説明

内燃機関用排気浄化装置

【課題】吸収液体を用いて排ガス中の特定成分を吸収して除去する方式の排気浄化装置において、吸収液体の状態を最適な状態に維持するよう自動で制御する機能を有した内燃機関用排気浄化装置を提供する。
【解決手段】排ガス中のNOxと接触すると、その接触したNOxを吸収する吸収液体を貯蔵するタンク31と、排気管11に配置されるとともにタンク31から吸収液体が供給され、吸収液体を排ガスに接触させる排ガス接触器32とを備える。そして、排ガス接触器32内の吸収液体に対するNOxの吸収割合、及び排ガス接触器32内の吸収液体の温度の少なくとも一方に応じて、タンク31から排ガス接触器32への吸収液体の供給状態を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排ガスと吸収液体とを接触させることで排ガス中の特定成分を吸収して除去する内燃機関用排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、排ガス中のNOxを除去する装置としては、NOx吸蔵還元触媒を用いた装置や、尿素選択還元触媒を用いた装置が知られている。NOx吸蔵還元触媒は、定期的に内燃機関をリッチ燃焼させて発生させたHCを還元剤として、吸蔵させたNOxを還元させるものである(特許文献1参照)。また、尿素選択還元触媒は、尿素を還元剤として排ガス中のNOxを選択的に還元させるものである(特許文献2参照)。
【0003】
しかしながら、これらの装置では、触媒が活性化する温度(例えば200℃)に上昇するまでは還元機能が発揮されないといった短所がある。しかも近年では、低温燃焼や排熱回収の技術が導入される傾向にあるため、特に内燃機関の始動時には上記短所が顕著となる。
【0004】
そこで本発明者らは、特許文献1,2の如く触媒で還元させる方式とは全く異なる方式である以下の装置を検討した。すなわち、接触した排ガス中の特定成分(例えばNOx)を吸収することができる液体(吸収液体)を保有し、その液体と排ガスとを接触させることで排ガス中のNOxを吸収して除去する装置である。吸収液体の具体例としては、イオン液体やアルカリ性水溶液、水等が挙げられる。このような吸収液体は常温であってもNOx等の特定成分を吸収できるので、触媒活性化温度になるまでNOxを除去できないといった従来の欠点を解消できる。
【0005】
この種の装置は、特許文献3にも記載されており、特許文献3記載の装置は、排ガス中の特定成分を溶かし込むことができる吸収液体をタンクに貯蔵させておき、排ガスを気泡の状態にしてタンク内の吸収液体中に送り込むことで、排ガス中の有害物質を吸収液体に溶かし込んで除去する装置である。
【0006】
しかし、吸収液体が特定成分を吸収できる量には限界がある。そのため、特許文献3記載の装置では、吸収可能な量を吸収した状態(吸収飽和状態)になると、吸収液体を手作業でタンクに供給しなければならず、しかも、吸収飽和状態を検出する術もないため、供給作業を実施するタイミングをユーザは把握できない。
【0007】
また、本発明者らの各種検討により、吸収液体の吸収可能量は高温になるほど低下することが分かった。しかも、一度吸収された特定成分であっても、温度上昇して吸収可能量が低下することに伴い吸収液体から放出されてしまうおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−82315号公報
【特許文献2】特開2009−281294号公報
【特許文献3】特開2000−334259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、吸収液体を用いて排ガス中の特定成分を吸収して除去する方式の排気浄化装置において、吸収液体の状態を最適な状態に維持するよう自動で制御する機能を有した内燃機関用排気浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
【0011】
請求項1記載の発明では、内燃機関の排ガス中の特定成分と接触すると、その接触した特定成分を吸収する吸収液体を貯蔵するタンクと、前記内燃機関の排気管に配置されるとともに前記タンクから前記吸収液体が供給され、前記吸収液体を排ガスに接触させる排ガス接触器と、前記排ガス接触器内の前記吸収液体に対する前記特定成分の吸収割合、及び前記排ガス接触器内の前記吸収液体の温度の少なくとも一方に応じて、前記タンクから前記排ガス接触器への前記吸収液体の供給状態を制御する供給状態制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0012】
上記発明では要するに、タンクと排ガス接触器とを別々に構成するとともに、排ガス接触器内における吸収液体の吸収割合及び温度の少なくとも一方に応じて、タンクから排ガス接触器への供給状態を制御する。そのため、排ガス接触器内の吸収液体を、その吸収割合や温度に応じた最適な状態に自動で制御できる。
【0013】
請求項2記載の発明では、前記供給状態制御手段は、前記吸収割合が予め設定した上限割合よりも低い場合には前記排ガス接触器への前記吸収液体の供給を停止させる供給停止制御手段と、前記吸収割合が前記上限割合を超えて高くなった場合には前記吸収液体を前記排ガス接触器へ供給させる供給制御手段と、を有することを特徴とする。
【0014】
上記発明によれば、排ガス接触器内の吸収液体の吸収割合が上限割合よりも低い場合にはタンクからの供給を停止させるので、タンクから新規の吸収液体を供給することにより未だ吸収能力が十分にある吸収液体が排ガス接触器から排出されてしまうことを回避できる。よって、タンクに新規の吸収液体を補給しなければならない時期を遅くして吸収液体の使用期間を長くできる。
【0015】
また、排ガス接触器内の吸収液体の吸収割合が上限割合を超えて高くなった場合にはタンクから供給させるので、内燃機関から排出される特定成分の排出量に対する、排ガス接触器での吸収量の割合(吸収率)を、所定の吸収率以上に維持させることができる。よって、排ガス中の特定成分が吸収されることなく排ガス接触器を素通りしてしまう量が排ガス規定値を超えて多くなることを自動で回避できる。
【0016】
請求項3記載の発明では、前記排ガス接触器内の前記吸収液体の温度が高いほど、前記上限割合を低い値に設定することを特徴とする。
【0017】
ここで、吸収液体の温度が高いほど、吸収液体による吸収可能量は低下する。この点を鑑みた上記発明では、温度が高いほど上限割合を低い値に設定するので、先述した吸収率を所定の吸収率以上に維持させることを高精度に制御できる。
【0018】
請求項4記載の発明では、前記供給状態制御手段は、前記排ガス接触器内の前記吸収液体の温度が予め設定した上限温度よりも低い場合には前記排ガス接触器への前記吸収液体の供給を停止させる供給停止制御手段と、前記上限温度を超えて高くなった場合には前記吸収液体を前記排ガス接触器へ供給させる供給制御手段と、を有することを特徴とする。
【0019】
ここで、吸収液体の温度が高いほど吸収液体による吸収可能量が低下することは先述した通りであるが、低下後の吸収可能量が低下前の吸収量よりも低くなった場合には、その差分量の特定成分が吸収液体から放出されてしまう。一方、排ガス接触器内の吸収液体は高温の排ガスと接触するため、タンク内の吸収液体に比べて温度が高くなっている。つまり、タンク内の吸収液体を排ガス接触器へ供給すれば、排ガス接触器内の吸収液体の温度を低下させることができる。
【0020】
これらの点を鑑みた上記発明では、排ガス接触器内の吸収液体の温度が上限温度を超えて高くなった場合には、タンク内の吸収液体を排ガス接触器へ供給させるので、排ガス接触器内の吸収液体の温度を低下させて吸収可能量の低下を抑制できる。よって、上述の如く特定成分が吸収液体から放出されることを抑制できる。
【0021】
請求項5記載の発明では、前記排気管から分岐して、前記排ガス接触器をバイパスして排ガスを流通させるバイパス通路と、前記バイパス通路及び前記排ガス接触器のいずれかに排ガスの流れを切り替える切替弁と、を備え、前記排ガス接触器内の前記吸収液体の温度が、所定時間以上継続して前記上限温度を超えている場合、或いは前記上限温度よりもさらに高い値に設定された所定温度以上になった場合には、前記バイパス通路へ排ガスを流通させるよう前記切替弁の作動を制御することを特徴とする。
【0022】
内燃機関が高負荷かつ高回転で運転する状態が継続すると、タンク内の吸収液体を排ガス接触器へ供給させるだけでは上限温度未満に温度低下できない場合がある。この点を鑑みた上記発明では、排ガス接触器内の吸収液体の温度が、所定時間以上継続して上限温度を超えている場合或いは上限温度よりもさらに高い値に設定された所定温度以上になった場合には、バイパス通路へ排ガスを流通させるので、吸収液体に既に吸収されている特定成分が吸収液体から放出されてしまうことを回避できる。
