存による白煙の発生が防止できる範囲で、最大限の燃料添加量が得られることになる。
【0116】
図11は、本実施形態における実行待機燃料添加量(ΣQad)の推移及び燃料添加タイミング(燃料噴射率Qad(単位時間当たりの燃料噴射量)の波形)を示すタイミングチャート図である。
【0117】
この図11に示すタイミングチャートでは、触媒床温が比較的低く、または排気ガス流量が比較的多いために、上記A/F制限添加量が少なく算出された場合の各波形を示している。この場合、燃料添加実行タイミングを迎えた際の実行待機燃料添加量(ΣQad)は基準添加量よりも少なくなっており、燃料添加弁12から供給される添加燃料量は比較的少なく設定される。また、この燃料添加弁12からの燃料添加が実行される度に実行待機燃料添加量(ΣQad)は「0」となっている。
【0118】
本実施形態では、触媒床温が比較的低く、または排気ガス流量が比較的多い場合には、一定間隔で供給される添加燃料の供給量を必要最小限だけ少なく設定するようにしている。このため、未燃燃料が大気中に排出されることなしにPMを酸化処理するための排気温度を十分に高めることができDPF22の再生動作を良好に行うことができる。
【0119】
−他の実施形態−
以上説明した各実施形態は自動車に搭載されたコモンレール式筒内直噴型多気筒ディーゼルエンジンに本発明を適用した場合について説明した。本発明はこれに限らず、自動車以外に搭載されるディーゼルエンジンにも適用可能である。また、ディーゼルエンジンに限らず、ガソリンエンジンに対しても本発明は適用可能である。
【0120】
また、上記各実施形態では、燃料添加弁12からの燃料添加によってDPF22の再生動作を行うものであった。本発明は、これに限らず、インジェクタ2からのポスト噴射によってDPF22の再生動作を行う場合にも適用可能である。
【0121】
また、上記各実施形態では、DPF22の再生動作に本発明を適用した場合について説明した。本発明はこれに限らず、上述したCCO21やNOx吸蔵還元触媒でのNOx還元動作(排気成分除去動作)にも適用可能である。この場合、排気ガス中に白煙を発生させることなく、NOx還元作用によるCCO21やNOx吸蔵還元触媒のNOx吸蔵能力を回復させることが可能になる。
【0122】
また、上述した第1実施形態と第2実施形態とは併用することも可能である。つまり、燃料添加弁12からの燃料添加のインターバルの調整、及び、燃料添加1回当たりの添加量の調整を共に行うものである。
【0123】
更に、上記各実施形態では、PMを捕集するフィルタとしてはDPF22を備えたシステムについて説明したが、DPNRを備えたシステムに対しても本発明は適用可能である。
【0124】
また、上記各実施形態では、CCO21とDPF22との間に配設された第2排気温センサ38の出力信号により触媒床温を推定するようにしていたが、CCO21の上流側に配設された第1排気温センサ37の出力信号により触媒床温を推定するようにしてもよいし、DPF22の下流側に排気温センサを備えさせ、この排気温センサの出力信号によりフィルタ再生動作時の温度を検出するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明は、自動車に搭載されるコモンレール式筒内直噴型多気筒ディーゼルエンジンにおいて、排気系に備えられたDPFの再生時における燃料添加制御に適用可能である。
【符号の説明】
【0126】
1 エンジン(内燃機関)
1a 燃焼室
2 インジェクタ(燃料供給手段)
4 排気通路
12 燃料添加弁(燃料供給手段)
21 CCO(排気浄化ユニット)
22 DPF(排気浄化ユニット)
33 エアフローメータ(流量認識手段)
37 第1排気温センサ
38 第2排気温センサ(温度認識手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用ディーゼルエンジン等の内燃機関に搭載される排気浄化装置に係る。特に、本発明は、排気系に備えられた排気浄化ユニット(フィルタや触媒)に対して昇温用の燃料を供給する際における燃料供給量の適正化を図るための改良に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等に搭載されるディーゼルエンジン(以下、単に「エンジン」という場合もある)を駆動した際に排出される排気ガス中には、そのまま大気中に排出することが好ましくない物質が含まれている。特に、カーボンを主成分とする粒子状物質(以下、PM(Paticulate Matter)という)は大気汚染の原因になる。
【0003】
上記PMが大気中に排出されることを阻止する装置として、ディーゼルエンジンの排気通路に配設されるパティキュレートフィルタ(以下、単に「フィルタ」と呼ぶ)が知られている。つまり、排気通路を通過する排気ガス中に含まれるPMをこのフィルタによって捕集することで排気ガスの浄化を図っている。
【0004】
このフィルタとしては、例えばDPF(Diesel Particulate Filter)や、DPNR(Diesel Particulate−NOx Reduction system)触媒が知られている。
【0005】
ところで、この種のフィルタを用いてPMの捕集を行う場合、捕集したPMの堆積量が増大するとフィルタの詰まりが生じてしまう。このフィルタの詰まりが生じた状況では、フィルタを通過する排気ガスの圧力損失が著しく増大し、それに伴うエンジンの排気背圧増大によってエンジン出力の低下や燃料消費率の悪化を招いてしまうことになる。
【0006】
このような課題を解消するため、従来より、フィルタに捕集されたPMの捕集量(堆積量)がある程度の量に達した際には、排気温度を上昇させる等の手法によりフィルタ温度を高温化することで、堆積しているPMを酸化(燃焼)させて除去するフィルタ再生動作を行うようにしている(例えば下記の特許文献1及び特許文献2を参照)。
【0007】
このフィルタ再生動作の具体例としては、排気系に燃料添加弁を設けて燃料(添加剤)を供給するものや、インジェクタからの主燃料噴射(メイン噴射)後に少量の燃料を副次的に噴射(ポスト噴射)するものが挙げられる。このような排気系への燃料供給により、フィルタ上流側(排気ガス流れの上流側)に配設された酸化触媒(CCO)での反応温度が上昇し、これによって排気温度が上昇することにより、フィルタに堆積したPMを酸化(燃焼)させることができる。
【0008】
また、排気ガス中に含まれる大気汚染物質としては上記PMの他にNOxも挙げられる。このNOxに対しては、例えばNOx吸蔵還元触媒によって吸蔵することで大気中への放出を防止している。
【0009】
このNOx吸蔵還元触媒は、排気空燃比(A/F)がリーンである場合、つまり周囲の雰囲気が高酸素濃度状態である場合には排気ガス中のNOxを吸蔵する。一方、排気空燃比がリッチになった場合、詳しくは、周囲の雰囲気が低酸素濃度状態となり、かつ、排気ガス中に炭化水素(HC)や一酸化炭素(CO)などの未燃燃料成分を含む状態になった場合に、NOx吸蔵還元触媒は、吸蔵しているNOxを放出および還元する。具体的には、酸素濃度の低下によってNOx吸蔵還元触媒に吸蔵されているNOxが放出され、放出されたNOxが排気ガス中に含まれる未燃燃料成分との反応によって還元浄化されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−291824号公報
【特許文献2】特開2007−321614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところが、上述の如くフィルタ再生動作を行うに際し、排気系に対して燃料が過剰供給される状況になると、その燃料のうちの一部では反応(酸化反応)が行われることなく大気中に排出される場合がある。このような状況では、排気ガス中における未燃燃料(特にHC成分)の増大に伴い白煙の排出量の増大を招いてしまい、排気エミッションが悪化してしまうことになる。上記特許文献1では、筒内噴射量と燃料添加量との合計から求められる空燃比が理論空燃比よりもリッチにならないように燃料添加量を制限するものとなっている。
【0012】
しかしながら、条件によっては、上記筒内噴射量と燃料添加量との合計から求められる空燃比を理論空燃比に維持したり、または、理論空燃比よりもリーンに調整したとしても、未燃燃料の増大に伴って白煙の排出量の増大を招いてしまうことがある。具体的には、例えばフィルタ上流側に配設された触媒の温度が低い状況や排気ガス流量が多い状況である。
【0013】
その理由は、触媒床温が低い状況では、この触媒内部における燃料の酸化反応が不十分となり、未燃燃料の残存量が多くなってしまうためである。また、排気ガス流量が多い状況では、触媒内部を通過する排気ガスの流速が高いため、この触媒内部での燃料の酸化反応時間が十分に確保できず、この場合にも未燃燃料の残存量が多くなってしまうためである。
