説明

内燃機関用の排ガス浄化装置、及び旋回流発生装置

【課題】優れた旋回力を有し、抵抗の小さな旋回流発生手段を備えた内燃機関用の排ガス浄化装置を提供するとともに、優れた旋回力を有し、抵抗の小さな旋回流発生装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る内燃機関用の排ガス浄化装置100は、排気管1と、還元触媒2と、還元剤供給手段3と、旋回流発生手段40と、を備える。旋回流発生手段40は、略楕円形状のプレートをその長軸方向に二分割してなる二枚の羽根410、420を有し、これらの二枚の羽根410、420がプレートの短軸を中心軸として相互に回転交差した状態で一体化され、長軸方向が排ガスの流れ方向と平行となるように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関用の排ガス浄化装置、及び旋回流発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関用の排ガス浄化装置は、内燃機関から排出された排ガスを浄化するための装置である。この種の装置として、従来より、内燃機関から排出された排ガスが流れる排気管と、その排気管内に設けられ排ガスに含まれる窒素酸化物を還元浄化する還元触媒と、その還元触媒の上流側を流れる排ガスに還元剤を噴射供給する還元剤供給手段と、排気管内のうち還元触媒の上流側に設けられ排ガスに旋回流を発生させる旋回流発生手段と、を備えたものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
図8は、このような従来技術に係る内燃機関用の排ガス浄化装置の一例を示す図であり、(a)は模式図、(b)は(a)で示した主要部Vの拡大斜視図である。
【0004】
図8(a)に示すように、内燃機関用の排ガス浄化装置10は、排気管1と、還元触媒2と、還元触媒2の上流側を流れる排ガスに還元剤(尿素水など)を噴射供給する還元剤噴射ノズル3と、排気管1内のうち還元触媒2の上流側(具体的には、還元剤噴射ノズル3によって還元剤が排ガスに噴霧される箇所(同図の「還元剤噴霧部」参照)の上流側)に設けられ排ガスに旋回流を発生させる旋回流発生手段4と、を備えている。また、図8(b)に示すように、旋回流発生手段4は、支柱41と、羽根42とを備え、排ガスに乱流若しくは旋回流を起こして、還元剤の排ガスへの拡散を促進するフィン構造体である。
【0005】
このような内燃機関用の排ガス浄化装置10にあっては、旋回流発生手段4によって、排ガスに乱流若しくは旋回流が生じて、還元剤の排ガスへの拡散が促進される。そのため、還元触媒2に対して還元剤を均一な状態で供給することが可能となり、その結果、所定の排ガス浄化性能が確保されることとなる。
【特許文献1】特開2006−29233号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、旋回流発生手段4の旋回力を向上させることができれば、還元触媒に対して還元剤をより均一な状態で供給することが可能となり、その結果、排ガス浄化性能が向上することとなる。そのため、旋回流発生手段4の旋回力を向上させることが望ましい。
【0007】
一方、排ガスが旋回流発生手段4を通過する際には、その旋回流発生手段4に大きな抵抗が生じるため、旋回流発生手段4には一定の強度が要求されることとなるが、この抵抗を低減させることができれば、旋回流発生手段4に要求される強度を低減させることができる。また、旋回流発生手段4の抵抗を低減させることができれば、内燃機関の燃費を改善することもできる。そのため、旋回流発生手段4の抵抗を低減させることが望ましい。
【0008】
しかしながら、旋回流発生手段4の旋回力を向上させようとすれば、当該旋回流発生手段4の抵抗が増大してしまう傾向にあり、他方、旋回流発生手段4の抵抗を低減させようとすれば、当該旋回流発生手段4の旋回力が低下してしまう傾向にある。
【0009】
そのため、従来の技術にあっては、旋回流発生手段4の旋回力を向上させつつ、当該旋回流発生手段4の抵抗を低減させることができなかったのである。
【0010】
そこで、従来より、優れた旋回力を有し、抵抗の小さな旋回流発生手段を備えた内燃機関用の排ガス浄化装置の開発が望まれていた。また、このような内燃機関用の排ガス浄化装置の開発だけでなく、一般の排気管内にも設置することが可能であって、優れた旋回力を有し、抵抗の小さな旋回流発生装置それ自体の開発も望まれていたのである。