【0023】
請求項6記載の発明では、前記供給制御手段は、前記排ガス接触器が前記吸収液体を保有できる量だけ、前記吸収液体を前記排ガス接触器へ供給させることを特徴とする。
【0024】
これによれば、排ガス接触器内の吸収液体の全てを過不足無くタンク内の吸収液体と入れ替えることができるので、吸収液体を排ガス接触器へ供給させるにあたり、吸収割合を低下させる目的で供給する場合及び温度低下させる目的のいずれの場合においても、過不足無く吸収液体を供給できる。
【0025】
請求項7記載の発明では、前記供給制御手段は、前記排ガス接触器内の前記吸収液体を排出させた後に、前記タンクから前記吸収液体を供給させることを特徴とする。
【0026】
これによれば、排ガス接触器から排出する吸収割合の高い吸収液体(或いは高温の吸収液体)と、タンクから排ガス接触器へ供給する吸収割合の低い吸収液体(或いは低温の吸収液体)とが混ざり合うことを抑制できるので、タンクに新規の吸収液体を補給しなければならない時期を遅くして吸収液体の使用期間を長くできる。
【0027】
請求項8記載の発明では、内燃機関の排ガス中の特定成分と接触するとその接触した特定成分を吸収する吸収液体を保有し、前記内燃機関の排気管に配置されて前記吸収液体を排ガスに接触させる排ガス接触器と、前記排気管から分岐して、前記排ガス接触器をバイパスして排ガスを流通させるバイパス通路と、前記バイパス通路及び前記排ガス接触器のいずれかに排ガスの流れを切り替える切替弁と、前記排ガス接触器内の前記吸収液体の温度、及び前記内燃機関から排出される前記特定成分の排出量の少なくとも一方に応じて、前記切替弁の作動を制御するバイパス制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0028】
上記発明によれば、排ガス接触器内の吸収液体の温度、及び内燃機関から排出される特定成分の排出量の少なくとも一方に応じて、排ガスを排ガス接触器へ流通させるかバイパスさせるかを切り替え制御する。そのため、排ガス接触器内の吸収液体を、その温度や内燃機関の運転状態に応じた最適な状態に自動で制御できる。
【0029】
請求項9記載の発明では、前記バイパス制御手段は、前記排ガス接触器内の前記吸収液体の温度が予め設定された所定温度以上であることを条件として、前記バイパス通路へ排ガスを流通させるよう前記切替弁の作動を制御することを特徴とする。
【0030】
ここで、吸収液体の温度が高いほど吸収液体による吸収可能量が低下することは先述した通りであるが、低下後の吸収可能量が低下前の吸収量よりも低くなった場合には、その差分量の特定成分が吸収液体から放出されてしまう。特に、内燃機関が高負荷かつ高回転で運転する状態が継続すると、排ガス接触器内の吸収液体の温度が極めて高温になる。
【0031】
この点を鑑みた上記発明では、排ガス接触器内の吸収液体の温度が所定温度以上であることを条件としてバイパス通路へ排ガスを流通させるので、吸収液体の温度上昇を抑制でき、ひいては吸収液体に既に吸収されている特定成分が吸収液体から放出されてしまうことを回避できる。
【0032】
請求項10記載の発明では、前記バイパス制御手段は、前記内燃機関から排出される前記特定成分の排出量が所定量未満であることを条件として、前記バイパス通路へ排ガスを流通させるよう前記切替弁の作動を制御することを特徴とする。
【0033】
内燃機関から排出される特定成分の排出量が、排ガス規制量未満である場合には、吸収液体で特定成分を吸収除去することなく、そのまま排ガスを排出させても問題ない場合がある。この点を鑑みた上記発明によれば、特定成分の排出量が所定量未満であることを条件としてバイパス通路へ排ガスを流通させるので、必要以上に特定成分を吸収することを抑制でき、新規の吸収液体を補給しなければならない時期を遅くして吸収液体の使用期間を長くできる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる排気浄化装置を示す図。
【図2】NOx吸収液体(NaOH水溶液)によるNOx吸収能力を説明する図。
【図3】吸収液体の吸収割合(C/(C+D))および最大吸収量(C+D)等の定義を説明する模式図。
【図4】第1実施形態において、吸収液体を入替制御する手順を示すフローチャート。
【図5】温度に応じた最大吸収量(C+D)の変化を示す図。
【図6】図4の判定に用いる上限温度がヒステリシスを有することを説明する図。
【図7】第1実施形態の変形例を示すフローチャート。
【図8】本発明の第2実施形態にかかる排気浄化装置を示す図。
【図9】図8中の液体回収器を示す図。
【図10】図8中の液体回収器の変形例を示す図。
【図11】本発明の第3実施形態にかかる排気浄化装置を示す図。
【図12】エンジン運転状態と吸収液体の温度との関係を説明する図。
【図13】第3実施形態において、バイパス制御の手順を示すフローチャート。
【図14】本発明の第4実施形態において、バイパス制御の手順を示すフローチャート。
【図15】内燃機関の運転状態とNOx排出量との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明を具体化した各実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。なお、各実施形態にかかる排気浄化装置が適用される内燃機関は、車両に搭載されて走行駆動源として機能するものであり、圧縮自着火式のディーゼルエンジンを想定している。
【0036】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態にかかる排気浄化装置及び内燃機関10を示す図である。先ず、内燃機関10の燃焼室10aから排出される排ガスは、車両のフロア下に配置されている排気管11を通じて車両後方の所定箇所から排出される。排気管11には、排ガスに含まれているNOxを酸化させる酸化触媒(DOC12)が取り付けられている。このDOC12により、排ガス中のNOはNO2に酸化される。
【0037】
また、排気管11のうちDOC12の下流側には、排気中の粒子状物質(PM)を捕集するフィルタ(DPF13)が取り付けられている。そして、DPF13により捕集されたPMを燃焼させるべく、排気温度を上昇させるよう燃料噴射弁14からの噴射量及び噴射タイミングを制御(再生処理制御)することを、定期的に実施する。
【0038】
排気管11のうちDPF13の下流側には、排ガス中のCO2を除去するCO2除去装置20が設けられ、また、排気管11のうちCO2除去装置20の下流側には、排ガス中のNOxを除去するNOx除去装置30が設けられている。これらの除去装置20,30の各々が「内燃機関用排気浄化装置」に相当する。以下、各々の装置20,30の構成について詳細に説明する。
【0039】
<CO2除去装置20について>
CO2除去装置20は、主に、タンク21、排ガス接触器22、循環ポンプ23、分離放出器24を有して構成されており、これらは循環配管25により接続されている。タンク21内にはCO2吸収液体(後に詳述)が貯蔵されている。このCO2吸収液体は、循環配管25により形成された循環経路を循環ポンプ23の作動により循環する。排ガス接触器22は、排気管11に取り付けられており、循環するCO2吸収液体を排ガスに接触させるよう機能する。
【0040】
CO2吸収液体は、排ガス中のCO2と接触することでCO2を吸収する液体である。具体的には、特開2008−296211号公報等に記載のイオン液体や、アルカリ溶液、水(例えばエンジン冷却水)等が挙げられる。また、排ガス中のNOxを殆ど吸収せずにCO2を選択的に吸収する液体(例えば、NaOH、KOH、NaCO、KCO、Ca(OH)、エタノールアミン等)を用いれば、CO2吸収量を多くできるので好適である。また、CO2吸収液体は、化学変化を伴ってCO2を吸収(化学吸着)する物質でもよいし、化学変化を伴わずにCO2を吸収(物理吸着)する物質でもよい。また、CO2吸収液体はゲル状の物質やスラリー状の物質でもよい。
【0041】
排ガス接触器22は、CO2吸収液体を染み込ませて保持する保持体22a、及び保持体22aを内部に収容するケース22bを備えて構成されている。ケース22bは排気管11に接続されており、ケース22b内には排ガスが流通する。また、ケース22bは循環配管25に接続されており、ケース22bの流入口から循環配管25を通じてケース22b内に流入したCO2吸収液体は、保持体22aにて保持される。保持体22aは、ケース22b内を流通する排ガスに晒されるように配置されている。そのため、保持体22aに保持されているCO2吸収液体は排ガスと接触する。