【0014】
尚、触媒の小型化や、触媒に担持される貴金属材料の減量化を図った場合には上記不具合の発生はいっそう顕著になる。
【0015】
また、このような不具合は、上記NOx吸蔵還元触媒に対してNOx還元用の燃料を供給する場合においても同様に発生する可能性がある。
【0016】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、排気系に燃料を供給することによって排気浄化ユニット(フィルタや触媒)に排気成分除去動作(上記PMの酸化処理やNOxの還元処理等)を行わせるに際し、排気系からの未燃燃料の排出を抑制しながらも、十分な排気成分除去機能を発揮させることが可能な内燃機関の排気浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
−課題の解決原理−
上記の目的を達成するために講じられた本発明の解決原理は、触媒床温及び排気ガス流量に基づいて、白煙を発生させないための排気限界空燃比を求め、これに基づいて、排気系に供給する排気成分除去動作用の燃料(PMの酸化処理やNOxの還元処理のための燃料)として、未燃燃料の排出を抑制可能となる燃料量を求め、この燃料量を上限として排気系に排気成分除去動作用の燃料を供給するようにしている。
【0018】
−解決手段−
具体的に、本発明は、排気系に設けられ、排気成分の吸蔵または捕集により排気の浄化を行なう排気浄化ユニットと、この排気浄化ユニットに吸蔵または捕集された排気成分の除去動作の開始条件が成立した際、排気系に昇温用燃料を供給する燃料供給手段とが備えられ、この燃料供給手段からの昇温用燃料の供給により排気浄化ユニットを昇温して上記吸蔵または捕集された排気成分を排気浄化ユニットから除去する排気成分除去動作が実行可能とされた内燃機関の排気浄化装置を前提とする。この内燃機関の排気浄化装置に対し、温度認識手段、流量認識手段、及び、制限供給量算出手段を備えさせている。上記温度認識手段は、上記排気成分除去動作期間中において上記排気浄化ユニットの温度を検知または推定する。また、上記流量認識手段は、上記排気成分除去動作期間中において上記排気浄化ユニットに導入されるガス流量を検知または推定する。そして、上記制限供給量算出手段は、上記温度認識手段によって検知または推定された排気浄化ユニットの温度と、上記流量認識手段によって検知または推定された排気浄化ユニットでのガス流量とに基づいて排気限界空燃比を求め、この排気限界空燃比に基づいて燃焼室内及び上記排気系へ導入可能な単位時間当たりの許容燃料量を求め、この許容燃料量と、燃焼室内での燃焼に寄与する燃料量とから、上記燃料供給手段から供給される昇温用燃料の単位時間当たりの供給量の上限値として制限供給量を求める。
【0019】
この特定事項により、排気浄化ユニットに吸蔵または捕集された排気成分量が所定量に達するなどして排気成分の除去動作の開始条件が成立した際には、燃料供給手段からの昇温用燃料の供給により排気浄化ユニットを昇温して上記吸蔵または捕集された排気成分を除去する排気成分除去動作が開始される。そして、この排気成分除去動作が開始されると、排気浄化ユニットの温度と排気浄化ユニットでのガス流量とに基づいて排気限界空燃比が求められ、この排気限界空燃比に基づいて燃焼室内及び上記排気系へ導入可能な単位時間当たりの許容燃料量が求められ、燃焼室内での燃焼に寄与する燃料量を、この許容燃料量から減算するなどして、上記燃料供給手段から供給される昇温用燃料の単位時間当たりの供給量の上限値として制限供給量を求める。これにより、排気成分除去動作では、燃料供給手段から供給される昇温用燃料の単位時間当たりの供給量は上記制限供給量以下に抑えられることになる。ここでいう「昇温用燃料の供給量を制限供給量以下に抑える。」とは、燃料供給手段からの燃料供給動作1回の当たりにおける昇温用燃料量を所定量以下に抑えること、及び、所定期間中における燃料供給手段からの昇温用燃料量を所定量以下に抑えることの両方を含む概念である。このようにして燃料供給手段から供給される昇温用燃料の単位時間当たりの供給量が上記制限供給量以下に抑えられることにより、燃料供給手段から供給された昇温用燃料の略全量が排気系内で酸化反応することになり、未燃燃料が大気中に排出されることなしに排気成分除去動作が十分に行われ、上記吸蔵または捕集された排気成分の除去機能を十分に発揮させることが可能になる。
【0020】
上記昇温用燃料の単位時間当たりの供給量の上限値としての制限供給量を求める具体的な動作としては、上記温度認識手段によって検知または推定された排気浄化ユニットの温度が低いほど、また、上記流量認識手段によって検知または推定された排気浄化ユニットでのガス流量が多いほど、上記排気限界空燃比をリーン側の値として求め、上記燃焼室内及び上記排気系へ導入可能な単位時間当たりの許容燃料量を少ない値として求めて、上記燃料供給手段から供給される昇温用燃料の単位時間当たりの供給量の上限値である制限供給量を少ない量として求める構成としている。
【0021】
つまり、排気浄化ユニットの温度が低い状況では、この排気浄化ユニット及びその周辺部での燃料の反応が不十分となり、未燃燃料の残存量が多くなってしまう可能性がある。また、排気浄化ユニットでのガス流量が多い状況では、排気浄化ユニットを通過する排気ガスの流速が高いため、この排気浄化ユニットでの燃料の反応時間が十分に確保できず、この場合にも未燃燃料の残存量が多くなってしまう可能性がある。このため、排気浄化ユニットの温度が低いほど、また、排気浄化ユニットでのガス流量が多いほど、上記燃焼室内及び上記排気系へ導入可能な単位時間当たりの許容燃料量を少ない値として求める。その結果、上記燃料供給手段から供給される昇温用燃料の単位時間当たりの供給量の上限値である制限供給量は少ない量として求められることになる。即ち、排気浄化ユニットの温度が低い状況や、排気浄化ユニットでのガス流量が多い状況といった未燃燃料の排出が懸念される状況であるほど、燃料供給手段から排気系に供給される昇温用燃料の量を少なく設定し、白煙の排出を確実に阻止できるようにしている。
【0022】
上記燃料供給手段からの昇温用燃料の供給タイミングを設定するための具体構成としては以下のものが挙げられる。
【0023】
先ず、上記排気成分除去動作期間中において上記昇温用燃料の制限供給量を上記単位時間毎に算出し、この制限供給量をこの単位時間毎に積算していくことで実行待機燃料供給量を求め、この実行待機燃料供給量が所定の基準供給量に達した場合に、上記燃料供給手段から基準供給量の昇温用燃料の供給を許可する燃料供給許可手段を設けた構成である。
【0024】
この場合、排気浄化ユニットの温度が低い場合や、排気浄化ユニットでのガス流量が多い場合には、単位時間毎に算出される制限供給量としては比較的少ない値となる。このため、実行待機燃料供給量が所定の基準供給量に達するまでの期間を長く要することになり、燃料供給手段から昇温用燃料を供給するインターバル(昇温用燃料の供給を停止している期間)が長く設定されることになる。その結果、昇温用燃料の単位時間(所定期間)当たりの供給量が少なくなり、白煙の排出を確実に阻止できる。
【0025】
また、上記排気成分除去動作期間中における上記排気浄化ユニットの目標温度に対する実際の排気浄化ユニットの温度の偏差に基づいて求められた単位時間当たりの必要燃料供給量、及び、上記昇温用燃料の制限供給量を上記単位時間毎に算出し、これら必要燃料供給量及び制限供給量のうち少ない方の量を上記単位時間毎に積算していくことで実行待機燃料供給量を求め、この実行待機燃料供給量が所定の基準供給量に達した場合に、上記燃料供給手段から基準供給量の昇温用燃料の供給を許可する燃料供給許可手段を設ける構成としてもよい。
【0026】
この場合、例えば、触媒床温が高い場合や、排気ガス流量が少ない場合であって、昇温用燃料の制限供給量が比較的大きな値として求められ、上記必要燃料供給量で昇温用燃料の供給を行っても白煙(未燃燃料の排出)が発生しない状況では、この必要燃料供給量が上記単位時間毎に実行待機燃料供給量に対して積算されていくことになる。これに対し、例えば、触媒床温が低い場合や、排気ガス流量が多い場合であって、昇温用燃料の制限供給量が比較的小さな値として求められ、上記必要燃料供給量で昇温用燃料の供給を行った場合には白煙が発生する状況では、上記制限供給量が上記単位時間毎に実行待機燃料供給量に対して積算されていくことになる。このため、白煙が発生しない範囲で昇温用燃料の単位時間当たりの供給量を最大限に確保することができ、排気成分除去動作を高い効率で実施することが可能となる。