【0011】
本発明は、優れた旋回力を有し、抵抗の小さな旋回流発生手段を備えた内燃機関用の排ガス浄化装置を提供するとともに、優れた旋回力を有し、抵抗の小さな旋回流発生装置を提供することをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は、内燃機関から排出された排ガスが流れる排気管と、前記排気管内に設けられ前記排ガスに含まれる窒素酸化物を還元浄化する還元触媒と、前記還元触媒の上流側を流れる前記排ガスに還元剤を噴射供給する還元剤供給手段と、前記排気管内のうち前記還元触媒の上流側に設けられ前記排ガスに旋回流を発生させる旋回流発生手段と、を備えた内燃機関用の排ガス浄化装置であって、前記旋回流発生手段は、略楕円形状のプレートをその長軸方向に二分割してなる二枚の羽根を有し、これらの二枚の羽根が前記プレートの短軸を中心軸として相互に回転交差した状態で一体化され、前記長軸方向が前記排ガスの流れ方向と平行となるように配置されていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明において、前記羽根は、その外縁の円弧部が前記排気管の内壁面と接触するように構成されていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、排気管内に設けられる旋回流発生装置であって、略楕円形状のプレートをその長軸方向に二分割してなる二枚の羽根を有し、これらの二枚の羽根が前記プレートの短軸を中心軸として相互に回転交差した状態で一体化され、前記長軸方向が前記排ガスの流れ方向と平行となるように設けられることを特徴とする。
【0015】
また、本発明において、前記羽根は、その外縁の円弧部が前記排気管の内壁面と接触するように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、優れた旋回力を有し、抵抗の小さな旋回流発生手段を備えた内燃機関用の排ガス浄化装置を提供することができる。さらに、本発明によれば、優れた旋回力を有し、抵抗の小さな旋回流発生装置を提供することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る内燃機関用の排ガス浄化装置の主要部を示す図である。図2は、図1の各方向(A〜D)から旋回流発生手段40を見た図であり、図2の(A)〜(D)は、それぞれ図1のA〜Dから旋回流発生手段40を見た図に対応する。なお、図1及び図2において、図8と同じ箇所には同一の符号を付している。
【0018】
図1に示すように、内燃機関用の排ガス浄化装置100は、排気管1内に旋回流発生手段40を備えている。また、図2に示すように、旋回流発生手段40は、略楕円形状のプレートをその長軸方向に二分割してなる二枚の羽根410、420を有し、これらの二枚の羽根410、420が連結部431、432によって前記プレートの短軸を中心軸として相互に回転交差した状態で一体化されており、前記長軸方向が排ガスの流れ方向と平行となるように配置されている。羽根410、420は、いずれもその外縁の円弧部410a、420aが排気管1の内壁面と接触するように構成されている。
【0019】
このような内燃機関用の排ガス浄化装置100にあっては、旋回流発生手段40を構成する二枚の羽根410、420によって、排気管1内を流れる排ガスに二重螺旋状の旋回流が生じる。そのため、内燃機関用の排ガス浄化装置100は、優れた旋回力を有することとなる。しかも、これらの羽根410、420は、排ガスの抵抗を受けにくい構造を有し、二重螺旋状の旋回流が羽根410、420の壁面に沿ってスムースに流れることとなる。そのため、内燃機関用の排ガス浄化装置100は、抵抗が小さくなる。
【0020】
なお、図1において、旋回流発生手段40は、還元剤噴霧部(図8参照)の上流側に設けられているが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、還元触媒(図8参照)の上流側であれば、旋回流発生手段40が、還元剤噴霧部の下流側に設けられていてもよい。
【0021】
次に、図3〜7を参照しながら、本発明に係る旋回流発生手段と、従来技術に係る旋回流発生手段との相違点について説明する。
【0022】