【0042】
ケース22bの流入口及び流出口には流入バルブ22c及び流出バルブ22dが備えられている。これらのバルブ22c,22dは電磁駆動式のバルブであり、その開閉作動はECU15により制御される。よって、ECU15により流出バルブ22dを開作動させればケース22b内のCO2吸収液体を排出させることができ、ECU15により流入バルブ22cを開作動させればケース22b内へCO2吸収液体を流入させることができる。
【0043】
なお、流入口はケース22bの上部に形成され、流出口はケース22bの下部に形成されている。そのため、流出バルブ22dを開作動させると、循環ポンプ23が駆動していなくても自重で排出できるよう構成されている。また、ケース22b内のCO2吸収液体が排出された状態で流入バルブ22cを開作動させると、循環ポンプ23が駆動していなくても自重で流入できるよう構成されている。
【0044】
分離放出器24は、排ガス接触器22から排出されたCO2吸収液体を貯蔵するタンク24a、及びタンク24aに設けられたヒータ24b(加熱手段)を有して構成されている。排ガス接触器22から排出されてタンク24a内へ流入してきたCO2吸収液体をヒータ24bで加熱すると、CO2吸収液体に吸収されているCO2がCO2吸収液体から分離する。
【0045】
ヒータ24bの作動はECU15により制御される。よって、ECU15によりヒータ24bを作動させるよう制御すればCO2の分離が促進され、ヒータ24bの作動を停止させるよう制御すればCO2の分離速度が低下する。つまりECU15は、ヒータ24bの作動を制御(加熱度合いを制御)することで分離速度を制御する分離制御手段として機能する。
【0046】
ここで、単位量あたりのCO2吸収液体によりCO2を吸収できる量には限界がある。本明細書では、このような限界量を吸収したCO2吸収液体の状態を吸収飽和状態と呼ぶ。また、CO2の吸収量がゼロである状態においてCO2吸収液体がCO2を吸収できる量(最大吸収量)に対する、CO2吸収量の割合を吸収割合と呼ぶ。つまり、吸収飽和状態での吸収割合は100%である。そして、分離放出器24によりCO2吸収液体からCO2を分離させると、吸収割合が低下してCO2吸収液体の吸収能力が上昇して復帰する。なお、分離したCO2は放出口24cから大気に放出される。そして、分離放出器24によりCO2が分離除去された状態のCO2吸収液体は、タンク21、CO2除去装置20、分離放出器24の順に循環する。
【0047】
循環ポンプ23の作動はECU15により制御される。本実施形態では、循環ポンプ23を常時作動させるのではなく断続的に作動させている。つまり、CO2吸収液体を常時循環させるのではなく、断続的に循環させている。循環ポンプ23やヒータ24b等の制御内容については、後に詳述する。
【0048】
<NOx除去装置30について>
次に、NOx除去装置30の構成について説明する。NOx除去装置30は、主に、タンク31、排ガス接触器32、循環ポンプ33を有して構成されており、これらは循環配管35により接続されている。
【0049】
タンク31内は、排ガス接触器32へ供給する未使用のNOx吸収液体(後に詳述)を貯蔵してする供給タンク部31aと、回収された使用済みのNOx吸収液体を貯蔵する回収タンク部31bとに仕切られている。これにより、未使用のNOx吸収液体へ使用済みのNOx吸収液体が混入することを回避する。供給タンク部31a内のNOx吸収液体は排ガス接触器32へ供給される。排ガス接触器32で使用されたNOx吸収液体は循環ポンプ33を作動させることにより回収タンク部31bへ回収される。
【0050】
排ガス接触器32は、排気管11のうち、CO2除去装置20の排ガス接触器32の下流側に取り付けられており、NOx吸収液体を排ガスに接触させるよう機能する。
【0051】
NOx吸収液体は、排ガス中のNOxと接触することでNOxを吸収する液体である。具体的には、特開2008−296211号公報等に記載のイオン液体や、アルカリ溶液、水(例えばエンジン冷却水)等が挙げられる。また、排ガス中のCO2を殆ど吸収せずにNOxを選択的に吸収する液体(例えば、FeSO、Ca(OH)、HSO、KCr等)を用いれば、NOx吸収量を多くできるので好適である。また、NOx吸収液体は、化学変化を伴ってNOxを吸収(化学吸着)する物質でもよいし、化学変化を伴わずにNOxを吸収(物理吸着)する物質でもよい。また、NOx吸収液体はゲル状の物質やスラリー状の物質でもよい。
【0052】
図2は、NOx吸収液体にNaOH水溶液を用いた場合のNOx除去の効果を示す試験結果であり、NOx濃度が約6%の排ガスを排ガス接触器22へ流入させたところ、排ガス接触器22から流出した排ガスのNOx濃度は約1%にまで低減されていることが確認された。
【0053】
排ガス接触器32は、NOx吸収液体を保持する保持体32a、及び保持体32aを内部に収容するケース32bを備えて構成されている。ケース32bは排気管11に接続されており、ケース32b内には排ガスが流通する。また、ケース32bは循環配管35に接続されており、ケース32bの流入口から循環配管35を通じてケース32b内に流入したNOx吸収液体は、保持体32aにて保持される。保持体32aは、ケース32b内を流通する排ガスに晒されるように配置されている。そのため、保持体32aに保持されているNOx吸収液体は排ガスと接触する。
【0054】
ケース32bの流入口及び流出口には流入バルブ32c及び流出バルブ32dが備えられている。これらのバルブ32c,32dは電磁駆動式のバルブであり、その開閉作動はECU15により制御される。よって、ECU15により流出バルブ32dを開作動させればケース32b内のNOx吸収液体を排出させることができ、ECU15により流入バルブ32cを開作動させればケース32b内へCO2吸収液体を流入させることができる。
【0055】
なお、流入口はケース32bの上部に形成され、流出口はケース32bの下部に形成されている。そのため、流出バルブ32dを開作動させると、循環ポンプ33が駆動していなくても自重で排出できるよう構成されている。また、ケース32b内のNOx吸収液体が排出された状態で流入バルブ32cを開作動させると、循環ポンプ33が駆動していなくても自重で流入できるよう構成されている。
【0056】
ここで、単位量あたりのNOx吸収液体によりNOxを吸収できる量には限界がある。本明細書では、このような限界量を吸収したNOx吸収液体の状態を吸収飽和状態と呼ぶ。また、NOxの吸収量がゼロである状態においてNOx吸収液体がNOxを吸収できる量(最大吸収量)に対する、NOx吸収量の割合を吸収割合と呼ぶ。つまり、吸収飽和状態での吸収割合は100%であり、供給タンク部31aに貯蔵されている未使用のNOx吸収液体の吸収割合は0%である。
【0057】
図3に示すように、排ガス接触器32へ流入してくる流入NOx量Aが排ガス規制値を超えている場合、排ガス接触器32でNOxを吸収して、排ガス接触器32から流出する流出NOx量Bを規制値未満にする必要がある。しかし、排ガス接触器32内のNOx吸収液体が既に吸収している吸収NOx量Cが増加するにしたがって、吸収可能量Dは少なくなっていき、吸収NOx量Cが最大吸収量に達すると(吸収可能量Dがゼロになると)、それ以上はNOxを吸収できなくなり流出NOx量Bが排ガス規制値を超えることが懸念される。
【0058】
そこで本実施形態では、排ガス接触器32内で吸収割合(C/(C+D))が所定値以上に高くなったNOx吸収液体は、循環ポンプ33により回収タンク部31bへ回収する。そして、供給タンク部31a内の吸収割合がゼロであるNOx吸収液体を排ガス接触器32へ供給する。なお、回収タンク部31bへ回収された使用済みのNOx吸収液体は、タンク31から抜き出して車両外部の処理施設で排液処理する。また、供給タンク部31aへの新規NOx吸収液体の補給は、車両ユーザやメンテナンス作業者により随時行われる。
【0059】
循環ポンプ33の作動はECU15により制御される。本実施形態では、循環ポンプ33を常時作動させるのではなく断続的に作動させている。つまり、NOx吸収液体を常時流通させるのではなく、以下に説明する入替制御を実施するよう断続的に流通させている。
【0060】