【0027】
また、より具体的に、上記基準供給量の昇温用燃料を上記燃料供給手段から供給するタイミングとしては、上記燃料供給許可手段によって燃料供給手段からの昇温用燃料の供給が許可された後、所定の昇温用燃料の供給タイミングに達した時点で、上記基準供給量の昇温用燃料を上記燃料供給手段から供給する燃料供給実行手段を設けている。
【0028】
この所定の昇温用燃料の供給タイミングとしては、例えば、特定気筒の排気行程が挙げられる。つまり、この特定気筒の排気行程に同期させて昇温用燃料を燃料供給手段から供給するものである。これは、燃料供給手段を排気系へ燃料添加を行う燃料添加弁とした場合に有効な構成である。つまり、この燃料添加弁を特定気筒の排気側に(例えば排気ポートに対向して)配設した場合、この特定気筒の排気行程に同期させて燃料添加弁から燃料添加を行うことで、添加燃料が排気ポートや排気マニホールドの壁面に付着することなく良好に拡散されて排気浄化ユニットに向かって流れることになる。
【0029】
上記燃料供給手段からの昇温用燃料の供給タイミングを設定するための他の構成として以下のものが挙げられる。
【0030】
上記排気成分除去動作期間中における上記排気浄化ユニットの目標温度に対する実際の排気浄化ユニットの温度の偏差に基づいて求められた単位時間当たりの必要燃料供給量、及び、上記昇温用燃料の制限供給量を上記単位時間毎に算出し、これら必要燃料供給量及び制限供給量のうち少ない方の量を上記単位時間毎に積算していくことで実行待機燃料供給量を求め、所定の昇温用燃料の供給タイミングにおいて、その時点での実行待機燃料供給量の昇温用燃料を上記燃料供給手段から供給する燃料供給実行手段を設けた構成である。
【0031】
この場合、一定間隔(例えば一定の時間間隔または一定のクランク回転角度間隔)で昇温用燃料を供給する場合に、それぞれの供給量を適正化することにより、白煙の排出防止と排気成分除去動作との両立を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0032】
本発明では、触媒床温及び排気ガス流量に基づいて、排気系に供給する排気成分除去動作用の燃料として、未燃燃料の排出を抑制可能となる燃料量を求め、この燃料量を上限として排気系に排気成分除去動作用の燃料を供給するようにしている。このため、未燃燃料が大気中に排出されることなしに排気成分除去動作を良好に行うことができ、排気浄化ユニットに吸蔵または捕集された排気成分の除去機能を十分に発揮させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施形態に係るディーゼルエンジン及びその制御系統の概略構成図である。
【図2】ECU等の制御系の構成を示すブロック図である。
【図3】PM発生量pmeを求めるマップを示す図である。
【図4】PM燃焼量pmcを求めるマップを示す図である。
【図5】第1実施形態における燃料添加動作の手順の前半を示すフローチャート図である。
【図6】第1実施形態における燃料添加動作の手順の後半を示すフローチャート図である。
【図7】白煙限界A/F値を求めるマップを示す図である。
【図8】第1実施形態における実行待機燃料添加量の推移及び燃料添加タイミングを示すタイミングチャート図である。
【図9】第2実施形態における燃料添加動作の手順の前半を示すフローチャート図である。
【図10】第2実施形態における燃料添加動作の手順の後半を示すフローチャート図である。
【図11】第2実施形態における実行待機燃料添加量の推移及び燃料添加タイミングを示すタイミングチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、自動車に搭載されたコモンレール式筒内直噴型多気筒(例えば直列4気筒)ディーゼルエンジン(圧縮自着火式内燃機関)に本発明を適用した場合について説明する。
【0035】
−エンジンの構成−
先ず、本実施形態に係るディーゼルエンジンの概略構成を、図1を参照して説明する。
【0036】
本実施形態に係るディーゼルエンジン1(以下、「エンジン1」という)は、各気筒の燃焼室1aに、その燃焼室1a内での燃焼に供される燃料を噴射するインジェクタ(燃料噴射弁)2がそれぞれ配置されている。各気筒のインジェクタ2はコモンレール11に接続されている。コモンレール11にはサプライポンプ10が接続されている。
【0037】
サプライポンプ10は、燃料タンクから燃料を汲み上げ、この汲み上げた燃料を高圧にした後に燃料通路10aを介してコモンレール11に供給する。コモンレール11は、サプライポンプ10から供給された高圧燃料を所定圧力に保持(蓄圧)する蓄圧室としての機能を有し、この蓄圧した燃料を各インジェクタ2に分配する。インジェクタ2は、所定電圧が印加されたときに開弁して、燃焼室1a内に燃料を噴射供給する電磁駆動式の開閉弁である。インジェクタ2の開閉(燃料噴射量・噴射時期)はECU(Electronic Control Unit)100によってデューティ制御される。
【0038】
また、上記サプライポンプ10は、燃料タンクから汲み上げた燃料の一部を、添加燃料通路10bを介して燃料添加弁(燃料供給手段)12に供給する。添加燃料通路10bには、緊急時において添加燃料通路10bを遮断して燃料添加を停止するための遮断弁13が備えられている。また、上記燃料添加弁12は、各気筒のうちの一つの気筒(例えば第1番気筒)の排気ポート1bに対向する位置に配設されており、この排気ポート1bから排出される排気ガスに対して所定量及び所定タイミングで燃料添加を必要に応じて実行するようになっている。この燃料添加弁12からの燃料添加量(供給量)及び添加タイミングについては後述する。
【0039】
エンジン1には吸気通路3及び排気通路4が接続されている。吸気通路3には、上流部(吸入空気流れ方向の上流部)から下流側に向けて順に、エアクリーナ9、エアフローメータ(流量認識手段)33、後述するターボチャージャ6のコンプレッサインペラ63、インタークーラ8、及び、スロットルバルブ5が配置されている。スロットルバルブ5はスロットルモータ51によってスロットル開度が調整される。スロットルバルブ5のスロットル開度はスロットル開度センサ41によって検出される。なお、吸気通路3は、スロットルバルブ5の下流側に配置された吸気マニホールド3aにおいて各気筒に対応して分岐している。
【0040】
排気通路4は、エンジン1の各気筒の燃焼室1aと繋がる排気マニホールド4aによって各気筒毎に分岐した状態から1つに集合するように構成されている。
【0041】
排気通路4には、排気ガス中に含まれるHC(炭化水素)及びCO(一酸化炭素)を酸化して浄化するCCO(酸化触媒コンバータ)21とPM(粒子状物質)を捕集するDPF22とが順に配置され、燃焼室1aでの燃焼により生じた排気ガスが送り込まれる。これらCCO21及びDPF22が本発明でいう排気浄化ユニットに相当する。
【0042】
CCO21の上流側(排気ガス流れの上流側)の排気通路4にはA/Fセンサ36及び第1排気温センサ37が配置されており、この第1排気温センサ37の出力信号によりCCO21に入る排気ガスの温度を検出することができる。また、CCO21とDPF22との間の排気通路4には第2排気温センサ(温度認識手段)38が配置されており、この第2排気温センサ38の出力信号によりDPF22に入る排気ガスの温度(フィルタ温度(床温))を検出することができる。さらにDPF22の上流側圧力と下流側圧力との差圧を検出する差圧センサ39が設けられている。
【0043】
これらA/Fセンサ36、第1排気温センサ37、第2排気温センサ38、及び、差圧センサ39の各出力信号はECU100に入力される。
【0044】
エンジン1にはターボチャージャ6が装備されている。ターボチャージャ6は、ロータシャフト61を介して連結されたタービンホイール62とコンプレッサインペラ63とを備えている。
【0045】
コンプレッサインペラ63は吸気通路3内部に臨んで配置され、タービンホイール62は排気通路4内部に臨んで配置されている。このようなターボチャージャ6は、タービンホイール62が受ける排気流(排気圧)を利用してコンプレッサインペラ63を回転させることにより吸入空気を過給する。本実施形態におけるターボチャージャ6は、可変ノズル式ターボチャージャであって、タービンホイール62側に可変ノズルベーン機構64が設けられており、この可変ノズルベーン機構64の開度を調整することにより、エンジン1の過給圧を調整することができる。なお、ターボチャージャ6での過給によって昇温した吸入空気は、吸気通路3に配置したインタークーラ8によって強制冷却される。
【0046】