図3は、本発明に係る旋回流発生手段(同図の「発明案」参照)、及び従来技術に係る旋回流発生手段(同図の「従来構造1,2」参照)について、それぞれのフィン仕様(ア〜ウ)の旋回力及び抵抗の大小を比較した図表である。また、図4〜7は、いずれも図3に示した各フィン仕様についての流れ解析結果を示す図であり、それぞれ、図4は流線、図5は旋回力、図6は抵抗、図7は流速を示す。なお、図6には、図3の各フィン仕様(ア〜ウ)のうち、ア及びイのフィン仕様についてのみ流れ解析結果(抵抗)を図示しており、ウのフィン仕様については流れ解析結果(抵抗)を図示していない。
【0023】
まず、図3に示すように、発明案の場合には、旋回力が2.2回転と高い値を示すとともに、抵抗が3.2kPaと低い値を示した。これに対し、旋回力が2.1回転と高い値を示し、発明案と同等の旋回力を有する従来構造1の場合には、抵抗が65.1kPaと著しく高い値を示した。一方、抵抗が3.2kPaと低い値を示し、発明案と同等の抵抗を有する従来構造2の場合には、旋回力が0.5回転と著しく低い値を示した。また、図4〜7に示した流れ解析結果により、発明案の場合には、従来構造1、2と異なり、旋回力が大きく、抵抗が小さくなることが判明した。
【0024】
このように、本発明に係る内燃機関用の排ガス浄化装置100(図1参照)にあっては、従来技術に係る内燃機関用の排ガス浄化装置10(図8参照)と比べ、優れた旋回力を有し、且つ、抵抗が小さくなるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係る内燃機関用の排ガス浄化装置の主要部を示す図である。
【図2】図1の各方向(A〜D)から旋回流発生手段を見た図である。
【図3】本発明に係る旋回流発生手段、及び従来技術に係る旋回流発生手段について、それぞれのフィン仕様(ア〜ウ)の旋回力及び抵抗の大小を比較した図表である。
【図4】各フィン仕様についての流れ解析結果(流線)を示す図である。
【図5】各フィン仕様についての流れ解析結果(旋回力)を示す図である。
【図6】各フィン仕様についての流れ解析結果(抵抗)を示す図である。
【図7】各フィン仕様についての流れ解析結果(流速)を示す図である。
【図8】従来技術に係る内燃機関用の排ガス浄化装置の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0026】
1 排気管
2 還元触媒
3 還元剤噴射ノズル
40 旋回流発生手段
410、420 羽根
410a、420a 円弧部
431、432 連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から排出された排ガスが流れる排気管と、
前記排気管内に設けられ前記排ガスに含まれる窒素酸化物を還元浄化する還元触媒と、
前記還元触媒の上流側を流れる前記排ガスに還元剤を噴射供給する還元剤供給手段と、
前記排気管内のうち前記還元触媒の上流側に設けられ前記排ガスに旋回流を発生させる旋回流発生手段と、
を備えた内燃機関用の排ガス浄化装置であって、
前記旋回流発生手段は、略楕円形状のプレートをその長軸方向に二分割してなる二枚の羽根を有し、これらの二枚の羽根が前記プレートの短軸を中心軸として相互に回転交差した状態で一体化され、前記長軸方向が前記排ガスの流れ方向と平行となるように配置されていることを特徴とする内燃機関用の排ガス浄化装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記羽根は、その外縁の円弧部が前記排気管の内壁面と接触するように構成されていることを特徴とする内燃機関用の排ガス浄化装置。
【請求項3】
排気管内に設けられる旋回流発生装置であって、
略楕円形状のプレートをその長軸方向に二分割してなる二枚の羽根を有し、これらの二枚の羽根が前記プレートの短軸を中心軸として相互に回転交差した状態で一体化され、前記長軸方向が前記排ガスの流れ方向と平行となるように設けられることを特徴とする旋回流発生装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記羽根は、その外縁の円弧部が前記排気管の内壁面と接触するように構成されていることを特徴とする旋回流発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−71240(P2010−71240A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−241382(P2008−241382)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(000220804)東京濾器株式会社 (84)
【Fターム(参考)】