NOx除去装置30は、NOx吸収液体の吸収割合と相関のある物理量を検出するセンサを有する。本実施形態では前記センサとしてphセンサ32eを用いており、このphセンサ32eは排ガス接触器32に取り付けられている。ECU15は、phセンサ32eにより検出されたphが所定値以下であれば(酸性の度合いが高ければ)、排ガス接触器32内のNOx吸収液体の吸収割合が所定値以上になっており吸収能力が低下しているとみなして、排ガス接触器32内のNOx吸収液体を排出して供給タンク部31a内のNOx吸収液体を排ガス接触器32内に供給するといったNOx吸収液体の入れ替えの制御(入替制御)を実施する。
【0061】
図4は、上記入替制御の手順を示すフローチャートであり、ECU15が有するマイクロコンピュータにより、所定周期(例えばマイコンの演算周期又は所定のクランク角度毎)で繰り返し実行される。
【0062】
先ず、図3に示すステップS10において、排ガス接触器22内のNOx吸収液体の吸収割合が上限割合以上になっているか否かを判定する。より詳細に説明すると、NOx除去装置30は、NOx吸収液体の吸収割合と相関のある物理量を検出するセンサを有する。本実施形態では前記センサとしてphセンサ32eを用いており、このphセンサ32eは排ガス接触器32に取り付けられている。上記ステップS10では、phセンサ32eにより検出されたphが所定値以下であれば(酸性の度合いが高ければ)、排ガス接触器32内のNOx吸収液体の吸収割合が上限割合(例えば95%)以上であるとみなして、以降のステップS12〜S16(供給制御手段(供給状態制御手段))の処理に進む。
【0063】
ここで、NOx吸収液体の温度が高いほど、NOx吸収液体の最大吸収量(吸収可能量)は低下する。図5中の実線は、温度に応じた最大吸収量(C+D)の変化を示すグラフであり、例えば温度がt1からt2まで上昇すると、最大吸収量(C+D)が低下することに伴い、t1の時には吸収されていたNOxの一部は、t2の時にはNOx吸収液体から放出されてしまう。
【0064】
そこで本実施形態では、排ガス接触器32内のNOx吸収液体の温度を検出する温度センサ32fを排ガス接触器32に設け、温度センサ32fにより検出された温度が予め設定された上限温度以上にまで上昇したら、排ガス接触器32内の温度上昇したNOx吸収液体を排出して、供給タンク部31a内の排ガスに晒されていない低温のNOx吸収液体を排ガス接触器32内に供給する、といったNOx吸収液体の入れ替え制御を実施する。これにより、排ガス接触器32内のNOx吸収液体が温度上昇して、吸収していたNOxが放出されるといった不具合を回避させる。
【0065】
具体的には、上記ステップS10にて吸収割合が上限割合以上であると判定(S10:NO)された場合であっても、続くステップS11において温度センサ32fによる検出温度が上限温度以上であると判定されれば(S11:YES)、以降のステップS12〜S18において、排ガス接触器32内のNOx吸収液体を入れ替える入替制御を実施する。なお、吸収割合が上限割合未満かつ検出温度が上限温度未満である場合(S10:NO,S11:NO)には、循環ポンプ33の停止状態を維持させるとともに(S17)、流入バルブ22c及び流出バルブ22dの閉弁状態を維持させる。
【0066】
なお、ステップS11の判定に用いる上限温度には、図6に示す如くヒステリシスをもたせてある。すなわち、入替制御を実施する時の上限温度を終了時の上限温度よりも高い値に設定する。
【0067】
入替制御に係るステップS12〜S18では、先ずステップS12において循環ポンプ23の作動を開始させる。続くステップS13では流出バルブ22dを開弁作動させるとともに、流入バルブ22cの閉弁状態を維持させる。これにより、排ガス接触器32内のNOx吸収液体の排出が開始される。続くステップS14では、流出バルブ32dを開弁作動させてから所定時間が経過したか否かを判定する。なお、前記所定時間は、排ガス接触器32内のNOx吸収液体の全てが排出されるのに要する時間に設定されている。
【0068】
所定時間が経過したら(S14:YES)、続くステップS15において、流出バルブ22dを閉弁作動させるとともに流入バルブ22cを開弁作動させる。これにより、排ガス接触器32内へのNOx吸収液体の供給が開始される。続くステップS16では、流入バルブ22cを開弁作動させてから所定時間が経過したか否かを判定する。なお、前記所定時間は、排ガス接触器32がNOx吸収液体を保有できる量だけ供給されるのに要する時間に設定されている。
【0069】
所定時間が経過したら(S16:YES)、続くステップS17(供給停止制御手段(供給状態制御手段))にて循環ポンプ33の作動を停止させ、続くステップS18(供給停止制御手段(供給状態制御手段))において、流出バルブ22dの閉弁状態を維持させるとともに、流入バルブ22cを閉弁作動させる。これにより、排ガス接触器32内のNOx吸収液体の入れ替えが完了する。
【0070】
以上が、NOx除去装置30においてNOx吸収液体を入れ替える入替制御の内容であるが、CO2除去装置20のCO2吸収液体についても同様の入替制御を実施する。すなわち、排ガス接触器22内のCO2吸収液体の吸収割合が上限割合以上になった場合、或いは、排ガス接触器22内のCO2吸収液体の温度が上限温度以上になった場合に、入替制御を実施する。
【0071】
当該入替制御では先ず、流出バルブ22dを開弁作動させて排ガス接触器22内のCO2吸収液体を排出する。この時、循環ポンプ23を駆動させることで、排出されたCO2吸収液体を分離放出器24へ回収する。流出バルブ22dの開弁が所定時間為されると、CO2吸収液体の排出が完了したとみなして、流出バルブ22dを閉弁作動させるとともに流入バルブ22cを開弁作動させる。これにより、タンク21内のCO2吸収液体が排ガス接触器22へ流入する。流入バルブ22cの開弁が所定時間為されると、CO2吸収液体の供給入替が完了したとみなして、流入バルブ22cを閉弁作動させる。なお、入替制御の実施期間中にはヒータ24bをオン作動させて、分離放出器24内のCO2吸収液体を加熱してCO2を分離させる。
【0072】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0073】
(1)排ガス接触器22,32内の吸収液体の吸収割合が上限割合よりも低い場合には、排ガス接触器22,32への吸収液体の供給及び排出を停止させるので、未だ吸収能力が十分にある吸収液体を排ガス接触器22,32から排出させてしまうことを回避できる。よって、タンク21,31に新規の吸収液体を補給しなければならない時期を遅くして吸収液体の使用期間を長くできる。
【0074】
また、排ガス接触器22,32内の吸収液体の吸収割合が上限割合を超えて高くなった場合には、排ガス接触器22,32内の高吸収割合の吸収液体を、タンク21,31内の低吸収割合の吸収液体に入れ替えるので、内燃機関10から排出されるNOx,CO2の排出量に対する、排ガス接触器22,32での吸収量の割合(吸収率)を、所定の吸収率以上に維持させることができ、排ガス中のNOxが吸収されることなく排ガス接触器32を素通りしてしまう量が排ガス規定値を超えて多くなることを自動で回避できる。
【0075】
(2)排ガス接触器22,32内の吸収液体の温度が上限温度を超えて高くなった場合には、排ガス接触器22,32内の高温吸収液体を、タンク21,31内の低温吸収液体に入れ替えるので、吸収可能量が低下した吸収液体を排ガス接触器22,32内に保有させたままにした状態を素早く回避できる。よって、排ガス接触器22,32内にて温度上昇した吸収液体からNOx,CO2が放出されてしまうことを抑制できる。
【0076】
(3)入替制御を実施するにあたり、排ガス接触器22,32が吸収液体を保有できる量だけタンク21,31から供給させるので、排ガス接触器22,32内の吸収液体を過不足無く入れ替えることができる。
【0077】
(4)入替制御を実施するにあたり、排ガス接触器22,32内の吸収液体の全てを排出させた後に、タンク21,31から吸収液体を供給させるので、排ガス接触器から排出する高吸収割合の吸収液体(或いは高温吸収液体)と、タンク21,31から排ガス接触器22,32へ供給する低吸収割合の吸収液体(或いは低温吸収液体)とが混ざり合うことを抑制できる。これにより、特に分離放出器24を備えないNOx除去装置30においては、タンク31に新規のNOx吸収液体を補給しなければならない時期を遅くしてNOx吸収液体の使用期間を長くできる。
【0078】