また、エンジン1にはEGR装置7が装備されている。EGR装置7は、排気通路4を流れる排気ガスの一部を吸気通路3に還流させて、各気筒の燃焼室1aへ再度供給することにより燃焼温度を低下させ、これによってNOx発生量を低減させる装置である。EGR装置7は、吸気マニホールド3aと排気マニホールド4aとを接続するEGR通路71を備えている。このEGR通路71には、EGRガス流れの上流側から順に、EGR通路71を通過(還流)するEGRガスを冷却するためのEGRクーラ73、及び、EGRバルブ72が設けられており、このEGRバルブ72の開度を調整することによって、排気通路4(排気マニホールド4a)から吸気通路3(吸気マニホールド3a)に導入されるEGRガス量(排気還流量)を調整することができる。
【0047】
−ECU−
ECU100は、図2に示すように、CPU101、ROM102、RAM103及びバックアップRAM104などを備えている。
【0048】
ROM102には、各種制御プログラムや、それら制御プログラムを実行する際に参照されるマップ等が記憶されている。CPU101は、ROM102に記憶された各種制御プログラムやマップに基づいて演算処理を実行する。また、RAM103はCPU101での演算結果や各センサから入力されたデータ等を一時的に記憶するメモリであり、バックアップRAM104はエンジン1の停止時にその保存すべきデータ等を記憶する不揮発性のメモリである。
【0049】
これらCPU101、ROM102、RAM103、及び、バックアップRAM104はバス107を介して互いに接続されるとともに、入力インターフェース105及び出力インターフェース106と接続されている。
【0050】
入力インターフェース105には、エンジン1の出力軸であるクランクシャフトの回転数を検出するエンジン回転数センサ31、エンジン水温(冷却水温)を検出する水温センサ32、エアフローメータ33、吸気マニホールド3aに配置され、吸入空気の温度を検出する吸気温センサ34、吸気マニホールド3aに配置され、吸入空気の圧力を検出する吸気圧センサ35、上記A/Fセンサ36、第1排気温センサ37、第2排気温センサ38、差圧センサ39、コモンレール11内の高圧燃料の圧力を検出するレール圧センサ40、スロットル開度センサ41、アクセル開度センサ42、及び、車速センサ43などが接続されており、これらの各センサからの信号がECU100に入力される。
【0051】
出力インターフェース106には、インジェクタ2、サプライポンプ10、スロットルバルブ5のスロットルモータ51、ターボチャージャ6の可変ノズルベーン機構64、及び、EGRバルブ72などが接続されている。
【0052】
ECU100は、上記した各種センサの出力信号に基づいて、エンジン1のスロットルバルブ5の開度制御、及び、燃料噴射量・噴射時期制御(インジェクタ2の開閉制御)などを含むエンジン1の各種制御を実行する。さらに、ECU100は、下記のNOx還元制御やDPF再生制御を実行する。
【0053】
−NOx還元制御−
ディーゼルエンジン1においては、大部分の運転領域で排気の空燃比はリーン空燃比となっているため、通常の運転状態では、CCO21の周囲雰囲気は高酸素濃度状態となっている。このため、排気ガス中のNOxは、CCO21に吸蔵されるが、周囲雰囲気が低酸素濃度となる状況は非常に少ないため、吸蔵されたNOxが還元されにくく、CCO21のNOx吸蔵能力が飽和しやすい。このため、CCO21のNOx吸蔵能力が低下した場合にはNOxを還元させてCCO21を回復させる必要がある。
【0054】
そこで、ECU100がNOx還元制御を実行する。具体的には、エンジン運転状態などに基づいて推定されるNOx吸蔵量が所定の限界値に達したときに、上記燃料添加弁12からの燃料添加やインジェクタ2からのポスト噴射を実施してCCO21の上流側の排気通路4に燃料を供給することにより、排気ガスの空燃比(A/F)を制御する。これにより、CCO21の周囲雰囲気を高温化や還元雰囲気にすることで、CCO21に吸蔵されたNOxを還元して放出する。尚、上記NOx吸蔵量の推定手法としては、エンジン回転数とインジェクタ2からの燃料噴射量とに応じたNOx吸蔵量を予め実験等により求めてマップ化しておき、このマップにより求められるNOx吸蔵量を積算するという方法が挙げられる。
【0055】
なお、NOx還元制御及び後述するPM再生制御は、それぞれの実行要求があったときに行われるが、各制御の実行が重なったときには、例えばPM再生制御→NOx還元制御の順で実行される。
【0056】
−DPF再生制御の概略説明−
<PM堆積量推定>
ECU100は、エンジン1の運転状態に基づいてDPF22におけるPM(排気成分)堆積量を推定する。このPM堆積量の推定動作としては、エンジン運転状態に基づく推定動作と、DPF22の前後差圧に基づく推定動作とが挙げられる。以下、それぞれについて説明する。
【0057】
(1)エンジン運転状態に基づくPM堆積量推定動作
この推定動作では、PM発生量pme及びPM燃焼量pmcを用いて推定PM堆積量PMsを算出する。
【0058】
PM発生量pmeは、単位時間当たり(例えば推定処理の1制御周期の間)にエンジン1の全燃焼室1aから排出されるPMの量であって、エンジン回転数センサ31の出力信号から得られるエンジン回転数NE及びインジェクタ2からの燃料噴射量Qv(指令値)に基づいて図3のマップを参照して求める。
【0059】
PM燃焼量pmcは、単位時間当たり(例えば推定処理の1制御周期の間)にDPF22に堆積されているPMが酸化燃焼される量であって、第2排気温センサ38の出力信号から得られる排気ガス温度Theg(フィルタ温度に相当)及びエアフローメータ33の出力信号から得られる吸入空気量Gaに基づいて図4のマップ(PMの酸化速度マップ)を参照して求める。
【0060】
そして、これらPM発生量pme及びPM燃焼量pmcを用いて推定PM堆積量PMsを、演算式[PMs←PMs(前回値)+pme−pmc]に基づいて逐次算出(積算)していく。
【0061】
図3に示すマップは、エンジン回転数NE及び燃料噴射量Qvをパラメータとし、PM発生量pmeを実験・計算等によって求めた値をマップ化したものであって、ECU100のROM102内に記憶されている。なお、図3のマップにおいて、エンジン回転数NE及び燃料噴射量Qvがマップ上の各ポイント間の値になるときには、補間処理にてPM発生量pmeを算出する。
【0062】
図4に示すマップは、排気ガス温度Theg及び吸入空気量Gaをパラメータとし、PM燃焼量pmcを実験・計算等によって求めた値をマップ化したものであって、ECU100のROM102内に記憶されている。なお、図4のマップにおいて、排気ガス温度Theg及び吸入空気量Gaがマップ上の各ポイント間の値になるときには、補間処理にてPM燃焼量pmcを算出する。
【0063】
(2)差圧に基づくPM堆積量推定動作
DPF22においては、PMの堆積が進行するにしたがって、その堆積PMが排気ガスの流れの妨げとなり、排気ガスの流動抵抗が増加する。これに伴ってDPF22の上流側の排気圧力と下流側の排気圧力との差圧ΔPが大きくなる。このDPF22前後の差圧ΔPは、DPF22に堆積したPMの燃焼除去が進行して、DPF22に堆積しているPM堆積量が減少するにしたがって小さくなる。このようにDPF22前後の差圧ΔPとDPF22に堆積しているPM堆積量との間には相関関係があるので、差圧ΔPからDPF22のPM堆積量を推定することができる。
【0064】
このような点を利用し、排気通路4(DPF22)に設けた上記差圧センサ39の出力信号から得られる差圧ΔPに基づいてマップを参照して、DPF22に捕集されたPMの堆積量(推定PM堆積量PMd)を推定する。
【0065】
なお、推定PM堆積量の算出に用いるマップは、上記したDPF22前後の差圧ΔPとPM堆積量との相関関係を考慮して、実験・計算等によって適合した値をマップ化したものであって、ECU100のROM102内に記憶されている。
【0066】
以上のような2タイプのPM堆積量推定動作のうち、一方のみを利用してPM堆積量を推定するようにしてもよいし、両方を利用してPM堆積量を推定するようにしてもよい(例えば、上記2つの推定PM堆積量PMs、PMdのうち一方が所定量を超えた場合に再生開始判定量に達したと判定するもの)。
【0067】
<フィルタ再生(DPF再生)動作>
上述したPM堆積量の推定動作によってPM堆積量が所定量(再生開始判定量)に達した場合(排気成分除去動作の開始条件が成立した場合)、ECU100は、フィルタ再生動作(排気成分除去動作)の開始時期であると判断する。
【0068】