(5)ここで、NOx吸収液体は、排ガス中のNOxのみならずCO2をも吸収してしまう。しかも、内燃機関10の排ガス中のNOx濃度は0.1%以下であるのに対し、CO2濃度は数%〜数十%であるため、本実施形態に反してCO2除去装置20を廃止すると、NOx吸収液体での吸収はCO2が支配的になってしまい、NOxを十分に吸収できなくなるとの問題が生じる。この問題に対し本実施形態では、排気管11のうち、NOx除去装置30の排ガス接触器32の上流側に、CO2除去装置20の排ガス接触器22を設けるので、CO2除去装置20によりCO2濃度を低下させた状態の排ガスをNOx除去装置30へ送り込むことができる。よって、NOx吸収液体に吸収されてしまうCO2の量を低減させることができ、ひいてはNOx吸収液体に十分な量のNOxを吸収させることができる。
【0079】
(6)本実施形態にかかるNOx除去装置30及びCO2除去装置20では、NOx吸収液体を排ガスに接触させることでNOxを吸収するとともに、CO2吸収液体を排ガスに接触させることでCO2を吸収するものである。よって、常温であってもCO2除去装置20及びNOx除去装置30による除去機能を発揮させることができるので、内燃機関10の冷間始動時であっても、内燃機関10の始動直後から排ガス中のNOxを除去することができる。
【0080】
(7)ここで、本実施形態にかかるNOx除去装置30及びCO2除去装置20では、排気管11に取り付けられる排ガス接触器22,32とタンク21,31とを別体に構成して循環させているが、排ガス接触器22,32の容量をタンク21,31と同等にすれば、タンク21,31を排ガス接触器22,32に一体化させることができ、上記循環を不要にできる。しかしながらこのように一体化すると、排ガス接触器22,32が大型となり、車両のフロア下に排ガス接触器22,32を設置することが極めて困難となる。
【0081】
これに対し本実施形態では、排ガス接触器22,32及びタンク21,31を別体に構成して循環させているので、フロア下に位置する排気管11に接続することが要求される排ガス接触器22,32を小型化できる。よって、排ガス接触器22,32をフロア下に設置することを容易に実現できるとともに、NOx除去装置30及びCO2除去装置20を車両へ搭載するにあたり、その搭載レイアウトの自由度を向上できる。
【0082】
さらに、排ガス接触器22,32及びタンク21,31を別体に構成して循環させる本実施形態によれば、排気量の大きい内燃機関10に対しては、タンク21,31の容量を大きくして吸収液体を排ガス接触器22,32へ供給する頻度を高くすることで対応する一方で、排ガス接触器22,32については排気量の異なる内燃機関10同士で共通化させることができる。
【0083】
(8)ここで、排ガス中のNOxを排ガス接触器32で吸収させるにあたり、NOよりもNO2の方が吸収率を高めることができる。そこで本実施形態では、NOをNO2に酸化するDOC12を排ガス接触器32の上流側に配置しているので、排ガス接触器32におけるNOxの吸収率を向上できる。また、DPFを排ガス接触器22,32の上流側に配置しているので、排ガス中のPMが排ガス接触器22,32内部に付着して目詰まりが生じることを抑制できる。
【0084】
(第1実施形態の変形例)
上記第1実施形態では、入替制御の実施可否を判定する図4のステップS10において、phセンサ32eの検出値を用いて吸収割合を推定していると言える。これに対し本実施形態では、図7に示す手順で吸収NOx量Cを算出することで吸収割合を推定する。これによれば、phセンサ32eを不要にできコストダウンを図ることができる。
【0085】
先ず、図7のステップS1において、内燃機関10運転状態に基づき流入NOx量Aを算出する。例えば、機関回転速度NEが高く内燃機関10の負荷が高いほど、内燃機関10から排出されるNOx量は多くなる。したがって、NE及び負荷に基づき流入NOx量Aを算出すればよい。続くステップS2では、ステップS1で算出した流入NOx量Aに基づき、単位時間当たりの吸収NOx量C’を算出する。例えば、予め試験して取得しておいた吸収率を、流入NOx量Aに乗算することで、単位時間当たりの吸収NOx量C’を算出すればよい。
【0086】
続くステップS3では、ステップS2で算出した吸収NOx量C’に基づき、図3にて図示する吸収NOx量Cを算出する。例えば、吸収NOx量Cの前回値に、ステップS2で算出した吸収NOx量C’を加算することで、現時点での吸収NOx量Cを算出すればよい。なお、入替制御を実施した場合には入替制御の完了時点で吸収NOx量Cの値をゼロにリセットする。そして、上述の如く算出した吸収NOx量Cが、予め設定した上限量を超えて多くなった場合に、図4のステップS10において、吸収割合が上限割合以上になったと判定すればよい。
【0087】
また、入替制御の実施可否を判定する図4のステップS10において、吸収割合が上限割合以上であるか否かの判定するにあたり、排ガス接触器22内のNOx吸収液体の温度が高いほど最大吸収量(C+D)が低くなっていることを鑑みて、排ガス接触器22内の温度が高いほど前記上限割合(或いは前記上限量)の値を低く設定するようにしてもよい。これによれば、排ガス接触器22,32内の吸収液体が吸収飽和状態になってしまうことをより確実に回避できる。また、吸収能力が未だ十分に残っている吸収液体を排出して入れ替えてしまうことを抑制できる。
【0088】
(第2実施形態)
図8に示す本実施形態では、上記第1実施形態にかかるCO2除去装置20に、以下に説明する熱回収器24d、クーラ26、液体回収器27、溶液タンク28等の機能を追加するとともに、NOx除去装置30にも液体回収器37及び溶液タンク38の機能を追加している。以下、図8のシステム構成について、図1との違いを中心に説明する。なお、図8中、図1と同一符号部分についてはその説明を援用する。
【0089】
熱回収器24dは、排気管11に取り付けられて排ガスの熱を回収するものであり、熱媒体として例えばエンジン冷却水を用いる。エンジン冷却水は配管24eを通じて分離放出器24のタンク24aに接続され、タンク24a内のCO2吸収液体と熱交換して加熱する。要するに、図1に示すヒータ24bを廃止して、熱回収器24dによりCO2吸収液体を加熱してCO2を分離させている。
【0090】
エンジン冷却水を流通させる配管24eにはECU15で制御されるポンプ24fが取り付けられており、このポンプ24fの作動を制御することで加熱度合い(つまり分離速度)を制御している。例えば、分離放出器24のタンク24aに温度センサ24gを取り付けて、タンク24a内のCO2吸収液体の温度を検出し、その検出温度に応じてポンプ24fのオンオフを切替制御することで、加熱度合いを制御する。
【0091】
クーラ26は、循環配管25のうち分離放出器24及びタンク21に配置され、分離放出器24で加熱分離した直後のCO2吸収液体を冷却する。クーラ26は、周囲の空気と熱交換する空冷式でも良いし、例えば車室内空調装置が有するエバポレータを循環する冷媒等を取り込んで、その冷媒とCO2吸収液体とを熱交換させる方式でも良い。
【0092】
CO2吸収液体は温度上昇に伴いCO2を吸収できる量が低下していく。特に、所定温度を超えて上昇すると、CO2を吸収できる量は急激に低下する。そのため、分離放出器24で加熱されたCO2吸収液体をクーラ26で冷却している。
【0093】
液体回収器27は、排気管11のうち排ガス接触器22の下流側かつNOx除去装置30の上流側に配置されている。排ガス接触器22で接触したCO2吸収液体の一部は、排ガスとともに排気管11中へ持ち去られていくことが懸念される。液体回収器27は、このように持ち去られてケース22bの外部に流出したCO2吸収液体を回収するものである。また、回収したCO2吸収液体からCO2を除去して吸収割合を低下させるとともに、このように処理されたCO2吸収液体を、配管27aを通じて循環配管25へ戻すよう機能する。
【0094】
図9は、液体回収器27の構成を示す図であり、液体回収器27は、排気管11中に配置された電極27b、及び排気管11の内壁面に取り付けられた電気セル27cを有する。電極27bに直流高電圧を印加すると、排気中に流出したCO2吸収液体に電子が付着してイオン化される。そして、イオン化した状態のCO2吸収液体が電気セル27cに付着すると、CO2吸収液体に吸収されているCO2イオンのみが電気セル27cを通過して貯留部27dへ移動して析出する。貯留部27dは電気的に接地されているため、貯留部27dへ移動したCO2イオンの電子はグランドへ流れ込む。換言すれば、電気セル27cを通過できずに残ったCO2吸収液体は、CO2が除去された状態となり、吸収割合が低下されることとなる。
【0095】
要するに、排気中のCO2吸収液体を高電圧で帯電させることで電気セル27cに析出させて回収する。その後、電気セル27cを用いて回収したCO2吸収液体からCO2を除去し、吸収割合が低下したCO2吸収液体は配管27aを通じて循環配管25へ戻される。なお、貯留部27dに溜まったCO2は大気に放出すればよい。
【0096】
図10は、図9に示す液体回収器27の変形例を示す図であり、電気セル27cを廃止している。電極27bにより高電圧で帯電された排気中のCO2吸収液体は、貯留槽27eに回収される。貯留槽27e内では、吸収割合が高くCO2を多く吸収しているCO2吸収液体は貯留槽27eの下部へ沈殿する。そのため、貯留槽27e内では、吸収割合の低いCO2吸収液体(CO2希薄液体)と、吸収割合の高いCO2濃縮液体とが分離される。そして、貯留槽27eに貯留されたCO2吸収液体のうち上層のCO2希薄液体が配管27aを通じて循環配管25へ戻される。なお、貯留槽27eの下層に溜まったCO2濃縮液体は、車両の修理工場等で回収して廃棄処理すればよい。
【0097】
ここで、本実施形態にかかるCO2吸収液体は、イオン液体やアルカリ溶液等のように、溶媒(例えば水)中に溶質(例えばイオン、アルカリ)を溶かし込んだ溶液を用いている。この場合、溶質濃度が所定濃度に維持させることが、所定のCO2吸収機能を発揮させる上で重要となる。しかし、溶媒が蒸発することで濃度が高くなったり、排ガス中の水成分が排ガス接触器22でCO2吸収液体に混入することで濃度が低くなったりする。
【0098】
そこで、本実施形態では、溶液タンク28にイオンやアルカリ等の溶質、及び水等の溶媒を貯蔵させており、濃度センサ28aにより検出された濃度に応じて、溶質及び溶媒をタンク21へ補給する。濃度センサ28aは、循環配管25のうちタンク21の下流側近傍に取り付けられており、例えば液体の濃度と相関の高い粘度を検出するセンサを、濃度センサ28aとして採用する。
【0099】
溶液タンク28とタンク21との接続箇所には、ECU15により制御される電磁バルブ28bが設けられている。ECU15は、濃度センサ28aの検出値に応じてバルブ28bを開閉制御することで、溶質及び溶媒の補給量を制御して、タンク21内のCO2吸収液体の濃度が最適濃度範囲内となるよう制御する。
【0100】
NOx除去装置30は、CO2除去装置20が有する液体回収器27と同じ構成の液体回収器37を有している。液体回収器37は、排気管11のうち排ガス接触器32の下流側に配置されている。排ガス接触器32で接触したNOx吸収液体の一部は、排ガスとともに排気管11中へ持ち去られていくことが懸念される。液体回収器37は、このように持ち去られてケース32bの外部に流出したNOx吸収液体を回収するものである。また、回収したNOx吸収液体からNOxを除去して吸収割合を低下させるとともに、このように処理されたNOx吸収液体を、配管37aを通じて循環配管35へ戻すよう機能する。
【0101】
また、NOx除去装置30は、CO2除去装置20が有する溶液タンク28、濃度センサ28a及び電磁バルブ28bと同じ構成の、溶液タンク38、濃度センサ38a及び電磁バルブ38bを有している。ECU15は、濃度センサ38aの検出値に応じてバルブ38bを開閉制御することで、NOx吸収液体の溶質及び溶媒の補給量を制御して、タンク31内のNOx吸収液体の濃度が最適濃度範囲内となるよう制御する。
【0102】
なお、排ガス中の水分が混入して濃度が低くなる度合いは、溶質が気化して濃度が高くなる度合いに比べて低い。そのため、溶液タンク28,38にて溶媒を貯蔵して補給することを廃止するようにしてもよい。
【0103】
ここで、ECU15は、DPF13の再生処理を実行するよう燃料噴射弁14の作動を制御する。上記再生処理とは、燃料噴射弁14から燃料を噴射させるタイミングを遅角させる、或いは燃料噴射量を増大させることにより、排気温度を一時的に上昇させる処理である。これにより、DPF13で捕集されたPMを燃焼させて除去することができ、DPF13の再生化が図られる。
【0104】
さらにECU15は、再生処理の実行期間中に熱回収器24dのポンプ24fを作動させるよう制御する。これにより、熱回収器24dの熱媒体が分離放出器24へ循環され、再生処理の実行に伴い温度上昇している排ガスの熱により、分離放出器24内のCO2吸収液体が加熱され、CO2の分離が促進される。
【0105】
以上詳述した本実施形態によれば、上記(1)〜(8)の効果が得られるとともに、以下の効果も得られるようになる。
【0106】
(9)熱回収器24dを備えることにより、排ガスの熱を回収して分離放出器24内の液体を加熱するので、図1のヒータ24bを廃止でき、電力消費を低減できる。
【0107】
(10)DPF13の再生処理を実行するタイミングでポンプ24fを駆動させて熱回収するので、CO2吸収液体を加熱してCO2を分離させるのに十分な熱量を確保することができる。
【0108】
(11)クーラ26を備えることにより、加熱して分離させることに伴い温度上昇した液体を冷却するので、温度上昇に伴いCO2吸収能力が低下した液体に対し、CO2吸収能力の復帰を図ることができる。
【0109】
(12)液体回収器27,37を備えることにより、排ガス接触器22,32から排気管11中へ流出した吸収液体の一部が、排ガスとともに排出されてしまうことを抑制できる。しかも、回収した吸収液体からCO2,NOxを分離して吸収割合を低下させた上で吸収液体を循環配管25,35へ戻すので、循環配管25,35内の吸収液体の吸収割合が上昇することを抑制できる。
【0110】
(13)溶液タンク28,38及び濃度センサ28a,38aを備えることにより、吸収液体の濃度が所定濃度に維持されるので、濃度が変化することにより吸収能力が低下してしまうことを回避できる。
【0111】
(第3実施形態)
図11に示す本実施形態では、上記第1実施形態にかかるNOx除去装置30及びCO2除去装置20に、バイパス配管40及びバイパス弁41(切替弁)を備えさせている。以下、図11のシステム構成について、図1との違いを中心に説明する。なお、図11中、図1と同一符号部分についてはその説明を援用する。
【0112】
バイパス配管40は、排ガス接触器22,32をバイパスして排ガスを流通させるバイパス通路40aを形成する配管であり、排気管11のうち排ガス接触器22の上流側、及び排ガス接触器32の下流側に接続されている。バイパス通路40aの入口は、バイパス弁41により開閉される。バイパス弁41は電動モータにより駆動し、当該モータの作動はECU15により制御される。
【0113】
なお、図4の如く熱回収器24dを備えるシステムにバイパス配管40を備えさせる場合には、熱回収器24dの下流側かつ排ガス接触器22の上流側にバイパス配管40の入口を接続させることが望ましい。これにより、バイパス弁41の作動状態に拘わらずに廃熱を回収して分離放出器24内の液体を加熱することができる。また、図4の如く液体回収器37を備えるシステムにバイパス配管40を備えさせる場合には、排ガス接触器32の下流側かつ液体回収器37の上流側にバイパス配管40の出口を接続させることが望ましい。これにより、バイパス弁41の作動状態に拘わらずに、漏れ出たNOx吸収液体を回収できる。
【0114】
ここで、内燃機関の運転状態に応じて排ガス温度は大きく変化する。例えば図12に示すように、高負荷高NE領域で運転させている時には、通常領域で運転させている時に比べて排ガス温度は著しく高くなる。すると、入替制御を実施したとしても、排ガス接触器22,32内の吸収液体の温度は直ぐに上限温度を超えてしまい、図5を用いて先述したように最大吸収量(C+D)が低下し、ひいては吸収されていたNOx,CO2が放出されることとなる。
【0115】
そこで本実施形態では、排ガス接触器22,32内の温度が著しく高くなっている場合には、バイパス弁41を開弁作動させて排ガスをバイパス通路40aへ流通させる。これにより、吸収液体の温度上昇を抑制して、吸収されていたNOx,CO2が放出されることの抑制を図っている。
【0116】
上述の如くバイパス弁41の作動を制御する手順を、図13のフローチャート(バイパス制御手段)を用いて以下に説明する。
【0117】
先ず、図13のステップS20において、温度センサ32fにより検出された温度が所定温度以上であるか否かを判定する。前記所定温度は、図4のステップS11の判定で用いられた上限温度よりも高い値に設定されている。また、続くステップS21では、上限温度を超えた高温状態が所定時間以上継続しているか否かを判定する。
【0118】
これらの判定処理S20,S21のうち少なくとも一方により肯定判定(S20,S21:YES)された場合には、続くステップS22において、バイパス弁41を開弁作動させて排ガスをバイパス通路40aへ流通させる。この時、循環ポンプ23,33の作動をオフさせて循環配管25,35での液体の循環を停止させるとともに、ヒータ24bの作動をオフさせてCO2の分離を停止させることが望ましい。