このフィルタ再生動作では、上記燃料添加弁12から間欠的に(所定のインターバルを存して)燃料添加動作(昇温用燃料の供給動作)が行われる。この燃料添加動作によって燃料添加弁12からから供給された燃料は、排気通路4を経てCCO21に達する。CCO21に燃料成分(添加燃料)が到達すると、HCやCO等の成分が排気ガス中や触媒上で酸化反応され、その酸化反応に伴う発熱でCCO21(排気ガス)の温度が上昇し、この温度上昇によってDPF22の温度が上昇する。これにより、DPF22に堆積したPMが燃焼・除去され、DPF22のPM堆積量が減少していく。
【0069】
また、フィルタ再生動作としては、上記燃料添加弁12からの燃料添加によるものに代えて、または、この燃料添加弁12からの燃料添加と並行して上記インジェクタ2からのポスト噴射を実施するものとしてもよい。この場合、インジェクタ2が、本発明でいう燃料供給手段に相当することになる。
【0070】
このようなフィルタ再生動作中において、ECU100は、上述した推定動作によってPM堆積量を推定しており、このPM堆積量が再生完了判定量にまで低下した時点で、DPF22の再生が完全に完了(フィルタ完全再生完了)したと判断してフィルタ再生動作を終了する。
【0071】
−燃料添加動作−
次に、本実施形態の特徴とする動作である燃料添加の具体的な動作についての複数の実施形態を説明する。以下の実施形態では、上記燃料添加弁12からの燃料添加によってフィルタ再生動作を行う場合について説明する。また、ここでいう燃料添加動作は、上記PM堆積量推定動作によってPM堆積量が所定量(再生開始判定量)に達し、DPF22の再生動作が開始された場合におけるその再生期間中での添加燃料供給制御である。
【0072】
<第1実施形態>
先ず、第1実施形態について説明する。本実施形態における燃料添加動作の概略について説明すると、先ず、推定されたCCO21の温度(以下、「触媒床温」という)と排気ガス流量から、排気ガス中に白煙を生じさせないための総燃料供給量(未燃燃料が大気中に排出されないための総燃料供給量)を求め、この総燃料供給量から燃焼室1a内に噴射されている燃料量を減算することで、燃料添加弁12から供給可能な添加燃料量(A/F制限添加量)を求める。この動作を一定期間毎に繰り返す。そして、フィルタ再生動作中における燃料添加弁12からの燃料添加タイミングを上記供給可能な添加燃料量に応じて設定する。具体的には、供給可能な添加燃料量が少ない状況では、燃料添加のインターバルを長く設定し、単位期間当たりの添加燃料量を少なく設定するようにしている。
【0073】
次に、本実施形態の燃料添加動作の手順を図5及び図6のフローチャートに沿って説明する。このフローチャートに示される処理は、エンジン1の運転開始後、上記ECU100により所定の周期で繰り返し実行される。
【0074】
先ず、ステップST1において、Soot(PM)発生量とSoot燃焼(酸化)量からDPF22におけるSootの堆積量(上記推定PM堆積量に相当)を算出する。この算出動作は上述したPM堆積量推定動作によって行われる。
【0075】
ステップST2では、上記算出された堆積Soot量が予め設定された再生開始基準値を超えたか否かを判定する。この再生開始基準値とは、上記再生開始判定量に相当し、DPF22に堆積したSoot(PM)によって、通過する排気ガスの圧力損失が所定量以上に達した場合に相当する値として適宜設定されている。
【0076】
この堆積Soot量が再生開始基準値以下であり、ステップST2でNO判定された場合には、フィルタ再生動作は未だ必要ないとしてリターンされ、上記Soot堆積量の算出を継続する。
【0077】
堆積Soot量が再生開始基準値を超え、ステップST2でYES判定された場合にはステップST3に移り、DPF再生用の燃料添加を開始し、上述したDPF再生動作を実行する。つまり、上記燃料添加弁12からの燃料添加動作を開始する。そして、この際の燃料添加タイミングとしては以下の各ステップの動作により設定される。
【0078】
DPF再生動作が開始されると、先ず、ステップST4においてエンジン回転数と燃料噴射量とに基づきベース添加燃料量を算出する。エンジン回転数は、上記エンジン回転数センサ31の出力信号に基づいて算出される。また、燃料噴射量は、エンジン回転数、アクセル操作量、冷却水温度、吸気量、吸気温度等の運転状態に応じて決定(燃料噴射量マップ等によって決定)されたものである。また、上記ベース添加燃料量は、CCO21の温度が予め規制されたベース温度であり、且つ排気ガス流量が予め規制されたベース流量であると仮定した場合に必要とされる添加燃料量(触媒床温を目標触媒床温まで上昇させるために必要とされる添加燃料量)として規定されている。つまり、これらベース温度及びベース流量に対する実際のCCO21の温度(推定される温度)及び実際の排気ガス量の偏差量に応じてベース添加燃料量に対して後述する添加燃料補正量だけ補正されることになる。尚、上記ベース温度及びベース流量は任意の値に設定可能である。
【0079】
また、排気ガス流量と触媒床温とに基づいて上記ベース添加燃料量を求めるようにしてもよい。この場合、排気ガス流量は上記エアフローメータ33の出力信号に基づいて推定される。また、触媒床温は上記第2排気温センサ38により検出される排気ガス温度から推定される。
【0080】
その後、ステップST5に移り、現在の触媒床温(上記第2排気温センサ38により検出される排気ガス温度から推定されたCCO21の温度)が予め設定された目標触媒床温に等しいか否かを判定する。この目標触媒床温は、DPF再生動作に適した温度、つまり、DPF22に堆積されているPMの燃焼を可能にする排気温度を得るためのCCO21の温度(例えば700℃)として設定されている。この値は、これに限定されるものではない。
【0081】
この現在の触媒床温が目標触媒床温と異なっており、ステップST5でNO判定された場合にはステップST6に移り、上記目標触媒床温に対して実際の触媒床温が低いか否かを判定する。つまり、現在の触媒床温では、DPF22に堆積されているPMの燃焼が不可能または不十分な状況(CCO21での反応が不十分であって排気ガス温度がPM燃焼可能な温度まで十分に上昇していない状況)であるか否かを判定する。
【0082】
ステップST7,ST8,ST9は、上記触媒床温を目標触媒床温に近付けるための添加燃料補正量を求めるステップである。
【0083】
つまり、目標触媒床温に対して実際の触媒床温が低く、ステップST6でYES判定された場合には、前回の(前回実行されたルーチンで求められた)添加燃料補正量に対して予め規定された所定の補正量(例えば添加燃料補正量を10%大きくする補正量)だけ加算し、これを新たな添加燃料補正量として求める。
【0084】
一方、目標触媒温度に対して実際の触媒温度が高く、ステップST6でNO判定された場合には、前回の(前回実行されたルーチンで求められた)添加燃料補正量に対して予め規定された所定の補正量(例えば添加燃料補正量を10%小さくする補正量)だけ減算し、これを新たな添加燃料補正量として求める。この場合、新たな添加燃料補正量としては正の値であって上記前回の添加燃料補正量よりも小さな値、または、負の値(後述する必要添加量を少なくするための値)として求められる。上述した各補正量の値はこれに限定されるものではない。
【0085】
また、実際の触媒床温が目標触媒床温に一致しており、ステップST5でYES判定された場合には、ステップST9において、前回の添加燃料補正量を変更することなく、そのまま今回の添加燃料補正量として設定する。
【0086】
ステップST10(図6)では、以上のようにして求められた添加燃料補正量を上記ベース添加燃料量(上記ステップST4で算出されたベース添加燃料量)に対して加算することにより(添加燃料補正量が負の値である場合には減算することにより)、単位時間当たり(本ルーチンの処理期間中)の必要添加量(必要燃料供給量)を算出する。ここで求められた必要添加量は、DPF22に堆積されているPMの燃焼を可能にする温度まで触媒温度を上昇させるのに必要な燃料添加量として求められる。より詳しくは、今回のルーチンにおけるエンジン運転状態(エンジン回転数、燃料噴射量、実際の触媒床温等)に応じて、本ルーチンの期間中に必要となる燃料添加量として上記必要添加量は求められる。
【0087】
その後、ステップST11に移り、触媒床温と排気ガス流量より、単位時間当たり(本ルーチンの期間中における)の白煙限界A/F値(以下、単に「白煙限界A/F値」と呼ぶ:本発明でいう排気限界空燃比)を算出する。上記排気ガス流量は、上記エアフローメータ33の出力信号に基づいて推定される。
【0088】
また、上記白煙限界A/F値は、例えば図7に示す白煙限界A/F値算出マップにより求められる。この白煙限界A/F値算出マップは、触媒床温及び排気ガス流量に基づいて白煙限界A/F値を算出するものであり、触媒床温が低いほど、また、排気ガス流量が多いほど、白煙限界A/F値としては高く(リーン側の値として)求められるものとなっている。