【0119】
上記判定処理S20,S21のいずれもが否定判定(S20,S21:NO)であれば、続くステップS23において、バイパス弁41を閉弁作動させて排ガスを排ガス接触器22,32へ流通させる。
【0120】
なお、上記判定処理S20,S21に替えて、内燃機関の運転状態に応じてバイパス弁41の作動を制御してもよい。例えば図12に示す高負荷高NE領域である状態が所定時間以上継続した場合に、バイパス弁41を開弁作動させて排ガスをバイパス通路40aへ流通させるようにしてもよい。
【0121】
以上詳述した本実施形態によれば、上記(1)〜(8)の効果が得られるとともに、以下の効果も得られるようになる。
【0122】
(10)排ガス接触器22,32内の温度が所定温度以上、或いは上限温度を超えた高温状態が所定時間以上継続している場合に、バイパス弁41を開弁作動させて排ガスをバイパス通路40aへ流通させるので、吸収液体の温度上昇を抑制でき、ひいては既に吸収されていたNOx,CO2が放出されることを抑制できる。
【0123】
(11)図13のステップS20の判定で用いられる所定温度は、図4のステップS11の判定で用いられる上限温度よりも高い値に設定されているので、図4に示す入替制御と図13の制御とを組み合わせた場合には、以下のように制御されることとなる。すなわち、排ガス接触器22,32内の温度が上昇して上限温度に達すると、先ずは図4の入替制御が実施されて排ガス接触器22,32内の温度が低下することとなる。その後、高負荷高NE運転状態が継続されると、入替制御を実施し続けても排ガス接触器22,32内の温度が所定温度にまで上昇したり、上限温度に達した状態が所定時間継続したりする場合がある。この場合には、図13の制御によりバイパス通路40aへ排ガスを流通させるので、排ガス接触器22,32内の温度を上限温度未満にまで確実に低下させることができる。
【0124】
バイパス通路40aへ排ガスを流通させると温度低下を促進できるものの、排ガス中のNOxが吸収されずに大気へ放出されることとなる。これに対し、上記図4及び図13の組み合わせ制御によれば、先ずは入替制御で温度低下を試みて、それでもなお十分に温度低下できない場合に、バイパス通路40aへ排ガスを流通させて温度低下させるので、バイパス通路40aへ排ガスを流通させる機会を最小限に抑えることができる。
【0125】
(第4実施形態)
本実施形態では、バイパス弁41を図14の如く制御している。なお、本実施形態のシステム構成は、図11に示す上記第3実施形態と同じである。
【0126】
図15に示すように、排ガス中のNOx排出量及びCO2排出量は、内燃機関10の運転状態(例えばエンジン出力軸の回転速度NEや、エンジン負荷)に応じて大きく変化する。例えば、エンジン負荷が高いほどNOx排出量及びCO2排出量は高くなることを図15は示す。また、中負荷であってもエンジン回転速度NEが2000rpm近傍であれば、NOx排出量は少なくなることを図15は示す。
【0127】
そしてECU15は、NOx排出量が所定の閾値TH未満となるようなエンジン運転状態の時にバイパス弁41を開弁作動させ、閾値TH以上となる時にバイパス弁41を閉弁作動させる。なお、バイパス弁41の開弁時には循環ポンプ23,33の作動を停止させ、バイパス弁41の閉弁時には循環ポンプ23,33を作動させるよう制御する。
【0128】
図14は、バイパス弁41の作動を制御する手順を示すフローチャート(バイパス制御手段)であり、ECU15が有するマイクロコンピュータにより、所定周期(例えばマイコンの演算周期又は所定のクランク角度毎)で繰り返し実行される。
【0129】
先ず、図14に示すステップS30において、エンジン負荷及び回転速度NEが、予め作成しておいたマップ中の所定範囲(低NOx運転領域)内であるか否かを判定する。当該マップは、エンジン負荷及び回転速度NEと、NOx排出量との関係を予め試験して作成されたものである。そして、エンジン負荷及び回転速度NEによる領域が、NOx排出量が閾値TH未満となる領域を低NOx運転領域として設定している。
【0130】
低NOx運転領域であると判定された場合には(S30:YES)、続くステップS31において、バイパス弁41を開弁作動させる。これにより、排ガスは、バイパス通路40aを流れて排ガス接触器22,32をバイパスすることとなる。この時、循環ポンプ23,33の作動をオフさせて循環配管25,35での液体の循環を停止させるとともに、ヒータ24bの作動をオフさせてCO2の分離を停止させることが望ましい。
【0131】
一方、エンジン負荷及び回転速度NEが、マップ中の低NOx運転領域でない高NOx運転領域であると判定された場合には(S30:NO)、続くステップS32において、バイパス弁41を閉弁作動させる。これにより、排ガスは、排ガス接触器22,32を流通することとなる。
【0132】
以上詳述した本実施形態によれば、上記(1)〜(8)の効果が得られるとともに、以下の効果も得られるようになる。
【0133】
(12)高NOx運転時には、NOx除去装置30で十分な量のNOxを吸収させるべくCO2除去装置20でのCO2除去能力を高めさせておくことが望ましい。そこで本実施形態では、低NOx運転時には、バイパス通路40aへ排ガスを流通させることにより循環配管25で循環させるCO2吸収液体全体についての吸収割合の上昇を抑制させておき、高NOx運転時に備えて吸収割合を低い状態にしておくことができる。そして、高NOx運転時には排ガス接触器22,32へ排ガスを流通させるので、高NOx運転時におけるCO2吸収量を高めることができ、ひいては高NOx運転時にNOx除去装置30で十分な量のNOxを吸収させることができる。
【0134】
同様にして、低NOx運転時には、循環配管35で循環させるNOx吸収液体全体についての吸収割合の上昇を抑制させておき、高NOx運転時に備えて吸収割合を低い状態にしておくことができる。
【0135】
また、車両用の内燃機関10は、エンジン負荷や回転速度NEが短時間で急激に変化するものである。これに対し本実施形態では、低NOx運転時に、CO2吸収液体及びNOx吸収液体の吸収割合を低い状態にしておくので、短時間で大量のNOxが排出されてきたとしても、そのNOxを十分に吸収させることができる。
【0136】
(13)低NOx運転時には、ヒータ24bの作動を停止させるので、ヒータ24bでの消費電力を抑制できる。よって、バッテリの消費を抑制でき、ひいては、内燃機関10による発電量を抑制して燃費向上を図ることができる。
【0137】
(14)流入NOx量Aが排ガス規制量未満となっている低NOx運転時には、バイパス通路40aへ排ガスを流通させるので、供給タンク部31aへ新規のNOx吸収液体を補給しなければならない時期を遅くしてNOx吸収液体の使用期間を長くできる。
【0138】
(他の実施形態)
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、以下のように変更して実施してもよい。また、各実施形態の特徴的構成をそれぞれ任意に組み合わせるようにしてもよい。
【0139】
・CO2吸収液体及びNOx吸収液体は、分子構造の変化を伴わずにCO2やNOxを吸収(物理的吸収)させるものでもよいし、分子構造の変化を伴いながらCO2やNOxを吸収(化学的吸収)させるものでもよい。
【0140】
・図4のステップS14,S16において排出完了判定及び供給完了判定に用いられる「所定時間」を、吸収液体の温度や粘性に応じて可変設定してもよい。例えば粘性が高いほど、排出完了や供給完了に要する時間が長くなるので、粘性が高いほど「所定時間」を長く設定することが望ましい。
【0141】
・上記第1実施形態では、CO2除去装置20の循環ポンプ23を断続的に作動させて、循環配管25内のCO2吸収液体を断続的に循環(入替制御)させている。これに対し、CO2除去装置20の循環ポンプ23を常時作動させて、循環配管25内のCO2吸収液体を常時循環させるようにしてもよい。この場合、CO2吸収液体の吸収割合に応じてその循環速度を可変制御することが望ましい。また、流入バルブ22c及び流出バルブ22dを廃止することが望ましい。
【0142】
・上記各実施形態では、吸収液体を染み込ませて保持する保持体22a,32aを排ガス中に晒すことで排ガスと吸収液体とを接触させているが、例えば、吸収液体を排ガス中へ霧状に噴射することで接触させるよう構成してもよい。或いは、吸収液体を蓄えたタンク中に排ガスを吹き込むことで、吸収液体と排ガスとを接触させるよう構成してもよい。