【0089】
また、ここで求められる白煙限界A/F値は、この白煙限界A/F値よりも空燃比(A/F)が低い(リッチ側の値)場合に、排気ガス中に未燃燃料が発生し、白煙の発生が懸念されるものとして得られる。つまり、この白煙の発生を抑制するためには、この白煙限界A/F値よりも空燃比(A/F)を高く(リーン側の値)に設定することが必要であることになる。尚、上記白煙限界A/F値算出マップは、実験またはシミュレーションによって予め作成されて、上記ROM102に格納されている。
【0090】
このようにして白煙限界A/F値を求めた後、ステップST12において、以下の式(1)により単位時間当たりにおけるA/F制限添加量を算出する。
【0091】
A/F制限添加量=(空気量/白煙限界A/F値)−筒内噴射量 …(1)
この式(1)の右辺における第1項(空気量/白煙限界A/F値)は、排気ガスに白煙が発生しない範囲における、筒内噴射量と燃料添加弁12からの燃料添加量との和の最大値である(本発明でいう単位時間当たりの許容燃料量)。従って、この値から筒内噴射量(本発明でいう燃焼に寄与する燃料量)を減算することにより求められる上記A/F制限添加量は、排気ガスに白煙が発生しない範囲において、燃料添加弁12から供給可能な燃料添加量の最大値(本発明でいう単位時間当たりの供給量の上限値として制限供給量)となっている。つまり、燃料添加弁12からの燃料添加量を、このA/F制限添加量以下に設定することで、排気ガスに白煙を発生させないようにすることができる(制限供給量算出手段による制限供給量の算出動作)。
【0092】
ステップST13では、実行待機燃料添加量(実行待機燃料供給量)が算出される。この実行待機燃料添加量は、DPF再生動作が開始された後、間欠的に行われる燃料添加において、現在のエンジン運転状態で必要となる単位時間当たりの(本ルーチンの期間中における)燃料添加量である。そして、この実行待機燃料添加量としては、上記ステップST10で求められた必要添加量及びステップST12で求められたA/F制限添加量のうち少ない方の値を積算していく。
【0093】
つまり、A/F制限添加量が比較的多く(例えば、触媒床温が高い場合や、排気ガス流量が少ない場合)上記必要添加量で燃料添加を行っても白煙が発生しない状況では、この必要添加量が1ルーチン毎に積算されて実行待機燃料添加量が算出されいく。これに対し、A/F制限添加量が比較的少なく(例えば、触媒床温が低い場合や、排気ガス流量が多い場合)上記必要添加量で燃料添加を行った場合に白煙が発生する状況では、上記A/F制限添加量が1ルーチン毎に積算されて実行待機燃料添加量が算出されいく。
【0094】
ステップST14では、このようにして必要添加量またはA/F制限添加量が積算された実行待機燃料添加量が、予め設定された基準添加量(基準供給量)に達したか否かを判定する。この基準添加量は、予め設定された固定値であって、エンジン1の排気量や気筒数等に応じ、実験やシミュレーションによって設定されたものである。
【0095】
実行待機燃料添加量が基準添加量に達しておらず、ステップST14でNO判定された場合には、燃料添加弁12からの燃料添加を実行することなくリターンする。つまり、このステップST14で実行待機燃料添加量が基準添加量に達するまで燃料添加弁12からの燃料添加が許可されないことにより、燃料添加実行タイミングが遅延される(インターバルが長く設定される)ことになる。特に、触媒床温が低い場合や、排気ガス流量が多い場合であって、上記A/F制限添加量が比較的少なく算出されている場合には、実行待機燃料添加量の増加割合が小さいため、上記インターバルが長く設定されることになる。
【0096】
一方、実行待機燃料添加量が基準添加量に達しており、ステップST14でYES判定された場合(本発明でいう燃料供給許可手段による昇温用燃料の供給の許可がなされた場合)には、ステップST15に移り、燃料添加実行タイミング(本発明でいう所定の昇温用燃料の供給タイミング)を迎えたか否かを判定する。この燃料添加実行タイミングとは、例えば上記燃料添加弁12が対向する排気ポート1bの気筒(本実施形態の場合には第1番気筒)の排気行程に設定されている。つまり、この気筒が排気行程を迎えるタイミング、つまり、クランク角度で720°回転する毎に燃料添加実行タイミングを迎えることになる。これは、第1番気筒の排気行程に同期させて燃料添加弁12から燃料添加を行うことで、添加燃料が排気ポート1bや排気マニホールド4aの壁面に付着することなく良好に拡散されてCCO21及びDPF22に向かって流れるようにするためである。
【0097】
燃料添加実行タイミングを迎えておらず(第1番気筒の排気行程にはなく)、ステップST15でNO判定された場合には、ステップST4に戻り上記の動作を繰り返す。つまり、必要添加量の算出及びA/F制限添加量の算出を行い、そのうち少ない方の値を積算することで実行待機燃料添加量を更新していく。
【0098】
燃料添加実行タイミングを迎えたことで(第1番気筒の排気行程となり)ステップST15でYES判定された場合には、ステップST16に移り、上記基準添加量だけ燃料添加弁12からの燃料添加を実行する(燃料供給実行手段による昇温用燃料の供給動作)。
【0099】
このようにして燃料添加を実行した後、上記実行待機燃料添加量から、今回供給された燃料添加量、つまり、基準添加量だけ減算したものを新たな実行待機燃料添加量として設定し、リターンする。
【0100】
このような動作が繰り返されることにより、燃料添加弁12からの燃料添加動作は、上記実行待機燃料添加量が基準添加量に達し且つ燃料添加実行タイミング(第1番気筒の排気行程)を迎えるまで実行されないことになる。そして、触媒床温が低いほど、また、排気ガス流量が多いほど、上記ステップST12で求められるA/F制限添加量は少ない値となるため、このような状況下では、上記実行待機燃料添加量が基準添加量に達するまでの時間(上記ステップST14でYES判定されるまでの時間)が長くなり、その結果、燃料添加動作が実行されるまでのインターバルが長く設定される(燃料添加動作が遅延される)ことになる。以下、このインターバルが異なる状況を、実行待機燃料添加量の推移及び燃料添加タイミングを示す波形図を用いて具体的に説明する。
【0101】
図8は、本実施形態における上記実行待機燃料添加量(ΣQad)の推移及び燃料添加タイミング(燃料噴射率Qad(単位時間当たりの燃料噴射量)の波形)を示すタイミングチャート図である。
【0102】
図8(a)に示すタイミングチャートでは、実行待機燃料添加量(ΣQad)が基準添加量に達するタイミングと燃料添加実行タイミング(第1番気筒が排気行程となるタイミング)とが一致している場合である。この場合、燃料添加時における実行待機燃料添加量(ΣQad)は上記基準添加量に等しいため、燃料添加弁12からの燃料添加が実行される度に実行待機燃料添加量(ΣQad)は「0」となっている。また、燃料添加タイミングはクランク角度で720°毎に訪れており、この720°毎に基準添加量での燃料添加が実行されている。
【0103】
また、図8(b)及び図8(c)に示すタイミングチャートでは、触媒床温が比較的低く、または排気ガス流量が比較的多いために、上記A/F制限添加量が必要添加量に対して少なく算出された場合の各波形を示している。
【0104】
そして、図8(b)に示すものは、実行待機燃料添加量(ΣQad)が基準添加量に達するタイミングと燃料添加実行タイミング(第1番気筒が排気行程となるタイミング)とが一致している場合である。具体的には、燃料添加実行タイミングを2回迎える度に(クランク角度で1440°回転する度に)実行待機燃料添加量(ΣQad)が基準添加量に達し、燃料添加弁12からの燃料添加が実行されている。この場合、燃料添加弁12からの燃料添加が実行される度に実行待機燃料添加量(ΣQad)は「0」となっている。
【0105】
一方、図8(c)に示すものは、実行待機燃料添加量(ΣQad)が基準添加量に達するタイミングが燃料添加実行タイミングに一致しておらず、実行待機燃料添加量(ΣQad)が基準添加量に達した後(基準添加量を超えた後)、燃料添加実行タイミング(第1番気筒が排気行程となるタイミング)を迎えたタイミングで燃料添加弁12からの燃料添加が実行されている。この場合、燃料添加実行タイミングを迎えた時点では、実行待機燃料添加量(ΣQad)は基準添加量よりも大きくなっているため、燃料添加弁12からの燃料添加が実行されても実行待機燃料添加量(ΣQad)は「0」には戻らず、実行待機燃料添加量が残留することになる。そして、この残留した実行待機燃料添加量に対して、新たに算出された必要添加量またはA/F制限添加量が加算されていくことになる(上記ステップST13)。
【0106】
尚、上記説明では、燃料添加タイミングがクランク角度で720°毎に訪れる場合に、燃料添加動作の実行インターバルを長く設定する(燃料添加動作を遅延させる)際には、クランク角度で1440°毎に燃料添加が行われる場合について説明した。これに限らず、燃料添加タイミングがクランク角度で1440°毎に訪れる場合(通常時においてクランク角度で1440°毎に燃料添加を実行する場合)には、燃料添加動作の実行インターバルを長く設定する(燃料添加動作を遅延させる)際には、クランク角度で2160°間隔や2880°間隔で燃料添加が行われることになる。
【0107】
以上説明したように、本実施形態によれば、触媒床温が比較的低く、または排気ガス流量が比較的多い場合には、燃料添加弁12からの燃料添加のインターバルを長く設定するようにしている。このため、単位期間当たりの燃料添加量を必要最小限だけ減少させることにより、未燃燃料が大気中に排出されることなしにPMを酸化処理するための排気温度を十分に高めることができてDPF22の再生動作を良好に行うことができる。
【0108】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。本実施形態は、燃料添加弁12からの燃料添加動作が上記第1実施形態のものと異なっている。その他、エンジン1の構成及びその制御については第1実施形態のものと同様である。従って、ここでは、第1実施形態との相違点について説明する。
【0109】
本実施形態における燃料添加動作の概略について説明すると、先ず、触媒床温と排気ガス流量から、排気ガス中に白煙を生じさせないための総燃料供給量を求め、この総燃料供給量から燃焼室1a内に噴射されている燃料量を減算することで、燃料添加弁12から供給可能な添加燃料量(A/F制限添加量)を求める。この動作を一定期間毎に繰り返し、上記第1実施形態の場合と同様にして実行待機燃料添加量を積算していく。そして、所定タイミングで訪れる燃料添加タイミング(例えば、第1番気筒が排気行程となるタイミング)において、その時点での求められている上記実行待機燃料添加量で燃料添加弁12からの燃料添加を実行するようにしている。
【0110】
次に、本実施形態の燃料添加動作の手順を図9及び図10のフローチャートに沿って説明する。このフローチャートに示される処理は、上記ECU100により所定の周期で繰り返し実行される。
【0111】
図9及び図10に示すフローチャートにおけるステップST21〜ステップST33の動作は上述した第1実施形態における図5及び図6で示したフローチャートにおけるステップST1〜ステップST13の動作と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0112】
ステップST33において実行待機燃料添加量が算出された後、ステップST34に移り、燃料添加実行タイミングを迎えたか否かを判定する。この燃料添加実行タイミングとは、上記第1実施形態の場合と同様に、例えば上記燃料添加弁12が配置されている第1番気筒の排気行程に設定されている。つまり、クランク角度で720°回転する毎に燃料添加実行タイミングを迎えることになる。
【0113】
燃料添加実行タイミングを迎えておらず、ステップST34でNO判定された場合には、ステップST24に戻る。つまり、必要添加量の算出及びA/F制限添加量の算出を行い、そのうち少ない方の値を積算することで実行待機燃料添加量を更新していく。
【0114】
燃料添加実行タイミングを迎えたことでステップST34でYES判定された場合には、ステップST35に移り、この燃料添加実行タイミングを迎えた時点での実行待機燃料添加量だけ燃料添加弁12からの燃料添加を実行し、リターンする。
【0115】
このような動作が繰り返されることにより、燃料添加弁12から供給される燃料添加量は、上記A/F制限添加量によって制限された量(A/F制限添加量が積算されることで得られる実行待機燃料添加量)として規定されることになる。そして、このA/F制限添加量は、触媒床温が低いほど、また、排気ガス流量が多いほど、少ない値となるため、未燃燃料の残存による白煙の発生が防止できる範囲で、最大限の燃料添加量が得られることになる。
【0116】
図11は、本実施形態における実行待機燃料添加量(ΣQad)の推移及び燃料添加タイミング(燃料噴射率Qad(単位時間当たりの燃料噴射量)の波形)を示すタイミングチャート図である。
【0117】
この図11に示すタイミングチャートでは、触媒床温が比較的低く、または排気ガス流量が比較的多いために、上記A/F制限添加量が少なく算出された場合の各波形を示している。この場合、燃料添加実行タイミングを迎えた際の実行待機燃料添加量(ΣQad)は基準添加量よりも少なくなっており、燃料添加弁12から供給される添加燃料量は比較的少なく設定される。また、この燃料添加弁12からの燃料添加が実行される度に実行待機燃料添加量(ΣQad)は「0」となっている。
【0118】
本実施形態では、触媒床温が比較的低く、または排気ガス流量が比較的多い場合には、一定間隔で供給される添加燃料の供給量を必要最小限だけ少なく設定するようにしている。このため、未燃燃料が大気中に排出されることなしにPMを酸化処理するための排気温度を十分に高めることができDPF22の再生動作を良好に行うことができる。
【0119】
−他の実施形態−
以上説明した各実施形態は自動車に搭載されたコモンレール式筒内直噴型多気筒ディーゼルエンジンに本発明を適用した場合について説明した。本発明はこれに限らず、自動車以外に搭載されるディーゼルエンジンにも適用可能である。また、ディーゼルエンジンに限らず、ガソリンエンジンに対しても本発明は適用可能である。
【0120】
また、上記各実施形態では、燃料添加弁12からの燃料添加によってDPF22の再生動作を行うものであった。本発明は、これに限らず、インジェクタ2からのポスト噴射によってDPF22の再生動作を行う場合にも適用可能である。
【0121】
また、上記各実施形態では、DPF22の再生動作に本発明を適用した場合について説明した。本発明はこれに限らず、上述したCCO21やNOx吸蔵還元触媒でのNOx還元動作(排気成分除去動作)にも適用可能である。この場合、排気ガス中に白煙を発生させることなく、NOx還元作用によるCCO21やNOx吸蔵還元触媒のNOx吸蔵能力を回復させることが可能になる。
【0122】
また、上述した第1実施形態と第2実施形態とは併用することも可能である。つまり、燃料添加弁12からの燃料添加のインターバルの調整、及び、燃料添加1回当たりの添加量の調整を共に行うものである。
【0123】
更に、上記各実施形態では、PMを捕集するフィルタとしてはDPF22を備えたシステムについて説明したが、DPNRを備えたシステムに対しても本発明は適用可能である。
【0124】
また、上記各実施形態では、CCO21とDPF22との間に配設された第2排気温センサ38の出力信号により触媒床温を推定するようにしていたが、CCO21の上流側に配設された第1排気温センサ37の出力信号により触媒床温を推定するようにしてもよいし、DPF22の下流側に排気温センサを備えさせ、この排気温センサの出力信号によりフィルタ再生動作時の温度を検出するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明は、自動車に搭載されるコモンレール式筒内直噴型多気筒ディーゼルエンジンにおいて、排気系に備えられたDPFの再生時における燃料添加制御に適用可能である。
【符号の説明】
【0126】
1 エンジン(内燃機関)
1a 燃焼室
2 インジェクタ(燃料供給手段)
4 排気通路
12 燃料添加弁(燃料供給手段)
21 CCO(排気浄化ユニット)
22 DPF(排気浄化ユニット)
33 エアフローメータ(流量認識手段)
37 第1排気温センサ
38 第2排気温センサ(温度認識手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気系に設けられ、排気成分の吸蔵または捕集により排気の浄化を行なう排気浄化ユニットと、この排気浄化ユニットに吸蔵または捕集された排気成分の除去動作の開始条件が成立した際、排気系に昇温用燃料を供給する燃料供給手段とが備えられ、この燃料供給手段からの昇温用燃料の供給により排気浄化ユニットを昇温して上記吸蔵または捕集された排気成分を排気浄化ユニットから除去する排気成分除去動作が実行可能とされた内燃機関の排気浄化装置において、
上記排気成分除去動作期間中において上記排気浄化ユニットの温度を検知または推定する温度認識手段と、