【0143】
・上記第1実施形態では、図1に示すように、排ガス中のNOをNO2に酸化するDOC12(酸化手段)を排ガス接触器22の上流側に配置している。これは酸化触媒を活性化させるために内燃機関10の排気ポートにできるだけ近い位置にDOC12を配置することで、高温排気によりDOC12の温度上昇を短時間で実現させる点で有利である。しかしながら、NOをNO2に酸化すると、排ガス接触器32でのNOx吸収率を向上できると同時に、排ガス接触器22内においてCO2吸収液体によりNOxが吸収されやすくなってしまう。
【0144】
この点を鑑みて、排気管11のうち、CO2除去装置20の排ガス接触器22の下流側、かつ、NOx除去装置30の排ガス接触器32の上流側に酸化手段を配置してもよい。これによれば、CO2吸収液体がNOxを吸収することを抑制できるとともに、NOx吸収液体がNOxを吸収することを向上できる。但し、このような位置に酸化手段を配置すると、排気ポートから遠い位置になるので、高温排気により酸化触媒を短時間で活性化することが困難となる。よって、このような配置の酸化手段には、酸化触媒を用いたDOCに替えて、オゾン発生器やラジカル発生器を採用することが望ましい。或いは、酸化触媒(DOC)を用いた場合には、DOCを加熱する電気ヒータやバーナーを備えさせることが望ましい。
【0145】
・上記第1実施形態にかかる分離放出器24は、CO2吸収液体を加熱するヒータ24b(加熱手段)によりCO2を分離させているが、ヒータ24bに替えてCO2吸収液体を減圧する減圧手段を設け、CO2吸収液体を減圧することでCO2を分離させるように構成してもよい。
【0146】
・上記第1実施形態では、phセンサ22e,32eを用いて吸収液体の吸収割合を検出しているが、液体の粘性、透光度、電気伝導度、比重についても吸収割合と相関が高いので、これらの物理量を検出するセンサをphセンサ22e,32eに替えて用いるようにしてもよい。また、吸収液体がイオン液体である場合には、吸収液体中のカチオン(プラスイオン)とアニオン(マイナスイオン)の比率を検出するセンサを用いて吸収割合を検出することもできる。
【0147】
・ここで、排ガス接触器22,32内の吸収液体を入れ替える制御(入替制御)を実行するか否かを判定するにあたり、内燃機関10の運転時間や車両の走行距離に基づき判定するようにすれば、phセンサ22e,32eを廃止できてコストダウンを図ることができる。但し、phセンサ22e,32eを用いて吸収液体のphを検出することで、入替制御の実行時期を判定する上記第1実施形態によれば、吸収割合が所定値以上にならないように精度良く管理できる。また、所定値未満であるにも拘わらず早期に入れ替えられてしまうといった不具合を解消できる。
【0148】
・上記各実施形態では、NOx除去装置30の上流側にCO2除去装置20を設けているが、NOx除去装置30が、CO2を吸収しつつも十分な量のNOxを吸収できる能力を有していれば、CO2除去装置20を廃止してもよい。
【0149】
・上記各実施形態では、吸収液体で吸収させる排ガス中の特定成分をNOx,CO2としているが、これらの成分以外を対象として吸収除去させるようにしてもよい。例えば、着火式のガソリンエンジンに適用させた場合において、排ガス中のHCを吸収液体で吸収させるようにしてもよい。
【0150】
・上記各実施形態において、流入バルブ22c,32c及び流出バルブ22d,32dを廃止した構成としてもよい。
【符号の説明】
【0151】
10…内燃機関、11…排気管、20…CO2除去装置、21,31…タンク、22…CO2除去装置の排ガス接触器、23…CO2除去装置の循環ポンプ、24…分離放出器、24d…熱回収器、26…クーラ、30…NOx除去装置、40a…バイパス通路、41…バイパス弁(切替弁)、S12〜S16…供給制御手段(供給状態制御手段)、S17,S18…供給停止制御手段(供給状態制御手段)、S20〜S23,S30〜S32…バイパス制御手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排ガス中の特定成分と接触すると、その接触した特定成分を吸収する吸収液体を貯蔵するタンクと、
前記内燃機関の排気管に配置されるとともに前記タンクから前記吸収液体が供給され、前記吸収液体を排ガスに接触させる排ガス接触器と、
前記排ガス接触器内の前記吸収液体に対する前記特定成分の吸収割合、及び前記排ガス接触器内の前記吸収液体の温度の少なくとも一方に応じて、前記タンクから前記排ガス接触器への前記吸収液体の供給状態を制御する供給状態制御手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関用排気浄化装置。
【請求項2】
前記供給状態制御手段は、
前記吸収割合が予め設定した上限割合よりも低い場合には前記排ガス接触器への前記吸収液体の供給を停止させる供給停止制御手段と、
前記吸収割合が前記上限割合を超えて高くなった場合には前記吸収液体を前記排ガス接触器へ供給させる供給制御手段と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用排気浄化装置。
【請求項3】
前記排ガス接触器内の前記吸収液体の温度が高いほど、前記上限割合を低い値に設定することを特徴とする請求項2に記載の内燃機関用排気浄化装置。
【請求項4】
前記供給状態制御手段は、
前記排ガス接触器内の前記吸収液体の温度が予め設定した上限温度よりも低い場合には前記排ガス接触器への前記吸収液体の供給を停止させる供給停止制御手段と、
前記上限温度を超えて高くなった場合には前記吸収液体を前記排ガス接触器へ供給させる供給制御手段と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用排気浄化装置。
【請求項5】
前記排気管から分岐して、前記排ガス接触器をバイパスして排ガスを流通させるバイパス通路と、
前記バイパス通路及び前記排ガス接触器のいずれかに排ガスの流れを切り替える切替弁と、
を備え、
前記排ガス接触器内の前記吸収液体の温度が、所定時間以上継続して前記上限温度を超えている場合、或いは前記上限温度よりもさらに高い値に設定された所定温度以上になった場合には、前記バイパス通路へ排ガスを流通させるよう前記切替弁の作動を制御することを特徴とする請求項4に記載の内燃機関用排気浄化装置。
【請求項6】
前記供給制御手段は、前記排ガス接触器が前記吸収液体を保有できる量だけ、前記吸収液体を前記排ガス接触器へ供給させることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1つに記載の内燃機関用排気浄化装置。
【請求項7】
前記供給制御手段は、前記排ガス接触器内の前記吸収液体を排出させた後に、前記タンクから前記吸収液体を供給させることを特徴とする請求項2〜6のいずれか1つに記載の内燃機関用排気浄化装置。
【請求項8】
内燃機関の排ガス中の特定成分と接触するとその接触した特定成分を吸収する吸収液体を保有し、前記内燃機関の排気管に配置されて前記吸収液体を排ガスに接触させる排ガス接触器と、
前記排気管から分岐して、前記排ガス接触器をバイパスして排ガスを流通させるバイパス通路と、
前記バイパス通路及び前記排ガス接触器のいずれかに排ガスの流れを切り替える切替弁と、
前記排ガス接触器内の前記吸収液体の温度、及び前記内燃機関から排出される前記特定成分の排出量の少なくとも一方に応じて、前記切替弁の作動を制御するバイパス制御手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関用排気浄化装置。
【請求項9】
前記バイパス制御手段は、前記排ガス接触器内の前記吸収液体の温度が予め設定された所定温度以上であることを条件として、前記バイパス通路へ排ガスを流通させるよう前記切替弁の作動を制御することを特徴とする請求項8に記載の内燃機関用排気浄化装置。
【請求項10】
前記バイパス制御手段は、前記内燃機関から排出される前記特定成分の排出量が所定量未満であることを条件として、前記バイパス通路へ排ガスを流通させるよう前記切替弁の作動を制御することを特徴とする請求項8又は9に記載の内燃機関用排気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−179339(P2011−179339A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−41752(P2010−41752)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】