上記排気成分除去動作期間中において上記排気浄化ユニットに導入されるガス流量を検知または推定する流量認識手段と、
上記温度認識手段によって検知または推定された排気浄化ユニットの温度と、上記流量認識手段によって検知または推定された排気浄化ユニットでのガス流量とに基づいて排気限界空燃比を求め、この排気限界空燃比に基づいて燃焼室内及び上記排気系へ導入可能な単位時間当たりの許容燃料量を求め、この許容燃料量と、燃焼室内での燃焼に寄与する燃料量とから、上記燃料供給手段から供給される昇温用燃料の単位時間当たりの供給量の上限値として制限供給量を求める制限供給量算出手段とを備えていることを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項2】
請求項1記載の内燃機関の排気浄化装置において、
上記制限供給量算出手段は、上記温度認識手段によって検知または推定された排気浄化ユニットの温度が低いほど、また、上記流量認識手段によって検知または推定された排気浄化ユニットでのガス流量が多いほど、上記排気限界空燃比をリーン側の値として求め、上記燃焼室内及び上記排気系へ導入可能な単位時間当たりの許容燃料量を少ない値として求めて、上記燃料供給手段から供給される昇温用燃料の単位時間当たりの供給量の上限値である制限供給量を少ない量として求めるよう構成されていることを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の内燃機関の排気浄化装置において、
上記排気成分除去動作期間中において上記昇温用燃料の制限供給量を単位時間毎に算出し、この制限供給量をこの単位時間毎に積算していくことで実行待機燃料供給量を求め、この実行待機燃料供給量が所定の基準供給量に達した場合に、上記燃料供給手段から基準供給量の昇温用燃料の供給を許可する燃料供給許可手段が設けられていることを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項4】
請求項1または2記載の内燃機関の排気浄化装置において、
上記排気成分除去動作期間中における上記排気浄化ユニットの目標温度に対する実際の排気浄化ユニットの温度の偏差に基づいて求められた単位時間当たりの必要燃料供給量、及び、上記昇温用燃料の制限供給量を単位時間毎に算出し、これら必要燃料供給量及び制限供給量のうち少ない方の量を単位時間毎に積算していくことで実行待機燃料供給量を求め、この実行待機燃料供給量が所定の基準供給量に達した場合に、上記燃料供給手段から基準供給量の昇温用燃料の供給を許可する燃料供給許可手段が設けられていることを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項5】
請求項3または4記載の内燃機関の排気浄化装置において、
上記燃料供給許可手段によって燃料供給手段からの昇温用燃料の供給が許可された後、所定の昇温用燃料の供給タイミングに達した時点で、上記基準供給量の昇温用燃料を上記燃料供給手段から供給する燃料供給実行手段が設けられていることを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項6】
請求項1または2記載の内燃機関の排気浄化装置において、
上記排気成分除去動作期間中における上記排気浄化ユニットの目標温度に対する実際の排気浄化ユニットの温度の偏差に基づいて求められた単位時間当たりの必要燃料供給量、及び、上記昇温用燃料の制限供給量を単位時間毎に算出し、これら必要燃料供給量及び制限供給量のうち少ない方の量を単位時間毎に積算していくことで実行待機燃料供給量を求め、所定の昇温用燃料の供給タイミングにおいて、その時点での実行待機燃料供給量の昇温用燃料を上記燃料供給手段から供給する燃料供給実行手段が設けられていることを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項1】
排気系に設けられ、排気成分の吸蔵または捕集により排気の浄化を行なう排気浄化ユニットと、この排気浄化ユニットに吸蔵または捕集された排気成分の除去動作の開始条件が成立した際、排気系に昇温用燃料を供給する燃料供給手段とが備えられ、この燃料供給手段からの昇温用燃料の供給により排気浄化ユニットを昇温して上記吸蔵または捕集された排気成分を排気浄化ユニットから除去する排気成分除去動作が実行可能とされた内燃機関の排気浄化装置において、
上記排気成分除去動作期間中において上記排気浄化ユニットの温度を検知または推定する温度認識手段と、
上記排気成分除去動作期間中において上記排気浄化ユニットに導入されるガス流量を検知または推定する流量認識手段と、
上記温度認識手段によって検知または推定された排気浄化ユニットの温度と、上記流量認識手段によって検知または推定された排気浄化ユニットでのガス流量とに基づいて排気限界空燃比を求め、この排気限界空燃比に基づいて燃焼室内及び上記排気系へ導入可能な単位時間当たりの許容燃料量を求め、この許容燃料量と、燃焼室内での燃焼に寄与する燃料量とから、上記燃料供給手段から供給される昇温用燃料の単位時間当たりの供給量の上限値として制限供給量を求める制限供給量算出手段とを備えていることを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項2】
請求項1記載の内燃機関の排気浄化装置において、
上記制限供給量算出手段は、上記温度認識手段によって検知または推定された排気浄化ユニットの温度が低いほど、また、上記流量認識手段によって検知または推定された排気浄化ユニットでのガス流量が多いほど、上記排気限界空燃比をリーン側の値として求め、上記燃焼室内及び上記排気系へ導入可能な単位時間当たりの許容燃料量を少ない値として求めて、上記燃料供給手段から供給される昇温用燃料の単位時間当たりの供給量の上限値である制限供給量を少ない量として求めるよう構成されていることを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の内燃機関の排気浄化装置において、
上記排気成分除去動作期間中において上記昇温用燃料の制限供給量を単位時間毎に算出し、この制限供給量をこの単位時間毎に積算していくことで実行待機燃料供給量を求め、この実行待機燃料供給量が所定の基準供給量に達した場合に、上記燃料供給手段から基準供給量の昇温用燃料の供給を許可する燃料供給許可手段が設けられていることを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項4】
請求項1または2記載の内燃機関の排気浄化装置において、
上記排気成分除去動作期間中における上記排気浄化ユニットの目標温度に対する実際の排気浄化ユニットの温度の偏差に基づいて求められた単位時間当たりの必要燃料供給量、及び、上記昇温用燃料の制限供給量を単位時間毎に算出し、これら必要燃料供給量及び制限供給量のうち少ない方の量を単位時間毎に積算していくことで実行待機燃料供給量を求め、この実行待機燃料供給量が所定の基準供給量に達した場合に、上記燃料供給手段から基準供給量の昇温用燃料の供給を許可する燃料供給許可手段が設けられていることを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項5】
請求項3または4記載の内燃機関の排気浄化装置において、
上記燃料供給許可手段によって燃料供給手段からの昇温用燃料の供給が許可された後、所定の昇温用燃料の供給タイミングに達した時点で、上記基準供給量の昇温用燃料を上記燃料供給手段から供給する燃料供給実行手段が設けられていることを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項6】
請求項1または2記載の内燃機関の排気浄化装置において、
上記排気成分除去動作期間中における上記排気浄化ユニットの目標温度に対する実際の排気浄化ユニットの温度の偏差に基づいて求められた単位時間当たりの必要燃料供給量、及び、上記昇温用燃料の制限供給量を単位時間毎に算出し、これら必要燃料供給量及び制限供給量のうち少ない方の量を単位時間毎に積算していくことで実行待機燃料供給量を求め、所定の昇温用燃料の供給タイミングにおいて、その時点での実行待機燃料供給量の昇温用燃料を上記燃料供給手段から供給する燃料供給実行手段が設けられていることを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−231645(P2011−231645A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101181(P2010−101181)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]